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特許7442587高性能ウェアラブル注射および/または注入デバイス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-22
(45)【発行日】2024-03-04
(54)【発明の名称】高性能ウェアラブル注射および/または注入デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/20 20060101AFI20240226BHJP
   A61M 5/142 20060101ALI20240226BHJP
   A61M 5/168 20060101ALI20240226BHJP
   A61M 5/24 20060101ALI20240226BHJP
【FI】
A61M5/20
A61M5/142 522
A61M5/168 500
A61M5/168 510
A61M5/24
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022120647
(22)【出願日】2022-07-28
(62)【分割の表示】P 2019553859の分割
【原出願日】2018-04-02
(65)【公開番号】P2022153562
(43)【公開日】2022-10-12
【審査請求日】2022-08-09
(31)【優先権主張番号】62/479,742
(32)【優先日】2017-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】595117091
【氏名又は名称】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー リチャーズ
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ヤーガー
(72)【発明者】
【氏名】ディビット イー.ブース
(72)【発明者】
【氏名】ピーター クイン
(72)【発明者】
【氏名】ミルシア デスパ
(72)【発明者】
【氏名】アダム マーティン
【審査官】川上 佳
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/187797(WO,A1)
【文献】特表2016-500013(JP,A)
【文献】国際公開第2017/009724(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/20
A61M 5/142
A61M 5/168
A61M 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療流体を患者に送達するための送達デバイスであって、
前記医療流体で少なくとも部分的に充填された容器を受け入れるように構成されたハウジングと、
前記ハウジングに取り外し可能に連結可能なカバーと、
投薬手順において前記医療流体を前記容器から前記患者に送達するように構成された、前記ハウジングに設けられた駆動機構と、
前記投薬手順の特性および前記医療流体の特性の少なくとも1つを検出するように構成されたモジュールであって、
前記容器内のストッパの位置に基づいて前記投薬手順の開始、進行、および完了を検出するように構成された用量検出アレイを備える、モジュールと、
を備え、
前記用量検出アレイは前記カバーと一体化され、前記用量検出アレイ全体がカバーに配置され、前記カバーを前記ハウジングから取り外すと、前記用量検出アレイ全体は前記ハウジングから取り外される、送達デバイス。
【請求項2】
時間の関数として前記ストッパの前記位置の変化を検出することに基づいて、前記少なくとも一つの用量検出アレイは、前記医療流体の前記患者への送達速度を測定するように構成される請求項1に記載の送達デバイス。
【請求項3】
前記モジュールは、前記少なくとも一つの用量検出アレイによって測定された前記医療流体の前記送達速度が最小しきい値を下回るか、または最大しきい値を上回る場合に前記駆動機構を停止するように構成される請求項2に記載の送達デバイス。
【請求項4】
前記用量検出アレイが、光学センサアレイ、静電容量センサアレイ、または誘導センサアレイを備えた、請求項1に記載の送達デバイス。
【請求項5】
少なくとも1つの前記用量検出アレイは、前記容器内の前記医療流体の実際の体積を検出するか、または前記容器内の前記医療流体の前記体積を前記容器内の前記ストッパの位置に基づいて推定するように構成された光学センサアレイである、請求項1に記載の送達デバイス。
【請求項6】
前記光学センサアレイは、赤外スペクトラル内の電磁エネルギーを放射するように構成された1つまたは複数の赤外線放射器と、前記赤外スペクトラル内の電磁エネルギーを検出するように構成された1つまたは複数の赤外線検出器とを備えた、請求項5に記載の送達デバイス。
【請求項7】
前記モジュールは、前記投薬手順の前記開始を検出するように構成された少なくとも1つの起動検出スイッチと、前記投薬手順の前記完了を検出するように構成された少なくとも1つの完了検出スイッチとをさらに備える請求項1に記載の送達デバイス。
【請求項8】
前記少なくとも1つの起動検出スイッチは、前記駆動機構の少なくとも1つの構成要素の位置または速度の少なくとも1つを検出するように構成され、前記少なくとも1つの完了検出スイッチは、前記駆動機構の少なくとも1つの構成要素の位置または速度の少なくとも1つを検出するように構成される請求項7に記載の送達デバイス。
【請求項9】
前記少なくとも1つの起動検出スイッチは、前記駆動機構の少なくとも1つの構成要素と物理的に直接接触する機械的センサであるか、または前記駆動機構の少なくとも1つの構成要素と物理的に直接接触しない光学センサである請求項7に記載の送達デバイス。
【請求項10】
前記少なくとも1つの完了検出スイッチは、前記駆動機構の少なくとも1つの構成要素と物理的に直接接触する機械的センサであるか、または前記駆動機構の少なくとも1つの構成要素と物理的に直接接触しない光学センサである請求項7に記載の送達デバイス。
【請求項11】
前記モジュールは、有線接続、無線接続、または前記有線接続および前記無線接続の組み合わせを介して遠隔デバイスと外部通信するように構成された通信要素をさらに備える請求項1に記載の送達デバイス。
【請求項12】
前記通信要素は、前記遠隔デバイスに情報を送るか、もしくは前記遠隔デバイスから情報を受け入れるように構成された一方向通信要素であるか、または前記遠隔デバイスに情報を送り、前記遠隔デバイスから情報を受け入れるように構成された2方向通信要素である請求項11に記載の送達デバイス。
【請求項13】
前記遠隔デバイスは、前記送達デバイスを使用するための文脈的命令、前記投薬手順についての安全プロトコル情報、前記投薬手順の少なくとも1つの段階の状況表示の少なくとも1つを提供するように構成される請求項11に記載の送達デバイス。
【請求項14】
前記モジュールは、前記投薬手順の状態についての情報および作動命令の少なくとも1つをユーザに提供するように構成された1つまたは複数のインジケータをさらに備える請求項1に記載の送達デバイス。
【請求項15】
前記1つまたは複数のインジケータは、少なくとも1つのライトを有する少なくとも1つの視覚インジケータであって、前記少なくとも1つのライトは、定常状態またはフラッシング作動の少なくとも1つに合わせて構成された単色または多色発光ダイオードを備えた、視覚インジケータ、または、ユーザに可聴メッセージを配信するために構成された少なくとも1つの可聴インジケータを備えた、請求項14に記載の送達デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、ウェアラブル注射および/または注入デバイスに関し、特に治療薬を患者に投与するためのウェアラブル注射および/または注入デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、「Smart Wearable Injection and/or Infusion Device」と題する、2017年3月31日出願の米国特許仮出願第62/479,742号明細書に対する優先権を主張し、その開示は、参照により全体的に本明細書に組み込まれている。
【0003】
自動注射デバイスのさまざまなタイプが、薬物溶液および他の液体治療製剤を未訓練者によって投与するか、または自己注射することを可能にするために開発されてきた。一般に、これらのデバイスは、液体治療製剤で事前充填されたリザーバと、ユーザによってトリガすることができるいくつかのタイプの自動針注射機構とを含む。投与される流体または薬物のボリュームが1mLなどの特定のボリュームを全体的に下回るとき、通常約10から15秒の注射時間を有する自動注射器が、通常使用される。投与される流体または薬物のボリュームが1mLを上回るとき、注射時間は、全体的により長くなり、その結果、デバイスと患者の皮膚の標的領域との間の接触を患者が維持することが難しくなる。さらに、投与される薬物のボリュームが多くなるにつれて、注射の時間期間を増大することが望ましくなる。薬物を患者にゆっくり注射するための従来の方法は、IVを開始し、薬物を患者の体にゆっくり注射することである。そのような手順は通常、病院または外来患者施設内で実施される。
【0004】
特定のデバイスは、自宅内における自己注射または自己注入を可能にし、液体治療製剤を患者の皮膚に徐々に注射することができる。いくつかの場合、これらのデバイスは、液体治療製剤が患者に注入されているときに患者によってこれらを「着用」することを可能にするのに(高さおよび全体サイズの両方において)十分小さいものである。これらのウェアラブル注射および/または注入デバイスは、通常、ポンプまたは他のタイプの排出機構を含んで、液体治療製剤をリザーバから流して注射針に入れる。そのようなデバイスはまた、通常、液体治療製剤が適切な時間に流れ始めるようにするための弁または流れ制御機構と、注射を開始するためのトリガ機構とを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際特許出願PCT/US2016/013444
【文献】国際公開第2016/115372号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
さまざまなウェアラブル注射および/または注入デバイスが当技術分野に存在するが、改良されたウェアラブル注射および/または注入デバイスが当技術分野で必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
全体的に、治療薬を患者に投与するように構成された、改良されたウェアラブル注射および/または注入デバイスが、提供される。いくつかの例では、ウェアラブル注射および/または注入デバイスは、用量進行を連続的に監視するように構成され得る。他の例では、ウェアラブル注射および/または注入デバイスは、検出された送達速度に基づいて用量進行における失速を検出するように構成され得る。さらなる例では、ウェアラブル注射および/または注入デバイスは、治療薬の温度を検出し、検出された温度に基づいて少なくとも1つの用量進行のプロトコルを調整するように構成され得る。他の例では、ウェアラブル注射および/または注入デバイスは、遠隔デバイスへのデータの外部通信を可能にするように構成され得る。さらなる例では、ウェアラブル注射および/または注入デバイスは、デバイスの状況についての強化された視覚インジケータを組み込むことができる。
【0008】
本開示のいくつかの例では、医療流体を患者に送達するための送達デバイスは、医療流体で少なくとも部分的に充填された容器を受け入れるように構成されたハウジングを有することができる。送達デバイスは、投薬手順において医療流体を容器から患者に送達するように構成された、ハウジングに関連付けられた駆動機構をさらに有することができる。送達デバイスは、投薬手順の特性および医療流体の特性の少なくとも1つを検出するように構成されたモジュールをさらに有することができる。モジュールは、容器内のストッパの位置に基づいて投薬手順の開始、進行、および完了を検出するように構成された少なくとも1つの用量検出センサを有することができる。モジュールは、容器の温度に基づいて容器内の医療流体の温度を測定するように構成された少なくとも1つの温度センサをさらに有することができる。
【0009】
本開示の他の例では、少なくとも1つの用量検出センサは、時間の関数としてストッパの位置の変化を検出することに基づいて医療流体の患者への送達速度を測定するように構成され得る。モジュールは、少なくとも1つの用量検出センサによって測定された医療流体の送達速度が最小しきい値を下回るか、または最大しきい値を上回る場合に駆動機構を停止するように構成され得る。少なくとも1つの用量検出センサの出力は、少なくとも1つの温度センサの出力の関数になり得る。少なくとも1つの用量検出センサは、容器内の医療流体の実際のボリュームを検出するか、または容器内のストッパの位置に基づいて容器内の医療流体のボリュームを推定するように構成された光学センサアレイであってよい。光学センサアレイは、赤外スペクトラム内の電磁エネルギーを放射するように構成された1つまたは複数の赤外線放射器と、赤外スペクトラム内の電磁エネルギーを検出するように構成された1つまたは複数の赤外線検出器とを有することができる。
【0010】
本開示の他の例では、医療流体の温度は、送達デバイスのハウジングの外側の周囲環境温度および送達デバイスのハウジング内のローカル温度の関数となり得る。モジュールは、容器内の医療流体の温度が最小しきい値を下回るか、または最大しきい値を上回る場合に駆動機構の作動を防止するように構成され得る。
【0011】
本開示の他の例では、モジュールは、投薬手順の開始を検出するように構成された少なくとも1つの起動検出スイッチと、投薬手順の完了を検出するように構成された少なくとも1つの完了検出スイッチとをさらに有することができる。少なくとも1つの起動検出スイッチは、駆動機構の少なくとも1つの構成要素の位置および速度の少なくとも1つを検出するように構成することができ、少なくとも1つの完了検出スイッチは、駆動機構の少なくとも1つの構成要素の位置および速度の少なくとも1つを検出するように構成することができる。少なくとも1つの起動検出スイッチは、駆動機構の少なくとも1つの構成要素と物理的に直接接触する機械的センサ、または駆動機構の少なくとも1つの構成要素と物理的に直接接触しない光学センサであってよい。少なくとも1つの完了検出スイッチは、駆動機構の少なくとも1つの構成要素と物理的に直接接触する機械的センサ、または駆動機構の少なくとも1つの構成要素と物理的に直接接触しない光学センサであってよい。
【0012】
本開示の他の例では、モジュールは、有線接続、無線接続、または有線接続および無線接続の組み合わせを介して遠隔デバイスと外部通信するように構成された通信要素をさらに有することができる。通信要素は、遠隔デバイスに情報を送るか、もしくは遠隔デバイスから情報を受け入れるように構成された一方向通信要素であってよく、または遠隔デバイスに情報を送り、遠隔デバイスから情報を受け入れるように構成された2方向通信要素であってよい。遠隔デバイスは、送達デバイスを使用するための文脈的指示、投薬手順についての安全プロトコル情報、投薬手順の少なくとも1つの段階の状況表示の少なくとも1つを提供するように構成され得る。
【0013】
本開示の他の例では、モジュールは、投薬手順の状態についての情報および作動指示の少なくとも1つをユーザに提供するように構成された1つまたは複数のインジケータをさらに有することができる。1つまたは複数のインジケータは、少なくとも1つのライトを有する少なくとも1つの視覚インジケータを有することができ、少なくとも1つのライトは、定常状態およびフラッシング作動の少なくとも1つに合わせて構成された単色または多色発光ダイオードである。1つまたは複数のインジケータは、可聴メッセージをユーザに送達するように構成された少なくとも1つの可聴インジケータを有することができる。送達デバイスは、ハウジングに取り外し可能に連結可能なカバーを有することができ、モジュールは、カバーに連結される。
【0014】
本開示のさらなる例または態様は、以下の番号付与された項において特徴付けられる。
【0015】
第1項 医療流体を患者に送達するための送達デバイスであって、医療流体で少なくとも部分的に事前充填された容器を受け入れるように構成されたハウジングと、投薬手順において医療流体を容器から患者に送達するように構成された、ハウジングに関連付けられた駆動機構と、投薬手順の特性および医療流体の特性の少なくとも1つを検出するように構成されたモジュールであって、容器内のストッパの位置に基づいて投薬手順の開始、進行、および完了を検出するように構成された少なくとも1つの用量検出センサと、容器の温度に基づいて容器内の医療流体の温度を測定するように構成された少なくとも1つの温度センサとを備える、モジュールとを備える送達デバイス。
【0016】
第2項 時間の関数としてストッパの位置の変化を検出することに基づいて、少なくとも1つの用量検出センサは、医療流体の患者への送達速度を測定するように構成される、第1項の送達デバイス。
【0017】
第3項 モジュールは、少なくとも1つの用量検出センサによって測定された医療流体の送達速度が最小しきい値を下回るか、または最大しきい値を上回る場合に駆動機構を停止するように構成される、第1項または第2項の送達デバイス。
【0018】
第4項 少なくとも1つの用量検出センサの出力は、少なくとも1つの温度センサの出力の関数である、第1項~第3項のいずれかの送達デバイス。
【0019】
第5項 少なくとも1つの用量検出センサは、容器内の医療流体の実際のボリュームを検出するか、または容器内のストッパの位置に基づいて容器内の医療流体のボリュームを推定するように構成された光学センサアレイである、第1項~第4項のいずれかの送達デバイス。
【0020】
第6項 光学センサアレイは、赤外スペクトラム内の電磁エネルギーを放射するように構成された1つまたは複数の赤外線放射器と、赤外スペクトラム内の電磁エネルギーを検出するように構成された1つまたは複数の赤外線検出器とを備える、第1項~第5項のいずれかの送達デバイス。
【0021】
第7項 医療流体の温度は、送達デバイスのハウジングの外側の周囲環境温度および送達デバイスのハウジング内のローカル温度の関数である、第1項~第6項のいずれかの送達デバイス。
【0022】
第8項 モジュールは、容器内の医療流体の温度が最小しきい値を下回るか、または最大しきい値を上回る場合に駆動機構の作動を防止するように構成される、第1項~第7項のいずれかの送達デバイス。
【0023】
第9項 モジュールは、投薬手順の開始を検出するように構成された少なくとも1つの起動検出スイッチと、投薬手順の完了を検出するように構成された少なくとも1つの完了検出スイッチとをさらに備える、第1項~第8項のいずれかの送達デバイス。
【0024】
第10項 少なくとも1つの起動検出スイッチは、駆動機構の少なくとも1つの構成要素の位置および速度の少なくとも1つを検出するように構成され、少なくとも1つの完了検出スイッチは、駆動機構の少なくとも1つの構成要素の位置および速度の少なくとも1つを検出するように構成される、第1項~第9項のいずれかの送達デバイス。
【0025】
第11項 少なくとも1つの起動検出スイッチは、駆動機構の少なくとも1つの構成要素と物理的に直接接触する機械的センサであるか、または駆動機構の少なくとも1つの構成要素と物理的に直接接触しない光学センサである、第1項~第10項のいずれかの送達デバイス。
【0026】
第12項 少なくとも1つの完了検出スイッチは、駆動機構の少なくとも1つの構成要素と物理的に直接接触する機械的センサであるか、または駆動機構の少なくとも1つの構成要素と物理的に直接接触しない光学センサである、第1項~第11項のいずれかの送達デバイス。
【0027】
第13項 モジュールは、有線接続、無線接続、または有線接続および無線接続の組み合わせを介して遠隔デバイスと外部通信するように構成された通信要素をさらに備える、第1項~第12項のいずれかの送達デバイス。
【0028】
第14項 通信要素は、遠隔デバイスに情報を送るか、もしくは遠隔デバイスから情報を受け入れるように構成された一方向通信要素であるか、または遠隔デバイスに情報を送り、遠隔デバイスから情報を受け入れるように構成された2方向通信要素である、第1項~第13項のいずれかの送達デバイス。
【0029】
第15項 遠隔デバイスは、送達デバイスを使用するための文脈的指示、投薬手順についての安全プロトコル情報、投薬手順の少なくとも1つの段階の状況表示の少なくとも1つを提供するように構成される、第1項~第14項のいずれかの送達デバイス。
【0030】
第16項 モジュールは、投薬手順の状況についての情報および作動指示の少なくとも1つをユーザに提供するように構成された1つまたは複数のインジケータをさらに備える、第1項~第15項のいずれかの送達デバイス。
【0031】
第17項 1つまたは複数のインジケータは、少なくとも1つのライトを有する少なくとも1つの視覚インジケータを備える、第1項~第16項のいずれかの送達デバイス。
【0032】
第18項 少なくとも1つのライトは、定常状態およびフラッシング作動の少なくとも1つに合わせて構成された単色または多色発光ダイオードである、第1項~第17項のいずれかの送達デバイス。
【0033】
第19項 1つまたは複数のインジケータは、可聴メッセージをユーザに送達するように構成された少なくとも1つの可聴インジケータを備える、第1項~第18項のいずれかの送達デバイス。
【0034】
第20項 ハウジングに取り外し可能に連結可能なカバーをさらに備え、モジュールは、カバーに連結される、第1項~第19項のいずれかの送達デバイス。
【0035】
本開示のこれらおよび他の特徴および特性、ならびに関連する要素または構造の作動および機能の方法および部材の組み合わせおよび製造の経済性が、本明細書の一部をそのすべてが形成する添付の図を参照して、以下の説明を考えることによって、より明確になるであろう。しかし、図は、例示および説明のためのものにすぎず、本発明の限定を定義するように意図されないことが明示的に理解されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】1つの例による、高性能ウェアラブル注射および/または注入デバイスの正面斜視図である。
図2】デバイスのさまざまな構成要素を示す図1の高性能ウェアラブル注射および/または注入デバイスの概略上面図である。
図3図1に示す高性能ウェアラブル注射および/または注入デバイスの側面斜視図である。
図4】高性能ウェアラブル注射および/または注入デバイスから分離されたカバーを示す、図3に示す高性能ウェアラブル注射および/または注入デバイスの分解図である。
図5】高性能ウェアラブル注射および/または注入デバイスと共に使用するための制御要素の詳細斜視図である。
図6】別の例による、高性能ウェアラブル注射および/または注入デバイスの正面斜視図である。
図7図6に示す高性能ウェアラブル注射および/または注入デバイスの分解斜視図である。
図8図6に示す高性能ウェアラブル注射および/または注入デバイスの後部斜視図である。
図9図8に示す高性能ウェアラブル注射および/または注入デバイスの分解斜視図である。
図10図6に示す高性能ウェアラブル注射および/または注入デバイスのカバーの内側表面の斜視図である。
図11】インジケータのさまざまな状況を示す高性能ウェアラブル注射および/または注入デバイスの正面斜視図である。
図12】高性能ウェアラブル注射および/または注入デバイスと共に使用するためのカバーのさまざまな設計の断面図である。
図13】遠隔デバイスと無線通信するように構成された高性能ウェアラブル注射および/または注入デバイスを示す図である。
図14】遠隔デバイスと無線通信するように構成された高性能ウェアラブル注射および/または注入デバイスを示す別の図である。
図15】高性能ウェアラブル注射および/または注入デバイスと共に使用するように構成された携帯デバイスアプリケーションのグラフィカルユーザインターフェースのスクリーンショットの図である。
図16】高性能ウェアラブル注射および/または注入デバイスと共に使用するための光感知アレイの詳細図である。
図17】時間の関数とする、高性能ウェアラブル注射および/または注入デバイスのある性能パラメータを示す図である。
図18】時間の関数とする、高性能ウェアラブル注射および/または注入デバイスの別の性能パラメータを示す別の図である。
図19】時間の関数とする、高性能ウェアラブル注射および/または注入デバイスのさらなる性能パラメータを示す別の図である。
図20】時間の関数とする、高性能ウェアラブル注射および/または注入デバイスのさらに別の性能パラメータを示す別の図である。
図21】あるタイプの照明の波長の関数とするスペクトル分布を示す図である。
図22】別のタイプの照明の波長の関数とするスペクトル分布を示す別の図である。
図23】高性能ウェアラブル注射および/または注入デバイスのさまざまな構成要素の概略図である。
図24】高性能ウェアラブル注射および/または注入デバイスの温度検出および推定の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1~24では、別段の記載が無い限り、場合に応じて、同様の記号は、同じ構成要素および要素を指す。
【0038】
本明細書で使用される場合、「1つ(a)」、「1つ(an)」、および「その(the)」の単数形は、その文脈が別途明確に定めない限り、複数の指示対象を含む。
【0039】
「左」、「右」、「内側」、「外側」、「上方」、「下方」などの空間的または方向的用語は、図に示すように本発明に関連し、本発明はさまざまな代替の配向をとり得るため、限定的であると考えられるものではない。
【0040】
明細書および特許請求の範囲において使用するすべての数値および範囲は、用語「約」によってすべての場合において修飾されると理解されるものである。「約」とは、述べられた値のプラスまたはマイナス10パーセントなどのように、述べられた値のプラスまたはマイナス25パーセントを意味する。しかし、これは、均等論の下、値のいずれの分析に対しても限定として考えられてはならない。
【0041】
別段の指示が無い限り、本明細書に開示するすべての範囲または比は、開始値および終了値、ならびにその中に属するあらゆるすべてのサブ範囲およびサブ比を包含するように理解されるものとする。たとえば、「1から10」の述べられた範囲または比は、1の最小値から10の最大値までの(1および10を含む)あらゆるすべてのサブ範囲またはサブ比、すなわち1またはそれ以上の最小値で始まり、10またはそれ以下の最大値で終了するすべてのサブ範囲またはサブ比を含むように考えられなければならない。本明細書に開示する範囲および/または比は、明示された範囲および/または比にわたる平均値を表す。
【0042】
「第1」、「第2」などの用語は、いかなる特定の順序または時系列を指すようには意図されず、種々の状態、特性、または要素を指す。
【0043】
用語「少なくとも」は、「それより大きいか、またはそれに等しい」の同義語である。
【0044】
用語「以下」は、「それより小さいか、またはそれに等しい」の同義語である。
【0045】
本明細書で使用される場合、「少なくとも1つ」は、「1つまたは複数」の同義語である。たとえば、「A、B、およびCの少なくとも1つ」という語句は、A、B、もしくはCの任意の1つ、またはA、B、もしくはCの任意の2つ以上の任意の組み合わせを意味する。たとえば、「A、B、およびCの少なくとも1つ」は、A単独、またはB単独、またはC単独、またはAおよびB、またはAおよびC、またはBおよびC、またはA、B、およびCのすべてを含む。
【0046】
用語「含む」は、「備える」の同義語である。
【0047】
本発明の論議は、特定の特徴を、「特に」または「好ましくは」特定の限定内にある(たとえば、「好ましくは」、「より好ましくは」、または「さらにより好ましくは」特定の限定内にある)ものとして説明することができる。本発明は、これらの特定のまたは好ましい限定に制限されず、本開示の全範囲を包含することを理解されたい。
【0048】
さまざまな非限定的な例または態様において、図1を参照すると、本開示は、用量進行を連続的に監視するように構成され得るウェアラブル注射および/または注入デバイスを対象とする。他の例では、ウェアラブル注射および/または注入デバイスは、検出された送達速度に基づいて用量進行における失速を検出するように構成され得る。さらなる例では、ウェアラブル注射および/または注入デバイスは、治療薬の温度を検出し、検出された温度に基づいて少なくとも1つの用量進行プロトコルを調整するように構成され得る。他の例では、ウェアラブル注射および/または注入デバイスは、遠隔デバイスへのデータの外部通信を可能にするように構成され得る。さらなる例では、ウェアラブル注射および/または注入デバイスは、デバイスの状況についての強化された視覚インジケータを組み込むことができる。
【0049】
ウェアラブル注射および/または注入デバイス
図1~2を参照すると、ウェアラブル注射および/または注入デバイス100が、1つの例によって示される。ウェアラブル注射および/または注入デバイス100は、患者の皮膚に連結されて治療薬の治療効果のある量の用量を所定の送達速度で送達するように構成され得る。たとえば、治療薬は、治療効果のある量で送達されたとき、所望の治療効果を達成する、任意のタイプの薬物、化学物質、生物学的物質、生化学的物質であってよい。ウェアラブル注射および/または注入デバイス100は、治療薬で充填された容器104(図7に示す)と流体連通するシリンジ組立体103(図7に示す)を封入するためのハウジング102を有する。ウェアラブル注射および注入デバイス100は、シリンジ組立体103を使用して治療薬を容器104から患者に送達するように動作可能である。
【0050】
図6~7を参照すると、ウェアラブル注射および/または注入デバイス100のハウジング102は、ハウジングに取り外し可能に連結され得るカバー106を有する。カバー106は、用量進行、失速検出、温度測定、および外部通信に合わせて構成された複数の構成要素を備えるモジュール150(図10に示す)を有することができる。本明細書に論じるように、モジュール150は、環境センサ(たとえば温度)などの1つまたは複数のセンサを含んで、用量検出アルゴリズム(たとえば流体粘度温度効果)を改良すると共にフィードバック(たとえば薬物は注射には冷たすぎる)をユーザに提供することができる。モジュール150は、追加的に、1つまたは複数のインジケータ(たとえば可聴式、可視式、または触知式)を含んで、フィードバックまたは指示をユーザに提供することができる。モジュール150はまた、デバイスデータを外部デバイス(たとえばスマートフォン)に送信する通信能力を含むこともできる。モジュール150は、カバー106と一体化され、それにより、カバー106がハウジング102に連結されたとき、モジュール150は、ウェアラブル注射および/または注入デバイス100の基本となる機能を妨害しない。モジュール150は、追加のセンサを含んで、注射器の作動に関連付けられた機械的動作を検出することができる(たとえば、起動、完了、針挿入/後退、または他のデバイスのイベントまたは状態を検出するためのスイッチ)。モジュール150は、光学センサアレイ、容量センサアレイ、誘導センサアレイなどの1つまたは複数の追加のセンサを有することができ、それによって用量送達を連続的に監視することができる。
【0051】
いくつかの例では、モジュール150を含むカバー106は、既存のウェアラブル注射および/または注入デバイス(図示せず)の既存のカバーの取り換え品として提供され得る。そのような例では、カバー106およびモジュール150は、ウェアラブル注射および/または注入デバイスと一体化されて、モジュール150によって得られる、ウェアラブル注射および/または注入デバイスに対する追加の機能を提供することができる。たとえば、カバー106は、参照によって全体的にその開示が本明細書に組み込まれる、(特許文献2として公開された)特許文献1に開示されたウェアラブル注射および/または注入デバイスと共に使用され得る。
【0052】
カバー106は、容器104の充填ボリュームを見るなどの、容器104の内容量を見るための観察窓108を有する。フィルタ(図示せず)が、窓108を通過する周囲光をフィルタリングするために観察窓108上に提供され得る。ハウジング102は、ウェアラブル注射および/または注入デバイス100の状況を表示するためのインジケータ110をさらに有する。
【0053】
図2を参照すると、ウェアラブル注射および/または注入デバイス100は、投薬手順の起動/完了を検出するための起動検出スイッチ112および完了検出スイッチ114をさらに有する。ウェアラブル注射および/または注入デバイス100は、起動検出ボタンスイッチ117をさらに有して、注射器起動ボタン115(図1に示す)の状態を検出する。ウェアラブル注射および/または注入デバイス100は、遠隔デバイスとの通信のための無線通信要素116と、デバイス100への電源供給をオン/オフするためのオン/オフスイッチ118と、電池122を再充電するための充電ポート120とをさらに有する。ウェアラブル注射および/または注入デバイス100は、可聴インジケータ124と、1つまたは複数の温度センサ126と、用量検出アレイ128とをさらに有する。
【0054】
図23を参照すると、コントローラ140が、ウェアラブル注射および/または注入デバイス100の構成要素の1つまたは複数を制御するために提供され得る。いくつかの例では、コントローラ140は、プロセッサ142と、メモリ144と、記憶構成要素146と、ウェアラブル注射および/または注入デバイス100のさまざまな構成要素と通信するためのバス148とを含む。バス148は、ウェアラブル注射および/または注入デバイス100の構成要素の中で通信を可能にする構成要素を含む。いくつかの非限定的な実施形態では、プロセッサ142は、ハードウェア、ファームウェア、またはハードウェアおよびソフトウェアの組み合わせで実装される。たとえば、プロセッサ142は、プロセッサ(たとえば、中央処理装置(CPU)、画像処理装置(GPU)、アクセラレーテッドプロセッシングユニット(accelerated processing unit)(APU)など)、マイクロプロセッサ、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、および/または任意の処理構成要素(たとえばフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、機能を実施するようにプログラムすることができる特定用途向け集積回路(ASIC)など)を含む。メモリ144は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、および/またはプロセッサ142によって使用するための情報および/または命令を記憶する別のタイプの動的または静的記憶デバイス(たとえば、フラッシュメモリ、磁気メモリ、光学メモリなど)を含む。
【0055】
記憶構成要素146は、ウェアラブル注射および/または注入デバイス100の作動および使用に関連する情報および/またはソフトウェアを記憶する。たとえば、記憶構成要素146は、ハードディスク(たとえば磁気ディスク、光学ディスク、磁気光学ディスク、ソリッドステートディスクなど)、カートリッジ、磁気テープおよび/または別のタイプのコンピュータ可読媒体を、対応するドライブと共に含む。コンピュータ可読媒体(たとえば、固定コンピュータ可読媒体)は、本明細書では固定メモリデバイスと定義される。メモリデバイスは、単一の物理的記憶デバイスの内部に位置するメモリスペース、または複数の物理的記憶デバイスにわたって広がるメモリスペースを含む。
【0056】
ウェアラブル注射および/または注入デバイス100は、本明細書に説明する1つまたは複数のプロセスを実施することができる。ウェアラブル注射および/または注入デバイス100は、メモリ144および/または記憶構成要素146などのコンピュータ可読媒体によって記憶されるソフトウェア命令を実行するプロセッサ142に基づいてこれらのプロセスを実施することができる。ソフトウェア命令は、バス148を介して、別のコンピュータ可読媒体または別のデバイスからメモリ144および/また記憶構成要素146に読み込まれ得る。実行されたとき、メモリ144および/または記憶構成要素146内に記憶されたソフトウェア命令は、本明細書において説明する1つまたは複数のプロセスをプロセッサ142に実施させる。追加的にまたは代替的に、ソフトウェア命令の代わりに、またはこれと組み合わせて、配線接続された回路を使用して本明細書において説明する1つまたは複数のプロセスを実施することができる。したがって、本明細書において説明する例は、ハードウェア回路およびソフトウェアの任意の特有の組み合わせに限定されない。
【0057】
図23に示す構成要素の数および配置は、一例として提供される。いくつかの非限定的な例では、コントローラ140は、追加の構成要素、これより少ない構成要素、異なる構成要素、または図23に示すものとは異なって配置された構成要素を含む。追加的にまたは代替的に、コントローラ140の構成要素(たとえば1つまたは複数の構成要素)のセットは、ウェアラブル注射および/または注入デバイス100の構成要素の別のセットによって実施されるものとして説明する1つまたは複数の機能を実施することができる。
【0058】
デバイス状態の検出
いくつかの例では、カバー106およびモジュール150は、ウェアラブル注射および/または注入デバイス100の基本となる構成要素の機械的状態を追跡するように構成され得る。たとえば、モジュール150内の検出スイッチ112、114は、ウェアラブル注射および/または注入デバイス100の少なくとも1つの構成要素の少なくとも1つの特性、たとえば構成要素の位置、速度、および/または第1の状態から第2の状態への状態変化などを検出するように構成され得る。たとえば、モジュール150内の検出スイッチ112、114は、注射器状態の変化に関連付けられる機械的動作、たとえば針シールドの取り外し、注射器のロック解除、起動ボタンの押し下げ、注射起動、および注射完了などを検出するように構成され得る。いくつかの例では、検出スイッチ112、114は、基本となる構成要素との直接的な機械的相互作用を有する機械的構成要素であってよい。他の例では、検出スイッチ112、114は、非接触検出を可能にする赤外線ベースの光学センサ(たとえば反射率またはフォトインタラプタセンサ)であってよい。デバイス状態における遷移をトリガとして使用して、温度または用量進行などの他のシステム測定を開始または停止させることができる。
【0059】
用量進行および失速の検出
いくつかの例では、ウェアラブル注射および/または注入デバイス100は、モジュール150を使用して、用量進行を監視し、用量進行の失速現象を検出するように構成され得る。たとえば、モジュール150の用量検出アレイ128は、分注連鎖(dispense chain)を追跡するための光学センサアレイであってよい。用量検出アレイ128は、患者に送達される治療薬のボリュームを検出するか、またはアルゴリズムを使用して推定するように構成され得る。用量検出アレイ128は、ウェアラブル注射および/または注入デバイスの構成要素と接触しないように、したがって治療薬の送達に影響を与えないように構成され得る。たとえば、用量検出アレイ128は、容器104の横方向側面上に位置決めされ得る。用量検出アレイ128は、容器104の長手方向のストッパの進行を検出するように構成することができ、送達された治療薬のボリュームおよび/または容器104内に残る治療薬のボリュームとストッパの位置を相関付けることができる。いくつかの例では、用量検出アレイ128は、1つまたは複数の検出器によって受け入れられる、ストッパおよび容器104から反射される可視光または赤外光などの電磁エネルギーを放射する1つまたは複数の放射器を有する光学システムであってよい。用量検出アレイ128の反射性質により、構成要素を容器104の一方側に置くことが可能になる。これにより、システムを製造することが、放射器および検出器が互いに向かい合って位置決めされる配置よりコンパクトになり、より容易になる。
【0060】
図10に示すようないくつかの例では、用量検出アレイ128は、赤外スペクトラム内の電磁エネルギーを放射するように構成された1つまたは複数の赤外線放射器130(たとえばIR LED、およびフォトトランジスタまたはフォトダイオード)と、その赤外スペクトラム内の電磁エネルギーを検出するように構成された1つまたは複数の赤外線検出器132とを備える赤外線ベースの光学センサアレイであってよい。用量検出アレイ128は、カバー106と一体化することができ、それにより、ハウジング102からのカバー106の取り外しにより、用量検出アレイ128もハウジング102から取り外される。
【0061】
引き続き図10を参照すると、放射器130および検出器132は、共通の回路基板上でインターリーブされ得る。放射器130の数は、検出器132の数と同じでも、異なっていてもよい。いくつかの例では、放射器130および検出器132は、交互のパターンで配置されてよく、ここでは各放射器/検出器は、検出器/放射器の対の間に位置決めされる。用量検出アレイ128は、光学構成要素を制御し、検出器出力を処理してストッパの場所を確立するためのコントローラと電子通信することができる。ウェアラブル注射および/または注入デバイス100は、他の電子デバイス(たとえばマルチプレクサ、アンプリファイア、A/Dなど)をさらに有して、コントローラを用量検出アレイ128に接続することができる。赤外スペクトラムは、可視光源などの外部ノイズ源に対する改良された耐雑音障害性を提供する。放射器から放射された赤外光もまた、ユーザには見えない。
【0062】
使用において、単一の放射器130が起動されて赤外光を放射することができ、その間1つまたは複数の検出器132は、容器104から反射された赤外光を検出する。このシーケンスは、異なる放射器/検出器の組み合わせの間で反復的に繰り返され得る。すべての検出器132のサンプリングは、同時にまたは順序立てて行われ得る。いくつかの例では、放射器130は、1測定あたり200μs未満に対してアクティブとなり得る(0.02%デューティサイクル)。検出器測定値は、参照測定値の既存のセットに対して比較され、ストッパ/プランジャ位置に相関付けられた最も近い参照点に合わせられる。参照測定点の数は、検出器132の数より多くなることができ、それによって、位置分解能を改良する(たとえば6つの検出器を使用して200の参照点)。このようにして、用量検出アレイ128は、200ステップ絶対位置エンコーダなどの複数ステップエンコーダと同様に機能する。取得された値を参照値に合わせる方法は、収集されたデータと参照値との間のエラーを最小限にする。重み付け方法を使用して、注射中の異なる時間または位置において特定の放射器/検出器の組み合わせを選択的に優先付けすることができる。追加のフィルタリングを採用して、周囲光の効果を最小限にするなど、データを事前処理することができる。いくつかの例では、用量検出アレイ128は、~160μmステップ分解能を有することができる。周囲赤外エネルギーの効果を最小限するために、放射器が通電されていないときにいくつかの背景測定を行って、検出器ベースラインを確立することができる。次いで、このベースライン値は、放射器が通電されたときに検出器測定値から減算され得る。また、同期変調技法を利用して標的測定を背景エネルギーレベルから分離することもできる。
【0063】
いくつかの例では、特徴認識方法を使用して信号測定値を処理して、特有のストッパ/プランジャ位置に対応する知られている信号特徴(たとえばローカルの最大値または最小値)を特定することができ、こうして参照測定値の既存のセットへの依存を軽減するか、または最小限にする。特徴認識方法は、ファジー論理と、機械学習ベース技法とを含むことができる。
【0064】
用量進行の決定は、位置ベースアルゴリズム、すなわち送達された用量のボリュームをこれから算出することができるアルゴリズム上で見出され得る。時間の関数とするストッパの位置の変化を使用してストッパの速度、したがって治療薬の送達速度を算出することができる。アルゴリズムは、容器104の直径および長さにおける可変性などの、流体送達構成要素における知られている変動を補償することができる。ストッパ/プランジャの速度データを使用して、投薬手順が失速しているかどうかを決定することができる。たとえば、最小しきい値(失速状態)は、任意のエラー源(たとえばノイズ、周囲IRなど)と組み合わせた最小のストッパ/プランジャ速度に対応することができる。たとえば、失速検出時間は、4μl/sなどの最も遅い許容送達速度によって定められ得る。図17~20は、時間の関数とするさまざまな性能パラメータを示す。
【0065】
光学構成要素は、温度に敏感であることが知られているため、温度センサからの測定値を使用して温度補償を適用して、温度関連の測定エラーを連続的に訂正することができる。図24を参照すると、1つまたは複数の温度センサからの入力を1つまたは複数のフィルタを通過させて、いかなる温度関連測定エラーも補償することができる。
【0066】
容器104が最初に固定された距離を並進してセプタムを穿孔しなければならない注射システムでは、用量検出アレイを使用して、(プランジャを含む)容器104全体の位置を検出することもできる。別個の参照測定セットを利用して、容器104全体の位置を決定することができる。容器が穿孔された状態にあることが検出されると、アルゴリズムは、プランジャ位置を検出するために使用される参照セットに切り替わることができる。
【0067】
早すぎる取り外しの検出
いくつかの例では、計算された位置および速度データを使用して、デバイスが注射部位から早期に取り外されたかどうかを決定することができる。たとえば、最大速度しきい値は、体(すなわち高圧部位)に注射されたときの最大予想ストッパ/プランジャ速度に対応することができる。このしきい値より高い速度は、空気(すなわち低圧部位)における注射に対応することができる。位置または速度における、大きく突然の予想されない変化をこうして使用して、注射部位における望ましくない変化(たとえば早すぎる取り外しまたは針の後退)を表示することができる。
【0068】
温度測定
いくつかの例では、ウェアラブル注射および/または注入デバイス100は、容器104の内部の治療薬の温度などの温度を測定するように構成され得る。たとえば、1つまたは複数の温度センサ126を使用して、容器104の温度を検出することができる。この温度データを使用することにより、容器の温度に対する注射器内の1つまたは複数の場所における温度、注射器内の空間的温度勾配、容器の測定場所における温度変化の速度(すなわち温度勾配)などの複数の要因の少なくとも1つに基づいて、容器104の内部の治療薬の温度が予測され得る。温度センサデータを使用して過渡的温度状態中、周囲環境温度を予測し、または推定することができる。デバイス内のローカル温度に対する周囲環境温度を推定することにより、容器の内部の治療薬の温度は、経時的により良好に予測され得る。温度データを使用して、ウェアラブル注射および/または注入デバイス100が投薬手順を実施する準備ができているかどうかを表示することができる。たとえば、特定の治療薬は、これらが所定の温度(または温度範囲)にある場合のみ送達され得る。ウェアラブル注射および/または注入デバイス100は、治療薬がそのような所定温度(または温度範囲)を上回る/下回る場合に治療薬の送達を防止することができる。いくつかの例では、ウェアラブル注射および/または注入デバイス100は、増大させたまたは低下させた送達速度などの拡張された投薬手順を使用して、所定温度(または温度範囲)の外側にある治療薬の送達を可能にすることができる。
【0069】
また、温度データを用量進行データと組み合わせて、異常な送達速度(または用量進行における失速)が、治療薬の粘度における温度関連変化によって引き起こされそうであるかどうか(たとえば低温における粘度の増大による失速)を検出するか、または推定することができる。これらのシナリオでは、温度データの変化を使用して、異常な送達状態の解消が予想されるかどうか(たとえば現在注射は失速しているが、温度が増大することによって回復しそうであると考えられる)を表示し、それによって、たとえば一時的な送達中断のための早すぎる取り外しを防止することができる。
【0070】
外部通信
いくつかの例では、ウェアラブル注射および/または注入デバイス100は、図13~14に示すように、ネットワークを介して遠隔デバイス119と外部通信するように構成され得る。通信は、一方向通信であってよく、この場合ウェアラブル注射および/または注入デバイス100は、遠隔デバイス119に情報を送るのみ、または遠隔デバイス119から情報を受け入れるのみを行うように構成される。他の例では、ウェアラブル注射および/または注入デバイス100は、遠隔デバイス119と2方向通信するように構成されてよく、この場合ウェアラブル注射および/または注入デバイス100は、遠隔デバイス119に情報を送ると共に遠隔デバイス119から情報を受け入れるように構成される。いくつかの例では、ウェアラブル注射および/または注入デバイス100は、有線接続、無線接続、または有線接続および無線接続の組み合わせなどを介して、ウェアラブル注射および/または注入デバイス100が遠隔デバイス119と通信することを可能にする送受信機様構成要素(たとえば、送受信機、別個の受信機および送信機など)を有することができる。送受信機様構成要素は、ウェアラブル注射および/または注入デバイス100が遠隔デバイス119から情報を受け入れ、および/または遠隔デバイス119に情報を提供することを可能にすることができる。
【0071】
いくつかの例では、ネットワークは、1つまたは複数の有線および/または無線ネットワークを含むことができる。たとえば、ネットワークは、セルラーネットワーク(たとえば、ロングタームエヴォリューション(LTE)ネットワーク、第三世代(3G)ネットワーク、第4世代(4G)ネットワーク、符号分割多重接続(CDMA)ネットワークなど)、地上波公共移動通信ネットワーク(PLMN)、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、メトロポリタンエリアネットワーク(MAN)、電話網(たとえば、公衆交換電話網(PSTN))、プライベートネットワーク、アドホックネットワーク、イントラネット、インターネット、光ファイバベースネットワーク、クラウドコンピューティングネットワークなど、および/またはこれらもしくは他のタイプのネットワークの組み合わせを含むことができる。
【0072】
いくつかの例では、ウェアラブル注射および/または注入デバイス100は、タブレットまたは携帯電話、またはサーバベースのアプリケーションなどの遠隔デバイス119上のアプリケーション121と、ブルートゥースまたはWi-Fiまたはセルラー方式通信プロトコルなどを使用して無線で外部通信するように構成され得る。遠隔デバイス119上のアプリケーション121は、ウェアラブル注射および/または注入デバイス100の性能に関するリアルタイムデータを表示するように構成され得る。いくつかの例では、遠隔デバイス119上のアプリケーション121は、ウェアラブル注射および/または注入デバイス100(図15)に関連付けられた任意のデータを表示するように構成され得る。いくつかの例では、ウェアラブル注射および/または注入デバイス100は、遠隔デバイスとの無線外部通信のためのBLE/MCU無線機を有することができる。
【0073】
遠隔デバイスは、ウェアラブル注射および/または注入デバイス100の使用中、患者に文脈的指示を提供するように構成され得る。たとえば、遠隔デバイスは、ウェアラブル注射および/または注入デバイス100を使用して投薬手順をセットアップし、開始する方法に関して患者に指示を提供することができる。いくつかの例では、遠隔デバイスは、投薬手順が進んでいることを患者に表示し、投薬手順のさまざまな段階の状況表示を提供することができる。さらなる例では、遠隔デバイスは、投薬手順が失速し得る場合などの異常なイベントにおいて従うべき手順に関する指示を患者に提供することができる。ウェアラブル注射および/または注入デバイス100は、遠隔デバイスを使用して、患者の医療提供者または医療保険会社などの第三者に、患者に送達された治療薬の時間、日付、およびボリューム(量)についての情報を送るように構成され得る。ウェアラブル注射および/または注入デバイス100は、異常なイベントの場合に、テキストによる警告を送るか、または第三者の電話番号をダイヤルするなどによってそのような第三者とコンタクトすることができる。
【0074】
ウェアラブル注射および/または注入デバイス100からのデータは、リアルタイムで遠隔デバイスに送信されてよく、および/またはデータは、送達後の使用のために遠隔データベース内に記憶されてよい。いくつかの例では、遠隔デバイスを使用して、ウェアラブル注射および/または注入デバイス100が投薬手順を開始する前に安全プロトコルを実行することができる。たとえば、遠隔デバイスは、薬物リコールについてチェックし、正しい治療薬が使用されていることを確認し、および/または最後の投薬手順の時間およびボリュームを確認することができる。ウェアラブル注射および/または注入デバイス100は、遠隔デバイス上で実行された安全プロトコルが異常を検出したかどうかに応じて、新しい投薬手順を開始することが遮られ得る。
【0075】
強化された視覚インジケータ
いくつかの例では、ウェアラブル注射および/または注入デバイス100は、1つまたは複数の強化された電子インジケータを有することができる。たとえば、ウェアラブル注射および/または注入デバイス100は、3色(青色、赤色、白色)を有するLEDベースインジケータなどの1つまたは複数の視覚インジケータを有することができる。代替的には、または加えて、ウェアラブル注射および/または注入デバイス100は、チャイム/ビープ音を有する圧電ベースブザーなどの1つまたは複数の可聴インジケータを有することができる。
【0076】
視覚インジケータを用いて、ウェアラブル注射および/または注入デバイスの状況およびその性能に関する視覚メッセージの範囲をユーザに送達することができる。たとえば、視覚インジケータの色を使用して、ウェアラブル注射および/または注入デバイス100の状態、たとえばデバイスが通電されているかどうか、投薬手順が進んでいるかどうかなどを表示することができる。代替的に、または加えて、視覚インジケータは定常状態とフラッシング作動との間で作動されて、ウェアラブル注射および/または注入デバイス100の状態を表示することができる。スピーカポートをウェアラブル注射および/または注入デバイス100のハウジング内に提供して、可聴メッセージをユーザに送達することができる。
【0077】
本発明を、最も実用的で好ましい例であると現在考えられているものに基づいて例示の目的で詳細に説明してきたが、そのような詳細はこの目的のためにすぎず、本発明は、開示する例に限定されず、その反対に、本開示の趣旨および範囲内に入る改変形態および等価の配置を対象とするように意図されることを理解されたい。たとえば、本発明は、可能な範囲で、任意の例の1つまたは複数の特徴を任意の他の例の1つまたは複数の特徴と組み合わせることを企図していることを理解されたい。
図1
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図10
図11
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図13
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図23
図24