(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-22
(45)【発行日】2024-03-04
(54)【発明の名称】有機廃棄物を熱分解するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
G21F 9/32 20060101AFI20240226BHJP
G21F 9/30 20060101ALI20240226BHJP
B09B 3/38 20220101ALI20240226BHJP
【FI】
G21F9/32 F
G21F9/30 571F
B09B3/38
(21)【出願番号】P 2021547935
(86)(22)【出願日】2019-10-30
(86)【国際出願番号】 EP2019079741
(87)【国際公開番号】W WO2020089341
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2022-10-27
(32)【優先日】2018-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BE
(73)【特許権者】
【識別番号】521177049
【氏名又は名称】エーエスエックス インベストメンツ ビー.ブイ.
(73)【特許権者】
【識別番号】521177050
【氏名又は名称】ベルゴプロセス
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハンセン,ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】デッカース,ジャン
(72)【発明者】
【氏名】フランケン,レネ
【審査官】佐藤 海
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-013043(JP,A)
【文献】特開2001-179212(JP,A)
【文献】特開2017-142210(JP,A)
【文献】特開2002-210439(JP,A)
【文献】特開2012-096186(JP,A)
【文献】特開2001-305287(JP,A)
【文献】米国特許第04555361(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 9/00-9/36
B09B 3/00-3/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性の廃棄物を熱分解された材料およびガス化された材料に熱分解する
ことによる前記放射性の廃棄物をバッチ処理するためのシステムであって、前記システムは、
フレーム(1)と、
前記フレームに取り付けられ、
所定の滞留時間の間、前記廃棄物
を気密密封するように構成された円錐形筐体(4)であって、長手方向(27)、側壁、上側および下側を有し、
前記長手方向に垂直な表面を有する前記円錐形筐体を通る断面は下方に減少し、
前記廃棄物を前記筐体内に導入するために供給装置と連通するように構成された入口(6)
であって、前記廃棄物の処理中に前記入口を閉じるように構成された閉鎖手段が設けられた入口と、
前記筐体から前記熱分解された材料を排出するための排出装置と連通するように構成された出口(12)であって、
前記出口は前記筐体の前記下側に設けられ
ており、前記廃棄物の処理中に前記出口を閉じるように構成された閉鎖手段が設けられた出口と、
前記廃棄物の処理中に前記ガス化された材料を前記筐体から排出するためのガス排出装置と連通するように構成されたガス出口(7
)と、
が設けられた、円錐形筐体と、
前記フレームに取り付けられた混合装置であって、
前記筐体に対して回転可能に取り付けられた駆動シャフト(26)であって、前記駆動シャフトは、前記長手方向に沿って前記筐体の前記上側を通って延在し、前記筐体の内部に位置する第1の部分と、前記筐体の外部に位置する第2の部分とを有する、駆動シャフトと、
前記筐体の内部にあり、前記廃棄物を流動化するように構成された円錐形混合体(25)であって、前記駆動シャフトの前記第1の部分に固定的に取り付けられ、前記筐体
に接触しない、円錐形混合体と、
が設けられた、混合装置と、
前記筐体の前記側壁を加熱するための加熱手段(24)と、
を備える、システム。
【請求項2】
前記駆動シャフトの前記第2の部分は、少なくとも2つのベアリングによって前記フレームに回転可能に取り付けられている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記混合体は、前記筐体の前記下側
と同じ高さに位置する自由底部側を有する、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記長手方向
に垂直な前記円錐形筐体を通る断面で測定された、前記筐体の前記側壁と前記混合体との間の最短距離は、前記筐体の最大内径の最大5
%である、請求項1から3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記最短距離は、前記断面が取得され
る高さと
は無関係である、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記混合体は、使用時に、前記混合体が前記廃棄物を前記筐体の前記側壁に沿って上方に搬送するよう構成されるように、1つまたは複数の交差接続部(27)を用いて前記シャフトに取り付けられている、請求項1から5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記加熱手段は、前記筐体の前記側壁の外側
に一体化された電気加熱要素を備え、前記電気加熱要素は、前記筐体内に
、少なくとも500℃の温度を生成するように構成されている、請求項1から6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記システムは、窒素ガスが貯蔵される少なくとも1つの貯蔵タンク(19)を有する不活性化装置をさらに備え、前記不活性化装置は、前記筐体内の各開口部付近に窒素ガスを供給するように構成された複数の導管を備える、請求項1から7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記混合装置は、前記駆動シャフトを回転させるように構成された駆動装置(28
)をさらに備え、前記駆動装置は前記筐体の外部に配置されている、請求項1から8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記筐体内にセラミックおよび/または金属ボールが存在しない、請求項1から
9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記廃棄物は
、放射性樹脂または放射性スラッジを含む、請求項1から
10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
放射性の廃棄物を乾燥および熱分解して熱分解された材料およびガス化された材料にする
前記放射性の廃棄物をバッチ処理するための方法であって、前記方法は、
a)前記廃棄物を筐体内に導入するステップと、
b)ステップa)の後に、前記筐体
を気密封止するステップと、
c)混合体を回転させることによって前記筐体内の前記廃棄物を流動化させるステップと、
d)前記廃棄物を加熱するために前記筐体を加熱して、前記廃棄物を連続的に乾燥および熱分解するステップと、
e)前記ガス化された材料を前記筐体から抽出するステップと、
f)前記廃棄物が完全に熱分解されるまで、前記熱分解された材料を前記筐体の底部に収集するステップと、
g)前記回収された熱分解された材料を除去するために前記筐体をロック解除するステップと、
を含む、方法。
【請求項13】
ステップd)は、前記筐体の温度を周囲温度か
ら少なくとも500℃まで徐々に上昇させることを含む、請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
ステップd)は、前記廃棄物処理プロセスに基づいて前記温度を調整することを含む、請求項
13に記載の方法。
【請求項15】
ステップc)は、前記廃棄物を前記筐体の側壁に沿って上方に搬送することを含む、請求項
12から
14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
ステップd)は、前記廃棄物を加熱するために前記筐体を加熱して、前記廃棄物を連続的に蒸発、乾燥および熱分解するステップをさらに含む、請求項
12から
15のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機廃棄物を熱分解された材料およびガス化された材料に熱分解するためのシステムに関する。本発明はまた、有機廃棄物を熱分解された材料およびガス化された材料に熱分解するための方法システムに関する。
【背景技術】
【0002】
原子力産業は、放射性汚染イオン交換媒体(すなわち、樹脂)、スラッジおよび溶媒として分類される廃棄物の量を毎年発生させる。樹脂は、有機材料である。ベースは、通常、スルホン酸および/またはアミン基がグラフトされたスチレンポリマーである。したがって、樹脂は可燃性であるが、燃焼中に酸素ガスが供給されると、硫黄酸化物および窒素酸化物が形成され、これらは何らかの方法で分離しなければならない。さらに、燃焼中の温度上昇は、放射性セシウムを部分的に蒸発させるのに十分に高い。したがって、結果として生じるガスおよびフライアッシュは、処理される樹脂の放射能の結果として著しく汚染される可能性があり、非常に効率的なフィルタシステムを必要とする。したがって、技術的および経済的問題の両方が、イオン交換媒体の燃焼に関連している。
【0003】
燃焼の代替処理方法は、特許文献1および特許文献2に記載されている熱分解である。熱分解は、400℃~850℃の温度の不活性雰囲気中で起こり、それによって分子の分解、すなわちミネラル化が起こる。燃焼と比較して著しく低い温度および酸素の欠如のために、樹脂からの残留生成物は熱分解リアクタ内に残る。様々な放射性同位体、例えばセシウムの排気ガスへの移動もまた、存在しないほど著しく低い。
【0004】
熱分解を使用して媒体を高放射性樹脂に加工する既知の方法は、特許文献1に記載されている3つの連続工程を含む。第1段階では、樹脂を乾燥させる。すなわち、樹脂は、通常、樹脂対水の70/30の体積比で、水中の懸濁液として搬送される。乾燥後、樹脂は熱分解を受け、樹脂は通常、リアクタ容器内で過熱蒸気の向流を受け、これは連続プロセスとして実施される。この熱分解は、圧倒的多数の放射性核種および熱分解ガスを含む少量の固体残留物をもたらす。次いで、この熱分解ガスは、後述するように800℃~1100℃の温度で熱後燃焼を受ける。
【0005】
特許文献3は、放射性樹脂の処理に使用することができる熱分解リアクタを開示している。具体的には、特許文献3には、複数のセラミックまたは金属ボールが混合体と組み合わせて存在する円筒形のリアクタ容器が開示されている。ボールは、混合体によって流動化され、ボールは、リアクタ容器の壁に沿って上方に移動し、リアクタ容器の中心に向かって下方に移動する。円筒形リアクタ容器の壁は電気的に加熱される。このようにして、セラミックボールは、400℃~700℃の実質的に均一な温度を有する。過熱蒸気をリアクタ容器の底部側に導入し、乾燥樹脂をリアクタの上部に添加する。樹脂と過熱蒸気および加熱セラミックボールとの接触は、そこから粒状残留物が形成される熱分解反応を提供する。円筒形リアクタ容器は、この残留物を収集するためにその下側に円錐形部分を有する。
【0006】
特許文献3に開示されているリアクタにはいくつかの欠点がある。第1に、混合体は、セラミックボールが流動化され得るように十分に堅牢な設計でなければならず、これは、セラミックボールに関連する高い摩擦力のために特に困難である。このような混合体は、混合体がセラミックボールに十分な力を加えることができるように、リアクタの上部および底部の両方で混合体に支持体を設けられなければならないことを意味する。具体的には、混合体の下側は、円筒形リアクタ容器内に固定的に取り付けられたグリッド上に支持され、グリッドは、混合体を部分的に案内する複数の同心環状凹部を備える。セラミックボールを流動化させるのに必要な力が比較的高いため、下側のこのような複数の案内は重要である。しかしながら、混合体と下側グリッドとの間の整列は、リアクタ内の温度が高くなる、すなわち700℃までの可能性があり、その結果、両方とも金属製であるグリッドおよび混合体の両方が膨張し、その膨張は、グリッドおよび混合体について必ずしも同じではない。したがって、整列は、グリッドおよび混合体の両方の特定の膨張を考慮に入れなければならない。
【0007】
特許文献3に開示されているリアクタのさらなる欠点は、セラミックボールが混合体の閉塞をもたらす可能性があることである。そのような状況では、閉塞を改善できるように廃棄物処理を停止しなければならない。そのような閉塞の除去は手動で行われなければならず、したがって、リアクタ容器は通常、重大な汚染リスクを伴う放射性物質を含むので明らかではない。セラミックボールや金属ボールも経時的に摩耗するため、交換が必要となる。さらに、摩耗したボール自体もまた、処理されなければならない放射性廃棄物となる。
【0008】
また、特許文献3に開示されたリアクタでは、樹脂の滞留時間に問題がある。特に、樹脂は重力によりリアクタを通って落下する。過熱蒸気の向流は重力を部分的に補償するが、リアクタ内の滞留時間は常に制限される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】GB-B-1577383
【文献】US-B-6084147
【文献】JP-A-2017/142210
【発明の概要】
【0010】
本発明の目的は、熱分解チャンバ内の廃棄物の滞留時間をより正確に制御することができる、熱分解による有機廃棄物の処理を提供することである。
【0011】
この目的は、有機廃棄物を熱分解された材料およびガス化された材料に熱分解するためのシステムであって、システムは:フレームと;フレームに取り付けられ、廃棄物を一時的に実質的に気密密封するように構成された円錐形筐体であって、長手方向、側壁、上側および下側を有し、廃棄物を筐体内に導入するために供給装置と連通するように構成された入口と、筐体から熱分解された材料を排出するための排出装置と連通するように構成された出口であって、筐体の下側に設けられた出口と、ガス化された材料を筐体から排出するためのガス排出装置と連通するように構成されたガス出口であって、前記長手方向に実質的に垂直な表面を有する円錐形筐体を通る断面が下方に減少する、ガス出口と、が設けられた、円錐形筐体と;フレームに取り付けられた混合装置であって、筐体に対して回転可能に取り付けられ、長手方向に沿って筐体の上側を通って延在し、筐体の内部に位置する第1の部分と、筐体の外部に位置する第2の部分とを有する、駆動シャフトと、筐体の内部にあり、廃棄物を流動化するように構成された円錐形混合体であって、駆動シャフトの第1の部分に固定的に取り付けられ、筐体に実質的に接触しない、円錐形混合体と、が設けられた、混合装置と;筐体の側壁を加熱するための加熱手段と;を備える、システムによって達成される。
【0012】
円錐形混合体と組み合わせて実質的に気密封止することができる円錐形筐体を有するシステムを提供することにより、バッチ処理で有機廃棄物の処理を実行することが可能である。具体的には、一定量の廃棄物が筐体に導入され、その後、廃棄物の総量が熱分解されるまで実質的に気密封止される。混合体は、廃棄物を流動化し、廃棄物を流動化させ続けることによって廃棄物の一部が互いに付着するのを防止し、それにより、加熱手段によって生成された熱は、筐体内部の廃棄物を通じて徐々に広がることができる。
【0013】
さらに、短い滞留時間で廃棄物に十分な熱を放出するために既知の処理設備で必要であった、筐体内のセラミックまたは金属のボールはもはや必要ではない。したがって、筐体の内部で混合体を支持する必要がなく、システムの設計も単純化される。この単純化はまた、システムの保守および清掃をより容易にする。さらに、筐体はまた、十分に長い滞留時間を得るために十分に長くなければならない既知の筐体に対して、比較的小さい設計とすることができる。
【0014】
供給された有機廃棄物が既に乾燥されている必要もない。具体的には、供給された廃棄物が湿っている場合、筐体はより長い期間閉じたままであり得る。このより長い期間は、最初に同じ筐体内部の廃棄物を蒸発させ、次いで乾燥させ、次いで熱分解することを可能にする。
【0015】
さらに、気密封止された筐体は、放射性廃棄物、特に放射性樹脂もしくは放射性スラッジ、または他の典型的な廃棄物の処理を可能にする。
【0016】
本発明の一実施形態では、駆動シャフトの第2の部分は、少なくとも2つのベアリングによってフレームに回転可能に取り付けられる。
【0017】
そのような取り付けは、混合装置がフレーム上に全体的に取り付けられ、フレーム上に支持されることを可能にする。換言すれば、円錐形筐体に支持体の必要はなく、その結果、可能な限り軽くすることができる。さらに、この実施形態では、駆動シャフトと筐体の上側との間に回転可能なシール(封止)を設ける必要もない。
【0018】
本発明の一実施形態では、混合体は、筐体の下側と略同じ高さにある自由底部側を有する。
【0019】
この実施形態では、処理される有機廃棄物の一部は、筐体の下側の混合体の下に蓄積することが防止される。そのような蓄積された廃棄物は、典型的には、特に放射性廃棄物と共に、回避すべき部分的に未処理の廃棄物をもたらす。
【0020】
本発明の一実施形態では、長手方向に略垂直な円錐形筐体を通る断面において測定された、筐体の側壁と混合体との間の最短距離は、筐体の最大内径の最大5%、特に最大3%である。好ましくは、最短距離は、断面が取得される高さとは実質的に無関係である。
【0021】
混合体と筐体との間の距離は、廃棄物が円錐形筐体に付着することを防止するために、理想的には可能な限り小さくなければならないことが分かっている。そのような固定された材料は、廃棄物処理の効率を低下させ、また、特に放射性廃棄物の場合には回避すべき部分的に未処理の廃棄物をもたらす可能性がある。
【0022】
本発明の一実施形態では、混合体は、使用時に、混合体が廃棄物を筐体の側壁に沿って上方に搬送するよう構成されるように、1つまたは複数の交差接続部を用いてシャフトに取り付けられる。
【0023】
側壁に沿った上方への搬送は、側壁が加熱手段によって加熱され、それによって加熱手段と筐体内部の廃棄物との間の熱伝達が最適化されるため、有利である。
【0024】
本発明の一実施形態では、加熱手段は、筐体の側壁の外側に取り付けられた、好ましくは一体化された電気加熱要素を備え、電気加熱要素は、少なくとも200℃、特に少なくとも300℃、より具体的には少なくとも400℃、最も具体的には少なくとも500℃の筐体内の温度を生成するように構成されている。
【0025】
電気加熱手段は、直接熱を提供し、熱媒油などの熱伝達媒体または追加の燃料による燃焼を必要とせず、したがって、汚染が少なく、はるかに安全である。所望の温度は、典型的には、システムの処理段階(すなわち、蒸発、乾燥または熱分解)に依存し、好ましくは可能な限り低い。
【0026】
本発明の一実施形態では、システムは、窒素ガスが貯蔵される少なくとも1つの貯蔵タンクを有する不活性化装置をさらに備え、不活性化装置は、筐体の各開口部付近に窒素ガスを供給するように構成された複数の導管を備える。
【0027】
窒素ガスの使用は、円錐形筐体内の雰囲気が実質的に酸素を含まない(すなわち、不活性のままである)ままであるように筐体を実質的に気密封止するための安価で容易に実装できるシステムを形成する。
【0028】
本発明の一実施形態では、混合装置は、駆動シャフトを回転させるように構成された駆動装置、特に電気モータをさらに備え、この駆動装置は筐体の外部に配置されている。
【0029】
筐体の外部に混合装置の駆動装置を設けることは、筐体の内部に配置された駆動装置と比べて有利である。特に、汚染の可能性ははるかに低く、それによって筐体内部の容積も廃棄物を処理するために最適に利用することができる。
【0030】
本発明の一実施形態では、筐体の入口は第1の仕切弁装置によって閉じられ、筐体の出口は第2の仕切弁装置によって閉じられる。
【0031】
筐体の入口および出口を閉じるための仕切弁の使用は、使用中に入口および出口の実質的な気密封止を保証する簡単な方法である。
【0032】
本発明の一実施形態では、筐体内にセラミックおよび/または金属のボールは存在しない。
【0033】
セラミックおよび/または金属ボールがないことにより、筐体の内部の混合体を完全に自由にすることができ、システムの設計が単純化される。
【0034】
この目的はまた、有機廃棄物を乾燥および熱分解して熱分解された材料およびガス化された材料にするための方法であって:a)廃棄物を筐体内に導入するステップと;b)ステップa)の後に、筐体を実質的に気密封止するステップと;c)混合体を回転させることによって筐体内の廃棄物を流動化させるステップと;d)廃棄物を加熱するために筐体を加熱して、廃棄物を連続的に蒸発、乾燥および熱分解するステップと;e)ガス化された材料を筐体から抽出するステップと;f)廃棄物が完全に熱分解されるまで、熱分解された材料を筐体の底部に収集するステップと;g)回収された熱分解された材料を除去するために筐体をロック解除するステップと;を含む、方法によって達成される。
【0035】
筐体内の廃棄物を流動化することと組み合わせて、廃棄物が筐体内に実質的に気密封止される方法を提供することにより、バッチ処理で有機廃棄物の処理を実行することができる。具体的には、一定量の廃棄物が筐体内に導入され、その後、それは気密封止され、廃棄物の総量が乾燥されて熱分解されるまで封止されたままである。混合体は、廃棄物を流動化し、それを流動化させ続けることによって廃棄物の一部が互いに付着するのを防ぎ、廃棄物の乾燥および熱分解の両方のために、筐体内部の廃棄物を通して熱を着実に拡散させることを可能にする。したがって、別個の廃棄物処理施設で乾燥および熱分解を実行する必要はない。
【0036】
本発明の一実施形態では、ステップd)は、筐体の温度を周囲温度から少なくとも200℃、具体的に少なくとも300℃、より具体的には少なくとも400℃、最も具体的には少なくとも500℃まで徐々に上昇させることを含む。
【0037】
温度の制御された上昇は、より制御可能なプロセスをもたらす。特に、廃ガスの量は、実質的に瞬間的な加熱とは対照的に、より制御可能であり、それにより、より多くの廃ガスが短時間で生成される。
【0038】
好ましくは、ステップd)は、廃棄物処理プロセスに基づいて温度を調整するステップをさらに含む。
【0039】
これにより、廃棄物処理プロセスの既に到達した段階、すなわち蒸発、乾燥または熱分解に応じて温度を調整することができる。
【0040】
本発明の一実施形態では、ステップc)は、廃棄物を筐体の側壁に沿って上方に搬送することを含む。
【0041】
側壁に沿った上方への搬送は、側壁を加熱手段によって最も簡単に加熱することができ、それによって加熱手段と筐体内部の廃棄物との間の熱伝達が最適化されるため、有利である。
【0042】
本発明の一実施形態では、ステップd)は、廃棄物を加熱するために筐体を加熱して、廃棄物を連続的に蒸発、乾燥および熱分解することを含む。
【0043】
この実施形態では、有機廃棄物は、その搬送水と共に筐体内に導入することができ、それによって、第1の段階では、搬送水が蒸発される。
【0044】
本発明の好ましい実施形態では、ガス排出装置は、炭化水素化合物を含む廃ガスを熱的に酸化して酸化されたガスにするための酸化器に接続され、酸化器は:電気加熱手段が内側に設けられた、前壁、後壁、左壁、右壁、上壁、および下壁を有する外側チャンバであって、外側チャンバには第1の開口部および第2の開口部が設けられ、外側チャンバの深さは、その前壁とその後壁との間の最短距離として定義され、外側チャンバの幅は、その左壁とその右壁との間の最短距離として定義され、外側チャンバの高さが、その下壁とその上壁との間の最短距離として定義される、外側チャンバと;内側チャンバであって、外側チャンバによって完全に囲まれ、外側チャンバの深さ、幅および高さのそれぞれより、最大15%、特に最大10%小さい深さ、幅および高さを有する、内側チャンバと;を備え、内側チャンバには:外側チャンバの第1の開口部を介して、過熱酸素ガスと廃ガスとの混合物を内側チャンバに供給するために設けられた供給装置と連通するように構成された入口と;外側チャンバの第2の開口部を介して、酸化されたガスを内側チャンバから排出するための設けられた排出装置と連通するように構成された出口と;混合物が内側チャンバ内の1つまたは複数の略U字形のループを通って流れるような1つまたは複数の仕切りと;が設けられる。
【0045】
加熱された外側チャンバ内で廃ガスを酸化するための内側チャンバとして酸化器を構築することにより、内側チャンバ全体が必要な温度にされる。したがって、例えば酸化の開始中に、ある量の廃ガスが十分に高い温度に曝されないリスクはない。さらに、電気加熱要素は、追加の燃料、例えば油またはガスの燃焼を必要とせず、したがって汚染が少ない。さらに、追加の燃料のために追加の燃焼空気が必要とされないため、蒸気の体積はより制限される。ガス、特に油の燃焼はまた、さらに処理しなければならないガスを生成する。したがって、電気酸化器は、点火器を使用し、追加の燃焼空気のために十分な容積を有しなければならない既存の酸化器と比較して、より小さい酸化器をもたらす。燃焼空気を回避することはまた、より単純な廃ガス処理システムを使用できることを意味する。加えて、点火器を使用する酸化器と比較して、電気加熱要素に関連する安全上のリスクも少ない。
【0046】
1つまたは複数の仕切りは、同じ流入速度を有する仕切りのない同一の寸法のチャンバと比較して、内側チャンバ内の混合物の滞留時間を増加させる。言い換えれば、同じ流入速度に対して同じ滞留時間を依然として得るために、1つまたは複数の仕切りを使用することによって、内側チャンバ、したがって外側チャンバをより小さくすることができる。さらに、仕切りの直接的な結果である1つまたは複数のU字形のループは、廃ガスと過熱酸素ガスとの混合に寄与する。
【0047】
内側チャンバはまた、通常は廃ガスと直接接触しない外側チャンバの構造的完全性を損なうことなく、その全体を交換することができる。換言すれば、内側チャンバの汚染および/または損傷の場合、内側チャンバを容易に交換または保守することができる。
【0048】
さらに、内側チャンバの寸法は、チャンバが曝される高温を考慮して、二つのチャンバが互いに接触することなしに、二つのチャンバ間に可能な限り小さい容積が存在するように、外側チャンバに対して選択される。
【0049】
さらに、酸化器は、有機廃棄物、特に放射性廃棄物、より具体的には放射性樹脂もしくは放射性スラッジまたは他の廃棄物の熱分解の結果である廃ガスの処理に適している。
【0050】
本発明の好ましい実施形態では、内側チャンバの内壁のうちの1つおよび複数の仕切りのうちの1つの側面の各々に、入口に最も近いU字形のループの第1のセクションを断熱するための耐熱断熱パネルが設けられる。
【0051】
耐熱断熱パネルが設けられた入口に最も近い内側チャンバの部分は、内側チャンバの各壁に耐熱断熱パネルを設けるのとは対照的に、酸化器の設計を大幅に増加させる必要なく、最高温度に曝される内側チャンバの部分に追加の保護を提供する。
【0052】
本発明の好ましい実施形態では、外側チャンバには第3の開口部がさらに設けられ、内側チャンバには、内側チャンバに尿素を供給するために設けられた尿素供給装置と外側チャンバの第3の開口部を介して連通するように構成されたガス入口が設けられる。好ましくは、ガス入口は、入口に最も近いU字形のループの後に設けられる。
【0053】
廃ガス処理中の尿素の内側チャンバへの導入は、窒素酸化物の形成を防止する。酸化器の開始時に尿素を添加することにより、窒素酸化物の形成が実質的に内側チャンバ全体にわたって回避されることが保証される。このようにして、酸化器は、DeNOx設備としても機能する。
【0054】
本発明の好ましい実施形態では、外側チャンバの壁の内側には、電気加熱手段が組み込まれたセラミック要素が設けられ、要素には、外側チャンバに面する側に耐熱断熱材が設けられている。
【0055】
セラミック断熱パネルは、加熱手段によって発生した熱をより効率的に使用することを可能にする、すなわち断熱パネルは周囲への熱損失を制限する。断熱パネルに加熱手段を組み込むことにより、外側チャンバの内側に必要な空間も制限され、内側チャンバを最大に設計することができる。
【0056】
本発明の好ましい実施形態では、内側チャンバは、全体が耐熱金属で作られる。
【0057】
本発明の好ましい実施形態では、奇数個の仕切りが設けられ、入口および出口は、内側チャンバの同じ壁に設けられ、好ましくは、第1の開口部および第2の開口部は、外側チャンバの同じ壁に設けられる。
【0058】
奇数個の仕切りを設けることにより、入口および出口を同じ壁に設けることが可能になり、それによって外壁の第1の開口部および第2の開口部も同じ壁に設けることができ、それによって開口部の周りの追加の断熱を1つの壁に限定することができる。
【0059】
本発明の好ましい実施形態では、内側チャンバが外側チャンバに取り付けられる固定手段が設けられ、この固定手段は、内側チャンバが外側チャンバの内側と実質的に接触しないように構成される。好ましくは、固定手段は、外側チャンバの下壁と内側チャンバの下壁との間に配置された1つまたは複数の支持要素を備える。
【0060】
外側チャンバの下壁と内側チャンバの下壁との間に支持要素を設けることは、非常に単純な接続を形成し、その結果、内側チャンバが外側チャンバと直接接触せず、それによって、内側チャンバが高温であっても外側チャンバと接触しないように十分な遊びを提供することもできる。
【0061】
本発明の好ましい実施形態では、酸化器は、少なくとも1m/s、最大5m/sの速度で前記混合物を内側チャンバ内に供給するように構成された供給装置をさらに備える。好ましくは、U字形のループは、内側チャンバ内の廃ガスの滞留時間が少なくとも2秒であるように、継手全長を有する。好ましくは、供給装置は、酸素ガス、特に空気、より具体的には周囲空気を、少なくとも850℃、好ましくは少なくとも900℃、特にほぼ1000℃の温度まで過熱するように構成された過熱器を備える。
【0062】
過熱器に供給された空気、特に酸素ガスを過熱すると、混合物を実質的にさらに加熱する必要がないため、必要な滞留時間が制限される。
【0063】
本発明のさらに好ましい実施形態では、供給装置は、混合物中の酸素ガスの量(少なくとも6vol%)を制御するように構成された制御機構を備える。好ましくは、制御機構は、排出装置内に制御装置を備え、この制御装置は、酸化されたガス中の酸素ガスの量を決定するように構成され、制御機構は、酸化されたガス中の酸素ガスの決定された量に基づいて混合物中の酸素ガスの量を制御するようにさらに構成される。
【0064】
制御装置は、内側チャンバの全長にわたって処理される廃ガス混合物中に少なくとも6vol%の酸素ガスが常に存在することを可能にする。
【0065】
本発明の好ましい実施形態では、仕切りは、内側チャンバの対向する壁に交互に取り付けられ、好ましくは、各仕切りは、対向する壁の間の最短距離の最大95%の長さを有する。
【0066】
このような交互の取り付けは、混合物の流れのための所望のU字形のループを簡単な方法で得ることを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0067】
以下、本発明を、以下の説明および添付の図面によってさらに詳細に説明する。
【0068】
【
図1】本発明による有機樹脂を処理するためのシステムの斜視図である。
【
図6】
図1のシステムの廃ガス処理部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0069】
以下、特定の実施形態に関して、特定の図面を参照して本発明を説明するが、本発明はこれに限定されず、特許請求の範囲によってのみ定義される。本明細書に示される図面は、単に概略図であり、限定するものではない。図面では、いくつかの要素の寸法は誇張されており、したがって例示目的のために縮尺通りに描かれていない場合がある。寸法および相対寸法は、本発明の実際の実施への換算に必ずしも対応しない。
【0070】
さらに、「第1の」、「第2の」、「第3の」などの用語は、説明および特許請求の範囲において同様の要素を区別するために使用され、必ずしも連続的または時系列的な順序を示すために使用されるとは限らない。問題の用語は、適切な状況下で交換可能であり、本発明の実施形態は、本明細書に記載または例示されている以外の順序で動作することができる。
【0071】
さらに、説明および特許請求の範囲における「上部」、「底部」、「上方」、「下方」などの用語は、説明の目的で使用される。このように使用される用語は、適切な状況下で交換可能であり、本発明の実施形態は、本明細書に記載または図示されている以外の向きで動作することができる。
【0072】
特許請求の範囲で使用される「comprising(含む、備える)」という用語またはその派生語は、その後に列挙される手段に限定されると解釈されるべきではなく、この用語は、他の要素またはステップを排除するものではない。この用語は、記載された特徴、整数、ステップまたは構成要素を指定するものとして解釈されるべきであるが、1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップまたは構成要素、またはそれらのグループの存在または追加を排除するものではない。したがって、「手段AおよびBを備える装置」などの表現の範囲は、単に構成要素AおよびBのみからなる装置に限定されない。対照的に、それが意味することは、本発明に関して、装置の唯一の関連する構成要素がAおよびBであることである。
【0073】
本明細書で使用される場合、「不活性雰囲気」という用語は、2%未満の酸素が存在する雰囲気を意味する。
【0074】
本発明は、有機廃棄物を分解するための方法およびシステムを含み、その結果、除去されるべき廃棄物の体積および質量は、初期体積および元の質量に対して大幅に低減される。本発明はまた、最終的に環境中に放出される処理済み廃棄物(例えば、排気ガス)の成分を無害化することに関する。
【0075】
本方法は、特に放射性廃棄物に関して、特に放射性イオン交換樹脂に関して説明されるが、他の種類の有機廃棄物は、以下のプロセスおよびシステムの構成要素に従って処理することができる。したがって、本発明に従って処理することができる有機廃棄物は、イオン交換樹脂だけでなく、とりわけ、蒸気発生器のための洗浄溶液、溶媒(溶剤)、油、除染溶液、不凍液、泥、スラッジ、硝酸塩、リン酸塩および汚染水も含む。
【0076】
イオン交換樹脂は、有機材料、通常はアニオン樹脂を作製するためにアミノ基がグラフトされたスチレン、またはカチオン樹脂を形成するためにスルホン基がグラフトされたスチレンから作製される。これらの樹脂は、原子炉内の冷却水を精製するために使用されるため、最大約7%の鉄、カルシウム、シリカならびに少量の他の金属およびカチオンを蓄積する。
【0077】
この方法は、密閉型リアクタ内での熱分解に基づく。廃棄物の処理からの固体残留物、すなわち高い金属酸化物含有量を有する無機粒子は、200年~300年の期間にわたってその後の貯蔵のために収納される。この方法は、従来の廃ガス処理(例えば、後燃焼)をさらに利用することができるが、さらに説明するように、廃ガスの酸化も利用することができる。熱分解は、化学量論上の酸素量がない状態での、すなわち不活性雰囲気中での熱を用いた有機材料の分解である。したがって、本発明で使用するためのリアクタは、実質的に気密封止可能でなければならない。
【0078】
本方法では、加熱により樹脂の有機成分を分解蒸留する。加熱すると、ポリマー樹脂の弱い化学化合物は、炭素、金属酸化物、金属硫化物、および熱分解ガスを含むより少ない炭素数を有する化合物に分解され、これらは二酸化炭素、一酸化炭素、水、窒素、および炭化水素ガスを含む。熱分解後に残る少量の固体残留物には、圧倒的多数の放射性核種を含む。
【0079】
熱分解は広範囲の温度で起こり得るが、本方法は、イオン交換樹脂中の放射性金属の揮発を防ぐために、一般に約300℃~600℃の低温での熱分解である。したがって、これらの金属はリアクタの残留物中に保持される。結果として、低活性合成熱分解ガスは、セシウムなどの揮発性放射性金属の懸念なしに、高温で二酸化炭素および水に変換され得る。
【0080】
廃ガス、例えば炭化水素を含む熱分解ガスの酸化は、最低量の酸素ガスが存在しなければならない高温での有機ガスの分解である。典型的には、炭化水素蒸気は、少なくとも2秒のガスの滞留時間および少なくとも6vol%の酸素含有量で、少なくとも850℃の温度で二酸化炭素および水に変換される。これは、廃ガスの燃焼を構成しない。
【0081】
イオン交換樹脂を処理するためのシステムは、収集チャンバ2が取り付けられたフレーム1を備え、樹脂は、収集チャンバ2内に、搬送水によって、特に供給ライン(図示せず)及び入口3を介して搬送され、入口3は閉鎖弁9を介して閉じることができる。任意選択で、搬送水は、収集タンク1から濾過され、排出ライン(図示せず)を介して排出され得る。搬送水の分離は乾燥樹脂をもたらし、熱分解チャンバ内の滞留時間を低下させる。
【0082】
収集チャンバ2から、樹脂(搬送水を含む、または搬送水を除く)は、ライン5(
図2に示す)を介して円錐形熱分解チャンバ4に搬送され、入口6を介して筐体4に入る。熱分解チャンバ4内では、後述するように、(必要に応じて)搬送水が蒸発され、樹脂が乾燥されて熱分解される。蒸発、乾燥、および熱分解によって生成された廃ガスは、ライン8に接続されたガス出口7を介して排出される。重力により、熱分解された材料は、筐体4の内部に落下し、収集トレイ10内に開口する出口12を介して筐体を出る。図示の実施形態では、出口12と収集トレイ10との間に仕切弁装置11(
図3に示す)も設けられている。そのような仕切弁は、その後、熱分解されていない材料が収集トレイ10に到達することができないように、使用中に閉じられる。同様の仕切弁装置13(これも
図3に示す)が、収集トレイ2と熱分解チャンバ4の入口6との間に設けられている。
【0083】
熱分解チャンバ4を気密封止するために、すなわち熱分解チャンバ4の内部に酸素が実質的に存在しないことを確実にするために、窒素ガスが貯蔵タンク19から熱分解チャンバ4の各開口部に導かれる。この窒素ガスは、酸素ガスが熱分解チャンバ4の複数の開口部のうちの1つを通過することを防止し、したがって不活性雰囲気の状態を壊すことを防止し、筐体4が損傷を受ける可能性があるようなおよび/または安全でない状態が生じるような高温をもたらす可能性がある酸化または燃焼反応を引き起こすことを防止する。貯蔵タンク19は、別の窒素供給源、例えば窒素供給網によって置き換えることもできることが理解されよう。
【0084】
図4に示すように、円錐形筐体4の側壁上には、側壁を加熱するための加熱手段24、特に電気加熱手段が設けられている。有利な実施形態では、これらの加熱手段24は、円錐形筐体4に直接取り付けられるセラミック要素であって、少なくとも200℃、特に少なくとも300℃、より具体的には少なくとも400℃、最も具体的には少なくとも500℃の温度を筐体4内に生成するのに適したセラミック要素に組み込まれる。生成する必要がある温度は、処理する必要がある廃棄物の種類および処理が行われる段階にも依存する。例えば、搬送水の蒸発には120℃の温度で十分であり得るが、熱分解中には(樹脂の種類に応じて)約300℃の温度が必要である。
【0085】
筐体4の内部には、交差接続部41を介して駆動シャフト26に取り付けられた円錐形混合体25が設けられ、駆動シャフト26は、長手方向に沿って筐体の上側を通って延在し、筐体4の内部にある第1の部分と、筐体4の外部にある第2の部分とを有する。円錐形混合体25は、混合体25を回転させることによって筐体4の側壁に沿って上方に廃棄物を搬送することによって、筐体4の内部の廃棄物を流動化するように構成される。
【0086】
図4に概略的に示されるように、混合体25は筐体4に接触せず、上述のように、筐体4の底部における廃棄物の蓄積を回避するために、混合体25は筐体24の底面で自由底部側を有する。このような構造は、駆動シャフト26の第2の部分がフレーム1にベアリング取付されており、したがって筐体24の内部に装着する必要がないために可能である。特に、駆動シャフト26をフレーム1に取り付ける際には、二つのベアリングが用いられる。
図4に示すように、駆動シャフト26は、筐体4の長手方向27に延在する。駆動シャフト26は、
図1に示す電気モータ28によって駆動される。
【0087】
一実施形態では、混合体25と筐体4の側壁との間の最短距離は、上述のように、側壁上の残留物の蓄積を回避するために、最大で5%、特に最大で3%である。
【0088】
蒸発、乾燥、および熱分解からの廃ガスは、ライン8を介して供給ライン14に供給され、供給ラインは、酸化装置15(酸化器としても知られる)の入口33に排出する。供給ライン14は、過熱酸素ガス、特に過熱空気(周囲空気など)を供給するために設けられ、この空気は過熱器20(
図4に概略的に示す)によって加熱された。酸素ガスは、
図4に示すように、タンク21内に提供され、ポンプ22を介して供給され得る。タンク21は、好ましくは、酸化器15が配置されるチャンバであり、したがって、供給される空気は周囲空気である。ポンプ22はまた、酸素ガスがどれだけ供給されるかを決定し、酸素ガスと廃ガスとの混合物が供給される速度(例えば、1~5m/s)を制御するためにも使用することができる。
【0089】
図4および
図6に示すように、酸化装置15は、外側チャンバ16および内側チャンバ17を備える。電気加熱手段23(
図7に示す)は、外側チャンバ16内に設けられ、廃ガスと過熱空気の混合物が流れる内側チャンバ17を加熱する。この混合物は、酸化されたガスが出口32および排出ライン18を介して酸化装置15から排出されるように温度によって酸化される。過熱空気(特に少なくとも850℃、好ましくは少なくとも900℃、より好ましくは約1000℃)の温度は、内側チャンバ17の開始時に酸化反応が既に開始されるように、廃ガスの初期加熱を既に確実にする。
【0090】
外側チャンバ16には、前壁、後壁、左壁、右壁、上壁および下壁が設けられており、これらの各々には、
図7に概略的に示されている電気加熱手段23が内側に設けられており、外側チャンバ16の深さは、その前壁とその後壁との間の最短距離として定義され、外側チャンバ16の幅は、その左壁とその右壁との間の最短距離として定義され、外側チャンバ16の高さは、その下壁とその上壁との間の最短距離として定義される。外側チャンバ16には、第1の開口部29および第2の開口部30がさらに設けられており、供給ライン14および排出ライン18はそれぞれ第1の開口部29および第2の開口部30を通って延在する。
【0091】
内側チャンバ17は、
図6に示すように外側チャンバ16によって完全に囲まれており、外側チャンバ16の寸法に可能な限り近い寸法を有する。特に、高さ、深さ、および幅はそれぞれ、外側チャンバ16の深さ、幅、および高さのそれぞれよりも最大で15%、特に最大で10%小さい。そのような寸法は、高温により内側チャンバ16が膨張することを可能にするが、また、コンパクトな酸化器15を形成するために、外側チャンバの全体積は可能な限り小さいことが分かっている。
図7に示すように、内側チャンバ17は、2つのチャンバ16、17間の直接接触が回避されるように、固定手段31によって外側チャンバ16に支持される。これにより、加熱手段23の損傷が回避される。
【0092】
内側チャンバ17内の雰囲気は、外側チャンバ16内の内側チャンバ17周囲の雰囲気から実質的に完全に密封されていることは明らかである。このようにして、酸化対象のガスが外側チャンバ17、特に加熱手段23と接触することが防止される。
【0093】
一実施形態では、加熱手段23は、耐熱断熱性を有する外側チャンバ16に面する側に設けられたセラミック要素として設計される。
【0094】
酸化器15の寸法を制限するために、内側チャンバ17には、相互に略平行な仕切り35が設けられ、仕切りのない同一の寸法のチャンバと比べて内側チャンバ17内の滞留時間を増加させる。これらの仕切り35により、混合物は、ガスの混合を促進する一連の略U字形のループ36を通って流れなければならない。
【0095】
好ましくは、U字形のループのコーナ部は丸みを帯びており、これにより、廃ガスの一部を一時的に保持し且つそれによって酸化器15の効率を低下させる渦流を回避する。
【0096】
図示の実施形態では、各仕切り35の長さは、内側チャンバ17の高さの約85%であるが、他の長さも可能である。一般に、この長さは、好ましくは高さ(または仕切りが幅もしくは長さ方向に従って配向されている場合は幅もしくは長さ)の60%~95%である。これにより、十分な流れが可能になり、また、内側チャンバ17の理想的に可能な限り小さい寸法に基づいて、混合物が移動しなければならない総距離が最大になることが分かった。
【0097】
仕切り35の数および内側チャンバ17の寸法は、混合物の所望の滞留時間に基づいて選択される。この滞留時間は、好ましくは少なくとも2秒である。ポンプ22を使用して、特定の総距離が与えられた場合に滞留時間が十分であるように流量を調整することもできる。
【0098】
仕切り35への損傷を防止するために、これらに断熱材(図示せず)を設けることもできる。第1の仕切りは過熱空気の供給に起因して最も熱いゾーンであるため、断熱材を設けることは第1の仕切りでは特に有利である。さらに、内側チャンバ17のこの壁も断熱されている。
【0099】
図示の実施形態では、奇数個の仕切り35が使用されており、その結果、開口部29、30を外側チャンバ16の同じ壁に設けることができ、任意選択でその壁には加熱手段23が設けられていなくてもよいが、好ましくは断熱材が設けられる。
【0100】
図示の実施形態では、第3の開口部38も外側チャンバ16に設けられており、開口部38内に配置されたガス入口40を介して尿素供給装置37が外側チャンバ16に接続されている。上述のように、尿素の供給は、酸化中の窒素酸化物の形成の回避につながる。図示のように、尿素供給装置37は、供給された尿素が十分な滞留時間を有するように、最も近いU字形のループ36に接続される。
【0101】
一実施形態では、外側チャンバ16には、その壁を形成するドア34が設けられている。これは、内側チャンバ17を全体的に交換または洗浄することを可能にするので有利である。これによっても、加熱手段23のメンテナンスを行うことができる。
【0102】
図示の実施形態では、酸化されたガス中に酸素ガスの体積百分率がどの程度存在するかをチェックする制御装置39も設けられている。酸素ガスの体積百分率が低すぎる場合、より多くの酸素ガスが供給されるようにポンプ22を調整する制御機構が作動される。このようにして、所望の酸素ガス百分率(例えば6vol%)が得られ、内側チャンバ17全体にわたって保守することができる。
【0103】
本発明の特定の態様を特定の実施形態に関して説明したが、これらの態様は、特許請求の範囲によって定義される保護の範囲内で他の形態で実施されてもよいことは明らかである。