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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-22
(45)【発行日】2024-03-04
(54)【発明の名称】水酸化リチウムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01D 15/02 20060101AFI20240226BHJP
【FI】
C01D15/02
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022502297
(86)(22)【出願日】2020-01-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-30
(86)【国際出願番号】 KR2020001504
(87)【国際公開番号】W WO2021015378
(87)【国際公開日】2021-01-28
【審査請求日】2022-01-13
(31)【優先権主張番号】10-2019-0087629
(32)【優先日】2019-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】522015113
【氏名又は名称】チョン ウン
【氏名又は名称原語表記】CHON,Uong
(74)【代理人】
【識別番号】110000590
【氏名又は名称】弁理士法人 小野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チョン ウン
【審査官】玉井 一輝
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第1456505(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108658099(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108341420(CN,A)
【文献】特表2019-518872(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0074075(KR,A)
【文献】韓国登録特許第10-1873933(KR,B1)
【文献】特開2012-106874(JP,A)
【文献】特開2019-178395(JP,A)
【文献】YUAN, Bo et al.,Effects of temperature on conversion of Li2CO3 to LiOH in Ca(OH)2 suspension,Particuology,2017年,34,pp.97-102
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01D 1/00-17/00
C01B 25/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸リチウムおよび水酸化カルシウムを用意する段階と、
前記炭酸リチウムおよび水酸化カルシウムを溶媒中で反応させて水酸化リチウム水溶液を収得する段階と、
前記炭酸リチウムおよび水酸化カルシウムを溶媒中で反応させて水酸化リチウム水溶液を収得する段階後に、
前記水酸化リチウム水溶液を濃縮させて固体状の水酸化リチウムと第1ろ液に分離する段階と、
前記第1ろ液中のリチウムを回収する段階と、を含み、
前記炭酸リチウムおよび水酸化カルシウムを溶媒中で反応させて水酸化リチウム水溶液を収得する段階で、
前記溶媒中の炭酸リチウムの濃度が、53.77g/L~80.65g/Lであることを特徴とする水酸化リチウムの製造方法。
【請求項2】
前記溶媒中の水酸化カルシウムの濃度が、27g/L~115g/Lであることを特徴とする請求項1に記載の水酸化リチウムの製造方法。
【請求項3】
前記炭酸リチウムおよび水酸化カルシウムを溶媒中で反応させて水酸化リチウム水溶液を収得する段階で、
反応時間が1~5時間であることを特徴とする請求項1に記載の水酸化リチウムの製造方法。
【請求項4】
前記炭酸リチウムおよび水酸化カルシウムを溶媒中で反応させて水酸化リチウム水溶液を収得する段階で、
反応温度が20~25℃であることを特徴とする請求項1に記載の水酸化リチウムの製造方法。
【請求項5】
前記水酸化リチウム水溶液を濃縮させて固体状の水酸化リチウムと第1ろ液に分離する段階後に、
前記固体状の水酸化リチウムを洗浄する段階と、
前記水酸化リチウムを洗浄した洗浄ろ液中のリチウムを回収する段階と、をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の水酸化リチウムの製造方法。
【請求項6】
前記第1ろ液中のリチウムを回収する段階または前記水酸化リチウムを洗浄した洗浄ろ液中のリチウムを回収する段階は、
前記第1ろ液または前記洗浄ろ液に炭酸供給物質を投入して炭酸リチウムの形態でリチウムを回収する段階を含むことを特徴とする請求項1または5に記載の水酸化リチウムの製造方法。
【請求項7】
前記第1ろ液または前記洗浄ろ液に炭酸供給物質を投入して炭酸リチウムの形態でリチウムを回収する段階後に、
固体状の炭酸リチウムおよび第2ろ液を分離する段階と、前記固体状の炭酸リチウムを洗浄する段階と、
前記第2ろ液または前記固体状の炭酸リチウムを洗浄した洗浄ろ液中のリチウムを回収する段階と、をさらに含むことを特徴とする請求項6に記載の水酸化リチウムの製造方法。
【請求項8】
前記第2ろ液または前記固体状の炭酸リチウムを洗浄した洗浄ろ液中のリチウムを回収する段階は、
前記第2ろ液または前記固体状の炭酸リチウムを洗浄した洗浄ろ液にリン供給物質を投入し、リン酸リチウムの形態でリチウムを回収する段階を含むことを特徴とする請求項7に記載の水酸化リチウムの製造方法。
【請求項9】
前記第1ろ液中のリチウムを回収する段階または前記水酸化リチウムを洗浄した洗浄ろ液中のリチウムを回収する段階は、
前記第1ろ液または前記洗浄ろ液にリン供給物質を投入し、リン酸リチウムの形態でリチウムを回収する段階を含むことを特徴とする請求項1または5に記載の水酸化リチウムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
水酸化リチウムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、リチウム2次電池は、携帯電話、ノートパソコンなどのIT機器の電源として多様に活用されているだけでなく、電気自動車の動力源としても注目されている。
【0003】
近い未来には、電気自動車および新再生エネルギー蓄電システム(Electricity Storage System)が大きく活性化してその需要が急増することが予想されている。
【0004】
電気自動車および蓄電システムの重要部品である正極材、負極材、電解質の原料として水酸化リチウムが使用される。したがって、需要が大きく増加することが予想される電気自動車および蓄電システムを市場に円滑に供給するために、水酸化リチウムを経済的に製造できる技術の開発が必要である。
【0005】
一般的に、リチウムは、リチウムを0.2~1.5g/L程度含有している天然の塩水(Brine)を自然蒸発させて、リチウムを60g/L程度の高濃度に濃縮させた後、炭酸塩を投入し、炭酸リチウム(LiCO)の形態で抽出する。このように抽出した炭酸リチウムから水酸化リチウムを製造する様々な方法が考案された。
【0006】
韓国登録特許第10-0725589号公報には、炭酸リチウム廃棄物から炭酸リチウムを炭酸リチウム溶解度(13g/L)ぐらいだけ溶出させて、リチウム濃度2.5g/Lの炭酸リチウム水溶液を得た後、これを水酸化カルシウムと反応させて、リチウム濃度2.5g/L以下の低濃度水酸化リチウム水溶液を製造し、水分を蒸発させて水酸化リチウムを得る技術を開示している。
【0007】
しかしながら、このような方法を利用する場合、水酸化リチウム水溶液のリチウム濃度が低いため、多くの蒸発費用が発生する問題がある。
【0008】
また、韓国登録特許第10-1873933号公報には、炭酸リチウムスラリーと水酸化カルシウムスラリーを混合し、70℃で2時間の間反応およびろ過して、リチウム濃度3.75g/L以上の炭酸リチウム水溶液を得、これを蒸発させて水酸化リチウム粉末を製造する方法を開示している。しかしながら、この方法は、炭酸リチウムと水酸化リチウムを反応させるために反応溶液を70℃に加熱しなければならないので、多くのエネルギー費用が発生し、製造された水酸化リチウムを高純度化するために洗浄する過程で多量の水酸化リチウムが溶出して消失されるので、リチウム回収率が低くなる問題がある。
【0009】
なお、韓国登録特許第10-1179505号公報には、炭酸リチウムを水に溶解させて炭酸リチウム水溶液を製造し、過酸化水素を混合した後、水分を蒸発させて過酸化リチウムを得る。このように得られた過酸化リチウムを水と反応させて水酸化リチウム一水和物を得る製造方法が開示されている。しかしながら、このような方法は、酸化性の強い過酸化水素を使用するので、爆発の危険性があり、これを防止するために、非常に低いリチウム濃度で反応を進行させなければならないので、水酸化リチウムを結晶化するのに多くのエネルギー費用が発生する問題がある。
【0010】
日本国登録特許第05769409号公報には、炭酸リチウムを有機酸と反応させて有機酸リチウム溶液を製造した後、これをバイポーラ膜が装着された電気透析装置で電気透析することによって、水酸化リチウムを製造する方法を開示する。しかしながら、この方法は、高価な電気透析装置を利用しなければならないと共に、電気代が非常に高く、バイポーラ膜を維持保守するに多くの時間と手間がかかるので、経済的でない。
【0011】
上述したように、現在まで開発された炭酸リチウムを用いた水酸化リチウムの製造方法を利用する場合、高いエネルギー費用、低いリチウム回収率および多くの設備投資費用などによって経済性が低下する問題がある。したがって、炭酸リチウムを用いて水酸化リチウムを経済的に生産できる技術の開発が切実に要求される。
【0012】
これより、本発明では、少ないエネルギー使用量と高いリチウム回収率で炭酸リチウムから水酸化リチウムを経済的に製造できる方法を提示する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の一具現例では、水酸化リチウムを経済的に製造する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一実施例では、炭酸リチウムおよび水酸化カルシウムを用意する段階と、前記炭酸リチウムおよび水酸化カルシウムを溶媒中で反応させて水酸化リチウム水溶液を収得する段階と、を含み、前記炭酸リチウムおよび水酸化カルシウムを溶媒中で反応させて水酸化リチウム水溶液を収得する段階で、前記溶媒中の炭酸リチウムの濃度が110g/L以下である水酸化リチウムの製造方法を提供する。
【0015】
より具体的に、前記溶媒中の炭酸リチウムの濃度が25~110g/Lであってもよい。
【0016】
より具体的に、前記溶媒中の炭酸リチウムの濃度が25~80g/Lであってもよい。
【0017】
前記溶媒中の水酸化カルシウムの濃度が27g/L~115g/Lであってもよい。水酸化カルシウムの濃度は、前記炭酸リチウムの濃度と関連していてもよい。すなわち、炭酸リチウムの量によって反応しうる水酸化カルシウムの投入量を制御できる。
【0018】
前記炭酸リチウムの投入量に関する説明は後述する。
【0019】
前記炭酸リチウムおよび水酸化カルシウムを溶媒中で反応させて水酸化リチウム水溶液を収得する段階で、反応時間が1~5時間であってもよい。反応時間に関連した説明は後述する。
【0020】
前記炭酸リチウムおよび水酸化カルシウムを溶媒中で反応させて水酸化リチウム水溶液を収得する段階で、反応温度は常温であってもよい。すなわち、反応雰囲気を活性化させるための別途のエネルギーが消耗されない。
【0021】
前記炭酸リチウムおよび水酸化カルシウムを溶媒中で反応させて水酸化リチウム水溶液を収得する段階後に、前記水酸化リチウム水溶液を濃縮させて固体状の水酸化リチウムと第1ろ液に分離する段階と、前記第1ろ液中のリチウムを回収する段階と、をさらに含んでもよい。
【0022】
前記水酸化リチウム水溶液を濃縮させて固体状の水酸化リチウムと第1ろ液に分離する段階後に、前記固体状の水酸化リチウムを洗浄する段階と、前記水酸化リチウムを洗浄した洗浄ろ液中のリチウムを回収する段階と、をさらに含んでもよい。
【0023】
前記第1ろ液中のリチウムを回収する段階または前記水酸化リチウムを洗浄した洗浄ろ液中のリチウムを回収する段階は、前記第1ろ液または前記洗浄ろ液に炭酸供給物質を投入して炭酸リチウムの形態でリチウムを回収する段階を含んでもよい。
【0024】
前記第1ろ液または前記洗浄ろ液に炭酸供給物質を投入して炭酸リチウムの形態でリチウムを回収する段階後に、固体状の炭酸リチウムおよび第2ろ液を分離する段階と、前記固体状の炭酸リチウムを洗浄する段階と、前記第2ろ液または前記固体状の炭酸リチウムを洗浄した洗浄ろ液中のリチウムを回収する段階と、をさらに含んでもよい。
【0025】
前記第2ろ液または前記固体状の炭酸リチウムを洗浄した洗浄ろ液中のリチウムを回収する段階は、前記第2ろ液または前記固体状の炭酸リチウムを洗浄した洗浄ろ液にリン供給物質を投入し、リン酸リチウムの形態でリチウムを回収する段階を含んでもよい。
【0026】
前記第1ろ液中のリチウムを回収する段階または前記水酸化リチウムを洗浄した洗浄ろ液中のリチウムを回収する段階は、前記第1ろ液または前記洗浄ろ液にリン供給物質を投入し、リン酸リチウムの形態でリチウムを回収する段階を含んでもよい。
【発明の効果】
【0027】
本発明の一具現例では、エネルギー費用と、設備投資費用およびリチウム損失を低減して、水酸化リチウムを経済的に製造できる方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】互いに異なる量の炭酸リチウムと水酸化カルシウムを蒸留水1Lにそれぞれ投入した後、常温(21℃)で5時間の間撹拌して得られた反応ろ液の水酸化リチウム転換率を示す。
図2】リチウム濃度10g/Lの高濃度リチウム溶液を製造するために、炭酸リチウム54gと水酸化カルシウム57gを常温(21℃)の水1Lに投入した後、5時間の間撹拌する中に30分間隔で採取した反応ろ液のリチウム濃度を示す。
図3】リチウム濃度10g/Lの高濃度リチウム溶液を製造するために、炭酸リチウム54gと水酸化カルシウム57gを常温(21℃)の水1Lに投入した後、5時間の間撹拌して得られた反応析出物を洗浄し、105℃で24時間の間乾燥した後、X線回折分析装置で得られたX線回折パターンを示す。
図4】水酸化リチウム粉末を製造するために、前記リチウム濃度9.4g/Lの高濃度水酸化リチウム溶液を35mbarに減圧したフラスコに入れ、フラスコを50℃に加熱した水に浸漬し、回転させながら水分を蒸発させて、水酸化リチウムを析出させ、ろ過した後、析出した水酸化リチウムを洗浄、乾燥した後、測定したX線回折パターンを示す。
図5】水酸化リチウムろ液と水酸化リチウム洗浄ろ液の混合液1Lに炭酸ナトリウムを340gを投入し、常温で4時間撹拌して得られた反応析出物のX線回折パターンを示す。
図6】水酸化リチウムろ液と水酸化リチウム洗浄ろ液の混合液1Lにリン酸ナトリウムを351gを投入し、常温で4時間撹拌して得られた反応析出物のX線回折パターンを示す。
図7】炭酸リチウムろ液と炭酸リチウム洗浄ろ液の混合液1Lにリン酸ナトリウムを26gを投入し、常温で4時間撹拌して得られた反応析出物のX線回折パターンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の具現例を詳細に説明する。ただし、これは、例示として提示されるものであり、これによって本発明が制限されるわけではなく、本発明は、後述する請求範囲の範疇によって定義される。
【0030】
前記本発明の一具現例による常温(例えば、20~25℃)懸濁液における炭酸リチウムと水酸化カルシウム反応は、下記反応式1によって行うことができる。
【0031】
[反応式1]
LiCO+Ca(OH)->2Li+2OH+CaCO
【0032】
すなわち、前記炭酸リチウムは、水酸化カルシウムと反応して水酸化リチウム水溶液を生成し、炭酸カルシウムが析出される。
【0033】
工程のエネルギー費用を節減するために、前記反応は常温で行うことができる。
【0034】
前記常温反応溶液をろ過して析出した炭酸カルシウムを分離し、水酸化リチウム溶液を得ることができる。
【0035】
水酸化リチウムの溶解度は128g/Lであり、リチウム濃度に換算すると、37.1g/Lである。
【0036】
したがって、前記水酸化リチウム溶液から水酸化リチウムを固体状態に析出させて分離するために、リチウム濃度が37.1g/L以上となるように水酸化リチウム水溶液を加熱して水分を蒸発させなければならない。
【0037】
したがって、水酸化リチウム溶液のリチウム濃度が低いと、多量の水を蒸発させなければならないので、エネルギー費用が増加する問題点がある。しかしながら、水分蒸発量を減少させるために、炭酸リチウムと水酸化カルシウム粉末を過度に多く投入して水酸化リチウム水溶液のリチウム濃度を過度に増加させようとすると、反応溶液の粘度が増加して、反応が良好に行われないと共に、析出される炭酸カルシウムの量が非常に多くなって、ろ過が難しくなり、層間水が多くなって、多量のリチウム損失が発生する。
【0038】
また、多量のリチウムと炭酸が水溶液に放出されて、水酸化リチウム溶液から炭酸リチウムが再析出することによって、反応の効率性が低下し、リチウム損失が増加する問題点がある。
【0039】
したがって、本発明では、反応溶液1Lに投入する炭酸リチウムの量を110g/L以下に限定する。より具体的に、25g~110gの範囲であってもよい。
【0040】
前記本発明の一具現例による水酸化リチウム溶液の蒸発、濃縮による水酸化リチウム粉末の析出は、下記反応式2または反応式3によって行うことができる。
【0041】
[反応式2]
Li+OH->LiOH
【0042】
[反応式3]
Li+OH+HO->LiOHH
【0043】
前記本発明の一具現例による水酸化リチウム析出溶液はろ過して水酸化リチウム(固体状)とろ液に分離することができる。
【0044】
前記本発明の一実施例による水酸化リチウム析出物は、水と混合して洗浄することができる。析出した水酸化リチウムと水が混合された洗浄溶液をろ過して水酸化リチウムと洗浄ろ液を分離することができる。
【0045】
上述したように、水酸化リチウムは、128g/Lの高い溶解度を有するので、前記本発明の一具現例による水酸化リチウムろ液には、リチウム濃度37g/Lで多量のリチウムが残留し、水酸化リチウム洗浄ろ液にもリチウムが高濃度で多量に存在する。
【0046】
したがって、水酸化リチウムろ液と洗浄ろ液からリチウムを回収しないと、多量のリチウムが損失されて、水酸化リチウム製造工程の効率性と経済性が低下する。
【0047】
したがって、多量のリチウムを含有する水酸化リチウムろ液と洗浄ろ液からリチウムを回収することが、水酸化リチウム製造工程で発生するリチウム損失を抑制するために必須である。
【0048】
水酸化リチウムろ液と洗浄ろ液からリチウムを回収する場合、水酸化リチウムと比べて溶解度が大きく低いため、大部分のリチウムを析出させることができる炭酸リチウム(溶解度13g/L)またはリン酸リチウム(溶解度0.39g/L)でリチウムを回収することができる。
【0049】
前記本発明の一具現例による水酸化リチウムろ液と水酸化リチウム洗浄ろ液を混合した水酸化リチウム溶液に炭酸供給物質を投入し、炭酸リチウムを析出させて、リチウムを効果的に回収することができる。
【0050】
前記炭酸リチウム析出反応は、下記の反応式4によって行うことができる。
【0051】
[反応式4]
2Li+2OH+NaCO->LiCO+2Na+2OH
【0052】
炭酸供給物質の一例である炭酸ナトリウムは、常温でリチウムと反応して炭酸リチウムを生成、析出させる。
【0053】
前記炭酸供給物質の具体的な例は、二酸化炭素ガスと炭酸塩である。
【0054】
より具体的に、前記炭酸塩は、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウムまたはこれらの組み合わせであってもよい。
【0055】
前記炭酸供給物質の投入量は、前記水酸化リチウム溶液のリチウム含有量に対して1当量以上であってもよい。前記範囲を満たす場合、反応速度の観点から有利になり得る。
【0056】
前記析出した炭酸リチウムは、ろ過により前記反応溶液から分離することができる。
【0057】
前記水酸化リチウム溶液に炭酸供給物質を投入して炭酸リチウムを生成、析出させてリチウムを回収する段階は常温で行われてもよい。
【0058】
このように炭酸リチウムを収得した後、これをさらにろ過および洗浄を行うことができる。
【0059】
この際、ろ過ろ液および洗浄ろ液においても、残留リチウムが存在することがある。このような残留リチウムは、溶解度が炭酸リチウムよりさらに低いリン酸リチウムを用いて回収することができる。
【0060】
リン酸リチウムの回収方法については後述する。
【0061】
また、前記本発明の一具現例による水酸化リチウムろ液と水酸化リチウム洗浄ろ液を混合した水酸化リチウム溶液にリン供給物質を投入し、リン酸リチウムの形態でリチウムを回収することができる。
【0062】
前記リン酸リチウム析出反応は、下記の反応式5によって行うことができる。
【0063】
[反応式5]
3Li+3OH+NaPO->LiPO+3Na+3OH
【0064】
リン供給物質の一例であるリン酸ナトリウムは、常温でリチウムと反応してリン酸リチウムを生成および析出させる。
【0065】
前記リン供給物質の具体的な例は、リン、リン酸、リン酸塩またはリン含有溶液などである。
【0066】
前記リン酸塩の具体的な例としては、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸アンモニウム(具体例として、前記アンモニウムは、(NRPOであってもよく、前記Rは、独立して、水素、重水素、置換または非置換のC1~C10アルキル基であってもよい)などである。
【0067】
より具体的に、前記リン酸塩は、第一リン酸カリウム、第二リン酸カリウム、第三リン酸カリウム、第一リン酸ソーダ、第二リン酸ソーダ、第三リン酸ソーダ、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、ポリリン酸アンモニウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、第一リン酸カルシウム、第二リン酸カルシウム、第三リン酸カルシウムなどであってもよい。
【0068】
前記リン供給物質は、リン含有水溶液であってもよい。前記リン供給物質がリン含有水溶液である場合、前記水酸化リチウム溶液に含まれたリチウムと容易に反応してリン酸リチウムを生成、析出させることができる。
【0069】
前記リン供給物質の投入量は、前記水酸化リチウム溶液のリチウム含有量に対して1当量以上であってもよい。前記範囲を満たす場合、反応速度の観点から有利になり得る。
【0070】
前記析出したリン酸リチウムは、ろ過により前記反応溶液から分離することができる。
【0071】
また、前記水酸化リチウム溶液にリン供給物質を投入し、溶存リチウムをリン酸リチウムに析出させて回収する段階は常温で行われてもよい。
【0072】
本明細書において常温は、一定の温度を意味するわけではなく、外部的なエネルギーの付加ない状態の温度を意味する。したがって、場所、時間によって常温は変化することができる。
【0073】
以下、本発明の好適な実施例および比較例を記載する。しかしながら、下記実施例は、本発明の好適な一実施例に過ぎず、本発明が下記実施例に限定されるものではない。
【0074】
[実施例1]
前記反応式(1)によって水酸化リチウム水溶液を製造する場合、炭酸リチウム投入量による炭酸リチウムの水酸化リチウム転換率を確認するために、炭酸リチウムと水酸化カルシウムを表1に示されたように水1Lに投入した後、常温(21℃)で5時間の間撹拌した。
【0075】
反応が完了した後、反応溶液試料を採取し、試料をろ過して反応ろ液のリチウム濃度を測定した。それぞれの反応溶液の炭酸リチウム投入量と反応済みの溶液のリチウム濃度を用いて炭酸リチウムの水酸化リチウムへの転換率を算出し、その結果を表1と図1に示した。
【0076】
図1に示されたように、炭酸リチウム投入量が80g以下である場合、投入したすべての炭酸リチウムがほぼ全部水酸化リチウムに転換されて、水酸化リチウム転換率がほぼ100%であることが示された。
【0077】
【表1】
【0078】
しかしながら、炭酸リチウム投入量が80g以上である場合には、水酸化リチウム転換率が減少する傾向を示し、炭酸リチウム投入量188gでは、水酸化リチウム転換率が39.8%に急減することが観察された。このような結果から、前記反応式(1)によって水酸化リチウム水溶液を製造する場合、炭酸リチウム投入量を一定の範囲に制限することが好ましいことを確認した。
【0079】
[実施例2]
高濃度水酸化リチウム溶液を製造するために、炭酸リチウム54gと水酸化カルシウム57gを蒸留水1Lに投入した後、常温(21℃)で5時間の間撹拌した。
【0080】
30分間隔で反応溶液試料を採取し、試料をろ過して、pHとリチウム濃度を測定した。その結果を下記の表2および図2に示した。図2に示されたように、反応時間が増加するにつれて反応溶液中に溶存するリチウム濃度が次第に増加して、反応時間4時間以後にはこれ以上増加しない様子を示した。
【0081】
このような結果から、炭酸リチウムが水酸化カルシウムと常温で反応して水酸化リチウムを生成することが分かる。なお、前記反応溶液をろ過して得られた析出物は、蒸留水で洗浄した後、105℃で24時間の間乾燥し、X線回折分析装置を用いてミネラル相を分析した。
【0082】
図3に示されたように、炭酸リチウムと水酸化カルシウムが反応して炭酸カルシウムが生成されたことを確認できた。上述したように、炭酸リチウムと水酸化カルシウムを用いて常温で簡単な設備と少ないエネルギー費用で高濃度水酸化リチウム水溶液を経済的に製造できることが確認された。
【0083】
【表2】
【0084】
[実施例3]
水酸化リチウム一水和物(LiOHHO)粉末を製造するために、前記高濃度の水酸化リチウム溶液を35mbarに減圧したフラスコに入れた後、フラスコを50℃に加熱した水に浸漬し、回転させながら水分を蒸発させて、リチウムを濃縮した。
【0085】
水分が蒸発するにつれて水酸化リチウム溶液のリチウム濃度が増加し、リチウム濃度が37g/Lに到達した後、水酸化リチウムが析出し始めた。
【0086】
水酸化リチウムが析出した蒸発スラリーをろ過して水酸化リチウム析出物とろ液に分離した。前記ろ過した水酸化リチウムを洗浄するために、ろ過した水酸化リチウム100gと蒸留水100mlを混合して撹拌した。1時間の間撹拌した後、水酸化リチウム洗浄溶液をろ過して、水酸化リチウムと洗浄ろ液に分離した。
【0087】
洗浄済みの水酸化リチウムは、常温、真空デシケーター内で乾燥し、乾燥済みの水酸化リチウム粉末のミネラル相をX線回折分析装置を用いて分析し、その結果を図4に示した。
【0088】
[実施例4]
前記実施例3の水酸化リチウムろ液と水酸化リチウム洗浄ろ液のリチウム濃度を分析し、その結果を表3に示した。
【0089】
【表3】
【0090】
水酸化リチウムろ液および水酸化リチウム洗浄ろ液には、リチウムが多量に含有されていて、リチウム濃度がそれぞれ37.1g/Lおよび36.8g/Lと非常に高く観察された。
【0091】
したがって、これらからリチウムを回収するために、水酸化リチウムろ液と水酸化リチウム洗浄ろ液を混合した。この混合液に炭酸ナトリウムを340g/L投入した後、常温で4時間撹拌して、炭酸リチウムを析出させた。析出した炭酸リチウムは、ろ過、洗浄、乾燥した後、X線回折分析装置を用いてミネラル相を分析し、その結果を図5に示した。
【0092】
下記表4は、水酸化リチウムろ液と水酸化リチウム洗浄ろ液の混合液のリチウム濃度と、混合液に含まれているリチウムを回収するために、混合液1Lに炭酸ナトリウムを340g投入し、常温で4時間撹拌して、炭酸リチウムを析出させた後の反応ろ液のリチウム濃度を示す。
【0093】
【表4】
【0094】
表4に示されたように、水酸化リチウム析出ろ液と水酸化リチウム洗浄ろ液に炭酸ナトリウムを投入し、炭酸リチウムを析出させた結果、92.1%の高い回収率でリチウムを回収できた。
【0095】
したがって、水酸化リチウムろ液および洗浄ろ液に多量に含有されたリチウムを常温で炭酸リチウムの形態で大部分回収することによって、水酸化リチウム製造工程で発生しうる多量のリチウム損失を簡単な設備と少ないエネルギー費用で効果的に防止できた。
【0096】
[実施例5]
下記表5は、水酸化リチウムろ液と水酸化リチウム洗浄ろ液の混合液のリチウム濃度と、混合液に含まれているリチウムを回収するために、混合液1Lにリン酸ナトリウム351gを投入し、常温で4時間撹拌して、リン酸リチウムを析出させた後のリチウム濃度を示す。
【0097】
【表5】
【0098】
水酸化リチウムろ液および水酸化リチウム洗浄ろ液のリチウム濃度は、37g/Lおよび36.8g/Lと非常に高くて、リチウムが多量に含有されたことが観察された。
【0099】
したがって、これを回収するために、常温の水酸化リチウムろ液と水酸化リチウム洗浄ろ液を混合し、混合液1Lにリン酸ナトリウム351gを投入し、リン酸リチウムを析出させた。
【0100】
析出したリン酸リチウムは、ろ過、洗浄、乾燥した後、X線回折分析装置を用いてミネラル相を分析し、その結果を図6に示した。
【0101】
表5に示されたように、水酸化リチウムろ液と水酸化リチウム洗浄ろ液にリン酸ナトリウムを投入し、リン酸リチウムを析出させた結果、98.1%の高い回収率でリチウムを回収できた。
【0102】
したがって、水酸化リチウムろ液および洗浄ろ液に含有されたリチウムを常温でリン酸リチウムの形態で大部分回収することによって、水酸化リチウム製造工程で発生しうる多量のリチウム損失を簡単な設備と小さいエネルギー費用で効果的に防止できた。
【0103】
[実施例6]
前記実施例4の水酸化リチウムろ液および水酸化リチウム洗浄ろ液に炭酸ナトリウムを投入し、製造された炭酸リチウムスラリーをろ過して、炭酸リチウム析出物とろ液に分離した。
【0104】
前記ろ過した炭酸リチウムを洗浄するために、炭酸リチウム100gと蒸留水100mlを混合して撹拌した。1時間の間撹拌した後、炭酸リチウム洗浄溶液をろ過して、炭酸リチウムと洗浄ろ液に分離した。前記炭酸リチウムろ液と洗浄ろ液のリチウム濃度を分析し、その結果を表6に示した。
【0105】
【表6】
【0106】
炭酸リチウムろ液および炭酸リチウム洗浄ろ液にはリチウムが含有されていて、リチウム濃度がそれぞれ2.9g/Lおよび2.45g/Lであることが観察された。
【0107】
したがって、これらからリチウムを回収するために、炭酸リチウムろ液と炭酸リチウム洗浄ろ液を混合した。この混合液にリン酸ナトリウムを26g/L投入した後、常温で4時間撹拌してリン酸リチウムを析出させた。析出したリン酸リチウムは、ろ過、洗浄、乾燥した後、X線回折分析装置を用いてミネラル相を分析し、その結果を図7に示した。
【0108】
下記表7は、炭酸リチウムろ液と洗浄ろ液混合液のリチウム濃度と、混合液に含まれているリチウムを回収するために、混合液1Lにリン酸ナトリウムを26g投入し、常温で4時間撹拌して、リン酸リチウムを析出させた後の反応ろ液のリチウム濃度を示す。
【0109】
【表7】
【0110】
表7に示されたように、炭酸リチウム析出ろ液と炭酸リチウム洗浄ろ液にリン酸ナトリウムを投入し、リン酸リチウムを析出させた結果、70%の高い回収率でリチウムを回収できた。
【0111】
したがって、炭酸リチウムろ液および洗浄ろ液に含有されたリチウムを常温でリン酸リチウムの形態で大部分回収することによって、水酸化リチウム製造工程で発生しうるリチウム損失を簡単な設備と少ないエネルギー費用で効果的に防止できた。
【0112】
本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で製造でき、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須の特徴を変更することになく、他の具体的な形態に実施できることを理解できる。したがって、以上で記述した実施例は、すべての面において例示的なものであり、限定的でないものと理解しなければならない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7