(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-22
(45)【発行日】2024-03-04
(54)【発明の名称】PCD材料製プリンタノズル
(51)【国際特許分類】
B29C 64/209 20170101AFI20240226BHJP
B29C 64/118 20170101ALI20240226BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20240226BHJP
【FI】
B29C64/209
B29C64/118
B33Y30/00
(21)【出願番号】P 2021569415
(86)(22)【出願日】2020-04-28
(86)【国際出願番号】 DE2020100346
(87)【国際公開番号】W WO2020239165
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2022-01-18
(31)【優先権主張番号】102019113993.7
(32)【優先日】2019-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】521509136
【氏名又は名称】グーリング ケージー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ザグル
(72)【発明者】
【氏名】ツァルコ シュテバノビク
(72)【発明者】
【氏名】ペーター ハルトマン
(72)【発明者】
【氏名】トビアス フェヒナー
【審査官】小山 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-056779(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108437444(CN,A)
【文献】国際公開第2017/038984(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/189406(WO,A1)
【文献】特開2018-154061(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0091929(US,A1)
【文献】特表2007-517646(JP,A)
【文献】米国特許第05848753(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B22F 1/00-12/90
B29C 45/00-45/84
B29C 48/00-48/96
B33Y 1/00-99/00
B05B 12/16-12/36
B05B 14/00-16/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3Dプリンタ装置に固定するための座り部(22)を備えたノズル本体(2)と、流出部分(21)とを有する、3D印刷用材料を処理するためのプリンタノズル(1)であって、
前記流出部分(21)はノズルインサート(3)を含み、前記ノズル本体(2)は、超硬合金、金属又は真鍮からなり、前記ノズルインサート(3)はPCD(多結晶ダイヤモンド)材料を含む、プリンタノズル(1)。
【請求項2】
前記ノズル本体(2)と前記ノズルインサート(3)は別個に形成されている、請求項1に記載のプリンタノズル(1)。
【請求項3】
前記ノズル本体(2)と前記ノズルインサート(3)は互いに材料結合的に接続されている、請求項2に記載のプリンタノズル(1)。
【請求項4】
前記ノズルインサート(3)を接続するために使用されるはんだ材料は500
℃以上の温度で溶融する、請求項3に記載のプリンタノズル(1)。
【請求項5】
前記流出部分(21)は端部に凹部(4)を含み、該凹部(4)は、前記ノズルインサート(3)と少なくとも部分的に相補的に形成されたサイズと形状を有する、請求項1~4の何れか一項に記載のプリンタノズル(1)。
【請求項6】
前記ノズルインサート(3)は完全にPCD(多結晶ダイヤモンド)材料からなる、請求項1~5の何れか一項に記載のプリンタノズル(1)。
【請求項7】
前記ノズルインサート(3)は全ての側面にレーザー加工された外側輪郭を有する、請求項1~6の何れか一項に記載のプリンタノズル(1)。
【請求項8】
前記ノズルインサート(3)は、2mm、3mm、4mm、5mm又は8mmの
直径の流出口を有する、請求項1~7の何れか一項に記載のプリンタノズル(1)。
【請求項9】
前記ノズルインサート(3)は
前記流出部分(21)の前端部において前面を有する、請求項1~8の何れか一項に記載のプリンタノズル(1)。
【請求項10】
前記流出部分(21)は、
該流出部分(21)の前端部において50°~70°の範囲
の角度で先細に形成されている、請求項1~9の何れか一項に記載のプリンタノズル(1)。
【請求項11】
前記ノズルインサート(3)は少なくとも部分的に研磨されている、請求項1~10の何れか一項に記載のプリンタノズル(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項に記載された3Dプリンタ材料を処理するためのプリンタノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、3Dプリンタノズルの分野における新しいツールの開発を取り組むものである。3Dプリンタノズルは、それによってフィラメントが位置決めされ、ひいては印刷速度と印刷品質が決定的に規定されるので、3Dプリンタで最も重要な部材である。
【0003】
溶融堆積モデリング(FDM)又は溶融フィラメント製造技術(FFF)を使用する場合、印刷される3D印刷用材料は溶融状態でプリンタノズル若しくはノズルから押し出される。プリンタノズルは、その直径によって、印刷時のラインあたりの最大幅と、使用されたフィラメントの直径を規定する。
【0004】
真鍮製のプリンタノズルは、熱伝導率が高くコストが低いため、広く普及している。
【0005】
真鍮製の3Dプリンタノズルの短所は、高温範囲用のPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)プラスチックなどのフィラメントを使用する際に、又は炭素繊維や炭化ホウ素などの研磨添加剤を使用すると、すぐに摩耗することである。絶えず発生する摩擦によって、特にノズル開口部が削り取られ、そして削り取られたノズル開口部は印刷結果の品質の低下を招く。
【0006】
使用するフィラメントによっては、別の材料製のプリンタノズルを使用することが必要となる場合がある。硬化鋼からなる鋼製ノズルを使用することが知られている。このような鋼製プリンタノズルは、耐久性を高め、印刷結果を長期にわたって改善するために、例えばルビー製の宝石インサートが装備されることもある。
【0007】
このようなプリンタノズルは、価格が高いことに加え、真鍮に比べて熱伝導率が低い点も短所である。さらにそのような宝石インサートを装備したノズルは、破断リスクも高まる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、従来技術の短所を克服し、特に研磨性フィラメント材料の使用時に長い耐用年数と良好な印刷品質を保証する、3D印刷用材料を処理するためのプリンタノズルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題は、独立請求項に記載された3D印刷用材料を処理するためのプリンタノズルによって解決される。有利な実施形態は、独立請求項の主題をなしている。
【0010】
本発明は、3Dプリンタ装置に固定するための座り部を備えたノズル本体と、流出部分とを有する、3D印刷用材料を処理するためのプリンタノズルを含む。流出部分は、ノズルインサートを含む。ノズル本体は、超硬合金、金属、又は真鍮からなる。ノズルインサートは、PCD(多結晶ダイヤモンド)材料を含む。PCD材料は、研磨性フィラメント材料の使用時に破断強度が低く耐用年数が長い。さらに、PCD材料は高い熱伝導率を有する。
【0011】
好適な態様によれば、ノノズル本体とノズルインサートは、別個に形成されている。ノズル本体とノズルインサートを別個に形成することにより、ノズル本体とノズルインサートの製造にそれぞれ異なる材料を使用することができる。
【0012】
特に有利には、ノズル本体とノズルインサートは互いに材料結合的に接続されている。材料結合的な接続は、ノズル本体とノズルインサートを一緒に保持して、接続箇所にはんだを施すことにより、はんだ付けによって作製できる。
【0013】
特に有利な態様によれば、ノズル本体とノズルインサートを接続するために使用されるはんだ材料は、500°以上の温度で溶融する。そのため、例えばPEEKプラスチックを処理する際に使用できる耐熱性プリンタノズルを提供することができる。
【0014】
別の好適な態様によれば、流出部分が端部に凹部を含む。この凹部は、ノズルインサートと少なくとも部分的に相補的に形成されたサイズと形状を有する。流出部分にこのような凹部を形成することにより、ノズル本体とノズルインサートを簡単にはんだ付けすることができる。
【0015】
好適な技術的態様によれば、ノズルインサートは、完全にPCD(多結晶ダイヤモンド)材料からなる。これは熱伝導性の高い材料で、熱を流出部分からノズルインサートの流出口に輸送する。
【0016】
ノズルインサートは、すべての側面にレーザー加工された外側輪郭を有することが有利である。レーザー加工された外側輪郭は、好ましくは幾つかの円錐状に延びる部分面を有する。
【0017】
特に好ましくは、ノズルインサートは2mm、3mm、4mm、5mm又は8mmの流出口を有する。
【0018】
別の有利な態様によれば、流出部分は50°~70°の範囲、特に60°の角度で先細に形成されている。この輪郭により、印刷用材料を塗布する際にプリンタノズルが十分自由に動くことができる。
【0019】
ノズルインサートは直径1.5mmの前面を有することが有利である。前面は、プリンタノズルの先端に十分な熱を輸送できるほどに大きく、微細な構造を印刷できるほどに小さくなっている。
【0020】
ノズルインサートは、少なくとも部分的に研磨されていることが好ましい。
【0021】
以下に、本発明を図面に示す例に基づいて詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は本発明の実施形態により3D印刷用材料を処理するためのプリンタノズルの斜視図である。
【
図2】
図2は
図1に示すプリンタノズルの第1変形例の断面図である。
【
図3】
図3は
図1に示すプリンタノズルの第2変形例の断面図である。
【0023】
図1には、3D印刷用材料を処理するためにプリンタ装置(図示せず)に取り付けることができるプリンタノズル1の斜視図が示されている。
【0024】
図示のプリンタノズル1は、フィラメントの形態の3D印刷用材料を処理するために用いる。プリンタノズル1は、後部には3Dプリンタにねじ込むためのねじ座り部22を備えたノズル本体2を有する。ノズル本体2は、前部にねじ座り部22と一体に形成された流出部分21を有する。流出部分21は前端部にノズルインサート3を含んでおり、これは、以下にさらに説明され、また、
図2に示されているように、流出路と座り部内を通る内部流路を継続している。
【0025】
ノズル本体2とノズルインサート3は別個に形成されている。ノズル本体は、超硬合金、金属又は真鍮からなる。ノズルインサート3は基本的にPCD材料を含み、図示のノズルインサート3は完全にPCD材料からなる。PCD材料は、研磨性フィラメント材料の使用時に破断強度が低く耐用年数が長い。さらに、PCD材料は高い熱伝導率を有する。
【0026】
ノズル本体2とノズルインサート3は、はんだ付け部のように互いに材料結合的に接続されている。高温で使用するために、ノズル本体とノズルインサートの接続に使用されるはんだ材料は、500°以上の温度で溶融するように選択されている。一例は、銀はんだである。
【0027】
ノズルインサート3の中央の開口部は5mmの直径を有するが、図示の例はこの寸法に制限されていない。ノズルインサート3は、直径1.5mmの前面を有する。
【0028】
流出部分21は、ノズルインサート3と座り部21との間の領域において、約60°の角度で先細に形成されている複数の面部分を有する。
【0029】
ノズルインサート3は、表面、内側、及び外側が研磨されている。
【0030】
図2は、
図1に示すプリンタノズル1の第1変形例の断面図である。図示の断面では、プリンタノズル1は3D印刷用材料の処理中にフィラメントが輸送される連続する流路5を有する。
【0031】
図の右側では、プリンタノズル1は3Dプリンタにねじ込むためのねじ座り部22を有する。
【0032】
図の左側では、ノズル本体2は、超硬合金、金属又は真鍮からなるねじ座り部22と一体的に形成された流出部分21を有する。
【0033】
流出部分21は、先端部にフィラメントを輸送するための流路5を継続するノズルインサート3を備えている。この変形例では、ノズルインサート3は超硬合金製の接続部品3aに配置されている。
【0034】
図示の流出部分21では、端部に六角形の縁形状を有する凹部4が形成されている。凹部4は、相補的に形成されたノズルインサート3がその接続部品3aと共にほぼ完全に受容される深さと横方向直径を有する。そのように相補的に形成されたノズルインサート3は、すべての側面にレーザー加工された外側輪郭を有する。
【0035】
図3は、
図1に示すプリンタノズルの第2変形例の断面図であり、ノズルインサート3は、接続部品(
図3a参照)なしで形成されている。
【0036】
流出部分21は、先端部にフィラメントを輸送するための流路5を継続するノズルインサート3を有する。図示の例では、ノズルインサートは完全にPCDからなる。
【0037】
図示の流出部分21では、六角形の縁形状を有する凹部4が端部に形成されている。凹部4は、相補的に形成されたノズルインサート3をほぼ完全に受容する深さと横方向直径を有する。そのように相補的に形成されたノズルインサート3は、すべての側面にレーザー加工された外側輪郭を有する。
【0038】
図4は、
図1及び
図2に示すプリンタノズル1の正面図である。流出部分21は、ノズルインサート3を凹部内で支持する。流路5は、フィラメントを輸送するために用いられる。
[構成1]
3Dプリンタ装置に固定するための座り部(22)を備えたノズル本体(2)と、流出部分(21)とを有する、3D印刷用材料を処理するためのプリンタノズル(1)であって、
前記流出部分(21)はノズルインサート(3)を含み、前記ノズル本体(2)は、超硬合金、金属又は真鍮からなり、前記ノズルインサート(3)はPCD(多結晶ダイヤモンド)材料を含む、プリンタノズル(1)。
[構成2]
前記ノズル本体(2)と前記ノズルインサート(3)は別個に形成されている、構成1に記載のプリンタノズル(1)。
[構成3]
前記ノズル本体(2)と前記ノズルインサート(3)は互いに材料結合的に接続されている、構成2に記載のプリンタノズル(1)。
[構成4]
ノズル本体(2)とノズルインサート(3)を接続するために使用されるはんだ材料は500℃以上の温度で溶融する、構成3に記載のプリンタノズル(1)。
[構成5]
前記流出部分(21)は端部に凹部(4)を含み、該凹部(4)は、前記ノズルインサート(3)と少なくとも部分的に相補的に形成されたサイズと形状を有する、構成1~4の何れか一項に記載のプリンタノズル(1)。
[構成6]
前記ノズルインサート(3)は完全にPCD(多結晶ダイヤモンド)材料からなる、構成1~5の何れか一項に記載のプリンタノズル(1)。
[構成7]
前記ノズルインサート(3)は全ての側面にレーザー加工された外側輪郭を有する、構成1~6の何れか一項に記載のプリンタノズル(1)。
[構成8]
前記ノズルインサート(3)は、2mm、3mm、4mm、5mm又は8mmの流出口を有する、構成1~7の何れか一項に記載のプリンタノズル(1)。
[構成9]
前記ノズルインサート(3)は直径1.5mmの前面を有する、構成1~8の何れか一項に記載のプリンタノズル(1)。
[構成10]
前記流出部分(21)は、50°~70°の範囲、特に60°の角度で先細に形成されている、構成1~9の何れか一項に記載のプリンタノズル(1)。
[構成11]
前記ノズルインサート(3)は少なくとも部分的に研磨されている、構成1~10の何れか一項に記載のプリンタノズル(1)。