(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-22
(45)【発行日】2024-03-04
(54)【発明の名称】SGLT阻害剤の合成に有用な中間体およびこれを用いたSGLT阻害剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07D 307/79 20060101AFI20240226BHJP
C07D 407/04 20060101ALI20240226BHJP
【FI】
C07D307/79 CSP
C07D407/04
(21)【出願番号】P 2022550984
(86)(22)【出願日】2021-02-26
(86)【国際出願番号】 KR2021002507
(87)【国際公開番号】W WO2021172955
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-08-24
(31)【優先権主張番号】10-2020-0024525
(32)【優先日】2020-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】513074792
【氏名又は名称】デーウン ファーマシューティカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ジュン・ユン
(72)【発明者】
【氏名】ヒ・キュン・ユン
【審査官】阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-521985(JP,A)
【文献】国際公開第2016/098016(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0114304(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第108530408(CN,A)
【文献】特表2014-515396(JP,A)
【文献】Organic Process Research & Development ,2018年,Vol. 22, No. 1,pp. 27-39
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式5の化合物:
【化1】
上記式中、
nは、1または2であり、
Xは、ハロゲンであり、
Bは、
【化2】
または
【化3】
であり、かつ、
ここで、Ra、Rb、Rc、およびRdは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、メルカプト、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキシ、オキソ、C1-7アルキル、C1-7アルキルチオ、C2-7アルケニル、C2-7アルキニル、C1-7アルコキシ、C1-7アルコキシ-C1-7アルキル、C2-7アルケニル-C1-7アルキルオキシ、C2-7アルキニル-C1-7アルキルオキシ、C3-10シクロアルキル、C3-7シクロアルキルチオ、C5-10シクロアルケニル、C3-10シクロアルキルオキシ、C3-10シクロアルキルオキシ-C1-7アルコキシ、フェニル-C1-7アルキル、C1-7アルキルチオ-フェニル、フェニル-C1-7アルコキシ、モノ-またはジ-C1-7アルキルアミノ、モノ-またはジ-C1-7アルキルアミノ-C1-7アルキル、C1-7アルカノイル、C1-7アルカノイルアミノ、C1-7アルキルカルボニル、C1-7アルコキシカルボニル、カルバモイル、モノ-またはジ-C1-7アルキルカルバモイル、C1-7アルキルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、C1-7アルキルスルフィニル、C6-14アリールスルファニル、C6-14アリールスルホニル、C6-14アリール、5-13員ヘテロアリール、5-10員ヘテロシクロアルキル、5-10員ヘテロシクロアルキル-C1-7アルキル、または5-10員ヘテロシクロアルキル-C1-7アルコキシであり;
環Cは、C3-10シクロアルキル、C5-10シクロアルケニル、C6-14アリール、5-13員ヘテロアリール、または5-10員ヘテロシクロアルキルであり;
前記アルキル、アルケニル、アルキニルおよびアルコキシは、それぞれ独立して、非置換されるか、またはハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、メルカプト、C1-7アルキル、およびC2-7アルキニルからなる群から選ばれた一つ以上の置換基を有し;
前記シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリールおよびヘテロシクロアルキルは、それぞれ独立して、非置換されるか、またはハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、メルカプト、C1-4アルキル、およびC1-4アルコキシからなる群から選ばれた一つ以上の置換基を有し;
前記ヘテロアリールおよびヘテロシクロアルキルは、それぞれ独立して、N、SおよびOからなる群から選ばれる1種以上のヘテロ原子を含有する。
【請求項2】
下記化学式4の化合物を水の存在下で酸条件で脱保護および開環反応させて、下記化学式5の化合物を得る段階を含む、化学式5の化合物の製造方法:
【化4】
上記式中、
nは、1または2であり、
Xは、ハロゲンであり、
PGは、保護基であり、
Bは、
【化5】
または
【化6】
であり、かつ、
ここで、Ra、Rb、Rc、およびRdは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、メルカプト、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキシ、オキソ、C1-7アルキル、C1-7アルキルチオ、C2-7アルケニル、C2-7アルキニル、C1-7アルコキシ、C1-7アルコキシ-C1-7アルキル、C2-7アルケニル-C1-7アルキルオキシ、C2-7アルキニル-C1-7アルキルオキシ、C3-10シクロアルキル、C3-7シクロアルキルチオ、C5-10シクロアルケニル、C3-10シクロアルキルオキシ、C3-10シクロアルキルオキシ-C1-7アルコキシ、フェニル-C1-7アルキル、C1-7アルキルチオ-フェニル、フェニル-C1-7アルコキシ、モノ-またはジ-C1-7アルキルアミノ、モノ-またはジ-C1-7アルキルアミノ-C1-7アルキル、C1-7アルカノイル、C1-7アルカノイルアミノ、C1-7アルキルカルボニル、C1-7アルコキシカルボニル、カルバモイル、モノ-またはジ-C1-7アルキルカルバモイル、C1-7アルキルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、C1-7アルキルスルフィニル、C6-14アリールスルファニル、C6-14アリールスルホニル、C6-14アリール、5-13員ヘテロアリール、5-10員ヘテロシクロアルキル、5-10員ヘテロシクロアルキル-C1-7アルキル、または5-10員ヘテロシクロアルキル-C1-7アルコキシであり;
環Cは、C3-10シクロアルキル、C5-10シクロアルケニル、C6-14アリール、5-13員ヘテロアリール、または5-10員ヘテロシクロアルキルであり;
前記アルキル、アルケニル、アルキニルおよびアルコキシは、それぞれ独立して、非置換されるか、またはハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、メルカプト、C1-7アルキル、およびC2-7アルキニルからなる群から選ばれた一つ以上の置換基を有し;
前記シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリールおよびヘテロシクロアルキルは、それぞれ独立して、非置換されるか、またはハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、メルカプト、C1-4アルキル、およびC1-4アルコキシからなる群から選ばれた一つ以上の置換基を有し;
前記ヘテロアリールおよびヘテロシクロアルキルは、それぞれ独立して、N、SおよびOからなる群から選ばれる1種以上のヘテロ原子を含有する。
【請求項3】
前記化学式4の化合物を水の存在下で酸条件で脱保護および開環反応させて得られた反応生成物を結晶化して、化学式5の化合物を収得することを含む、請求項2に記載の化学式5の化合物の製造方法。
【請求項4】
前記結晶化は、化学式5の化合物を溶解させることができる結晶化溶媒の処理および化学式5の化合物の再結晶化によって行われる、請求項3に記載の化学式5の化合物の製造方法。
【請求項5】
反応溶媒の存在下で酸条件で化学式5の化合物を環化およびメトキシ化させて、化学式6の化合物を得、
化学式6の化合物から化学式1の化合物を得ることを含む、化学式1の化合物の製造方法。
【化7】
上記式中、
nは、1または2であり、
Xは、ハロゲンであり、
Bは、
【化8】
または
【化9】
であり、かつ、
ここで、Ra、Rb、Rc、およびRdは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、メルカプト、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキシ、オキソ、C1-7アルキル、C1-7アルキルチオ、C2-7アルケニル、C2-7アルキニル、C1-7アルコキシ、C1-7アルコキシ-C1-7アルキル、C2-7アルケニル-C1-7アルキルオキシ、C2-7アルキニル-C1-7アルキルオキシ、C3-10シクロアルキル、C3-7シクロアルキルチオ、C5-10シクロアルケニル、C3-10シクロアルキルオキシ、C3-10シクロアルキルオキシ-C1-7アルコキシ、フェニル-C1-7アルキル、C1-7アルキルチオ-フェニル、フェニル-C1-7アルコキシ、モノ-またはジ-C1-7アルキルアミノ、モノ-またはジ-C1-7アルキルアミノ-C1-7アルキル、C1-7アルカノイル、C1-7アルカノイルアミノ、C1-7アルキルカルボニル、C1-7アルコキシカルボニル、カルバモイル、モノ-またはジ-C1-7アルキルカルバモイル、C1-7アルキルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、C1-7アルキルスルフィニル、C6-14アリールスルファニル、C6-14アリールスルホニル、C6-14アリール、5-13員ヘテロアリール、5-10員ヘテロシクロアルキル、5-10員ヘテロシクロアルキル-C1-7アルキル、または5-10員ヘテロシクロアルキル-C1-7アルコキシであり;
環Cは、C3-10シクロアルキル、C5-10シクロアルケニル、C6-14アリール、5-13員ヘテロアリール、または5-10員ヘテロシクロアルキルであり;
前記アルキル、アルケニル、アルキニルおよびアルコキシは、それぞれ独立して、非置換されるか、またはハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、メルカプト、C1-7アルキル、およびC2-7アルキニルからなる群から選ばれた一つ以上の置換基を有し;
前記シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリールおよびヘテロシクロアルキルは、それぞれ独立して、非置換されるか、またはハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、メルカプト、C1-4アルキル、およびC1-4アルコキシからなる群から選ばれた一つ以上の置換基を有し;
前記ヘテロアリールおよびヘテロシクロアルキルは、それぞれ独立して、N、SおよびOからなる群から選ばれる1種以上のヘテロ原子を含有する。
【請求項6】
化学式6の化合物から化学式1の化合物を得ることは、
化学式6の化合物を還元させて、下記化学式7の化合物を得る段階;および
化学式7の化合物に保護基を導入し、再結晶化した後、脱保護させて、化学式1の化合物を得る段階を含んで行われる、請求項5に記載の化学式1の化合物の製造方法:
【化10】
【化11】
前記n、BおよびXは、請求項5で定義した通りである。
【請求項7】
化学式6の化合物から化学式1の化合物を得ることは、
前記化学式6の化合物を還元させて、下記化学式7の化合物を得る段階;
前記化学式7の化合物に保護基を導入し、再結晶化して、化学式8の化合物を分離する段階;および
前記化学式8の化合物を脱保護させて、化学式1の化合物を得る段階を含んで行われ、これから得られた化学式1の化合物は、化学式1aの化合物である、請求項5に記載の化学式1の化合物の製造方法:
【化12】
【化13】
上記式中、
前記PGは、保護基であり;
前記n、B、およびXは、請求項5で定義した通りである。
【請求項8】
【化14】
化学式Aの結晶形であって、前記結晶形が7.8±0.2、8.9±0.2、15.1±0.2、16.6±0.2、17.9±0.2、19.4±0.2、20.2±0.2、21.1±0.2、22.5±0.2、22.9±0.2、24.5±0.2、26.0±0.2、および28.7±0.2から選ばれる2[θ]値で6個以上の回折ピークを有するX線粉末回折パターンによって特定されることを特徴とする結晶形。
【請求項9】
前記X線粉末回折パターンは、7.8±0.2、8.9±0.2、15.1±0.2、16.6±0.2、17.9±0.2、および19.4±0.2から選ばれる2[θ]値で回折ピークを有することを特徴とする請求項8に記載の結晶形。
【請求項10】
前記化学式Aの結晶形は、190℃~200℃の温度で最大吸熱ピークが現れる、分当たり1℃の昇温速度で測定された示差走査熱量計記録線によって特定されることを特徴とする請求項8に記載の結晶形。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SGLT阻害剤の合成に有用な中間体およびこれを用いたSGLT阻害剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
韓国特許公開第2017-0142904号公報(特許文献1)は、SGLT2に対する抑制活性を有するジフェニルメタン誘導体の製造方法を開示している。前記文献は、主要グループ別に個別的に合成した後、カップリングさせる収束合成(convergent synthesis)方式でジフェニルメタン誘導体を製造するので、従来文献に開示された線形合成(linear synthesis)方式に比べて合成経路が簡潔であり、収率を高めることができ、線形合成経路が内在している危険要素を減らすことができるという点を開示している。
【0003】
しかしながら、韓国特許公開第2017-0142904号公報によるジフェニルメタン誘導体の製造方法は、下記の[反応式1]のように、重要反応であるc3~c7が四段階の連続工程に進行されていて、初期生成された類縁物質が除去されずに反応が進行されて、次の反応に影響を及ぼすので、段階別に類縁物質の品質を制御できないため、類縁物質の管理が難しいという短所がある。また、連続工程で生じた類縁物質の精製がc7で行われるので、類縁物質の品質を制御するために、精製回数が2回以上と多くなって、精製工程による費用負担が発生するだけでなく、様々な段階をin situ進行することによる段階別の品質制御ができないという短所がある。
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、SGLT阻害剤の合成に有用な中間体およびこれを用いたSGLT阻害剤の製造方法を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
韓国特許公開第2017-0142904号公報によるSGLT2に対する抑制活性を有するジフェニルメタン誘導体の製造方法は、前記[反応式1]のように、in situを含んで総6段階の工程からなる。c1とc2をカップリングしてc3を合成後、c-HCl/MeOHを投入すると、まず、脱シリル化(desilylation)して、c4が生成され、反応が進行されるにつれて徐々にメトキシ化(methoxylation)して、c5が生成される。c5の場合は、物性によって結晶化が難しく、様々な結晶化条件をテストしてtoluene/hexで結晶化条件を探したことがあるが、類縁物質が除去されずに、単純に固体化する程度であった。精製にならないので、in situ形態で次の反応を進行して、c7で精製を進行した。c7では、主要類縁物質を含んでいて、ほとんどの類縁物質が除去可能であった。しかしながら、前段階で精製なしに進行されたので、類縁物質の品質を合わせるためには、2回以上の精製工程が必要になった。精製工程が2回以上進行されるので、この段階で収率が落ち、精製工程による費用負担が発生する。また、c5の場合、化学的安定性が低下して、crude状態で保管しにくいため、生産からすぐに連続的にc7まで合成を進行しなければならないことも、大きい負担になった。
【0007】
これより、本発明者らは、新しい中間体の開発を通じて類縁物質を精製し、最小の精製段階を通じて最終産物であるジフェニルメタン誘導体の類縁物質の量を制御できる方法を考案して本発明を完成した。
【0008】
最終目的化合物であり、SGLT阻害剤に使用される活性成分である化学式1の化合物は、次の通りである。
【0009】
【0010】
上記式中、
nは、1または2であり、
Xは、ハロゲン(例えばF、Cl、BrまたはI)であり、
Bは、
【化3】
または
【化4】
であり、かつ、
ここで、Ra、Rb、Rc、およびRdは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、メルカプト、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキシ、オキソ、C1-7アルキル、C1-7アルキルチオ、C2-7アルケニル、C2-7アルキニル、C1-7アルコキシ、C1-7アルコキシ-C1-7アルキル、C2-7アルケニル-C1-7アルキルオキシ、C2-7アルキニル-C1-7アルキルオキシ、C3-10シクロアルキル、C3-7シクロアルキルチオ、C5-10シクロアルケニル、C3-10シクロアルキルオキシ、C3-10シクロアルキルオキシ-C1-7アルコキシ、フェニル-C1-7アルキル、C1-7アルキルチオ-フェニル、フェニル-C1-7アルコキシ、モノ-またはジ-C1-7アルキルアミノ、モノ-またはジ-C1-7アルキルアミノ-C1-7アルキル、C1-7アルカノイル、C1-7アルカノイルアミノ、C1-7アルキルカルボニル、C1-7アルコキシカルボニル、カルバモイル、モノ-またはジ-C1-7アルキルカルバモイル、C1-7アルキルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、C1-7アルキルスルフィニル、C6-14アリールスルファニル、C6-14アリールスルホニル、C6-14アリール、5-13員ヘテロアリール、5-10員ヘテロシクロアルキル、5-10員ヘテロシクロアルキル-C1-7アルキル、または5-10員ヘテロシクロアルキル-C1-7アルコキシであり;
環Cは、C3-10シクロアルキル、C5-10シクロアルケニル、C6-14アリール、5-13員ヘテロアリール、または5-10員ヘテロシクロアルキルであり;
前記アルキル、アルケニル、アルキニルおよびアルコキシは、それぞれ独立して、非置換されるか、またはハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、メルカプト、C1-7アルキル、およびC2-7アルキニルからなる群から選ばれた一つ以上の置換基を有し;
前記シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリールおよびヘテロシクロアルキルは、それぞれ独立して、非置換されるか、またはハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、メルカプト、C1-4アルキル、およびC1-4アルコキシからなる群から選ばれた一つ以上の置換基を有し;
前記ヘテロアリールおよびヘテロシクロアルキルは、それぞれ独立して、N、SおよびOからなる群から選ばれる1種以上のヘテロ原子を含有する。
【0011】
本発明の具体例において、前記環B-1は、下記からなる群から選ばれ得る:
【化5】
【0012】
上記式中、R7は、水素またはC1-7アルキルであり;R8aおよびR8bは、それぞれ独立して、C1-7アルキルであるか、互いに連結されて5-10員ヘテロシクロアルキル(N、SおよびOからなる群から選ばれる1種以上のヘテロ原子を含有)を形成する。
【0013】
他の具体例において、前記環B-2は、下記からなる群から選ばれ得る:
【化6】
【0014】
前記化学式1の化合物の好ましい一例によれば、前記nが1であり;前記Xがハロゲンであり;前記Bがハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、メルカプト、C1-7アルキル、C3-10シクロアルキル、およびC1-7アルコキシからなる群から選ばれた一つまたは二つの置換基で置換あるいは非置換のフェニルでありうる。
【0015】
また、前記化学式1の化合物は、ジフェニルメタン誘導体とヘテロシクロアルキルリングの結合部位がα-形態、β-形態、またはこれらのラセミ形態の化合物でありうる。
【0016】
例えば、前記化学式1の化合物は、下記化学式1aの化合物でありうる。
【0017】
【0018】
上記式中、B、nおよびXは、上記で定義した通りである。
【0019】
本発明は、前記化学式1のジフェニルメタン誘導体の製造のために使用される中間体である化学式5の化合物の製造方法を提供する。
【0020】
化学式5の化合物を得るためには、これに制限されるのではないが、化学式4の化合物を下記のような方式で合成して使用できる。
【0021】
化学式2の化合物を化学式3の化合物とn-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、t-ブチルリチウムまたはi-プロピルマグネシウムクロリドの存在下に反応させて、下記化学式4の化合物を得ることができる。
【0022】
【0023】
【0024】
【0025】
上記式中、n、BおよびXは、上記で定義した通りであり、Yは、ハロゲンであり、PGは、保護基である。
【0026】
前記化学式2の化合物と前記化学式3の化合物の反応は、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、t-ブチルリチウム、i-プロピルマグネシウムクロリド(i-PrMgCl)などの存在下で行われ得る。
【0027】
前記化学式2の化合物を前記化学式3の化合物と反応させて、下記化学式4の化合物を収得することができる。
【0028】
【0029】
上記式中、nは、1または2であり;Xは、ハロゲンであり;PGは、保護基であり;Bは、前記化学式1で定義した通りである。
【0030】
前記化学式2の化合物と前記化学式3の化合物の反応段階で、まず結合反応が行われ、ここで、前記化学式2の化合物1当量対比、前記化学式3の化合物および前記反応試薬(すなわちn-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、t-ブチルリチウムまたはi-プロピルマグネシウムクロリド)がそれぞれ1.5~2.5当量の範囲、より好ましくは、1.7~2.3当量の範囲、特に約2.0当量で反応に使用できる。この際の反応は、-80℃~-10℃の範囲、より好ましくは、-70℃~-60℃の範囲の温度で、1~12時間、または1~3時間の間行われ得る。また、反応溶媒としては、テトラヒドロフランまたはエーテルの単一溶媒や、テトラヒドロフラン/トルエン(1:1)の混合溶媒などが使用できる。
【0031】
本発明は、前記化学式4の化合物を水の存在下で、酸条件で脱保護および開環反応させて、下記化学式5の化合物を得ることを含む化学式5の化合物の製造方法を提供する。
【0032】
【0033】
上記式中、n、BおよびXは、上記で定義した通りである。
【0034】
前記化学式4の化合物を脱保護および開環反応させて、下記化学式5の化合物を得る段階は、酸条件で行うことができる。
【0035】
ここで、使用される酸としては、塩酸、硫酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、塩化水素ガスなどが挙げられ、前記化学式4の化合物1当量対比2~5当量の範囲、より好ましくは、3当量の酸が使用できる。この際の反応は、0~40℃の範囲、より好ましくは、20~30℃の範囲の温度で、2~24時間、または3~6時間の間行われ得る。
【0036】
化学式5の化合物は、従来技術において使用された反応式1のc4化合物の開鎖形態である。化学式4の化合物から化学式5の化合物を得る工程は、化学式5の化合物と下記化学式5Rの化合物がRing-chain tautomerism現象によって平衡状態で存在する反応物を得ることになる。
【0037】
【0038】
化学式5の化合物と化学式5Rの化合物は、物性の差異が存在するので、二つの化合物の物性変化を用いた結晶化方法を通じて化学式5の化合物のみを結晶化することができる。下記実施例では、化学式5の化合物の結晶化は、化学式5の化合物と化学式5Rの化合物の結晶化溶媒に対する溶解度の差異を用いて行った。
【0039】
したがって、本発明の一具体例において、前記化学式5の化合物の製造方法は、前記化学式4の化合物を水の存在下で酸条件で脱保護および開環反応させて得られた反応生成物を結晶化して、化学式5の化合物を収得することを含んでもよい。
【0040】
前記結晶化は、化学式5の化合物を溶解させることができる結晶化溶媒の処理および化学式5の化合物の再結晶化によって行われ得る。
【0041】
これに制限されるものではないが、前記結晶化溶媒としては、トルエン、ジクロロメタンなどを使用できる。結晶化溶媒は、前記化学式5の化合物の1~30倍、好ましくは、10~20倍を使用できる。
【0042】
一方、結晶化温度は、20~80℃、好ましくは、40~50℃であってもよく、結晶化時間は、6~24時間、好ましくは、6~12時間であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0043】
化学式5の化合物が結晶化される過程で主要類縁物質を含むほとんどの類縁物質が除去可能である。したがって、最終目的物質である化学式1の化合物を得る中間工程で類縁物質の除去が不可能であった従来の技術とは異なって、工程中にも類縁物質を除去できる中間体を開発したことに本技術の技術的意義がある。
【0044】
本発明は、また、前記化学式5の化合物を中間体として用いて化学式1の化合物を製造する方法を提供する。類縁物質を精製しないまま、最終目的物質である化学式1の化合物を製造した従来の技術とは異なって、本発明では、類縁物質が除去された化学式5の化合物を中間体として用いることになって、化学式1の化合物の製造において高い収率と品質を期待することができるようになった。
【0045】
具体的に、本発明は、
反応溶媒の存在下で酸条件で化学式5の化合物を環化およびメトキシ化させて、化学式6の化合物を得、
化学式6の化合物から化学式1の化合物を得ることを含む、
化学式1の化合物の製造方法を提供する。
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
上記式中、
nは、1または2であり、
Xは、ハロゲン(例えばF、Cl、BrまたはI)であり、
Bは、
【化17】
または
【化18】
であり、かつ、
ここで、Ra、Rb、Rc、およびRdは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、メルカプト、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキシ、オキソ、C1-7アルキル、C1-7アルキルチオ、C2-7アルケニル、C2-7アルキニル、C1-7アルコキシ、C1-7アルコキシ-C1-7アルキル、C2-7アルケニル-C1-7アルキルオキシ、C2-7アルキニル-C1-7アルキルオキシ、C3-10シクロアルキル、C3-7シクロアルキルチオ、C5-10シクロアルケニル、C3-10シクロアルキルオキシ、C3-10シクロアルキルオキシ-C1-7アルコキシ、フェニル-C1-7アルキル、C1-7アルキルチオ-フェニル、フェニル-C1-7アルコキシ、モノ-またはジ-C1-7アルキルアミノ、モノ-またはジ-C1-7アルキルアミノ-C1-7アルキル、C1-7アルカノイル、C1-7アルカノイルアミノ、C1-7アルキルカルボニル、C1-7アルコキシカルボニル、カルバモイル、モノ-またはジ-C1-7アルキルカルバモイル、C1-7アルキルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、C1-7アルキルスルフィニル、C6-14アリールスルファニル、C6-14アリールスルホニル、C6-14アリール、5-13員ヘテロアリール、5-10員ヘテロシクロアルキル、5-10員ヘテロシクロアルキル-C1-7アルキル、または5-10員ヘテロシクロアルキル-C1-7アルコキシであり;
環Cは、C3-10シクロアルキル、C5-10シクロアルケニル、C6-14アリール、5-13員ヘテロアリール、または5-10員ヘテロシクロアルキルであり;
前記アルキル、アルケニル、アルキニルおよびアルコキシは、それぞれ独立して、非置換されるか、またはハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、メルカプト、C1-7アルキル、およびC2-7アルキニルからなる群から選ばれた一つ以上の置換基を有し;
前記シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリールおよびヘテロシクロアルキルは、それぞれ独立して、非置換されるか、またはハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、メルカプト、C1-4アルキル、およびC1-4アルコキシからなる群から選ばれた一つ以上の置換基を有し;
前記ヘテロアリールおよびヘテロシクロアルキルは、それぞれ独立して、N、SおよびOからなる群から選ばれる1種以上のヘテロ原子を含有する。
【0050】
化学式5の化合物を環化およびメトキシ化させて、前記化学式6の化合物を得ることができるが、前記化学式6の化合物から以後化学式1の化合物を得るまでの過程は、韓国特許公開第2017-0142904号公報にも詳細に記述されている。
【0051】
化学式5の化合物を環化およびメトキシ化させて、化学式6の化合物を得る段階は、反応溶媒の存在下で酸条件で行うことができる。
【0052】
ここで、使用される酸としては、塩酸、硫酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、塩化水素ガスなどが挙げられ、前記化学式5の化合物1当量対比2~5当量の範囲、より好ましくは、3当量の酸が使用できる。この際の反応は、0~40℃の範囲、より好ましくは、20~30℃の範囲の温度で、2~24時間、または3~6時間の間行われ得る。また、反応溶媒としては、メタノールを使用できる。
【0053】
前記化学式6の化合物から以後化学式1の化合物を得るまでの過程は、これに制限されるものではないが、例えば、次のように行われ得る。
【0054】
本発明の一具体例において、化学式6の化合物から化学式1の化合物を得ることは、
化学式6の化合物を還元させて、下記化学式7の化合物を得る段階;および
化学式7の化合物に保護基を導入し、再結晶化した後、脱保護させて、化学式1の化合物を得る段階を含んでもよい。
【0055】
【0056】
上記式中、
n、BおよびXは、上記で定義した通りである。
【0057】
化学式6の化合物を還元させて、化学式7の化合物を得る段階では、還元剤と酸を使って還元反応を行うことができる。前記還元剤としては、トリエチルシラン、トリイソプロピルシラン、t-ブチルジメチルシラン、水素化ホウ素ナトリウムなどが可能であり、前記酸としては、ボロントリフルオリドジエチルエーテル、トリメチルシリルトリフルオロメタンスルホナート、アルミニウムクロリド、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸などが可能である。前記還元剤は、2~5当量の範囲、より好ましくは、約3当量で使用でき、前記酸は、1.5~3当量、より好ましくは、約2当量で使用できる。この際の反応は、-50℃~0℃の範囲、より好ましくは、-20℃~-10℃の範囲の温度で、2~12時間、または2~5時間の間行われ得る。また、反応溶媒としては、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、アセトニトリルなどの単一溶媒、またはジクロロメタン/アセトニトリル(1:1)、1,2-ジクロロエタン/アセトニトリル(1:1)などの混合溶媒が使用できる。
【0058】
化学式7の化合物に保護基を導入し、再結晶化した後、脱保護させる段階は、化学式7の化合物に保護基を導入した後、例えば、アルコール、エチルアセテート、ジクロロメタンのような結晶化溶媒中で加熱して、生成される沈殿物を分離し、脱保護させる段階を含んで行われ得る。
【0059】
本発明の他の具体例において、化学式6の化合物から化学式1の化合物を得ることは、
前記化学式6の化合物を還元させて、下記化学式7の化合物を得る段階;
前記化学式7の化合物に保護基を導入し、再結晶化して、化学式8の化合物を分離する段階;および
前記化学式8の化合物を脱保護させて、化学式1の化合物を得る段階を含んで行われ得る。
【0060】
【0061】
上記式中、PGは、保護基であり;n、BおよびXは、上記で定義した通りである。
【0062】
化学式7の化合物に保護基を導入して、化学式8の化合物(β-形態)のみを分離し、脱保護させる段階が行われる。ここで、アセチル化剤および塩基を用いた反応が行われ得る。前記アセチル化剤としては、塩化アセチル、臭化アセチル、無水酢酸などが挙げられ、前記塩基としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、ルチジン、4-ジメチルアミノピリジンなどが挙げられる。前記アセチル化剤は、4~12当量、より好ましくは、約8当量の範囲で使用でき、前記塩基は、1~4当量の範囲、より好ましくは、約1.5当量で使用できる。この際の反応は、0~50℃の範囲、より好ましくは、20~30℃の範囲の温度で、1~12時間、または1~3時間の間行われ得る。また、反応溶媒としては、アセトン、エチルアセテート、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルムなどが使用できる。次いで、脱保護反応が行われ、ここで、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシドなどの試薬を2~12当量、より好ましくは、約5当量の範囲で使用できる。この際の反応は、0~50℃の範囲、より好ましくは、20~30℃の範囲の温度で、1~12時間、または1~3時間の間行われ得る。反応溶媒としては、メタノール/水(1:1~3:1)、ジクロロメタン/メタノール(1:1~1:2)、ジクロロメタン/エタノール(1:1~1:2)、テトラヒドロフラン/メタノール(1:1~1:2)、テトラヒドロフラン/エタノール(1:1~1:2)、テトラヒドロフラン/メタノール/水(1:1:3~2:1:3)、テトラヒドロフラン/エタノール/水(1:1:3~2:1:3)などが使用できる。
【0063】
本発明による化学式1の化合物は、結晶形、無定形またはこれらの混合物で製造できるが、結晶形であることが、安定性および非吸湿性の観点から優れていて、製剤化に容易な物理化学的特性を有する点から好ましい。
【0064】
したがって、本発明による化学式1の化合物の製造方法は、化学式2の化合物を化学式3の化合物と反応させ、脱保護および還元させる段階の後に、多様な溶媒を用いた結晶化段階を含んでもよく、多様な結晶形の生成が可能である。韓国特許公開第2017-0142904号公報には、多様な結晶形化合物とその生成方法を詳細に開示している。
【0065】
一例として、前記結晶化に使用される溶媒は、トルエン;エチルアセテート;ジクロロメタン;アセトン;アセトニトリル;2-プロパノール、テトラヒドロフラン;n-ヘキサン、およびこれらの混合物(例えば、テトラヒドロフランおよびジクロロメタンの混合物、テトラヒドロフランおよびn-ヘキサンの混合物)からなる群から選ばれる溶媒を用いて行われ得る。
【0066】
他の例として、前記結晶化に使用される溶媒は、メタノールおよび蒸留水の混合物;メタノールおよびn-ヘキサンの混合物;およびメタノール、ジクロロメタンおよびn-ヘキサンの混合物の中から選ばれ得る。
【0067】
さらに他の例として、前記結晶化に使用される溶媒は、エタノール、蒸留水およびn-ヘキサンの混合物;およびテトラヒドロフランおよびトルエンの混合物の中から選ばれ得る。
【0068】
さらに他の例として、前記結晶化に使用される溶媒は、エタノールおよびn-ヘキサンの混合物でありうる。
【0069】
好ましい一例として、前記結晶化に用いられる溶媒は、トルエン、エチルアセテート、ジクロロメタン、テトラヒドロフランとジクロロメタンの混合物、およびテトラヒドロフランとn-ヘキサンの混合物からなる群から選ばれ得る。
【0070】
本発明による新規中間体である化学式5の化合物の具体例は、下記化学式Aの化合物である。
【0071】
【0072】
化学式Aの化合物名は、[(2R,3S,4R,5R)-1-(7-chloro-6-(4-cyclopropylbenzyl)-2,3-dihydrobenzofuran-4-yl)-2,3,4,5,6-pentahydroxyhexan-1-one)である。
【0073】
本発明は、また、前記化学式Aおよびその結晶形を提供する。
【0074】
下記実施例では、[(2R,3S,4R,5R)-1-(7-chloro-6-(4-cyclopropylbenzyl)-2,3-dihydrobenzofuran-4-yl)-2,3,4,5,6-pentahydroxyhexan-1-one)の結晶形を得る方法およびその結晶形としての特性について詳述している。
【0075】
本発明は、化学式Aの結晶形であって、前記結晶形が7.8±0.2、8.9±0.2、15.1±0.2、16.6±0.2、17.9±0.2、19.4±0.2、20.2±0.2、21.1±0.2、22.5±0.2、22.9±0.2、24.5±0.2、26.0±0.2、および28.7±0.2から選ばれる2[θ]値で6個以上の回折ピークを有するX線粉末回折パターンによって特定されることを特徴とする結晶形を提供する。
【0076】
前記X線粉末回折パターンは、7.8±0.2、8.9±0.2、15.1±0.2、16.6±0.2、17.9±0.2、および19.4±0.2から選ばれる2[θ]値で回折ピークを有することを特徴とする結晶形でありうる。
【0077】
また、前記化学式Aの結晶形は、190℃~200℃の温度で最大吸熱ピークが現れる、分当たり1℃の昇温速度で測定された示差走査熱量計記録線によって特定されることを特徴とする結晶形でありうる。
【発明の効果】
【0078】
本発明によれば、新規中間体に該当する化学式5の化合物を開発することによって、既存工程の精製の困難を解決し、精製工程を1回だけ行っても、類縁物質の品質を合わせることができるだけでなく、様々な段階をin situで進行することによる段階別の品質制御問題を解決することができるという長所がある。本発明による化学式5の化合物を用いた化学式1の化合物の合成方法は、化学式5の化合物合成段階で精製が可能なので、連続工程に起因して段階別に類縁物質の品質制御が難しかった既存合成工程の問題点を解消し、最終産物の類縁物質の量を最小化した。また、精製段階が増えるにつれて既存のように一段階で2回以上の精製工程が不要になって、工程を簡素化させることができ、これを通じて化学式1によるジフェニルメタン誘導体の生産収率を極大化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【
図1】実施例1の段階1で得られた結晶が化合物4であることを確認した赤外線分光法(Infrared spectroscopy)測定結果である。
【
図2】化学式Aの化合物の粉末X線回折分析の結果を示す。
【
図3】示差走査熱量計を用いて特定の化学式Aの化合物の示差走査熱量(DSC)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0080】
実施例1:目的化合物の製造
【0081】
【0082】
段階1:(2R,3S,4R,5R)-1-(7-chloro-6-(4-cyclopropylbenzyl)-2,3-dihydrobenzofuran-4-yl)-2,3,4,5,6-pentahydroxyhexan-1-one(化合物4)
【化23】
【0083】
室温および窒素雰囲気下で化合物1(10.0g、1.0eq)と化合物2(24.4g、1.9eq)にanhydrous THF(80mL)を加えて溶解した後、-78℃に冷却した。化合物1および化合物2を溶解させた溶液にn-BuLi 2.5M solution(23mL、2.1eq)を徐々に20分にわたって-60℃以下を維持しつつ滴加し、滴加完了後、5分間撹拌した。ここへc-HCl(10.2mL、4.2eq)を水(100mL)に投入して製造された溶液を前記反応液に投入した。室温まで徐々に昇温して3時間の間撹拌した。反応完結をTLCで確認した後、反応液に飽和NaHCO3溶液を加えて(pH6~8)反応を終結させ、トルエン(30mL)で2回抽出した。有機層を水(30mL)で2回抽出し、得られた有機層にトルエン(100mL)をさらに加え、40~50℃で12時間撹拌して結晶化した。得られた結晶をろ過および乾燥して、化合物4(11.1g、87.4%)を白色固体として収得した。
【0084】
1H NMR(500MHz、DMSO):δ7.02-7.06(m、3H)、6.92-6.94(m、2H)、6.27(d、1H)、4.84(d、1H)、4.66(d、1H)、4.47-4.52(m、3H)、4.36(m、1H)、3.90-3.98(m、2H)、3.62-3.65(m、2H)、3.50-3.56(m、3H)、3.32-3.35(m、1H)、3.22-3.27(m、1H)、3.08-3.11(m、1H)、1.82(m、1H)、0.86-0.88(m、2H)、0.57-0.59(m、2H);LC-MS:[M-H]-461,mp 195℃。
【0085】
段階2:(3R,4S,5S,6R)-2-(7-chloro-6-(4-cyclopropylbenzyl)-2,3-dihydrobenzofuran-4-yl)-6-(hydroxymethyl)-2-methoxytetrahydro-2H-pyran-3,4,5-triol(化合物5)
【化24】
【0086】
化合物4(5.0g、1.0eq)にMeOH(40mL)を加えて溶解させた後、0℃に冷却した。次いで、c-HCl(0.5mL、0.5eq)を投入した後、室温で3時間撹拌した。反応完結をTLCで確認した後、反応液に3%NaHCO3溶液を加えて反応を終結させ、真空濃縮して、MeOHを除去し、エチルアセテートで抽出した。抽出して得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過した後、真空濃縮して、化合物5(5.2g、100%)を収得した。生成物は、さらなる精製することなく、次の段階にすぐに使用した。
【0087】
段階3.(3R,4R,5S,6R)-2-(7-chloro-6-(4-cyclopropylbenzyl)-2,3-dihydrobenzofuran-4-yl)-6-(hydroxymethyl)tetrahydro-2H-pyran-3,4,5-triol(化合物6)
【化25】
【0088】
-50℃でジクロロメタン(50mL)およびアセトニトリル(50mL)混合物中の(3R,4S,5S,6R)-2-(7-chloro-6-(4-cyclopropylbenzyl)-2,3-dihydrobenzofuran-4-yl)-6-(hydroxymethyl)-2-methoxytetrahydro-2H-pyran-3,4,5-triol(化合物5)(5.2g、1.0eq)溶液にEt3SiH(4.0mL、3.0eq)およびBF3OEt2(5.2mL、3.0eq)を順に投入した。反応混合物を-50~-10℃で2時間撹拌し、-10~0℃で3時間撹拌した。反応完結をTLCで確認した後、反応液に飽和NaHCO3水溶液(100mL)を加えて反応を終了させ、エチルアセテートで抽出した。抽出して得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過した後、真空濃縮して、化合物6(4.9g、100%)を収得した。生成物は、さらなる精製することなく、次の段階にすぐに使用した。
【0089】
段階4.(2R,3R,4R,5S,6S)-2-(acetoxymethyl)-6-(7-chloro-6-(4-cyclopropylbenzyl)-2,3-dihydrobenzofuran-4-yl)tetrahydro-2H-pyran-3,4,5-triyl triacetate(化合物7)
【化26】
【0090】
化合物6(4.9g、1.0eq)をジクロロメタン(75mL)を投入して溶解させた後、室温、窒素雰囲気下でDMAP(1.6g、1.2eq)とacetic anhydride(8.3mL、8.0eq)を加えて2時間撹拌した。反応完結をTLCで確認し、1N HCl(50mL)を投入して反応を終了させ、ジクロロメタンで抽出した。抽出して得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過した後、メタノール(10mL)を加え、真空濃縮した。濃縮残渣にメタノール(50mL)を加えて1時間撹拌して、結晶化した。得られた結晶をろ過および乾燥して、化合物7(4.5g、67.2%)を白色固体として収得した。
【0091】
1H NMR(500MHz、CDCl3):δ1H NMR(400MHz、CDCl3)δ7.04-7.02(m、2H)、6.98-6.95(m、2H)、6.53(s、2H)、5.29-5.24(m、1H)、5.18-5.12(m、2H)、4.71-4.65(m、2H)、4.31-4.26(m、1H)、4.25-4.22(m、1H)、4.15-4.11(m、1H)、4.15-4.11(m、1H)、4.05-3.91(m、2H)、3.79-3.74(m、1H)、3.40-3.35(m、2H)、2.60(s、3H)、2.05(s、3H)、1.99(s、3H)、1.88-1.81(m、1H)、1.66(s、3H)、0.94-0.89(m、2H)、0.66-0.61(m、2H);[M+Na]+ 637。
【0092】
段階5.(2S,3R,4R,5S,6R)-2-(7-chloro-6-(4-cyclopropylbenzyl)-2,3-dihydrobenzofuran-4-yl)-6-(hydroxymethyl)tetrahydro-2H-pyran-3,4,5-triol(化合物8)
【化27】
【0093】
化合物7(3.5g、1.0eq)にTHF(17.5mL)およびMethanol(17.5mL)を加えた。Slurry状態の溶液に室温で4N-NaOH solution(7.1mL、5.0eq)を加え、30℃~35℃で2時間撹拌した。反応完結をTLCで確認し、0℃に冷却して、1N HClを加えて反応液のpHを6.8に調整した。反応に使用されたMeOHとTHFを濃縮して除去した後、ethyl acetateで抽出した。抽出して得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過した後、真空濃縮した。濃縮残渣にエチルアセテート(40mL)を加えて70℃で完全に溶かした後、33℃まで冷却し、33℃で1時間撹拌した。次いで、IPE(65mL)を30分間滴加し、0℃に冷却した後、0℃で1時間撹拌し、1時間静置した。得られた結晶をろ過および乾燥して、化合物8(2.4g、94.5%)を白色固体として収得した。
【0094】
1H NMR(500MHz、CDCl3):δ7.02(d、J=8.0Hz、2H)、6.92(d、J=8.0Hz、2H)、6.81(s、1H)、4.59(t、J=8.8Hz、2H)、4.11(d、J=9.2Hz、1H)、3.96(ABq、ΔvAB=19.0Hz、JAB=15.2Hz、2H)、3.87-3.84(m、1H)、3.67-3.63(m、1H)、3.47-3.37(m、3H)、3.35-3.33(m、3H)、1.85-1.79(m、1H)、0.91-0.86(m、2H)、0.61-0.57(m、2H);[M+Na]+ 469
【0095】
実験例1:化学式5の化合物の結晶化の確認
上記で説明したように、化学式5の化合物は、従来技術において使用された反応式1のc4化合物の開鎖形態である。化学式4の化合物から化学式5の化合物を得る工程は、化学式5の化合物と化学式5Rの化合物がRing-chain tautomerism現象によって平衡状態で存在する反応物を得ることになる。
【0096】
前記実施例1の段階1で、反応式1のc4化合物(化学式5Rの化合物に該当)と化合物4(化学式5の化合物に該当)の平衡状態で化合物4のみが結晶化されることは、赤外線分光法(Infrared spectroscopy)測定を通じて確認した。
【0097】
結晶化を通じて析出された結晶のIRを測定した結果、
図1に示されたように、カルボニルピークに該当する特徴的なピークが1672cm
-1で強く現れたので、析出された結晶は、分子内カルボニル基を有している開鎖形態である化学式5の化合物であると判断することができた。
【0098】
実験例2:結晶形の製造および分析
本発明の方法によって製造された化合物、具体的に、前記実施例1の段階1によって、未精製の(2R,3S,4R,5R)-1-(7-chloro-6-(4-cyclopropylbenzyl)-2,3-dihydrobenzofuran-4-yl)-2,3,4,5,6-pentahydroxyhexan-1-one(化合物4)を収得した後、多様な溶媒下で結晶化過程を通じて結晶を製造した後、分析した。
【0099】
XRDスペクトルは、X線回折分析装置を使って通常の方法によってCu-Kα放射線(波長、λ=1.54056Å)を照射して、粉末X線回折を測定した。示差走査熱量(DSC)は、示差走査熱量計を用いて+1℃/分の速度で測定した。
【0100】
(1)トルエン溶媒を用いた結晶の製造
トルエンを用いた結晶化は、前記実施例1の段階1の手続きの後段に記述されたことと同一である。具体的に、溶液状態の化合物4にトルエン(化合物4の重さ対比10倍)をさらに加え、40~50℃で12時間の間加熱して、結晶化した。生成された結晶をろ過し、トルエン(ろ過物の体積の2倍)で洗浄した後、真空オーブン(50℃、12時間)で乾燥して、白色結晶を収得した(収率:87.4%)。
【0101】
製造された結晶のXRDスペクトルは、
図2のような結晶形態(結晶形A)を示し、特徴的なピークの回折角2θ、結晶面間の距離dおよび相対強度I/Io×100を要約すると、表1の通りである。
【0102】
【0103】
DSCスペクトルは、
図3に示されたように、当該結晶の溶融吸熱ピークを確認することができた。
【0104】
(2)ジクロロメタン溶媒を用いた結晶の製造
未精製の化合物4にジクロロメタン(化合物4重さ対比10倍)をさらに加え、40~50℃で12時間の間加熱して、結晶化した。生成された結晶をろ過し、ジクロロメタン(ろ過物の体積の2倍)で洗浄した後、真空オーブン(50℃、12時間)で乾燥して、白色結晶を収得した(収率:88.1%)。
【0105】
製造された結晶のXRDスペクトル分析結果、実験例2の(1)と同じ結晶形態(結晶形A)を示した。
【0106】
実験例3:類縁物質の含有量の分析
韓国特許公開第2017-0142904号公報によるジフェニルメタン誘導体の製造方法は、上述した[反応式1]のように、重要反応であるc3~c7が四段階の連続工程で進行され、類縁物質の精製は、c7で行われる。
【0107】
韓国特許公開第2017-0142904号公報の[反応式1]によってc7段階で1次~3次にわたって精製して得られたc7の純度および不純物の含有量を本発明の[反応式2]によってc4段階(反応式2の化合物4に該当)で1回精製した後、さらにc7段階(反応式2の化合物7に該当)で1回精製して得られたc7(反応式2の化合物7に該当)の純度および不純物の含有量と比較した結果は、下記表2の通りである。
【0108】
【0109】
表2に示されたように、本発明の製造方法によれば、化学式5の化合物合成段階で精製が可能なので、韓国特許公開第2017-0142904号公報のように、一段階で3回以上の精製工程を経ることなく、最終産物の類縁物質の量を最小化させることができる。