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特許7442656不織製品用の酢酸セルロース含有繊維状材料、前記繊維状材料を含む不織製品、及び前記繊維状材料を製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-22
(45)【発行日】2024-03-04
(54)【発明の名称】不織製品用の酢酸セルロース含有繊維状材料、前記繊維状材料を含む不織製品、及び前記繊維状材料を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   D04H 1/4258 20120101AFI20240226BHJP
   D01F 2/28 20060101ALI20240226BHJP
   D04H 1/4391 20120101ALI20240226BHJP
【FI】
D04H1/4258
D01F2/28 A
D04H1/4391
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022546571
(86)(22)【出願日】2021-01-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-06
(86)【国際出願番号】 EP2021050449
(87)【国際公開番号】W WO2021151653
(87)【国際公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】102020102096.1
(32)【優先日】2020-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】522247437
【氏名又は名称】セルディア インターナショナル ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マン、ディーター
(72)【発明者】
【氏名】モーザー、マルティン
(72)【発明者】
【氏名】シャッフナー、ウーヴェ
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-120517(JP,A)
【文献】特開平05-261051(JP,A)
【文献】特開平05-199973(JP,A)
【文献】特開2002-302861(JP,A)
【文献】国際公開第2015/194007(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/200873(WO,A1)
【文献】特表2021-536535(JP,A)
【文献】特開平07-075542(JP,A)
【文献】米国特許第04276173(US,A)
【文献】特表2015-533090(JP,A)
【文献】特開昭55-076107(JP,A)
【文献】特表2020-509254(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01F 2/28 - 2/30
D04H 1/00 - 18/04
D21B 1/00 - 1/38
D21C 1/00 - 11/14
D21D 1/00 - 99/00
D21F 1/00 - 13/12
D21G 1/00 - 9/00
D21H 11/00 - 27/42
D21J 1/00 - 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イプクロス、クリーニングクロス、衛生用品、医療製品、又は家庭用(household)ワイプの形態である不織製品酢酸セルロース含有繊維状材料であって
酢酸セルロース含有繊維材料は管状酢酸セルロースフィラメントを含む管状複合構造を有し、
前記管状酢酸セルロースフィラメントのフィラメント径が50μm~150μmの範囲であり、
前記管状酢酸セルロースフィラメントにおいて、繊維断面積に対する中空部分の面積の割合が25%~90%を占める、酢酸セルロース含有繊維状材料
【請求項2】
前記管状酢酸セルロースフィラメントが捲縮している、請求項1に記載の繊維状材料。
【請求項3】
前記管状酢酸セルロースフィラメントの捲縮指数が0%~40%ある、請求項2に記載の繊維状材料。
【請求項4】
前記管状酢酸セルロースフィラメントは5~30デニールの細かさ(fineness)を有する、請求項1~ずれか一項に記載の繊維状材料。
【請求項5】
前記空部分が0%~80%を占める、請求項1~ずれか一項に記載の繊維状材料。
【請求項6】
前記管状酢酸セルロースフィラメントのフィラメント径が0~100μm範囲である、請求項1~ずれか一項に記載の繊維状材料。
【請求項7】
前記管状酢酸セルロースフィラメントは5μm~15μmの壁厚を有する、請求項1~ずれか一項に記載の繊維状材料。
【請求項8】
前記管状酢酸セルロースフィラメントは5cN/tex~15cN/texの引張強さを有する、請求項1~ずれか一項に記載の繊維状材料。
【請求項9】
前記管状酢酸セルロースフィラメントは、5%~20%の伸びをす、請求項1~ずれか一項に記載の繊維状材料。
【請求項10】
請求項1~ずれか一項に記載の繊維状材料を含む不織製品。
【請求項11】
前記不織製品は、ワイプクロス、クリーニングクロス、生理用品、医療製品、又は家庭用(household)ワイプである、請求項10に記載の不織製品。
【請求項12】
請求項1~請求項9のいずれか一項に記載の酢酸セルロース含有繊維状材料製造する方法であって、
3%以上のアセチル価を有する酢酸セルロースのアセトン溶液を多オリフィス(multi-orifice)口金を通すこと
任意に、酢酸セルロースフィラメント酢酸セルロース短繊維へと切断すること
られた複数の酢酸セルロースフィラメント及び/又は酢酸セルロース短繊維フィルタートウへと集めることを含み、
ここでフィルタートウは必要に応じて捲縮していてもよく、
空酢酸セルロースフィラメントが紡糸されるよう、酢酸セルロースの前記アセトン溶液が通過させられる前記口金は設計されている、前記方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酢酸セルロース含有繊維状材料及びそれから得ることができる製品に関する。これらは、特には、不織品などの平坦な製品を含む
【背景技術】
【0002】
今日、不織品は独立した製品群として認識されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の1つの特により良い態様は、有利な特性、特には外部の水分に対する性能についての有利な特性を特徴とする、前記酢酸セルロース含有繊維状材料から作られるワイプクロス、クリーニングクロス、衛生用品、医療製品、及び家庭用(household)ワイプに関する。
【0004】
本発明はさらに酢酸セルロース含有繊維状材料を製造する方法、及び前記方法に由来する製品をさらに提供する。
【0005】
それぞれ本発明に係る酢酸セルロース含有繊維状材料を含む、あるいは前記繊維状材料から製造される平坦な製品は、種々の形態でありうる。いわゆる不織製品はそのような例の1つである。
【0006】
今日、不織品は独立した製品群として認識されている。不織品には不織材料及び不織布並びにそれらから生産される仕上げ製品が含まれ、これはしばしば清浄化及び衛生ニーズのためのものである。これら一般的には布地状の複合体は、従来の経糸と緯糸の織布法若しくは縫いによるものではなく、典型的な合成の布地形成繊維の噛み合い(interlocking)並びに/又は凝集的及び/若しくは接着的結合による柔軟で多孔性の繊維布地を構成する。そのような繊維は、例えば、連続フィラメントあるいは有限長の事前作製されたフィラメント、インサイチュで製造された合成フィラメント、又は短(staple)繊維の形態であってもよい。
【0007】
あるいは、それらは短(staple)繊維の形態の合成繊維のブレンド及び天然繊維、例えば天然植物系繊維、から作製されてもよい。
【0008】
本開示で検討されるタイプの不織製品において疎水性は望ましくなく、これは特に、例えば不織布等の平坦な繊維布地においてそうである。そのような不織製品が不織布の形態である場合の例示的な用途はクリーニングクロス及びワイプクロス、布巾、及びナプキンである。これらの用途において、例えば牛乳、コーヒー、等々といったこぼれた液体が拭き取られた際に迅速かつ完全に吸い込まれること、及び濡れた表面が可能な限り完全に乾かされることが重要である。繊維表面に液体がより速く運ばれて、それにより親水性表面を有する繊維を水性の液体が容易かつ迅速に濡らすならば、クリーニングクロスは液体をより迅速に吸収する。
【0009】
平坦な繊維布地の表面を親水化し、それにより繊維布地、特には不織布、の吸水特性を改善するためには、乳化剤、界面活性剤、又は湿潤剤等の表面活性親水化剤が通常用いられる。そのようにすることで、良好な初期親水性が達成される。しかし、これらの繊維布地、例えば不織布、は親水剤が水あるいはその他の水性媒体により次第に浸出するという不都合な点を有している。
【0010】
特に、このような製品は水との接触を繰り返した後では次第に疎水性になる。
【0011】
既知の表面活性剤のさらなる不都合な点は水の表面張力が急激に低下することであり、このことで多くの用途、特には衛生不織品及び清浄化不織品の場合、において吸い上げられた液体の浸透傾向及び濡れ性における好ましくない増加がある。
【0012】
本発明は、それゆえ、親水性の線状又は平坦な布、並びにそのような布の表面親水性を増加させる方法を提供するという課題に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この課題は、特には、独立請求項1に係る酢酸セルロース含有繊維状材料により解決され、ここで、本発明の繊維性材料の有利なさらなる開発は従属請求項に特定されている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
したがって、本発明は、特には、不織製品、特にはワイプクロス、クリーニングクロス、衛生用品、医療製品、及び家庭用(household)ワイプの形態の不織製品、用の酢酸セルロース含有繊維状材料に関し、ここで、前記繊維性材料は少なくとも一部があるいは部分的に、管状酢酸セルロースフィラメントを含む管状複合構造として設計される。
【0015】
本発明に係る繊維状材料は、管状酢酸セルロースフィラメントの有する生来の疎水性による、毛細管作用を利用するという基本的な概念に基づいている。これにより、水と繰り返し接触した後でも向上した表面親水性を有する繊維状材料を達成する。
【0016】
特に、本発明の繊維状材料は特に環境に優しく製造される。乳化剤、界面活性剤、又は湿潤剤等の表面活性親水化剤を付与することを完全になくすことができるからである。
【0017】
本発明の繊維状材料は、繊維状材料が完全に生体適合性及び生物分解性となるように、酢酸セルロースフィラメントからなる。前記繊維状材料は原理上は、例えば木材と同程度に分解性であるが、一方で該繊維状材料によれば、その管状複合構造のため、ポリエステル、ポリアミド、又はポリアクリルマイクロファイバーによって達成できる対応する値と比肩しうる至適な水分吸収を表面を通して及び毛細管内に達成可能である。
【0018】
繊維状材料を構成する酢酸セルロースフィラメントは、クリーニングクロスで通常用いられる繊維よりも大きな接触表面を形成するように、三角形又は星型の中空断面を有利には呈する。
【0019】
好ましくは、前記酢酸セルロースフィラメントは、クリーニングクロスで通常用いられる繊維と比べて比較的大きく、例えば5~30デニール(den)又はdtexである。本発明の繊維状材料はそれにより、例えばタイル、タイル張り(tilings)、鏡、又はガラスといった清浄化表面に対して特に適している。
【0020】
前記繊維状材料は、アセトン中に53%以上のアセチル価を有する酢酸セルロースの溶液を多オリフィス(multi-orifice)口金を通させることにより形成された酢酸セルロースフィラメント及び/又は酢酸セルロース短繊維(cellulose acetate staple fibers)からなる。当てはまる場合は、酢酸セルロースフィラメントはそれから酢酸セルロース短繊維へと切断される。酢酸セルロースフィラメントはフィルタートウへと集められ、トウは必要に応じて捲縮させることもできる。
【0021】
これにより、特に、酢酸セルロースの溶液が通過させられる口金が、中空酢酸セルロースフィラメントが外側で(externally)紡糸されるようデザインされる。
【0022】
特には、酢酸セルロース含有繊維状材料の管状複合構造中における中空部分は25%~90%、好ましくは50%~80%を占める。この中空部分は、前記繊維状材料により達成される永続的な親水効果に対して非常に重要な寄与をなす。このような親水効果は管状複合構造の中空繊維によってのみ達成することができるもので、一方で、閉じたフィラメントの場合、例えばポリエステル、ポリアミド、若しくはポリアクリルからなる従来のマイクロファイバーの場合あるいは天然繊維の場合には達成することができないものである。ここで、中空部分は、繊維断面の「全」面積に対する「中空」面積の割合に対応する。
【0023】
この文脈において留意すべきこととして、本発明の繊維状材料は、特に、前記酢酸セルロースフィラメントのフィラメント径が他の(合成)中空繊維のフィラメント径よりもはるかに大きいという点でも、先行技術から知られたポリエステル、ポリアミド、又はポリアクリル繊維と異なる。他の(合成)中空フィラメントのフィラメント径は1~25μmの範囲である。
【0024】
それとは対照的に、前記中空酢酸セルロースフィラメントのフィラメント径は50~150μmの範囲であり、好ましくは60~100μm(外径)である。これにより中空部分を大きく増大させることが可能となり、そのため、本発明の繊維状材料の特有の毛細管作用を顕著に増大させることが可能となる。
【0025】
さらに、本発明の繊維状材料は、実質的に何ら化学薬品を用いずに実現することができるという特徴も有しており、それにより、水との繰り返し接触した後の繊維状材料の吸水性の低下を受容する必要が無い。
【0026】
さらに、本発明の繊維状材料の管状複合構造のために用いられるような酢酸セルロースフィラメントは、例えば、タバコフィルターについてタバコ産業で既に知られている。この材料(酢酸セルロース)は健康上の脅威が全く無く、本発明の繊維状材料は生理用品又は衛生用品にも特に適している。
【0027】
留意すべきさらなる利点は、本発明の繊維状材料がフィルタートウ材料の製造用の既存の機器で製造できるということである。本発明に係る繊維状材料を製造するのには増加したコストは何ら予想されず、繊維状材料そのものは比較的製造が容易である。
【0028】
本発明に係る繊維状材料を製造するには、まず、非捲縮酢酸セルロース連続フィラメントからトウ材料を製造する。それからこれを捲縮して又は捲縮せずに、そして繊維(fiber)に切断する。この際の典型的な繊維長は長さ10~80mm、より良くは長さ20~50mmである。
【0029】
本発明の繊維状材料の管状複合構造については、ある実施形態においては、管状で捲縮した酢酸セルロース連続フィラメントを示すものとする。ただし、本発明は酢酸セルロースフィラメントに限定されるものではない。管状複合構造が管状で、捲縮し、かつ切断された酢酸セルロース連続フィラメントを示す場合にも良好な毛細管作用及びそれによる良好で永続的な吸水性も同様に達成可能であることが実際に見出された。
【0030】
本発明の繊維状材料の生物分解性を向上し、それを環境からの影響の下で行うために、本発明の解決手段のある実施形態では、酢酸セルロースフィラメントで構成される管状複合構造は添加剤を含むものとし、該添加剤は好ましくは酢酸セルロースフィラメントの表面の少なくとも一部に付与される。ここで、この添加剤は、微生物によって分解されたときに塩基性の分解産物を生成する窒素系有機化合物からなり、前記塩基性の分解産物は、特には、1つ若しくは複数のNH基及び/又は1つ若しくは複数のNFL基等の、アンモニア及び/又はアルカリ性化合物を含む。
【0031】
前記窒素系有機化合物は、より良くは、尿素又は尿素誘導体である。これらの物質は、健康に害を与えないためより良く、特には食品安全規制の点でもよりよく、そしてほどほどの値段で大量に入手可能である。
【0032】
一方、前記窒素系有機化合物はタンパク質からなっていてもよく、ここではβ-ラクトグロブリンが特に非常により良いものである。タンパク質は健康の観点からリスクを与えず、β-ラクトグロブリンの場合、産業上十分に利用されていない副産物として、チーズ生産で大量に生み出される。
【0033】
前記窒素系有機化合物がアルデヒドとアンモニア又はアミンとの縮合体であることはさらによりよい。ここで、この縮合体は特に非常により良くはヘキサメチレンテトラミンである。
【0034】
最後に、前記窒素系有機化合物が環状化合物、特にはカルバゾール、であることはより良いことである。ただし、他の窒素系有機化合物ももちろん使用可能である。ここで、それらは可能な限り非毒性であることを保証するよう注意を払うべきである。
【0035】
これに代えて又はこれに加えて、本発明の繊維状材料の生分解性はMgOを配合することで向上できる。
【0036】
本発明の繊維状材料のある実施によれば、酢酸セルロースフィラメントから形成される管状複合構造は60%未満のアセチル価、好ましくは53%~75%のアセチル価、を有するアセトン可溶酢酸セルロースからなるものとする。このことは、生分解に先立つ酢酸セルロースの加水分解にかかる時間がより短くなることを保証する。
【0037】
本発明に係る繊維材料の生産のための出発点として働くトウ材料は非捲縮(捲縮指数(crimp index)=0)であってもよい。捲縮指数が0%であると、材料は房にすることができないが、非捲縮材料は薄い平坦層の形で使用することができる。
【0038】
しかし、より良くは、本発明に係る繊維材料の生産のための出発点として働くトウ材料は5~40%、好ましくは10%~20%、の捲縮指数を有する。
【0039】
これにより酢酸セルロースフィラメントの最適な架橋が達成され、そのことにより管状複合構造は同時に、繊維状材料の向上した吸水性に必要とされる多数の毛細管を提供する。
【0040】
捲縮指数Iは、捲縮強度の指標である。フィルタートウの捲縮指数は引張試験(力/伸びの関係)によって決定される。捲縮指数Iは、予荷重(preload)Lの下での初期長さに対する(試験荷重下での伸びた長さL-初期長さ)の比として定義される。:
【数1】
【0041】
試験荷重はここでは25Nであり、予荷重は2.5Nである。クランプ長は250mmである。捲縮指数は、ハンブルグのBorgwaldt GmbH社から入手可能なG02装置を用いて、300mm/分の一定ひずみ速度での引張試験により決定される。1測定あたり、10個の個別の測定値が記録される。20℃及び60%相対湿度という標準気候条件で試験が続いて行われる。
【0042】
より良くは、本発明の繊維状材料の出発点であるトウ材料の全タイターあたりの引裂強度は好ましくは15cN/tex以下であり、より良くは8cN/tex以下である。この特徴は、生分解に先立つ機械的破砕(mechanical disintegration)を促進する。切断された酢酸セルロースフィラメントの使用は追加的な利点を有する。
【0043】
本発明のある実施形態によれば、本発明の繊維状材料の出発点であるトウ材料の全タイターあたりの引裂強度、したがって引張強度、は、捲縮トウについて、6~20cN/texであり、好ましくは8~12cN/texである。非捲縮又は微捲縮(only slightly crimped)トウ材料についての引裂強度/引張強度は、20cN/texまで高くなることができる。
【0044】
本発明の意味においては、トウ材料は、多数の酢酸セルロースフィラメント及び/又は酢酸セルロース短繊維からなるストランドとして一般に理解されるものとする。フィラメントとは、実質的に終わりの無い繊維(virtually endless fiber)を意味し、「短繊維」の語は限られた長さの繊維を表す。これは、特には、10~60mmの長さを典型的に有する切断された繊維である。このような短繊維は、特に高い吸水性を有する不織製品における使用に特に好適である。
【0045】
本発明の意味においては、アセチル価とは、酢酸セルロース中における結合した酢酸のパーセントを意味すると理解され、質量パーセントで表される。
【0046】
要するに、種々の異なる利点が本発明に係る繊維状材料を用いて達成される。一つには、酢酸セルロースから形成された前記管状複合構造は医療分野での特殊用途に適していながらも、比較的安価に製造できる。既知の繊維状ポリオレフィン材料と比べて環境の影響の下で加速された分解速度を示すことも本発明の繊維状材料に当てはまる。本発明の繊維状材料は一方で、微生物による分解のおそれ無しに今日の通常の条件においてクリーニングクロス若しくはワイプクロス、生理用品、医療製品、又は家庭用(household)クロスとして用いることが容易に実現可能である。
【0047】
前記管状酢酸セルロースフィラメントは、アセトン中の酢酸セルロース溶液を多オリフィス(multi-orifice)口金を通させることにより酢酸セルロースフィラメントを紡糸し、該当する場合は、その後酢酸セルロースフィラメントを酢酸セルロース短繊維へと切断してそのようにして得られた複数の酢酸セルロースフィラメント及び/又は酢酸セルロース短繊維をトウ材料へと集めることで実質的に製造される。
【0048】
酢酸セルロースフィラメント及び/又は酢酸セルロース短繊維中に添加剤が存在することを達成するためには、前記添加剤を前記アセトン中の酢酸セルロース溶液に供給し、その後に紡糸を行うことができる。
【0049】
酢酸セルロースフィラメント及び酢酸セルロース短繊維の表面上に添加剤、つまり、任意に(optionally)加えられる化合物、が存在することを達成するためには、前記添加剤はトウ材料の製造の間に、ただし酢酸セルロースフィラメントが形成された後で、これらのフィラメント又はそれから作製された酢酸セルロース短繊維に適用することができる。例えば、酢酸セルロースフィラメントが酢酸セルロース短繊維へと切断される直前に前記添加剤をフィラメントに適用することもできるし、あるいは、仕上げられたトウ材料に、つまり、酢酸セルロースフィラメント及び/又は酢酸セルロース短繊維がトウ材料へと集められた後のフィラメント及び/又は短繊維に、添加剤を適用することもできる。
【0050】
本発明のある実施によれば、該当する場合には任意に(optionally)与えられる添加剤を含む準備されたトウ材料を房付けするために、トウベールからトウ材料の連続的なストリップを連続的にたぐる一対のローラを含んでいてもよいいわゆる処理装置(processing device)が用いられる。トウベールからの除去後、前記一対のローラに向かう行程でトウストリップの生地を広げかつ緩めるのに働く2つのエアジェットをトウストリップは通過し、前記一対のローラではトウストリップは偏向(deflection)ローラ上をガイドされる。
【0051】
本発明は、最適化された繊維状材料に関わるだけでなく、不織製品としての、特にはクリーニングクロス若しくはワイプクロス、生理用品、医療用クロス、及び家庭用(household)クロスの形態の不織製品としての前記繊維状材料の使用にも関する。例えば、本発明の繊維状材料は清浄化のための布地、特には清浄化機械用のクリーニングクロス、クリーニンググローブ、クリーニングベルト、及び/又はクリーニングディスクとしての清浄化用布地、並びにさらなる目的のための布地、における種々の多くの形態で用いることができる。
<付記>
本開示は以下の態様を含む。
<項1>
不織製品、特にはワイプクロス、クリーニングクロス、衛生用品、医療製品、及び家庭用(household)ワイプの形態の不織製品、用の酢酸セルロース含有繊維状材料、
ここで、前記繊維状材料は少なくとも一部があるいは部分的に、管状酢酸セルロースフィラメントを含む管状複合構造として設計される。
<項2>
前記管状複合構造は、管状で、特には捲縮した、酢酸セルロース連続フィラメント、及び/又は管状で、特には捲縮し切断された、酢酸セルロース連続フィラメントを示す、<項1>に記載の繊維状材料。
<項3>
前記酢酸セルロースフィラメントの捲縮指数が0%~40%、特には5%~40%、及び好ましくは10%~20%である、<項2>に記載の繊維状材料。
<項4>
前記管状酢酸セルロースフィラメントは不揃い(irregular)な配置で互いに離間しており、前記酢酸セルロースフィラメントは好ましくは架橋されており、ここで連結する酢酸セルロースフィラメントは互いに撚られている及び/又は絡み合っている及び/又は結合している、<項1>~<項3>のうちいずれか一項に記載の繊維状材料。
<項5>
前記酢酸セルロースフィラメントは5~30デニールの細かさ(fineness)を有する、<項1>~<項4>のうちいずれか一項に記載の繊維状材料。
<項6>
前記管状複合構造において中空部分が25~90%を占め、好ましくは50%~80%を占める、<項1>~<項5>のうちいずれか一項に記載の繊維状材料。
<項7>
前記酢酸セルロースフィラメントのフィラメント径が50~150μmの範囲であり、好ましくは60~100μm(外径)の範囲である、<項1>~<項6>のうちいずれか一項に記載の繊維状材料。
<項8>
前記管状酢酸セルロースフィラメントは5μm~15μmの壁厚を有する、<項1>~<項7>のうちいずれか一項に記載の繊維状材料。
<項9>
前記管状酢酸セルロースフィラメントは5cN/tex~15cN/texの引張強さを有する、<項1>~<項8>のうちいずれか一項に記載の繊維状材料。
<項10>
前記管状酢酸セルロースフィラメントは、5%~20%の伸びを、好ましくは10%~18%の伸びを示す、<項1>~<項9>のうちいずれか一項に記載の繊維状材料。
<項11>
<項1>~<項10>のうちいずれか一項に記載の繊維状材料を含む不織製品。
<項12>
前記不織製品は、ワイプクロス、クリーニングクロス、生理用品、医療製品、又は家庭用(household)ワイプである、<項11>に記載の不織製品。
<項13>
管状酢酸セルロースフィラメントを含む不織製品用の酢酸セルロース含有繊維状材料(該酢酸セルロース含有繊維状材料は、特には、ワイプクロス、クリーニングクロス、生理用品、医療製品、又は家庭用(household)ワイプの形態であり、特には、<項1>~<項10>のうちいずれか一項に記載の繊維状材料である)を製造する方法であって、
前記方法においては、アセトン中に53%以上のアセチル価を有する酢酸セルロースの溶液を多オリフィス(multi-orifice)口金を通させ、
当てはまる場合は(as applicable)、酢酸セルロースフィラメントはそれから酢酸セルロース短繊維へと切断され、
こうして得られた複数の酢酸セルロースフィラメント及び/又は酢酸セルロース短繊維はフィルタートウへと集められ、ここでフィルタートウは必要に応じて捲縮していてもよく、
ここで、中空酢酸セルロースフィラメントが紡糸されるよう、酢酸セルロースの前記溶液が通過させられる前記口金は設計されている。