(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-22
(45)【発行日】2024-03-04
(54)【発明の名称】電子機器及び電子機器の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 7/20 20060101AFI20240226BHJP
H05K 5/00 20060101ALI20240226BHJP
H05K 5/03 20060101ALI20240226BHJP
H01L 23/467 20060101ALI20240226BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20240226BHJP
【FI】
H05K7/20 H
H05K7/20 G
H05K5/00 A
H05K5/03 A
H01L23/46 C
H02M7/48 Z
(21)【出願番号】P 2022114835
(22)【出願日】2022-07-19
【審査請求日】2022-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006622
【氏名又は名称】株式会社安川電機
(74)【代理人】
【識別番号】110003096
【氏名又は名称】弁理士法人第一テクニカル国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤木 孝
(72)【発明者】
【氏名】前田 高志
【審査官】五貫 昭一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/076853(WO,A1)
【文献】特開2018-137852(JP,A)
【文献】実開平1-104092(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/20
H05K 5/00
H05K 5/03
H01L 23/467
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
複数の第1フィンを備えたヒートシンクと、
第1回路部品を含む複数の回路部品が設けられた回路基板と、
前記第1回路部品が挿通される穴部が形成された底部を備え、且つ前記筐体の内部を、前記複数の第1フィン及び前記第1回路部品を収容する第1収容スペースと、前記第1回路部品以外の前記回路部品を収容する第2収容スペースと、に仕切る仕切り部材と、
前記第1収容スペースに空気を通風させるファンと、
を有する、電子機器。
【請求項2】
筐体と、
複数の第1フィンを備えたヒートシンクと、
第1回路部品を含む複数の回路部品が設けられた回路基板と、
前記筐体の内部を、前記複数の第1フィン及び前記第1回路部品を収容する第1収容スペースと、前記第1回路部品以外の前記回路部品を収容する第2収容スペースと、に仕切る仕切り部材と、
前記第1収容スペースに空気を通風させるファンと、
を有し、
前記仕切り部材は、
前記第1回路部品が挿通される穴部が形成された底部と、
前記底部の前記第1フィン側の縁部に設けられ、前記空気が流れ込む空間を形成する連通部と、
前記底部の前記連通部以外の前記縁部から前記筐体の近傍に至るように立設された壁部と、を有する、
電子機器。
【請求項3】
前記第1収容スペースは、
前記複数の第1フィンの先端部と前記筐体との間に設けられ、前記空気を前記第1フィンの延設方向と交差する方向に通風可能な通風スペースを有する、
請求項
2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記筐体は、
前記仕切り部材の前記壁部の前記底部とは反対側に配置される天板部を有し、
前記天板部は、
前記内部側の面に前記壁部の形状に沿って延設され、前記天板部に平行な方向から見て前記壁部の先端部とラップするように突出した突出部を有する、
請求項
2又は3に記載の電子機器。
【請求項5】
前記連通部は、
前記複数の第1フィンのうち最も前記仕切り部材側に配置された前記第1フィン
の先端部に係合する係合部を有する、
請求項
2又は3に記載の電子機器。
【請求項6】
前記仕切り部材は、
前記ヒートシンクとの間に配置された前記回路基板と共に前記ヒートシンクにねじにより固定される、
請求項
2又は3に記載の電子機器。
【請求項7】
前記ヒートシンクは、
前記空気の通風方向において前記第1回路部品の下流側に配置された複数の第2フィンを有する、
請求項
2又は3に記載の電子機器。
【請求項8】
前記仕切り部材は、
前記空気を前記第2フィンに導くための導風部を有する、
請求項7に記載の電子機器。
【請求項9】
筐体と、
複数の第1フィンを備えたヒートシンクと、
第1回路部品を含む複数の回路部品が設けられた回路基板と、
前記筐体の内部を、前記複数の第1フィン及び前記第1回路部品を収容する第1収容スペースと、前記第1回路部品以外の前記回路部品を収容する第2収容スペースと、に仕切る仕切り部材と、
前記第1収容スペースに空気を通風させるファンと、を有する、電子機器の製造方法であって、
前記筐体の前記内部側の面に前記仕切り部材の壁部の形状に沿って延設された突出部が、前記筐体に平行な方向から見て前記壁部の先端部とラップするように、前記筐体を前記ヒートシンクに取り付けること、
を有する、電子機器の製造方法。
【請求項10】
筐体と、
複数の第1フィンを備えたヒートシンクと、
第1回路部品を含む複数の回路部品が設けられた回路基板と、
前記筐体の内部を、前記複数の第1フィン及び前記第1回路部品を収容する第1収容スペースと、前記第1回路部品以外の前記回路部品を収容する第2収容スペースと、に仕切る仕切り部材と、
前記第1収容スペースに空気を通風させるファンと、を有する、電子機器の製造方法であって、
前記仕切り部材の係合部を、前記複数の第1フィンのうち最も前記仕切り部材側に配置された前記第1フィンの先端部に係合させることと、
前記仕切り部材を前記ヒートシンクとの間に配置された前記回路基板と共に前記ヒートシンクにねじにより固定することと、
を有する、電子機器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、電子機器及び電子機器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、モータ制御機器の放熱器と組付け部品との固定構造が記載されている。このモータ制御機器では、筐体内が仕切り壁によって、冷却ファンによって風が送られる多数の冷却フィンが設けられた部分と、回路基板上に回路部品が設けられた回路部分とに区画されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術のモータ制御機器では、回路基板上に発熱する回路部品が設置されている場合に十分に冷却できない場合があり、より高い冷却性能が求められていた。
【0005】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、冷却性能を向上することができる電子機器及び電子機器の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一の観点によれば、筐体と、複数の第1フィンを備えたヒートシンクと、第1回路部品を含む複数の回路部品が設けられた回路基板と、前記筐体の内部を、前記複数の第1フィン及び前記第1回路部品を収容する第1収容スペースと、前記第1回路部品以外の前記回路部品を収容する第2収容スペースと、に仕切る仕切り部材と、前記第1収容スペースに空気を通風させるファンと、を有する、電子機器が適用される。
【0007】
また、本発明の別の観点によれば、筐体と、複数の第1フィンを備えたヒートシンクと、第1回路部品を含む複数の回路部品が設けられた回路基板と、前記筐体の内部を、前記複数の第1フィン及び前記第1回路部品を収容する第1収容スペースと、前記第1回路部品以外の前記回路部品を収容する第2収容スペースと、に仕切る仕切り部材と、前記第1収容スペースに空気を通風させるファンと、を有する、電子機器の製造方法であって、前記筐体の前記内部側の面に前記仕切り部材の壁部の形状に沿って延設された突出部が、前記筐体に平行な方向から見て前記壁部の先端部とラップするように、前記筐体を前記ヒートシンクに取り付けること、を有する、電子機器の製造方法が適用される。
【0008】
また、本発明の別の観点によれば、筐体と、複数の第1フィンを備えたヒートシンクと、第1回路部品を含む複数の回路部品が設けられた回路基板と、前記筐体の内部を、前記複数の第1フィン及び前記第1回路部品を収容する第1収容スペースと、前記第1回路部品以外の前記回路部品を収容する第2収容スペースと、に仕切る仕切り部材と、前記第1収容スペースに空気を通風させるファンと、を有する、電子機器の製造方法であって、前記仕切り部材の係合部を、前記複数の第1フィンのうち最も前記仕切り部材側に配置された前記第1フィンの先端部に係合させることと、前記仕切り部材を前記ヒートシンクとの間に配置された前記回路基板と共に前記ヒートシンクにねじにより固定することと、を有する、電子機器の製造方法が適用される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の電子機器等によれば、冷却性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係るモータ制御装置の外観の一例を表す、右方向から見た側面図である。
【
図2】実施形態に係るモータ制御装置の外観の一例を表す、下方向から見た下面図である。
【
図3】実施形態に係るモータ制御装置の外観の一例を表す、上方向から見た上面図である。
【
図4】実施形態に係るモータ制御装置の内部構成の一例を表す分解斜視図である。
【
図5】仕切り部材の構成の一例を表す斜視図である。
【
図6】仕切り部材の構成の一例を表す、右方向から見た側面図である。
【
図7】モータ制御装置の組立工程において、第2回路基板をヒートシンクに固定した状態の一例を表す、右方向から見た側面図である。
【
図8】モータ制御装置の組立工程において、仕切り部材を第2回路基板の上からヒートシンクに固定した状態の一例を表す、右方向から見た側面図である。
【
図9】
図8におけるIX-IX断面に相当する断面図である。
【
図10】モータ制御装置の組立工程において、第3回路基板をヒートシンクに固定した状態の一例を表す斜視図である。
【
図11】右カバーの内側の構造の一例を表す斜視図である。
【
図12】モータ制御装置1の組立工程において、右カバーをヒートシンクに取り付けた状態における
図8中IX-IX断面に相当する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、電子機器の一例として、モータを制御するモータ制御装置について説明するが、電子機器をモータ制御装置に限定するものではない。本実施形態では、モータ制御装置の構成の説明の便宜上、上下左右前後等の方向を適宜使用する場合があるが、モータ制御装置の配置方向や、各構成の位置関係を限定するものではない。実施形態における各方向は、各図中に示す方向に対応している。
【0012】
<1.モータ制御装置の外観構成>
図1~
図3を参照しつつ、本実施形態に係るモータ制御装置1の外観構成の一例について説明する。
図1は、モータ制御装置1を右方向から見た側面図であり、
図2は、モータ制御装置1を下方向から見た下面図であり、
図3は、モータ制御装置1を上方向から見た上面図である。
【0013】
図1~
図3に示すように、モータ制御装置1は、右カバー3と、左カバー5と、ヒートシンク7と、前面パネル9とを有する。右カバー3は、ヒートシンク7の右側に取り付けられ、左カバー5は、ヒートシンク7の左側に取り付けられている。前面パネル9は、右カバー3及び左カバー5の前側に取り付けられている。右カバー3、左カバー5、及び前面パネル9は例えば樹脂製であり、ヒートシンク7は熱伝導性の高い材料(例えばアルミ合金等)で構成されている。右カバー3、左カバー5、ヒートシンク7、及び前面パネル9が組み合わされることで、略直方体形状の筐体10が構成されている。
【0014】
<2.モータ制御装置の内部構成>
図4を参照しつつ、本実施形態に係るモータ制御装置1の内部構成の一例について説明する。
図4は、モータ制御装置1の分解斜視図である。
【0015】
図4に示すように、ヒートシンク7は略四角枠形状に形成されている。ヒートシンク7は、回路部品の熱を放熱して冷却を行う部材であると共に、モータ制御装置1の筐体を構成する構造部材でもある。ヒートシンク7は、前板部11と、後板部13と、上板部15と、下板部17とを有する。
【0016】
下板部17には、ファン19が収容されるファン収容部21が設けられている。ファン収容部21は、ファン19と同様の形状に形成された凹部である。ファン19は、複数のねじ23により固定具25を介してファン収容部21に固定されている。ファン19は例えば軸流ファンであり、回転軸AX方向に空気を吐出または吸い込んで上下方向に空気を通風させる。本実施形態では、ファン19は下側から空気を吸い込んで上側へ吐出し、第1収容スペースS1(後述の
図12参照)に空気を通風させる。ファン19には、第3回路基板24からケーブル26を介して電力が供給される。
【0017】
ヒートシンク7は、複数の第1フィン27を有する。各第1フィン27は、底部35(後述の
図9参照)から右方向に突出して形成されている。複数の第1フィン27は、ファン収容部21の上方に設けられ、各第1フィン27は上下方向に沿って延設されている。複数の第1フィン27は、前後方向に間隔をあけて並設されている。ファン19は、下方から空気を吸い込み、各第1フィン27の間に空気を通風させる。上板部15には、複数のスリットで構成される排気口29が形成されており、各第1フィン27の間を通過した空気は排気口29等を介して外部に排出される。第1回路基板31に設けられた回路部品33は、第1フィン27の底部35に接触するように設けられている(後述の
図9参照)。なお、回路部品33と底部35との間にサーマルシート等の熱伝導部材を設けてもよい。回路部品33は例えばスイッチング素子であるが、その他の発熱する回路部品でもよい。複数の第1フィン27は、回路部品33で発生した熱を放熱して冷却する。
【0018】
複数の第1フィン27の底部35とは反対側の先端部と、右カバー3との間には、通風スペース37(後述の
図9参照)が設けられている。通風スペース37は、空気を第1フィン27の延設方向と交差する方向(例えば前後方向)に通風することが可能である。通風スペース37では、回路部品39がねじ41により第1フィン27に固定されている。回路部品39は例えば回生抵抗器であるが、その他の発熱する回路部品でもよい。なお、回路部品39は設置されなくてもよい。
【0019】
ヒートシンク7は、複数の第1フィン27の上部の前側に、複数の第2フィン43を有する。各第2フィン43は、底部44(後述の
図7、
図8参照)から右方向に突出して形成されている。複数の第2フィン43は、後述の仕切り部材63によって形成される空気の通風方向において、第2回路基板45に設けられた回路部品47の下流側に配置されている。回路部品47は例えばコンデンサであるが、その他の発熱する回路部品でもよい。回路部品47は第1回路部品の一例である。複数の第2フィン43は、前後方向に間隔をあけて並設されている。ファン19から吐出されて回路部品47の周囲を通風した空気が、各第2フィン43の間に通風される。右カバー3には、複数のスリットで構成される排気口49が形成されており、各第2フィン43の間を通過した空気は排気口49等を介して外部に排出される。回路部品51は、ねじ53により第2フィン43の底部44に形成された取付部(図示省略)に接触するように設けられている。なお、回路部品51と取付部との間にサーマルシート等の熱伝導部材を設けてもよい。回路部品51は例えば整流ダイオードであるが、その他の発熱する回路部品でもよい。複数の第2フィン43は、回路部品51で発生した熱を放熱して冷却する。
【0020】
ヒートシンク7の前板部11の右側には、ねじ52により金具54が固定されている(後述の
図9参照)。金具54は、例えばサーマルシート等の熱伝導部材56を介して第3回路基板24の回路部品58に接触するように設けられている(後述の
図12参照)。熱伝導部材56は例えばゴム等の弾性を有する部材で構成されており、部品の公差や位置誤差等を吸収して、熱伝導部材56と回路部品58とを密着させることができる。回路部品58は例えば抵抗器であるが、その他の発熱する回路部品でもよい。第3回路基板24の回路部品58の熱は、熱伝導部材56及び金具54を介して前板部11に伝熱され、放熱される。
【0021】
第1回路基板31は、複数のねじ55によりヒートシンク7の左側に固定されている。前述のように、第1回路基板31の右側の面の後側には、複数の回路部品33が第1フィン27の底部35に接触するように設けられている。図示は省略するが、第1回路基板31には、例えば、交流電源から供給される交流電力を直流電力に変換するコンバータ、直流電力を交流電力に変換してモータに供給するインバータ(回路部品33を含む)、インバータによる電力変換を制御してモータを制御する制御回路等に関わる回路部品が設けられている。
【0022】
左カバー5は、第1回路基板31等を収容するように、ヒートシンク7の左側に固定されている。
【0023】
第2回路基板45は、ヒートシンク7の右側における第1フィン27の前側の領域に固定されている。第2回路基板45の前側の部分は、複数のねじ61によりヒートシンク7に固定されている。第2回路基板45の後側の部分は、仕切り部材63とヒートシンク7との間に挟まれ、複数のねじ65により仕切り部材63と共にヒートシンク7に共締めにより固定されている。前述のように、第2回路基板45の右側の面の後側には、複数の回路部品47が設けられている。回路部品47及びそれ以外の回路部品には、例えば、交流電源から供給される交流電力を直流電力に変換するコンバータ、直流電力を交流電力に変換してモータに供給するインバータ、インバータによる電力変換を制御してモータを制御する制御回路等に関わる回路部品が含まれている。
【0024】
仕切り部材63は、前述のように、ヒートシンク7との間に配置された第2回路基板45と共に、複数のねじ65によりヒートシンク7の右側に固定されている。仕切り部材63は、筐体10の内部を第1収容スペースS1(後述の
図12参照)と第2収容スペースS2(後述の
図12参照)とに仕切る。仕切り部材63の詳細は後述する。
【0025】
第3回路基板24は、複数のねじ69によりヒートシンク7の右側に固定されている(後述の
図10参照)。第3回路基板24は、第2回路基板45よりもさらに右側に配置されている(後述の
図10参照)。
【0026】
右カバー3は、第2回路基板45、仕切り部材63、及び第3回路基板24等を収容するように、ヒートシンク7の右側に固定されている。前面パネル9は、右カバー3及び左カバー5の前側に係合部81により固定されている。
【0027】
<3.仕切り部材の構成>
図5及び
図6を参照しつつ、仕切り部材63の構成の一例について説明する。
図5は、仕切り部材63の構成の一例を表す斜視図、
図6は、仕切り部材63を右方向から見た側面図である。
図5及び
図6に示す各方向は、仕切り部材63をモータ制御装置1に組付けた状態における方向であり、前述の
図1~
図4に対応している。
【0028】
図5及び
図6に示すように、仕切り部材63は容器状の部材であり、底部83と、連通部85と、壁部87とを有する。底部83には、第2回路基板45に設けられた円筒状の回路部品47が挿通される穴部89が形成されている。本実施形態では、第2回路基板45に例えば3つの回路部品47が設けられているため、穴部89は3つの回路部品47を挿通可能な形状に形成されている。穴部89は、回路部品47の外周面との間に、若干の隙間ができる形状及び大きさに形成されている。これにより、部品の公差や位置誤差等を許容しつつ、第1収容スペースS1から第2収容スペースS2への空気の漏れを低減できる。なお、回路部品47の数は1つ又は3以外の複数でもよく、その場合には穴部89は回路部品47の数に応じた形状に形成される。
【0029】
連通部85は、第1連通部85Aと、第2連通部85Bとを有する。第1連通部85Aは、底部83の第1フィン27側の縁部、この例では底部83の後側に設けられている。第2連通部85Bは、底部83の第2フィン43側の縁部、この例では底部83の上側の縁部に設けられている。第1連通部85A及び第2連通部85Bは、底部83から右方向に突出するように立設されている。第1連通部85Aの突出高さは、壁部87の突出高さよりも低く、例えば略半分程度の高さに形成されている(後述の
図9参照)。第1連通部85Aは、底部83とは反対側の先端部と右カバー3との間に、前述の通風スペース37と連通した空間91を形成する。通風スペース37において第1フィン27の延設方向と交差する方向に通風された空気は、空間91を介して仕切り部材63内に流れ込む。第1連通部85Aが連通部の一例である。
【0030】
第1連通部85Aは、底部83とは反対側の先端部に係合部92を有する。係合部92は、例えば先端部が屈曲されて折り返されることで、後側に突出しつつ左側に凹部を備えたつば状の部材として形成されている。係合部92は、複数の第1フィン27のうち最も仕切り部材63側に配置された第1フィン27、この例では最も前側に配置された第1フィン27の先端部に被さるように係合する(後述の
図9参照)。
【0031】
第2連通部85Bの突出高さは、第1連通部85Aと略同じである。第2連通部85Bは、底部83とは反対側の先端部と右カバー3との間に、前述の第2フィン43が設置された空間と連通した空間93を形成する。空間91を介して仕切り部材63内に流入し、回路部品47の周囲を流れた空気は、空間93を介して第2フィン43側に流出する。
【0032】
仕切り部材63は、底部83の上側の端部に導風部95を有する。導風部95は、底部83から第2連通部85Bの先端部に向けて傾斜した斜面として形成されている。導風部95は、空間91を介して仕切り部材63内に流入した空気を空間93に導き、第2フィン43側に流出させる。
【0033】
第2連通部85Bは、底部83とは反対側の先端部に係合部97を有する。係合部97は、例えば先端部が屈曲されて折り返されることで、上側に突出しつつ左側に凹部を備えたつば状の部材として形成されている。係合部97は、ヒートシンク7において第2フィン43の下側に前後方向に沿って延設されたフィン99(後述の
図7参照)の先端部に被さるように係合する。
【0034】
壁部87は、底部83の連通部85以外の縁部、この例では底部83の前側の縁部及び下側の縁部から右方向に突出し、右カバー3の近傍に至るように立設されている。壁部87の突出高さは、仕切り部材63の底部83と右カバー3との距離よりも若干小さい高さである。壁部87の先端部と右カバー3の内側の表面との間に、若干の隙間が形成される(後述の
図12参照)。これにより、部品の公差や位置誤差等を許容しつつ、第1収容スペースS1から第2収容スペースS2への空気の漏れを低減できる。壁部87は、前側壁部87Aと、下側壁部87Bとを有する。前側壁部87Aは、穴部89から突出した3つの回路部品47の外周面に接線状に近接する平板状の壁部である。下側壁部87Bは、3つの回路部品47のうち最も下側に位置する回路部品47の外周面の略下側半分に近接する曲面状の壁部である。下側壁部87Bは、第1連通部85Aよりも下方に位置している。仕切り部材63は、最も下側に位置する回路部品47の一部が第1連通部85Aよりも下方にはみ出すように構成されることにより、導風部95の設置スペースを確保している。
【0035】
底部83の後側の上下方向2箇所、及び、下側壁部87Bの下部の前側には、前述のねじ65が挿通されるねじ固定部101が設けられている。この例では3つのねじ65がねじ固定部101に挿通され、第2回路基板45に形成された貫通穴103(後述の
図7参照)に挿通され、ヒートシンク7のねじ穴にそれぞれ締結される。
【0036】
上記構成により、仕切り部材63は、筐体10の内部を第1収容スペースS1と第2収容スペースS2とに仕切る。後述の
図12に示すように、第1収容スペースS1は、複数の第1フィン27及び回路部品47を収容する。第2収容スペースS2は、第2回路基板45の回路部品47以外の回路部品や、第1回路基板31及び第3回路基板24等を収容する。仕切り部材63は、例えば溶融した樹脂を金型に射出するモールド成形により一体的に成形される。樹脂成形により形状の自由度が高まるので、仕切り部材63にスペースの仕切り機能以外にも様々な機能を付加することができる。
【0037】
<4.仕切り部材の取り付け方法>
図7~
図10を参照しつつ、仕切り部材63の取り付け方法の一例について説明する。
図7は、モータ制御装置1の組立工程において、第2回路基板45をヒートシンク7に固定した状態の一例を表す図、
図8は、仕切り部材63を第2回路基板45の上からヒートシンク7に固定した状態の一例を表す図、
図9は
図8におけるIX-IX断面に相当する断面図、
図10は、第3回路基板24をヒートシンク7に固定した状態の一例を表す図である。
【0038】
図7に示すように、第2回路基板45は、複数(例えば4つ)のねじ61により、ヒートシンク7の右側における第1フィン27の前側の領域に固定される。次に、
図8及び
図9に示すように、仕切り部材63が第2回路基板45を挟むようにヒートシンク7に取り付けられる。この際、仕切り部材63の第1連通部85Aの係合部92が、複数の第1フィン27のうち最も仕切り部材63側に配置された第1フィン27の先端部に被さるように係合される。また、仕切り部材63の第2連通部85Bの係合部97が、フィン99の先端部に被さるように係合される。これにより、仕切り部材63がヒートシンク7及び第2回路基板45に対して位置決めされるので、組み立てが容易となり、作業性を向上できる。その後、複数(例えば3つ)のねじ65が、仕切り部材63のねじ固定部101及び第2回路基板45の貫通穴103に挿通され、ヒートシンク7のねじ穴に締結される。これにより、仕切り部材63がヒートシンク7との間に配置された第2回路基板45と共にヒートシンク7に対して固定される。上記仕切り部材63の取り付け方法は、モータ制御装置1の製造方法の一例である。
【0039】
その後、
図10に示すように、第3回路基板24が、第2回路基板45のさらに右側において、複数のねじ69によりヒートシンク7に固定される。第3回路基板24は、仕切り部材63の壁部87よりも前側の領域に配置される。ファン19に電力を供給するケーブル26は、第3回路基板24に接続される。回路部品39は、ねじ41により第1フィン27に固定される。回路部品39は設置されなくてもよい。回路部品39を設置する場合には、ファン19から上向きに吐出された空気の一部を回路部品39の下側の端面に当接させて流れを前向きに変えることができるので、仕切り部材63側に空気を導入しやすくなる効果がある。
【0040】
<5.右カバーの内側の構造及び取り付け方法>
図11及び
図12を参照しつつ、右カバー3の内側の構造及び取り付け方法の一例について説明する。
図11は、右カバー3の内側の構造の一例を表す斜視図、
図12は、モータ制御装置1の組立工程において、右カバー3をヒートシンク7に取り付けた状態における
図8中IX-IX断面に相当する断面図である。
図11に示す各方向は、右カバー3をモータ制御装置1に組付けた状態における方向であり、前述の
図1~
図4に対応している。
【0041】
図12に示すように、右カバー3は、仕切り部材63の壁部87の底部83とは反対側に配置される天板部3Aを有する。天板部3Aは、筐体10の右側の側面を構成する。
図11に示すように、天板部3Aは、内部側の面に、突出部107,109,111を有する。突出部107は、仕切り部材63の壁部87の先端部の形状に沿って延設されている。
図12に示すように、右カバー3がヒートシンク7に取り付けられた際に、突出部107は天板部3Aに平行な方向(前後方向や上下方向)から見て壁部87の先端部と所定量だけラップするように設けられている。壁部87の先端部と天板部3Aの内側の表面との間、及び、壁部87と突出部107との間には、若干の隙間が形成されている。これにより、壁部87の先端部と天板部3Aの突出部107とを非接触として部品の公差や位置誤差等を許容しつつ、ラビリンス構造を形成して第1収容スペースS1から第2収容スペースS2への空気の漏れを低減できる。
【0042】
突出部109は、前後方向に沿って直線状に延設されており、その長さはファン収容部21の前後方向寸法と略同等である。突出部109は、ファン19がファン収容部21に収容された際に当接してファン19を位置決めする。突出部111は、上下方向に沿って直線状に延設されており、その長さは第2フィン43の上下方向寸法と略同等であり、その突出高さは第2フィン43の突出高さと略同等である。突出部111は、複数の第2フィン43の間に挿入され、第2フィン43の設置領域において第1収容スペースS1から第2収容スペースS2へ空気が漏れるのを防止する。
【0043】
右カバー3は、天板部3Aの内部側の面に仕切り部材63の壁部87の形状に沿って延設された突出部107が、天板部3Aに平行な方向から見て壁部87の先端部とラップするように、ヒートシンク7に取り付けられる。上記右カバー3の取り付け方法は、モータ制御装置1の製造方法の一例である。
【0044】
<6.実施形態の効果>
以上説明したように、本実施形態のモータ制御装置1は、筐体10の内部が仕切り部材63により第1収容スペースS1と第2収容スペースS2に仕切られる。第1収容スペースS1は、ヒートシンク7の複数の第1フィン27及び第2回路基板45の回路部品47を収容する。第2収容スペースS2は、第2回路基板45の回路部品47以外の回路部品や、第1回路基板31及び第3回路基板24等を収容する。第1収容スペースS1にはファン19により空気が通風される。これにより、第1フィン27の冷却対象である回路部品33に加えて、第2回路基板45に設けられた回路部品47についても十分に冷却できる。したがって、回路基板上にヒートシンク7の冷却対象とは別の発熱する回路部品が設置されている場合でも冷却することが可能となるので、モータ制御装置1の冷却性能を向上できる。
【0045】
本実施形態において、第1収容スペースS1は、複数の第1フィン27の先端部と右カバー3との間に設けられ、空気を第1フィン27の延設方向と交差する方向に通風可能な通風スペース37を有してもよい。この場合、ファン19により通風される空気は、第1フィン27の延設方向に通風されて第1フィン27を冷却すると共に、通風スペース37を介して第1フィン27の延設方向と交差する方向に通風される。これにより、当該空気を回路部品47側に流入させることができる。したがって、回路部品47の冷却効果を高めることができる。
【0046】
本実施形態において、仕切り部材63は、回路部品47が挿通される穴部89が形成された底部83と、底部83の第1フィン27側の縁部に設けられ、空気が流れ込む空間を形成する第1連通部85Aと、底部83の連通部85以外の縁部から右カバー3の近傍に至るように立設された壁部87と、を有してもよい。この場合、ファン19により通風される空気は、仕切り部材63の第1連通部85Aを介して、仕切り部材63の底部83から突出した回路部品47側に流入する。第1収容スペースS1において第1フィン27の設置スペースと回路部品47の設置スペースとの間に仕切りがないため、大量の空気を第1フィン27側から回路部品47側に流入させることができる。したがって、回路部品47の冷却効果を高めることができる。回路部品47が例えばコンデンサである場合には、冷却効果の向上によりコンデンサを小型化できる。
【0047】
本実施形態において、右カバー3の天板部3Aは、内部側の面に仕切り部材63の壁部87の形状に沿って延設され、天板部3Aに平行な方向から見て壁部87の先端部とラップするように突出した突出部107を有してもよい。この場合、壁部87の先端部と突出部107とをラップさせることで、ラビリンス構造を形成できる。これにより、第1収容スペースS1から第2収容スペースS2への空気の漏れを低減できるので、第1収容スペースS1の冷却効率を高めることができる。また、第2回路基板45に設けられた回路部品47以外の回路部品や、第1回路基板31及び第3回路基板24等を、空気に含まれる水分や油分、塵埃等から保護することができる。また、仕切り部材63の壁部87と天板部3Aの突出部107とを接触させずに微小な隙間を設けることができる。これにより、部品の公差や位置誤差等を許容することが可能となり、設計又は製造が容易となる。
【0048】
本実施形態において、仕切り部材63の第1連通部85Aは、複数の第1フィン27のうち最も仕切り部材63側に配置された第1フィン27の先端部に係合する係合部92を有してもよい。この場合、仕切り部材63の取り付けの際に、当該係合部92が第1フィン27の先端部に係合されることにより、仕切り部材63を簡単に位置決めすることができる。これにより、組み立てが容易となり、作業性を向上できる。
【0049】
本実施形態において、仕切り部材63は、ヒートシンク7との間に配置された第2回路基板45と共にヒートシンク7にねじ65により固定されてもよい。この場合、仕切り部材63と第2回路基板45とを共締めにより固定できるので、組み立てが容易となり、ねじ等の部品を減らすことができる。
【0050】
本実施形態において、ヒートシンク7は、複数の第1フィン27に加えて、空気の通風方向において回路部品47の下流側に配置された複数の第2フィン43を有してもよい。この場合、第1フィン27の冷却対象である回路部品33及び第2回路基板45の回路部品47に加えて、第2フィン43の冷却対象である回路部品51を冷却することが可能となり、モータ制御装置1の冷却性能をさらに向上できる。
【0051】
本実施形態において、仕切り部材63は、空気を第2フィン43に導くための導風部95を有してもよい。この場合、第1フィン27側から回路部品47側に流入した空気を、導風部95により第2フィン43に導くことができる。これにより、第2フィン43の冷却対象である回路部品51を効率的に冷却することが可能となり、モータ制御装置1の冷却性能をさらに向上できる。
【0052】
<7.変形例>
開示の実施形態は、上記に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0053】
上記実施形態では、ファン19が下側から空気を吸い込んで上側へ吐出することで、第1収容スペースS1に空気を上向きに通風させるようにしたが、反対にファン19が上側から空気を吸い込んで下側へ吐出することで、第1収容スペースS1に空気を下向きに通風させてもよい。
【0054】
上記実施形態では、ファン19を第1フィン27の下側に設置したが、反対にファン19を第1フィン27の上側に設置してもよい。この場合も、第1収容スペースS1における空気の通風方向は上向きまたは下向きのいずれでもよい。
【0055】
例えば、仕切り部材63の下部に水や油、塵埃等を排出可能な排出口を設けてもよい。仕切り部材63は長手方向が上下方向に沿う向きで配置されるため、内部を通風する空気に含まれる水分や油分、塵埃等が下方の下側壁部87Bの内側に溜まりやすい。そこで、例えば下側壁部87Bの最下部の位置に開閉可能な排出口を設けておくことで、メンテナンス時に排出口を開放して、仕切り部材63の底に溜まった水や油、塵埃等を排出することができる。
【0056】
また以上では、電子機器がモータ制御装置である場合を一例として説明したが、以上説明した内容をモータ以外の機械を制御する制御装置に適用してもよい。また、制御装置でなくとも、冷却ファン、ヒートシンク、回路基板等を備えた電子機器であれば、種類を問わず適用可能である。
【0057】
以上の説明において、「垂直」「平行」「平面」等の記載がある場合には、当該記載は厳密な意味ではない。それら「垂直」「平行」「平面」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に垂直」「実質的に平行」「実質的に平面」という意味である。
【0058】
以上の説明において、外観上の寸法や大きさ、形状、位置等が「同一」「同じ」「等しい」「異なる」等の記載がある場合は、当該記載は厳密な意味ではない。それら「同一」「同じ」「等しい」「異なる」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に同一」「実質的に同じ」「実質的に等しい」「実質的に異なる」という意味である。
【0059】
以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。その他、一々例示はしないが、上記実施形態や各変形例は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【0060】
以上説明した実施形態や変形例等が解決しようとする課題や効果は、上述した内容に限定されるものではない。実施形態や変形例等によって、上述されていない課題を解決したり、上述されていない効果を奏することもでき、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。
【符号の説明】
【0061】
1 モータ制御装置(電子機器)
3 右カバー
3A 天板部
5 左カバー
7 ヒートシンク
9 前面パネル
10 筐体
19 ファン
27 第1フィン
37 通風スペース
43 第2フィン
45 第2回路基板(回路基板)
47 回路部品(第1回路部品)
63 仕切り部材
65 ねじ
83 底部
85A 第1連通部(連通部)
87 壁部
89 穴部
92 係合部
95 導風部
107 突出部
S1 第1収容スペース
S2 第2収容スペース