(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-22
(45)【発行日】2024-03-04
(54)【発明の名称】ラミネート用無溶剤型ポリウレタン接着剤
(51)【国際特許分類】
C09J 175/06 20060101AFI20240226BHJP
C08G 18/40 20060101ALI20240226BHJP
C08G 18/76 20060101ALI20240226BHJP
C08G 18/75 20060101ALI20240226BHJP
C08G 18/73 20060101ALI20240226BHJP
【FI】
C09J175/06
C08G18/40
C08G18/76 014
C08G18/75 010
C08G18/73
(21)【出願番号】P 2022050073
(22)【出願日】2022-03-25
【審査請求日】2023-11-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391056066
【氏名又は名称】ロックペイント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086346
【氏名又は名称】鮫島 武信
(72)【発明者】
【氏名】松澤 聡一郎
(72)【発明者】
【氏名】二瓶 栄太
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-59362(JP,A)
【文献】特開2018-27658(JP,A)
【文献】特開2010-31105(JP,A)
【文献】特開2012-67319(JP,A)
【文献】特開2020-168837(JP,A)
【文献】特開昭60-55072(JP,A)
【文献】国際公開第2022/190873(WO,A1)
【文献】特許第7231131(JP,B1)
【文献】国際公開第2018/117082(WO,A1)
【文献】特開2018-168314(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
C08G 18/00- 18/87
C08G 71/00- 71/04
C09J 1/00- 5/10
C09J 7/00- 7/50
C09J 9/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一液と第二液を混ぜて用いることにより接着剤硬化膜を形成するラミネート用無溶剤型ポリウレタン接着剤であって、
前記第一液は、ポリエステルポリオール成分(A)を含み、
前記第二液は、ポリイソシアネート成分(B)を含み、
前記ポリエステルポリオール成分(A)は、一価以上のアルコール化合物と一価以上のカルボン酸化合物とを脱水縮合して得られたポリエステルポリオール成分であり、
前記第二液ポリイソシアネート成分(B)は、脂肪族イソシアネート成分(b-1)とポリエステル成分(b-2)とを必須の構造単位とするものであり、
前記接着剤硬化膜は、その弾性率と耐力点との積が0.08MPa
2以上であり且つ0.18MPa
2以下であり、
前記接着剤硬化膜中に占める、前記ポリエステルポリオール成分(A)と前記ポリエステル成分(b-2)との2成分の合計の割合が60重量%以上であり、
前記ポリエステルポリオール成分(A)と前記ポリエステル成分(b-2)との少なくとも何れか一方は、トリエチレングリコール構造単位を有し、
前記接着剤硬化膜中に占める、前記トリエチレングリコールの成分の割合が0.2重量%以上であり且つ25重量%以下である、
ことを特徴とするラミネート用無溶剤型ポリウレタン接着剤。
【請求項2】
前記脂肪族イソシアネート成分(b-1)は、その構造単位に、
キシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種類を含むことものである、
ことを特徴とする請求項1に記載のラミネート用無溶剤型ポリウレタン接着剤。
【請求項3】
前記ポリエステルポリオール成分(A)は、ポリエステルポリウレタンポリオールである、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のラミネート用無溶剤型ポリウレタン接着剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種プラスチックフィルム、金属箔、金属蒸着フィルムなどの接着に用いる複合ラミネートフィルム用無溶剤型ポリウレタン接着剤組成物に関する。特に、前記の各種フィルムをノンソルベントラミネートしてつくる複合ラミネートフィルムの製造時に有利に使用され得るものであって、ラミネート強度に優れた複合ラミネートフィルム用無溶剤型ポリウレタン接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
食品包装、医薬包装、化粧品包装用材料として残留溶剤の低減や環境対応目的で、溶剤を使用しない無溶剤型接着剤を使用したラミネートが要望されている。しかしながら無溶剤型接着剤は、従来のドライラミネート接着剤と比較して樹脂の分子量を低くする必要があり、主剤と硬化剤の二液を混合し、硬化させたときの硬化膜の架橋密度が高くなる。高架橋密度は高凝集力となるため、接着剤として良い性能であると思われるが、特に結晶性が高いフィルム(PET、OPP、ONYなど)を貼り合わせた際、高すぎる凝集力は基材破壊である高結晶性フィルムの表層破壊、すなわち表層剥離の原因となり、結果としてラミネートフィルムの剥離強度が低くなるという問題があった。
【0003】
特許文献1ではポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート及び4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートの混合物と、ポリオールとの反応生成物であるウレタンイソシアネートを含むポリイソシアネート成分を採用することで、チャック部のヒートシール時における変形の追従性に優れる接着剤の発明を行い、ラミネート用接着剤の柔軟性の重要性について言及してはいるものの、無溶剤型接着剤特有の過度な凝集力が原因であるフィルムの表層破壊に対する解決策には触れられていない。
【0004】
また、特許文献2に係る発明は、高いガスバリア性と優れた接着強度とを両立するラミネート接着剤、並びに、該接着剤を用いてなる、高いガスバリア性と優れた接着強度とを両立する積層体及び包装体の提供を課題とするが、凝集力とフィルムの表層破壊との関係に着目した解決策を提案するものではない。
【0005】
柔軟性を付与することのアプローチ方法の一つとして、柔軟な骨格を有する樹脂成分を導入する手段や、架橋密度の低減などが挙げられる。しかしながらこれらの手法は接着剤の硬化不足に繋がる恐れがあり、その結果としてラミネート強度の低下を引き起こす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2021-165322号公報
【文献】特許第6915728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、表層剥離しやすいフィルムに対して、無溶剤型でありながら高いラミネート強度を示すラミネート用接着剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、無溶剤型ラミネート用接着剤が表層剥離するフィルムにおいて高いラミネート強度を発揮するためには、硬化膜の硬さと付着性が重要であり、接着剤硬化膜の弾性率と耐力点の積を0.08MPa2以上0.18MPa2以下の範囲にすることによって達成可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
詳しくは、本発明に係るラミネート用無溶剤型ポリウレタン接着剤は、第一液と第二液を混ぜて用いることにより接着剤硬化膜を形成する接着剤である。
前記第一液はポリエステルポリオール成分(A)を含み、前記第二液はポリイソシアネート成分(B)を含む。
前記ポリエステルポリオール成分(A)は、一価以上のアルコール化合物と一価以上のカルボン酸化合物とを脱水縮合して得られたポリエステルポリオール成分である。前記第二液ポリイソシアネート成分(B)は、脂肪族イソシアネート成分(b-1)とポリエステル成分(b-2)とを必須の構造単位とするものである。
前記接着剤硬化膜は、その弾性率と耐力点との積が0.08MPa2以上であり且つ0.18MPa2以下である。前記接着剤硬化膜中に占める、前記ポリエステルポリオール成分(A)と前記ポリエステル成分(b-2)との2成分の合計の割合は、60重量%以上である。
前記ポリエステルポリオール成分(A)と前記ポリエステル成分(b-2)との少なくとも何れか一方は、トリエチレングリコール構造単位を有する。前記接着剤硬化膜中に占める、前記トリエチレングリコールの成分の割合が0.2重量%以上であり且つ25重量%以下である。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、無溶剤型のラミネート用接着剤でありながら、接着剤硬化膜の硬さを最適化することによって過度な凝集力を抑制することが可能となり、高いラミネート強度を発現することができた。また、接着剤硬化膜中に占めるポリエステル成分の割合を60重量%以上とすること、及びポリエステル成分において、トリエチレングリコールを0.2~25重量%含むことが接着剤硬化膜の硬さと接着性能を最適化するために必要である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る前記第一液のポリエステルポリオール成分(A)または脂肪族イソシアネート成分(b-1)のポリエステルポリオールまたはポリエステルポリウレタンポリオールは、この業界にて公知の反応により製造する事が出来る。具体的には、ポリエステルポリオールは多価アルコールと多価カルボン酸や酸無水物との脱水縮合反応やエステル交換、開環反応により得ることが出来、前述のポリエステルポリオールをジイソシアネートまたはイソシアネートプレポリマーで鎖長する事で得ることが出来る。
【0011】
前記多価カルボン酸の例としてはフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などの芳香族カルボン酸やコハク酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの脂肪族カルボン酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラブロム無水フタル酸、テトラクロル無水フタル酸、無水ヘット酸、無水ハイミック酸、無水ピロメリット酸などの無水酸を単独或いは2種以上併用することができる。
【0012】
前記多価アルコールとしてはエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレンジオール、ネオペンチルグリコール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,3-ブチレンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、水素化ビスフェノールAなどを単独或いは2種以上併用することができる。また多価アルコールとしてグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリスヒドロキシメチルアミノメタンなどの3価のアルコールやペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどの4価以上のアルコールなども使用することができる。
【0013】
また、ポリエステルポリオールは必要に応じてポリイソシアネートにて予め鎖長させることもできる。使用できるポリイソシアネートは特に限定はなく、例えば、ジイソシアネートとしては、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、m-キシリレンジイソシアネート、α,α,α’,α’-テトラメチル-m-キシリレンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート等や、さらに多官能性ポリイソシアネートとしては、これらのビューレット体、ヌレート体、さらにはトリメチロールプロパンアダクト体等が挙げられ、これらの群から選ばれた1種または2種以上の使用ができるものである。但し、有機溶剤に希釈されたポリイソシアネートは予め、有機溶剤を除去しておくことが必須である。
【0014】
さらに本発明により得られた混合物には、必要に応じて公知の接着剤付与剤として知られるシランカップリング剤、リン酸類、粘着付与剤や当該性能を失わない範囲で反応促進剤、レベリング剤、消泡剤、酸化防止剤、着色顔料を適宜配合することが出来る。
【0015】
シランカップリング剤としては、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシランやこれらのエトキシ誘導体が挙げられ、これらの群から選ばれた1種または2種以上の使用ができるものである。
【0016】
リン酸類としては、オルトリン酸、メタリン酸、ポリリン酸やそれらのエステル誘導体が挙げられ、これらの群から選ばれた1種または2種以上の使用ができるものである。
【0017】
粘着付与剤としては、ロジン系、テルペン系、石油系の何れもが使用可能である。
【0018】
反応促進剤としては公知のものが使用でき、例えば、スズ、亜鉛、アルミ、チタン、ジルコニウム、コバルトのジブチルアセテート、ジブチルラウレート、ジオクチルラウレート、ジブチルマレート、ジステアリルラウレート等金属錯体触媒や、1 ,8-ジアザ-ビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7、1,5-ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン-5、6-ジブチルアミノ-1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7等の3級アミンや、トリエタノールアミンのような反応性3級アミン等が挙げられ、これらの群から選ばれた1種または2種以上の使用ができるものである。
【0019】
レベリング剤としては、アクリルポリマー系、変性シリコーン系、アセチレンジオール系など、消泡剤としては、ポリエーテルや界面活性剤シリコーン変性などが挙げられ、これらの群から選ばれた1種または2種以上の使用ができるものである。
【0020】
酸化防止剤としては、フェノール系、ラクトン系、チオエーテル系、没食子酸系、アスコルビン酸、エリソルビン酸、カテキン、ジブチルヒドロキシトルエン、トコフェロール、クエン酸、ブチルヒドロキシアニソール、亜リン酸エステル、ヒンダードアミン、芳香族アミン系などが挙げられ、これらの群から選ばれた1種または2種以上の使用ができるものである。
【0021】
着色顔料としては、アンスラキノン、ジケトピロロピロール、ペリレンマルーン、カーボンブラック、ジオキサジン、ペリレン、ベンズイミダゾロン、イソインドリノン、イソインドリン、フタロシアニン系、インダンスレンなどの有機系顔料や、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄、アゾメチン銅錯体、酸化チタン、酸化ケイ素などの無機系顔料が挙げられ、体質顔料としては、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、チタン酸バリウム、水酸化カルシウム、亜硫酸カルシウム、硫酸カルシウム、酸化カルシウム、ケイ酸カルシウム、酸化チタン、シリカ、ゼオライト、タルクなどの無機系顔料が挙げられ、これらの群から選ばれた1種または2種以上の使用ができるものである。
【0022】
本発明のラミネート用無溶剤型ポリウレタン接着剤は、様々なプラスチックフィルム、金属箔、金属蒸着フィルムのラミネートに用いることができるが、その具体的な数例を以下に示す。
PET//CPP、OPP//CPP、PET//PET、OPP//OPP、PET//LLDPE、ONY//LLDPE、PET//ONY、LLDPE//LLDPE。
ここで、
PET:ポリエステルフィルム
CPP:無延伸ポリプロピレンフィルム
OPP:二軸延伸ポリプロピレンフィルム
LLDPE:リニアー低密度ポリエチレンフィルム
ONY:二軸延伸ナイロンフィルム
【0023】
ラミネート方法としては、塗工時の配合接着剤の温度が50~100℃が望ましく、より好ましくは60~80℃程度の温度であり、配合直後の接着剤粘度が3000cP以下であることが望ましく、より好ましくは1500cP以下であり、それ以上の粘度の場合、塗工安定性が悪くなり、外観不良や強度不良の不具合が発生することがある。
【0024】
塗布量については、0.5~5g/m2程度、好ましくは1.5~3.5g/m2程度である。塗布量が0.5g/m2未満の場合、接着性能の十分な発現が損なわれたり、カスレ等の外観不良等支障をきたしたりすることがある。また5g/m2を越える場合は、経済性において不利となる。一般的に、ラミネートされたフィルムは、通常室温~50℃で2日~5日間の養生が必要である。
【0025】
配合比については配合機での供給を考慮するとダイナミック、スタティックどちらでも対応できるように第一液(A)/第二液(B)配合比は第一液(A)に対して30~300重量%であり、望ましくは50~200重量%である。
【0026】
本発明に規定される各粘度の範囲であれば特に限定されないが、第一液の数平均分子量は500~5000であり、望ましくは800~2000である。第二液の数平均分子量は400~2000であり、望ましくは600~1500である。
【0027】
得られた接着剤硬化膜は、表層剥離するフィルムにおいて、高いラミネート強度を発揮するために、硬化膜の硬さと付着性とが重要であり、接着剤硬化膜の弾性率と耐力点の積を0.08MPa2以上0.18MPa2以下の範囲にすることによって達成可能である。
【0028】
弾性率と耐力点は接着剤硬化膜の引張試験によって得られた応力-歪曲線から算出することができる。弾性率は、応力-歪曲線において歪が0.05%~0.25%間の応力勾配を弾性率とした。弾性率は接着剤硬化膜に対して僅かな歪が生じた時の硬さを表していると考えられ、弾性率が高いほど高結晶性フィルムの表層破壊のきっかけを生じやすいと考えられるが、低すぎると十分な凝集力を発揮できない。
耐力点は、歪が0.1%の時点における弾性率と同等の応力勾配を持つ直線と、応力-歪曲線の交点が示す応力を採用した。耐力点は接着剤硬化膜に対して歪が与えられた時の塑性変形するまでに必要な応力を表していると考えられ、基材フィルムの表層破壊が生じなかったとしても、耐力点が低すぎると凝集力が低すぎて十分なラミネート強度が得られない。一方で、高弾性率によって凝集力が高い時には耐力点が高いと表層破壊を生じる。
以上のことから、高結晶性フィルムの表層破壊は、接着剤硬化膜に歪が与えられた時の硬さ、凝集力、弾性変形・塑性変形のしやすさに影響されるものであり、弾性率と耐力点の観点からコントロール可能であることを見出した。
【0029】
弾性率と耐力点とは、上記の関係を満たす範囲内で変更して実施することができるが、弾性率については0.8~1.5MPaとすることが硬さを最適化する点で好ましい。また耐力点については0.07~0.12MPaとすることが塑性を最適化する点で好ましい。
【0030】
前記接着剤硬化膜中に占める、前記ポリエステルポリオール成分(A)と前記ポリエステル成分(b-2)との2成分の合計の割合は60重量%以上とする。これらの合計が60重量%を下回るとウレタン結合が増加することによる凝集力過大となる恐れがある。又、60重量%以上とすることによって、ポリエステルによる適度な密着性と柔軟性を付与することができる点で有利である。
【0031】
前記ポリエステルポリオール成分(A)と前記ポリエステル成分(b-2)との少なくとも何れか一方は、トリエチレングリコール構造単位を有するものとする。そして、この前記トリエチレングリコール成分は、接着剤硬化膜中に0.2重量%以上であり且つ25重量%以下が含まれるものとする。
0.2重量%未満の場合、ポリエステル成分に柔軟性を付与することができない。25重量%を超える場合、密着性低下の原因となるおそれがあり、21重量%以下であることがより好ましい。
【実施例】
【0032】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明は下記の実施例に限定して理解すべきではない。
【0033】
(ポリエステルポリオールの合成例1)
窒素導入管、撹拌機、精留塔及びコンデンサーを備えたフラスコに、エチレングリコール(90.0g)、ジエチレングリコール(80.0g)、トリエチレングリコール(140.0g)、ネオペンチルグリコール(150.0g)、イソフタル酸(140.0g)、テレフタル酸(70.0g)、セバシン酸(125.0g)、アジピン酸(205.0g)を加え、撹拌しながら内温180~200℃で脱水縮合させた。酸価が15mgKOH/gになったことを確認し、窒素を吹き込みながら、200~240℃でさらに脱水反応を進め、酸価が1mgKOH/g以下になったことを確認し、反応を終了とした。得られたポリエステルポリオールにおけるトリエチレングリコールの含有割合は14.0重量%であり、これをポリエステルポリオール(A-1)とした。
【0034】
(ポリエステルポリオールの合成例2)
窒素導入管、撹拌機、精留塔、コンデンサーを備えたフラスコに、エチレングリコール(50.0g)、ジエチレングリコール(50.0g)、トリエチレングリコール(300.0g)、ネオペンチルグリコール(100.0g)、イソフタル酸(140.0g)、テレフタル酸(70.0g)、セバシン酸(70.0g)、アジピン酸(220.0g)を加え、撹拌しながら内温180~200℃で脱水縮合させた。酸価が15mgKOH/gになったことを確認し、窒素を吹き込みながら、200~240℃でさらに脱水反応を進め、酸価が1mgKOH/g以下になったことを確認し、反応を終了とした。得られたポリエステルポリオールにおけるトリエチレングリコールの含有割合は30.0重量%であり、これをポリエステルポリオール(A-2)とした。
【0035】
(ポリエステルポリオールの合成例3)
窒素導入管、撹拌機、精留塔、コンデンサーを備えたフラスコに、エチレングリコール(125.0g)、ジエチレングリコール(128.6g)、トリエチレングリコール(41.4g)、ネオペンチルグリコール(163.0g)、イソフタル酸(134.0g)、テレフタル酸(71.0g)、セバシン酸(118.5g)、アジピン酸(204.5g)、ステアリン酸(14.0g)を加え、撹拌しながら内温180~200℃で脱水縮合させた。酸価が15mgKOH/gになったことを確認し、窒素を吹き込みながら、200~240℃でさらに脱水反応を進め、酸価が1mgKOH/g以下になったことを確認し、反応を終了とした。得られたポリエステルポリオールにおけるトリエチレングリコールの含有割合は4.1重量%であり、ポリエステルポリオール(A-3)とした。
【0036】
(ポリエステルポリオールの合成例4)
窒素導入管、撹拌機、精留塔及びコンデンサーを備えたフラスコに、エチレングリコール(80.0g)、ジエチレングリコール(80.0g)、ネオペンチルグリコール(280.0g)、イソフタル酸(80.0g)、テレフタル酸(80.0g)、セバシン酸(200.0g)、アジピン酸(200.0g)を加え、撹拌しながら内温180~200℃で脱水縮合させた。酸価が15mgKOH/gになったことを確認し、窒素を吹き込みながら、200~240℃でさらに脱水反応を進め、酸価が1mgKOH/g以下になったことを確認し、反応を終了とした。これを、トリエチレングリコールを含まないポリエステルポリオール(A-4)とした。
【0037】
(ポリエステルポリオールの合成例5)
窒素導入管、撹拌機、精留塔、コンデンサーを備えたフラスコに、エチレングリコール(100.0g)、ジエチレングリコール(20.0g)、ネオペンチルグリコール(315.0g)、イソフタル酸(265.0g)、セバシン酸(120.0g)、アジピン酸(180.0g)を加え、撹拌しながら内温180~200℃で脱水縮合させた。酸価が15mgKOH/gになったことを確認し、窒素を吹き込みながら、200~240℃でさらに脱水反応を進め、酸価が1mgKOH/g以下になったことを確認し、反応を終了とした。これを、トリエチレングリコールを含まないポリエステルポリオール(A-5)とした。
【0038】
(ポリイソシアネートの合成例1)
窒素導入管、撹拌機、コンデンサーを備えたフラスコに、ポリエステルポリオール(A-1)(100.0g)、ヘキサメチレンジイソシアネートプレポリマー(旭化成株式会社製:D101)(300.0g)、ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体(旭化成株式会社製TPA-100)(600.0g)を入れ、攪拌しながら液温80~90℃で4時間反応を行い、得られたポリイソシアネートはイソシアネート基含有率が19.5%であり、これをポリイソシアネート(B-1)とした。
【0039】
(ポリイソシアネートの合成例2)
窒素導入管、撹拌機、コンデンサーを備えたフラスコに、ポリエステルポリオール(A-2)(100.0g)、ヘキサメチレンジイソシアネートプレポリマー(旭化成株式会社製:D101)(300.0g)、ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体(旭化成株式会社製TPA-100)(600.0g)を入れ、攪拌しながら液温80~90℃で4時間反応を行い、得られたポリイソシアネートはイソシアネート基含有率が19.5%であり、これをポリイソシアネート(B-2)とした。
【0040】
(ポリイソシアネートの合成例3)
窒素導入管、撹拌機、コンデンサーを備えたフラスコに、ポリエステルポリオール(A-4)(100.0g)、ヘキサメチレンジイソシアネートプレポリマー(旭化成株式会社製D101)(300.0g)、ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体(旭化成株式会社製TPA-100)(600.0g)を入れ、攪拌しながら液温80~90℃で4時間反応を行い、得られたポリイソシアネートはイソシアネート基含有率が19.5%であり、これをポリイソシアネート(B-3)とした。
【0041】
(ポリイソシアネートの合成例4)
窒素導入管、撹拌機、コンデンサーを備えたフラスコに、ポリエステルポリオール(A-1)(50.0g)、ヘキサメチレンジイソシアネートプレポリマー(旭化成株式会社製D101)(650.0g)、ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体(旭化成株式会社製TPA-100)(300.0g)を入れ、攪拌しながら液温80~90℃で4時間反応を行い、得られたポリイソシアネートはイソシアネート基含有率が19.5%であり、これをポリイソシアネート(B-4)とした。
【0042】
(ポリイソシアネートの合成例5)
窒素導入管、撹拌機、コンデンサーを備えたフラスコに、ポリエステルポリオール(A-5)(165.0g)、ヘキサメチレンジイソシアネートプレポリマー(旭化成株式会社製D101)(405.0g)、ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体(旭化成株式会社製TPA-100)(430.0g)を入れ、攪拌しながら液温80~90℃で4時間反応を行い、得られたポリイソシアネートはイソシアネート基含有率が18.5%であり、これをポリイソシアネート(B-5)とした。
【0043】
(ポリイソシアネートの合成例6)
ヘキサメチレンジイソシアネートプレポリマー(旭化成株式会社製D101)のみを用い、これをポリイソシアネート(B-6)とした。
【0044】
(ラミネート強度の測定)
第一液(A)と第二液(B)を所定の混合割合で配合したものを、塗布量1.5gとなるようにバーコーターを用いてOPPフィルム(P2161#20)に塗工し、CPPフィルム(Z207#60)を貼り合わせてラミネートフィルムを得た。得られたラミネートフィルムは40℃のオーブンで4日間養生させた。養生の終了したラミネートフィルムについて、15mm幅の試験片を作製し、AandD社製引っ張り試験機(テンシロンRTG-1210)により50mm/minの引っ張り速度にて、25℃雰囲気下でT型剥離によりラミネート強度を測定した(単位:N/15mm幅)。2.0N/15mm幅以上でOPPフィルムの表層剥離が抑制されることから、ラミネート強度測定結果については2.0N/15mm幅以上のものを合格、2.0N/15mm幅に満たないものを不合格とした。
【0045】
(弾性率と耐力点の測定)
第一液(A)と第二液(B)を所定の割合で配合した配合液を、PP製の鋳型容器に入れ、60℃のオーブンで6日間養生させた。配合液を鋳型容器に入れる量は、養生後の試験片の膜厚が2mmになるように調整した。養生後、鋳型容器から接着剤硬化膜を取り外して幅10mm×長さ40mmに切り出し、接着剤硬化膜の試験片を得た。得られた試験片をAandD社製引っ張り試験機(テンシロンRTG-1210)にて、25℃雰囲気下、毎分200mmの引っ張り速度で引っ張り試験を行った。得られた試験結果に対して、弾性率(単位:MPa)と0.1%オフセット耐力点(単位:MPa)の値を算出し、測定結果を得た。
【0046】
(実施例1)
第一液(A-3)と第二液(B-1)を2:1の割合で混合し、ラミネート強度の測定、弾性率と耐力点の測定を行った。これらの測定結果と、得られたサンプル中における(A)及び(b-2)成分の割合、トリエチレングリコールの割合を表1に示した。
【0047】
(実施例2~5)
実施例1と同様に、表1に示した第一液(A)と第二液(B)の混合割合にて、得られたラミネート強度の測定結果、弾性率と耐力点の測定結果と、サンプル中における(A)及び(b-2)成分の割合、トリエチレングリコールの割合を表1にまとめて示した。
【0048】
(比較例1~4)
実施例1と同様に、表1に示した第一液(A)と第二液(B)の混合割合にて、得られたラミネート強度の測定結果、弾性率と耐力点の測定結果と、サンプル中における(A)及び(b-2)成分の割合、トリエチレングリコールの割合を表1にまとめて示した。
【0049】