(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-22
(45)【発行日】2024-03-04
(54)【発明の名称】ポリアミド酸組成物、ポリアミド酸組成物の製造方法及びそれを含むポリイミド
(51)【国際特許分類】
C08G 73/10 20060101AFI20240226BHJP
【FI】
C08G73/10
(21)【出願番号】P 2022500101
(86)(22)【出願日】2019-10-30
(86)【国際出願番号】 KR2019014424
(87)【国際公開番号】W WO2021006427
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2022-01-04
(31)【優先権主張番号】10-2019-0081065
(32)【優先日】2019-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520160738
【氏名又は名称】ピーアイ・アドバンスド・マテリアルズ・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】イン・ファン・ファン
(72)【発明者】
【氏名】ギョン・ヒョン・ロ
(72)【発明者】
【氏名】イク・サン・イ
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】特表2022-539591(JP,A)
【文献】特表2022-539592(JP,A)
【文献】特開2002-327056(JP,A)
【文献】特開2018-165346(JP,A)
【文献】特開2019-014907(JP,A)
【文献】特開平07-292105(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G73/00-73/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非フッ素系ジアミン単量体及び非フッ素系ジアンハイドライド単量体を重合単位で含み、フッ素系ジアミン単量体及びフッ素系ジアンハイドライド単量体を重合単位で含み、
硬化後の誘電率が3.0以下であり、ガラス転移温度は、340℃以上であることを特徴とする、ポリアミド酸組成物であって、
フッ素系ジアンハイドライド単量体は、ジアンハイドライド単量体100モル%に対して5~60モル%の範囲内に含まれ、
23℃温度及び1s
-1のせん断速度条件で測定した粘度が10,000cP以下である、ポリアミド酸組成物。
【請求項2】
フッ素系ジアミン単量体及びフッ素系ジアンハイドライド単量体は、分子構造内に少なくとも一つ以上のペルフルオロアルキル基を含むことを特徴とする、請求項1に記載のポリアミド酸組成物。
【請求項3】
フッ素系ジアミン単量体及びフッ素系ジアンハイドライド単量体は、互いに重合されないことを特徴とする、請求項1に記載のポリアミド酸組成物。
【請求項4】
フッ素系ジアミン単量体又はフッ素系ジアンハイドライド単量体は、2以上のベンゼン環を有することを特徴とする、請求項1に記載のポリアミド酸組成物。
【請求項5】
フッ素系ジアミン単量体は、ジアミン単量体100モル%に対して45~98モル%の範囲内に含まれることを特徴とする、請求項1に記載のポリアミド酸組成物。
【請求項6】
固形分が15~40%の範囲内であることを特徴とする、請求項1に記載のポリアミド酸組成物。
【請求項7】
フッ素系ジアミン単量体の両側アミン基に2個の非フッ素系ジアンハイドライド単量体を重合する第1段階;前記重合された非フッ素系ジアンハイドライド単量体に非フッ素系ジアミン単量体を追加で重合する第2段階及び前記重合された非フッ素系ジアミン単量体にフッ素系ジアンハイドライド単量体を追加で重合する第3段階を含むことを特徴とする、請求項1に記載のポリアミド酸組成物の製造方法。
【請求項8】
フッ素系ジアンハイドライド単量体の両側アンハイドライド基に2個の非フッ素系ジアミン単量体を重合する第1段階;前記重合された非フッ素系ジアミン単量体に非フッ素系ジアンハイドライド単量体を追加で重合する第2段階及び前記重合された非フッ素系ジアンハイドライド単量体にフッ素系ジアミン単量体を追加で重合する第3段階を含むことを特徴とする、請求項1に記載のポリアミド酸組成物の製造方法。
【請求項9】
第2段階は、2個の非フッ素系ジアンハイドライド単量体に2個の非フッ素系ジアミン単量体が重合されることを特徴とする、請求項7に記載のポリアミド酸組成物の製造方法。
【請求項10】
第3段階は、2個の非フッ素系ジアミン単量体に2個のフッ素
系ジアンハイドライド単量体が重合されることを特徴とする、請求項9に記載のポリアミド酸組成物の製造方法。
【請求項11】
前記2個のフッ素系又は非フッ素系ジアンハイドライド単量体に、前記第2段階まで重合された重合単位が追加で重合されることを特徴とする、請求項10に記載のポリアミド酸組成物の製造方法。
【請求項12】
第2段階は、2個の非フッ素系ジアミン単量体に2個の非フッ素系ジアンハイドライド単量体が重合されることを特徴とする、請求項8に記載のポリアミド酸組成物の製造方法。
【請求項13】
第3段階は、2個の非フッ素系ジアンハイドライド単量体に2個のフッ素
系ジアミン単量体が重合されることを特徴とする、請求項12に記載のポリアミド酸組成物の製造方法。
【請求項14】
前記2個のフッ素系又は非フッ素系ジアミン単量体に、前記第2段階まで重合された重合単位が追加で重合されることを特徴とする、請求項13に記載のポリアミド酸組成物の製造方法。
【請求項15】
請求項1に記載のポリアミド酸組成物の硬化物であることを特徴とする、ポリイミド。
【請求項16】
請求項15に記載のポリイミドをフィルム又はシート形態で含むことを特徴とする、ポリイミドフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互引用
【0002】
本出願は、2019年7月5日に出願された大韓民国特許出願第10-2019-0081065号に基づく優先権の利益を主張し、該当大韓民国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として組み込まれる。
【0003】
技術分野
【0004】
本出願は、ポリアミド酸組成物、ポリアミド酸組成物の製造方法及びそれを含むポリイミドに関する。
【背景技術】
【0005】
ポリイミド(polyimide、PI)は、強直な芳香族主鎖を基本とする熱的安定性を有している高分子物質であって、イミド環の化学的安定性を基礎として優れた強度、耐化学性、耐候性、耐熱性などの機械的特性を有する。
【0006】
最近では、各種電子機器が薄型化、軽量化及び小型化するに従って軽くて柔軟性に優れた薄型のポリイミドフィルムを回路基板の絶縁素材又はディスプレイ用ガラス基板を代替し得るディスプレイ基板として使用しようとする研究が数多く進行されている。
【0007】
ポリイミドは、絶縁特性、低い誘電率のような優れた電気的特性によって電子、通信、光学など広範囲な産業分野に適用されているが、一定レベル以下の誘電率を具現することは技術的な限界を有する。
【0008】
従来技術は、前記誘電特性を具現するためにフッ素系粒子を添加剤としてポリイミド樹脂と配合して用いていたが、この場合、誘電率は大きく減少させ得るが、ポリイミド樹脂との相溶性及び分散性の問題によりフィルムの耐熱性及び機械的特性を低下させるという問題を発生させる。したがって、誘電率と耐熱性及び機械的特性を同時に満足させるポリイミドを提供することが重要な技術的課題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本出願は、低い誘電率と耐熱性及び機械的特性を同時に具現し得るポリアミド酸組成物、ポリアミド酸組成物の製造方法及びそれを含むポリイミドを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本出願は、ポリアミド酸組成物に関する。本出願のポリアミド酸組成物は、ジアミン単量体及びジアンハイドライド単量体を重合単位で含む。一つの例示で、本出願のポリアミド酸組成物は、非フッ素系ジアミン単量体及び非フッ素系ジアンハイドライド単量体を重合単位で含み、フッ素系ジアミン単量体及びフッ素系ジアンハイドライド単量体のうち少なくとも一つを重合単位で含むことができる。前記ポリアミド酸組成物が前記単量体を重合単位で含むということは、ポリイミドに硬化する前に各単量体間に重合反応が起きた状態を意味する。上記のポリアミド酸組成物は、硬化後の誘電率が3.0以下であってもよく、また、硬化後のガラス転移温度は、340℃以上であってもよい。前記誘電率の上限は、特に制限されず、2.95、2.93、2.9、2.88、2.86、2.84、2.82、2.8又は2.78であってもよく、誘電率の下限は、1又は1.5であってもよい。また、前記ガラス転移温度の下限は、特に制限されないが、340℃、343℃、345℃、350℃、360℃、370℃、375℃又は379℃であってもよく、ガラス転移温度の上限は、500℃又は400℃であってもよい。本出願のポリアミド酸組成物は、前記単量体を含むことによって、硬化後に低い誘電率と、耐熱性及び機械的特性を同時に満足させ得るポリイミドを提供することができる。
【0011】
本明細書でフッ素系ジアミン単量体及びフッ素系ジアンハイドライド単量体は、分子構造内にフッ素原子を含んでいる単量体を意味することができる。前記フッ素原子は、前記単量体内に多様な位置及び構造で含まれ得、これは特別に制限されない。例えば、前記フッ素系ジアミン単量体及びフッ素系ジアンハイドライド単量体は、分子構造内に少なくとも一つ以上のペルフルオロアルキル基を含むことができる。前記ペルフルオロアルキル基は、例えば、ペルフルオロメチル基であってもよい。本出願は、前記フッ素系単量体を重合単位で含むことによって、従来に添加剤としてフッ素系粒子を含んでいるものとは異なり、粒子の相溶性及び分散性の問題なしに前記添加剤なしでも誘電率を低めることができ、これによって、耐熱性及び機械的特性を共に具現し得る。
【0012】
本出願の具体例で、前記フッ素系ジアミン単量体及びフッ素系ジアンハイドライド単量体は、互いに重合されなくてもよい。すなわち、本出願のポリアミド酸組成物は、前記フッ素系ジアミン単量体とフッ素系ジアンハイドライド単量体は互いに反応せず、全体重合単位で互いに直接会わなくてもよい。従来技術は、フッ素系添加剤を用いて誘電率を低めたが、本願発明は、フッ素系単量体を用いるが、フッ素系添加剤なしにフッ素系単量体のみを用いる場合に誘電率を十分に低めることに限界がある。ただし、本出願は、単量体の重合方法及び重合順序を調節することによって、誘電率を十分に低めると共に硬化後の耐熱性及び機械的特性を一緒に具現し得る。
【0013】
一つの例示で、本出願のフッ素系ジアミン単量体及びフッ素系ジアンハイドライド単量体の種類は、特に制限されない。一つの例示で、前記フッ素系ジアミン単量体及びフッ素系ジアンハイドライド単量体は、2以上のベンゼン環を有することができる。一つの例示で、前記フッ素系ジアミン単量体は、例えば、前記ベンゼン環の水素が置換されてペルフルオロアルキル基を有することができる。また、一つの例示で、前記フッ素系ジアミン単量体は、二つのベンゼン環を連結するアルキレン基に上述したペルフルオロアルキル基を有することができる。また、一つの例示で、前記フッ素系ジアンハイドライド単量体は、ベンゼン環の水素が置換されてペルフルオロアルキル基を有することができ、また、一つの例示で、二つのベンゼン環を連結するアルキレン基に上述したペルフルオロアルキル基を有することができる。
【0014】
一つの例示で、前記フッ素系ジアミン単量体は、全体ジアミン単量体100モル%に対して、45~98モル%、48~95モル%又は49~92モル%の範囲内に含まれ得る。また、前記フッ素系ジアンハイドライド単量体は、ジアンハイドライド単量体100モル%に対して、5~60モル%、8~57モル%又は9~55モル%の範囲内に含まれ得る。一方、前記フッ素系ジアミン単量体及びフッ素系ジアンハイドライド単量体の総含量は、全体単量体を100モル%としたとき、20~70モル%、23~60モル%、30~58モル%、35~55モル%又は42~53モル%の割合で含まれ得る。本出願は、前記単量体の含量比を調節することによって、硬化後にポリイミドの優れた誘電特性、耐熱性及び機械的特性を具現し得る。
【0015】
本明細書で前記ポリアミド酸組成物は、前記ポリアミド酸溶液と同一の意味で用いられ得る。
【0016】
ポリアミド酸溶液の製造に用いられ得るジアンハイドライド単量体は、芳香族テトラカルボン酸ジアンハイドライドであってもよく、前記芳香族テトラカルボン酸ジアンハイドライドは、ピロメリット酸ジアンハイドライド(又はPMDA)、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸ジアンハイドライド(又はBPDA)、2,3,3',4'-ビフェニルテトラカルボン酸ジアンハイドライド(又はa-BPDA)、オキシジフタル酸ジアンハイドライド(又はODPA)、ジフェニルスルホン-3,4,3',4'-テトラカルボン酸ジアンハイドライド(又はDSDA)、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルフィドジアンハイドライド、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパンジアンハイドライド、2,3,3'、4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸ジアンハイドライド、3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸ジアンハイドライド(又はBTDA)、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタンジアンハイドライド、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパンジアンハイドライド、p-フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸アンハイドライド)、p-ビフェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸アンハイドライド)、m-テルフェニル-3,4,3',4'-テトラカルボン酸ジアンハイドライド、p-テルフェニル-3,4,3',4'-テトラカルボン酸ジアンハイドライド、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼンジアンハイドライド、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼンジアンハイドライド、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ビフェニルジアンハイドライド、2,2-ビス[(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパンジアンハイドライド(BPADA)、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸ジアンハイドライド、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸ジアンハイドライド、4,4'-(2,2-ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸ジアンハイドライドなどを例示し得る。
【0017】
前記ジアンハイドライド単量体は、必要に応じて、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができるが、本出願は、上述した結合解離エネルギーを考慮して、例えば、ピロメリット酸ジアンハイドライド(PMDA)、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸ジアンハイドライド(s-BPDA)又は2,3,3',4'-ビフェニルテトラカルボン酸ジアンハイドライド(a-BPDA)を含むことができる。
【0018】
また、ポリアミド酸溶液の製造に用いられ得るジアミン単量体は、芳香族ジアミンであって、以下のように分類して例示し得る。
【0019】
1)1,4-ジアミノベンゼン(又はパラフェニレンジアミン、PDA)、1,3-ジアミノベンゼン、2,4-ジアミノトルエン、2,6-ジアミノトルエン、3,5-ジアミノ安息香酸(又はDABA)などのように、構造上ベンゼン核1個を有するジアミンであって、相対的に強直な構造のジアミン;
【0020】
2)4,4'-ジアミノジフェニルエーテル(又はオキシジアニリン、ODA)、3,4'-ジアミノジフェニルエーテルなどのジアミノジフェニルエーテル、4,4'-ジアミノジフェニルメタン(メチレンジアミン)、3,3'-ジメチル-4,4'-ジアミノビフェニル、2,2'-ジメチル-4,4'-ジアミノビフェニル、2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノビフェニル、3,3'-ジメチル-4,4'-ジアミノジフェニルメタン、3,3'-ジカルボキシ-4,4'-ジアミノジフェニルメタン、3,3',5,5'-テトラメチル-4,4'-ジアミノジフェニルメタン、ビス(4-アミノフェニル)スルフィド、4,4'-ジアミノベンズアニリド、3,3'-ジクロロベンジジン、3,3'-ジメチルベンジジン(又はo-トリジン)、2,2'-ジメチルベンジジン(又はm-トリジン)、3,3'-ジメトキシベンジジン、2,2'-ジメトキシベンジジン、3,3'-ジアミノジフェニルエーテル、3,4'-ジアミノジフェニルエーテル、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、3,3'-ジアミノジフェニルスルフィド、3,4'-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4'-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3'-ジアミノジフェニルスルホン、3,4'-ジアミノジフェニルスルホン、4,4'-ジアミノジフェニルスルホン、3,3'-ジアミノベンゾフェノン、4,4'-ジアミノベンゾフェノン、3,3'-ジアミノ-4,4'-ジクロロベンゾフェノン、3,3'-ジアミノ-4,4'-ジメトキシベンゾフェノン、3,3'-ジアミノジフェニルメタン、3,4'-ジアミノジフェニルメタン、4,4'-ジアミノジフェニルメタン、2,2-ビス(3-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-アミノフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、3,3'-ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4'-ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4'-ジアミノジフェニルスルホキシドなどのように、構造上ベンゼン核2個を有するジアミン;
【0021】
3)1,3-ビス(3-アミノフェニル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノフェニル)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(又はTPE-Q)、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(又はTPE-Q)、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)-4-トリフルオロメチルベンゼン、3,3'-ジアミノ-4-(4-フェニル)フェノキシベンゾフェノン、3,3'-ジアミノ-4,4'-ジ(4-フェニルフェノキシ)ベンゾフェノン、1,3-ビス(3-アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,3-ビス[2-(4-アミノフェニル)イソプロピル]ベンゼン、1,4-ビス[2-(3-アミノフェニル)イソプロピル]ベンゼン、1,4-ビス[2-(4-アミノフェニル)イソプロピル]ベンゼンなどのように、構造上ベンゼン核3個を有するジアミン;
【0022】
4)3,3'-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、3,3'-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4'-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4'-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[3-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[3-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[3-(3-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[3-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[3-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[3-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[3-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[3-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[3-(3-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[3-(4-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、2,2-ビス[3-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[3-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、2,2-ビス[3-(3-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[3-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3、-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパンなどのように、構造上ベンゼン核4個を有するジアミン。
【0023】
前記ジアミン単量体は、必要に応じて、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができ、本出願は、上述した結合解離エネルギーを考慮して、例えば、1,4-ジアミノベンゼン(PPD)、1,3-ジアミノベンゼン(MPD)、2,4-ジアミノトルエン、2,6-ジアミノトルエン又は4,4'-メチレンジアミン(MDA)を含むことができる。
【0024】
一つの具体的な例で、前記ポリアミド酸組成物は、全体重量を基準として固形分を15~40重量%含むことができる。本出願は、前記ポリアミド酸組成物の固形分含量を調節することによって、粘度上昇を制御すると共に硬化過程で多量の溶媒を除去しなければならない製造コストと工程時間の増加を防止し得る。
【0025】
本出願のポリアミド酸組成物は、低粘度特性を有する組成物であってもよい。本出願のポリアミド酸組成物は、23℃の温度及び1s-1のせん断速度条件で測定した粘度が10,000cP以下、9,000cP以下であってもよい。その下限は特に限定されないが、500cP以上又は1000cP以上であってもよい。前記粘度は、例えば、Haake社のRheostress 600を用いて測定したものであってもよく、1/sのせん断速度、23℃温度及び1mmプレートギャップ条件で測定したものであってもよい。本出願は、前記粘度範囲を調節することによって、優れた工程性を有する前駆体組成物を提供してフィルム又は基板成形時に目的とする物性のフィルム又は基板を形成し得る。
【0026】
一具体例で、本出願のポリアミド酸組成物は、硬化後の重量平均分子量が10,000~100,000g/mol、15,000~80,000g/mol、18,000~70,000g/mol、20,000~60,000g/mol、25,000~55,000g/mol又は30,000~50,000g/molの範囲内であってもよい。本出願で用語「重量平均分子量」は、GPC(Gel permeation Chromatograph)で測定した標準ポリスチレンに対する換算数値を意味する。
【0027】
本出願は、前記ポリアミド酸組成物が有機溶媒を含むことができる。前記有機溶媒は、ポリアミド酸が溶解され得る有機溶媒であれば、特に限定されないが、一つの例として、非プロトン性極性溶媒(aprotic polar solvent)であってもよい。
【0028】
前記非プロトン性極性溶媒は、例えば、N,N'-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N'-ジエチルホルムアミド(DEF)、N,N'-ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルプロパンアミド(DMPA)などのアミド系溶媒、p-クロロフェノール、o-クロロフェノールなどのフェノール系溶媒、N-メチル-ピロリドン(NMP)、ガンマブチロラクトン(GBL)及びジグリム(Diglyme)などが挙げられ、これらは単独に又は2種以上組み合わせて用いられ得る。
【0029】
本出願は、場合によって、トルエン、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、水などの補助的溶媒を用いてポリアミド酸の溶解度を調節してもよい。
【0030】
一つの例示で、前記有機溶媒は、N-メチル-ピロリドン(NMP)であってもよい。
【0031】
一方、本出願のポリアミド酸組成物は、摺動性、熱伝導性、導電性、コロナ耐性、ルーフ硬度などのフィルムの多様な特性の改善を目的として充填材が含まれ得る。添加される充填材は、特に限定されるものではないが、例えば、シリカ、酸化チタン、アルミナ、窒化ケイ素、窒化ホウ素、リン酸水素カルシウム、リン酸カルシウム、雲母などが挙げられる。
【0032】
前記充填材の粒径は、特に限定されるものではなく、改質するフィルム特性と添加する充填材の種類によって決定できる。前記平均粒径は、0.05~20μm、0.1~10μm、0.1~5μm又は0.1~3μmであってもよい。本明細書で平均粒径は、特に異に規定しない限り、D50粒度分析によって測定した平均粒径であってもよい。
【0033】
本出願は、前記粒径範囲を調節することによって、改質効果を十分に維持すると共に表面性を損傷させず、機械的特性を低下させないことができる。
【0034】
また、本出願は、充填材の添加量に対しても特に限定されるものではなく、改質するフィルム特性や充填材の粒径などによって決定できる。本出願で、前記充填材の添加量は、ポリイミド樹脂100重量部に対して、0.01~10重量部、0.01~5重量部又は0.02~1重量部であってもよい。本出願は、前記含量を調節することによって、充填材の改質効果を十分に維持すると共にフィルムの機械的特性を損傷させないことができる。
【0035】
前記充填材の添加方法は、特に限定されるものではなく、同種業界の公知の方法を用いることができる。
【0036】
また、本出願は、ポリアミド酸組成物の製造方法に関する。前記製造方法は、上述したポリアミド酸組成物の製造方法であってもよい。
【0037】
一つの例示で、前記製造方法は、フッ素系ジアミン単量体の両側アミン基に2個の非フッ素系ジアンハイドライド単量体を重合する第1段階;前記重合された非フッ素系ジアンハイドライド単量体に非フッ素系ジアミン単量体を追加で重合する第2段階及び前記重合された非フッ素系ジアミン単量体にフッ素系又は非フッ素系ジアンハイドライド単量体を追加で重合する第3段階を含むことができる。また、本出願の製造方法は、フッ素系ジアンハイドライド単量体の両側アンハイドライド基に2個の非フッ素系ジアミン単量体を重合する第1段階;前記重合された非フッ素系ジアミン単量体に非フッ素系ジアンハイドライド単量体を追加で重合する第2段階及び前記重合された非フッ素系ジアンハイドライド単量体にフッ素系又は非フッ素系ジアミン単量体を追加で重合する第3段階を含むことができる。本出願は、前記三段階の重合段階を通じて、フッ素系ジアミン単量体とフッ素系ジアンハイドライド単量体が互いに反応せずにすることができ、それによって、優れた誘電率とともに耐熱性及び機械的特性を具現し得る。
【0038】
本出願の具体例で、まず、フッ素系ジアミン単量体の両側アミン基に2個の非フッ素系ジアンハイドライド単量体を重合する第1段階に引き続いて進行される前記第2段階は、前記2個の非フッ素系ジアンハイドライドに2個の非フッ素系ジアミン単量体が重合されるものを含むことができる。また、引き続き、前記第3段階は、前記2個の非フッ素系ジアミン単量体に2個のフッ素系又は非フッ素系ジアンハイドライド単量体が重合されるものを含むことができる。また、引き続き、前記製造方法は、前記2個のフッ素系又は非フッ素系ジアンハイドライド単量体に、前記第2段階まで重合された重合単位が追加で重合されるものを含むことができる。すなわち、前記第2段階まで重合された重合単位は、フッ素系又は非フッ素系ジアンハイドライドを媒介として互いに連結され得る。本出願は、上記のような重合方法及びそれから生成される重合順序を調節することによって、低誘電特性とともに耐熱性及び機械的特性を同時に具現し得る。
【0039】
同様に、フッ素系ジアンハイドライド単量体の両側アンハイドライド基に2個の非フッ素系ジアミン単量体を重合する第1段階に引き続いて進行される第2段階は、2個の非フッ素系ジアミン単量体に2個の非フッ素系ジアンハイドライド単量体が重合され得る。また、引き続き、第3段階は、2個の非フッ素系ジアンハイドライド単量体に2個のフッ素系又は非フッ素系ジアミン単量体が重合され得る。また、引き続き、前記製造方法は、前記2個のフッ素系又は非フッ素系ジアミン単量体に、前記第2段階まで重合された重合単位が追加で重合され得る。すなわち、前記第2段階まで重合された重合単位は、フッ素系又は非フッ素系ジアミン単量体を媒介として互いに連結され得る。本出願は、上記のような重合方法及びそれから生成される重合順序を調節することによって、低誘電特性とともに耐熱性及び機械的特性を同時に具現し得る。
【0040】
一般的に、ポリアミド酸溶液の製造は、例えば、ジアミン単量体の全量を溶媒中に入れ、その後、ジアンハイドライド単量体をジアミン単量体と実質的に等モル又は過量となるように添加して重合する方法、又はジアンハイドライド単量体の全量を溶媒中に入れ、その後、ジアミン単量体をジアンハイドライド単量体と実質的に等モル又は過量となるように添加して重合する方法などを用いる。このような方法は、前記本出願の製造方法においても用いられ得る。
【0041】
また、本出願は、前記ポリアミド酸組成物の硬化物であるポリイミドに関する。一つの例示で、前記ポリイミドは、上述したポリアミド酸組成物又はその製造方法によって製造された前駆体組成物の硬化物であってもよい。
【0042】
また、本出願は、前記ポリイミドをフィルム又はシート形態で含むポリイミドフィルムであってもよい。
【0043】
一つの例示で、本出願は、ポリイミドフィルムの製造方法に関する。本出願は、前記ポリアミド酸組成物を支持体に製膜して乾燥してゲルフィルムを製造する段階;及び前記ゲルフィルムを硬化する段階を含むポリイミドフィルムの製造方法を提供することができる。
【0044】
具体的に、上記したポリアミド酸組成物をイミド化してポリイミドフィルムを製造する方法に対しては、従来の公知となった方法を用いることができる。
【0045】
このようなイミド化の具体的な方法としては、熱イミド化法、化学イミド化法又は前記熱イミド化法と化学イミド化法を併用する複合イミド化法が例示でき、これらに対しては、以下の非制限的な例を通じてより具体的に説明する。
【発明の効果】
【0046】
本出願は、低い誘電率と、耐熱性及び機械的特性を同時に具現し得るポリアミド酸組成物、ポリアミド酸組成物の製造方法及びそれを含むポリイミドを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、本発明による実施例及び本発明によらない比較例を通じて本発明をより詳しく説明するが、本発明の範囲が下記の提示された実施例によって制限されるものではない。
【実施例】
【0048】
<実施例1>
【0049】
撹拌機及び窒素注入排出管を具備した500mL反応器に窒素を注入しながらN-メチル-ピロリドン(NMP)を投入して反応器の温度を30℃に設定した後、ジアミン単量体としてフッ素系単量体である2,2'-Bis(trifluoromethyl)benzidine(TFMB)及びジアンハイドライド単量体として非フッ素系単量体であるピロメリット酸ジアンハイドライド(PMDA)を投入して完全に溶解されたことを確認する。その後、ジアミン単量体として非フッ素系単量体である4,4'-Oxydianiline(ODA)を投入して同一に重合反応を進行した。その後、ジアンハイドライド単量体としてフッ素系単量体である2,2-bis(3,4-anhydrodicarboxyphenyl)hexafluoropropane(6-FDA)を投入して40℃に温度を上げて加熱しながら120分間撹拌を続けた。その後、窒素雰囲気下で80℃に温度を上げて加熱しながら2時間の間追加的に撹拌を続けた。同一に重合反応を進行してポリアミド酸溶液を製造した。
【0050】
<実施例2~4、実施例6及び比較例1~4、比較例6>
【0051】
実施例1で、単量体及びその含量比を下記表1のように変更したこと以外は、実施例1と同一の方法で実施例2~4及び実施例6のポリアミド酸組成物を製造した。比較例1~4及び比較例6は、単量体及びその含量をそれぞれ下記表1のように変更し、ジアミン単量体2種及びジアンハイドライド単量体2種を同時に投入したこと以外は、実施例1と同一の方法でポリアミド酸組成物を製造した。
【0052】
【0053】
前記実施例及び比較例で製造されたポリアミド酸組成物を1,500rpm以上の高速回転を通じて気泡を除去した。その後、スピンコーターを用いてガラス基板に脱泡されたポリアミド酸成物を塗布した。その後、窒素雰囲気下及び120℃の温度で30分間乾燥してゲルフィルムを製造し、前記ゲルフィルムを45℃まで2℃/分の速度で昇温し、450℃で60分間熱処理し、30℃まで2℃/分の速度で冷却してポリイミドフィルムを収得した。その後、蒸留水にディッピング(dipping)してガラス基板からポリイミドフィルムを剥離した。製造されたポリイミドフィルムの物性を下記方式を用いて測定し、その結果を下記表2に示した。
【0054】
<実験例1-厚さ>
【0055】
製造されたポリイミドフィルムの厚さは、Anritsu社のフィルム厚さ測定機(Electric Film thickness tester)を用いて測定した。
【0056】
<実験例2-ガラス転移温度の測定>
【0057】
TA社の動的粘弾性分析(Dynamic Mechanical Analysis)Q800モデルを用い、ポリイミドフィルムを幅4mm、長さ20mmで切った後、窒素雰囲気下で5℃/minの昇温速度で、常温で550℃の温度区間条件でガラス転移温度を測定した。前記ガラス転移温度は、貯蔵弾性率(storage modulus)と損失弾性率(lossmodulus)の比によって計算されるtanδの最大ピークで判定した。
【0058】
<実験例3-誘電率及び誘電正接値>
【0059】
前記実施例及び比較例で製造したポリイミドフィルムの1GHzでの誘電率及び誘電正接をKeysight社のSPDR測定機を用いて測定した。その結果、測定された誘電率及び誘電正接値を下記表2に示した。
【0060】