(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-22
(45)【発行日】2024-03-04
(54)【発明の名称】金属用保護コーティング
(51)【国際特許分類】
C23C 28/04 20060101AFI20240226BHJP
B32B 15/04 20060101ALI20240226BHJP
B32B 9/00 20060101ALI20240226BHJP
C23G 1/02 20060101ALI20240226BHJP
【FI】
C23C28/04
B32B15/04 Z
B32B9/00 A
C23G1/02
(21)【出願番号】P 2022533118
(86)(22)【出願日】2020-12-04
(86)【国際出願番号】 EP2020084732
(87)【国際公開番号】W WO2021110964
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-11-08
(32)【優先日】2019-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】522218116
【氏名又は名称】エムシーティ ホールディングス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100196117
【氏名又は名称】河合 利恵
(72)【発明者】
【氏名】アグニエシュカ マッキーウィックツ
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/039809(WO,A1)
【文献】特開2013-084879(JP,A)
【文献】特表2011-517731(JP,A)
【文献】国際公開第2019/077995(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/111273(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 24/00-30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティングされた金属または金属合金製品を調製する方法であって、
アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金、またはステンレス鋼から選択される金属基材を提供すること、
酸洗い、機械的洗浄、またはそれらの組み合わせによって、前記金属基材から既存の酸化物層を除去すること、
前記金属基材を、硝酸、硫酸、リン酸、クエン酸、過酸化水素、もしくは二クロム酸ナトリウム、またはそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される酸を含む不動態化溶液と接触させることによって、および/または、前記金属基材を、ガス状酸化環境に最大48時間曝露して、前記金属基材の表面上に新たな酸化物層を形成すること、
前記金属基材の酸化物層にシリケート水溶液のコーティングを塗布すること、および
a)前記コーティングされた不動態層を少なくとも200℃の温度に加熱すること、または、
b)前記コーティングされた不動態層を赤外線源に曝露すること、
によって前記酸化物層上に塗布されたコーティングを硬化させて、シリケートコーティング層を提供することを含む、方法。
【請求項2】
前記シリケート水溶液がSiO
2、M
2O、および随意にB
2O
3を含み、MがLi、Na、K、およびそれらの混合物から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記既存の酸化物層が、研磨材ブラストによって除去され、前記新たな酸化物層が、前記金属または金属合金を空気に最大約48時間曝露することによって形成される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記新たな酸化物層が、前記金属基材を空気に最大約24時間曝露することによって形成される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記シリケート水溶液のコーティングを塗布する前に、前記金属基材を洗浄する工程をさらに含む、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記既存の酸化物層が、硝酸、フッ化水素酸、塩素酸、硫酸、リン酸、過硫酸ナトリウム、過酸化水素、またはそれらの組み合わせを含む酸性の酸洗い溶液を使用した酸洗いによって前記金属基材から除去される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
前記酸洗い溶液が、硝酸および/またはフッ化水素酸を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記酸性の酸洗い溶液が、10%~20%v/v(150g/L-300g/L)の70%硝酸および1%~2%v/v(12g/L-24g/L)の60%フッ化水素酸を含み、随意に、前記酸性の酸洗い溶液が、15%v/v(225g/L)の70%硝酸および1.5%v/v(18g/L)の60%フッ化水素酸を含む、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記酸性の酸洗い溶液が、10:1の硝酸とフッ化水素酸とのパーセンテージ比を有する、請求項6~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記酸洗いが少なくとも15℃の温度で少なくとも1分間行われる、請求項6~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記不動態化溶液
が1%
~30%のクエン酸また
は15%
~30%v/vの70%硝酸を含む、請求項1~4または6~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記不動態化が15℃~80℃の温度で少なくとも3分間行われる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記不動態化溶液は、15%~30%v/vの70%硝酸を含み、前記化学的不動態化の工程が、15℃~60℃の温度で少なくとも20分間行われる、請求項1~4または6~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記不動態化溶液は、1%~15%w/vのクエン酸を含み、前記化学的不動態化の工程が、15℃~70℃の温度で少なくとも4分間行われる、請求項1~4または6~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
不動態化が、
a)最低30分間、室温の20%~25%v/vの70%硝酸溶液;
b)最低20分間、45℃~60℃に加熱した20%~25%v/vの70%硝酸溶液;
c)最低20分間、20℃~50℃の温度の4%~10%w/vクエン酸溶液;
d)最低10分間、50℃~60℃の温度の4%~10%w/vクエン酸溶液;
e)最低4分間、60℃~70℃の温度の4%~10%w/vクエン酸溶液;
f)約30分間、周囲温度の22.5%v/vの70%硝酸溶液;または
g)約30分間、周囲温度の7%w/vクエン酸溶液
を使用して実行される、請求項1~4または6~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記金属基材の表面上に前記新たな酸化物層を形成する工程が、前記金属基材をガス状酸化環境
に15℃
~25℃の温度
で10
~120分間曝露することを含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
請求項1に記載の方法であって、
前記金属基材の表面を洗浄すること;
硝酸およびフッ化水素酸を含むpH
が1の酸性の酸洗い溶液を用いて酸洗いすることによって、前記金属基材から既存の酸化物層を除去すること;
硝酸またはクエン酸を含むpH
が1の化学的不動態化溶液を用いて、前記金属基材の表面上に酸化物層を形成すること;
前記金属基材に
、10
~13のpHを有し、SiO
2、M
2O、およびB
2O
3を含み、Mが、Li、Na、K、またはそれらの混合物から選択され、M
2Oに対するSiO
2の比
が3.8
~2.0であり、B
2O
3に対するSiO
2の比
が10:1
~200:1である前記シリケート水溶液のコーティングを塗布すること;および
前記コーティングされた不動態層を少なくとも200℃の温度に加熱すること、または
前記コーティングされた不動態層を赤外線源に曝露することによって、前記酸化物層上の前記シリケート溶液を硬化させて、シリケートコーティング層を提供することを含む、方法。
【請求項18】
前記コーティングされた不動態層が少なくとも230℃の温度に加熱される、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記酸洗い溶液が、10%~20%v/v(150g/L~300g/L)の70%硝酸および1%~2%v/v(12g/L~24g/L)の60%フッ化水素酸を含む、請求項17または請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記不動態化溶液が、15%~30%v/vの70%硝酸を含み、不動態化が少なくとも約20分間、約15℃~約60℃の温度で行われる、請求項17または18に記載の方法。
【請求項21】
前記不動態化溶液が、1%~15%w/vのクエン酸を含み、不動態化が少なくと
も4分間
、21℃
~70℃の温度で行われる、請求項17または18に記載の方法。
【請求項22】
請求項1に記載の方法であって、
研磨材ブラストにより前記金属または金属合金から前記既存の酸化物層を除去すること、
前記ブラストされた金属または金属合金を洗浄すること、
前記金属または金属合金を最大48時間室温で空気に曝露して、前記金属または金属合金の表面上に新たな酸化物層を形成すること、
前記金属または金属合金の前記新たな酸化物層に、10~13のpHを有し、SiO
2およびM
2Oおよび随意にB
2O
3を含み、MがLi、Na、K、またはこれらの混合物から選択され、M
2Oに対するSiO
2の比
が3.8
~2であり、B
2O
3が存在する場合、B
2O
3に対するSiO
2の比
が10:1
~200:1であるシリケート水溶液のコーティングを塗布すること、
前記コーティングを少なくとも200℃の温度に加熱すること、または
前記コーティングを赤外線源に曝露することによって、
前記新たな酸化物層上で前記塗布されたコーティングを硬化させて、シリケートコーティング層を提供することを含む、方法。
【請求項23】
前記コーティングを少なくと
も230℃の温度に加熱することを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記硬化されたシリケートコーティング層が5μm未満の厚さを有し、かつ/または前記不動態化によって調製された前記コーティングされた酸化物層
が50μm未満の厚さを有する、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
既存の酸化物層を除去する前に前記金属または金属合金の前記表面を洗浄する工程を含み、前記洗浄する工程が、前記金属または金属合金の前記表面から任意のグリースを除去することを含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記金属または金属合金の前記表面を洗浄する工程を含み、前記洗浄する工程が、前記金属または金属合金の前記表面の研磨処理、例えば、前記金属または金属合金の前記表面をサンドブラストすることを含む、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される発明は、改善された特性を有するコーティング金属用の保護無機コーティングおよびその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
不動態化は、化成被膜の一般的な部類の一例であり、そこでは、金属表面が化学的または電気化学的プロセスによってコーティングに変換される。本発明は、不動態コーティングと組み合わせて使用されるように設計されている。
【0003】
チタン/チタン合金およびステンレス鋼上に酸化物層を形成するプロセスは、チタンおよび/またはチタン合金および/またはステンレス鋼上に保護および/または装飾コーティングを生成するために広く使用されている周知の工業的手順である。金属チタン上の不動態層は、二酸化チタンでほとんどが構成されているが、ステンレス鋼上の不動態層は、酸化クロムと見なされてもよい酸化クロム(III)がほとんどである。簡潔にするために、本明細書における「酸化クロム」への言及は、文脈上別段の指示がない限り、「酸化クロム(III)」を含む。
【0004】
他の多くの金属では、酸化物は密着層として形成され、耐食性および耐摩耗性を高め、塗料、プライマー、および接着剤などの二次層の接着について、ベアメタルよりも良好な基材をもたらす。
【0005】
卑金属を腐食から保護する酸化物層は、一般に2つの方法で得ることができる。第1のプロセスは、不動態化として知られている。このプロセスは、多くの金属が酸化環境と接触しているときに自然に起こる。長期間にわたり、かつ/またはパラメータを制御されずに自然に発生させられる自然酸化物は、典型的には粗く、不規則であり、連続的ではない。より良好な表面構造は、化学的または機械的手段(例えば、酸洗いまたは研磨材ブラストなどの機械的処理)による自然に存在する酸化物層の除去、および制御された条件下での、より均一な酸化物層をもたらす不動態化の技術的プロセスで得ることができる。
【0006】
保護酸化物層を形成する別の方法は、陽極酸化(anodisation、またはanodization、anodising/anodizingとも呼ばれる)である。陽極酸化は、金属の表面上の自然酸化物層の厚さを増加させるために使用される電解不動態化プロセスである。金属上への酸化物層の電気化学的形成は、周知であり、広く使用されている工業的手順である。陽極酸化の多くの異なるプロセスが知られている。例えば、チタン/チタン合金/ステンレス鋼材料は、広範囲の温度の浴中でACまたはDC電流を印加することによって、硫酸、クロム酸、リン酸、シュウ酸および任意の他の電解質などの電解質中で陽極酸化することができる(プラズマ電解酸化も)。この処理のバリエーションで、酸化物層の厚さおよび色を変化させることができる。生成された酸化物層は透明であるが、薄膜干渉の結果として色効果を得ることができ、色は酸化物膜の厚さによって決まる。
【0007】
チタン/チタン合金/ステンレス鋼の場合、不動態化は、数ナノメートルの厚さを有する非晶質酸化物層の自然な生成であるが、陽極酸化は、表面の微細なテクスチャを変化させることができ、表面付近の金属の結晶構造を変化させ、二酸化チタンの結晶構造を与えることができる。
【0008】
陽極酸化および不動態化は、チタン、チタン合金、ステンレス鋼、および他の金属などの金属上に薄くて硬い保護コーティングを生成する効果的な方法である。得られたコーティングはすべてある程度多孔質であり、塗料などの二次コーティングの接着性を改善する。現在利用可能なコーティング処理は、腐食防止、耐汚染性、耐熱性、耐UV性、環境への影響およびコストの点で完全に満足できるものではない。同様に、不動態チタン/チタン合金/ステンレス鋼は、現在利用可能なコーティング処理をされても、さらなる高温酸化に対する感受性を示し、これは通常望ましくない表面色の変化をもたらす。
【0009】
特許文献1および特許文献2は、陽極酸化層を含む、金属用の保護コーティングを塗布する方法を記載している。
【0010】
耐高温酸化性および他の特性をコーティングまたは他の方法で改善する代替手段が必要とされている。追加のコーティングが試みられてきたが、高pHおよび低pHに対する安定性、加速腐食試験、曇り、および高温酸化に対する耐性を有する改善されたコーティングが必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】国際公開第2009/117379号
【文献】国際公開第2016/039809号
【発明の概要】
【0012】
本明細書では、層状生成物およびその調製方法が開示される。層状製品は、卑金属に担持された酸化物層と、酸化物層によって直接担持され、ケイ素、酸素、ナトリウム、随意にリチウム、および随意にホウ素からなるか、または本質的にこれらからなるシリケートガラス様層組成を有するシリケートガラス様層とを含む。シリケートガラス様層組成は、卑金属および金属合金元素(ケイ素、ナトリウムおよび/またはリチウムおよび随意にホウ素以外)を含まない。シリケートガラス様層組成は、従って、チタン、クロムおよび他のステンレス鋼合金元素(ケイ素、ナトリウムおよび/またはリチウムおよび随意にホウ素以外)を含まない。
【0013】
本開示は、金属用の保護コーティングおよびこれを調製する方法に関し、より詳細には、自然に、または好ましくは不動態化などの酸化プロセスによって形成することができる一般に薄い酸化物層を有する金属およびそれらの合金に関する。本発明は、酸化物層が密着し得る任意の金属または金属合金に適用可能である。
【0014】
本発明の第1の態様では、金属または金属合金製品を調製する方法が提供され、方法は
金属または金属合金から既存の酸化物層を除去すること;
化学的不動態化を使用して、またはガス状酸化環境への曝露によって、金属または金属合金の表面上に酸化物層を形成すること;
金属または金属合金の酸化物層にシリケート水溶液のコーティングを塗布すること;および
a)コーティングされた不動態層を少なくとも200℃の温度に加熱すること、または
b)コーティングされた不動態層を赤外線源に曝露すること、
によって酸化物層上に塗布されたコーティングを硬化させて、シリケートコーティング層を提供すること;を含む。
【0015】
一般的に言えば、本発明で使用される金属または金属合金製品は、(例えば)酸化物層が除去され、酸化物層の形成を防止するための保護環境に維持されていない限り、ほぼ常に既存の酸化物層を有する。従って、ほとんどの実施形態では、方法は、金属または金属合金から既存の酸化物層を除去する工程を含む。
【0016】
ガス状酸化環境に曝露する工程は、金属または金属合金を乾燥させることを含んでもよい。乾燥は、一般に空気中で行われ、従って、ガス状酸化環境への金属または金属合金の曝露を伴う。
【0017】
方法はまた、既存の酸化物層を除去する前に金属または金属合金の表面を洗浄する工程を含むことができる。いくつかの実施形態、例えば洗浄が機械的処理(例えば、サンドブラスト等の研磨材ブラスト)による場合では、既存の酸化物層の除去は洗浄と同時に達成される。
【0018】
本発明の第2の態様では、金属または金属合金製品をコーティングする方法が提供され、方法は
本明細書に記載の方法に従って酸化物層が除去された金属または金属合金を提供すること(例えば、酸洗いされた金属または金属合金を提供すること);
化学的不動態化を使用して、またはガス状酸化環境への曝露によって、金属または金属合金の表面上に酸化物層を形成すること;
金属または金属合金の酸化物層にシリケート水溶液のコーティングを塗布すること;および
a)コーティングされた不動態層を少なくとも200℃の温度に加熱すること、または
b)コーティングされた不動態層を赤外線源に曝露すること、
によって酸化物層上に塗布されたコーティングを硬化させて、シリケートコーティング層を提供すること;を含む。
【0019】
本発明の第3の態様では、金属または金属合金製品をコーティングする方法が提供され、方法は
本明細書に記載の方法に従って酸化物層が除去され、次いで不動態化された金属または金属合金を提供すること;
金属または金属合金の酸化物層にシリケート水溶液のコーティングを塗布すること;および
a)コーティングされた不動態層を少なくとも200℃の温度に加熱すること、または
b)コーティングされた不動態層を赤外線源に曝露すること、
によって酸化物層上に塗布されたコーティングを硬化させて、シリケートコーティング層を提供すること;を含む。
【0020】
例えば、金属または金属合金製品をコーティングする方法が提供され、方法は
本明細書に記載の方法に従って酸洗いされ、次いで不動態化された金属を提供すること;
金属または金属合金の酸化物層にシリケート水溶液のコーティングを塗布すること;および
a)コーティングされた不動態層を少なくとも200℃の温度に加熱すること、または
b)コーティングされた不動態層を赤外線源に曝露すること、
によって酸化物層上に塗布されたコーティングを硬化させて、シリケートコーティング層を提供すること;を含む。
【0021】
本明細書に記載の任意の方法によって得られるまたは得ることができる、コーティングされた金属または金属合金も提供される。
【0022】
本発明の第4の態様では、本明細書に記載の方法に従って作製されたコーティングを含む製品が提供される。
【0023】
本発明のさらなる態様では、コーティングされた物品を調製する方法も提供され、方法は、コーティングされた金属または金属合金製品を前記物品(例えば、複合製品の構成部品であって、構成部品がコーティングされた金属または金属合金を含む)に適用する(または付着または固定する)ことを含む。コーティングされた金属または金属合金は、本明細書に記載の方法に従って調製される。本発明はまた、コーティングされた物品を調製する方法を提供し、方法は、本明細書に記載の方法に従って前記物品の金属または金属合金部品にシリケート水溶液を塗布することを含む。このような方法によって得られたコーティング物品も提供される。
【0024】
ここで、本発明を以下の好ましい特徴に従ってさらに定義する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】高温試験に供した2つの金属板(チタン合金)の写真である。左側-シリケートガラス様層を含まないサンプル(サンプルTi7)。右側-シリケートガラス様層を含むサンプルは、変色のない均一な無破損の表面に見える(サンプルTi4)。
【
図2】48時間のCASS試験に供した2つの金属板(ステンレス鋼)の写真である。左側-シリケートガラス様層を含まないサンプル(サンプルSS11)。右側-シリケートガラス様層を含むサンプル(サンプルSS5)。
【
図3】水浸漬を使用したコーティングの耐水性試験に供した2つの金属板(チタン合金)の写真である。左側-シリケートガラス様層を含まないサンプル(サンプルTi7)。右側-シリケートガラス様層を含むサンプル(サンプルTi4)。
【
図4】「裸火試験(Open Flame Test)」に供した1つの金属板(チタン合金)の写真である。サンプル表面の左上隅-シリケートガラス様層のない領域。サンプルの残りの表面-シリケート様層がある領域(サンプルTi5)。
【
図5】本発明の金属製品(サンプルTi2)のSEM顕微鏡写真である。
【
図6】濡れ性(疎水性)の違いを実証するための、表面に水滴を有する5枚の金属板(ステンレス鋼)の写真である。上段、左から120℃(サンプルSS16)、200℃(サンプルSS17)、230℃(サンプルSS18)で硬化したサンプル。下段、左から300℃(サンプルSS19)、IRオーブン内(サンプルSS20)で硬化したサンプル
【発明を実施するための形態】
【0026】
本開示は、製造方法、ならびに優れた耐久性および調製の容易さを示す金属製品に関する。一般に、製品は、金属または金属合金基材と、金属または金属合金基材の表面上の酸化物層と、シリケートまたはボロシリケートガラスである酸化物層上のガラス様層とを含む。
【0027】
このような金属製品の製造方法が提供され、方法は
金属または金属合金から既存の酸化物層を除去すること;
化学的不動態化、またはガス状酸化環境への曝露を使用して、金属または金属合金基材の表面上に酸化物層を形成すること;
金属または金属合金の酸化物層にシリケート水溶液のコーティングを塗布すること;および
a)コーティングされた不動態層を少なくとも200℃の温度に加熱すること、または
b)コーティングされた不動態層を赤外線源に曝露すること、
によって酸化物層上に塗布されたコーティングを硬化させて、シリケートコーティング層を提供すること;を含む。
【0028】
あるいは、本明細書に開示される方法は、シリケート水溶液のコーティングを金属または金属合金に塗布する工程から開始してもよい。例えば、本発明の方法は、
金属または金属合金であって、金属または金属合金から既存の酸化物層が除去され、化学的不動態化またはガス状酸化環境への曝露を使用して、新たな酸化物層が金属または金属合金基材上に形成された金属または金属合金を提供すること;
金属または金属合金にシリケート水溶液のコーティングを塗布すること;および
a)コーティングされた不動態層を少なくとも200℃の温度に加熱すること、または
b)コーティングされた不動態層を赤外線源に曝露すること、
によって酸化物層上に塗布されたコーティングを硬化させて、シリケートコーティング層を提供すること;を含む。
【0029】
(基材)
本明細書に記載の方法は、金属または金属合金基材に対して行われる。方法は、金属または金属合金基材を提供する工程から開始することができる。金属または金属合金は、一般に、既存の(古い)酸化物層を含む。簡潔にするために、本明細書における「金属(metal)」または「金属(metals)」への言及は、文脈上別段の指示がない限り、「金属合金(metal alloy)」または「金属合金(metal alloys)」を含む。金属製品中の金属または金属合金は、酸化物層の堅固な付着を可能にする任意の金属であり得る。酸化物層は、卑金属に強固に付着しており、基礎となる金属層から容易に分離または剥離しない金属酸化物である。
【0030】
本明細書で定義される本発明の方法は、様々な金属/金属合金に使用することができる。一実施形態では、金属または金属合金は、亜鉛、マンガン、マグネシウム、アルミニウム、チタン、鉄、クロム、ニッケル、鉛、ステンレス鋼、銅、モリブデン、スズ、ニオブ、およびそれらの組み合わせ、ならびに酸化物層を有する任意の他の金属およびそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。
【0031】
特定の実施形態では、金属または金属合金は、ステンレス鋼、チタンまたはチタン合金から選択される。
【0032】
チタンおよびその合金は、それらの特性によって広範な用途が見出されている。チタンおよびチタン合金の特性は、高い強度および剛性、低密度および良好な耐食性の組み合わせである。チタンおよびその合金は、最近まで複雑で精密なパターンに加工および成形することが困難すぎると考えられていたが、最近では耐久性のために、チタンおよびその合金は宝飾品に使用される一般的な材料になりつつある。宝飾品市場の1区分は、チタンおよびその合金で作られた結婚指輪および婚約指輪、ならびにハンドヘルド時計用のエンベロープおよびブレスレットである。チタン製品の主な利点は、それらがアレルギー反応を引き起こさず、水中環境で損傷を受けないという事実である。チタンおよびその合金は、芸術家に使用されて、彫刻作品および装飾の細部および家具の要素を創出する。チタンおよびその合金は、スポーツ用品の製造にも使用されている。これらは、製品の最小重量での高い強度が必要な場合に使用される。最も一般に普及している他のチタン製品は、登山用具、自転車フレーム(完全に振動を吸収し、疲労に耐える)、テニスラケット、競技用そり、スキー、ゴルフクラブ、ホッケースティック、クリケットスティック、ラグビーヘルメットカバーおよび釣り用具である。さらに、チタンおよびその合金は、眼鏡フレーム(軽量で耐久性があり、皮膚アレルギーを引き起こさない)、馬蹄(主に競走馬用)および散発的なそり乗りにも見ることができる。チタンおよびその合金は、航海用具(フィッティング、ブロック、キャプスタン要素、固定リギング)の製造に使用される。
【0033】
基材、例えばチタン、チタン合金、またはステンレス鋼は、鋳造、押出、熱間圧延、冷間圧延、焼きなまし、または硬化などすることができる。
【0034】
金属または金属合金基材上に酸化物層が形成され、次いでシリケートまたはボロシリケートガラス様層が塗布される。一例では、金属または金属合金の表面は酸化物層から構成される。別の例では、層状製品は、酸化物層がチタン/チタン合金/ステンレス鋼表面に直接付着され、ガラス様層が酸化物層に直接付着された、チタン/チタン合金/ステンレス鋼を含む。
【0035】
基材は、例えば、チタン、チタン合金またはステンレス鋼であり得る。チタン合金は、チタンをベースとするすべての合金から選択することができる。一例では、チタン合金は、以下の元素、すなわち0.5%のAl、0.4%のSi、および残部Tiからなるか、または本質的になる。ステンレス鋼は、利用可能なすべての合金から選択することができる。好ましい一例では、ステンレス鋼は、以下の元素、すなわちC0.03%未満、Cr18%~20%、Ni8%~12%、Si0.75%未満、Mn2%未満、P0.045%未満、S0.03%未満、N0.10%未満、および残部Feからなるか、または本質的になる304L合金である。別の好ましい例では、ステンレス鋼は、以下の元素、すなわちC 0.03%未満、Cr16%~18%、Ni10%~14%、Mo2%~3%、Si0.75%未満、Mn2%未満、P0.045%未満、S0.03%未満、N0.10%未満、および残部Feからなるか、または本質的になる316L合金である。
【0036】
随意に、基材は、例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金から構成することができる。アルミニウム合金は、1000系合金、2000系合金、3000系合金、4000系合金、5000系合金、6000系合金、7000系合金、および8000系合金からなる系列から選択することができる。好ましい一例では、アルミニウム合金は6000系合金である。別の好ましい例では、アルミニウム合金は3000系合金である。さらに別の例では、アルミニウム合金は1000系合金である。
【0037】
本発明で使用される基材は、犠牲コーティング(例えば、亜鉛コーティング)を必要としない。犠牲コーティングは、基材に塗布されるコーティングであり、基礎となる金属または金属合金と比較して優先的に劣化する(例えば酸化する)。しかしながら、本発明の方法およびコーティングは、犠牲層を必要とせずに、優れた防食特性を達成する。代わりに、新しい酸化物層が金属または金属合金上に直接形成され、シリケートコーティングが密着した酸化物層上に直接形成される。
【0038】
(洗浄)
記したように、方法はまた、既存の酸化物層を除去する前に金属または金属合金の表面を洗浄する工程を含むことができる。
【0039】
金属表面の全体的な外観(本発明のプロセスによって保護されていない場合)は、標準的な環境条件下で、特に汚染物質、例えば煤、垢などが表面の細孔上または細孔内に蓄積すると、劣化するだろう。指紋からの残留油も問題となる。金属の洗浄は、すべての脂肪、グリース、油、炭素堆積物(ガソリンエンジンでガソリンを燃焼させるプロセスの天然副産物)、および垢を除去する。従って、本発明の方法における第1の工程は、金属/金属合金の表面を洗浄することであり得る。
【0040】
洗浄の工程は、グリース、油、タンパク質、およびスケールなどの汚染物質を金属の表面から除去することを含んでもよい。グリースおよび/または油の除去は、この工程において特に好ましい場合がある。そのような汚染物質の除去は、金属の表面からの汚染物質の一部、または好ましくはすべて、または実質的にすべての除去を指すことができる。
【0041】
当業者に利用可能ないくつかの周知の洗浄方法がある。例えば、金属または金属合金は、湿式(すなわち液体)または乾式洗浄剤で洗浄することができる。湿式洗浄剤には、例えば、水、またはアルカリ溶液、酸性溶液もしくは中性溶液を含む水溶液が含まれる。湿式洗浄剤は、脱脂剤を含み得る。湿式洗浄剤は、洗剤、石鹸、漂白剤、アルコール(エタノールなど)、有機溶媒(アセトンなど)、および/またはアンモニアを含むことができる。洗浄の正確なモードおよび方法の工程は、金属または金属合金の表面に存在する、除去しなければならない汚染物質の量に依存し得る。
【0042】
アルカリ性脱脂剤などのアルカリ性洗浄剤、または中性洗浄剤は、例えば油およびグリースを除去するのに有用である。そのような実施形態では、洗剤、石鹸、漂白剤、またはアンモニアを使用することができる。酸性洗浄剤は、例えば、油、グリース、タンパク質、またはスケールを除去するのに有用であり得る。金属/金属合金の表面を、例えば布で拭き取ることも用いることができる。布は、上述の湿式洗浄剤を含んでもよい(すなわち、布は湿潤洗浄剤に浸漬されてもよい)。
【0043】
湿式または乾式機械的洗浄方法は、研磨材ブラスト(例えば、サンドブラスト)、研削、ワイヤブラッシング、研磨および水力洗浄などの洗浄に使用することができる。サンドブラストなどの研磨材ブラストは、金属または金属合金がチタン、またはチタン合金またはステンレス鋼である場合、特に適切であるが、他の金属にも適用可能である。機械的洗浄は、通常、酸化物層の除去も達成する。研磨材ブラスト(例えば、サンドブラスト)工程の後に洗浄工程を行うことが好ましい。洗浄工程は、研磨材ブラスト工程からの残留研磨剤(例えばグリット(炭素鋼グリットまたはステンレス鋼グリットまたはサンドグリットなど))を除去する。研磨材ブラストにステンレス鋼グリットまたはサンドを使用することが好ましい場合がある。研磨材ブラストを使用して金属または金属合金を洗浄する場合であっても、酸洗いの工程を用いることができる。しかしながら、サンドまたはステンレス鋼グリットなどの特定の研磨材の使用は、酸洗い工程の必要性を回避することができる。
【0044】
従って、方法は、金属または金属合金の表面を洗浄する工程を含むことができ、金属の表面を洗浄する工程は、金属または金属合金の表面からグリースおよび/または油を除去することを含む。
【0045】
洗浄工程は、複数の洗浄工程を含むことができる。例えば、いくつかの実施形態では、洗浄の工程は、研磨材ブラスト(例えば、サンドブラスト)する工程と、表面を脱脂する工程とを含む。いくつかの実施形態では、両方の工程が存在する場合、研磨材ブラストの工程を、脱脂の工程の前に行ってもよい。いくつかの実施形態では、研磨材ブラスト後に金属または金属合金を洗浄またはすすぎ洗いをすることが必要であり得るか、または推奨され得る。
【0046】
(酸化物層の除去)
好ましいが任意選択である金属表面を洗浄する工程の後、制御された酸化の前に、既存のまたは天然の酸化物層は(完全に)除去されなければならない。酸化物層は、化学的または機械的手段によって除去することができる。この工程はまた、スケール(例えば熱処理から、望ましくなければ)、表面汚染物として存在する異物、表面損傷、製造欠陥、変色、平坦でない表面、またはしみを取り除くことによって、さらなるプロセスのために基材表面を準備するのに役立ち得る。そのような汚染および欠陥はすべて、耐食性、安定性、品質、および一般的な外観を妨げる可能性がある。
【0047】
一般的に言えば、金属または金属合金製品は、(例えば)酸化物層が除去され、酸化物層の形成を防止するための保護環境に維持されていない限り、ほぼ常に既存の(古い)酸化物層を有する。従って、ほとんどの実施形態では、方法は、金属または金属合金から既存の酸化物層を除去する工程を含む。従って、方法は、一般に、酸化物層を含む金属または金属合金上で行われる方法である。既存の酸化物層は十分に均一ではないので、適切なコーティングとは認められず、本発明の利点を実現することはできない。従って、コーティング工程の前に、前記酸化物層を除去する(かつ、空気などのガス状酸化環境への曝露または化学的不動態化のいずれかによって、新しい酸化物層を形成させる)工程が必要である。
【0048】
(酸洗いによる除去)
化学的手段によって酸化物層を除去する工程は、酸洗いする工程を含み得る。酸性の酸洗い溶液を用いた酸洗いにより、金属または金属合金から既存の酸化物層を除去してもよい。
【0049】
方法は、基材を酸洗剤に曝露することによって金属または金属合金を酸洗いすることを含み得る。酸洗いは、酸化物、スケール(例えば熱処理から)、表面汚染物として存在する異物、表面損傷、製造欠陥、変色、平坦でない表面、しみ、グリットの残留、またはアルファケースを取り除く。そのような汚染および欠陥はすべて、耐食性、安定性、品質、および一般的な外観を害する可能性がある。
【0050】
酸洗いは、金属または金属合金の表面を酸洗い溶液と接触させることによって行うことができる。酸洗い溶液は、任意の適切な方法に従って金属または金属合金の表面に接触させることができる。例えば、酸洗い溶液は、溶液に浸漬することによって、または溶液を、例えば噴霧もしくはロールコーティングによって金属もしくは金属合金の表面に塗布することによって表面に接触させることができる。酸洗い溶液は、ゲルまたはペーストなどの形態で塗布することもできる。
【0051】
酸洗いは、金属または金属合金自体を腐食または実質的に腐食させることなく、金属または金属合金の表面上に存在する酸化物層のすべてまたは実質的にすべてを除去する。酸性の酸洗い溶液は、硝酸、フッ化水素酸、塩素酸、硫酸、リン酸、過硫酸ナトリウム、過酸化水素、またはそれらの組み合わせを含み得る。一実施形態では、酸洗い溶液は、硝酸および/またはフッ化水素酸を含む。好ましい実施形態では、酸洗い溶液は、フッ化水素酸および硝酸を含む。
【0052】
いくつかの実施形態では、酸洗い溶液は、硝酸および/またはフッ化水素酸を含むが、塩素酸、硫酸、リン酸、過硫酸ナトリウム、過酸化水素、またはそれらの組み合わせを含まない。いくつかの実施形態では、酸洗い溶液は硝酸および/またはフッ化水素酸を含むが、他の酸を含まない。
【0053】
一実施形態では、酸洗い溶液は約0~約3のpH、例えば約1のpHを有する。
【0054】
酸洗い溶液は、促進剤、抑制剤、湿潤剤、または商標登録された(proprietary)溶液などの他の成分もさらに含み得る。
【0055】
酸洗いの効果は、温度を上昇させることによって増加し得る(例えば、酸洗いの速度および効率)。しかしながら、例えば過剰な酸洗いの危険性により、上限温度が存在し得る。一実施形態では、酸洗いは周囲温度/室温で行われる。周囲温度および室温は、本明細書では交換可能に使用され、約15℃~約25℃であり得る。別の実施形態では、酸洗いは少なくとも約15℃の温度で行われる。
【0056】
酸洗い工程は、少なくとも約1分間、少なくとも約10分間、または少なくとも約20分間行われてもよい。いくつかの実施形態では、酸洗いは少なくとも約20分間行われてもよい。そのような実施形態では、酸洗い工程を実施するために使用される時間の長さは、酸洗い溶液が金属または金属合金と接触している時間の量を指す。従って、方法は、適切な期間が経過した後に(例えば洗浄によって)金属から酸洗い溶液を除去することを含むことができる。あるいは、浸漬されている場合、基材を酸洗い溶液から単に取り出してもよい(その後、任意選択で洗浄して過剰な溶液を除去する)。
【0057】
硝酸が酸洗い溶液に使用される場合、方法は、約5%~約25%v/vの70%硝酸の使用を含み得る。フッ化水素酸が酸洗い溶液に使用される場合、方法は、最大5%v/vの60%フッ化水素酸の使用を含み得る。必須ではないが好ましくは、硝酸およびフッ化水素酸の両方が酸洗い溶液に使用される場合、酸のパーセンテージ比は(遊離水素の形成を最小限に抑えるために)約10:1であるべきである。
【0058】
一実施形態では、酸洗いの組成は、例えば、周囲/室温以上で、約10%~約20%v/v(約150g/L~約300g/L)の70%硝酸および約1%~約2%v/v(約12g/L~約24g/L)の60%フッ化水素酸である。
【0059】
特定の実施形態では、15%v/vの70%硝酸および1.5%v/vの60%フッ化水素酸を、例えば周囲/室温で少なくとも20分間使用することができる。
【0060】
酸洗い工程は、酸洗い溶液を除去することによって(例えば洗浄によって)終了させることができる。
【0061】
酸洗いを使用して既存の酸化物層を除去する場合、金属または金属合金が方法の次の工程の前にガス状酸化環境(例えば空気)に曝露される時間を制限して、方法の次の工程の前に金属または金属合金の劣化を防止することができる。例えば、酸洗いおよび化学的不動態化を含む方法では、化学的不動態化の工程は、酸洗い工程の完了工程の約1時間以内(例えば、約20分以内、約15分以内、約10分以内、または約5分以内)に行われ得る。特に、酸洗いされた金属または金属合金を保護環境(すなわち、酸化を排除または実質的に排除するもの、例えば不活性雰囲気、または無制御の自然不動態化を少なくとも制限するもの、例えば金属または金属合金の水中への配置)に置いて金属の劣化を防止すれば、耐久期間を長くすることができる。保護環境が使用される場合、酸洗い工程と化学的不動態化工程との間の時間を大幅に長くすることができる。いくつかの実施形態では、酸洗いされた金属または金属合金は、化学的不動態化の工程を開始する前に、最大約1時間(例えば、最大約20分、最大約15分、最大約10分、または最大約5分)ガス状酸化環境(例えば空気)に曝露される。化学的不動態化の工程が使用される場合、これにより、自然不動態化による新たな酸化物層の形成が代わりに防止または最小化される。
【0062】
(他の除去方法)
金属または金属合金から酸化物層を除去するための代替方法が利用可能である。代替方法は、研磨材ブラスト、研削、ワイヤブラッシング、および水力洗浄などの機械的洗浄を含むことができる。例えば、方法は、例えば、米国特許第9,333,625号、同第8,707,529号、同第8,128,460号、同第8,074,331号、同第8,066,549号、同第8,062,095号および同第7,601,226号に記載されているように、滑らかで清浄な表面(SCS)および/またはエコ酸洗い表面(EPS)を含むことができる。SCSプロセスは、金属または金属合金の表面からの酸化物の研磨除去を含む。EPSプロセスはまた、特に「スラリーブラスト」を使用する、酸化物層を除去するための機械的手段を採用する。スラリーは、水と微細な鋼粒子との混合物を含む。スラリーは酸化物層を除去するが、基礎となる金属基材は除去しない。
【0063】
従って、機械的手段によって酸化物層を除去することを含む方法は、研磨材ブラスト、研削、ワイヤブラッシング、水力洗浄、またはそれらの組み合わせによって酸化物層を除去することを含み得る。機械的方法は、一般に、酸洗いほど清浄な表面をもたらさない可能性があるため、酸洗いが好ましい場合がある。酸化物層を除去するための機械的手段の使用で、材料の表面を「洗浄」することもできることに留意されたい。従って、本発明のいくつかの実施形態は、材料の表面を洗浄し、かつ既存の酸化物層を除去する工程としての役割を果たす、酸化物層を除去するための機械的手段(研磨材ブラストなど)を利用する。従って、本発明のいくつかの実施形態は、材料の表面の機械的処理(例えば、研磨材ブラスト)と、それに続く不動態化およびコーティング工程とを含む。他の実施形態では、本発明は、機械的処理(例えば、研磨材ブラスト)、続いて任意選択による洗浄(例えば水で)、およびその後のコーティングを含む。水による洗浄は、任意の適切な手段、例えば、すすぎ、浸漬などによって達成することができる。水による洗浄工程が一般に空気で満たされた室内で行われると仮定すると(実際、方法の工程のすべてが空気中で実行され得る)、水による洗浄工程は、同時に金属または金属合金上の新しい酸化物層の形成を可能にし得る。従って、いくつかの実施形態において、新しい酸化物層を形成する完全に分離した工程が存在しないのは、それらが空気中で行われる場合、前の工程と同時に起こり得るからである。
【0064】
いくつかの実施形態では、方法は、不動態化およびコーティング工程の前に、研磨材ブラストと酸洗いとの組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態では、方法は、不動態化およびコーティング工程の前に、研磨材ブラストと脱脂(例えば、アルカリ脱脂溶液を使用する)と酸洗いとの組み合わせを含み得る。酸洗いが行われる場合、それは一般に、研磨材ブラストおよび脱脂工程の後に行われる。脱脂が行われる場合、それは、行われる何らかの研磨材ブラスト工程の後に行われ得る。不動態化が行われる場合、それは、化学的不動態化、または空気などのガス状酸化環境への曝露を含み得る。
【0065】
本発明の方法は、既に酸化物層(例えば、自然酸化物層)が除去された金属または金属合金の提供を含み得る。
【0066】
いくつかの実施形態では、研磨材ブラストによる既存の酸化物層の除去を含む本発明の方法は、酸洗い工程を含まず、かつ/または化学的不動態化工程を含まない。
【0067】
酸化物層を(例えば、酸洗い、または研磨材ブラストなどの機械的処理によって)除去した後、能動的な不動態化工程の前に、金属または金属合金のさらなる化学変化を防止するために追加の工程を行うことができる。例えば、一実施形態では、酸化物層が除去された金属または金属合金(例えば、酸洗いされた金属または金属合金)は、水中または別の保護環境中に維持されてもよい。実際には、金属または金属合金が短期間空気に曝されることを考慮すると、処理を不活性雰囲気などの制御された環境で行って、空気中での酸化による酸化物の形成を防止しない限り、化学的不動態化を使用して新しい酸化物層を追加する工程を含む方法は、自然不動態化によるいくらかの酸化物の形成を含む可能性がある。しかし、空気中での自然不動態化による酸化物の形成は、好ましくは、金属または金属合金の空気への総暴露時間を制限することによって制御される。
【0068】
好ましくは、古い酸化物層を除去するために使用される方法にかかわらず、酸化物層を除去する工程は、既存の古い層を完全に除去する。金属または金属合金の表面に存在する何らかの酸化物は、プロセスの開始後に形成されたという点で新しい。
【0069】
酸化物層が除去されると、金属または金属合金は、方法の次の工程、すなわち不動態化の準備が整う。不動態化は、酸化物層の除去プロセスに直接続くか、または古い酸化物層の除去と同時に開始または発生し得る(例えば、空気が満たされた室内で行われる機械的処理による酸化物層の除去の場合)。本発明は、酸化物層の除去プロセスと不動態化プロセスとの間に、任意選択の洗浄またはすすぎ工程以外のいかなる追加の工程も必要としない。酸化物層を除去する工程(使用される方法に応じて、例えば、サンドブラストなどの研磨材ブラストを使用して酸化物層を除去する場合、または酸洗いを使用して酸化物層を除去する場合など、金属または金属合金を洗浄する工程を含むことができる)の完了と不動態化工程の開始との間に中間工程は、一般に存在しない。
【0070】
(不動態化)
金属または金属合金が、任意選択により洗浄され、酸化物層が除去された後、不動態化によって新しい均一な酸化物層が形成される。不動態化の工程は、化学的不動態化、またはガス状酸化環境への曝露による、例えば空気への曝露による不動態化(自然不動態化とも呼ばれるが、制御された条件下および/または限られた期間にわたって実施される)である。不動態化の工程は、乾燥によって達成され得る(通常、金属または金属合金を空気などのガス状酸化環境へ曝露することを必要とする)。新しい酸化物層は、金属または金属合金基材によって担持される。
【0071】
酸化物層は、一般に、陽極酸化によって、または金属もしくは金属合金の不動態化の技術的プロセスによって調製することができる。異なる方法によって提供される酸化物層は、化学的には類似しているが、構造は決定的に異なっている。これらのプロセスで生成された酸化物層は、非晶質または結晶質構造を有することができる。特に、金属または金属合金の表面は単結晶質ではない(また、面方位は様々な結晶方位を含み得る)。従って、本明細書に記載の方法は、非晶質酸化物層を形成することを含む。これは、化学的不動態化、または空気などのガス状酸化環境への曝露を使用して金属または金属合金上に酸化物層を形成する方法が、結晶質構造ではなく非晶質構造を提供するからである。本発明者らは、驚くべきことに、コーティング工程と組み合わせて金属または金属合金の表面上に新しい非晶質酸化物層を形成すると、最良の結果をもたらすことを見出した。
【0072】
本発明の方法は、陽極酸化を含む電気的および/または電解的不動態化によって金属または金属合金に酸化物層を付加する工程を含まない。本発明者らは、予想外にも、シリケートコーティングを、陽極酸化などの電気的または電解的不動態化のプロセスを経ていない金属または金属合金に塗布できることを見出した。従って、本発明の実施形態では、酸化物層は結晶質ではない。その代わり、酸化物層は非晶質である。
【0073】
本発明の方法は、予想外にも、金属または金属合金の外観を改善する。これは、陽極酸化を含む方法は、特に使用される金属がチタン、チタン合金およびステンレス鋼からなる群から選択される場合、材料の色を変える可能性があるが、化学的不動態化またはガス状酸化環境への曝露(例えば、乾燥時に)を使用する不動態化は、非晶質酸化物層を形成させ、それが、より「自然な」外観を保持することによって予想外に金属製品の外観を改善するからである。さらに、化学的手段、またはガス状酸化環境への曝露(例えば、乾燥時に)による不動態化と、酸化物層の除去(例えば、酸洗いまたは研磨材ブラストなどの機械的処理による)との組み合わせは、予想外にも、陽極酸化による不動態化を含む方法を使用してコーティングされた金属と比較して、より滑らかな表面を有する材料をもたらす。本発明の方法の他の工程と組み合わせると、方法は、(実施例でさらに論じるように)高温および酸化に曝された場合であっても、金属の自然な外観も保持する非常に耐久性のある耐性材料をもたらす。
【0074】
化学的不動態化は、化成被膜の一例であり、そこでは、金属表面が化学的プロセスによってコーティングに変換される。本発明は、不動態コーティングと組み合わせて使用されるように設計されている。
【0075】
金属または金属合金の表面から酸化物層を除去する酸洗いとは異なり、化学的不動態化は、金属または金属合金の表面に酸化物層を形成させる。
【0076】
いくつかの実施形態では、研磨材ブラストが使用されない限り、本発明の方法は、自然不動態化を含まないか、またはそれに依存しない(それ以外の、おそらくは本方法の他の工程を実施する際に起こる何らかの自然不動態化は、本方法の連続する工程間に経過する時間を制限することによって金属または金属合金の空気への曝露を制限すること、および/または保護雰囲気を使用することによって制限することができる)。自然不動態化では、酸化物層は、室温で空気中に保持されたときに金属または金属合金の表面上に形成され得る。従って、本発明の方法は、不動態化溶液の適用の結果としての化学的不動態化に依存し得る。結果は、より信頼性が高く、より制御可能であり、より迅速であり得る。しかしながら、既存の酸化物層を除去するための研磨材ブラストと自然不動態化の制御(すなわち、空気などのガス状酸化環境への曝露期間の制限)とを組み合わると、特に有益であることが本発明者らによって示された。
【0077】
従って、いくつかの実施形態では、方法は、金属または金属合金の自然不動態化、または電気的もしくは電解的不動態化を含まない。いくつかの実施形態では、酸化物層を金属または金属合金に付加する工程は、化学的不動態化の工程からなる。他の実施形態では、方法は、特にサンドブラストなどの研磨材ブラストによって酸化物層を除去する先の工程と組み合わせた、限定された期間での制御された自然不動態化の工程を含む。
【0078】
一実施形態では、酸化物層は、化学的不動態化の制御された技術的プロセスで調製することができる。自然の、および不動態化によって生成された酸化物層は、典型的な陽極酸化の酸化物層よりもはるかに薄い。好ましくは、酸化物層は、制御された不動態化プロセスによって生成することができる。金属基材を不動態化することによって酸化物層を調製することで、例えば表面の均一性を含む、特定の所望の特性を制御することができる。不動態化プロセスの後、材料を高温に曝露して、基材の異なる色を得ることができる。制御された酸化の前に、例えば、上述したように酸洗いまたは機械的処理を使用して、あらゆる既存のまたは天然の酸化物層が除去される。
【0079】
化学的不動態化、またはガス状酸化環境(空気など)への曝露による酸化のいずれの工程も、以下でより詳細に説明される。
【0080】
(化学的不動態化)
存在する場合、化学的不動態化の工程は、不動態化溶液を使用して実施される。任意選択的に洗浄および脱酸素された金属または金属合金を不動態化溶液と接触させる。不動態化溶液は、任意の適切な方法に従って金属または金属合金の表面に接触させることができる。例えば、不動態化溶液は、溶液に浸漬することによって、または、例えば噴霧もしくはロールコーティングによって金属もしくは金属合金の表面に溶液を塗布することによって表面に接触させることができる。
【0081】
不動態化溶液は、硝酸、硫酸、リン酸、クエン酸、水素、過酸化物および/またはナトリウム、二クロム酸塩またはそれらの組み合わせを含むことができる。一実施形態では、不動態化溶液は、硝酸およびクエン酸からなる群から選択される酸を含む。
【0082】
不動態化溶液は、一般に、フッ化水素酸を含まない。
【0083】
一実施形態では、不動態化溶液は、約1%~約30%w/vのクエン酸または約15%~約30%v/vの70%硝酸を含む。
【0084】
一実施形態では、不動態化溶液は、約15%~約30%v/vの70%硝酸を含む。一実施形態では、不動態化溶液は、約1%~約15%w/vのクエン酸を含む。従って、不動態化溶液は、以下からなる群から選択され得る:
a)約15%~約30%v/vの70%硝酸を含む不動態化溶液;および
b)約1%~約15%w/vのクエン酸を含む不動態化溶液。
【0085】
特定の実施形態では、不動態化溶液は、周囲温度で約30分間適用され得る約22.5%v/vの70%硝酸、または周囲温度で約30分間適用され得る約7%w/vのクエン酸を含む。
【0086】
一実施形態では、不動態化溶液は約0~約3のpH、例えば約1のpHを有する。
【0087】
化学的不動態化の工程は、少なくとも約3分間行うことができる。別の実施形態では、化学的不動態化の工程は、少なくとも4分間行うことができる。別の実施形態では、不動態化の工程は、少なくとも20分間実行することができる。別の実施形態では、化学的不動態化の工程は、最大1時間または最大2時間行うことができる。
【0088】
そのような実施形態では、不動態化工程を実施するために使用される時間の長さは、不動態化溶液が金属または金属合金と接触している時間の量を指す。従って、方法は、適切な期間が経過した後に(例えば洗浄によって)金属から不動態化溶液を除去することを含むことができる。例えば、浸漬されている場合は、基材を不動態化溶液から取り出す(その後、任意選択で洗浄して過剰な溶液を除去する)。
【0089】
酸洗いと同様に、不動態化の速度は温度によって影響され得る。一実施形態では、不動態化(例えば、化学的不動態化または制御された自然不動態化)は、約15℃~約80℃の温度で行われる。別の実施形態では、不動態化の工程(例えば、化学的不動態化または制御された自然不動態化)は、約15℃~約70℃の温度で行われる。一般に、不動態化(例えば、化学的不動態化または制御された自然不動態化)は、室温(例えば、約15℃~約25℃)で行うことができる。
【0090】
特定の実施形態では、
a)不動態化溶液は20%~25%v/vの70%硝酸を含み、不動態化は室温/周囲温度で少なくとも30分間行われてもよい。
b)不動態化溶液は20%~25%v/vの70%硝酸を含み、不動態化は45℃~60℃で少なくとも20分間行われてもよい。
c)不動態化溶液は4%~10%w/vのクエン酸を含み、不動態化は20℃~50℃で少なくとも20分間行われてもよい。
d)不動態化溶液は4%~10%w/vのクエン酸を含み、不動態化は50℃~60℃で少なくとも10分間行われてもよい。
e)不動態化溶液は4%~10%w/vのクエン酸を含み、不動態化は60℃~70℃で少なくとも4分間行われてもよい。
f)温度、時間、および促進剤、抑制剤、または指定された試験要件に合格する要素をもたらすことができる商標登録された溶液を含む、または含まない酸の他の組み合わせが可能である。
【0091】
一実施形態では、化学的不動態化によって調製されたコーティング酸化物層は、約50μm未満の厚さを有する。酸化物層は、約50μm、40μm、30μm、25μm、20μm、10μm、5μm、4μm、3μm、2μm、または1μm未満の厚さ、随意に1nm程度の薄さを有し得る。例えば、酸化物層は、約1nm~約25μmの厚さを有することができる。特定の一例では、酸化物層は約10μm未満の厚さを有し、ガラス様層は約5μm未満の厚さを有する。ガラス様層は、約5μm、4μm、3μm、2μm、1μm、500nm、400nm、300nm、200nm未満の厚さ、随意に100nm程度の薄さを有し得る。特定の一例では、酸化物層は約2μm未満の厚さを有し、ガラス様層は約550nm未満の厚さを有する。
【0092】
当業者は、いくつかの実施形態では、方法が、既に新しい不動態酸化物層が塗布された金属または金属合金を提供する工程を含み得ることを理解するであろう。金属または金属合金上の酸化物層、特に平滑な酸化物層(例えば、化学的不動態化またはガス状酸化環境への曝露によって得られる酸化物層)の存在は、本発明の利点のために重要である。酸化物層のないベアメタルは性能が低い。酸化物層の厚さは特に限定されない。しかしながら、好ましくは、酸化物層は適切な厚さである。例えば、酸化物層の厚さが増すと、基礎となる金属層の反射率を低下させる可能性があるので、より薄い酸化物層が、金属において一般に望まれる特徴である、向上した反射率をもたらす。従って、酸化物層の厚さを選択して、高度の高温酸化耐性、耐食性、および耐熱性を依然として提供しながら、最終製品において所望の性能特性を与えることができる。さらに、コーティングしたチタン/チタン合金/ステンレス鋼は、電気伝導性を失い、絶縁体となる。コーティングはまた、摩耗、腐食、および汚染に対する耐性を高め、製品の寿命を伸ばすことができる。
【0093】
本明細書に開示される酸化物層は、好ましくは、シリケートを含まない。すなわち、酸化物層は、基礎となる金属合金がケイ素またはホウ素を含まない限り、酸化ケイ素(例えば、SiO2)またはボロシリケート、またはそれらの混合物を形成するガラスを含まない。そのような場合、酸化物層中に微量の酸化ケイ素またはボロシリケートが存在し得る。一例では、酸化物層は、金属または金属合金の1つ以上の酸化物からなる組成を有する。好ましくは、金属/金属合金の酸化物層組成は、金属または金属合金自体がケイ素を含まない限り、ケイ素を含まない。いくつかの実施形態では、酸化物層はニッケルを含まなくてもよい。
【0094】
金属または金属合金上の新しい酸化物層とシリケートまたはボロシリケートガラス様層との組み合わせは、温度および酸化耐性コーティングをもたらす。いくつかの実施形態では、製品は、温度および酸化耐性コーティングを含む。
【0095】
アルミニウムを使用する場合、酸化アルミニウム層は、約70%w/w~約90%w/wのAl2O3、約2.5%w/w~約7.5%w/wのH2O、および約10%w/w~約20%w/wのSO3;約75%w/w~約85%w/wのAl2O3、約3.5%w/w~約5.5%w/wのH2O、および約12.5%w/w~約17.5%w/wのSO3;または約80%~81%w/wのAl2O3、約5%~6%w/wのH2O、および14%~15%w/wのSO3を含み得る。代替例では、酸化アルミニウム層はSO3を含まなくてもよい。
【0096】
酸化アルミニウム層は、上記の組成範囲から逸脱することなくベーマイト/バイヤライト領域を含むことができる。特に、ベーマイト/バイヤライト領域は、水和酸化アルミニウム、すなわち、脱水酸化アルミニウムよりも高い割合でヒドロキシル基を有する酸化アルミニウムを含む。例えば、ベーマイト/バイヤライト領域は、AlO(OH)および/またはAl(OH)3基を含む。ベーマイト/バイヤライト領域を含む例では、ベーマイト/バイヤライト領域はシリケートガラス様層に直接付着している。一例では、ベーマイト/バイヤライト領域は、ヒドロキシル基の割合がより高い酸化アルミニウム層内にあり、ヒドロキシル基の割合がより低い領域とシリケートガラス様層との間に位置する。別の例では、ベーマイト/バイヤライト領域は酸化アルミニウム層全体に及んでいる。ベーマイト/バイヤライト領域は、経時的なアルミニウム計数(深さ)のTOF-SIMSプロットで特定することができる。理論に束縛されるものではないが、シリケートガラス様層またはその近くのアルミニウム計数(aluminium counts)の変動は、ベーマイト/バイヤライト領域の脆弱性が酸化アルミニウム層の大部分と比較して高いことに起因し得る。この変動は、約1300~2000の粉砕回数で見られるように、ベーマイト/バイヤライト領域であると考えられるか、またはそれを示すものである。
【0097】
好ましくは、酸化物層の組成は、層全体にわたって一貫している。組成の一貫性は、SEM/EDSによって、酸化物層中の金属または金属合金成分の濃度から決定することができる。随意に、金属(例えば、チタンまたはクロム)濃度は、酸化物層全体にわたって5%、4%、3%、2%、または1%未満で変動する。
【0098】
組成の一貫性は、SEM/EDSによって、酸化物層中の酸素濃度からも決定することができる。随意に、酸素濃度は、酸化物層全体にわたって5%、4%、3%、2%、または1%未満で変動する。
【0099】
化学的不動態化の工程は、不動態化溶液を除去することによって(例えば洗浄によって)終了させることができる。
【0100】
(酸化環境(例えば空気)への曝露)
いくつかの実施形態では、新たな酸化物層は、化学的不動態化を使用する代わりに(または、いくつかのケースでは化学的不動態化の工程と組み合わせて)、ガス状酸化環境、特に酸素を含むガス状環境に曝露することによって(例えば、空気への曝露によって)形成されてもよい。乾燥工程は、ガス状酸化環境への曝露(空気との接触など)を含む。簡潔性のために空気への曝露が好ましい場合があるが、酸素を含む任意のガス状環境への曝露を使用して、制御された自然不動態化によって新たな酸化物層を形成することができる。
【0101】
空気などのガス状酸化環境への曝露は、酸化物層が形成するのに十分な期間にわたって行われるが、無制御の自然不動態化を防止するために同時に制限される。従って、いくつかの実施形態では、方法は、(既存の酸化物層が除去された後に)金属または金属合金を空気などのガス状酸化環境に曝露することを含む。この形態の不動態化が使用される場合、金属または金属合金は、限られた期間にわたってガス状酸化環境に曝露される。これは、新たな酸化物層の品質を維持し、新たに酸化された金属または金属合金がコーティングされる場合に本発明の利点を実現するために重要であり得る。いくつかの実施形態では、金属または金属合金は、新たな酸化物層を形成するために、最大48時間または最大24時間、ガス状酸化環境(例えば空気)に曝露される。これは、一般に、金属または金属合金をコーティングする次の工程が、金属または金属合金が最大48時間(または最大24時間)ガス状酸化環境(空気など)に曝露された後に行われることを意味する。上述したように、ガス状酸化環境への曝露による新しい酸化物層の付加は、サンドブラストなどの研磨材ブラストによって古い酸化物層が除去された実施形態に特に関連し得る。曝露時間は、プロセスの開始からコーティング工程までの、金属または金属合金の空気への累積曝露時間を指すことができる。
【0102】
制御された自然不動態化(すなわち、ガス状酸化環境、例えば乾燥への曝露)を使用して、(例えば、酸洗いまたは研磨材ブラストなどの機械的処理によって)最初の酸化物層が除去された、任意選択的に洗浄された金属または金属合金に酸化物層を付加する場合、制御された自然不動態化工程は、室温(約15℃~約25℃)で実行することができる。あるいは、金属または金属合金を、例えば最大約700℃の温度に曝露して、例えば金属または金属合金を乾燥させてもよい。選択される温度は、使用される金属または金属合金に依存し得る。当業者は、状況に応じて適切な温度を選択することができるだろう。金属または金属合金の意図的な着色が必要な場合に、加熱を利用することもできる。
【0103】
金属または金属合金は、金属または金属合金の表面上に新しい酸化物層を形成するのに十分な時間、ガス状酸化環境(例えば乾燥)に曝露することができる。いくつかの実施形態では、金属または金属合金は、最大48時間または最大24時間にわたって、新たな酸化物層を形成することができる(例えば、乾燥させることができる)。
【0104】
例えば乾燥によってガス状酸化環境に曝露する工程を用いるいくつかの実施形態では、方法は、金属または金属合金をガス状酸化環境(空気など)に少なくとも約15℃の温度で少なくとも約10分間、最大48時間曝露して新しい酸化物層を形成することを含んでもよい。例えば、いくつかの実施形態では、方法は、金属または金属合金を約15℃~約25℃の温度で約10分~約48時間、ガス状酸化環境(空気など)に曝露することを含んでもよい。いくつかの実施形態では、方法は、金属または金属合金を約15℃~約25℃の温度で約10分~約24時間、ガス状酸化環境(空気など)に曝露することを含んでもよい。いくつかの実施形態では、方法は、金属または金属合金を約15℃~約25℃の温度で約10~約120分間、ガス状酸化環境(空気など)に曝露することを含んでもよい。典型的な室温であるこのような温度を使用すると、(金属または金属合金が湿っている場合)蒸発によって乾燥が起こる。従って、例えば着色仕上げを形成するための熱を加える必要がない場合、金属または金属合金のガス状酸化環境への曝露時間は、既存の酸化物層を除去する工程とコーティングを塗布する工程との間の最小時間および最大時間を指すことができる。
【0105】
乾燥プロセスを促進するために加熱を使用してもよいが、加熱により金属または金属合金上に種々の着色層を生成することができるので、着色層が所望される場合にも加熱を使用することができる。金属または金属合金を熱に曝露することを含む、酸化物層を作製する工程を用いるいくつかの実施形態では、方法は、金属または金属合金をガス状酸化環境(空気など)に約25℃~約700℃の温度で少なくとも約10分間曝露することを含んでもよい。一実施形態では、方法は、金属または金属合金を約25℃~約700℃の温度で約10分間、最大約48時間、ガス状酸化環境(例えば空気)に曝露することを含んでもよい。一実施形態では、方法は、金属または金属合金を約25℃~約700℃の温度で約10分間、最大約24時間、ガス状酸化環境(例えば空気)に曝露することを含んでもよい。一実施形態では、方法は、金属または金属合金を約25℃~約700℃の温度で約10分間、最大約120分間、ガス状酸化環境(例えば空気)に曝露することを含んでもよい。
【0106】
ガス状酸化環境(例えば、乾燥中)に曝露する工程は、空気中、または酸素を含む任意のガス環境中で行われてもよい。本明細書における「空気」への言及は、地球の通常の大気、例えば、約78%の窒素、約21%の酸素、および約1%の他のガスを含む空気を意味する。
【0107】
化学的不動態化は、空気(例えば、乾燥)などのガス状酸化環境への曝露による不動態化を含む方法よりも好ましい場合がある。これは、化学的不動態化によって生成された酸化物層では欠陥が減少し、優れた特性を有する最終コーティング製品をもたらすからである。しかしながら、ガス状酸化環境(空気など)への曝露は、いくつかの実施形態、例えば、研磨材ブラスト(例えばサンドブラスト)などの機械的処理によって酸化物層が除去される実施形態において好ましい場合がある。
【0108】
不動態化が完了した後、シリケート水溶液を塗布する前に追加の工程を行って、金属または金属合金のさらなる化学変化を防ぐことができる。これは、自然不動態化による金属のさらなる酸化を防止するための化学的不動態化の工程を含む方法に特に関連し得るが、もちろん、金属または金属合金の空気への曝露を含む方法は、金属または金属合金が曝露される時間の長さが制限される。例えば、一実施形態では、(例えば、酸洗いによって、または研磨材ブラストなどの機械的処理によって)酸化物層が除去され、不動態化によって新しい酸化物層が付加された金属または金属合金は、シリケート水溶液を塗布する時間まで水中に維持され得る。基材を保護環境に維持することにより、コーティング工程の前にさらなる酸化が排除または実質的に排除され、基材を水中に維持することにより、無制御の自然不動態化が防止される。代替的または追加的に、(例えば、酸洗いによって、または研磨材ブラストなどの機械的処理によって)酸化物層が除去され、化学的不動態化によって新たな酸化物層が付加された金属または金属合金は、好ましくは化学的不動態化プロセスの終了から1時間以内(例えば、20、15、10、または5分以内)にシリケート水溶液と接触させてもよい。言い換えれば、化学的不動態化によって新しい酸化物層を付加する工程の後、金属または金属合金は、シリケート水溶液との接触を開始する前に、1時間未満(例えば、20、15、10または5分未満)ガス状酸化環境(例えば空気)に曝露される。
【0109】
化学的不動態化の工程が一般に空気が存在する室内で行われることを考慮すると、方法は、化学的不動態化と空気への曝露との組み合わせによって新しい酸化物層を形成することを含むことができる。しかしながら、金属または金属合金が空気に曝露される時間の長さを限定して、無制御の自然不動態化を防止することができる。金属または金属合金がガス状酸化環境(例えば空気)に曝露されるプロセスの開始からの(すなわち、既存の酸化物層を除去する工程または、存在する場合、先行する洗浄工程の開始からの)コーティング工程までの累積時間は、最大48時間、例えば最大24時間であってもよい。いくつかの実施形態、特に酸洗いおよび化学的不動態化を含む実施形態では、金属または金属合金は、酸洗い工程と化学的不動態化工程との間、および化学的不動態化工程とコーティング工程との間に再び、ガス状酸化環境(例えば空気)に曝露されてもよい。そのような実施形態では、金属または金属合金は、コーティング工程の前に、累積的に最大約2時間にわたってガス状酸化環境(例えば空気)に曝露されてもよい。
【0110】
いくつかの実施形態では、シリケートガラス様層を塗布する工程の前に、方法は、
研磨材ブラストにより金属または金属合金から既存の酸化物層を除去する工程と;
ブラストされた金属または金属合金を洗浄する工程と;
金属または金属合金をガス状酸化環境(例えば、空気)に曝露して、金属または金属合金の表面上に新たな酸化物層を形成する工程と、を含む。
【0111】
当業者は、研磨材ブラスト(サンドブラストなど)のプロセスが一般に空気中で行われるプロセスであることを理解するであろう。酸化物層がブラストされた金属または金属合金上に形成され得る速度(基本的には空気との接触と同時、使用される金属または金属合金による)を考えると、既存の(すなわち古い)酸化物層を除去するためのサンドブラストのプロセス中に、実質的に同時に新しい酸化物層が金属または金属合金上に形成され始める可能性がある。従って、空気への暴露によって金属または金属合金の表面に新しい酸化物層を形成する工程は、研磨材ブラストによって金属または金属合金から既存の酸化物層を除去する工程と同時に開始または発生してもよい。しかしながら、一般にブラストによる酸化物層除去工程の完了後のある期間、ブラストされた金属または金属合金は空気に曝露され続け、その間、新しい酸化物層が形成され続ける。いくつかの実施形態では、新しい酸化物層を形成させるために金属または金属合金がガス状酸化環境(例えば空気)に曝される時間の長さを指定し、特定の時間の長さ(例えば、最大48時間または最大24時間)は、ブラスト工程の開始から計算を始めることができる。他の実施形態では、新しい酸化物層を形成させるために金属または金属合金がガス状酸化環境(例えば空気)に曝される時間の長さを指定し、特定の時間の長さ(例えば、最大48時間または最大24時間)は、ブラスト工程の完了から計算を始める(洗浄またはすすきの工程を含めてもよい)。実際には、当業者は、全体的な曝露時間の差が極小であり得、従ってコーティングされた金属または金属合金の最終特性に影響を与えないことを理解するであろう。重要なのは、新しい酸化物層、すなわちプロセスの開始時に存在しなかったものが形成され、新しい酸化物層で、プロセスの開始時に存在した古い(すなわち、既存の)酸化物層を置き換えることである。
【0112】
いくつかの実施形態では、シリケートガラス様層を塗布する工程の前に、方法は、
研磨材ブラストにより金属または金属合金から既存の酸化物層を除去する工程と;
ブラストされた金属または金属合金を洗浄する工程と;
金属または金属合金をガス状酸化環境(例えば、空気)に最大48時間曝露して、金属または金属合金の表面上に新たな酸化物層を形成する工程と、を含む。
【0113】
いくつかの実施形態では、シリケートガラス様層を塗布する工程の前に、方法は、
研磨材ブラストにより金属または金属合金から既存の酸化物層を除去する工程と;
ブラストされた金属または金属合金を洗浄する工程と;
金属または金属合金をガス状酸化環境(例えば、空気)に最大24時間曝露して、金属または金属合金の表面上に新たな酸化物層を形成する工程と、を含む。
【0114】
上記の実施形態における「ブラストされた金属または金属合金を洗浄する」工程は、水および/またはアルカリ脱脂溶液ですすぐか、またはその中に浸漬することによってブラストされた金属または金属合金を洗浄することを含み得る。洗浄工程は、研磨材ブラスト工程で使用された研磨物質を除去するために行われてもよい。
【0115】
新たな酸化物層を有する金属または金属合金は、方法の次の工程、すなわちシリケートガラス様コーティングを提供するためにシリケート水溶液を塗布する準備が整っている。シリケートガラス様層の塗布は、不動態化プロセス(必要に応じて、任意の洗浄工程を含む)の直後である。本発明は、不動態化プロセスとシリケートガラス様層の塗布との間にいかなる追加の工程も必要としない(例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金基材を使用する場合の、例えば、シーリング工程は除く可能性がある)。本発明は、実際に本発明の機能に悪影響を及ぼすであろうプライマーまたはベースコーティングの塗布を特に必要としない。
【0116】
(シリケートガラス様層)
金属合金を随意に洗浄し、何らかの既存の酸化物層を除去し、化学的不動態化によって新たに均一な酸化物層を形成した後、シリケートガラス様コーティングを塗布する準備が整う。シリケートガラス様コーティングは、例えば、コーティングされた不動態層を少なくとも200℃の温度に加熱すること、またはコーティングされた不動態層を赤外線源に曝露することによって、酸化物層上に硬化されてシリケートコーティング層をもたらす。シリケートガラス様コーティングは、基材に温度および酸化耐性特性をもたらす最後の層である。
【0117】
ガラス様層(ガラス層とも考えられ得る)は、随意にボラート化合物を含むアルカリ金属シリケート化合物の水溶液に由来する。従って、本明細書における「シリケートガラス様層」への言及は、ボロシリケートガラス様層を含む。
【0118】
シリケート水溶液は、SiO2およびM2O、および随意にB2O3を含み得、ここでMは、Li、Na、K、およびそれらの混合物から選択される。シリケート水溶液は、M2Oに対するSiO2の比が約2.0~約3.8であり、かつ、B2O3が存在する場合、B2O3に対するSiO2の比が約10:1~約200:1であることを含み得る。
【0119】
特に、シリケートまたはボロシリケートガラス様層の成分(Si2O、B2O3、およびM2O)は別個ではないが、ガラス様層の一部であり、好ましくはガラス様層全体に均一に分布している。すなわち、シリケートガラス様層および酸化物層の組成は、層中の認識可能な成分(例えば、SiO2、B2O3、TiO2、Cr2O3およびNi2O3)に基づいて記載されるが、均質な組成からなるか、またはそれを含む。
【0120】
シリケート水溶液は、約1.05~約1.30の範囲の比重を有し得る。
【0121】
いくつかの実施形態では、シリケート水溶液は、約11~約13、例えば、約11~約12、または約11.0~約11.5のpHを有し得る。好ましい実施形態では、シリケート水溶液は、約10~約13、例えば、約10~約12、または約10.0~約11のpHを有し得る。
【0122】
本発明の方法から得られる金属製品では、ガラス様層は酸化物層の上にある。そのガラス様層は、シリケートガラス様またはボロシリケートガラス様層であり得る。本開示の目的のために、シリケートガラス様層は、シリケートを含む溶液の縮合重合から生じる重合シリケートであり、ボロシリケートガラス様層は、ボロシリケートを含む溶液の縮合重合から生じるホウ素源を含む重合シリケートである。
【0123】
ガラス様層は、随意にボラート化合物を含むアルカリ金属シリケート化合物の水溶液に由来する。概して、水溶液を金属表面に堆積させ、金属酸化物層を覆い、加熱して乾燥させ、硬化させ、シリケート含有層を重合させ、それによって酸化物の上にシリケートガラス様またはボロシリケートガラス様層を形成する。シリケートガラス様/ボロシリケートガラス様SEM/EDS組成は、ケイ素、酸素、ナトリウム、随意にリチウム、および随意にホウ素からなる。シリケートガラス様層組成は、金属元素(ケイ素、ナトリウムおよび/またはリチウムおよび随意にホウ素以外)を含まない。
【0124】
好ましくは、シリケートガラス様層は、ケイ素、酸素、ナトリウム、随意にリチウム、および随意にホウ素からなるか、または本質的にそれらからなる組成(例えば、SEM/EDSによって決定されるもの、すなわちSEM/EDS組成)を有する。シリケートガラス様層のSEM/EDSデータは、微量のチタン、クロム、ならびに他のチタン合金およびステンレス鋼の元素を示し得る。従って、シリケートガラス様層は、ケイ素、酸素、ナトリウム、随意にリチウム、および随意にホウ素、および可能な微量の他の合金元素からなり得るか、または本質的になり得る。
【0125】
シリケートガラス様層は、約100nm、200nm、300nm、400nm、500nm、600nm、700nm、800nm、900nm、1000nm、1500nm、2000nm、2500nm、3000nm、または5000nmの厚さを有することができる。いくつかの実施形態では、シリケートガラス様層の厚さは、約100nm~約5000nm(約0.1μm~約5μm)または約100nm~約1000nm(約0.1μm~約1μm)の範囲であり得る。
【0126】
シリケートガラス様層は、約55%w/w~約98%w/wのSiO2、約0%w/w~約6.7%w/wのB2O3、および約2.3%w/w~約36%w/wのM2Oを含み得る組成を有してもよく、ここでMは、リチウム、ナトリウム、カリウム、またはそれらの混合物からなる群から選択される。Mは、好ましくは、例えば、約1:10~約10:1のLi:Na比を有するLiとNaとの混合物であり得る。金属の選択および比率は、構成要素の重量パーセントに大きく影響し得る。例えば、成分のモル比が一定に保持されている組成では、原子質量6.941の100%リチウムから原子質量39.098の100%カリウムへのM2Oの変動は、重量パーセンテージの10倍の変化を引き起こす。
【0127】
シリケートガラス様層は、約0.1%w/w未満のチタン、クロム、および他のチタン合金およびステンレス鋼元素(Si、Na、K、Liを除く)、好ましくは約0.01%w/w未満のチタン、クロム、および他のチタン合金およびステンレス鋼元素(Si、Na、K、Liを除く)、さらにより好ましくは約0.001%w/w未満のチタン、クロム、および他のチタン合金およびステンレス鋼元素(Si、Na、K、Liを除く)を含むことができる。いくつかの実施形態では、シリケートガラス様層は、約0.1%w/w未満の金属合金元素(Si、Na、K、Liを除く)、好ましくは約0.01%w/w未満の金属合金元素(Si、Na、K、Liを除く)、さらにより好ましくは約0.001%w/w未満の金属合金元素(Si、Na、K、Liを除く)を含むことができる。
【0128】
成分のモル比(パーセンテージとして表される)は、約67%~約81%のSiO2、0%~約7%のB2O3、および約17%~約28%のM2Oであってもよい。あるいは、モル比は、約75%~約80%のSiO2および約20%~約25%のM2Oであってもよく、または約67%~約76%のSiO2、約3%~約5%のB2O3、および約19%~約30%のM2Oであってもよい。シリケートガラス様層は、SEM/EDSで決定されるシリケートガラス様層組成である組成を有することができる。シリケートガラス様層組成は、ケイ素、酸素およびナトリウムを含むことが好ましい。より好ましくは、シリケートガラス様層SEM/EDS組成は、ケイ素、酸素、およびナトリウム、リチウム、カリウム、ホウ素、またはそれらの混合物からなる群から選択される元素からなるか、または本質的になる。様々な態様において、シリケートガラス様層SEM/EDS組成は、ケイ素、酸素、ナトリウム、およびホウ素;ケイ素、酸素、リチウムおよびホウ素;ケイ素、酸素、ナトリウムおよびリチウム;ケイ素、酸素、ナトリウム、リチウムおよびホウ素;またはケイ素、酸素、ナトリウム、リチウム、カリウムおよびホウ素、からなり得るか、または本質的になり得る。シリケートガラス様組成(例えば、SEM/EDSまたは他の方法によって決定される)がホウ素を含む例では、シリケートガラスは、ボロシリケートガラスとしても記載される。シリケートガラス様層SEM/EDS組成は、ケイ素、酸素、ナトリウム、随意にリチウム、および随意にホウ素からなるか、または本質的になるものとしてさらに説明することができる。いくつかの態様では、シリケートガラス様層は、ケイ素、酸素、随意にホウ素、ナトリウム、および随意にリチウムからなるか、または本質的になるものとして説明され得るが、シリケートガラス様層の製造に使用される、わずかな不純物を有する材料に起因して微量のカリウムを含み得る。特に、シリケートガラス様層は、実際には水素を含んでもよいが、水素はSEM/EDSで観測できない。より好ましくは、シリケートガラス様層SEM/EDS組成は、チタン/クロム/他のチタン合金およびステンレス鋼元素(Si、Na、K、Liを除く)を含まない。
【0129】
シリケートガラス様層がナトリウムおよびリチウムの両方を含む場合、シリケートガラス様層は、好ましくは約1:9~約9:1のNa:Li原子比を有し得る。より好ましくは、Na:Li原子比は約1:5~約5:1であり、さらにより好ましくは、約1:2.5~約2.5:1である。シリケートガラス様層がボロシリケートガラス様層である場合、すなわちシリケートガラス様層がホウ素を含む場合、シリケートガラス様層は、好ましくは約10:1~約200:1のSi:B原子比を有し得る。より好ましくは、Si:B比は約10:1~約100:1であり、さらにより好ましくは約25:1~約100:1である。
【0130】
別の例では、シリケートガラス様層は、ナトリウムとカリウムとの混合物、ナトリウムとリチウムとカリウムとの混合物、ナトリウムとリチウムとの混合物、およびリチウムとカリウムとの混合物から選択されるアルカリ金属の混合物を含む。すなわち、この例では、シリケートガラス様層は、1つのアルカリ金属がカリウムであるアルカリ金属の混合物を含む。好ましくは、シリケート様層はカリウムの不均一な分布を含む。
【0131】
好ましくは、シリケートガラス様層中のケイ素の濃度は、層全体にわたって一貫している。組成の稠度は、シリケートガラス様層SEM/EDS組成でのケイ素濃度から決定することができ、好ましくは、ケイ素濃度は、ケイ素ガラス様層の全体にわたって5%、4%、3%、2%、または1%未満で変動する。さらに、シリケートガラス様層中の酸素の濃度は、好ましくは、層全体にわたって一貫している。すなわち、シリケートガラス様層SEM/EDS組成での酸素濃度は、好ましくは、シリケートガラス様層の全体にわたって5%、4%、3%、2%、または1%未満で変動する。
【0132】
シリケートガラス様層は、緻密で不透過性の層であることが好ましい。より好ましくは、シリケートガラス様層は非多孔質である。さらにより好ましくは、シリケートガラス様層は透明な非晶質固体である。
【0133】
シリケート水溶液を金属または金属合金の表面に接触させる。シリケート水溶液は、任意の適切な方法に従って金属または金属合金の表面に接触させることができる。例えば、シリケート水溶液は、溶液に浸漬することによって、または溶液を、例えば噴霧もしくはロールコーティングによって金属もしくは金属合金の表面に塗布することで表面に接触させることができる。
【0134】
塗布前に、シリケート水溶液を5℃~45℃の温度に維持してもよい。
【0135】
(硬化)
シリケート水溶液を金属または金属合金の表面に接触させた後、硬化させる。硬化は、酸化物層上での重合およびシリケートガラス様層の形成を引き起こす。このプロセスでは、シリケートガラス様層と酸化物層とを結合させる。
【0136】
硬化は、いくつかの方法で達成することができる。いくつかの実施形態では、硬化は加熱によって達成される。一例では、酸化物層を有するコーティングされた金属を加熱すると、コーティングからの水の除去、SiO2基の脱水重合、およびシリケートガラス様層の硬化を促進する。例えば、プロセスは、約200℃~約500℃の温度に加熱することを含むことができる。重合および硬化温度は、約200℃~約500℃の範囲であり得、好ましくは、この温度は、約200℃~約400℃、約230℃~約320℃、約250℃~約350℃、約260℃~約325℃、または約260℃~約300℃である。より好ましくは、シリケートガラス様層の重合および硬化は、基材、すなわちコーティングされた酸化物層の表面を約240℃~約320℃、約260℃~約300℃、約270℃~約290℃、または約280℃の温度に加熱することを含む。予想外にも、230℃を超える温度に曝露されたコーティング物品は、優れた撥水性を示すことが認められた。従って、いくつかの実施形態では、方法は、コーティングされた不動態層を少なくとも230℃の温度に加熱することを含む。しかしながら、約200℃~約500℃の任意の温度が、防食性コーティングを得るのに適し得る。
【0137】
シリケートガラス様層の重合および硬化は、好ましくは、急速加熱および水性アルカリ金属シリケートの脱水を含む。1つの好ましい例では、シリケートガラス様層の重合および硬化は、シリケート層(溶液/ガラス)の加熱を含むが、基礎となる基材の不完全な加熱を含む。酸化物層の表面に載せられたシリケート水溶液の加熱および脱水は、例えば、オーブン内での直接加熱、ランプによる加熱、真空処理、またはそれらの組み合わせによって達成することができる。好ましい一例では、酸化物層はオーブン内で加熱される。一例では、酸化物層は従来のオーブン内で加熱される。別の例では、酸化物層は、酸化物層の温度のより迅速かつ均一な上昇を可能にする対流式オーブン内で加熱される。さらに別の例では、酸化物層は加熱ゾーン(例えばコンベヤオーブン内)を通過する。
【0138】
いくつかの実施形態では、酸化物は、少なくとも20℃/秒の速度で重合および硬化温度に加熱され、約30分未満の加熱時間加熱され、次いで熱源から50℃未満の温度に移され、好ましくは熱源から室温に移される。
【0139】
いくつかの実施形態では、加熱は、約5分未満、約10分未満、約15分未満、約20分未満、約25分未満、または約30分未満の加熱時間である。好ましくは、加熱時間は約15分未満である。
【0140】
別の例では、酸化物層の表面に担持されたアルカリ金属シリケート層の赤外線活性化により、シリケートガラス様層を形成することができる。例えば、コーティングされた酸化物層を重合し、酸化物層を赤外線(IR)源に曝露することによってシリケートガラス様層を硬化させることができる。一例では、酸化物層は、IRヒートランプ(例えば、短波または中波ランプ)に曝露される。別の例では、酸化物層はIR曝露領域(例えばコンベヤ上)を通過する。IR源からのIR透過は、約1μm~約3μm(短波IR)、約3μm~約5μm(中波IR、または中間IR)、または約2μm~約4μm(IR-B)であり得る。好ましくは、IR曝露は、約15秒、30秒、45秒、60秒、90秒、120秒、3分、4分、5分、または10分未満の曝露時間である。
【0141】
硬化したシリケートガラス様層は、高温への曝露後の表面色の周知の変化に耐性がある。コーティングされていない酸化物層、例えば二酸化チタン/酸化クロム層は、酸化物層の厚さの変化に応じて高温で色が変化する(
図1を参照されたい)。本発明のコーティングされた酸化物層は、IR源に曝露することができ、得られた硬化シリケートガラス様層は、変色することなく、均一な破損のない表面として現れる。
【0142】
ここで、硬化シリケートガラスを担持する製品は、「CASS試験」、「水浸漬を用いたコーティングの耐水性試験」、「100%相対湿度におけるコーティングの耐水性試験」、「テープによる接着性試験」、「高温サービス用コーティングの評価試験」、「裸火試験」に合格する。「前進接触角測定によるコーティング、基材および顔料の表面濡れ性の標準的な実施」に従い、撥水性を評価した。
【0143】
硬化後、方法は、適切な期間が経過した後に(例えば洗浄によって)金属から余分なシリケート水溶液を除去することを含むことができる。あるいは、浸漬されている場合、基材をシリケート水溶液から単に取り出してもよい(その後、任意選択で洗浄して過剰な溶液を除去する)。
【0144】
(酸化物層へのシリケート溶液の浸透の低減)
いくつかの実施形態では、コーティングプロセスは、シリケート、例えば(使用される、基礎となる金属に応じて)ケイ酸チタンおよび/またはケイ酸クロムの形成を排除する。いくつかの実施形態では、プロセスはシリケートの形成を含まない。一例では、シリケートの形成を防止することは、酸化物層からシリケート水溶液への金属の溶解を防止することを含む。例えば、コーティングプロセスは、シリケートの酸化物への拡散および/またはシリケートと酸化物との相互拡散を防止し、それにより、シリケート(例えば、ケイ酸チタン、ケイ酸クロム、またはシリケート-チタン/クロム/他の合金元素)相互拡散のない製品を提供することができる。シリケート水溶液の酸化物層への浸透を防止するためのプロセスは、シリケート水溶液を急速に乾燥させて、ケイ素原子の可動性を低減または排除することを含むことができる。
【0145】
一例では、プロセスは、不動態化によって生成された酸化物層の形成直後に、金属または金属合金基材を約30℃~約100℃の温度に予熱することを含むことができる。別の例では、プロセスは、不動態化によって生成された酸化物層の形成直後に、金属または金属合金基材を乾燥させることを含むことができる。別の例では、プロセスは、酸化物層の形成直後に、不動態化によって生成された酸化物層中の含水量を少なくとも約25%、少なくとも約50%、または少なくとも約75%減少させることを含むことができる。
【0146】
本発明の方法は、好ましくは、シリケート水溶液を酸化物層に素早く塗布することを含む。例えば、プロセスは、金属または金属合金をガス状酸化環境(例えば空気)に曝露して新しい酸化物層を生成する工程の開始から約48時間以内(例えば、約24時間以内)にシリケート水溶液を塗布することを含むことができる。換言すれば、方法は、金属または金属合金をガス状酸化環境(例えば空気)に最大約48時間まで(例えば最大約24時間)曝露することを含んでもよい。化学的不動態化の工程を含む実施形態では、プロセスは、化学的不動態化の工程を完了してから約1時間以内にシリケート水溶液を塗布することを含むことができる。すなわち、プロセスは、化学的不動態化によって生成された酸化物層を有する金属または金属合金をシリケート水溶液に浸漬すること、または化学的不動態化プロセスの終了から約1時間以内にシリケート水溶液を塗布すること(例えば、噴霧コーティングまたはロールコーティングによって)を含むことができる。化学的不動態化工程を含むいくつかの実施形態では、プロセスは、化学的不動態化によって生成された酸化物層を有する金属または金属合金をシリケート水溶液に浸漬する前に、またはシリケート水溶液を金属もしくは金属合金に塗布する(例えば、噴霧コーティングまたはロールコーティングによって)前に、化学的に不動態化された金属または金属合金をガス状酸化環境(例えば空気)に約1時間まで曝露することを含むことができる。酸洗い工程および化学的不動態化工程の両方を含むいくつかの実施形態では、プロセスは、化学的不動態化によって生成された酸化物層を有する金属または金属合金をシリケート水溶液に浸漬する前に、またはシリケート水溶液を金属もしくは金属合金に塗布する(例えば、噴霧コーティングまたはロールコーティングによって)前に、酸洗いされた金属または金属合金をガス状酸化環境(例えば空気)に約1時間まで曝露すること、および化学的に不動態化された金属または金属合金をガス状酸化環境(例えば空気)に約1時間まで曝露することを含むことができる。
【0147】
コーティングされた酸化物層は、二酸化チタン/酸化クロムの表面に担持されたアルカリ金属シリケートの水溶液を含む。理論に束縛されるものではないが、乾燥した、コーティングされた酸化物層は、二酸化チタン/酸化クロム層からのアルカリ金属シリケートを溶解するのに十分な量の水を含むことができる。すなわち、重合および硬化工程の前に、二酸化チタン/酸化クロム層の表面に担持されたアルカリ金属シリケートは、例えば、アルカリ溶液(例えば、0.01MのNaOHまたは0.1MのNaOH)または酸溶液(例えば2%v/vのHF)で表面を洗浄することによって、表面から溶解または除去することができる。
【0148】
(シーリング)
本明細書に記載の方法は、シーリング工程を含み得る。シーリング工程は、シリケート水溶液を塗布する工程の前に、例えば、不動態化によって(化学的不動態化などによって)酸化物層を形成する工程とシリケート水溶液を塗布する工程との間に行われてもよい。シーリングは、基礎となる基材がアルミニウムまたはアルミニウム合金である場合に特に有用であり得る。シーリングは、シーリング層、例えばシーリング酸化アルミニウム層を提供することができる。シーリング工程は、約6分/μm未満、約5分/μm未満、約4分/μm未満、約3分/μm未満、約2分/μm未満、約1分/μm未満、約30秒/μm未満、または約10秒/μm未満のシーリング時間を含むことができる。シーリングは、特定の温度で行われてもよい。従って、シーリングプロセスは、高温シーリング、温暖シーリング、および低温シーリング含むことができる。高温シーリングが好ましい場合がある。低温シーリングは、約25℃~約30℃で行われてもよい。温暖シーリング(または中温シーリング)は、約60℃~約80℃で発生し得る。高温シーリングは、少なくとも約80℃の温度で発生し得る。
【0149】
一実施形態では、酸化物層は、少なくとも約85℃の温度で水溶液(例えば水)に曝露される。すなわち、プロセスは、高温シーリングプロセスによってシーリング層を形成することを含むことができる。高温シーリングプロセスは、化学的不動態化によって塗布された酸化物層を有する金属または金属合金を、少なくとも85℃、90℃、95℃、98℃、99℃、100℃、または101℃の温度で水に曝露することを含む。一例では、金属は、沸騰または沸騰に近い水で高温シーリングすることができ、別の例では、金属を蒸気シーリングすることができる。好ましくは、金属は、沸騰または沸騰に近い水で高温シーリングされる。金属の高温シーリングは、金属を少なくとも5分/μm、4分/μm、3分/μm、2分/μm、1分/μm、30秒/μm、または10秒/μm熱水に曝露することを含むことができる。あるいは、プロセスは、PVDアルミナ層を少なくとも85℃、90℃、95℃、98℃、99℃、100℃、または101℃の温度で水に曝露して水和PVDアルミナを形成することを含むことができる。
【0150】
金属基材にアルミニウムを使用する場合、高温シーリングプロセスは、材料を少なくとも85℃の温度で水に曝露する間に酸化アルミニウム層の露出表面に水酸化アルミニウムを形成することを含んでもよい。随意に、プロセスは、酸化アルミニウム層内に水酸化アルミニウムを形成することを含むことができる。随意に、プロセスは、酸化アルミニウム層にベーマイト/バイヤライト領域を形成することを含む。
【0151】
さらに、プロセスは、高温シーリングプロセスの終了と、コーティングされた酸化アルミニウム層の形成との間に60分、45分、40分、35分、30分、25分、20分、15分、10分、または5分未満の時間を含むことができる。好ましくは、その時間は約5分未満であるか、またはサンプルを高温シーリング浴または装置から取り出し、ほぼ室温まで冷却し、次いでシリケート水溶液に浸漬するのに必要な時間を超えない(実際には、多くの場合、約1分未満)。別の例では、シーリング層は、シリケート水溶液を塗布する前に、湿潤雰囲気中、水中に保持されるか、または水でコーティングされてもよい。
【0152】
本明細書に開示される方法は、高温シーリング(例えば、金属酸化物層を熱水にさらすこと)後に、シリケート水溶液を金属酸化物層に迅速に塗布することを含み得る。例えば、プロセスは、高温シーリングプロセスが終了して45分、40分、35分、30分、25分、20分、15分、10分、または5分以内にシリケート水溶液を塗布することによって、コーティングされた不動態金属層を形成することを含むことができる。すなわち、プロセスは、高温シーリングプロセスが終了して45分、40分、35分、30分、25分、20分、15分、10分、または5分以内に、シーリングされた不動態金属層をシリケート水溶液に浸漬するか、またはシーリングされた不動態金属層にシリケート水溶液を噴霧コーティングもしくはロールコーティングすることを含むことができる。別の例では、プロセスは、少なくとも約85℃の温度の水への曝露から45分、40分、35分、30分、25分、20分、15分、10分、または5分以内にシリケート水溶液を塗布することを含み得る。
【0153】
あるいは、プロセスは、金属酸化物層をシリケート水溶液でコーティングする前に、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、または約100%の相対湿度を有する雰囲気中で高温シーリングされた金属酸化物層を保持または維持することを含むことができる。別の例では、プロセスは、熱水に曝露した金属酸化物層を水中に保持または維持し、次いでシリケート水溶液でコーティングすることを含むことができる。
【0154】
好ましくは、金属酸化物層は、75℃、65℃、60℃、55℃、50℃、45℃、40℃、35℃、30℃、25℃、または20℃未満の温度の水中に保持される。例えば、プロセスは、シーリングされた不動態金属層を水中に保持、維持、または浸漬することと、次いでシリケート水溶液を塗布することによって、コーティングされた不動態金属層を形成することとを含み得る。
【0155】
別の特定の例では、プロセスは、少なくとも85℃、95℃、または100℃の温度の水に金属酸化物層を曝露することによる、不動態金属層の高温シーリングからなることができる。その後のプロセスは、(A)高温シーリングプロセスの終了から20分、15分、10分、または5分以内に、シーリングされた不動態金属層をシリケート水溶液で浸漬コーティング、噴霧コーティング、またはロールコーティングすることによって、コーティングされた不動態金属層を形成すること、または(B)高温シーリングプロセス後にシーリングされた不動態金属層を水中に維持し、次いでシリケート水溶液で浸漬コーティング、噴霧コーティング、またはロールコーティングすることによって、コーティングされた不動態金属層を形成することのいずれかを含む。
【0156】
その後、プロセスは、コーティングされた不動態金属層を重合および硬化させて非多孔質シリケートガラス様層を形成することを含み、重合および硬化は、コーティングされた不動態金属層を約225℃~約300℃、例えば約230℃~約300℃の温度に加熱することを含む。
【0157】
(バリア層)
いくつかの実施形態では、特にアルミニウム基材(および、それ故に酸化アルミニウム層)を使用する実施形態では、金属/金属合金と酸化物層との間にバリア層が配置されてもよい。このバリア層は、シリケートガラス様層に直接付着した酸化物層に直接付着している。本明細書では、直接付着とは、示された層が介在層なしで化学的かつ/または物理的に結合されていることを表し、意味する。介在層が存在しないことは、分光法および/または顕微鏡法、例えば、エネルギー分散型X線分光法(EDS)、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)、および/または走査型電子顕微鏡法(SEM)によって決定することができる。好ましくは、バリア層は、アルミニウムおよび酸素を含む組成(例えば、TOF-SIMSによって決定されるもの、すなわちTOF-SIMS組成)を有する。いくつかの例では、バリア層TOF-SIMS組成は、ナトリウムおよび/またはリチウムをさらに含む。またさらなる例では、バリア層TOF-SIMS組成は、微量のケイ素を含んでもよい。特に、バリア層の脆弱性は、TOF-SIMS分析におけるカウント数の急激な増加をもたらす。
【0158】
しかしながら、バリア層は任意である。一実施形態では、コーティングされた製品は、シリケートガラス様層に直接付着した酸化物層を担持する基材を含む。ここで、コーティングされた製品は、バリア層を含まなくてもよく、例えば、酸化物層を直接基材に付着させることができる。
【0159】
(本発明の様々な方法)
本発明の方法は、例えば(これらに限定されないが)、以下の特定の特徴の多様な組み合わせを含むことができる。
【0160】
例えば、酸洗いおよび化学的不動態化の工程を含む実施形態は、以下を含むことができる。
【0161】
一実施形態では、方法は、
金属または金属合金の表面を洗浄すること;
硝酸およびフッ化水素酸を含むpH1の酸性の酸洗い溶液を用いて酸洗いすることによって、金属または金属合金から既存の酸化物層を除去すること;
硝酸またはクエン酸を含むpH1の化学的不動態化溶液を用いて、金属または金属合金の表面上に酸化物層を形成すること;
金属または金属合金酸化物に、10~13の(例えば、11~13)pHを有し、SiO2、M2O、および随意にB2O3を含み、Mが、Li、Na、K、またはそれらの混合物から選択され、M2Oに対するSiO2の比が約3.8~約2であり、B2O3が存在する場合、B2O3に対するSiO2の比が約10:1~約200:1であるシリケート水溶液のコーティングを塗布すること;
コーティングされた不動態層を少なくとも200℃の温度に加熱すること、または
コーティングされた不動態層を赤外線源に曝露することによって、
酸化物層上に塗布されたコーティングを硬化させて、シリケートコーティング層を提供すること、を含むか、またはそれらからなる。
【0162】
一実施形態では、方法は、
金属または金属合金の表面を洗浄すること;
硝酸およびフッ化水素酸を含むpH1の酸性の酸洗い溶液を用いて酸洗いすることによって、金属または金属合金から既存の酸化物層を除去すること;
硝酸またはクエン酸を含むpH1の化学的不動態化溶液を用いて、金属または金属合金の表面上に酸化物層を形成すること;
金属または金属合金酸化物に、10~13の(例えば、11~13)pHを有し、SiO2、M2O、および随意にB2O3を含み、Mが、Li、Na、K、またはそれらの混合物から選択され、M2Oに対するSiO2の比が約3.8~約2であり、B2O3が存在する場合、B2O3に対するSiO2の比が約10:1~約200:1であるシリケート水溶液のコーティングを塗布すること;
コーティングされた不動態層を少なくとも230℃の温度に加熱すること、または
コーティングされた不動態層を赤外線源に曝露することによって、
酸化物層上に塗布されたコーティングを硬化させて、シリケートコーティング層を提供すること;を含むか、またはそれらからなる。
【0163】
一実施形態では、方法は、
金属または金属合金の表面を洗浄すること;
硝酸およびフッ化水素酸を含むpH1の酸性の酸洗い溶液を用いて酸洗いすることによって、金属または金属合金から既存の酸化物層を除去すること;
硝酸またはクエン酸を含むpH1の化学的不動態化溶液を用いて、金属または金属合金の表面上に酸化物層を形成すること;
金属または金属合金酸化物に、10~13の(例えば、11~13)pHを有し、SiO2、M2O、およびB2O3を含み、Mが、Li、Na、K、またはそれらの混合物から選択され、M2Oに対するSiO2の比が約3.8~約2であり、B2O3に対するSiO2の比が約10:1~約200:1であるシリケート水溶液のコーティングを塗布すること;
コーティングされた不動態層を少なくとも200℃の温度に加熱すること、または
コーティングされた不動態層を赤外線源に曝露することによって、
酸化物層上に塗布されたコーティングを硬化させて、シリケートコーティング層を提供すること;を含むか、またはそれらからなる。
【0164】
一実施形態では、方法は、
金属または金属合金の表面を洗浄すること;
硝酸およびフッ化水素酸を含むpH1の酸性の酸洗い溶液を用いて酸洗いすることによって、金属または金属合金から既存の酸化物層を除去すること;
硝酸またはクエン酸を含むpH1の化学的不動態化溶液を用いて、金属または金属合金の表面上に酸化物層を形成すること;
金属または金属合金酸化物に、10~13の(例えば、11~13)pHを有し、SiO2、M2O、およびB2O3を含み、Mが、Li、Na、K、またはそれらの混合物から選択され、M2Oに対するSiO2の比が約3.8~約2であり、B2O3に対するSiO2の比が約10:1~約200:1であるシリケート水溶液のコーティングを塗布すること;
コーティングされた不動態層を少なくとも230℃の温度に加熱すること、または
コーティングされた不動態層を赤外線源に曝露することによって、
酸化物層上に塗布されたコーティングを硬化させて、シリケートコーティング層を提供すること;を含むか、またはそれらからなる。
【0165】
いくつかの実施形態では、酸洗い溶液は、10~20%v/v(150g/L~300g/L)の70%硝酸および1%~2%v/v(12g/L~24g/L)の60%フッ化水素酸を含む。
【0166】
不動態化溶液は、約15%~約30%v/vの70%硝酸を含んでもよく、不動態化は少なくとも約20分間行われてもよく、不動態化は約15℃~約60℃の温度で行われてもよい。あるいは、不動態化は、約1%~約15%w/vのクエン酸を含む不動態化溶液を用いて行われ、少なくとも約4分間行われてもよく、約20℃~約70℃の温度で行われてもよい。
【0167】
上記の実施形態は、金属または金属合金をガス状酸化環境(例えば空気)に最大約48時間(例えば最大約24時間)曝露することを含んでもよい。いくつかの実施形態では、方法は、酸洗い工程と化学的不動態化工程との間に最大約1時間、および化学的不動態化工程とコーティングの塗布工程との間に最大約1時間、金属または金属合金をガス状酸化環境(例えば空気)に曝露することを含む。
【0168】
例えば、研磨材ブラストによって既存の酸化物層を除去する工程を含む実施形態は、以下を含むことができる。
【0169】
いくつかの実施形態では、方法は、
酸化物層を含む金属または金属合金基材を提供する工程と;
研磨材ブラストにより金属または金属合金から既存の酸化物層を除去する工程と;
ブラストされた金属または金属合金を洗浄する工程と;
金属または金属合金を最大48時間(好ましくは最大24時間)にわたってガス状酸化環境(例えば空気)に曝露して、金属または金属合金の表面上に新たな酸化物層を形成する工程と;
新たな金属または金属合金の酸化物層にシリケート水溶液のコーティングを塗布する工程と;
コーティングを少なくとも200℃の温度に加熱すること、または
コーティングを赤外線源に曝露することによって、
新たな酸化物層上で塗布されたコーティングを硬化させて、シリケートコーティング層を提供する工程と;を含む。
【0170】
いくつかの実施形態では、方法は、
酸化物層を含む金属または金属合金基材を提供する工程と;
研磨材ブラストにより金属または金属合金から既存の酸化物層を除去する工程と;
ブラストされた金属または金属合金を洗浄する工程と;
金属または金属合金を最大48時間(好ましくは最大24時間)にわたってガス状酸化環境(例えば空気)に曝露して、金属または金属合金の表面上に新たな酸化物層を形成する工程と;
新たな金属または金属合金の酸化物層にシリケート水溶液のコーティングを塗布する工程と;
コーティングを少なくとも230℃の温度に加熱すること、または
コーティングを赤外線源に曝露することによって、
新たな酸化物層上で塗布されたコーティングを硬化させて、シリケートコーティング層を提供する工程と;を含む。
【0171】
いくつかの実施形態では、方法は、
酸化物層を含む金属または金属合金基材を提供する工程と;
研磨材ブラストにより金属または金属合金から既存の酸化物層を除去する工程と;
ブラストされた金属または金属合金を洗浄する工程と;
金属または金属合金を最大48時間(好ましくは最大24時間)にわたってガス状酸化環境(例えば空気)に曝露して、金属または金属合金の表面上に新たな酸化物層を形成する工程と;
新たな金属または金属合金の酸化物層に、10~13のpHを有し、SiO2およびM2Oおよび随意にB2O3を含み、MがLi、Na、K、またはこれらの混合物から選択され、M2Oに対するSiO2の比が約3.8~約2であり、B2O3が存在する場合、B2O3に対するSiO2の比が約10:1~約200:1であるシリケート水溶液のコーティングを塗布する工程と;
コーティングを少なくとも200℃の温度に加熱すること、または
コーティングを赤外線源に曝露することによって、
新たな酸化物層上で塗布されたコーティングを硬化させて、シリケートコーティング層を提供する工程と、を含む。
【0172】
いくつかの実施形態では、方法は、
酸化物層を含む金属または金属合金基材を提供する工程と;
研磨材ブラストにより金属または金属合金から既存の酸化物層を除去する工程と;
ブラストされた金属または金属合金を洗浄する工程と;
金属または金属合金を最大48時間(好ましくは最大24時間)にわたってガス状酸化環境(例えば空気)に曝露して、金属または金属合金の表面上に新たな酸化物層を形成する工程と;
新たな金属または金属合金の酸化物層に、10~13のpHを有し、SiO2およびM2Oおよび随意にB2O3を含み、MがLi、Na、K、またはこれらの混合物から選択され、M2Oに対するSiO2の比が約3.8~約2であり、B2O3が存在する場合、B2O3に対するSiO2の比が約10:1~約200:1であるシリケート水溶液のコーティングを塗布する工程と;
コーティングを少なくとも230℃の温度に加熱すること、または
コーティングを赤外線源に曝露することによって、
新たな酸化物層上で塗布されたコーティングを硬化させて、シリケートコーティング層を提供する工程と;を含む。
【0173】
いくつかの実施形態では、方法は、
酸化物層を含む金属または金属合金基材を提供する工程と;
研磨材ブラストにより金属または金属合金から既存の酸化物層を除去する工程と;
ブラストされた金属または金属合金を洗浄する工程と;
金属または金属合金を最大48時間(好ましくは最大24時間)にわたって室温でガス状酸化環境(例えば空気)に曝露して、金属または金属合金の表面上に新たな酸化物層を形成する工程と;
新たな金属または金属合金の酸化物層に、10~13のpHを有し、SiO2およびM2Oおよび随意にB2O3を含み、MがLi、Na、K、またはこれらの混合物から選択され、M2Oに対するSiO2の比が約3.8~約2であり、B2O3が存在する場合、B2O3に対するSiO2の比が約10:1~約200:1であるシリケート水溶液のコーティングを塗布する工程と;
コーティングを少なくとも200℃の温度に加熱すること、または
コーティングを赤外線源に曝露することによって、
新たな酸化物層上で塗布されたコーティングを硬化させて、シリケートコーティング層を提供する工程と;を含む。
【0174】
いくつかの実施形態では、方法は、
酸化物層を含む金属または金属合金基材を提供する工程と;
研磨材ブラストにより金属または金属合金から既存の酸化物層を除去する工程と;
ブラストされた金属または金属合金を洗浄する工程と;
金属または金属合金を最大48時間(好ましくは最大24時間)にわたって室温で空気に曝露して、金属または金属合金の表面上に新たな酸化物層を形成する工程と;
新たな金属または金属合金の酸化物層に、10~13のpHを有し、SiO2およびM2Oおよび随意にB2O3を含み、MがLi、Na、K、またはこれらの混合物から選択され、M2Oに対するSiO2の比が約3.8~約2であり、B2O3が存在する場合、B2O3に対するSiO2の比が約10:1~約200:1であるシリケート水溶液のコーティングを塗布する工程と;
コーティングを少なくとも230℃の温度に加熱すること、または
コーティングを赤外線源に曝露することによって、
新たな酸化物層上で塗布されたコーティングを硬化させて、シリケートコーティング層を提供する工程と;を含む。
【0175】
いくつかの実施形態では、方法は、
酸化物層を含む金属または金属合金基材を提供する工程と;
研磨材(例えば、サンド)を使用する研磨材ブラストにより金属または金属合金から既存の酸化物層を完全に除去する工程と;
ブラストされた金属または金属合金を洗浄して、研磨材を除去する工程と;
金属または金属合金を最大48時間(好ましくは最大24時間)にわたって室温でガス状酸化環境(例えば空気)に曝露して、金属または金属合金の表面上に新たな酸化物層を形成する工程であって、最大48時間(好ましくは最大24時間)の期間が、研磨材ブラストの工程の開始から始まる工程と;
新たな金属または金属合金の酸化物層に、10~13のpHを有し、SiO2およびM2Oおよび随意にB2O3を含み、MがLi、Na、K、またはこれらの混合物から選択され、M2Oに対するSiO2の比が約3.8~約2であり、B2O3が存在する場合、B2O3に対するSiO2の比が約10:1~約200:1であるシリケート水溶液のコーティングを塗布する工程と;
コーティングを少なくとも200℃の温度に加熱すること、または
コーティングを赤外線源に曝露することによって、
新たな酸化物層上で塗布されたコーティングを硬化させて、シリケートコーティング層を提供する工程と;を含む。
【0176】
いくつかの実施形態では、方法は、
酸化物層を含む金属または金属合金基材を提供する工程と;
研磨材(例えば、サンド)を使用する研磨材ブラストにより金属または金属合金から既存の酸化物層を完全に除去する工程と;
ブラストされた金属または金属合金を洗浄して、研磨材を除去する工程と;
金属または金属合金を最大48時間(好ましくは最大24時間)にわたって室温でガス状酸化環境(例えば空気)に曝露して、金属または金属合金の表面上に新たな酸化物層を形成する工程であって、最大48時間(好ましくは最大24時間)の期間が、研磨材ブラストの工程の開始から始まる工程と;
新たな金属または金属合金の酸化物層に、10~13のpHを有し、SiO2およびM2Oおよび随意にB2O3を含み、MがLi、Na、K、またはこれらの混合物から選択され、M2Oに対するSiO2の比が約3.8~約2であり、B2O3が存在する場合、B2O3に対するSiO2の比が約10:1~約200:1であるシリケート水溶液のコーティングを塗布する工程と;
コーティングを少なくとも230℃の温度に加熱すること、または
コーティングを赤外線源に曝露することによって、
新たな酸化物層上で塗布されたコーティングを硬化させて、シリケートコーティング層を提供する工程と;を含む。
【0177】
本発明の方法がアルミニウムまたはアルミニウム合金で実施される場合、それらは、他の箇所で論じられているように、さらなるシーリングの工程が存在し得る。
【0178】
本発明の方法は、一般に、空気中または酸素を含む雰囲気中で実施される。「空気」中は、空気を含む環境、すなわち保護または制御された雰囲気ではなく、代わりに地球上の大気、例えば約1気圧でプロセスを実行することを指す。
【0179】
(コーティング製品の特性)
本開示の金属製品は、従来技術の製品を上回る多くの利点を有する。例えば、ガラス様酸化物層の組み合わせによって形成された透明コーティングによって、金属表面が透けて見え、基礎となる金属の固有の光度測定特性に影響を及ぼさない。その表面の固有の光度測定特性は、例えば、これらに限定されないが、反射率、輝度、透明度、色、表面テクスチャなどを含む、表面に望ましい任意の光度測定特性を含むことができる。一実施形態では、全反射率は、約75%超、好ましくは約80%超、より好ましくは約85%超であり得る。あるいは、基礎となる金属と、金属-金属酸化物-ガラス層を有する開示された金属製品との間の反射率の損失は、約2%未満、好ましくは約1%未満、より好ましくは約0.5%未満であり得る。金属製品の光を反射する能力が金属の表面に存在する酸化物の量に主として限定されるのは、酸化物層の上のガラス様層がほとんど透明であるからである。
【0180】
本明細書中に記載される方法に従って得られる金属製品は、温度酸化、腐食および劣化への耐性を示す。一般に、温度酸化、腐食または劣化に対する耐性は、標準化された試験方法における試験サンプルの性能によって決定される。ここで、サンプルは「合格/不合格尺度」で評価される。典型的には、特定の試験の合格は、試験の終了時に視覚的外観に変化がないことによって示され、一方、特定の試験の失敗は、サンプルの著しい色変化(高温酸化による)、腐食、または劣化によって示された。
【0181】
いくつかの試験は、バイナリ結果が減少し、これらの状況でサンプルを「F/P(-)/P」尺度でさらに等級付けした。ここでは「F」は失敗に相当し、「P(-)」は外観のわずかな変化(例えば、コーティングされた表面積の10%未満にわたる軽度の変色、斑点、または曇り)に相当し、「P」は外観の変化なしに相当する。ここで、外観に視覚的変化を示さないサンプル(スコアa「P」)は、試験において「優れている」と見なされる。
【0182】
第1の例では、本明細書に記載のコーティングは、銅加速酢酸塩水噴霧(霧)(CASS)試験に対する耐性をコーティング材料に提供する。好ましくは、コーティングされた製品は、24時間CASS試験および48時間CASS試験に合格する。CASS試験は、既知の業界標準、例えば、ASTM B368-09(2009):Standard Test Method for Copper-Accelerated Acetic Acid-Salt Spray(Fog)Testing(CASS Test)、American Society for Testing and Materials(ASTM インターナショナル)である。CASS試験下での典型的な失敗は、ピンホール腐食である。従って、サンプルを合格/不合格基準で評価し、ピンホール腐食を示したサンプルは不合格であったが、それらの完全性を維持したサンプルは合格であった。限定されたサンプルにおいてわずかな外観の変化が観察され、これらのサンプルは、外観のわずかな変化に相当する「-」に等級付けされた。好ましくは、サンプルは、CASS試験の結果として、視覚的外観の変化を示さなかった。これらのサンプルは、試験条件下で「優れている」と考えられる。さらに、好ましいサンプルは、延長CASS試験(48時間)の結果として、視覚的外観の変化を示さなかった(
図2を参照されたい)。
【0183】
第2の例では、本明細書に記載のコーティングされた製品は、高温サービス用コーティングの評価試験に合格する。これは、既知の業界標準、例えば、ASTM D2485-18(2018):Standard Test Methods for Evaluating Coatings For High Temperature Service,method B,American Society for Testing and Materials(ASTMインターナショナル)である。好ましくは、コーティングされた製品は、400°F(204℃)に16時間、500°F(260℃)に8時間、600°F(315℃)に16時間、700°F(371℃)に8時間曝露した高温サービス用コーティングの評価試験に合格する。最後の熱曝露後に失敗の証拠がないか、サンプルを目視検査した。高温サービス用コーティングの評価試験下での典型的な失敗は、変色(高温酸化によって引き起こされる)である。従って、サンプルを合格/不合格基準で評価し、色の変化を示したサンプルは不合格であったが、それらの一体性を維持したサンプルは合格であった。好ましくは、サンプルは、高温サービス用コーティングの評価試験の結果、視覚的外観の変化を示さなかった。これらのサンプルは、試験条件下で「優れている」と考えられる(
図1を参照されたい)。
【0184】
別の例では、本明細書に記載のコーティングされた製品は、テープによる接着性測定試験に合格する。これは、既知の業界標準、例えば、ASTM D3359-09(2009):Standard Test Methods for Measuring Adhesion by Tape Test、method B、American Society for Testing and Materials(ASTMインターナショナル)である。好ましくは、コーティングされた製品は、テープによる接着性測定試験に合格する。テープによる接着性測定試験の下での典型的な失敗は、基材からのコーティングの剥離である。従って、サンプルを合格/不合格基準で評価し、基材からのコーティングの剥離を示したサンプルは不合格であったが、それらの完全性を維持したサンプルは合格であった。好ましくは、サンプルは、テープによる接着性測定試験の結果として、視覚的外観の変化を示さなかった。これらのサンプルは、試験条件下で「優れている」と考えられる。
【0185】
さらに別の例では、本明細書に記載のコーティングは、100%相対湿度でコーティングの耐水性を提供する。これは、既知の業界標準、例えば、ASTM D2247-02(2002):Standard Practice for Testing Water Resistance of Coatings in 100% Relative Humidity,American Society for Testing and Materials(ASTMインターナショナル)である。好ましくは、コーティングされた製品は、24時間の回復期間を含む5回の24時間サイクルで38℃±2℃の恒湿凝結雰囲気に曝露される。100%相対湿度におけるコーティングの耐水性試験の下での典型的な失敗パラメータは、変色、膨れ、接着の喪失、軟化、または脆化などの影響である。従って、サンプルを合格/不合格基準で評価し、失敗の何らかのサインを示したサンプルは不合格であったが、それらの完全性を維持したサンプルは合格であった。好ましくは、サンプルは、100%相対湿度におけるコーティングの耐水性試験の結果として、視覚的外観の変化を示さなかった。これらのサンプルは、試験条件下で「優れている」と考えられる。
【0186】
別の例では、本明細書に記載のコーティングは、水浸漬を使用するコーティングの耐水性を提供する。これは、既知の業界標準、例えば、ASTM D870-02(2002):Standard Practice for Testing Water Resistance of Coatings Using Water Immersion,American Society for Testing and Materials(ASTMインターナショナル)である。好ましくは、コーティングされた製品は、95℃±5℃の温度で200時間水中に浸漬する。水浸漬を使用するコーティングの耐水性試験の下での典型的な失敗は、変色、膨れ、接着の喪失、軟化、または脆化などの何らかの影響である。従って、サンプルを合格/不合格基準で評価し、失敗の何らかのサインを示したサンプルは不合格であったが、それらの完全性を維持したサンプルは合格であった。好ましくは、サンプルは、水浸漬を使用するコーティングの耐水性試験の結果として、視覚的外観の変化を示さなかった。これらのサンプルは、試験条件下で「優れている」と考えられる(
図3を参照されたい)。
【0187】
別の例では、コーティングされた製品は、以下の手順で行われた「裸火試験」に合格する:部分的にコーティングされた金属サンプルを、コーティングされた表面とコーティングされていない表面との間の境界上で、コーティングされていない領域で色の変化が観察されるまでプロピレンガストーチで燃やす。好ましくは、コーティングされた製品は、色の変化なしに「裸火試験」に合格する(
図4を参照されたい)。色の変化は、高温酸化によって引き起こされる。
【0188】
別の例では、本明細書に記載のコーティングは、優れた撥水性を提供する。コーティングの濡れ性は、「前進接触角測定によるコーティング、基材および顔料の表面濡れ性の標準的な実施」、既知の業界標準、例えば、ASTM D7334-08(2013):Standard Practice for Surface Wettability of Coatings,Substrates and Pigments by Advancing Contact Angle Measurement,American Society for Testing and Materials(ASTMインターナショナル)に従って決定した。この実施は、コーティングされた表面に液滴が与えられた場合の接触角の測定を包含する。試験は、以下の手順を使用して行った:コーティングされた材料上にDI(脱イオン)水の液滴を与え、顕微鏡を使用して写真を撮影し、分度器を使用してDI水の液滴とコーティングされた表面との接触角を決定した。好ましくは、コーティングされた製品は、撥水性を示す高い接触角値(例えば、少なくとも約45°)を有する。
【0189】
開示された金属製品の耐熱性は優れている。金属製品の耐熱性は、ガラス様層ではなく基礎となる金属の感度によって制限される。金属製品は、370℃のオーブン中に8時間を超えて保持することができる。従って、一実施形態では、金属製品は、約350℃まで、約500℃まで、約700℃まで、または金属基材の融点付近まで延長された耐熱性を有することができる。
【0190】
本開示の金属製品はまた、高温耐性を超える利点を提供する。例えば、多くの金属、例えば、ステンレス鋼、チタン、および本明細書に開示される他の金属は、固有の耐食性または硬度を有する。これらの金属表面をコーティングすることにより、他の改善された特性が得られる。例えば、金属表面の全体的な外観は、標準的な環境条件下で、汚染物質、例えば煤、垢などが表面コーティングの細孔上または細孔内に蓄積すると、劣化するだろう。
【0191】
指紋および汚染物質からの残留油は問題でなる。洗浄によってこれらの汚染物質を除去することは、油および汚染物質が金属表面の微細孔に蓄積するため、比較的滑らかな酸化物表面であっても困難であることが多い。本開示の製品でこれらの材料をコーティングすると、部分的には、ガラス様層のはるかに滑らかな表面に起因して、例えば洗浄が容易になることによって、これらの表面の維持が改善される。金属酸化物はミクロンのサイズスケールの細孔を有するが、ガラス様層はナノメートルオーダーの数桁小さい細孔を有する。そのようなコーティングは、例えば、建築設計、彫刻、および太陽光リフレクタどの反射面に塗布することができる。
【0192】
上記の開示で実証され、以下の実施例でさらに説明されるように、開示された金属製品上のガラス様層はさらに、金属酸化物層よりも滑らかであり、金属酸化物層と比較して細孔が小さく、金属酸化物層よりも均一で平坦である表面を金属製品に提供する。
【0193】
(金属製品)
本発明は、本明細書に記載の方法に従って作製されたコーティングを有する金属または金属合金を含む製品を提供する。従って、本発明は、本明細書に記載の方法によって得られるまたは得ることができる、コーティングされた金属または金属合金製品を提供する。コーティングされた金属または金属合金製品は、複合製品の構成部品であってもよい。
【0194】
本発明による製品は、室内/室外用途、例えば建築備品、自動車部品、航空宇宙部品、海洋部品、自転車部品、モーターバイク部品、重量物運搬車両部品(トラック、列車、およびレールを含む)、軍事関連部品、鏡、街景構成要素(例えば、街灯および野外標識)、家具、電気器具(例えば、冷蔵庫、洗濯機、衣類乾燥機、食器洗い機、レンジ、卓上電気器具(例えば、ミキサー、ブレンダー、トースター、炊飯器))、太陽光発電部品(例えば、リフレクタ、およびコレクタ)、民生品および関連部品(例えば、携帯電話、およびコンピュータ部品)、熱交換、医療器具および工具、ならびに/または石油およびガス生産部品(例えば、コイルチューブ)などに使用することができる。基材は、一般に、備品または部品と見なされ、酸化物層およびシリケートガラスは、備品または部品をコーティングする。建築備品および部品には、窓枠、窓トリム、ドア、クラッド、鏡、リフレクタ、ランプハウジング、ヒンジ、ハンドル、家具部品、例えばテーブルもしくは椅子の脚、シートもしくはトップ、ブラケット、トラック、レーリング、および/またはハードウェアから選択されるものの材料またはそれらのアイテムが含まれる。自動車部品には、車体および/またはホイールの部材が含まれ、例えば、ルーフラック/レール、窓トリム、廃物フィニッシャ(waste finisher)、ステップ/サイドバー/踏板、ドアトリム、ランプトリム、ドアハンドル、排気マニホールド、リフレクタ、燃料キャップフラップ、スポイラ、ピラーカバー、ドアハンドル傷防止板、アンテナ、烙印/エンブレム、窓バイザ、スピーカートリム、ハブキャップ、ホイールリム、ラグナット、エンジン部品(例えば、ピストン、ブロック、シャフト、カム、プーリ、ハウジング、およびカバー)、および/または排気部品(例えば、排気管/配管、マフラ、コンバータカバー、クランプ、ハンガー、およびテールパイプ)が含まれる。航空宇宙部品には、例えば、エンジンカバー、パネル、スピナ、プロペラ、翼、フラップ、エレベータ、およびカウリングが含まれる。海洋部品には、例えば、船体、マスト、ブーム、プーリ、ウインチ、ティラー、スプレッダ、グラブレール、ターンバックル、スタンチョン、ハッチトリム、および/またはトレーラが含まれる。自転車部品は、例えば、フレーム、ポスト、チューブ、ハンドルバー、リム、レバー、ギア、および/またはハブを含む。モーターバイク部品は、例えば、ホイール、サスペンションチューブ、スイングアーム、エンジン部品、排気部品、およびトリムを含む。
【0195】
コーティング金属または金属合金製品を前記物品に適用する(または取り付ける、または固定する)ことを含む、コーティング物品を調製する方法も提供される。そのような方法は、本明細書に記載の方法に従ってコーティングされた金属または金属合金を含む物品の構成部品を提供すること、およびコーティングされた構成部品を物品に適用(または取り付け、または固定)すること、またはそのようなコーティングされた構成部品を物品に組み込むことを含み得る。物品は、コーティングされた構成部品を含む物品と見なされてもよい。構成部品は、構成部品を物品に適用(または取り付けまたは固定)する前または後のいずれかに、本明細書に記載の方法に従ってコーティングすることができる。
【0196】
金属または金属合金構成部品を含む製品をコーティングする方法も提供され、製品の金属または金属合金構成部品は、本明細書に記載の方法に従ってコーティングされる。
【0197】
このような方法によって得られたコーティング製品も提供される。
【0198】
本発明の第2および後続の態様の好ましい特徴は、必要な変更を加えて本発明の第1の態様について提供される通りである。
【0199】
(実施例)
限定ではなく例として、以下のように調製された試験サンプルは、本開示の様々な実施形態の例示であり、実施された実験的試験をさらに説明する。本明細書に記載のアルカリ金属シリケート水溶液は、ナトリウムおよびリチウム金属対イオンの混合物を含有するアルカリボロシリケート溶液であり得る。
【0200】
ボラートは、水に可溶性で安定な任意のボラート化合物であり得る。好ましくは、ボラートは、ホウ酸ナトリウムまたは四ホウ酸ナトリウムとしても知られているホウ砂であり、典型的には10個の溶媒和分子を有する、すなわち十水和物である(Na2B4O7・10H2O)。他の四ホウ酸ナトリウム水和物も、水中でボラートを生成する他のホウ素源と同様に許容される。ホウ砂が最も一般的に使用されるボラートであるが、安定な水溶液を形成することができるならば、シリケートと組み合わせてボロシリケートガラスを生成する任意のボラート化合物が許容される。一例では、シリケート水溶液は、13.0重量%のSiO2、1.7重量%のNa2O、1.2重量%のLi2O、1.1重量%のB2O3、および83.0重量%のH2Oを含み、約1.136の比重を有する。使用前に、溶液を1.2mmフィルターで濾過し、20℃に保持した。以下の一般的な手順を使用して試験サンプルを作製した。
【0201】
部品試験は、
(A)Tiを99.1%、Alを0.5%およびSiを0.4%含有するチタン合金製の圧延板において実施した。試験板は、約150mm×75mmであった。
(B)Cを0.020%、Siを0.40%、Mnを1.55%、Pを0.031%、Sを0.002%、Crを18.1%、Niを8.1%、Nを0.057%、および残部Feを含有するステンレス鋼、タイプ304L(1.4307)製の鋳造板であった。試験板は、約150mm×75mmであった。
(C)Cを0.023%、Siを0.44%、Mnを0.88%、Pを0.032%、Sを0.001%未満、Crを17.0%、Niを10%、Moを2.03%、Nを0.040%、および残部Feを含有するステンレス鋼、タイプ316L(1.4404)製の鋳造板であった。試験板は、約150mm×60mmであった。
(D)最大で0.08%のC、0.03%のN、0.250%のO、0.30%のFe、0.015%のH、0.40%のその他元素、および残部Tiを含有するチタン合金製板であった。試験板は、約150mm×75mmであった。
(E)Cを0.023%、Siを0.44%、Mnを0.88%、Pを0.032%、Sを0.001%未満、Crを17.0%、Niを10%、Moを2.03%、Nを0.040%、および残部Feを含有するステンレス鋼、タイプ316L(1.4404)製の板であった。試験板は、約43mm×43mmであった。
(F)Cを0.023%、Siを0.44%、Mnを0.88%、Pを0.032%、Sを0.001%未満、Crを17.0%、Niを10%、Moを2.03%、Nを0.040%、および残部Feを含有するステンレス鋼、タイプ316L(1.4404)製の板であった。試験板は、約83mm×83mmであった。
【0202】
表面前処理:材料を以下の手順のうちの1つに供した。
i.機械的研磨、または
ii.研磨材ブラスト(サンドグリットによるブラスト)、または、
iii.研磨材ブラスト(炭素鋼グリットによるブラスト)、または、
iv.研磨材ブラスト(ステンレス鋼グリットによるブラスト)。
【0203】
酸化物層の除去:板を以下の手順の1つに供して、既存の(古い)酸化物層を除去した。
(A)板を(アルカリ溶液中で)脱脂し、次いで、周囲温度(20℃)で20分間、15%v/vの70%硝酸および1.5%v/vの60%フッ化水素酸で構成される酸の混合物中で酸洗いした。次いで、酸洗いしたサンプルをDI水で2回すすいだ。これにより、金属形状の上に担持さられた清浄な、しみのない、汚染されていない金属層が得られた、または、
(B)既存の酸化物層の除去は、前処理工程で既に行われた研磨材ブラストによって達成された。次いで、サンプルをDI水ですすいだ。これにより、金属形状の上に担持された清浄な、しみのない、汚染されていない金属層が得られた。
【0204】
不動態化:酸化物層を除去した後、以下の手順のうちの1つを使用して試験サンプルを不動態化した。
(A)22.5%v/vの70%硝酸中、周囲温度(20℃)で30分間の不動態化時間、または、
(B)7%w/vのクエン酸中、周囲温度(20℃)で30分間の不動態化時間、または、
(C)室温(20℃)で15分間、空気中で乾燥させる。
【0205】
コーティング:試験サンプルを、浸漬、噴霧コーティングまたはロールコーティングによってシリケート水溶液でコーティングして、約300nm~約1000nmのコーティング厚さを得た(
図5を参照されたい)。
【0206】
好ましくは、試験サンプルをシリケート水溶液に3分間(温度20℃で)浸漬した。シリケート水溶液は、上述のアルカリボロシリケート溶液であった。
【0207】
重合および硬化:コーティングされた試験サンプルを高温に供して、シリケートコーティングを重合および硬化させた。温度は、標準、対流、またはIRオーブンによって加えることができる。硬化時間(高温に供した時間)は、IRオーブン中で3分であった。
【0208】
試験サンプルを以下の試験、24時間CASS試験、48時間CASS試験、高温サービス用コーティングの評価試験、テープによる接着性測定試験、100%相対湿度におけるコーティングの耐水性試験、水浸漬を用いたコーティングの耐水性試験、および裸火試験に供した。
【0209】
「CASS(銅加速酢酸塩水噴霧(霧))試験」は、既知の業界標準、すなわち、ASTM B368-09(2009):Standard Test Method for Copper-Accelerated Acetic Acid-Salt Spray(Fog)Testing(CASS Test)、American Society for Testing and Materials(ASTM インターナショナル)である。「高温サービス用コーティングの評価試験」は、既知の業界標準、すなわち、ASTM D2485-18(2018):Standard Test Methods for Evaluating Coatings For High Temperature Service,method B,American Society for Testing and Materials(ASTMインターナショナル)である。「テープによる接着性測定試験」は、既知の業界標準、例えば、ASTM D3359-09(2009):Standard Test Methods for Measuring Adhesion by Tape Test、method B、American Society for Testing and Materials(ASTMインターナショナル)である。「100%相対湿度におけるコーティングの耐水性試験」は、既知の業界標準、すなわち、ASTM D2247-02(2002):Standard Practice for Testing Water Resistance of Coatings in 100% Relative Humidity,American Society for Testing and Materials(ASTMインターナショナル)である。「水浸漬を用いたコーティングの耐水性試験」は、既知の業界標準、すなわち、ASTM D870-02(2002):Standard Practice for Testing Water Resistance of Coatings Using Water Immersion,American Society for Testing and Materials(ASTMインターナショナル)である。「裸火試験」は、コーティングされていない領域で色の変化が観察されるまで、プロピレンガストーチで部分的にコーティングされた金属サンプルを燃やすことを含む。
【0210】
以下の表1は、先行技術の比較サンプル(参照サンプル)の調製に関するデータを提供する。
【表1】
【0211】
表2は、上記のアルカリボロシリケート溶液を使用した本明細書に開示されるサンプルの調製に関するデータを提供する。
【表2】
【0212】
上に示すように、サンプルSS7~SS10に対して、「前処理」と、サンドブラストの単工程による既存の酸化物層の除去とを行った。
【0213】
表3は、すべてのサンプルの試験結果を示す。
【表3】
表中:
「F」は失敗に相当する。
「P(-)」は、外観のわずかな変化に相当する。
「P」は、視覚的外観に変化なしに相当する。
「*」コーティングを評価するために試験を行ったが、比較のために未処理サンプルを評価した。
「**」コーティングされた半分で試験を実施した。
「***」コーティングされていない半分で試験を実施した。
【0214】
コーティングの濡れ性試験は、「Standard Practice for Surface Wettability of Coatings,Substrates and Pigments by Advancing Contact Angle Measurement」American Society for Testing and Materials(ASTMインターナショナル)D7334-08(2013)に従って決定され、ステンレス鋼製のサンプルに対して行った。
【0215】
酸化物層の除去:試験用に調製されたサンプルを(アルカリ溶液中で)脱脂し、次いで、周囲温度(20℃)で5分間、15%v/vの70%硝酸および1.5%v/vの60%フッ化水素酸から構成される酸の混合物中で酸洗いした。次いで、酸洗いしたサンプルをDI水で2回すすいだ。これにより、金属形状の上に担持された清浄な、しみのない、汚染されていない金属層が得られた。
【0216】
不動態化:酸洗い後の試験サンプルを、22.5%v/vの70%硝酸で、周囲温度(20℃)で30分の不動態化時間で不動態化した。
【0217】
コーティング:自然に存在する酸化物層を除去した不動態化試験サンプルを、浸漬、噴霧コーティングまたはロールコーティングによってシリケート水溶液でコーティングして、約300nm~約1000nmのコーティング厚さを得た(
図5を参照されたい)。
【0218】
好ましくは、試験サンプルをシリケート水溶液に3分間(温度20℃で)浸漬した。シリケート水溶液は、上述のアルカリボロシリケート溶液であった。
【0219】
重合および硬化:コーティングされた試験サンプルを高温に供して、シリケートコーティングを重合および硬化させた。温度は、標準、対流、またはIRオーブンによって加えることができる。硬化は、以下の方法の1つによって行った。
(A)サンプルを以下の温度:120℃、200℃、230℃、および300℃のいずれか一つに設定した対流式オーブンに入れることによって達成された高温への曝露。
(B)IR放射への3分間の曝露。
【0220】
次いでコーティングされたサンプルの濡れ性を、「Standard Practice for Surface Wettability of Coatings,Substrates and Pigments by Advancing Contact Angle Measurement」ASTM D7334-08(2013)に従って決定した。次に、すべてのサンプルについて濡れ角を決定し、昇順にソートし、最大接触角を1、最小接触角を5とする、所与の等価によって表す。
【0221】
以下の表4は、先行技術の比較サンプル(参照サンプル)の調製に関するデータを提供する。
【表4】
【0222】
表5は、すべてのサンプルの試験結果を示す。
【表5】
【0223】
濡れ性の差は、DI水の液滴を各サンプルに配置し、写真撮影して差を実証したことを表すために、描出によって決定することもできる(
図6を参照されたい)。
【0224】
酸化物層の除去および不動態化をせずにアルカリボロシリケート溶液でコーティングされたチタンおよびステンレス鋼サンプルは良好に機能し得るが、実験室グレードのサンプルは良好に機能すると予想される。しかしながら、実際には、本発明が適用される任意の金属または金属合金は、実験室グレードではなく、優れた特性を有するコーティング金属または金属合金を提供するために、ABSコーティングに加えて、本発明による酸洗いと不動態化プロセスとの組み合わせを必要とする。
【0225】
上記で実証されたように、硬化方法は、サンプルの疎水性に影響を及ぼし得る。赤外線オーブンを使用してコーティングを硬化させると、疎水性が改善された最終製品が得られる。しかしながら、加熱によってコーティングを硬化させても、改善された疎水性を有する製品を提供することができる。少なくとも230℃の温度を使用してコーティングを硬化させると、コーティング製品の疎水性が明らかに改善される。硬化温度を300℃に上げると、製品の疎水性がさらに向上する。しかしながら、優れた特性を有するコーティング金属製品を提供するために、このような高温で硬化することは必ずしも必要ではない。例えば、200℃の温度での硬化でも、上記で実証されたように、優れた防食性コーティングを有するコーティング金属製品を提供する。
【0226】
本発明の方法は、従来技術の方法を超えるいくつかの利点を提供する。上記の実施例で実証されているように、本発明の方法は、耐久性、ならびに腐食、水、熱および大気汚染への耐性が高いコーティング材料を提供する。さらに、本発明の方法は、予想外にも、陽極酸化による不動態化を使用することなく、そのような特性を有するコーティング材料を達成することができる。化学的不動態化、または空気などのガス状酸化環境への曝露によって酸化物層を形成することを含む方法は、高い耐久性ならびに腐食、水および熱に対する耐性を依然として保持しながら、改善された、より自然な外観を有する材料を提供する。既存の酸化物層の除去と不動態化との組み合わせの使用はまた、陽極酸化を使用して不動態化された材料と比較して、清浄に保ちやすい、より滑らかな表面を有する材料を提供する。自然な外観を維持しながら高温酸化に対する保護を有するコーティング材料を提供することは、従来技術の方法のいずれによっても共有されない本発明の重要な利点である。
【0227】
(実施形態)
本発明は、少なくとも以下の実施形態を含む。
1.コーティングされた金属または金属合金製品を調製する方法であって、
金属または金属合金から既存の酸化物層を除去すること;
化学的不動態化および/またはガス状酸化環境への曝露を使用して、金属または金属合金の表面上に新たな酸化物層を形成すること;
金属または金属合金の酸化物層にシリケート水溶液のコーティングを塗布すること;および
a)コーティングされた不動態層を少なくとも200℃の温度に加熱すること、または
b)コーティングされた不動態層を赤外線源に曝露すること、
によって酸化物層上に塗布されたコーティングを硬化させて、シリケートコーティング層を提供すること;を含む、方法。
【0228】
2.既存の酸化物層を含む金属または金属合金基材を提供する工程、および金属または金属合金から既存の酸化物層を除去する工程を含む、実施形態1に記載の方法。
【0229】
3.ガス状酸化環境が空気、または酸素を含む他のガス状環境である、実施形態1または実施形態2に記載の方法。
【0230】
4.ガス状酸化環境に曝露する工程が乾燥を含む、実施形態1~3のいずれかに記載の方法。
【0231】
5.コーティングされた不動態層が少なくとも230℃の温度に加熱される、実施形態1~4のいずれかに記載の方法。
【0232】
6.シリケート水溶液が約10~約13(または約11~約13)のpHを有する、実施形態1~5のいずれかに記載の方法。
【0233】
7.シリケート水溶液がSiO2、M2O、および随意にB2O3を含み、MがLi、Na、K、およびそれらの混合物から選択される、実施形態1~6のいずれかに記載の方法。
【0234】
8.シリケート水溶液が、約3.8~約2.0のM2Oに対するSiO2の比、および、B2O3が存在する場合、約10:1~約200:1のB2O3に対するSiO2の比を含む組成を有する、実施形態7に記載の方法。
【0235】
9.既存の酸化物層が、酸性の酸洗い溶液を用いた酸洗いにより金属または金属合金から除去される、実施形態1~8のいずれかに記載の方法。
【0236】
10.酸洗いが、酸性の酸洗い溶液を使用して、前記溶液に浸漬することによって、または溶液を例えば噴霧することによって金属もしくは金属合金の表面に塗布することにより行われる、実施形態9に記載の方法。
【0237】
11.酸洗いが、硝酸、フッ化水素酸、塩素酸、硫酸、リン酸、過硫酸ナトリウム、過酸化水素、またはそれらの組み合わせを含む酸性の酸洗い溶液を使用して行われる、実施形態9または実施形態10に記載の方法。
【0238】
12.酸洗いが、促進剤、抑制剤、湿潤剤、または商標登録された溶液を含む酸性の酸洗い溶液を使用して行われる、実施形態9から11のいずれか一つに記載の方法。
【0239】
13.酸洗い溶液が硝酸およびフッ化水素酸を含む、実施形態9~12のいずれか一つに記載の方法。
【0240】
14.酸洗い溶液がフッ化水素酸を含む、実施形態9~12のいずれか一つに記載の方法。
【0241】
15.酸性の酸洗い溶液が約1のpHを有する、実施形態9~14のいずれか一つに記載の方法。
【0242】
16.酸性の酸洗い溶液が、10%~20%v/v(150g/L~300g/L)の70%硝酸および1%~2%v/v(12g/L~24g/L)の60%フッ化水素酸を含む、実施形態9~15のいずれか一つに記載の方法。
【0243】
17.酸性の酸洗い溶液が、15%v/v(225g/L)の70%硝酸および1.5%v/v(18g/L)の60%フッ化水素酸を含む、実施形態16に記載の方法。
【0244】
18.酸性の酸洗い溶液が、10:1の硝酸とフッ化水素酸とのパーセンテージ比を有する、実施形態9~17のいずれか一つに記載の方法。
【0245】
19.酸洗いが少なくとも1分間行われる、実施形態9~18のいずれか一つに記載の方法。
【0246】
20.酸洗いが少なくとも15℃の温度で行われる、実施形態9~19のいずれか一つに記載の方法。
【0247】
21.酸洗い工程が周囲温度で行われる、実施形態9~20のいずれか一つに記載の方法。
【0248】
22.新しい酸化物層が化学的不動態化によって形成され、不動態化溶液を使用して、溶液に浸漬することによって、または溶液を、例えば噴霧することによって金属もしくは金属合金の表面に塗布することによって行われる、実施形態1~21に記載の方法。
【0249】
23.新たな酸化物層が化学的不動態化によって形成され、硝酸、硫酸、リン酸、クエン酸、過酸化水素、もしくは二クロム酸ナトリウム、またはそれらの組み合わせを含む不動態化溶液を使用して行われる、実施形態1~22のいずれかに記載の方法。
【0250】
24.不動態化溶液が硝酸またはクエン酸を含む、実施形態22または実施形態23に記載の方法。
【0251】
25.不動態化溶液が、約1%~約30%のクエン酸または約15%~約30%v/vの70%硝酸を含む、実施形態24に記載の方法。
【0252】
26.不動態化溶液が約1のpHを有する、実施形態22~25のいずれか一つに記載の方法。
【0253】
27.不動態化が化学的不動態化であり、少なくとも3分間行われる、実施形態1~26のいずれかに記載の方法。
【0254】
28.化学的不動態化が最大1時間行われる、実施形態27に記載の方法。
【0255】
29.新しい酸化物層が化学的不動態化によって形成され、15℃~80℃の温度で行われる、実施形態1~28のいずれかに記載の方法。
【0256】
30.新しい酸化物層が化学的不動態化によって形成され、15%~30%v/vの70%硝酸を含む不動態化溶液を使用して行われる、実施形態1~29のいずれかに記載の方法。
【0257】
31.化学的不動態化の工程が少なくとも20分間行われる、実施形態30に記載の方法。
【0258】
32.化学的不動態化の工程が、15℃~60℃の温度で行われる、実施形態30または実施形態31に記載の方法。
【0259】
33.新しい酸化物層が化学的不動態化によって形成され、1%~15%w/vのクエン酸を含む不動態化溶液を使用して行われる、実施形態1~29のいずれか一つに記載の方法。
【0260】
34.化学的不動態化の工程が少なくとも4分間行われる、実施形態33に記載の方法。
【0261】
35.化学的不動態化の工程が、15℃~70℃の温度で行われる、実施形態33または実施形態34に記載の方法。
【0262】
36.新しい酸化物層が化学的不動態化によって形成され、
a)最低30分間、室温の20%~25%v/vの70%硝酸溶液、
b)最低20分間、45℃~60℃に加熱した20%~25%v/vの70%硝酸溶液、
c)最低20分間、20℃~50℃の温度の4%~10%w/vクエン酸溶液、
d)最低10分間、50℃~60℃の温度の4%~10%w/vクエン酸溶液、
e)最低4分間、60℃~70℃の温度の4%~10%w/vクエン酸溶液、
f)約30分間、周囲温度の22.5%v/vの70%硝酸溶液、または
g)約30分間、周囲温度の7%w/vクエン酸溶液
を使用して実行される、実施形態1~35のいずれかに記載の方法。
【0263】
37.酸化物層を除去する工程の開始からシリケート水溶液のコーティングを塗布する工程までの最大約48時間または最大約24時間、金属または金属合金をガス状酸化環境(例えば空気)に曝露することを含む、実施形態1~36のいずれかに記載の方法。
【0264】
38.金属または金属合金の表面上に新しい酸化物層を形成する工程が、金属または金属合金をガス状酸化環境(例えば空気)に最大約48時間または最大約24時間曝露することを含む、実施形態1~37のいずれかに記載の方法。
【0265】
39.金属または金属合金の表面上に新しい酸化物層を形成する工程が、化学的不動態化を含まない、実施形態38に記載の方法。
【0266】
40.金属または金属合金の表面上に新しい酸化物層を形成する工程が、金属または金属合金をガス状酸化環境(例えば空気)に約15℃~約25℃の温度で約10分間~約120分間曝露することを含む、実施形態1~39のいずれかに記載の方法。
【0267】
41.金属または金属合金の表面上に新しい酸化物層を形成する工程が、化学的不動態化を使用して金属または金属合金の表面上に酸化物層を形成することを含まない、実施形態40に記載の方法。
【0268】
42.金属または金属合金の表面上に新しい酸化物層を形成する工程が、金属または金属合金をガス状酸化環境(例えば空気)に最大約700℃、例えば、約25℃~約700℃の温度で最大約48時間曝露することを含む、実施形態1~41のいずれかに記載の方法。
【0269】
43.金属または金属合金の表面上に新しい酸化物層を形成する工程が、化学的不動態化を使用して金属または金属合金の表面上に酸化物層を形成することを含まない、実施形態42に記載の方法。
【0270】
44.ガス状酸化環境が空気、または酸素を含むガス状環境である、実施形態1~43のいずれかに記載の方法。
【0271】
45.金属または金属合金から既存の酸化物層を除去する工程が、酸洗いによる既存の酸化物層の除去を含み、金属または金属上に新たな酸化物層を形成する工程が、化学的不動態化を使用して金属または金属合金上に新たな酸化物層を形成することを含み、金属または金属合金が、酸洗い工程と化学的不動態化工程との間に最大約1時間、ガス状酸化環境(例えば、空気)に曝露される、実施形態1~44のいずれかに記載の方法。
【0272】
46.金属または金属合金上に新たな酸化物層を形成する工程が、化学的不動態化を使用して金属または金属合金上に新たな酸化物層を形成することを含み、金属または金属合金が、化学的不動態化工程と、シリケート水溶液のコーティングの塗布工程との間に最大約1時間空気に曝露される、実施形態1~45のいずれかに記載の方法。
【0273】
47.方法が、酸洗いによって既存の酸化物層を除去すること、および化学的不動態化によって新たな酸化物層を形成することを含み、金属または金属合金を、酸洗い工程と化学的不動態化工程との間に最大約1時間、および化学的不動態化工程とシリケート水溶液のコーティングの塗布工程との間に最大約1時間、ガス状酸化環境(例えば空気)に曝露することを含む、実施形態1~46のいずれかに記載の方法。
【0274】
48.既存の酸化物層を除去する工程が、金属または金属合金の表面の研磨処理、例えば、金属または金属合金の表面の研磨材ブラストを含む、実施形態1~47のいずれかに記載の方法。
【0275】
49.既存の酸化物層を除去する工程が、研磨処理を含む、実施形態1~8のいずれか一つに記載の方法。
【0276】
50.研磨処理が、研磨材ブラストである、実施形態49に記載の方法。
【0277】
51.ブラストした金属または金属合金を、コーティングの前に洗浄および/または脱脂する工程をさらに含む、実施形態49または実施形態50に記載の方法。
【0278】
52.酸洗い工程を含まない、実施形態49~51のいずれか一つに記載の方法。
【0279】
53.化学的不動態化の工程を含まない、実施形態49~52のいずれか一つに記載の方法。
【0280】
54.酸洗い工程を含まず、化学的不動態化の工程を含まない、実施形態49~53のいずれか一つに記載の方法。
【0281】
55.シリケート水溶液を塗布する工程の前に、金属または金属合金をガス状酸化環境(例えば空気)に最大約48時間曝露することを含む、実施形態49~54のいずれか一つに記載の方法。
【0282】
56.既存の酸化物層を除去する前に金属または金属合金を洗浄する工程をさらに含む、実施形態1~55のいずれかに記載の方法。
【0283】
57.金属の表面を洗浄する工程が、金属または金属合金の表面からグリースを除去することを含む、実施形態56に記載の方法。
【0284】
58.材料の表面を洗浄する工程が、金属または金属合金の表面の研磨処理を含む、実施形態56または実施形態57に記載の方法。
【0285】
59.研磨処理が、研磨材ブラスト、例えばサンドブラストである、実施形態58に記載の方法。
【0286】
60.材料の表面を洗浄する工程が、金属または金属合金の表面の研磨処理、例えば、金属または金属合金の表面の研磨材ブラスト、および金属または金属合金の表面の脱脂を含む、実施形態56~59のいずれか一つに記載の方法。
【0287】
61.実施形態1~8のいずれか一つに記載の方法であって、
ステンレス鋼、チタンまたはチタン合金から選択される金属または金属合金の表面を洗浄すること;
硝酸およびフッ化水素酸を含むpH1の酸性の酸洗い溶液を用いて酸洗いすることによって、金属または金属合金から既存の酸化物層を除去すること;
硝酸またはクエン酸を含むpH1の化学的不動態化溶液を用いて、金属または金属合金の表面上に酸化物層を形成すること;
金属または金属合金に、10~13のpHを有し、SiO2、M2O、および随意にB2O3を含み、Mが、Li、Na、K、またはそれらの混合物から選択され、M2Oに対するSiO2の比が約3.8~約2.0であり、B2O3が存在する場合、B2O3に対するSiO2の比が約10:1~約200:1であるシリケート水溶液のコーティングを塗布すること;および
コーティングされた不動態層を少なくとも200℃または少なくとも230℃の温度に加熱すること、または、
コーティングされた不動態層を赤外線源に曝露することによって、
酸化物層上のシリケート溶液を硬化させて、シリケートコーティング層を提供すること;を含む、方法。
【0288】
62.実施形態1~8のいずれか一つに記載の方法であって、
ステンレス鋼、チタンまたはチタン合金から選択される金属または金属合金の表面を洗浄すること;
硝酸およびフッ化水素酸を含むpH1の酸性の酸洗い溶液を用いて酸洗いすることによって、金属または金属合金から既存の酸化物層を除去すること;
硝酸またはクエン酸を含むpH1の化学的不動態化溶液を用いて、金属または金属合金の表面上に酸化物層を形成すること;
金属または金属合金に、10~13のpHを有し、SiO2、M2O、およびB2O3を含み、Mが、Li、Na、K、またはそれらの混合物から選択され、M2Oに対するSiO2の比が約3.8~約2.0であり、B2O3に対するSiO2の比が約10:1~約200:1であるシリケート水溶液のコーティングを塗布すること;および
コーティングされた不動態層を少なくとも200℃または少なくとも230℃の温度に加熱すること、または
コーティングされた不動態層を赤外線源に曝露することによって、
酸化物層上のシリケート溶液を硬化させて、シリケートコーティング層を提供すること;を含む、方法。
【0289】
63.酸洗い溶液が、10%~20%v/v(150g/L~300g/L)の70%硝酸および1%~2%v/v(12g/L~24g/L)の60%フッ化水素酸を含む、実施形態61または62記載の方法。
【0290】
64.不動態化溶液が、15%~30%v/vの70%硝酸を含み、少なくとも約20分間行われ、約15℃~約60℃の温度で行われる、実施形態61~63のいずれか一つに記載の方法。
【0291】
65.不動態化溶液が、1%~15%w/vのクエン酸を含み、少なくとも約4分間行われ、約21℃~約70℃の温度で行われる、実施形態61~63の一つに記載の方法。
【0292】
66.酸洗い工程と化学的不動態化工程との間に最大1時間、および化学的不動態化工程とシリケート水溶液のコーティングを塗布する工程との間に最大約1時間、金属または金属合金をガス状酸化環境に曝露することを含む、実施形態61~65のいずれか一つに記載の方法。
【0293】
67.酸洗い工程とシリケート水溶液のコーティングを塗布する工程との間に最大2時間、金属または金属合金をガス状酸化環境に曝露することを含む、実施形態61~65のいずれか一つに記載の方法。
【0294】
68.実施形態1~8のいずれか一つに記載の方法であって、
酸化物層を含む金属または金属合金基材を提供すること;
研磨材ブラストにより金属または金属合金から既存の酸化物層を除去すること;
ブラストされた金属または金属合金を洗浄すること;
金属または金属合金を最大48時間(好ましくは最大24時間)にわたってガス状酸化環境(例えば空気)に曝露して、金属または金属合金の表面上に新たな酸化物層を形成すること;
金属または金属合金の新たな酸化物層にシリケート水溶液のコーティングを塗布すること;
コーティングを少なくとも200℃、または少なくとも230℃の温度に加熱すること、または、
コーティングを赤外線源に曝露することによって、
新たな酸化物層上で塗布されたコーティングを硬化させて、シリケートコーティング層を提供すること;を含む、方法。
【0295】
69.実施形態1~8のいずれか一つに記載の方法であって、
酸化物層を含む金属または金属合金基材を提供すること;
研磨材ブラストにより金属または金属合金から既存の酸化物層を除去すること;
ブラストされた金属または金属合金を洗浄すること;
金属または金属合金を最大48時間(好ましくは最大24時間)にわたってガス状酸化環境(例えば空気)に曝露して、金属または金属合金の表面上に新たな酸化物層を形成すること;
金属または金属合金の新たな酸化物層に、10~13のpHを有し、SiO2およびM2Oおよび随意にB2O3を含み、MがLi、Na、K、またはこれらの混合物から選択され、M2Oに対するSiO2の比が約3.8~約2であり、B2O3が存在する場合、B2O3に対するSiO2の比が約10:1~約200:1であるシリケート水溶液のコーティングを塗布すること;
塗布されたコーティングを、
コーティングを少なくとも200℃、または少なくとも230℃の温度に加熱すること;または
コーティングを赤外線源に曝露することによって
新たな酸化物層上で硬化させて、シリケートコーティング層を提供することを含む、方法。
【0296】
70.実施形態1~8のいずれか一つに記載の方法であって、
酸化物層を含む金属または金属合金基材を提供すること;
研磨材ブラストにより金属または金属合金から既存の酸化物層を除去すること;
ブラストされた金属または金属合金を洗浄すること;
金属または金属合金を最大48時間(好ましくは最大24時間)にわたってガス状酸化環境(例えば空気)に室温で曝露して、金属または金属合金の表面上に新たな酸化物層を形成すること;
新たな金属または金属合金の酸化物層に、10~13のpHを有し、SiO2およびM2Oおよび随意にB2O3を含み、MがLi、Na、K、またはこれらの混合物から選択され、M2Oに対するSiO2の比が約3.8~約2であり、B2O3が存在する場合、B2O3に対するSiO2の比が約10:1~約200:1であるシリケート水溶液のコーティングを塗布すること;
コーティングを少なくとも200℃、または少なくとも230℃の温度に加熱すること、または、
コーティングを赤外線源に曝露することによって、
新たな酸化物層上で塗布されたコーティングを硬化させて、シリケートコーティング層を提供すること;を含む、方法。
【0297】
71.実施形態1~8のいずれか一つに記載の方法であって、
酸化物層を含む金属または金属合金基材を提供すること;
研磨材(例えば、サンド)を使用する研磨材ブラストにより金属または金属合金から既存の酸化物層を完全に除去する工程と;
ブラストされた金属または金属合金を洗浄して、研磨材を除去すること;
金属または金属合金を、研磨材ブラストの工程の開始で始まる最大48時間(好ましくは最大24時間)の期間にわたって室温でガス状酸化環境(例えば空気)に曝露して、金属または金属合金の表面上に新たな酸化物層を形成すること;
新たな金属または金属合金の酸化物層に、10~13のpHを有し、SiO2およびM2Oおよび随意にB2O3を含み、MがLi、Na、K、またはこれらの混合物から選択され、M2Oに対するSiO2の比が約3.8~約2であり、B2O3が存在する場合、B2O3に対するSiO2の比が約10:1~約200:1であるシリケート水溶液のコーティングを塗布すること;
コーティングを少なくとも200℃、または少なくとも230℃の温度に加熱すること、または、
コーティングを赤外線源に曝露することによって、
新たな酸化物層上で塗布されたコーティングを硬化させて、シリケートコーティング層を提供すること;を含む、方法。
【0298】
72.硬化したシリケートコーティング層が5μm未満の厚さを有する、実施形態1~71のいずれかに記載の方法。
【0299】
73.硬化したシリケートコーティング層が約10nm~約5000nmの厚さを有する、実施形態1~72のいずれかに記載の方法。
【0300】
74.化学的不動態化またはガス状酸化環境への曝露によって調製されたコーティングされた酸化物層が、約50μm未満の厚さを有する、実施形態1~73のいずれかに記載の方法。
【0301】
75.化学的不動態化またはガス状酸化環境への曝露によって調製されたコーティングされた酸化物層が、約1nm~約25μmの厚さを有する、実施形態1~74のいずれかに記載の方法。
【0302】
76.硬化したシリケートコーティング層が5μm未満の厚さを有し、酸化物層が10μm未満の厚さを有する、実施形態1~75のいずれかに記載の方法。
【0303】
77.硬化したシリケートコーティング層が550nm未満の厚さを有し、酸化物層が2μm未満の厚さを有する、実施形態1~76のいずれかに記載の方法。
【0304】
78.金属または金属合金が、亜鉛、マンガン、マグネシウム、アルミニウム、チタン、鉄、クロム、ニッケル、鉛、ステンレス鋼、銅、モリブデン、スズ、ニオブ、またはそれらの組み合わせもしくは合金からなる群から選択される、実施形態1~77のいずれかに記載の方法。
【0305】
79.金属または金属合金が、ステンレス鋼、チタンまたはチタン合金から選択される、実施形態78に記載の方法。
【0306】
80.シーリングされた不動態層を提供するために、化学的不動態化工程の後にシーリングされていない酸化物層をシーリングする工程をさらに含む、実施形態1~79のいずれかに記載の方法。
【0307】
81.6分/μm未満、かつ少なくとも5分/μm、4分/μm、3分/μm、2分/μm、1分/μm、30秒/μmまたは10秒/μmのシーリング時間をさらに含み、シーリングされていない層からシーリングされた不動態層を形成することが、高温シーリングプロセスからなる、実施形態80に記載の方法。
【0308】
82.シーリングされた不動態層を湿潤雰囲気中で、水中で、または水でコーティングして保持すること、および次にシリケート水溶液を塗布することによってコーティングされた不動態層を形成することを含む、実施形態80~82のいずれか一つに記載の方法。
【0309】
83.金属または金属合金が、既存の酸化物層を除去する工程の開始または洗浄工程(そのような工程が存在する場合)の開始と、シリケート水溶液を塗布する工程との間に最大48時間まで空気に曝露される、実施形態1~82のいずれかに記載の方法。
【0310】
84.金属または金属合金が、既存の酸化物層を除去する工程の開始または洗浄工程(そのような工程が存在する場合)の開始と、シリケート水溶液を塗布する工程との間に最大24時間まで空気に曝露される、実施形態1~83のいずれかに記載の方法。
【0311】
85.金属または金属合金製品をコーティングする方法であって、
a.酸洗いされた金属であって、
i.任意選択的に金属または金属合金の表面洗浄することと、
ii.既存の酸化物層を酸洗いによって金属または金属合金から除去すること、
を含む方法に供された金属を提供すること;および
b.化学的不動態化および/またはガス状酸化環境への曝露を使用して、金属または金属合金の表面上に酸化物層を形成すること;
c.金属または金属合金の酸化物層にシリケート水溶液のコーティングを塗布すること;および
i.コーティングされた不動態層を少なくとも200℃、または少なくとも230℃の温度に加熱すること、または、
ii.コーティングされた不動態層を赤外線源に曝露すること、
によって、
d.酸化物層上に塗布されたコーティングを硬化させて、シリケートコーティング層を提供すること;を含む、方法。
【0312】
86.金属または金属合金製品をコーティングする方法であって、
a.研磨材ブラストに供されて酸化物層を除去した金属または金属合金を提供すること;
b.化学的不動態化および/またはガス状酸化環境への曝露を使用して、金属または金属合金の表面上に新たな酸化物層を形成すること;
c.金属または金属合金の新たな酸化物層にシリケート水溶液のコーティングを塗布すること;および
i.コーティングされた不動態層を少なくとも200℃、または少なくとも230℃の温度に加熱すること、または
ii.コーティングされた不動態層を赤外線源に曝露すること、
によって、
d.酸化物層上に塗布されたコーティングを硬化させて、シリケートコーティング層を提供すること;を含む、方法。
【0313】
87.金属または金属合金製品をコーティングする方法であって、
a.研磨材ブラストに供されて酸化物層を除去した金属または金属合金を提供すること;
b.最大約48時間空気に曝露して、金属または金属合金の表面上に新たな酸化物層を形成すること;
c.金属または金属合金の新たな酸化物層にシリケート水溶液のコーティングを塗布すること;および
i.コーティングされた不動態層を少なくとも200℃、または少なくとも230℃の温度に加熱すること、または
ii.コーティングされた不動態層を赤外線源に曝露すること、
によって、
d.酸化物層上に塗布されたコーティングを硬化させて、シリケートコーティング層を提供すること;を含む、方法。
【0314】
88.方法が、最大約24時間空気に曝露して金属または金属合金の表面上に新しい酸化物層を形成することを含む、実施形態87に記載の方法。
【0315】
89.金属または金属合金製品をコーティングする方法であって、
a.酸洗いされ、不動態化された金属であって、
i.任意選択的に金属または金属合金の表面洗浄すること、
ii.既存の酸化物層を酸洗いによって金属または金属合金から除去すること、
iii.化学的不動態化および/またはガス状酸化環境への曝露を使用して、金属または金属合金の表面上に酸化物層を形成すること、
を含む方法に供された金属を提供すること;
b.金属または金属合金の酸化物層にシリケート水溶液のコーティングを塗布すること;および
i.コーティングを少なくとも200℃、または少なくとも230℃の温度に加熱すること、または
ii.コーティングを赤外線源に曝露すること、
によって、
c.酸化物層上に塗布されたコーティングを硬化させて、シリケートコーティング層を提供すること;を含む、方法。
【0316】
90.金属または金属合金製品をコーティングする方法であって、
a.研磨材ブラストに供され、ガス状酸化環境(例えば、空気)に最大48時間曝露することによって形成された自然不動態化酸化物層を含む金属または金属合金を提供すること;
b.酸化物層を含む金属または金属合金にシリケート水溶液のコーティングを塗布すること;および
i.コーティングを少なくとも200℃、または少なくとも230℃の温度に加熱すること、または
ii.コーティング層を赤外線源に曝露すること、
によって、
c.酸化物層上に塗布されたコーティングを硬化させて、シリケートコーティング層を提供すること;を含む、方法。
【0317】
91.提供される金属または金属合金が、研磨材ブラストに供されており、ガス状酸化環境(例えば、空気)に最大24時間曝露することによって形成された自然不動態化酸化物層を含む、実施形態90に記載の方法。
【0318】
92.実施形態1~91のいずれか一つに従って得られるまたは得ることができるコーティングを含む金属製品。
【0319】
93.コーティング物品を調製する方法であって、実施形態1~91のいずれか一つに従って調製されたコーティング金属または金属合金製品を前記物品に適用することを含む、方法。
【0320】
本明細書に記載の現在好ましい実施形態に対する様々な変更および修正が当業者には明らかであることを理解されたい。そのような変更および修正は、本主題の趣旨および範囲から逸脱することなく、かつその意図された利点を損なうことなく行うことができる。従って、そのような変更および修正は、添付の特許請求の範囲によって包含されることが意図されている。