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特許7442555免疫チェックポイントモジュレーターおよび共生微生物叢による発酵産物の併用がん療法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-22
(45)【発行日】2024-03-04
(54)【発明の名称】免疫チェックポイントモジュレーターおよび共生微生物叢による発酵産物の併用がん療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/48 20060101AFI20240226BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240226BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240226BHJP
   A61K 36/06 20060101ALI20240226BHJP
   A61K 35/744 20150101ALI20240226BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240226BHJP
   A61K 31/197 20060101ALI20240226BHJP
   A61K 31/19 20060101ALI20240226BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240226BHJP
【FI】
A61K36/48
A61K39/395 U
A61P43/00 121
A61K36/06
A61K35/744
A61P35/00
A61K31/197
A61K31/19
A61K9/08
【請求項の数】 24
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022009064
(22)【出願日】2022-01-25
(62)【分割の表示】P 2018550681の分割
【原出願日】2017-03-30
(65)【公開番号】P2022058740
(43)【公開日】2022-04-12
【審査請求日】2022-01-25
(31)【優先権主張番号】62/315,259
(32)【優先日】2016-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503317245
【氏名又は名称】マイクロバイオ カンパニー, リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】ルー クン-ミン
【審査官】堂畑 厚志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/069770(WO,A1)
【文献】特開2003-335695(JP,A)
【文献】特開2015-051970(JP,A)
【文献】特開2003-026582(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0222248(US,A1)
【文献】国際公開第2004/004771(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/095811(WO,A1)
【文献】特表2015-519375(JP,A)
【文献】特表2013-535439(JP,A)
【文献】特表2006-523672(JP,A)
【文献】Cancer Immunol. Immunother.,2015年03月06日,Vol. 64, No. 6,p.677-688
【文献】Journal of Bioscience and Bioengineering,日本生物工学会,2013年01月04日,115,5,552-556
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
CAPlus/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
がんを治療するための医薬またはキットを製造するための免疫チェックポイントモジュレーターおよび発酵組成物の組み合わせの使用であって、前記組み合わせが、前記免疫チェックポイントモジュレーター単独と比較してより増強された、前記免疫チェックポイントモジュレーターの抗がん作用を提供し、
前記免疫チェックポイントモジュレーターが、PD-1に特異的な抗体であり、
前記発酵組成物が、酵母及び乳酸菌を含む複数の微生物によるダイズ又はその水性抽出物の発酵によって生成される複数の代謝産物を含む、使用。
【請求項2】
前記発酵組成物が、経口投与または静脈内投与によって投与するためのものである、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記発酵組成物が液体形態である、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記複数の代謝産物が、乳酸、酢酸、および/または3-アミノイソ酪酸の組み合わせを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記発酵組成物が、5~20重量%の乳酸、5重量%未満の酢酸、および5重量%未満の3-アミノイソ酪酸を含む、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
前記発酵組成物が、
(i)前記ダイズ又はその水性抽出物の発酵を可能にする条件下で、前記ダイズ又はその水性抽出物を含む培地中で酵母及び乳酸菌を増殖させる工程と、
(ii)工程(i)から得られた発酵組成物を収集する工程と
を含むプロセスによって調製される、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
調製するプロセスが、工程(ii)から得られた発酵組成物を濾過する工程、前記発酵組成物を滅菌する工程、および/または前記発酵組成物を濃縮する工程をさらに含む、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
前記発酵組成物が、前記免疫チェックポイントモジュレーターの投与前、その投与後、またはその投与と同時に投与するためのものである、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
前記抗体が、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体である、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
前記がんが、結腸がん、肺がん、乳がん、膵臓がん、皮膚がん、脳がん、卵巣がん、腎臓がん、胃がん、頭頸部がん、食道がん、膀胱がん、直腸がん、骨がん、子宮がん、前立腺がん、および血液悪性腫瘍からなる群から選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
必要とする対象におけるがんを治療するための医薬またはキットを製造するための発酵組成物の使用であって、前記発酵組成物が、酵母及び乳酸菌を含む複数の微生物によるダイズ又はその水性抽出物の発酵によって生成される複数の代謝産物を含み、前記対象が、免疫チェックポイントモジュレーターを含む抗がん療法を受けていたか、または受けており、
前記免疫チェックポイントモジュレーターが、PD-1に特異的な抗体であり、
前記発酵組成物が、前記免疫チェックポイントモジュレーターと組み合わせて、前記免疫チェックポイントモジュレーター単独と比較してより増強された、前記免疫チェックポイントモジュレーターの抗がん作用を提供する、使用。
【請求項12】
前記発酵組成物が、経口投与または静脈内投与によって投与するためのものである、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記発酵組成物が液体形態である、請求項11又は12に記載の使用。
【請求項14】
前記複数の代謝産物が、乳酸、酢酸、および/または3-アミノイソ酪酸の組み合わせを含む、請求項11~13のいずれか一項に記載の使用。
【請求項15】
前記発酵組成物が、5~20重量%の乳酸、5重量%未満の酢酸、および5重量%未満の3-アミノイソ酪酸を含む、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
前記発酵組成物が、
(i)前記ダイズ又はその水性抽出物の発酵を可能にする条件下で、前記ダイズ又はその水性抽出物を含む培地中で、酵母及び乳酸菌を増殖させる工程と、
(ii)工程(i)から得られた前記発酵組成物を収集する工程と
を含むプロセスによって調製される、請求項11~15のいずれか一項に記載の使用。
【請求項17】
調製するプロセスが、工程(ii)から得られた前記発酵組成物を濾過する工程、前記発酵組成物を滅菌する工程、および/または前記発酵組成物を濃縮する工程をさらに含む、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
前記抗体が、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体である、請求項11~17のいずれか一項に記載の使用。
【請求項19】
前記がんが、結腸がん、肺がん、乳がん、膵臓がん、皮膚がん、脳がん、卵巣がん、腎臓がん、胃がん、頭頸部がん、食道がん、膀胱がん、直腸がん、骨がん、子宮がん、前立腺がん、および血液悪性腫瘍からなる群から選択される、請求項11~18のいずれか一項に記載の使用。
【請求項20】
(i)PD-1に特異的な抗体である免疫チェックポイントモジュレーターと、
(ii)発酵組成物と
を含むキットまたは医薬組成物であって、
前記発酵組成物が、酵母及び乳酸菌を含む複数の微生物によるダイズ又はその水性抽出物の発酵によって生成される複数の代謝産物を含み、
前記複数の代謝産物が、乳酸、酢酸、および/または3-アミノイソ酪酸の組み合わせを含む、キットまたは医薬組成物。
【請求項21】
前記発酵組成物が液体形態である、請求項20に記載のキットまたは医薬組成物。
【請求項22】
前記発酵組成物が、
(i)前記ダイズ又はその水性抽出物の発酵を可能にする条件下で、前記ダイズ又はその水性抽出物を含む培地中で酵母及び乳酸菌を増殖させる工程と、
(ii)工程(i)から得られた発酵組成物を収集する工程と
を含むプロセスによって調製される、請求項20~21のいずれか一項に記載のキットまたは医薬組成物。
【請求項23】
前記調製するプロセスが、工程(ii)から得られた発酵組成物を濾過する工程、前記発酵組成物を滅菌する工程、および/または前記発酵組成物を濃縮する工程をさらに含む、請求項22に記載のキットまたは医薬組成物。
【請求項24】
前記発酵組成物が、5~20重量%の乳酸、5重量%未満の酢酸、および5重量%未満の3-アミノイソ酪酸を含む、請求項20~23のいずれか一項に記載のキットまたは医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は35 U.S.C.§119に基づいて2016年3月30日に出願された米国仮出願第62/315259号の利益を主張するものであり、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
免疫チェックポイントは免疫系におけるシグナル伝達経路を調節し、それによって免疫応答における免疫細胞活性を調節する分子である。多くのがん細胞は、T細胞活性化を阻害することによって免疫学的監視を逃れることができる。2010年以降、免疫チェックポイントはがん免疫療法の新しい標的としてますます考慮されるようになってきた。多数のチェックポイントモジュレーター、例えば、Yervoy(登録商標)(イピリムマブ)、Keytruda(登録商標)(ペンブロリズマブ)、およびOpdivo(登録商標)(ニボルマブ)が、がん細胞の増殖を抑制するのに効果的であることが、臨床試験において実証されている。
【0003】
発酵は、乳酸発酵の場合と同様に、酵母および細菌などの微生物によって、または酸素が欠乏した筋細胞によって糖を酸、ガスまたはアルコールに変換する代謝過程である。食品加工において、発酵は、嫌気性条件下で、酵母、細菌、またはそれらの組み合わせを使用して、炭水化物をアルコールおよび二酸化炭素または有機酸に変換することである。発酵プロセスにおいて生成される代謝産物はしばしば健康に利益を与える。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、がん増殖の抑制に対する、免疫チェックポイントモジュレーター(例えば、抗PD1抗体)および発酵ダイズ組成物の組み合わせの予想外の相乗効果に基づく。
【0005】
したがって、本開示の一態様は、がんを治療する法であって、(i)有効量の免疫チェックポイントモジュレーター(例えば、免疫チェックポイント阻害剤)を、それを必要とする対象に投与する工程と、(ii)1種以上の好適な微生物による、マメ科植物、その一部、またはその抽出物の発酵によって生成される複数の代謝産物を含む、発酵組成物(例えば、発酵ダイズ組成物)を、対象に投与する工程とを含む、方法を提供する。
【0006】
別の態様において、本開示は、がんを治療する方法であって、有効量の本明細書に記載される発酵ダイズ組成物を、それを必要とする対象に投与する工程を含み、対象は免疫チェックポイントモジュレーター(例えば、免疫チェックポイント阻害剤)を含む抗がん療法を受けていたか、または受けている、方法を提供する。
【0007】
本明細書に記載される方法のいずれにおいても、発酵組成物は経口投与または静脈内投与によって投与することができる。いくつかの例において、発酵組成物は液体形態であってもよい。いくつかの実施形態において、発酵組成物は、酵母、乳酸菌(lactobacillus)、またはそれらの組み合わせによる、マメ科植物(例えば、ダイズ)、その一部(例えば、種子)、またはその抽出物の発酵によって生成される複数の代謝産物を含んでもよい。発酵組成物は、免疫チェックポイントモジュレーターの投与の前、投与の後、または投与と同時に投与されてもよい。
【0008】
いくつかの実施形態において、発酵組成物は、乳酸、酢酸、および3-アミノイソ酪酸の組み合わせ(例えば、2つ以上)を含んでもよい。一例では、発酵組成物は、5~20重量%の乳酸、5重量%未満の酢酸、および5重量%未満の3-アミノイソ酪酸を含む。
【0009】
いくつかの例において、発酵組成物は、(i)ダイズまたはその抽出物の発酵を可能にする条件下で、マメ科植物(例えば、ダイズ)、その一部(例えば、種子)、またはその抽出物を含む培地中で、酵母、乳酸菌、またはそれらの組み合わせを増殖させる工程と、(ii)工程(i)から得られた発酵組成物を収集する工程とを含む方法によって調製することができる。必要に応じて、調製する方法は、発酵組成物を濾過する工程、発酵組成物を滅菌する工程、および/または発酵組成物を濃縮する工程をさらに含んでもよい。
【0010】
本明細書に記載される方法のいずれかに使用するための免疫チェックポイントモジュレーターは、免疫チェックポイント分子のモジュレーター(例えば、阻害剤)であってもよく、それは、PD-1、CD28、CTLA-4、CD137、CD40、CD134、ICOS、KIR、LAG3、CD27、TIM-3、BTLA、GITR、TIGIT、CD96、CD226、KIR2DL、VISTA、HLLA2、TLIA、DNAM-1、CEACAM1、CD155、IDO(例えば、IDO1)、TGF-β、IL-10、IL-2、IL-15、CSF-1、IL-6、およびアデノシンA2A受容体(A2AR)、またはそれらのリガンドであってもよい。いくつかの実施形態において、免疫チェックポイントモジュレーターは、免疫チェックポイントに特異的な抗体、またはそのリガンド、例えば、PD1またはそのリガンド(PDL1またはPDL2)に特異的な抗体である。いくつかの例において、抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体であってもよい。
【0011】
本明細書に記載される方法によって治療される例示的ながんとしては、限定されないが、結腸がん、肺がん、乳がん、膵臓がん、皮膚がん、脳がん、卵巣がん、腎臓がん、胃がん、頭頸部がん、食道がん、膀胱がん、直腸がん、骨がん、子宮がん、前立腺がん、および血液悪性腫瘍が挙げられる。
【0012】
さらに、本開示は、(i)本明細書に記載される免疫チェックポイントモジュレーター(例えば、免疫チェックポイント阻害剤)の1つ以上と、(ii)本明細書に記載される発酵組成物(例えば、発酵ダイズ組成物)とを含むキットを特徴とする。
【0013】
がんの治療に使用するための医薬組成物、例えば、本明細書に記載されるものも本開示の範囲内であり、医薬組成物は、(i)本明細書に記載される免疫チェックポイントモジュレーター(例えば、免疫チェックポイント阻害剤)と、(ii)本明細書に記載される発酵組成物(例えば、発酵ダイズ組成物)とを含み;がんの治療に使用するための医薬またはキットを製造するための免疫チェックポイントモジュレーターおよび発酵組成物の組み合わせの使用も本開示の範囲内である。本発明はまた、必要とする対象においてがんを治療するための医薬またはキットを製造するための本明細書に記載される発酵組成物(例えば、発酵ダイズ組成物)の使用であって、対象が、免疫チェックポイントモジュレーター(例えば、免疫チェックポイント阻害剤)を含む抗がん療法を受けていたか、または受けている、使用も提供する。
【0014】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細は、以下の説明に記載される。本発明の他の特徴または利点は、以下の図面およびいくつかの実施形態の詳細な説明、ならびに添付の特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1A図1Aは、結腸がんマウスモデルにおける経口投与による抗PD1抗体および発酵組成物(組成物X)の組み合わせの効果を研究するための実験設計の概略図である。マウスに結腸がんCT26細胞を同時移植し、発酵組成物で処置した。
図1B図1Bは、結腸がんマウスモデルにおける経口投与による抗PD1抗体および発酵組成物(組成物X)の組み合わせの効果を研究するための実験設計の概略図である。マウスを、結腸がんCT26細胞の移植前に発酵組成物で処置した。
図2A図2Aは、ビヒクル対照、抗PD1抗体、または種々の用量としての抗PD1抗体と発酵組成物の組み合わせで処置したマウスにおける結腸がんCT26細胞の皮下注射によって形成された腫瘍のサイズを示す写真である。マウスに結腸がんCT26細胞を同時移植し、発酵組成物で処置した。群間で体重の有意差は観察されなかった。
図2B図2Bは、ビヒクル対照、抗PD1抗体、または種々の用量としての抗PD1抗体と発酵組成物の組み合わせで処置したマウスにおける結腸がんCT26細胞の皮下注射によって形成された腫瘍のサイズを示す写真である。マウスを、結腸がんCT26細胞の移植前に発酵組成物で処置した。群間で体重の有意差は観察されなかった。
図3A図3Aは、結腸がんマウスモデルにおいて観察される腫瘍増殖に対する抗PD1/組成物Xの組み合わせの阻害効果を示すグラフを含む。マウスに結腸がんCT26細胞を同時移植し、発酵組成物で処置した。
図3B図3Bは、結腸がんマウスモデルにおいて観察される腫瘍増殖に対する抗PD1/組成物Xの組み合わせの阻害効果を示すグラフを含む。マウスを、結腸がんCT26細胞の移植前に発酵組成物で処置した。
図4図4は、結腸がんマウスモデルにおいて観察された脾臓T細胞プロファイリングに対する組成物X-抗PD1の組み合わせの効果を示すグラフを含む。p<0.05;**p<0.01;および***p<0.001。P値は、各々の介入群と対照群(ビヒクル処置した)との比較によって得た。#p<0.05;##p<0.01;###p<0.001。P値は、各々の介入群と抗PD1抗体処置群との比較によって得た。
図5図5は、肺がんマウスモデルにおける組成物X-抗PD1の組み合わせの効果を研究するための例示的な実験設計の概略図である。
図6図6は、ビヒクル対照、抗PD1抗体、または種々の用量としての抗PD1抗体と発酵組成物の組み合わせで処置したマウスにおける肺がん腫LL2細胞の皮下注射によって形成された腫瘍のサイズを示す写真である。群間で体重の有意差は観察されなかった。
図7図7は、肺がんマウスモデルにおいて観察された腫瘍増殖に対する抗PD1/組成物Xの組み合わせの阻害効果を示すグラフを含む。
図8図8は、肺がんマウスモデルにおいて観察された腫瘍浸潤T細胞プロファイリングに対する組成物X-抗PD1の組み合わせの効果を示すグラフを含む。p<0.05;**p<0.01;および***p<0.001。P値は、各々の介入群と対照群(ビヒクル処置した)との比較によって得た。#p<0.05;##p<0.01;###p<0.001。P値は、各々の介入群と抗PD1抗体処置群との比較によって得た。
図9図9は、肺がんマウスモデルにおいて観察された脾臓T細胞プロファイリングに対する組成物X-抗PD1の組み合わせの効果を示すグラフを含む。p<0.05;**p<0.01;および***p<0.001。P値は、各々の介入群と対照群(ビヒクル処置した)との比較によって得た。#p<0.05;##p<0.01;###p<0.001。P値は、各々の介入群と抗PD1抗体処置群との比較によって得た。
図10図10は、肺がん細胞が移植され、抗PD1抗体、組成物X、またはそれらの組み合わせで処置されたマウスから得られた腫瘍組織におけるPD1/PD-L1発現プロファイリングを示すグラフを含む。p<0.05;**p<0.01;および***p<0.001。P値は、各々の介入群と対照群(ビヒクル処置した)との比較によって得た。#p<0.05;##p<0.01;###p<0.001。P値は、各々の介入群と抗PD1抗体処置群との比較によって得た。
図11図11は、腫瘍浸潤性骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)プロファイリングを示すグラフである。p<0.05;**p<0.01;および***p<0.001。P値は、各々の介入群と対照群(ビヒクル処置した)との比較によって得た。#p<0.05;##p<0.01;###p<0.001。P値は、各々の介入群と抗PD1抗体処置群との比較によって得た。
図12図12は、結腸がんマウスモデルにおける経口投与または静脈内注射による抗PD1抗体と発酵組成物(組成物X)との組み合わせの効果を研究するための実験設計の概略図である。
図13図13は、経口投与によるビヒクル対照、抗PD1抗体、抗PD1抗体と発酵組成物との組み合わせ、または静脈内注射による抗PD1抗体と発酵組成物との組み合わせで処置されたマウスにおける結腸がんCT26細胞の皮下注射によって形成された腫瘍のサイズを示す写真である。
図14図14は、経口投与または静脈内注射のいずれかによる結腸がんマウスモデルにおいて観察された腫瘍増殖に対する抗PD1/組成物Xの組み合わせの阻害効果を示すグラフを含む。
図15図15は、結腸がんマウスモデルにおいて観察された腫瘍部位におけるT細胞のプロファイリングに対する組成物X-抗PD1の組み合わせの効果を示すグラフを含む。組成物Xを経口または静脈内のいずれかで投与した。p<0.05;**p<0.01;および***p<0.001。P値は、各々の介入群と対照群(ビヒクル処置した)との比較によって得た。#p<0.05;##p<0.01;###p<0.001。P値は、各々の介入群と抗PD1抗体処置群との比較によって得た。
図16図16は、結腸がんマウスモデルにおいて観察された脾臓T細胞プロファイリングに対する組成物X-抗PD1の組み合わせの効果を示すグラフを含む。組成物Xを経口または静脈内のいずれかで投与した。p<0.05;**p<0.01;***p<0.001。P値は、各々の介入群と対照群(ビヒクル処置した)との比較によって得た。#p<0.05;##p<0.01;###p<0.001。P値は、各々の介入群と抗PD1抗体処置群との比較によって得た。
図17図17は、肺がん細胞を移植され、抗PD1抗体、組成物X、またはそれらの組み合わせで処置されたマウスから得られた腫瘍組織におけるPD1/PD-L1発現プロファイリングを示すグラフを含む。組成物Xを経口または静脈内のいずれかで投与した。p<0.05;**p<0.01;および***p<0.001。P値は、各々の介入群と対照群(ビヒクル処置した)との比較によって得た。#p<0.05;##p<0.01;###p<0.001。P値は、各々の介入群と抗PD1抗体処置群との比較によって得た。
図18図18は、NK細胞(CD3e-/CD49b+として特徴付けられる)のレベルに対する抗PD1抗体、組成物X、またはそれらの組み合わせの効果を示すグラフである。組成物Xを経口または静脈内に投与した。p<0.05;**p<0.01;および***p<0.001。P値は、各々の介入群と対照群(ビヒクル処置した)との比較によって得た。#p<0.05;##p<0.01;###p<0.001。P値は、各々の介入群と抗PD1抗体処置群との比較によって得た。
図19図19は、腫瘍浸潤性骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)プロファイリングを示すグラフである。p<0.05;**p<0.01;および***p<0.001。組成物Xを経口または静脈内に投与した。P値は、各々の介入群と対照群(ビヒクル処置した)との比較によって得た。#p<0.05;##p<0.01;###p<0.001。P値は、各々の介入群と抗PD1抗体処置群との比較によって得た。
図20図20は、ビヒクル対照、抗PD1抗体、組成物X、またはそれらの組み合わせで処置したマウスにおける腫瘍部位でのサイトカインIL-2、IFN-γ、およびIL-15のレベルを示すグラフを含む。p<0.05;**p<0.01;および***p<0.001。組成物Xを経口または静脈内に投与した。P値は、各々の介入群とビヒクル対照群との比較によって得た。#p<0.05;##p<0.01;###p<0.001。P値は、各々の介入群と抗PD1抗体処置群との比較によって得た。
図21図21は、ビヒクル対照、抗PD1抗体、組成物X、またはそれらの組み合わせで処置したマウスにおける腫瘍部位でのサイトカインIL-6、TNF-α、およびIL-5のレベルを示すグラフを含む。p<0.05;**p<0.01;および***p<0.001。組成物Xを経口または静脈内に投与した。P値は、各々の介入群とビヒクル対照群との比較によって得た。#p<0.05;##p<0.01;###p<0.001。P値は、各々の介入群と抗PD1抗体処置群との比較によって得た。
図22図22は、ビヒクル対照、抗PD1抗体、組成物X、またはそれらの組み合わせで処置したマウスにおけるサイトカインIFN-γ、IL-15、IL-6、IL-4およびIL-1の血中濃度を示すグラフを含む。p<0.05;**p<0.01;および***p<0.001。組成物Xを経口または静脈内に投与した。P値は、各々の介入群とビヒクル対照群との比較によって得た。
図23図23は、ビヒクル、抗PD1抗体、発酵ダイズ組成物(組成物X)、または抗PD1抗体と組成物Xとの組み合わせで処置したマウスの腸における腫瘍サイズと特定の細菌種の存在量との間の相関を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
免疫チェックポイントモジュレーターは、多くの研究においてがん細胞増殖を効果的に阻害することが示されている。本開示において提供される研究により、驚くべきことに、発酵ダイズ組成物、例えば、本明細書に記載される例示的なダイズ発酵組成物、組成物Xが、免疫チェックポイントモジュレーター(例えば、抗PD1抗体などの免疫チェックポイント阻害剤)の抗がん作用を首尾よく増強することが実証される。いくつかの場合、免疫チェックポイントモジュレーターおよび発酵ダイズ組成物の同時使用は、動物がんモデルにおけるがん増殖の抑制において相乗効果を示した。理論に束縛されるものではないが、この研究の結果は、発酵組成物が腸内微生物叢を調節するように免疫チェックポイント阻害剤を促進し得ることを示し、これはがんの発生に関与するとして当該技術分野において報告された。これらの予期せぬ結果は、発酵ダイズ組成物が、がんをより効果的に治療するために、阻害剤などの1つ以上の免疫チェックポイントモジュレーターと同時使用され得ることを示す。
【0017】
したがって、免疫チェックポイントモジュレーターおよび発酵ダイズ組成物の同時使用を含む併用がん療法、ならびにこのような使用のためのキットが本明細書に提供される。
【0018】
I.併用がん療法のための薬剤
本明細書に記載される併用がん療法は、免疫チェックポイントモジュレーターおよび活性剤としての発酵ダイズ組成物などの発酵組成物の使用を含む。
【0019】
(a)免疫チェックポイントモジュレーター
免疫チェックポイントタンパク質とは、自己寛容を維持するために、ならびに付随する組織損傷を最小化するために末梢組織における生理学的免疫応答の持続時間および大きさを調節するために、免疫系を調節する(例えば、免疫系のシグナルを上げるかまたは下げるかのいずれか)多くの調節経路に関与する分子を指す。典型的には、免疫チェックポイントタンパク質はがん細胞(例えば、腫瘍)によって調節不全にされる。いかなる特定の理論にも束縛されることを望まないが、免疫チェックポイントタンパク質は、例えば、Pardollら、Nature Reviews Cancer、12:252-264、2012によって記載されているように、抗がん療法としてモジュレーター(活性化剤または阻害剤)で標的化され得る。
【0020】
免疫細胞シグナル伝達経路は、細胞における以下の例示的な受容体/リガンド対のうちの1つ以上によって媒介され得る:PD1/PDL1、PD1/PDL2、CD28/B7-1(CD80)、CD28/B7-2(CD86)、CTLA4/B7-1(CD80)、CILA4/B7-2(CD86)、4-1BB(CD137)/4-1BBL(CD137L)、ICOS/B7RP1、CD40/CD40L、ヘルペスウイルス侵入メディエーター(HVEM)/BおよびT-リンパ球アテニュエーター(BTLA);OX40/OX40L、CD27/CD70、GITR/GITRL、KIR/MHC、リンパ球活性化遺伝子3(LAG3またはCD223)/MHC、A型肝炎ウイルス細胞受容体2(HAVCR2;T細胞免疫グロブリンおよびムチンドメイン含有-3(TIM3)としても知られている)/TIM3リガンド、IgおよびITIMドメインを有するT細胞免疫受容体(TIGIT)/CD96、ならびにTIGIT/CD226。免疫細胞シグナル伝達経路はまた、以下の例示的なサイトカイン/ケモカインおよびそれらの同種の細胞表面受容体のうちの1つ以上によって媒介され得る:インターロイキン2(IL-2)/CD122、アデノシン/アデノシンA2A受容体(A2AR)、インターロイキン6(IL-6)/IL6R(CD126)、インターロイキン10(IL-10)/IL-10R、インターロイキン15(IL-15)/IL-15R、形質転換増殖因子β(TGFβ)/TGFβR、およびマクロファージコロニー刺激因子1(CSF-1)/CSF-1R。他の免疫チェックポイントとしては、限定されないが、KIR2DL、VISTA、HLLA2、TLIA、DNAM-1、CEACAM1、CD155、およびインドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)、例えばIDO1が挙げられる。上記の免疫チェックポイント分子のいずれも、本明細書に記載される抗がん療法のための標的であり得る。
【0021】
本明細書に使用される場合、「免疫チェックポイントモジュレーター」とは、対照ビヒクルと比較して細胞中の免疫チェックポイントタンパク質(例えば、本明細書に記載されるものいずれか)の活性を変化させる作用物質を指す。「モジュレーター」という用語は、最も広い意味で本明細書において使用され、1つ以上の免疫チェックポイント分子によって調節されるシグナル伝達経路(本明細書に記載される分子によって媒介されるシグナル伝達経路を含む)を部分的または完全に変化させる任意の分子を含む。
【0022】
いくつかの場合、免疫チェックポイントモジュレーターは、そのチェックポイント分子によって媒介される活性を低減させ、遅延させ、停止させ、および/または阻止するチェックポイント分子の阻害剤である。「阻害剤」という用語は、本明細書において最も広い意味で使用され、本明細書に記載される分子によって媒介される調節経路を含む、1つ以上の免疫チェックポイント分子によって調節されるシグナル伝達経路を部分的または完全に遮断し、阻害し、または中和する任意の分子を含む。適切な阻害分子としては、特に、アンタゴニスト抗体または抗体断片、天然のポリペプチド、ペプチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、小有機分子、組換えタンパク質またはペプチドなどの断片またはアミノ酸配列バリアントが挙げられる。
【0023】
他の場合、免疫チェックポイントモジュレーターは、そのチェックポイント分子によって媒介される活性を増強および改善するチェックポイント分子の活性化因子である。「活性化因子」という用語は、本明細書において最も広い意味で使用され、本明細書に記載される分子によって媒介されるシグナル伝達経路を含む、1つ以上の免疫チェックポイント分子によって調節されるシグナル伝達経路を増強する任意の分子を含む。適切な活性化因子としては、アゴニスト抗体または抗体断片、小有機分子、組換えタンパク質またはペプチドなどが挙げられる。いくつかの場合、活性化因子は、チェックポイントタンパク質のアゴニスト抗体、例えば、MEDI0562(ヒト化OX40アゴニスト抗体)、MEDI6469(ネズミOX4アゴニスト);およびMEDI6383(OX40アゴニスト)であり得る。
【0024】
このようなモジュレーターを同定するための方法は当該技術分野において周知である。例えば、候補モジュレーターを適切な免疫チェックポイント標的と接触させることができ、その免疫チェックポイントによって媒介されるシグナル伝達の強度を従来のアッセイによって測定することができる。ブランク対照と比較して、候補モジュレーターの存在下でのシグナル伝達における検出可能な変化は、候補モジュレーターが免疫チェックポイント分子の調節活性を有することを示す。
【0025】
本明細書に記載される免疫チェックポイントモジュレーターは、例えば、チェックポイントタンパク質をコードする核酸の転写もしくは翻訳を減少させることによって、またはチェックポイントタンパク質活性を阻害もしくは遮断することによって、またはその両方によって、免疫チェックポイントタンパク質によって媒介される免疫細胞におけるシグナル伝達を妨げる阻害剤であり得る。免疫チェックポイント阻害剤の例としては、限定されないが、チェックポイントモジュレーターとチェックポイントタンパク質との間の相互作用がチェックポイントタンパク質活性または発現の減少または停止をもたらすような、アンチセンスポリヌクレオチド、干渉RNA、触媒RNA、RNA-DNAキメラ、チェックポイントタンパク質特異的アプタマー、抗チェックポイントタンパク質抗体(例えば、全長抗体またはその抗原結合断片)、チェックポイント結合小分子、チェックポイント結合ペプチド、およびチェックポイントタンパク質に特異的に結合する他のポリペプチド(限定されないが、任意選択で1つ以上のさらなるドメインに融合され得る、その同族リガンドのチェックポイント結合断片を含む)が挙げられる。いくつかの場合、チェックポイントタンパク質モジュレーターは、別のチェックポイントタンパク質活性に影響を及ぼすことなく、1つのチェックポイントタンパク質活性に拮抗または中和し得ることが、当業者によって理解される。例えば、本明細書の特定の方法において使用するための望ましいチェックポイントモジュレーターは、もしあれば、チェックポイントタンパク質と別の同族リガンドとの間の相互作用に影響を及ぼすことなく、または最小限の影響を及ぼして、チェックポイントタンパク質と1つの同族リガンドとの間の結合相互作用を破壊するチェックポイントモジュレーターであり得る。
【0026】
本明細書に記載される免疫チェックポイントモジュレーターは、免疫細胞におけるチェックポイントタンパク質によって媒介されるシグナル伝達の強度を、少なくとも20%またはそれ以上、例えば、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%またはそれ以上減少させ得る。チェックポイントタンパク質に対するこのようなモジュレーターの調節活性は、従来の方法によって決定することができる。
【0027】
抗チェックポイント抗体
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される併用抗がん療法に使用するための免疫チェックポイントモジュレーターは、免疫チェックポイント分子に特異的に結合し、例えば、同族リガンドへのその結合を妨げることによって、その生物活性を阻害する抗体である。本明細書に使用される場合、「抗体」という用語は、限定されないが、ポリクローナル、モノクローナル、ヒト化、キメラ、Fab断片、Fv断片、F(ab’)断片、およびF(ab’)2断片、ならびに一本鎖抗体(scFv)、融合タンパク質および抗体の抗原結合部位を含む他の合成タンパク質が挙げられる。
【0028】
免疫チェックポイントタンパク質の活性を抑制する抗体のいずれも、当該技術分野において公知の従来の方法または本明細書に開示される方法によって調製され得る。
【0029】
いくつかの実施形態において、標的抗原(本明細書に記載されるPD1、PDL1、PDL2、CTLA4および任意の他のものなどの免疫チェックポイントタンパク質)に特異的な抗体は、従来のハイブリドーマ技術によって作製され得る。必要に応じてKLHなどの担体タンパク質と結合する、完全長標的抗原またはその断片は、その抗原に結合する抗体を生成するための宿主動物を免疫化するために使用することができる。宿主動物の免疫化の経路およびスケジュールは一般に、本明細書にさらに記載されるように、抗体刺激および産生のための確立された従来の技術に従う。マウス、ヒト化、およびヒト抗体を産生するための一般的な技術は当該技術分野において公知であり、本明細書に記載される。ヒトを含む任意の哺乳動物対象またはそれら由来の抗体産生細胞は、ヒトハイブリドーマ細胞株を含む、哺乳動物の産生の基礎として役立つように操作され得ることが意図される。典型的に、宿主動物は、腹腔内、筋肉内、経口、皮下、足底内、および/または皮内に、本明細書に記載されるものを含む免疫原の量で接種される。
【0030】
ハイブリドーマは、Kohler,B.およびMilstein,C.(1975)Nature 256:495-497の一般的な体細胞ハイブリダイゼーション技術を使用して、またはBuck,D.W.ら、In Vitro、18:377-381(1982)によって改変されたように、リンパ球および不死化骨髄腫細胞から調製され得る。限定されないが、X63-Ag8.653およびSalk Institute、Cell Distribution Center、San Diego、Calif.、USAからのものを含む、利用可能な骨髄腫株がハイブリダイゼーションにおいて使用され得る。一般に、この技術は、ポリエチレングリコールなどのフソゲンを使用して、または当業者に周知の電気的手段によって、骨髄腫細胞およびリンパ球様細胞を融合することを含む。融合後、細胞を融合媒体から分離し、ヒポキサンチン-アミノプテリン-チミジン(HAT)培地などの選択増殖培地中で増殖させて、ハイブリダイズしていない親細胞を除去する。血清を補充したまたは補充していない、本明細書に記載の培地のいずれも、モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを培養するために使用することができる。細胞融合技術の別の代替として、EBV不死化B細胞が、本明細書に記載される免疫チェックポイントタンパク質に特異的なモノクローナル抗体を産生するために使用され得る。ハイブリドーマは増殖させられ、所望によりサブクローニングされ、上清は従来の免疫アッセイ法(例えば、ラジオイムノアッセイ、酵素イムノアッセイ、または蛍光イムノアッセイ)により抗免疫原活性についてアッセイされる。
【0031】
抗体の供給源として使用され得るハイブリドーマは、免疫チェックポイント分子によって媒介されるシグナル経路(例えば、阻害シグナル経路)を妨げ得るモノクローナル抗体を産生する全ての誘導体、親ハイブリドーマの子孫細胞を包含する。このような抗体を産生するハイブリドーマは、公知の手順を使用してin vitroまたはin vivoで増殖させることができる。モノクローナル抗体は所望により、硫酸アンモニウム沈殿、ゲル電気泳動、透析、クロマトグラフィー、および限外濾過などの従来の免疫グロブリン精製手順によって、培養培地または体液から単離され得る。存在する場合、望ましくない活性は、例えば、固相に付着した免疫原から作製された吸着剤上で調製物を流し、免疫原から所望の抗体を溶出または放出することによって除去することができる。二官能性または誘導体化剤、例えば、マレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基を介するコンジュゲート)、N-ヒドロキシスクシンイミド(リシン残基を介する)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、SOCl、またはR1N=C=NR(式中RおよびR1は異なるアルキル基である)を使用した、標的抗原または免疫される種において免疫原性であるタンパク質、例えば、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシチログロブリン、またはダイズトリプシン阻害剤にコンジュゲートした標的アミノ酸配列を含有する断片による宿主細胞の免疫化により、抗体の集団(例えば、モノクローナル抗体)を得ることができる。
【0032】
所望であれば、目的の抗体(モノクローナルまたはポリクローナル)(例えば、ハイブリドーマによって産生される)を配列決定してもよく、次いで、ポリヌクレオチド配列を発現または増殖のためにベクター内にクローニングしてもよい。目的の抗体をコードする配列は宿主細胞中のベクターに維持され得、次いで、宿主細胞は将来の使用のために増殖および凍結され得る。あるいは、ポリヌクレオチド配列は、抗体を「ヒト化する」ための、または抗体の親和性(親和性成熟)もしくは他の特徴を改善するための遺伝子操作のために使用され得る。例えば、定常領域は、抗体がヒトにおける臨床試験および処置において使用される場合、免疫応答を回避するために、ヒト定常領域により類似するように操作され得る。抗体配列を遺伝子操作して、標的抗原に対するより大きな親和性およびチェックポイントシグナル伝達経路の阻害におけるより大きな有効性を得ることが所望され得る。1つ以上のポリヌクレオチド変化が抗体に対してなされ得、標的抗原に対するその結合特異性をなお維持し得ることは、当業者に明らかである。
【0033】
いくつかの例において、本明細書に記載される抗チェックポイント抗体は完全ヒト抗体であり得る。完全ヒト抗体は、特異的ヒト免疫グロブリンタンパク質を発現するように操作された市販の動物(例えば、マウス)を使用することによって得られ得る。より望ましい(例えば、完全ヒト抗体)またはより強力な免疫応答を産生するように設計されるトランスジェニック動物もまた、ヒト化抗体またはヒト抗体の生成のために使用され得る。このような技術の例は、Amgen,Inc.(Fremont、Calif.)製のXenoMouse(商標)、ならびにMedarex,Inc.(Princeton、NJ)製のHuMAb-Mouse(商標)およびTC Mouse(商標)である。別の代替では、抗体はファージディスプレイまたは酵母技術によって組換え的に作製され得る。例えば、米国特許第5,565,332号;同第5,580,717号;同5,733,743号;および同第6,265,150号;ならびにWinterら、(1994)Annu.Rev.Immunol.12:433-455を参照のこと。あるいは、ファージディスプレイ技術(McCaffertyら、(1990)Nature 348:552-553)が、免疫化されていないドナー由来の免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーから、in vitroでヒト抗体および抗体断片を産生するために使用され得る。
【0034】
完全な抗体(全長抗体)の抗原結合断片は慣用の方法によって調製することができる。例えば、F(ab’)2断片は抗体分子のペプシン消化によって生成され得、Fab断片はF(ab’)2断片のジスルフィド架橋を還元することによって生成され得る。
【0035】
ヒト化抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、および二重特異性抗体などの遺伝子操作された抗体は、例えば、従来の組換え技術によって産生され得る。1つの例において、標的抗原に特異的なモノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手順を使用して(例えば、モノクローナル抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合し得るオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)容易に単離され、配列決定され得る。ハイブリドーマ細胞がそのようなDNAの好ましい供給源として役立つ。単離されると、DNAは、組換え宿主細胞におけるモノクローナル抗体の合成を得るために、1つ以上の発現ベクター内に配置され得、次いで、該発現ベクターは、大腸菌(E.coli)細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、または別様で免疫グロブリンタンパク質を産生しない骨髄腫細胞などの宿主細胞内にトランスフェクトされる。例えば、PCT公開番号WO87/04462を参照のこと。次いで、DNAは、例えば、相同ネズミ配列の代わりにヒト重鎖定常ドメインおよびヒト軽鎖定常ドメインについてのコード配列を置換することによって(Morrisonら、(1984)Proc.Nat.Acad.Sci.81:6851)、または非免疫グロブリンポリペプチドについてのコード配列の全てもしくは一部を免疫グロブリンコード配列に共有結合することによって修飾され得る。このようにして、標的抗原の結合特異性を有する、「キメラ」または「ハイブリッド」抗体などの遺伝子操作された抗体を調製することができる。
【0036】
他の例では、抗チェックポイント抗体はヒト化抗体である。ヒト化抗体とは、特異的キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、または非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むそれらの抗原結合断片である非ヒト(例えば、ネズミ)抗体に由来する抗体を指す。ほとんどの場合、ヒト化抗体はヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)であり、受容者の相補性決定領域(CDR)由来の残基は、所望の特異性、親和性および能力を有するマウス、ラットまたはウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)のCDR由来の残基によって置換される。いくつかの場合、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置換される。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、移入されたCDRまたはフレームワーク配列にも見出されないが、抗体性能をさらに洗練および最適化するために含まれる残基を含んでもよい。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、非ヒト免疫グロブリンのものに対応するCDR領域の全てまたは実質的に全てならびにFR領域の全てまたは実質的に全てはヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである。ヒト化抗体はまた、最適には、免疫グロブリン定常領域またはドメイン(Fc)(典型的にはヒト免疫グロブリンのもの)の少なくとも一部を含む。抗体は、国際公開第99/58572号に記載されるように修飾されたFc領域を有してもよい。ヒト化抗体の他の形態は、元の抗体に対して改変された1つ以上のCDR(1、2、3、4、5、6)を有し、これらは、元の抗体からの1つ以上のCDR「に由来する」1つ以上のCDRとも呼ばれる。ヒト化抗体はまた、親和性成熟を含んでもよい。ヒト化抗体を構築するための方法もまた、当該技術分野において周知である。例えば、Queenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、86:10029-10033(1989)を参照のこと。
【0037】
いくつかの実施形態において、チェックポイント阻害などのチェックポイント調節抗体はキメラ抗体であり得る。「キメラ抗体」の産生のために開発された技術は当該技術分野において周知である。例えば、Morrisonら(1984) Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81、6851;Neubergerら(1984) Nature 312、604;およびTakedaら(1984) Nature 314:452を参照のこと。
【0038】
他の実施形態において、阻害抗体などのチェックポイント調節抗体は、一本鎖抗体断片(scFv)であり得る。一本鎖抗体は、重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列および軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列を連結することによって、組換え技術により調製され得る。好ましくは、可動性リンカーが2つの可変領域の間に組み込まれる。あるいは、一本鎖抗体を産生するために記載されている技術(米国特許第4,946,778号および同第4,704,692号)が、ファージまたは酵母scFvライブラリー、および免疫チェックポイントタンパク質に特異的なscFvクローンを産生するように適合され得、これは慣用的な手順に従うライブラリーから同定され得る。陽性クローンをさらなるスクリーニングに供して、免疫チェックポイントタンパク質の活性を阻害するものを同定することができる。
【0039】
当該技術分野において公知であり、本明細書に記載されている方法に従って得られる抗体は、当該技術分野において周知の方法を使用して特徴付けることができる。例えば、1つの方法は、抗原が結合するエピトープ、または「エピトープマッピング」を同定することである。例えば、HarlowおよびLane、第11章、Using Antibodies、Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY、1999に記載されているように、抗体-抗原複合体の結晶構造を解明すること、競合アッセイ、遺伝子断片発現アッセイ、および合成ペプチドベースのアッセイを含む、タンパク質上のエピトープの位置をマッピングおよび特徴付けるための当該技術分野において公知の多くの方法が存在する。さらなる例において、エピトープマッピングは、抗体が結合する配列を決定するために使用され得る。エピトープは直線状エピトープ(すなわち、アミノ酸の単一のストレッチに含まれる)、または必ずしも単一のストレッチに含まれなくてもよいアミノ酸の三次元相互作用によって形成される立体構造エピトープ(一次構造直線状配列)であり得る。種々の長さ(例えば、少なくとも4~6アミノ酸長)のペプチドが単離または合成され(例えば、組換え的に)、抗体との結合アッセイのために使用され得る。別の例において、抗体が結合するエピトープは、標的抗原配列に由来する重複ペプチドを使用し、抗体による結合を決定することにより、系統的スクリーニングにおいて決定することができる。遺伝子断片発現アッセイによれば、標的抗原をコードするオープンリーディングフレームは、ランダムに、または特定の遺伝子構造によって断片化され、抗原の発現された断片と、試験される抗体との反応性が決定される。遺伝子断片は、例えば、PCRによって産生され、次いで、放射性アミノ酸の存在下で、in vitroでタンパク質に転写され、翻訳され得る。次いで、放射性標識抗原断片への抗体の結合を、免疫沈降およびゲル電気泳動によって決定する。ある種のエピトープは、ファージ粒子の表面に提示されたランダムペプチド配列の大きなライブラリー(ファージライブラリー)を使用しても同定できる。あるいは、重複するペプチド断片の定義されたライブラリーを、簡単な結合アッセイにおいて試験抗体への結合について試験することができる。さらなる例において、抗原結合ドメインの突然変異誘発、ドメイン交換実験およびアラニン系統的変異導入法が、エピトープ結合に要求され、十分な、および/または必要な残基を同定するために実施され得る。例えば、ドメイン交換実験は、免疫チェックポイントタンパク質の種々の断片が密接に関連しているが、抗原的に異なるタンパク質由来の配列と置換されている(交換されている)、標的抗原の変異体を使用して実施することができる。突然変異チェックポイントポリペプチドへの抗体の結合を評価することにより、抗体結合に対する特定の抗原断片の重要性を評価することができる。
【0040】
あるいは、競合アッセイは、抗体が他の抗体と同じエピトープに結合するかどうかを決定するために、同じ抗原に結合することが知られている他の抗体を使用して実施され得る。競合アッセイは当業者に周知である。
【0041】
本明細書に記載される抗チェックポイント抗体の重鎖および軽鎖をコードする核酸は、1つの発現ベクターにクローニングされ得、各ヌクレオチド配列は適切なプロモーターに作動可能に連結される。1つの例において、重鎖および軽鎖をコードするヌクレオチド配列の各々は別個のプロモーターに作動可能に連結される。あるいは、重鎖および軽鎖をコードするヌクレオチド配列は、重鎖および軽鎖の両方が同じプロモーターから発現されるように、単一のプロモーターと作動可能に連結され得る。必要な場合、内部リボソーム侵入部位(internal ribosomal entry site)(IRES)は、重鎖および軽鎖をコードする配列の間に挿入され得る。
【0042】
いくつかの例において、抗体の2つの鎖をコードするヌクレオチド配列は、同じまたは異なる細胞内に導入され得る2つのベクター内にクローニングされる。2つの鎖が異なる細胞において発現される場合、それらの各々はそのようなものを発現する宿主細胞から単離され得、単離された重鎖および軽鎖は抗体の形成を可能にする適切な条件下で混合され、インキュベートされ得る。
【0043】
一般に、抗体の1つまたは全ての鎖をコードする核酸配列は、当該技術分野において公知の方法を使用して、適切なプロモーターと作動可能に連結された適切な発現ベクター内にクローニングされ得る。例えば、ヌクレオチド配列およびベクターは、互いに対合し得、リガーゼと一緒に結合され得る各分子上の相補的末端を作製するために適切な条件下で制限酵素と接触され得る。あるいは、合成核酸リンカーが遺伝子の末端にライゲーションされ得る。これらの合成リンカーはベクター中の特定の制限部位に対応する核酸配列を含有する。発現ベクター/プロモーターの選択は、抗体を産生する際に使用するための宿主細胞の種類に依存する。
【0044】
限定されないが、サイトメガロウイルス(CMV)中間初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルスLTR、HIV-LTR、HTLV-1LTRなどのウイルスLTR、シミアンウイルス40(SV40)初期プロモーター、大腸菌lac UV5プロモーター、および単純ヘルペスtkウイルスプロモーターを含む、種々のプロモーターが、本明細書に記載される抗体の発現のために使用され得る。
【0045】
調節可能なプロモーターもまた使用され得る。このような調節可能なプロモーターとしては、lacオペレーター保有哺乳動物細胞プロモーターからの転写を調節するための転写モジュレーターとしての大腸菌由来のlacリプレッサーを使用するもの[Brown,M.ら、Cell、49:603-612(1987)]、テトラサイクリンリプレッサー(tetR)を使用するもの[Gossen,M.およびBujard,H.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:5547-5551(1992);Yao,F.ら、Human Gene Therapy、9:1939-1950(1998);Shockelt,P.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、92:6522-6526(1995)]が含まれる。他の系としては、アストラジオール、RU486、ジフェノールムリスレロン、またはラパマイシンを使用するFK506ダイマー、VP16またはp65が挙げられる。誘導可能な系は、Invitrogen、ClontechおよびAriadから入手可能である。
【0046】
オペロンと共にリプレッサーを含む調節可能なプロモーターが使用され得る。一実施形態において、大腸菌由来のlacリプレッサーは、テトラサイクリンリプレッサー(tetR)を、tetR-哺乳動物細胞転写活性化因子融合タンパク質、tTa(tetR-VP16)を作製するために転写活性化因子(VP16)と組み合わせて、哺乳動物細胞における遺伝子発現を制御するためのtetR-tetオペレーター系を作製するためにヒトサイトメガロウイルス(hCMV)主要中間初期プロモーターに由来するtetO保有最小プロモーターと組み合わせて、lacオペレーター保有哺乳動物細胞プロモーターからの転写を調節するための転写モジュレーターとして機能し得る[M.Brownら、Cell、49:603-612(1987)];GossenおよびBujard(1992);[M.Gossenら、Natl.Acad.Sci.USA、89:5547-5551(1992)]。一実施形態において、テトラサイクリン誘導性スイッチが使用される。tetR-哺乳動物細胞転写因子融合誘導体ではなく、テトラサイクリンリプレッサー(tetR)単独が、テトラサイクリンオペレーターがCMVIEプロモーターのTATAエレメントの下流に適切に位置する場合、哺乳動物細胞における遺伝子発現を調節するための強力なトランスモジュレーターとして機能し得る(Yaoら、Human Gene Therapy)。このテトラサイクリン誘導性スイッチの1つの特定の利点は、その調節可能な効果を達成するために、いくつかの場合、細胞に対して毒性であり得る、テトラサイクリンリプレッサー-哺乳動物細胞トランス活性化因子またはリプレッサー融合タンパク質の使用を必要としないことである(Gossenら、Natl.Acad.Sci.USA、89:5547-5551(1992);Shockettら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、92:6522-6526(1995))。
【0047】
さらに、ベクターは、例えば、以下のいくつかまたは全てを含有し得る:哺乳動物細胞における安定または一過性トランスフェクタントの選択のためのネオマイシン遺伝子などの選択マーカー遺伝子;高レベルの転写のためのヒトCMVの中間初期遺伝子からのエンハンサー/プロモーター配列;mRNA安定性のためのSV40からの転写終結およびRNAプロセシングシグナル;適切なエピソーム複製のためのSV40ポリオーマ複製起点およびColE1;内部リボソーム結合部位(IRESes)、多用途の多重クローニング部位;ならびにセンスおよびアンチセンスRNAのin vitro転写のためのT7およびSP6 RNAプロモーター。適切なベクターおよび導入遺伝子を含有するベクターを産生するための方法は当該技術分野において周知であり、利用可能である。
【0048】
本明細書に記載の方法を実施するのに有用なポリアデニル化シグナルの例としては、限定されないが、ヒトコラーゲンIポリアデニル化シグナル、ヒトコラーゲンIIポリアデニル化シグナル、およびSV40ポリアデニル化シグナルが挙げられる。
【0049】
抗体のいずれかをコードする核酸を含む1つ以上のベクター(例えば、発現ベクター)は、抗体を産生するために適切な宿主細胞に導入され得る。宿主細胞は、抗体またはその任意のポリペプチド鎖の発現に適した条件下で培養することができる。このような抗体またはそのポリペプチド鎖は、従来の方法、例えば、アフィニティー精製を介して培養細胞によって(例えば、細胞または培養上清から)回収され得る。必要であれば、抗体のポリペプチド鎖は、抗体の産生を可能にする適切な期間、適切な条件下でインキュベートすることができる。
【0050】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される抗体を調製する方法は、本明細書にも記載される抗チェックポイント抗体の重鎖および軽鎖の両方をコードする組換え発現ベクターを含む。組換え発現ベクターは、従来の方法、例えば、リン酸カルシウム媒介トランスフェクションによって、適切な宿主細胞(例えば、dhfr-CHO細胞)に導入され得る。陽性形質転換体宿主細胞は、抗体を形成する2つのポリペプチド鎖の発現を可能にする適切な条件下で選択および培養することができ、その2つのポリペプチド鎖は細胞または培地から回収することができる。必要な場合、宿主細胞から回収された2つの鎖は、抗体の形成を可能にする適切な条件下でインキュベートすることができる。
【0051】
一例では、2つの組換え発現ベクターが提供され、一方は抗チェックポイント抗体の重鎖をコードし、他方は抗チェックポイント抗体の軽鎖をコードする。2つの組換え発現ベクターの両方は、従来の方法、例えば、リン酸カルシウム媒介トランスフェクションによって、適切な宿主細胞(例えば、dhfr-CHO細胞)に導入され得る。あるいは、発現ベクターの各々が適切な宿主細胞に導入されてもよい。陽性形質転換体は、抗体のポリペプチド鎖の発現を可能にする適切な条件下で選択および培養することができる。2つの発現ベクターが同じ宿主細胞に導入される場合、その中で産生される抗体は、宿主細胞または培養培地から回収することができる。必要であれば、ポリペプチド鎖を宿主細胞または培養培地から回収し、次いで抗体の形成を可能にする適切な条件下でインキュベートすることができる。2つの発現ベクターが異なる宿主細胞に導入される場合、それらの各々は対応する宿主細胞から、または対応する培養培地から回収することができる。次いで、2つのポリペプチド鎖を、抗体の形成に適した条件下でインキュベートすることができる。
【0052】
標準的な分子生物学技術を使用して、組換え発現ベクターを調製し、宿主細胞をトランスフェクトし、形質転換体を選択し、宿主細胞を培養し、培地から抗体を回収する。例えば、いくつかの抗体は、プロテインAまたはプロテインG結合マトリクスを用いるアフィニティークロマトグラフィーによって単離され得る。
【0053】
本明細書に記載される抗チェックポイントポリペプチド抗体の重鎖、軽鎖、またはその両方をコードする核酸のいずれか、そのようなものを含有するベクター(例えば、発現ベクター);およびベクターを含む宿主細胞は本開示の範囲内である。
【0054】
他の免疫チェックポイントモジュレーター
いくつかの実施形態において、チェックポイントモジュレーターは、低分子干渉RNA(siRNA)ショートヘアピンRNA(shRNA)などの干渉RNAである。いくつかの実施形態において、チェックポイントモジュレーターはチェックポイントタンパク質のmRNAに結合し、その翻訳をブロックするか、またはRNA干渉を介してmRNAを分解する低分子干渉RNA(siRNA)である。例示的な低分子干渉RNAは、Hannonら、Nature、418(6894):244-51(2002);Brummelkampら、Science 21(2002);およびSuiら、Proc.Natl Acad.Sci.USA 99、5515-5520(2002)に記載されている。RNA干渉(RNAi)は、サイレンシングされた遺伝子と配列が相同な二本鎖(dsRNA)によって開始される動物における配列特異的な転写後遺伝子サイレンシングのプロセスである。siRNAは一般にRNA二重鎖であり、それぞれの鎖の長さは20~25(例えば19~21)塩基対である。いくつかの実施形態において、チェックポイントモジュレーターは、チェックポイントタンパク質またはその断片の核酸(例えば、mRNA)に相補的であるショートヘアピンRNA(shRNA)である。shRNAは、典型的には19~29塩基対のステム、少なくとも4ヌクレオチド(nt)のループ、および任意選択で3’末端にジヌクレオチドオーバーハングを含む。対象におけるshRNAの発現は、shRNAをコードするベクター(例えば、プラスミドまたはウイルスもしくは細菌ベクター)の送達によって得ることができる。siRNAおよびshRNAは、当該技術分野において公知のまたは商業的に利用可能な任意の方法を使用して設計することができる(例えば、DharmaconおよびLife Technologiesから入手可能な製品を参照のこと)。siRNAはまた、標的mRNAに対するその安定性および結合親和性を少なくとも改善するために塩基修飾および/または結合修飾などの1つ以上の化学修飾を含んでもよい。
【0055】
いくつかの実施形態において、チェックポイントモジュレーターは、チェックポイントタンパク質の核酸(例えば、mRNA)と相補的であるアンチセンスオリゴヌクレオチドである。アンチセンスオリゴヌクレオチドは一般に、一本鎖核酸(DNA、RNAまたはハイブリッドRNA-DNA分子)であり、チェックポイントタンパク質のmRNAの一部などの標的核酸配列と相補的である。標的配列と結合することによって、RNA-RNA、DNA-DNA、またはRNA-DNA二重鎖が形成され、それにより、転写、プロセシング、ポリ(A)付加、複製、翻訳を遮断すること、またはmRNA分解の促進などの細胞の調節機構を促進することなどによって標的核酸の機能またはレベルを阻害する。いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、長さが10~40、12~35、もしくは15~35塩基、またはそれらの間の任意の整数である。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、2-アミノプリン、2,6-ジアミノプリン(2-アミノ-dA)、5-ブロモdU、5-メチルdC、デオキシイノシン、ロックド核酸(LNA)、5-ニトロインドール、2’-O-メチル塩基、ヒドロキシメチルdC、2’フルオロ塩基などの1つ以上の修飾塩基を含んでもよい。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ホスホロチオエート結合などの1つ以上の修飾された結合を含んでもよい。
【0056】
いくつかの実施形態において、チェックポイントモジュレーターは、チェックポイントタンパク質の核酸(例えば、mRNA)と相補的であり、核酸を切断するリボザイムである。リボザイムは、部位特異的な様式で核酸を切断するRNAまたはRNA-タンパク質複合体である。リボザイムは、エンドヌクレアーゼ活性を保有する特異的な触媒ドメインを有する。本開示のリボザイムは、米国特許第5,254,678号に記載されているものなどの合成リボザイムであってもよい。これらの合成リボザイムは別々のハイブリダイズ領域および触媒領域を有し;したがって、ハイブリダイズ領域は、チェックポイントタンパク質に対応する本明細書に記載される配列などの標的配列を認識するように設計され得る。
【0057】
本明細書に記載されるsiRNA、shRNA、リボザイム、およびアンチセンスオリゴヌクレオチドは、チェックポイントタンパク質の核酸(例えば、mRNA)、またはその一部と相補的であり得る。相補性は100%の相補性を含むが、必ずしも1つ以上の位置でのミスマッチを除外せず、例えば、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の相補性をもたらすことを理解されたい。
【0058】
適用可能な場合、チェックポイントモジュレーターはベクターから発現され得、これは抗がん治療を必要とする対象にチェックポイントモジュレーターを送達するために使用され得る。本明細書で使用される「ベクター」は、チェックポイントタンパク質を発現する細胞などの、対象における細胞へのチェックポイントモジュレーター(例えば、shRNA、siRNA、リボザイム、アンチセンスオリゴヌクレオチド、タンパク質、ペプチド、または抗体)の移入を容易にすることができる任意のビヒクルである。一般に、ベクターとしては、限定されないが、プラスミド、ファージミド、ウイルス、およびチェックポイントモジュレーターをコードする配列の挿入または組み込みによって操作されているウイルスまたは細菌源に由来する他のビヒクルを含むが、これらに限定されない。ウイルスベクターとしては、限定されないが、以下のウイルス:レトロウイルス;レンチウイルス;アデノウイルス;アデノ随伴ウイルス;SV40型ウイルス;ポリオーマウイルス;エプスタイン-バールウイルス;パピローマウイルス;ヘルペスウイルス;ワクシニアウイルス;ポリオウイルス由来の核酸配列が挙げられる。当業者は、名前が付いていないが当該技術分野において知られている他のベクターを容易に利用することができる。
【0059】
ウイルスベクターは、非必須遺伝子がチェックポイントモジュレーターをコードする配列で置換されている非細胞変性真核生物ウイルスに基づいてもよい。非細胞変性ウイルスとしては、レトロウイルス(例えば、レンチウイルス)が挙げられ、そのライフサイクルはゲノムウイルスRNAのDNAへの逆転写、その後の宿主細胞DNAへのプロウイルスの組み込みを含む。レトロウイルスはヒト遺伝子治療試験のために承認されている。最も有用なものは、複製欠損性である(すなわち、所望のタンパク質の合成を指令することができるが、感染性粒子を製造することができない)レトロウイルスである。このような遺伝的に改変されたレトロウイルス発現ベクターは、in vivoでの遺伝子の高効率形質導入のための一般的な有用性を有する。複製欠損レトロウイルスを産生するための標準的なプロトコル(プラスミドへの外因性遺伝物質の組み込み、プラスミドを満たされたパッケージング細胞のトランスフェクション、パッケージング細胞株による組換えレトロウイルスの産生、組織培養培地からのウイルス粒子の収集、およびウイルス粒子による標的細胞の感染のステップを含む)は、当該技術分野において公知である。
【0060】
他のウイルスベクターとしては、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルスが挙げられ、これらは遺伝子治療におけるヒトの使用についても承認されている二本鎖DNAウイルスである。アデノ随伴ウイルスは、複製欠損性であるように操作され得、広範囲の細胞型および種に感染し得る。
【0061】
他のベクターとしては、プラスミドベクターが挙げられる。プラスミドベクターは当該技術分野において広範に記載されており、当業者に周知である。例えば、Sambrookら Molecular Cloning:A Laboratory Manual. Cold Spring Harbor Laboratory Press;第4版(2012年、6月15日)を参照のこと。例示的なプラスミドとしては、pBR322、pUC18、pUC19、pRC/CMV、SV40、およびpBlueScriptが挙げられる。他のプラスミドは当業者に周知である。さらに、プラスミドは、免疫チェックポイントモジュレーターをコードする配列などのDNAの特定の断片を除去および付加するために、制限酵素およびライゲーション反応を使用してカスタム設計されてもよい。
【0062】
いくつかの実施形態において、チェックポイントモジュレーター核酸配列は、異種調節領域、例えば、異種プロモーターの制御下にあり得る。プロモーターは、例えば、CMVプロモーター、ActBプロモーター、またはユビキチンBプロモーターなどのユビキタスプロモーターであり得る。プロモーターはまた、組織特異的プロモーターまたは合成プロモーターであり得る。プロモーターは当該技術分野において周知であり、商業的に入手可能である(例えば、InvivoGenから入手可能な製品を参照のこと)。
【0063】
いくつかの実施形態において、チェックポイントモジュレーターは、非抗体ペプチドまたはタンパク質であり得る。ペプチドまたはタンパク質は、関与するチェックポイントタンパク質について天然リガンドと競合することなどによって、チェックポイントシグナル伝達を妨げるアミノ酸配列を含み得る。タンパク質およびペプチドは当該技術分野において公知の任意の方法を使用して、例えば、チェックポイントタンパク質への結合について、またはリガンドへの結合からのチェックポイントタンパク質の阻害についてタンパク質またはペプチドのライブラリーをスクリーニングすることによって、設計され得る。いくつかの例において、非抗体ペプチドまたはタンパク質モジュレーターは、可溶性受容体、例えば、Fc融合可溶性受容体であり得る。
【0064】
いくつかの実施形態において、チェックポイントモジュレーターは、チェックポイントタンパク質自体の断片またはバリアント、例えば、その同族リガンドに結合するが、対応するシグナルを伝達しない断片であり得る。この種類のチェックポイントモジュレーターはドミナントネガティブモジュレーターであり得る。
【0065】
いくつかの実施形態において、チェックポイントモジュレーターは、典型的に、5,000kDa未満の分子量を有する、小有機分子などの小分子である。適切な小分子には、免疫チェックポイント分子またはその断片に結合するものが含まれ、化合物の大きなライブラリーをスクリーニングするなどの方法(Beck-Sickinger & Weber(2001)Combinational Strategies in Biology and Chemistry(John Wiley & Sons、Chichester、Sussex);核磁気共鳴による構造-活性相関関係(Shukerら(1996)「Discovering high-affinity ligands for proteins:SAR by NMR.Science 274:1531-1534);コードされた自己集合化学ライブラリー(Melkkoら(2004)「Encoded self-assembling chemical libraries.」 Nature Biotechnol.22:568-574);鋳型DNA化学(Gartnerら(2004)「DNA-tem plated organic synthesis and selection of a library of macrocycles. Science 305:1601-1605);動的コンビナトリアル化学(Ramstrom & Lehn(2002) 「Drug discovery by dynamic combinatorial libraries.」 Nature Rev.Drug Discov.1:26-36);テザリング(連結)(Arkin & Wells(2004)「Small-molecule modulators of protein-protein interactions:progressing towards the dream.Nature Rev.Drug Discov.3:301-317);および高速スクリーニング(Muckenschnabelら(2004)「SpeedScreen:label-free liquid chromatography-mass spectrometry-based high-throughput screening for the discovery of orphan protein ligands.」 Anal.Biochem.324:241-249)によって同定され得る。典型的に、小分子はナノモル範囲の免疫チェックポイントタンパク質に対する解離定数を有する。
【0066】
チェックポイントモジュレーターを含有する医薬組成物
免疫チェックポイントモジュレーター、例えば、抗体、コード核酸または核酸セット、このようなものを含むベクター、siRNA、アンチセンスRNA、およびこのようなものを保有するベクター、ならびに小分子モジュレーターのいずれかは、標的疾患(例えば、がん)を治療する際に使用するための医薬組成物を形成するために薬学的に許容される担体(賦形剤)と混合され得る。「許容される」は、担体が組成物の活性成分と適合性でなければならず(好ましくは、活性成分を安定化することができ)、治療される対象に有害ではないことを意味する。緩衝液を含む薬学的に許容される賦形剤(担体)は、当該技術分野において周知である。例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy 20th Ed.(2000)Lippincott Williams and Wilkins、Ed.K.E.Hooverを参照のこと。
【0067】
本方法において使用される医薬組成物は、凍結乾燥製剤または水溶液の形態で、薬学的に許容される担体、賦形剤、または安定剤を含むことができる。(Remington:The Science and Practice of Pharmacy 20th Ed.(2000)Lippincott Williams and Wilkins、Ed.K.E.Hoover)。許容される担体、賦形剤、または安定剤は、使用する用量および濃度で受容者に対して非毒性であり、リン酸塩、クエン酸塩、および他の有機酸などの緩衝剤;アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化剤;保存剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル、またはベンジルアルコール;メチルまたはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリジンなどのアミノ酸;単糖類、二糖類、およびグルコース、マンノース、またはデキストランを含む他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース、またはソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Znタンパク質錯体);ならびに/あるいはTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)またはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤を含んでもよい。
【0068】
いくつかの例において、本明細書に記載される医薬組成物は、Epsteinら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:3688(1985);Hwangら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4030(1980);ならびに米国特許第4,485,045号および同第4,544,545号に記載されているものなどの当該技術分野において公知の方法によって調製され得る抗体(またはコード核酸)を含有するリポソームを含む。循環時間が向上したリポソームは、米国特許第5,013,556号に開示されている。特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロールおよびPEG誘導体化ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)を含む脂質組成物を用いた逆相蒸発法によって生成することができる。リポソームは、所望の直径を有するリポソームを生じるように規定された孔径のフィルターを通して押し出される。
【0069】
抗体またはコード核酸はまた、コロイド薬物送達システム(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルション、ナノ粒子およびナノカプセル)、またはマクロエマルションにおいて、例えば、コアセルベーション技術によって、または界面重合によって調製されたマイクロカプセル、例えば、それぞれヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチン-マイクロカプセルおよびポリ-(メチルメタクリレート(methylmethacylate))マイクロカプセル中に封入されてもよい。このような技術は当該技術分野において公知であり、例えば、Remington、The Science and Practice of Pharmacy 20th Ed.Mack Publishing(2000)を参照のこと。
【0070】
他の例において、本明細書に記載される医薬組成物は、徐放性形式で製剤化することができる。徐放性調製物の適切な例には、抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透過性マトリクスが含まれ、このマトリクスは成形物品、例えば、フィルム、またはマイクロカプセルの形態である。徐放性マトリクスの例としては、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L-グルタミン酸および7-エチル-L-グルタミン酸のコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニル、LUPRON DEPOT(商標)(乳酸-グリコール酸コポリマーおよび酢酸ロイプロリドからなる注射用ミクロスフェア)などの分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、スクロース酢酸イソブチレート、およびポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸が挙げられる。
【0071】
in vivo投与のために使用される医薬組成物は無菌でなければならない。これは、例えば、滅菌濾過膜を通した濾過によって容易に達成される。治療用抗体組成物は一般に、滅菌アクセスポートを有する容器、例えば、皮下注射針によって穿刺可能なストッパーを有する静脈注射用溶液バッグまたはバイアル中に配置される。
【0072】
本明細書に記載される医薬組成物は、経口、非経口もしくは直腸投与、または吸入もしくは吹送による投与のための、錠剤、丸剤、カプセル、粉末、顆粒、溶液もしくは懸濁液、または坐剤などの単位投薬形態であってもよい。
【0073】
錠剤などの固体組成物を調製するために、主活性成分を、医薬担体、例えば、コーンスターチ、ラクトース、スクロース、ソルビトール、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウムまたはガム、および他の医薬希釈剤、例えば、水などの従来の錠剤化成分と混合して、本発明の化合物の均一な混合物、またはその非毒性の薬学的に許容される塩を含有する固体予備処方組成物を形成することができる。これらの予備処方組成物を均一であると言及する場合、活性成分が組成物全体に均一に分散され、それにより組成物が、錠剤、丸剤およびカプセルなどの等しく効果的な単位投薬形態に容易に細分され得ることを意味する。次に、この固体予備処方組成物は、本発明の活性成分0.1~約500mgを含有する、上記の種類の単位投薬形態に細分される。新規組成物の錠剤または丸剤は、コーティングするか、または別の方法で配合して、長時間作用の利点を与える投薬形態を提供することができる。例えば、錠剤または丸剤は、内部投薬成分および外部投薬成分を含んでもよく、後者は、前者を覆うエンベロープの形態である。2つの成分は、胃内での崩壊に抵抗する働きをする腸溶層によって分離され得、内部成分が十二指腸内に無傷で通過するか、または放出が遅延されることを可能にする。そのような腸溶層またはコーティングには、多くの高分子酸および高分子酸とシェラック、セチルアルコールおよび酢酸セルロースのような物質との混合物を含む多様な物質が使用されてもよい。
【0074】
好適な界面活性剤としては、特に、ポリオキシエチレンソルビタン(例えば、Tween(商標)20、40、60、80または85)および他のソルビタン(例えば、Span(商標)20、40、60、80または85)などの非イオン性薬剤が挙げられる。界面活性剤を含む組成物は、好都合には、0.05~5%の界面活性剤を含み、0.1~2.5%であってもよい。必要であれば、他の成分、例えばマンニトールまたは他の薬学的に許容されるビヒクルを加えてもよいことが理解されるであろう。
【0075】
好適なエマルションは、Intralipid(商標)、Liposyn(商標)、Infonutrol(商標)、Lipofundin(商標)およびLipiphysan(商標)などの市販の脂肪エマルションを使用して調製することができる。活性成分は、予め混合したエマルション組成物に溶解してもよいか、あるいは油(例えば、大豆油、ベニバナ油、綿実油、ゴマ油、コーン油またはアーモンド油)およびリン脂質(例えば、卵リン脂質、大豆リン脂質または大豆レシチン)と水を混合して形成されるエマルションに溶解してもよい。エマルションの張度を調整するために、他の成分、例えばグリセロールまたはグルコースを加えてもよいことが理解されるであろう。適切なエマルションは、典型的には、20%以下、例えば、5~20%の油を含有する。
【0076】
エマルション組成物は、抗体をIntralipid(商標)またはその成分(大豆油、卵リン脂質、グリセリンおよび水)と混合することによって調製されたものであってもよい。
【0077】
吸入または吹送のための医薬組成物には、薬学的に許容される水性もしくは有機溶媒中の溶液および懸濁液、またはそれらの混合物、ならびに粉末が含まれる。液体または固体組成物は、上記のような適切な薬学的に許容される賦形剤を含有してもよい。いくつかの実施形態において、組成物は、局所的または全身的効果のために経口または鼻呼吸経路によって投与される。
【0078】
好ましくは無菌の薬学的に許容される溶媒中の組成物はガスの使用によって噴霧されてもよい。噴霧溶液は噴霧装置から直接吸い込まれてもよいか、または噴霧装置はフェイスマスク、テントもしくは間欠的陽圧呼吸器に取り付けられてもよい。溶液、懸濁液または粉末組成物は、適切な様式で製剤を送達するデバイスから、好ましくは経口または経鼻で投与されてもよい。
【0079】
(b)マメ科植物の発酵組成物
発酵は、酵母および細菌などの微生物が、嫌気性条件下で炭水化物を酸(例えば、乳酸などの有機酸)、アルコール(例えば、エタノール)および/または他の代謝産物に変換する代謝過程である。本明細書に記載される併用抗がん療法において使用するための発酵組成物は、1種以上の適切な微生物、例えば共生微生物叢の集団による1種以上のマメ科植物の発酵産物である。このような発酵成分は、例えば従来の発酵プロセスにより、1種以上の適切な微生物によって、適切な出発物質、例えば、マメ科植物、その部分(例えば、葉、果実、種子など)、またはそれらの抽出物を発酵させることから誘導される多数の代謝産物を含んでもよい。適切な微生物としては、限定されないが、酵母および乳酸菌が挙げられる。例えば、米国特許出願公開第20060251748号(それらの関連する開示は、本明細書において参照される目的または主題について本明細書に参照として組み込まれる)を参照されたい。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される発酵組成物は、乳酸、酢酸、および3-アミノイソ酪酸などの代謝産物の1つまたは複数を含んでもよい。例えば、発酵組成物は、約5~20重量%(例えば、5~10重量%、10~20重量%、5~15重量%、または15~20重量%)の乳酸を含んでもよい。あるいは、またはさらに、発酵組成物は、5重量%未満の酢酸、3-アミノイソ酪酸、またはその両方(例えば、1~5重量%、0.5~5重量%、1~3重量%、0.5~3重量%、または3~5重量%)を含んでもよい。
【0080】
例示的なマメ科植物としては、限定されないが、マメ、エンドウマメ、アルファルファ、ムラサキツメクサ、ソラマメ、ベッチ、およびササゲが挙げられる。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される併用抗がん療法における使用のための発酵組成物は、酵母および乳酸菌などの1種以上の好適な微生物によるダイズまたはその抽出物(例えば、水抽出物)の発酵を介して生成される多数の代謝産物を含む、発酵ダイズ組成物である。当該技術分野において周知のように、このような代謝産物は、本開示の範囲内でもある代替プロセスによって生成することができる。
【0081】
発酵ダイズ組成物などの本明細書に記載される発酵組成物のいずれも、マメ科植物、その一部、またはその抽出物を、マメ科植物の代謝産物を産生するためにマメ科植物の成分の発酵を可能にする適切な条件下で本明細書に記載されるものなどの1種以上の好適な微生物によって、発酵させることによって調製することができる。例えば、発酵組成物は、適切な条件下(例えば、20~45℃(例えば、20~25℃、20~30℃、25~30℃、25~35℃、30~45℃、または30~40℃)の適切な温度、適切な期間(例えば、2~5日、4~8日、および5~10日などの2~10日)で、マメ科植物の一部の水性抽出物を含む培地中で、1種以上の好適な微生物を培養することによって調製することができる。発酵組成物を調製する際に使用するための1種以上の微生物は共生的であってもよく、共生的とは、一緒に生存し、互いに利益をもたらす多様な生物を指す。次いで、培養物の上清を回収し、濾過して固体成分を除去し、滅菌することができる。必要に応じて、上清は、濃縮された発酵組成物溶液を得るために従来の方法(例えば、透析)によって濃縮されてもよい。
【0082】
一例において、発酵組成物は発酵ダイズ組成物であり、これは、従来の方法によってダイズの水性抽出物を得て、少なくとも1種の乳酸菌および少なくとも1種のサッカロミセス(Saccharomyces)の混合物で水性抽出物を、適切な条件下で適切な期間発酵させて、発酵液体を形成し、発酵液体を収集、濾過、および滅菌し、そして滅菌および発酵した液体から水を除去して濃縮発酵ダイズ組成物を形成することによって調製することができる。
【0083】
いくつかの例において、発酵組成物は液体形態である。他の例において、発酵組成物は乾燥形態、例えば、粉末であってもよく、これは、慣用的な実施(例えば、噴霧乾燥または凍結乾燥)によって調製され得る。
【0084】
発酵組成物を調製するための方法はまた、例えば、米国特許第6,685,973号、同第6,855,350号、同第6,733,801号、および米国特許出願公開第20120058104号に記載されている(これらの各々の関連する開示は、本明細書中で参照される目的または主題のために本明細書に参照として援用される)。
【0085】
本明細書に記載される発酵組成物のいずれも、本明細書に提供される説明に従って医薬組成物として製剤化することができる。
【0086】
他の実施形態において、発酵組成物は、健康食品、栄養補助食品、または医療用食品として製剤化されてもよく、これらは免疫チェックポイントモジュレーターを受けているか、または免疫チェックポイントモジュレーターで処置されている患者を含む、がん患者における免疫を改善するための液体および固体/半固体物質の任意の種類であってもよい。健康食品は、食品(例えば、茶ベースの飲料、ジュース、ソフトドリンク、コーヒー、ミルク、ゼリー、クッキー、シリアル、チョコレート、スナックバー、ハーブ抽出物、乳製品(例えば、アイスクリーム、およびヨーグルト))、食品/栄養補助食品、または栄養補助製剤であってもよい。
【0087】
発酵ダイズ組成物などの発酵組成物のいずれかを含有する、本明細書に記載される健康食品、栄養補助食品、および/または医療用食品は、本明細書に記載される発酵組成物に1つ以上の利点を与える1つ以上の食用担体を含んでもよい。食用担体の例としては、デンプン、シクロデキストリン、マルトデキストリン、メチルセルロース、カルボメトキシ(carbonmethoxy)セルロース、キサンタンガム、およびそれらの水溶液が挙げられる。他の例としては、当業者に知られているように、溶媒、分散媒体、コーティング、界面活性剤、酸化防止剤、保存剤(例えば、抗菌剤、抗真菌剤)、等張剤、吸収遅延剤、安定剤、ゲル、バインダー、賦形剤、崩壊剤、滑剤、甘味剤、香味剤、染料(例えば、材料)およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0088】
いくつかの例において、発酵組成物は栄養補助組成物であってもよく、これは、食物源由来の成分を含有し、食物中に見出される基本的な栄養価に加えて、さらなる健康上の利益を与える組成物を指す。本明細書に記載される栄養補助組成物は、発酵組成物ならびに良好な健康を促進し、ならびに/または発酵組成物の安定性および生物活性を向上させる追加の成分およびサプリメントを含む。
【0089】
栄養補助組成物の作用は、迅速および/もしくは短期であり得るか、または本明細書に記載されるような長期の健康目的(例えば、がんに対する対象における免疫を改善し、免疫チェックポイントモジュレーターの抗がん作用を増強する)を達成するのを補助し得る。栄養補助組成物は、例えば、栄養補助食品または医薬製剤として、食用材料中に含有されてもよい。栄養補助食品として、ビタミン、ミネラルまたはアミノ酸などの追加の栄養素が含まれてもよい。組成物はまた、飲料または食品、例えば、茶、ソフトドリンク、ジュース、ミルク、コーヒー、クッキー、シリアル、チョコレート、およびスナックバーであってもよい。所望により、組成物は、ソルビトール、マルチトール、水素化グルコースシロップおよび水素化デンプン加水分解物、高フルクトースコーンシロップ、サトウキビ糖、ビート糖、ペクチン、またはスクラロースなどの甘味料を添加することにより甘味化することができる。
【0090】
いくつかの実施形態において、発酵ダイズ組成物などの本明細書に記載される発酵組成物は、医療用食品として製剤化することができる。医療用食品は、経腸的に消費または投与されるように製剤化された食品である。そのような食品は、通常、本明細書に記載されるものなどの標的疾患の特定の食事管理のために医師の監視の下で使用される。一部の場合、そのような医療用食品組成物は、治療を必要とする患者(例えば、がんに罹患しているヒト患者)のために、(自然状態で使用される天然に存在する食品とは対照的に)特別に製剤化され、処理される。いくつかの例において、本明細書に記載される医療用食品組成物は、症状を管理するか、または疾患もしくは状態のリスクを低減するために、全体的な食事の一部として医師によって単に推奨されるもののうちの1つではない。
【0091】
本明細書に記載される発酵組成物を含む、本明細書に記載される医療用食品組成物のいずれも、以下に詳述するように、液体溶液;粉末、バー、ウェーハ、適切な液体または適切なエマルション中の懸濁液の形態であってもよい。天然に存在するか、または合成(天然に存在しない)のいずれかであってもよい少なくとも1つの担体は、発酵組成物に1つ以上の利点(例えば、安定性、バイオアベイラビリティ、および/または生物活性)を与える。本明細書に記載される担体のいずれも、医療用食品組成物を作製するために使用することができる。いくつかの実施形態において、医療用食品組成物は、限定されないが、天然香味料、人工香味料、主要微量および超微量ミネラル、ミネラル、ビタミン、オートムギ、ナッツ、スパイス、ミルク、卵、塩、小麦粉、レシチン、キサンタンガムおよび/または甘味剤を含む群から選択される1つまたは複数の追加の成分をさらに含んでもよい。医療用食品組成物は適切な容器に入れられてもよく、この容器は本明細書に記載されるものなどの少なくとも追加の治療剤をさらに含んでもよい。
【0092】
本明細書に開示される発酵組成物は溶液の形態であってもよい。例えば、発酵組成物は、緩衝液、溶剤、希釈剤、不活性担体、油、またはクリームなどの媒体において提供することができる。いくつかの例において、発酵組成物は、場合により、アルコールなどの非水性共溶媒を含有する水溶液中に存在する。発酵組成物はまた、粉末、ペースト、ゼリー、カプセル、または錠剤の形態であってもよい。ラクトースおよびトウモロコシデンプンは一般的に、カプセルのための希釈剤として、および錠剤のための担体として使用される。ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤は、典型的に、錠剤を形成するために添加される。
【0093】
発酵組成物は、適切な投与経路、例えば、経口投与のために製剤化することができる。経口投与に関して、組成物は、例えば、錠剤またはカプセルの形態をとってもよく、これらは、結合剤(例えば、アルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤(例えば、ラクトース、微結晶セルロースまたはリン酸水素カルシウム);滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルクまたはシリカ);崩壊剤(例えば、ジャガイモデンプンまたはデンプングリコール酸ナトリウム);または湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)などの許容される賦形剤を用いた従来の手段によって調製される。錠剤は当該技術分野において周知の方法によってコーティングされてもよい。バーおよび他の咀嚼可能な製剤も含まれる。
【0094】
いくつかの例において、発酵組成物は液体形態であってもよく、1つ以上の食用担体は、限定されないが、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール)、脂質(例えば、トリグリセリド、植物油、リポソーム)、またはそれらの組み合わせを含む溶媒または分散媒体であってもよい。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって;必要な粒径の維持によって;例えば、液体ポリオールまたは脂質などの担体中への分散によって;例えば、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤の使用によって;またはそれらの組み合わせによって維持され得る。多くの場合、例えば、糖、塩化ナトリウムまたはそれらの組み合わせなどの等張剤を含むことが望ましい。
【0095】
経口投与のための液体調製物は、例えば、溶液、シロップまたは懸濁液の形態であってもよいか、またはそれらは、使用前に水または他の適切なビヒクルで構成するための乾燥製品として提供することができる。一実施形態において、液体調製物は、フルーツジュースと共に投与するために製剤化することができる。このような液体調製物は、懸濁化剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体または水素化食用脂);乳化剤(例えば、レシチンまたはアカシア);非水性ビヒクル(例えば、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコールまたは分画植物油);および防腐剤(例えば、メチルまたはプロピル-p-ヒドロキシベンゾエート、ベンゾエートまたはソルベート)などの薬学的に許容される添加剤を用いた従来の手段によって調製され得る。
【0096】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される発酵組成物および免疫チェックポイントモジュレーターは1つの組成物中に製剤化されてもよい。
【0097】
II.がんを治療するキット
本開示はまた、本明細書に記載される免疫チェックポイントモジュレーターのいずれか、およびまた、本明細書に記載される発酵組成物(例えば、発酵ダイズ組成物)のいずれかを用いてがんを治療する際に使用するためのキットを提供する。このようなキットは、免疫チェックポイントモジュレーターおよび発酵組成物を含む1つ以上の容器を含んでもよい。例えば、キットは、抗PD1抗体またはそのコード核酸、および発酵ダイズ組成物を含んでもよい。
【0098】
いくつかの実施形態において、キットは、本明細書に記載される方法のいずれかに従って使用するための指示書を含むことができる。含まれる指示書は、例えば、本明細書に記載される方法のいずれかに従って、がん(例えば、結腸がんまたは肺がん)などの増殖性疾患を治療し、それらの発症を遅延させ、またはそれらを緩和するための、免疫チェックポイントモジュレーターおよび発酵組成物の投与の説明を含んでもよい。キットは、個体が疾患を有するかどうかの特定に基づいて、治療に適した個体を選択する説明をさらに含んでもよい。さらに他の実施形態において、指示書は、疾患のリスクのある個体に本開示の1つ以上の薬剤を投与する説明を含む。
【0099】
発酵組成物(例えば、発酵ダイズ組成物)と組み合わされた抗チェックポイント抗体などの免疫チェックポイントモジュレーターの使用に関する指示書は、一般に、意図される治療のための投薬量、投薬計画、および投与経路に関する情報を含む。容器は、単位用量、バルクパッケージ(例えば、複数用量パッケージ)またはサブユニット用量であってもよい。本発明のキットに提供される指示書は、典型的に、ラベルまたは添付文書(例えば、キットに含まれる紙シート)に書かれた指示書であるが、機械可読可能な指示書(例えば、磁気または光記憶ディスクに保持された指示書)もまた許容可能である。
【0100】
ラベルまたは添付文書は、組成物ががんを治療し、緩和し、および/またはがんの発症を遅延させるために使用されることを示すことができる。本明細書に記載される方法のいずれかを実施するための指示書が提供されてもよい。
【0101】
本発明のキットは適切なパッケージングである。適切なパッケージングには、限定されないが、バイアル、ボトル、ジャー、可撓性パッケージング(例えば、密封されたマイラー(Mylar)またはプラスチックバッグ)などが含まれる。また、吸入器、鼻腔内投与装置(例えば、噴霧器)などの特定の装置、またはミニポンプなどの注入装置と組み合せて使用するためのパッケージも意図される。キットは滅菌アクセスポートを有してもよい(例えば、容器は、静脈注射用溶液バッグまたは皮下注射針によって穿刺可能なストッパーを有するバイアルであってもよい)。容器もまた、滅菌アクセスポートを有してもよい(例えば、容器は、静脈注射用溶液バッグまたは皮下注射針によって穿刺可能なストッパーを有するバイアルであってもよい)。
【0102】
キットは、任意選択で、緩衝液および解釈情報などの追加の構成要素を提供することができる。通常、キットは、容器と、容器上または容器に付随するラベルまたは添付文書とを含む。いくつかの実施形態において、本発明は、上記のキットの内容物を含む製造物品を提供する。
【0103】
併用療法
本明細書に記載される免疫チェックポイントモジュレーターおよび発酵組成物の組み合わせを使用する併用がん療法が本明細書に提供される。本明細書において使用される場合、併用療法という用語は、逐次様式でのこれらの薬剤(例えば、免疫チェックポイントモジュレーターおよび発酵組成物)の投与を包含し、すなわち、各治療剤は異なる時間に投与され、ならびにこれらの治療剤、または少なくとも2つの治療剤の投与は実質的に同時にされる。各薬剤の連続的または実質的に同時の投与は、限定されないが、経口経路、静脈内経路、筋肉内経路、皮下経路、および粘膜組織を介した直接吸収を含む、任意の適切な経路によって影響を受け得る。薬剤は同じ経路または異なる経路によって投与されてもよい。例えば、第1の薬剤(例えば、発酵組成物)を経口投与することができ、第2の薬剤(例えば、抗PD1抗体などの抗チェックポイント抗体)を静脈内投与することができる。さらに、選択された組み合わせの薬剤は静脈内注射によって投与されてもよく、一方、組み合わせの他の薬剤は経口的に投与されてもよい。あるいは、例えば、薬剤の2つ以上が静脈内注射または皮下注射によって投与されてもよい。
【0104】
本明細書に使用される場合、「逐次」という用語は、特に指定されない限り、規則的な順番または順序によって特徴付けられることを意味し、例えば、投薬計画が抗体および発酵組成物などの免疫チェックポイントモジュレーターの投与を含む場合、逐次投薬計画は、発酵組成物の投与の前、それと同時に、それと実質的に同時に、またはその後に、免疫チェックポイントモジュレーターの投与を含んでもよいが、両方の薬剤は規則的な順番または順序で投与される。「別個」という用語は、特に指定されない限り、一方を他方から離しておくことを意味する。「同時に」という用語は、特に指定されない限り、同時に起こるかまたは行われることを意味し、すなわち、本開示の薬剤が同時に投与される。「実質的に同時に」という用語は、薬剤が互いに数分以内(例えば、互いに10分以内)に投与されることを意味し、連続投与と同様に共同投与を包含することを意図するが、投与が連続であれば、それは短期間(例えば、医師が2つの化合物を別々に投与するのにかかる時間)の間だけ分離される。本明細書に使用される場合、同時投与および実質的に同時投与は互換的に使用される。逐次投与とは、本明細書に記載される薬剤の時間的に分離された投与を指す。
【0105】
併用療法はまた、他の生物学的に活性な成分(例えば、異なる抗腫瘍剤)および非薬物療法(例えば、手術または放射線治療)とのさらなる組み合わせでの、本明細書に記載される薬剤(例えば、免疫チェックポイントモジュレーターおよび発酵組成物)の投与を包含し得る。併用療法が放射線治療をさらに含む場合、放射線治療は、治療剤と放射線治療との組み合わせの同時作用からの有益な効果が達成される限り、任意の適切な時間に実施され得る。例えば、適切な場合、有益な効果は、放射線治療が治療剤の投与から一時的に、おそらく数日または数週間除かれている場合に、なお達成される。
【0106】
本明細書に記載される免疫チェックポイントモジュレーターおよび発酵組成物の任意の組み合わせは、がんを治療するための任意の順序で使用され得ることが理解されるべきである。本明細書に記載される組み合せは、限定されないが、がんの進行を阻害もしくは阻止する有効性、組み合わせの別の薬剤の副作用を緩和する有効性、またはがん関連症状を緩和する有効性を含む、多くの要因に基づいて選択することができる。例えば、本明細書に記載される併用療法は、併用の各個々のメンバーに関連する副作用のいずれかを低減し得る。いくつかの例を以下の表に提供する。例えば、発酵組成物は、免疫チェックポイントモジュレーター(例えば、抗PD1抗体)を含む治療の過程で、毎日使用されてもよい。
【0107】
本明細書に記載される免疫チェックポイントモジュレーターおよび発酵組成物の組み合わせのいずれも、がんの治療に有用である。本明細書に使用される場合、「がん」という用語は、固形がんおよび非固形がんを含む、腫瘍性もしくは悪性細胞群、増殖、または転移によって媒介される医学的状態を指す。がんの例としては、限定されないが、肺がん、腎臓がん、胃がん、乳がん、脳がん、前立腺がん、肝細胞がん、膵臓がん、子宮頸がん、卵巣がん、肝がん、膀胱がん、尿路がん、甲状腺がん、黒色腫、頭頸部がん、結腸がん、白血病、リンパ腫、皮膚がん、胃がん、食道がん、骨髄腫、直腸がん、骨がん、子宮がん、前立腺がん、および血液悪性腫瘍が挙げられる。
【0108】
本明細書に開示される方法を実施するために、本明細書に記載される有効量の抗がん剤の組み合わせは、静脈内投与などの適切な経路を介して、例えば、ボーラスとしてまたはある期間にわたる持続注入によって、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、関節内、滑膜内、髄腔内、経口、吸入または局所経路によって、治療を必要とする対象(例えば、ヒト)に投与することができる。ジェットネブライザーおよび超音波ネブライザーを含む液体製剤用の市販のネブライザーが投与に有用である。液体製剤は直接噴霧することができ、凍結乾燥粉末は再構成後に噴霧することができる。あるいは、本明細書に記載される免疫チェックポイントモジュレーター(例えば、抗体)および/または発酵組成物は、フルオロカーボン製剤および定量吸入器を使用してエアロゾル化されてもよいか、または凍結乾燥および粉砕粉末として吸入されてもよい。
【0109】
「対象」、「個体」および「患者」という用語は、本明細書において互換的に使用され、治療のために評価されるおよび/または治療される哺乳動物を指す。対象はヒトであってもよいが、他の哺乳動物、特にヒト疾患のための実験モデルとして有効な哺乳動物、例えばマウス、ラット、ウサギ、イヌなども含む。
【0110】
治療を必要とするヒト対象は、増殖性疾患(例えば、がん)などの標的疾患/障害を有する、危険性がある、または有する疑いのあるヒトであってもよい。標的疾患または障害を有する対象は、慣用の医学的検査、例えば、臨床検査、器官機能検査、CTスキャン、または超音波によって特定され得る。このような標的疾患/障害のいずれかを有すると疑われる対象は、疾患/障害の1つ以上の症状を示し得る。疾患/障害のリスクのある対象は、その疾患/障害のリスク因子の1つ以上を有する対象であり得る。本明細書に記載される方法および組成物は、任意の増殖性疾患または障害を治療するために使用され得る。いくつかの実施形態において、増殖性疾患はがんである。いくつかの実施形態において、がんは固形腫瘍によって特徴付けられる。
【0111】
本明細書に使用される場合、「有効量」とは、単独で、または1種以上の他の活性剤と併用して、対象に治療効果を与えるのに必要とされる各々の活性剤(例えば、抗PD1抗体または発酵組成物などの免疫チェックポイントモジュレーター)の量を指す。いくつかの実施形態において、治療効果は、がん細胞の増殖を抑制すること、および/または腫瘍負荷を低減することである。いくつかの実施形態において、発酵組成物の量は、免疫チェックポイントモジュレーターの抗がん作用を増強するのに有効である。他の実施形態において、発酵組成物の量は、がん細胞に対する対象の免疫を増強するのに有効である。いくつかの実施形態において、治療効果は、腫瘍増殖の予防または阻害である。いくつかの実施形態において、治療効果は、1種以上の薬剤/薬物に関連する副作用の減少である。例えば、PD-1経路を阻害することから生じ得る副作用(例えば、疲労、末梢浮腫、悪寒、発熱、下痢、悪心、腹痛、咳、呼吸困難、発疹、そう痒症、白斑、関節痛、筋痛、背痛、頭痛、めまい、および/または増加したアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST))は、別の薬剤のモジュレーター(例えば、本明細書に記載される免疫チェックポイントモジュレーターおよび発酵組成物)との同時治療によって低減され得る。
【0112】
モジュレーターの組み合わせの量が治療効果を達成したかどうかの決定は当業者に明らかであろう。有効量は、当業者によって認識されるように、治療される特定の状態、状態の重症度、年齢、身体的状態、大きさ、性別および体重を含む個々の患者のパラメーター、治療期間、併用療法の性質(もしあれば)、特定の投与経路、ならびに医療従事者の知識および見解における同様の要因に依存して、変化する。これらの要因は当業者に周知であり、慣用の実験のみで対処することができる。個々の成分またはそれらの組み合わせの最大用量、すなわち、十分な医学的判断に従って最高の安全用量が使用されることが一般に好ましい。
【0113】
半減期などの実験に基づいた考察は一般に用量の決定の一因となる。例えば、ヒト化抗体または完全ヒト抗体などのヒト免疫系に適合する抗体が、抗体の半減期を延ばし、抗体が宿主の免疫系によって攻撃されるのを防ぐために使用されてもよい。投与頻度は、治療の過程にわたって決定され、調節されてもよく、一般に、しかし必ずしも必要ではないが、標的疾患/障害の治療および/または抑制および/または改善および/または遅延に基づく。あるいは、抗体の持続的連続放出製剤が適切であってもよい。持続放出を達成するための種々の製剤および装置が当該技術分野において公知である。
【0114】
一例において、本明細書に記載される抗体などの免疫チェックポイントモジュレーターについての投薬量は、モジュレーターの1回以上の投与を与えられた個体において経験的に決定され得る。個体には、モジュレーターの増分投与量を与える。アンタゴニストの有効性を評価するために、疾患/障害の指標に従うことができる。
【0115】
一般に、本明細書に記載される抗体のいずれかの投与に関して、最初の候補投薬量は約2mg/kgであり得る。本開示の目的のために、典型的な1日用量は、上記の要因に応じて、約0.1μg/kg~3μg/kg~30μg/kg~300μg/kg~3mg/kg~30mg/kg~100mg/kgまたはそれ以上のいずれかの範囲であり得る。数日以上にわたる反復投与に関して、状態に応じて、症状の所望の抑制が起こるまで、または標的疾患もしくは障害、またはそれらの症状を緩和するのに十分な治療レベルが達成されるまで、治療が持続される。例示的な投薬レジメンは、約2mg/kgの初期用量、続いて約1mg/kgの抗体の週間維持用量、または続いて1週間おきに約1mg/kgの維持用量を投与することを含む。しかしながら、医師が達成することを望む薬物動態学的減衰のパターンに応じて、他の投薬レジメンが有用である場合がある。例えば、週に1~4回の投与が意図される。いくつかの実施形態において、約3μg/mg~約2mg/kg(例えば、約3μg/mg、約10μg/mg、約30μg/mg、約100μg/mg、約300μg/mg、約1mg/kg、および約2mg/kg)の範囲の投薬が使用され得る。いくつかの実施形態において、投薬頻度は、毎週、2週間毎、4週間毎、5週間毎、6週間毎、7週間毎、8週間毎、9週間毎、または10週間毎;あるいは毎月、2ヶ月毎、または3ヶ月毎、またはそれ以上である。この治療の進行は、従来の技術及びアッセイによって容易にモニターされる。投薬レジメン(使用される抗体を含む)は、経時的に変化させてもよい。
【0116】
いくつかの実施形態において、正常体重の成人患者に関しては、約0.3~5.00mg/kgの範囲の用量が投与されてもよい。特定の投薬レジメン、すなわち、投与量、投与時期および反復は、特定の個体およびその個体の病歴、ならびに個々の薬剤の特性(薬剤の半減期、および当該技術分野において周知の他の考慮事項など)に依存する。
【0117】
本開示の目的のために、本明細書に記載される抗体の適切な投薬量は、利用される特定の抗体(複数も含む)、および/または非抗体ペプチド(またはその組成物)、疾患/障害の種類および重症度、抗体が予防目的または治療目的のために投与されるかどうか、以前の療法、患者の臨床歴およびアンタゴニストに対する応答、ならびに主治医の裁量に依存する。典型的に、臨床医は、所望の結果を達成する投薬量に達するまで、抗体を投与する。いくつかの実施形態において、所望の結果は血栓症の減少である。投薬量が所望の結果をもたらしたかどうかを決定する方法は当業者に明らかであろう。免疫チェックポイントモジュレーターおよび/または発酵組成物の投与は、例えば、受容者の生理学的状態、投与の目的が治療的であるか又は予防的であるか、および当業者に公知の他の要因に依存して、連続的であっても、断続的であってもよい。抗体の投与は事前に選択された期間にわたって本質的に連続的であってもよく、または、例えば、標的疾患または障害を発症する前、その間、またはその後のいずれかの一連の間隔をあけた用量であってもよい。
【0118】
本明細書に使用される場合、「治療する」という用語は、障害、疾患の症状、または疾患もしくは障害に対する素因を治療し、治癒し、軽減させ、緩和し、変化させ、修復し、改善し、好転させるか、またはそれらに影響を与える目的で、標的疾患もしくは障害、疾患/障害の症状、または疾患/障害に対する素因を有する対象への、1種以上の活性剤を含む組成物の適用または投与を指す。
【0119】
標的疾患/障害を緩和することは、疾患の発症もしくは進行を遅延させること、または疾患の重症度を低減させることを含む。疾患を緩和することは、必ずしも治癒的な結果を必要としない。本明細書に使用される場合、標的疾患または障害の発症を「遅延させる」ことは、疾患の進行を遅らせ、妨げ、遅延させ、抑制し、安定化させ、および/または延ばすことを意味する。この遅延は、疾患の病歴および/または治療される個体に応じて、時間の長さを変化させることができる。疾患の発症を「遅らせる」もしくは緩和する、または疾患の発病を遅延させる方法は、方法を使用しない場合と比較して、所与の時間枠における疾患の1つ以上の症状を発症する確率を低減させ、および/または所与の時間枠における症状の程度を低減させる方法である。このような比較は、典型的に、統計的に有意な結果を得るのに十分な数の対象を使用した臨床研究に基づいている。
【0120】
疾患の「発症」または「進行」は、疾患の最初の発現および/または続発する進行を意味する。疾患の発症は、当該技術分野において周知の標準的な臨床技術を使用して検出可能であり、評価することができる。しかしながら、発症とは、検出不能であり得る進行も指す。本開示の目的のために、発症または進行とは、症状の生物学的経過を指す。「発症」は、発生、再発、および発病を含む。本明細書において使用される場合、標的疾患または障害の「発病」または「発生」は、最初の発病および/または再発を含む。
【0121】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される免疫チェックポイントモジュレーターおよび発酵組成物の組み合わせは、1つ以上の標的シグナル伝達経路の活性を、in vivoで少なくとも20%(例えば、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上)阻害するのに十分な量で、治療を必要とする対象に投与される。他の実施形態において、組み合わせは、1種以上の標的抗原の活性レベルを、少なくとも20%(例えば、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上)低減させるのに有効な量で投与される。
【0122】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される発酵組成物は、本明細書に記載される免疫チェックポイントモジュレーター(例えば、阻害剤)の使用を含む抗がん治療を受けていたか、または抗がん治療中である対象(例えば、ヒトがん患者)に与えられる。
【0123】
治療すべき疾患の種類または疾患の部位に応じて医薬組成物を対象に投与するために、医療分野の当業者に公知の従来の方法を使用することができる。この組成物はまた、他の従来の経路を介して、例えば、経口、非経口、吸入スプレーによって、局所、直腸、鼻、頬、膣に、または移植されたリザーバを介して投与されてもよい。本明細に使用される場合、「非経口」という用語は、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、動脈内、滑膜内、胸骨内、髄腔内、病変内、および頭蓋内注射または注入技術を含む。さらに、それは、1ヶ月、3ヶ月、または6ヶ月のデポー注射可能または生分解性材料および方法を使用することなどの注射用デポー経路の投与を介して、対象に投与することができる。いくつかの例において、医薬組成物は眼内または硝子体内に投与される。
【0124】
注射可能な組成物は、植物油、ジメチルアセトアミド(dimethylactamide)、ジメチルホルムアミド(dimethyformamide)、乳酸エチル、炭酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、エタノール、およびポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)などの種々の担体を含有してもよい。静脈内注射に関して、水溶性の抗体を点滴法によって投与することができ、それにより、抗体および生理学的に許容される賦形剤を含有する医薬製剤が注入される。生理学的に許容される賦形剤としては、例えば、5%デキストロース、0.9%生理食塩水、リンガー液または他の適切な賦形剤を挙げることができる。筋肉内製剤、例えば、抗体の適切な可溶性塩形態の滅菌製剤を、注射用水、0.9%生理食塩水、または5%グルコース溶液などの医薬賦形剤に溶解し、投与することができる。
【0125】
一実施形態において、抗体は、部位特異的または標的化局所送達技術を介して投与される。部位特異的または標的化局所送達技術の例としては、抗体の種々の移植可能なデポー源、または注入カテーテル、留置カテーテル、もしくはニードルカテーテルなどの局所送達カテーテル、合成移植片、外膜ラップ、シャントおよびステントまたは他の移植可能なデバイス、部位特異的担体、直接注射、または直接適用が挙げられる。例えば、PCT国際公開第00/53211号および米国特許第5,981,568号を参照のこと。
【0126】
アンチセンスポリヌクレオチド、発現ベクター、またはサブゲノムポリヌクレオチドを含有する治療組成物の標的化送達もまた使用され得る。受容体媒介性DNA送達技術は、例えば、Findeisら、Trends Biotechnol.(1993) 11:202;Chiouら、Gene Therapeutics:Methods And Applications Of Direct Gene Transfer(J.A.Wolff、ed.)(1994);Wuら、J.Biol.Chem.(1988)263:621;Wuら、J.Biol.Chem.(1994)269:542;Zenkeら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1990)87:3655;Wuら、J.Biol.Chem.(1991)266:338に記載されている。
【0127】
ポリヌクレオチド(例えば、本明細書に記載される抗体をコードするポリヌクレオチド)を含有する治療用組成物は、遺伝子療法プロトコルにおける局所投与のために、約100ng~約200mgの範囲のDNAで投与される。いくつかの実施形態において、約500ng~約50mg、約1μg~約2mg、約5μg~約500μg、および約20μg~約100μgまたはそれ以上のDNAの濃度範囲もまた、遺伝子療法プロトコルの間に使用され得る。
【0128】
本明細書に記載される治療用ポリヌクレオチドおよびポリペプチドは、遺伝子送達ビヒクルを使用して送達することができる。遺伝子送達ビヒクルは、ウイルス起源または非ウイルス起源であってもよい(概して、Jolly、Cancer Gene Therapy(1994)1:51;Kimura、Human Gene Therapy(1994)5:845;Connelly、Human Gene Therapy(1995)1:185;およびKaplitt、Nature Genetics(1994)6:148を参照のこと)。このようなコード配列の発現は、内因性哺乳動物または異種プロモーターおよび/もしくはエンハンサーを使用して誘導され得る。コード配列の発現は、構成的であってもよく、または調節的であってもよい。
【0129】
所望のポリヌクレオチドの送達および所望の細胞における発現のためのウイルスベースのベクターは当該技術分野において周知である。例示的なウイルスベースのビヒクルとしては、限定されないが、組換えレトロウイルス(例えば、国際公開第90/07936号;国際公開第94/03622号;国際公開第93/25698号;国際公開第93/25234号;国際公開第93/11230号;国際公開第93/10218号;国際公開第91/02805号;米国特許第5,219,740号および同第4,777,127号;英国特許第2,200,651号;および欧州特許第0 345 242号を参照のこと)、アルファウイルスベースのベクター(例えば、シンドビス(Sindbis)ウイルスベクター、セムリキ森林ウイルス(Semliki forest virus)(ATCC VR-67;ATCC VR-1247)、ロスリバーウイルス(Ross River virus)(ATCC VR-373;ATCC VR-1246)およびベネズエラ馬脳炎ウイルス(ATCC VR-923;ATCC VR-1250;ATCC VR1249;ATCC VR-532))、およびアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター(例えば、国際公開第94/12649号、国際公開第93/03769号;国際公開第93/19191号;国際公開第94/28938号;国際公開第95/11984号および国際公開第95/00655号を参照のこと)が挙げられる。Curiel,Hum.Gene Ther.(1992)3:147に記載されているように、死滅したアデノウイルスに連結したDNAの投与もまた、利用することができる。
【0130】
限定されないが、死滅したアデノウイルス単独に連結したまたは連結していないポリカチオン性濃縮DNA(例えば、Curiel,Hum.Gene Ther.(1992)3:147を参照のこと);リガンド連結DNA(例えば、Wu,J.Biol.Chem.(1989)264:16985を参照のこと);真核細胞送達ビヒクル細胞(例えば、米国特許第5,814,482号;国際公開第95/07994号;国際公開第96/17072号;国際公開第95/30763号;および国際公開第97/42338号を参照のこと)および核酸電荷中和または細胞膜との融合を含む、非ウイルス送達ビヒクルおよび方法もまた、使用することができる。裸のDNAもまた、利用することができる。例示的な裸のDNA導入方法は、国際公開第90/11092号および米国特許第5,580,859号に記載されている。遺伝子送達ビヒクルとして作用し得るリポソームは、米国特許第5,422,120号;国際公開第95/13796号;国際公開第94/23697号;国際公開第91/14445号;および欧州特許第0524968号に記載されている。さらなる手法は、Philip,Mol.Cell.Biol.(1994)14:2411、およびWoffendin,Proc.Natl.Acad.Sci.(1994)91:1581に記載されている。
【0131】
標的疾患/障害に対する治療効力は、当該技術分野において周知の方法によって評価することができる。
【0132】
一般的技術
本発明の実施は、他に示さない限り、分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学および免疫学の従来の技術を利用し、これらは、当該技術分野の範囲内である。このような技術は、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版(Sambrookら、1989)Cold Spring Harbor Press;Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait、ed.、1984);Methods in Molecular Biology、Humana Press;Cell Biology:A Laboratory Notebook(J.E.Cellis、ed.、1998)Academic Press;Animal Cell Culture(R.I.Freshney、ed.、1987);Introduction to Cell and Tissue Culture(J.P.MatherおよびP.E.Roberts、1998)Plenum Press;Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures(A.Doyle、J.B.Griffiths、およびD.G.Newell、eds.、1993-8)J.WileyおよびSons;Methods in Enzymology(Academic Press,Inc.);Handbook of Experimental Immunology(D.M.WeirおよびC.C.Blackwell、eds.);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.M.MillerおよびM.P.Calos、eds.、1987);Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubelら、eds.、1987);PCR:The Polymerase Chain Reaction、(Mullisら、eds.、1994);Current Protocols in Immunology(J.E.Coliganら、eds.、1991);Short Protocols in Molecular Biology(WileyおよびSons、1999);Immunobiology(C.A.JanewayおよびP.Travers、1997);Antibodies(P.Finch、1997);Antibodies:a practical approach(D.Catty.、ed.、IRL Press、1988-1989);Monoclonal antibodies:a practical approach(P.ShepherdおよびC.Dean、eds.、Oxford University Press、2000);Using antibodies:a laboratory manual(E.HarlowおよびD.Lane(Cold Spring Harbor Laboratory Press、1999);The Antibodies(M.ZanettiおよびJ.D.Capra、eds.、Harwood Academic Publishers、1995)などの文献に十分に説明されている。
【0133】
さらに詳述することなく、当業者は、上記の説明に基づいて、本発明をその最大限に利用することができると考えられる。したがって、本明細書で提供される特定の実施形態は単に例示的なものとして解釈されるべきであり、いかなる形であれ本開示の残りを限定するものではない。本明細書で引用される全ての刊行物は、本明細書で参照される目的または主題のために参照により組み込まれる。
【実施例
【0134】
実施例1:経口投与による抗PD1抗体および組成物Xを用いた結腸がんの処置
組成物Xは、以下のように調製した発酵ダイズ組成物である。ダイズの水性抽出物を従来の方法によって調製した。乳酸菌および酵母の混合物を、微生物によるダイズ抽出物の発酵を可能にする条件下で、水性ダイズ抽出物を含有する培地中で培養した。発酵液を回収し、濾過して固形物を除去し、滅菌した。こうして調製した液体溶液を濃縮して、組成物X(液体形態)を生成した。組成物Xの1ミリグラムは、約2.7gのダイズの発酵ブロスを含有する。
【0135】
結腸がんに対する組成物Xおよび抗PD1抗体の併用療法の有効性を、結腸がんマウスモデルにおいて調査した。簡潔に述べると、Balb/cマウスに、0日目に2×10個の結腸がんCT26細胞を皮下注射した。移植された結腸がん細胞に由来する腫瘍が約60~70mmの体積まで成長したとき、10mg/kgの抗PD1抗体を6日目にマウスに腹腔内注射した。抗PD1抗体の注射を、8日目、10日目、および12日目に同じ用量で繰り返した。マウスを分析のために17日目に屠殺した。0日目から15日目の間、マウスの一部には希釈した組成物X(1%、5%または15%)を毎日与え、他のマウスにはビヒクル対照を与えた。この例示的な実験設計の概略図を図1Aに示す。
【0136】
あるいは、Balb/cマウスに組成物Xを2週間(14日間;-14日目から開始)毎日与えた。次いで、マウスに2×10個の結腸がんCT26細胞を皮下注射した(0日目)。がん細胞移植の5日後(5日目)、マウスを10mg/kgの抗PD1で腹腔内注射により処置し、これを7日目、9日目、および11日目に繰り返した。マウスを分析のために15日目に屠殺した。
【0137】
以下の表1および2ならびに図2および3に示したように、組成物Xはこの実施例において使用される結腸がんマウスモデルにおいて実証されるように、用量依存的に腫瘍増殖を阻害する際の抗PD1抗体の効力を有意に増強した。表1、図2A、および図3Aは、図1Aに示した実験設計に従った研究から得られた結果を示す。表2、図2Bおよび図3Bは、図1Bに示した実験設計に従った研究から得られた結果を示す。
【0138】
【表1】
【0139】
【表2】
【0140】
15日目に、マウスを屠殺し、各マウスからの脾細胞を、フローサイトメトリー分析のために蛍光標識CD4、CD8、CD62LおよびCD44抗体で染色した。ナイーブT細胞(CD62L+CD44lowと定義)およびエフェクター記憶T細胞(CD62L-CD44highと定義)を同定するために、3色フローサイトメトリーを実施した。
【0141】
図4に示されるように、脾臓CD8+およびCD4+細胞の両方におけるエフェクター記憶T細胞のパーセンテージは、抗PD1および組成物Xの併用処置の結果として有意に増加したが、ナイーブT細胞は対照と比較して減少した。
【0142】
実施例2:経口投与による抗PD1抗体および組成物Xを用いた肺がんの処置
組成物Xを、上記の実施例1に記載したように調製した。組成物Xおよび抗PD1抗体の肺がんに対する併用療法の有効性を、肺がんマウスモデルにおいて以下のように調べた。
【0143】
C57BL/6マウスに、0日目に5×10個の肺がんLL2細胞を注射した。4日目から開始して、マウスの一部に希釈組成物X(7.5%、15%または22.5%組成物)を毎日1回与え、他のマウスをビヒクル対照で処置した。腫瘍が約60mmの体積に増殖したとき、4日目から開始し、マウスに、10mg/kgの抗PD1モノクローナル抗体を1日おきに1回腹腔内注射した(4、6、8、10および12日目)。マウスを分析のために19日目に屠殺した。この例示的な実験設計の概略図を図5に示す。
【0144】
以下の表3ならびに図6および7に示すように、組成物Xはこの肺がんマウスモデルにおいて観察されるように、用量依存的に腫瘍増殖を阻害する際の抗PD1の効力を有意に増強する。組成物Xは、腫瘍増殖の抑制において抗PD1抗体と相乗的に作用した。
【0145】
【表3】
【0146】
腫瘍組織に浸潤したCD4+およびCD8+T細胞の両方を、本明細書に記載されるようにフローサイトメトリーによって分析した。腫瘍浸潤CD4+およびCD8+T細胞の両方において、エフェクター記憶T細胞のパーセンテージは併用処置の結果として有意に増加したが、ナイーブT細胞はビヒクル対照と比較して減少したことが観察された。図8
【0147】
ビヒクル対照または抗PD1および組成物Xの組み合わせのいずれかで処置したマウスの脾臓T細胞プロファイリングを、上記実施例1に記載される方法に従って分析した。図9に示したように、脾臓CD8+およびCD4+細胞の両方におけるエフェクター記憶T細胞のパーセンテージは、抗PD1および組成物Xの併用処置の結果として有意に増加したが、ナイーブT細胞は対照と比較して減少した。
【0148】
さらに、腫瘍組織におけるPD1/PD-L1発現プロファイリングを分析した。単独または組成物Xと併用した、抗PD-1抗体で処置したマウスにおける腫瘍浸潤PD-1high CD4+T細胞は同様の減少傾向を示した。組成物X単独では腫瘍浸潤PD-1high CD8+ T細胞は減少したが、これは抗PD-1抗体と同様である(またはそれよりさらに優れている)。腫瘍細胞におけるPD-L1発現は、抗PD-1群と同様に、併用療法群でも低下した(または抗PD-1群よりもさらに良好であった)。図10
【0149】
MDSC(骨髄由来サプレッサー細胞)は、Gr-1(+)CD11b(+)F4/80(+)細胞として特徴付けられる。これらの細胞は腫瘍発生において重要な役割を果たし、腫瘍免疫療法に対して負の効果を有する。組成物Xおよび抗PD-1の併用治療はMDSCのパーセンテージを有意に減少させ、この併用治療ががん治療において効果的であることを示す。図11
【0150】
実施例3:静脈内注射による抗PD1抗体および組成物Xを用いた結腸がんの処置
組成物Xを、上記実施例1に記載される方法に従って調製した。静脈内投与した組成物Xおよび抗PD1抗体の結腸がんに対する併用療法の有効性を、以下のように結腸がんマウスモデルにおいて調べた。
【0151】
Balb/cマウスに、0日目に2×10個の結腸がんCT26細胞を皮下注射した。移植された結腸がん細胞に由来する腫瘍が50mmの平均サイズに達したとき、10mg/kgの抗PD1抗体を5日目にマウスに腹腔内注射した。抗PD1抗体の注射を、7日目、9日目、11日目、および13日目に同じ用量で繰り返した。マウスを分析のために16日目に屠殺した。マウスの一部には5%希釈組成物Xを4、7、9、11、13、および15日目に静脈内投与したが、その他には投与しなかった。マウスの1つの群に、15%組成物X(10ml/kg、毎日)を、比較のために抗PD1注射の有無にかかわらず、実験の3日目から終了まで経口投与した。この例示的な実験設計の概略図を図12に示す。
【0152】
以下の表4ならびに図13および14に示されるように、組成物Xの静脈内投与は、組成物Xの経口投与と同様の程度で腫瘍増殖の阻害における抗PD1抗体の効力を有意に増強する。再び、組成物Xは、腫瘍増殖の抑制において抗PD1抗体と相乗的に作用した。
【0153】
【表4】
【0154】
脾臓および腫瘍部位における免疫細胞プロファイリングおよびサイトカイン発現を、フローサイトメトリーによって分析した(図15~22)。再び、エフェクター/記憶CD4+およびCD8+T細胞のパーセンテージの両方は、腫瘍部位(図15)および脾臓(図16)における組成物Xの経口または静脈内投与のいずれかによる併用処置の結果として有意に増加した。さらに、両方の組み合わせにおいて、PD1high CD4およびCD8 T細胞のパーセンテージは対照より低く、PD-L1腫瘍細胞のパーセンテージも低かった(図17)。同様に、腫瘍におけるNK細胞(CD3eCD49bとして特徴付けられる)のパーセンテージは有意に高かったが(図18)、MDSC(Gr-1CD11bF4/80として特徴付けられる)は、抗PD1と組み合わせた組成物Xの経口投与および静脈内投与の両方において有意に低かった(図19)。
【0155】
さらに、腫瘍部位(図20~21)および血清(図22)におけるサイトカイン発現プロファイルを測定した。TおよびNK細胞機能を増強することができるサイトカイン(IL-2、IFN-γ、IL-15、IL-4)および炎症性サイトカイン(IL-5、IL-6、TNF-α)の両方が、腫瘍部位および血清の両方で有意に増加することが観察された。
【0156】
実施例4:抗PD1抗体および組成物Xを用いた結腸がんの処置により、大腸内の微生物叢が変化した
抗PD1抗体および組成物Xを、図1Aに示す手順に従って、結腸がんCT26細胞を移植したBalb/cマウスに与えた。処置後、処置マウスの近接結腸組織を17日目に切除し、マウスを屠殺し、次世代シークエンス技術による微生物叢解析に供した。結果は、結腸がんを有するマウスを抗PD1/組成物Xの組み合わせで処理した場合、いかなる処置も行わない結腸がんを有するマウスと比較して、細菌種のいくつかが変化したことを示した。例示的な細菌種を表5に列挙した。
【0157】
【表5】
【0158】
さらに、ルミノコッカス(Ruminococcus)の存在量は図23に示すように、腫瘍のサイズと密接に関係しており、ここで、X軸はルミノコッカスの存在量を表し、Y軸は腫瘍のサイズを表す。腫瘍、すなわちビヒクル群の腫瘍のサイズがより大きい場合、大きなサイズの腫瘍を有するマウス(ビヒクル対照群のマウス)の大腸におけるルミノコッカスの存在量は、小さなサイズの腫瘍を有するマウス(組成物X/抗PD1抗体の組み合わせによって処置されたマウス)よりもはるかに多い。腸内微生物叢は結腸がんに影響を及ぼすことが示唆されているので(例えば、Gaoら、Frontiers in Microbiology、6:20、2015を参照のこと)、この研究から得られた結果は、組成物Xおよび/または抗PD1抗体が、とりわけ、この組み合わせで処置される対象の腸内微生物叢を調節することによって、結腸がんを処置するのに効果的であり得ることを示す。
【0159】
他の実施形態
本明細書に開示される特徴の全ては、任意の組み合わせで組み合わせることができる。本明細書に開示される各特徴は、同じ、等価な、または類似の目的を果たす代替の特徴によって置き換えられてもよい。したがって、特に明記しない限り、開示される各特徴は、等価または類似の特徴の一般的なシリーズの例に過ぎない。
【0160】
上記の説明から、当業者は本発明の本質的な特徴を容易に確かめることができ、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、様々な用途および条件に適合するように本発明の様々な変更および修飾を行うことができる。したがって、他の実施形態も特許請求の範囲内にある。
【0161】
等価物
いくつかの本発明の実施形態を本明細書に説明および例示してきたが、当業者は本明細書に説明される機能を実施し、ならびに/または結果および/もしくは1つもしくは複数の利点を得るための様々な他の手段および/または構造を容易に想定し、そのような変形および/または修飾の各々は本明細書に説明される本発明の実施形態の範囲内にあるとみなされる。より一般的には当業者であれば、本明細書に記載された全てのパラメーター、寸法、材料、および構成は例示的であることを意図し、実際のパラメーター、寸法、材料、および/または構成は具体的な適用、または発明の教示が使用される適用に依存することは容易に認識するであろう。当業者であれば、慣用的な実験のみを使用して、本明細書に記載された具体的な本発明の実施形態に対する多くの等価物を認識し、またはそれを確認することができる。従って、これまでの実施形態は例のみによって提示され、添付の特許請求の範囲およびその等価物の範囲内で、発明的実施形態は、具体的に記載され、および特許請求されるものとは異なる方法で実施することができると理解されるべきである。本開示の発明的実施形態は、本明細書に記載された各個々の特徴、系、物品、材料、キットおよび/または方法を対象とする。加えて、2つ以上のそのような特徴、系、物品、材料、キット、および/または方法のいずれの組み合わせも、そのような特徴、系、物品、材料、キット、および/または方法が相互に矛盾しないならば、本開示の発明的範囲内に含まれる。
【0162】
本明細書に定義され、使用される全ての定義は、辞書的定義、参照により援用された文献における定義、および/または定義された用語の通常の意味より優先されると理解されるべきである。
【0163】
本明細書に開示される全ての参考文献、特許および特許出願は、引用される対象事項に関して参照により組み込まれ、いくつかの場合には文献全体を包含し得る。
【0164】
不定冠詞「一つの(a、an)」は本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、明確に反対のことが示されるのでなければ、「少なくとも1つ」を意味すると理解されるべきである。
【0165】
本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、「および/または」という語句は、そのように結合された要素、すなわち、いくつかの場合には同時に存在し、および他の場合には分離して存在する要素の「いずれかまたは両方」を意味すると理解されるべきである。「および/または」で列挙された複数の要素は同じように、すなわち、そのように結合された要素の「1つ以上」と解釈されるべきである。他の要素は任意選択で、具体的に特定されたそれらの要素に関連するか関連しないかに関わらず、「および/または」という節によって具体的に特定された要素以外で存在してもよい。したがって、非限定的な例として、「Aおよび/またはB」という言及は、「含む」などのオープンエンドの言語と併せて使用される場合、一実施形態ではAのみ(任意選択でB以外の要素を含む)を指し、別の実施形態ではBのみ(任意選択でA以外の要素を含む)を指し、さらに別の実施形態ではAおよびBの両方(任意選択で他の要素を含む)を指すことができる。
【0166】
本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、「または」は上記に定義された「および/または」と同じ意味を有すると理解されるべきである。例えば、列挙において項目を分離する場合、「または」または「および/または」は、包括的であり、すなわち、要素の数または列挙および、任意選択で、さらなる列挙されていない項目の、少なくとも1つ、また1つを超えたものを含めると解釈されるべきである。「のうちの1つのみ」もしくは「のうちの正確に1つ」などの反対に明確に示される用語のみ、または特許請求の範囲に使用される場合、「からなる」は、要素の数または列挙のうちの正確に1つの要素の包含を指す。概して、本明細書に使用される場合、「または」という用語は、「いずれか」、「のうちの1つ」、「のうちの1つのみ」、または「のうちの正確に1つ」などの、排他性の用語が先行する場合、排他的な選択肢(すなわち、「一方又は他方(両方ではない)」)を示すものとして解釈されるにすぎない。請求項において使用される場合、「から本質的になる」は、特許法の分野で使用されている、その通常の意味を有するものとする。
【0167】
明細書および特許請求の範囲において使用される場合、1つまたは複数の要素の列挙の参照において、「少なくとも1つ」という語句は、要素の列挙における要素のいずれかの1つまたは複数から選択される少なくとも1つの要素を意味すると理解されるべきであるが、要素の列挙内に具体的に列挙された各々および全ての要素の少なくとも1つを必ずしも含まず、かつ要素の列挙中の要素のいずれかの組み合わせを排除しない。この定義は、具体的に特定された要素に関連するか、または関連しないかに関わらず、「少なくとも1つ」という語句が指す要素の列挙内に具体的に特定された要素以外の要素が任意選択で存在してもよいことを許容する。したがって、非限定的な例として、「AおよびBの少なくとも1つ」(または、同等に、「AまたはBの少なくとも1つ」、または同等に、「Aおよび/またはBの少なくとも1つ」)は、1つの実施形態において、任意選択で、Bが存在しない1つより多いA(および任意選択で、B以外の要素を含む);少なくとも1つを参照する別の実施形態において、任意選択で、Aが存在しない1つより多いB(および任意選択で、A以外の要素を含む);少なくとも1つを参照するさらに別の実施形態において、任意選択で1つより多いAおよび任意選択で1つより多いB(および任意選択で他の要素を含む)などを指すことができる。
【0168】
また、明確に反対のことが示されているのでなければ、1つより多い工程または作用を含む特許請求された任意の方法において、方法の工程または作用の順序は、方法の工程または作用が列挙されている順序に必ずしも限定されないことも理解されるべきである。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23