IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 朝日インテック株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-カテーテル 図1
  • 特許-カテーテル 図2
  • 特許-カテーテル 図3
  • 特許-カテーテル 図4
  • 特許-カテーテル 図5
  • 特許-カテーテル 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-22
(45)【発行日】2024-03-04
(54)【発明の名称】カテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/00 20060101AFI20240226BHJP
【FI】
A61M25/00 624
A61M25/00 510
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022539818
(86)(22)【出願日】2020-07-27
(86)【国際出願番号】 JP2020028761
(87)【国際公開番号】W WO2022024201
(87)【国際公開日】2022-02-03
【審査請求日】2023-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(72)【発明者】
【氏名】久保木 哲平
(72)【発明者】
【氏名】藤野 慧一
【審査官】川上 佳
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-517652(JP,A)
【文献】特表2018-515210(JP,A)
【文献】特表2010-508910(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空シャフトを備えるカテーテルであって、
前記中空シャフトの先端部は、略直線状に延びる第1区間と、前記第1区間の先端側に接続され、第1湾曲部が形成された第2区間と、前記第2区間の先端側に接続され、第2湾曲部が形成された第3区間とを有しており、
前記第2区間の剛性は、前記第3区間の剛性よりも大きく、
前記第1区間の軸線に沿った仮想平面を設定し、前記仮想面の一方の側の空間領域を第1領域とし、他方の側の空間領域を第2領域とすると、
前記第1湾曲部と前記カテーテルの先端は、前記第1領域に位置し、
前記第2湾曲部は、前記第2領域に位置し、
前記カテーテルの先端から前記仮想平面までの距離は、前記第1湾曲部から前記仮想平面までの距離よりも大きく、
前記第2湾曲部から前記仮想平面までの距離は、前記第1湾曲部から前記仮想平面までの距離よりも大きい、
カテーテル。
【請求項2】
請求項1に記載のカテーテルであって、
前記中空シャフトの前記第1区間の剛性は、前記第2区間の剛性よりも大きい、
カテーテル。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のカテーテルであって、
前記カテーテルを正面視したとき、前記中空シャフトは、前記第1区間の先端と、前記第1湾曲部の頂点と、前記第2湾曲部の頂点と、が直線上に配置されている、
カテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、先端部が湾曲形状に形成された中空シャフトを有するカテーテルが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-87389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記先行技術によっても、複雑に分岐する内臓、血管内において、カテーテルを目的の方向に進める性能(選択性)を向上させる技術については、なお、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、体内の複雑に分岐する内臓、血管内において、カテーテルを目的の方向に進める性能(選択性)の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、カテーテルが提供される。カテーテルは、中空シャフトを備えるカテーテルであって、中空シャフトの先端部は、略直線状に延びる第1区間と、第1区間の先端側に接続され、第1湾曲部が形成された第2区間と、第2区間の先端側に接続され、第2湾曲部が形成された第3区間とを有しており、第2区間の剛性は、第3区間の剛性よりも大きく、第1区間の軸線に沿った仮想平面を設定し、仮想平面の一方の側の空間領域を第1領域とし、他方の側の空間領域を第2領域とすると、第1湾曲部とカテーテルの先端は、第1領域に位置し、第2湾曲部は、第2領域に位置し、カテーテルの先端から仮想平面までの距離は、第1湾曲部から仮想平面までの距離よりも大きい。
【0008】
この構成によれば、カテーテルを押し込む力などの、カテーテルの軸線方向に加わる力が、第1湾曲部と第2湾曲部を介して、カテーテルの先端方向へ変換される。これにより、カテーテルの先端方向に向かって、カテーテルが進行することが容易となる。また、第1湾曲部から仮想平面までの距離より、カテーテルの先端から仮想平面までの距離の方が大きいため、カテーテルの先端が血管の分岐部に到達したときに、カテーテルの先端を分岐部に挿入することが容易となる。また、第2区間の剛性が、第3区間の剛性よりも大きいことで、カテーテルの先端が、カテーテルの後端側に押し戻される可能性を低減することができる。
【0009】
(2)上記形態のカテーテルにおいて、中空シャフトの第1区間の剛性は、第2区間の剛性よりも大きくてもよい。この構成によれば、カテーテルを押し込む力や、カテーテルを回転させる力などを、カテーテルの後端側から、カテーテルの先端側により確実に伝達させることができる。
【0010】
(3)上記形態のカテーテルにおいて、カテーテルを正面視したとき、中空シャフトは、第1区間の先端と、第1湾曲部の先端と、第2湾曲部の先端と、が直線上に配置されている、
カテーテル。カテーテルの正面視において、第1区間の先端と、第1湾曲部の頂点と、第2湾曲部の頂点と、が直線上に配置されていていてもよい。この構成によれば、第1区間の先端と、第1湾曲部の頂点と、第2湾曲部の頂点と、が直線上に配置されていない場合と比べて、カテーテルの軸線方向に直交する方向の力が発生する可能性が低減されるため、カテーテルの先端部が、使用者の意図しない方向に回転する可能性が低減される。
【0011】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、ガイドワイヤ、ガイドワイヤの製造方法、カテーテルの製造方法、内視鏡、ダイレータ、などの形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態のカテーテルの全体構成を例示した説明図である。
図2】第1実施形態のカテーテルの湾曲部を例示した説明図である。
図3】第1実施形態のカテーテルの正面視を例示した説明図である。
図4】カテーテルの血管内での使用状態を例示した第1の説明図である。
図5】カテーテルの血管内での使用状態を例示した第2の説明図である。
図6】第2実施形態のカテーテルの全体構成を例示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1実施形態>
【0014】
図1は、第1実施形態のカテーテル1の全体構成を例示した説明図である。図1は、説明の便宜上、各構成部材の大きさの相対比を実際とは異なる相対比で記載している部分を含んでいる。これらの点は、図2から図6において示される、各説明図についても同様である。
【0015】
図1において、左側はカテーテル1及びカテーテル1の各構成部材の先端側であり、右側はカテーテル1及びカテーテル1の各構成部材の後端側である。カテーテル1の先端側は、体内に挿入される側(遠位側)であり、カテーテル1の基端側は、医師等の手技者によって操作される側(近位側)である。図1の左右方向をカテーテル1および各構成部材の軸線方向と呼ぶ。軸線方向に直交する方向をカテーテル1および各構成部材の径方向と呼ぶ。
【0016】
また、カテーテル1及びカテーテル1の各構成部材の、先端側に位置する端部を「先端」と記載し、「先端」を含み先端から後端側に向かって中途まで延びる部位を「先端部」と記載する。同様に、カテーテル1及びカテーテル1の各構成部材の、後端側に位置する端部を「後端」と記載し、「後端」を含み後端から先端側に向かって中途まで延びる部位を「後端部」と記載する。
【0017】
カテーテル1は、血管や消化器官に挿入され、治療や検査に用いられる医療器具である。カテーテル1は、中空シャフト10と、先端チップ60と、把持部70と、を備えている。
【0018】
中空シャフト10は、カテーテル1の軸線方向に延びる長尺の管状体である。可撓性を有する樹脂によって形成されている。中空シャフト10の先端部は湾曲形状を有している。中空シャフト10の後端部には把持部70が接続されており、中空シャフト10の先端部には先端チップ60が接続されている。中空シャフト10のルーメン(内腔)は、把持部70のルーメンと、先端チップ60のルーメンと連通している。
【0019】
先端チップ60は、中空シャフト10の先端部に接続される管状体である。先端チップ60は、カテーテル1が体内を傷つける可能性を低減するために、カテーテル1の最先端を構成する部材である。先端チップ60は、柔軟性を有する樹脂材料で形成することができる。例えば、TPU(ポリウレタン系熱可塑性エラストマー)が選択できる。先端チップ60は、樹脂材料に限定されず、金属材料でも形成することができる。
【0020】
把持部70は、中空シャフト10の後端部に接続される管状体である。医師等の手技者は、把持部70を把持し、カテーテル1を操作する。把持部70は、プロテクタ71と、本体部72と、コネクタ73と、を有する。プロテクタ71は、プロテクタ71の後端側に向かって外径が増大するテーパ形状を有している。本体部72は、医師等の手技者が把持することを容易にするために、外周に突起部を有している。コネクタ部73は、内周側にねじ加工がされており、例えばシリンジ(不図示)などの他の医療用機器と接続することができる。把持部70は、耐久性を有し、滅菌処理に適している材料により形成することができる。例えば、金属、射出成形された樹脂、又はそれらの組み合わせであってもよい。
【0021】
中空シャフト10は、第1中空シャフト11と、第2中空シャフト12と、第3中空シャフト13とを含んでいる。第1中空シャフト11の基端部は把持部70に接続され、先端部は第2中空シャフト12に接続されている。第2中空シャフト12の基端部は第1中空シャフト11の先端部に接続され、先端部は第3中空シャフト13に接続されている。第3中空シャフト13の基端部は第2中空シャフト12の先端部に接続され、先端部は先端チップ60に接続されている。第1中空シャフト11の先端と、第2中空シャフト12の後端との接続部分を、第1中空シャフト11と第2中空シャフト12との接続部14とする。接続部14は、中空シャフト10の直線状の部分に設けられている。言い換えると、第1中空シャフト11の軸線上に設けられている。第2中空シャフト12の先端と、第3中空シャフト13の後端との接続部分を、第2中空シャフト12と第3中空シャフト13との接続部15とする。第1中空シャフト11は、略直線状であり、カテーテル1の軸線方向に略平行に形成されている。第2中空シャフト12は、少なくとも一部が、湾曲部分を有している。第3中空シャフト13は、少なくとも一部が湾曲部分を有している。第1中空シャフト11、第2中空シャフト12及び第3中空シャフト13は、連続して接続されており、それぞれを連通するルーメン(不図示)を有する。ルーメンは、ガイドワイヤ等の他のデバイスの挿通や、薬液の送液などに用いられる。
【0022】
本実施形態では、中空シャフト10のうち、第1中空シャフト11によって形成されている、略直線状の区間を第1区間21と呼び、第2中空シャフト12によって形成されている、略直線状の部分と湾曲部分を含む区間を第2区間22と呼び、第3中空シャフト13によって形成されている、湾曲部分を含む区間を第3区間23と呼ぶ。第1区間の長さは、第2区間及び第3区間よりも長い。また、第1区間の長さは、第2区間と第3区間を合わせた長さよりも長い。
【0023】
第1区間21の剛性は、第2区間22の剛性より大きい。また、第2区間22の剛性は、第3区間23の剛性より大きい。本実施形態においては、第1中空シャフト11の剛性は、第2中空シャフト12の剛性より大きく、第2中空シャフト12の剛性は、第3中空シャフト13の剛性より大きい。言い換えると、中空シャフト10は、後端側から先端側に向かって、段階的に剛性が小さくなっている。これにより、カテーテル1は、カテーテル1の先端方向に向かって柔軟性が増大する構成を有している。例えば、第3区間23の剛性を1としたときの各区間での剛性の比率を、第3区間23:第2区間22:第1区間21=1:10~20:30~300とすることが好ましい。この場合の各区間の剛性値は、第3区間23は0.005~0.050gf・cm^2/cm、第2区間22は0.050~1.00gf・cm^2/cm、第1区間21は0.150~15.0gf・cm^2/cmに設定することが好ましい。このように各区間の剛性を設計することで、カテーテル1はプッシャビリティと先端柔軟性を有することができる。すなわち、後述する第1湾曲部31、第2湾曲部32を有し、第1距離L1、第2距離L2、第3距離L3が後述する条件を満たす中空シャフト10において、第1区間、第2区間、および、第3区間の剛性を上記範囲とすることによって、プッシャビリティと先端柔軟性の両方を十分に満たすことが発明者によって見いだされた。
【0024】
第1中空シャフト11の軸線上に位置する、カテーテル1の先端方向に向かって伸びる平面を、仮想平面40とする。図1の仮想平面40は、仮想平面40の縦断面を示している。仮想平面40によって区切られることで規定される、仮想平面40の一方の側に広がる空間領域を第1領域51とし、仮想平面40の他方の側に広がる空間領域を第2領域52とする。第1領域51と、第2領域52は、仮想平面40を境に対向している。
【0025】
第2中空シャフト12によって形成された湾曲形状の一部を第1湾曲部31と呼ぶ。第1湾曲部31は、第2区間22において、第1領域51内に設けられている。第3中空シャフト13によって形成された湾曲形状の一部を第2湾曲部32と呼ぶ。第2湾曲部32は、第3区間23において、第2領域52内に設けられている。第2中空シャフト12と第3中空シャフト13の接続部15は、第1湾曲部31と、第2湾曲部32の間に設けられている。
【0026】
図2は、第1実施形態のカテーテル1の湾曲部を例示した説明図である。
【0027】
第2中空シャフト12に形成された湾曲形状のうち、最も曲率の大きい部分を最大湾曲部Rmax1とする。最大湾曲部Rmax1の曲率半径Rc1の中心を、最大湾曲部Rmax1の中心C1とする。第2中空シャフト12における第1湾曲部31の範囲は、最大湾曲部Rmax1の中心C1から湾曲形状の外側に向かって、最大湾曲部Rmax1の曲率半径Rc1を中心線としてその両側に対象に広がり、中心角α1を60度とする弧A1の内部に含まれる部分とする。第3中空シャフト13に形成された湾曲形状のうち、最も曲率の大きい部分を最大湾曲部Rmax2とする。最大湾曲部Rmax2の曲率半径Rc2の中心を、最大湾曲部Rmax2の中心C2とする。第3中空シャフト13における第2湾曲部32の範囲は、最大湾曲部Rmax2の中心C2から湾曲形状の外側に向かって、最大湾曲部Rmax2の曲率半径Rc2を中心線としてその両側に対象に広がり、中心角α2を60度とする弧A2の内部に含まれる部分とする。各図においては、第1湾曲部31と、第2湾曲部32にハッチングを施している。
【0028】
第1湾曲部31のうち、仮想平面40から最も離れている点を第1湾曲部の頂点p1とする。第1湾曲部の頂点p1から、仮想平面40までの距離を、第1距離L1とする。第2湾曲部32のうち、仮想平面40から最も離れている点を第2湾曲部の頂点p2とする。第2湾曲部の頂点p2から、仮想平面40までの距離を、第2距離L2とする。カテーテル1の先端(先端チップ60の先端)のうち、仮想平面40から最も離れている点と、仮想平面40までの距離を、第3距離L3とする。カテーテル1は、第1距離L1より、第2距離L2の方が大きい。これにより、図4に示すように、血管内においてカテーテル1の先端(先端チップ60)をカテーテル1の基端側に倒した状態のときに、第2距離L2が減少し、第1距離L1と第2距離L2がほぼ等しくなる。これにより、カテーテル1の基端側を押したときの力がカテーテル1の先端側の重心近くを通ることになり、プッシャビリティを向上させることができる。また、第1距離L1が、第2距離L2より大きいと、第1湾曲部31の長さがカテーテル1の先端部において、相対的に大きくなる。この場合、カテーテル1の基端側を押したときの力が、第1湾曲部31が撓むことにより、第1湾曲部31で吸収されてしまう。第1距離L1が、第2距離L2よりも小さいことで、カテーテル1の基端側を押したときの力の、カテーテル1の先端に到達するまでの減衰率を小さくすることができる。カテーテル1は、第1距離L1より、第3距離L3の方が大きい。これにより、図4に示すように、血管内においてカテーテル1の先端(先端チップ60)をカテーテル1の基端側に容易に倒すことができる。また、カテーテル1は、第2距離L2より、第3距離L3の方が大きい。これにより、図4に示すように、血管内においてカテーテル1の先端(先端チップ60)をカテーテル1の基端側に倒した状態のときに、第2距離L2の減少量よりも第3距離L3の減少量が大きく、第2距離L2と第3距離L3がほぼ等しくなる。これにより、カテーテル1の基端側を押したときの力がカテーテル1の先端側の重心近くを通ることになり、プッシャビリティを向上させることができる。また、第1距離L1が、第2距離L3より大きいと、第1湾曲部31の長さがカテーテル1の先端部において、相対的に大きくなる。この場合、カテーテル1の基端側を押したときの力が、第1湾曲部31が撓むことにより、第1湾曲部31で吸収されてしまう。第1距離L1が、第3距離L3よりも小さいことで、カテーテル1の基端側を押したときの力の、カテーテル1の先端に到達するまでの減衰率を小さくすることができる。例えば、第1距離L1の剛性を1としたときの各距離の比率を、第1距離L1:第2距離L2:第3距離L3=1:5~10:6~16とすることができる。この場合の第1距離L1は0.500~3.00mm、第2距離L2は2.50~5.00mm、第3距離L3は3.00から8.00mmに設定することができる。
【0029】
第2湾曲部の最大湾曲部Rmax2は、第2湾曲部の頂点p2よりも、カテーテル1の軸線方向において先端側に設けられている。これにより、カテーテル1の先端(先端チップ60)を予めカテーテル1の基端側に少し傾いた状態となるため、図4に示すような血管内においてカテーテル1の先端をより容易に基端側に倒すことができる。
【0030】
第2湾曲部32の最大曲率は、第1湾曲部31の最大曲率よりも大きい。言い換えると、先端側の湾曲部の最大曲率は、後端側の湾曲部の最大曲率よりも大きい。これにより、カテーテル1の先端は、カテーテル1の後端側に反り返るような形状になっている。
【0031】
第1湾曲部31の剛性は、第2湾曲部32の剛性よりも大きい。言い換えると、後端側の湾曲部の剛性の方が、先端側の湾曲部の剛性よりも大きい。これにより、カテーテル1の先端(先端チップ60)をカテーテル1の基端側に倒したときの第1湾曲部31の変形を抑制しつつ、カテーテル1の先端をより容易に基端側に倒すことができる。また、カテーテル1の基端側を押したときの力の、第1湾曲部31における減衰率を小さくすることができる。
【0032】
図3は、第1実施形態のカテーテルの正面視を例示した説明図である。図3において、第1区間21の先端部の横断面の輪郭、頂点p1を含む第1湾曲部31の横断面の輪郭及び、頂点p2を含む第2湾曲部32の横断面の輪郭を、点線で表している。
【0033】
第1中空シャフト11の第1区間21の先端部、第1湾曲部31の頂点p1及び第2湾曲部32の頂点p2、並びに先端チップ60は、一つの真っ直ぐな仮想線41上に位置している。なお、ここでの真っ直ぐなとは完全に真っ直ぐになっている場合のほか、概ね真っ直ぐになっているものも含まれる。例えば、図3の正面視において、先端チップ60と第2湾曲部32の頂点p2とを結ぶ直線と、第2湾曲部32の頂点p2と第1湾曲部31の頂点p1とを結ぶ直線とのなす角度が10°以下であれば、これらは真っ直ぐな直線上に位置しているといえる。
【0034】
中空シャフト10は、抗血栓性、可撓性、生体適合性を有することが好ましく、例えば、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂等の樹脂材料により形成できる。中空シャフト10の外径、内径、及び長さは任意に決定できる。
【0035】
図4は、カテーテル1の血管内での使用状態を例示した第1の説明図である。
【0036】
図4において、カテーテル1は、血管100に挿入されている。医師等の手技者は、血管内のカテーテル1を、治療を行う病変部などの目的部位に向かって進める。図3に示すような、血管100の内径がカテーテル1の第1湾曲部31と、第2湾曲部32との間の距離よりも小さい場合においては、第1湾曲部31と第2湾曲部32の両方が、血管壁101に接しながら進行する。そのため、カテーテル1は、第1湾曲部31と、第2湾曲部32を接点として、血管100の径方向に力を加えながら進行する。言い換えると、カテーテル1は、血管壁102を押し広げながら血管100内を進行する。医師等の手技者は、分岐血管101内にカテーテル1を進める場合がある。その場合、医師等の手技者は、カテーテル1を押し引きしたり、回転することによって、分岐血管101の中にカテーテル1の先端を挿入する。
【0037】
<第1実施形態の効果例>
図5は、カテーテル1の血管内での使用状態を例示した第2の説明図である。
【0038】
図5は、カテーテル1の先端が分岐血管101の中に挿入された状態を示している。医師等の手技者は、目的の病変部位が分岐血管101の先にある場合、カテーテル1の先端が分岐血管101の中に挿入されたことを確認した後に、カテーテル1を分岐血管101の中に押し進める。
【0039】
血管の分岐部にカテーテル1が運ばれた場合には、血管壁102により押さえつけられていたカテーテル1の先端が解放され、カテーテル1の先端は元の湾曲形状に戻ろうとする。これにより、カテーテル1の先端が分岐血管101に入り込む。そのため、医師等の手技者が、カテーテル1を分岐血管101に進行させることが容易となる。また、医師等の手技者がカテーテル1を押し込むことなどによりカテーテル1の軸方向に加えられた力120は、第1湾曲部31と、第2湾曲部32を介して、カテーテル1の先端まで伝達される。このとき、第1の湾曲部30と、第2湾曲部32が血管壁102により支えられているため、力120は、カテーテル1の軸方向の力から、先端方向の力に変換される。これにより、カテーテル1の先端を分岐血管101内に進めることが容易となる。
【0040】
カテーテル1は、血管100を押し広げながら進行する。これにより、カテーテル1に、カテーテル1の進行方向とは逆方向の力が加わった場合に、カテーテル1が押し戻されないように作用する抵抗力(カテーテル1のバックアップ力)が発揮され、カテーテル1が押し戻される可能性を低減することができる。また、第1湾曲部31の剛性は、第2湾曲部32の剛性よりも大きい。これにより、カテーテル1のバックアップ力が第1湾曲部31において生じる。そのため、カテーテル1が進行方向とは逆方向に押し戻される可能性をさらに低減することができる。
【0041】
第1区間の長さは、第2区間及び第3区間よりも長い。これにより、薬液をカテーテル1のルーメンに注入し、注入された薬液がカテーテル1の先端から放出される場合においても、カテーテル1が押し戻されないように作用する抵抗力(カテーテル1のバックアップ性能)が十分に働き、カテーテル1が押し戻される可能性を低減することが可能となる。また、第1区間の長さは、第2区間と第3区間を合わせた長さよりも長い。これにより、さらにカテーテル1のバックアップ性能を向上させることができる。
【0042】
第1区間21の剛性は、第2区間22の剛性より大きい。これにより、カテーテル1を押し込む力や、カテーテル1を回転させる力などを、カテーテル1の後端側から、カテーテル1の先端側により確実に伝達させることができる。そのため、医師等の手技者がカテーテル1を操作することが容易となる。また、第1中空シャフト11、第2中空シャフト12、第3中空シャフト13の順で、剛性が小さくなっている。これにより、カテーテル1は、カテーテル1の先端方向に向かって、柔軟性が増大する。そのため、複雑に湾曲する内臓や血管の形状に適応することが容易となる。
【0043】
第1中空シャフト11と第2中空シャフト12との接続部14は、中空シャフト10の直線状の部分に設けられている。接続部14が湾曲部分に設けられている場合、湾曲部分の滑らかな変形が抑制される可能性がある。接続部14が直線状の部分に設けられることで、湾曲部分の変形が抑制される可能性を低減することができる。
【0044】
第2中空シャフト12と第3中空シャフト13の接続部15は、第1湾曲部31と、第2湾曲部32の間に設けられている。接続部15が湾曲部分に設けられている場合、湾曲部分の滑らかな変形が抑制される可能性がある。接続部15が直線状の部分に設けられることで、湾曲部分の変形が抑制される可能性を低減することができる。
【0045】
第1距離L1より、第3距離L3の方が大きい。言い換えると、カテーテル1の先端が第1湾曲部31の頂点p1よりも、カテーテル1径方向において外側に位置する。これにより、分岐血管101にカテーテル1が到達した際に、分岐血管101の入り口に、カテーテル1の先端がスムーズに挿入される。
【0046】
第2湾曲部の最大湾曲部Rmax2は、第2湾曲部の頂点p2よりも、カテーテル1の軸線方向において先端側に設けられている。これにより、カテーテル1が血管100内を進行する際に、医師等の手技者によりカテーテル1の進行方向へ加えられる力に対する抵抗力が発生する可能性が低減され、カテーテル1が血管内を進むことが容易になる。
【0047】
第2湾曲部32の湾曲度合いは、第1湾曲部31の湾曲度合いよりも大きい。これにより、カテーテル1の先端は、カテーテル1の後端側に反り返るような形状になっている。そのため、図4、5に示されている分岐血管101のような、カテーテル1の進行方向とは逆方向に延びる分岐血管101にカテーテル1の先端を進行させることが容易となる。
【0048】
図3に示す通り、第1中空シャフト11、第1湾曲部31及び第2湾曲部32は、一つの真っ直ぐな仮想線41上に位置している。これにより、第1中空シャフト11と、第1湾曲部31と、第2湾曲部32と、が一軸上に配置されていない場合と比べて、カテーテル1の軸線方向に直交する方向の力が発生する可能性が低減される。そのため、カテーテル1の先端部が、使用者の意図しない方向に回転する可能性が低減される。
【0049】
<第2実施形態>
図6は、第2実施形態のカテーテルの全体構成を例示した説明図である。
【0050】
第2実施形態のカテーテル2は、第1区間21と、第2区間22とが第1中空シャフト11により形成され、第1中空シャフト11が、第3中空シャフト13と接続されているという点においてのみ、第1実施形態のカテーテル1と異なる。それ以外の部分についてはカテーテル1の構成と同様であるため、説明を省略する
【0051】
カテーテル2においては、第1中空シャフト11は、カテーテル2の後端部からカテーテル1の先端方向へ向かって略直線状に延びる部分と、第1湾曲部31とを有する。第1中空シャフト11の先端部は、第3中空シャフト13に接続されている。第3中空シャフト13の後端部は、第1中空シャフト11に接続されている。言い換えると、カテーテル2の先端部は2つの中空シャフトから構成されている。第1区間21は、第1中空シャフト11の直線状の部分において規定されている。第2区間22は、第1中空シャフト11の直線状の部分と、第1湾曲部31とを含む部分で規定されている。第1中空シャフト11の先端と、第3中空シャフト13の後端が接続されている部分を、第1中空シャフト11と第3中空シャフト13との接続部14aとする。接続部14aは、第1湾曲部31と、第2湾曲部32との間に位置している。
【0052】
<第2実施形態の効果例>
カテーテル2は、第1実施形態のカテーテル1が有する効果に加えて、カテーテル2の先端部を構成する中空シャフトの数を減らすことにより、中空シャフトと中空シャフトの接続部分での応力集中を避け、キンクする可能性を低減することができる。
【0053】
<実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において
種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0054】
[変形例1]
第1実施形態のカテーテル1は、複数の樹脂チューブを径方向に重ねて形成した、多層のチューブから形成されていてもよい。この場合、カテーテル1は、複数の樹脂層の間に、金属素線から形成された編組体や、コイル体などの補強体を有していてもよい。カテーテル1は、複数のルーメンを有していてもよい。その場合、一方のルーメンは、ガイドワイヤなどの併用されるデバイスを挿通するために用いられ、他方のルーメンは、薬液などの送液のために用いられてもよい。また、カテーテル1は、先端チップ60や、把持部70を有していなくてもよい。
【0055】
[変形例2]
第1実施形態のカテーテル1の中空シャフト10は、一つの樹脂チューブから形成されていてもよい。この場合、一つの樹脂チューブの後端側が真っ直ぐに形成され、先端側に第1湾曲部31と第2湾曲部32とが設けられる。中空シャフト10は、数を限らない、複数の樹脂チューブを接続することにより形成されてもよい。この場合、複数の樹脂チューブのうち、先端側に位置する樹脂チューブに第1湾曲部31と第2湾曲部32とが設けられる。
【0056】
[変形例3]
第1実施形態のカテーテル1の第1区間21及び第2区間22は、第1湾曲部31よりも後端側に、湾曲部を有していてもよい。言い換えると、カテーテル1は、本発明の効果を失わない範囲において、湾曲部を3つ以上有していてもよい。
【0057】
上記した変形例は、第1実施形態のみではなく、第2実施形態に対しても適用可能である。
【0058】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【符号の説明】
【0059】
1…カテーテル
10…中空シャフト
11…第1中空シャフト
12…第2中空シャフト
13…第3中空シャフト
14…第1中空シャフトと第2中空シャフトの接続部
15…第2中空シャフトと第3中空シャフトの接続部
21…第1区間
22…第2区間
23…第3区間
31…第1湾曲部
32…第2湾曲部
p1…第1湾曲部の頂点
p2…第2湾曲部の頂点
40…仮想平面
41…仮想線
51…第1領域
52…第2領域
60…先端チップ
70…把持部
71…プロテクタ
72…本体部
73…コネクタ部
100…血管
101…分岐血管
102…血管壁
L1…第1距離(第1湾曲部の頂点から仮想平面までの距離)
L2…第2距離(第2湾曲部の頂点から仮想平面までの距離)
L3…第3距離(中空シャフトの先端から仮想平面までの距離)
C1…最大湾曲部Rmax1の曲率半径Rc1の中心
C2…最大湾曲部Rmax2の曲率半径Rc2の中心





図1
図2
図3
図4
図5
図6