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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-22
(45)【発行日】2024-03-04
(54)【発明の名称】改良型油圧ダンパースプール弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 17/18 20060101AFI20240226BHJP
   F16K 1/44 20060101ALI20240226BHJP
   F16F 9/342 20060101ALI20240226BHJP
   F16F 9/32 20060101ALI20240226BHJP
【FI】
F16K17/18
F16K1/44 B
F16F9/342
F16F9/32 L
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022552414
(86)(22)【出願日】2021-03-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-17
(86)【国際出願番号】 US2021020646
(87)【国際公開番号】W WO2021178519
(87)【国際公開日】2021-09-10
【審査請求日】2022-10-28
(31)【優先権主張番号】62/985,101
(32)【優先日】2020-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514056403
【氏名又は名称】マルチマティック インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】MULTIMATIC INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】トムリン、 アンドリュー
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-069064(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0217106(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 17/18
F16K 1/44
F16F 9/342
F16F 9/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧ダンパー(1)のメインピストンロッド(5)に取り付けられるように適合される弁体(19)であって、前記弁体(19)はその両方の反対側の端に隣接して開口(51、53)を備えるように構成され、作動圧力下で前記油圧ダンパー(1)の上部(11)と下部(13)との間の油圧流体のフローを容易にするために、一方の開口が前記上部(11)と流体連通し、他方の開口が前記下部(13)と流体連通する、弁体(19)と、
分割部又は弁体膜(27)によって中断されるボア(29)を画定し、かつ前記弁体(19)に対して固定される一対の中空円筒形弁スリーブ(23、25)であって、各々が、前記油圧ダンパー(1)の前記上部(11)と前記下部(13)とを選択的に油圧接続するように適合される各弁スリーブ(23、25)の反対側の端に隣接して少なくとも1つの成形開口部(35、37)を備えるように構成される、中空円筒形弁スリーブ(23、25)と、
一対の弁スプール(39、41)であって、各々が、前記各弁スリーブ(23、25)の前記ボア(29)内において移動可能に配置されるように動作可能に構成され、全ての成形開口部(35、37)、又は一方の弁スリーブ(23、25)の前記反対側の端に隣接する前記少なくとも1つの成形開口部のみ、又は他方の弁スリーブ(23、25)の前記反対側の端に隣接する前記少なくとも1つの成形開口部のみを任意の時点で選択的に遮断するように適合される、一対の弁スプール(39、41)と、
一対の弾性エネルギー貯蔵部材(47、49)であって、その中の1つが前記油圧ダンパー(1)の前記油圧流体における作動圧力によって生じる力に対して反対方向に前記弁スプール(39、41)を付勢するように、各弁スプール(39、41)と前記弁体の分割部又は膜(27)との間に配置され、前記弁体(19)の開口(51、53)のいずれかにおいて作動圧力が誘導されるにつれて各エネルギー貯蔵部材(47、49)が圧縮されると、移動している弁スプール(39、41)に隣接する前記少なくとも1つの成形開口部(35、37)の開口面積が前記圧力に比例して変化するように、前記弁スプール(39、41)の一方又は他方が前記各弁スリーブ(23、25)に対して移動し、それによって前記油圧ダンパー(1)の前記上部(11)と前記下部(13)との間の油圧フロー制限が変化する一方で、移動していない弁スプール(39、41)が前記移動していない弁スプール(39、41)に隣接する前記少なくとも1つの成形開口部(35、37)を遮断する、一対の弾性エネルギー貯蔵部材(47、49)と、
圧縮油圧流路(59)及び反発油圧流路(61)を含む一対の油圧流路であって、いずれかの方向の油圧フロー中に他方の油圧流路を介する逆流を防止するために、前記圧縮油圧流路(59)は前記反発油圧流路(61)から構造的に分離されており、各流路(59、61)が前記弁スリーブ(23、25)の一方の前記反対側の端に隣接する前記少なくとも1つの成形開口部(35、37)のみと連通する、一対の油圧流路
を備える、油圧ダンパースプール弁(15)。
【請求項2】
前記中空円筒形弁スリーブ(23、25)は、圧縮フロー成形開口部(35、37)の配列を備えるように構成される圧縮弁スリーブ(23、25)、及び反発フロー成形開口部(35、37)の配列を備えるように構成される反発弁スリーブ(23、25)を備え、前記エネルギー貯蔵部材(47、49)は、圧縮エネルギー貯蔵部材(47)及び反発エネルギー貯蔵部材(49)を備え、前記一対の弁スプール(39、41)は、対応する圧縮フロー成形開口部(35、37)を選択的に開閉するように構成される圧縮弁スプール(39、41)、及び対応する反発フロー成形開口部(35、37)を選択的に開閉するように構成される反発弁スプール(39、41)を備える、請求項1に記載の油圧ダンパースプール弁(15)。
【請求項3】
反発フロー及び圧縮フローの成形開口部(35、37)の配列は、既定の精密な形状を備えるように構成され、前記反発弁スプール(39、41)及び前記圧縮弁スプール(39、41)のそれぞれは、所望の圧力-フロー特性を提供するように、前記ダンパー(1)における前記作動圧力に比例して、それぞれの反発フロー及び圧縮フローの開口部(35、37)の可変開口面積を正確に制御するように適合される前縁(43、45)を備えるように構成される、請求項2に記載の油圧ダンパースプール弁(15)。
【請求項4】
前記弾性エネルギー貯蔵部材(47、49)はコイルばねである、請求項1に記載の油圧ダンパースプール弁(15)。
【請求項5】
前記中空円筒形弁スリーブ(23、25)の前記ボア(29)は、既定の精密公差半径隙間を通る油圧フローを防ぎながら、それぞれのボア(29)内における各弁スプール(39、41)の縦方向の動きを選択的に許容するように構成される前記半径隙間を有するように前記弁スプール(39、41)を受け入れるように適合される、請求項1に記載の油圧ダンパースプール弁(15)。
【請求項6】
前記油圧ダンパースプール弁(15)は、機械的な締め付け、溶接、又はねじ山よってメインピストンロッド(5)に固定される、請求項1に記載の油圧ダンパースプール弁(15)。
【請求項7】
対応する少なくとも1つの成形開口部(35、37)を介して油圧流体のフローにさらされる各弁スプール(39、41)の前縁(43、45)は、前記弁スプール(39、41)を横切る油圧流体のフローの最小の摂動を提供するように、鋭利な縁を示すように面取りされる、請求項1に記載の油圧ダンパースプール弁(15)。
【請求項8】
前記弁スリーブ(23、25)は、前記弁体(19)の分割部(27)によって分離される圧縮弁スリーブ(23、25)及び反発弁スリーブ(23、25)を備え、前記弾性エネルギー貯蔵部材(47、49)は、前記一対の弁スプール(39、41)のうちの一方を前記弁体(19)の前記分割部(27)から離れるようにそれぞれ付勢する圧縮エネルギー貯蔵部材(47)及び反発エネルギー貯蔵部材(49)を備える、請求項1に記載の油圧ダンパースプール弁(15)。
【請求項9】
本体、ピストンロッド(5)及びメインピストン(7)であって、前記メインピストン(7)は前記本体内の上部(11)及び下部(13)を画定するように動作可能に構成される前記ピストンロッド(5)に固定される弁体(19)を備え、前記弁体(19)はその両端に開口(51、53)を備えるように構成され、一方の開口が選択的に前記本体の前記上部(11)と流体連通し、他方の開口が選択的に前記本体の前記下部(13)と流体連通する、本体、ピストンロッド(5)及びメインピストン(7)と、
前記弁体(19)の分割部又は膜(27)によって中断されるボア(29)を画定し、前記弁体(19)に対して固定される一対の中空円筒形弁スリーブ(23、25)であって、各々が、油圧ダンパー(1)の前記上部(11)と前記下部(13)とを選択的に油圧接続するように適合される各弁スリーブ(23、25)の反対側の端に隣接して少なくとも1つの成形開口部(35、37)を備えるように構成される、中空円筒形弁スリーブ(23、25)と、
一対の弁スプール(39、41)であって、各々が、前記各弁スリーブ(23、25)の前記ボア(29)内において移動可能に配置されるように動作可能に構成され、全ての成形開口部(35、37)、又は一方の弁スリーブ(23、25)の前記反対側の端に隣接する前記少なくとも1つの成形開口部のみ、又は他方の弁スリーブ(23、25)の前記反対側の端に隣接する少なくとも1つの成形開口部のみを任意の時点で選択的に遮断するように適合される、一対の弁スプール(39、41)と、
一対の弾性エネルギー貯蔵部材(47、49)であって、その中の1つが前記油圧ダンパー(1)の油圧流体における作動圧力によって生じる力に対して反対方向に各弁スプール(39、41)を付勢するように、前記各弁スプール(39、41)と前記弁体(19)の分割部又は膜(27)との間に配置される、一対の弾性エネルギー貯蔵部材(47、49)と、
圧縮油圧流路(59)及び反発油圧流路(61)を含む一対の油圧流路であって、いずれかの方向の油圧フロー中に他方の油圧流路を介する逆流を防止するために、前記圧縮油圧流路(59)は前記反発油圧流路(61)から構造的に分離されており、各流路(59、61)が前記弁スリーブ(23、25)の一方の前記反対側の端に隣接する前記少なくとも1つの成形開口部(35、37)のみと連通し、前記弁体(19)の開口(51、53)のいずれかにおいて作動圧力が誘導されるにつれて各エネルギー貯蔵部材(47、49)が圧縮されると、移動している弁スプール(39、41)に隣接する前記少なくとも1つの成形開口部(35、37)のそれぞれの開口面積が前記圧力に比例して変化するように、前記弁スプール(39、41)の一方又は他方が前記各弁スリーブ(23、25)に対して移動し、それによって前記油圧ダンパー(1)の前記上部(11)と前記下部(13)との間の油圧フロー制限が変化する一方で、移動していない弁スプール(39、41)が前記移動していない弁スプール(39、41)に隣接する前記少なくとも1つの成形開口部(35、37)を遮断する、一対の油圧流路
を備える、油圧ダンパーアセンブリ。
【請求項10】
前記弁スリーブ(23、25)は、前記弁体(19)の分割部(27)によって分離される圧縮弁スリーブ(23、25)及び反発弁スリーブ(23、25)を備え、前記弾性エネルギー貯蔵部材(47、49)は、前記一対の弁スプール(39、41)のうちの一方を前記弁体(19)の前記分割部(27)から離れるようにそれぞれ付勢する圧縮エネルギー貯蔵部材(47)及び反発エネルギー貯蔵部材(49)を備える、請求項9に記載の油圧ダンパーアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪付き車両サスペンションに使用される油圧ダンパーを含む油圧ダンパー用の弁に関する。
【0002】
(関連出願への相互-参照)
本出願は、2020年3月4日に提出された米国仮出願第62/985,101号に対する優先権を主張し、それは参照によりここに組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
動的サスペンションシステムを制御するために使用される油圧ダンパーは、一般的に、円筒状の本体内に摺動可能に運ばれ、その壁に周辺的にシールされたピストンを含んでいる。ピストンは軸アセンブリに取り付けられる。ピストンは、円筒状の本体を2つの部分(上部及び下部)に分割し、これらは、軸アセンブリが本体に対して移動するときに上部と下部との間の流体の流量を遅らせる制限通路によって接続されている。このように、圧力とフローとの関係によって定義されるダンパーのコア動作特性は、上部と下部との間の制限通路の幾何学的構成によって決定される。
【0004】
制限通路が単に固定されたオリフィスとして構成されている場合、ダンパーピストン全体に生成された圧力は、オリフィスを通過する油圧フローの2乗に応じて増加する。残念ながら、この二乗則の圧力-フロー関係は、大多数の動的システムを制御するための望ましい特性ではない。自動車用サスペンションシステムの場合、ダンパーは通常ショックアブソーバと呼ばれ、圧力-フロー特性はショックアブソーバを定義する力-速度関係に正比例するが、これは一般的に線形であるか、あるいは多少逸脱することさえ要求される。基本的な固定されたオリフィスの二乗則とは異なる望ましいダンパー特性を達成するための好ましい方法は、ピストン全体の圧力に対して既定の関係でオリフィスの面積を変化させることである。
【0005】
最も一般的な可変オリフィスダンパー弁の配置は、ピストンを介して又はその周囲で上部及び下部を接続する通路の配列上に固定された柔軟プレートのスタックから構成される。ピストン全体の圧力によってプレートに負荷がかかり、プレートがたわむことで通路が開かれ、ダンパーの油圧流体の経路が生まれる。プレートのたわみの大きさは、ピストン全体の圧力に比例して変化して、可変オリフィスの形態を生み出す。DeCarbonのUS2748898は、このような配置への最も初期の言及であり、複動式ショックアブソーバが記載されており、通路からの圧力下で放出される流体によって応力を受け、弾力的に曲がる弾性リーフ要素によってシールされる通路の配置でピストンが構成されている。また、‘898特許は、ピストンの上下に2組のリーフ要素の通路を配置して、2つの異なる動作方向における独立した、場合によっては非対称な圧力-フロー特性を容易にする、独特ではあるが現在広く使用されている方法を詳述している。
【0006】
柔軟プレートを使用して可変オリフィスダンパー弁を作成する場合の最も大きな制限は、圧力-フロー特性が柔軟プレートの変形形状に大きく依存することであり、その結果、プレートの厚さ、プレート材料の特性、プレート形状の寸法公差、組み立てプロセス、スタックにおけるプレート間の摩擦、プレートに対する通路の位置公差、通路断面の寸法公差、及びアセンブリの清浄度に非常に敏感になる。これらの敏感さは、最終的には、望ましい圧力-フロー特性を達成するため、又は2つのダンパーの特性を一致させようとするときに、大きな課題となる。柔軟プレートの配置のさらなる欠点は、その複雑な動作メカニズムのために、数学的手法を用いて圧力-フロー特性を容易に予測できないことである。この構成のもう1つの欠点は、圧力-フロー特性が経時的に元の曲線から逸脱する傾向があることであり、これは、柔軟プレートが疲労して剛性及び強度を失うことに加えて、シール、ピストン、軸摩耗から生成された小さな粒子がプレート間に閉じ込められるためである。
【0007】
BeckのUS5547050は、柔軟プレートを使用して可変オリフィスを作成するダンパーの製造及び組み立てに伴う複雑さを示している。‘050特許には、このような配置に伴う寸法上の制限のいくつかを克服するために、プレート及びピストンを軸に取り付ける方法が記載されている。修正された配置は、柔軟プレートの取り付けに関連する公差を排除するが、プレート自体の寸法精度に関連する変動、又は経時的に発生する元の圧力-フロー特性からの逸脱は改善されない。さらに、‘050特許には、ダンパーの動作特性を数学的に予測できる配置が記載されていない。
【0008】
Ekert等のUS5709290には、たわみ移動の両方の限界で、たわみ状態の柔軟プレートを均一に支持する圧縮及び反発停止表面を提供することが記載されている。‘290特許の柔軟プレートは、ダンパーアセンブリの設計された性能特性を大幅に変更する可能性のある変形状態への降伏を防止する。停止面の配置により、経時的に元の圧力-フロー特性を維持するダンパーの能力が大幅に向上する。しかしながら、このシステムは細かな公差に特に敏感であり、特定の設計機能のわずかな変動が性能特性に重大で望ましくない変化をもたらし得る。
【0009】
柔軟プレートスタックを使用する可変オリフィスダンパー弁の限界が認識されている。多数の代替案が提案されており、先行技術にも登場しているが、この配置は、自動車のサスペンションシステムで使用されるようなショックアブソーバに望ましい圧力-フロー特性を提供するための支配的なアプローチのままとなっている。
【0010】
Sonsterad等のUS6311812では、結果として得られる環状オリフィスの面積を制御するためにポペット全体の圧力バランスを使用するポペット式圧力調整器を記載することによって、柔軟プレートアプローチの代替案が提供されている。ポペットの前面の形状は、圧力バランスを制御するために変化させることができる。この方法では、圧力調整器の全体的な圧力-フロー特性、及び最終的には装置を使用するダンパーの全体的な圧力-フロー特性は、環状オリフィスの変化する面積によって制御される。‘812特許は、柔軟プレート可変オリフィスダンパー弁に関連する公差感度の問題の多くを克服しているが、その基本的な構成は、環状オリフィスの油圧制限のみを提供することによって限定されている。この制限は、製造公差にさらなる感度を再び導入する著しい複雑性の追加によってのみ、開示の代替的な実施形態において克服される。しかしながら、‘812特許の弁配置の最も重大な制限は、弁配置が一方向であることである。複動式ショックアブソーバに使用される‘812特許の圧力調整器には、圧縮方向及び反発方向の両方に作用する一方向ボール弁の配列が採用されている。これにより、ダンパーの圧力-フロー特性が圧縮方向及び反発方向の両方で同じになるように制限されるが、これはほとんどの場合望ましいことではない。さらに、‘812特許の圧力調整器は大きく複雑であり、ダンパーピストンに合理的に統合することができない。最後に、柔軟プレート構成と同様に、‘812特許には圧力-フロー特性を数学的に予測できる配置が記載されていない。
【0011】
受動可変オリフィス弁に存在する公差感度の問題に対する効果的ではあるが複雑な解決策が、Jones等のUS5996745に記載されている。‘745特許には、圧力-フロー、したがって圧電材料が埋め込まれたベンダから構成されるショックアブソーバの特性である力-速度を制御するためのダンパー弁が記載されている。ベンダは従来のダンパー弁の柔軟プレートと同様に使用されるが、圧電材料全体に電圧を供給することで、ベンダの剛性を変化させ、ベンダを変形させるために必要な圧力が修正される。電子センサがピストンの速度を測定するために使用され、ベンダに供給される電圧は測定された速度との関係で変化する。このように、ベンダの剛性はダンパーの速度及び力-速度に依存するようになっているため、フィードバックシステムを使用して圧力-フロー特性を能動的に制御している。‘745特許の圧電材料に基づく可変オリフィス弁は、受動ダンパー弁の許容限界を克服することができるが、関連する複雑さ及びコストは高額である。さらに、‘745特許には、圧力-フロー特性を数学的に単純に予測できる配置が記載されていない。
【0012】
AshibaのUS5,386,892には、伸長及び収縮の両ストロークに対して減衰力特性を高周波応答から低周波応答へと円滑に切り替えることができる周波数感応型油圧ショックアブソーバが記載されている。ショックアブソーバの第1の減衰システムは、比較的小さな、高周波数のピストン運動に応答するために、ピストンの圧縮と後退との間に油圧流体のフローのためのポートを徐々に遮断するようにガイドチューブ内を移動するばね荷重シャッタを採用している。この第1の減衰システムでは、このような高周波数のピストン運動の間に、様々な連絡通路を通る油圧流体のフローの方向を制御するための逆止弁が必要である。しかしながら、この第1の減衰システムは、比較的大きな、低周波数のピストン運動の間は機能しない。これは、完全な減衰機能を提供するために、このようなより大きく、より低い周波数のピストン運動の間に発生する圧力を処理するために、従来のディスク弁を使用する第2の減衰システムと組み合わせなければならず、依然として、簡単に数学的に予測される圧力-フロー特性を提供することができないという問題を抱えている。
【0013】
したがって、出願人は、上述の方式の可変オリフィス配置に関連する複雑さを排除しながらも、数学的に予測可能であり、反復可能かつ堅牢な圧力-フロー特性を提供する単純な構成を提供するダンパー弁の開発に着手した。目標は、必要な構成要素の数を減らし、組み立て手順を簡素化し、製造コストを削減し、ダンパーの全体的な性能を向上させる油圧ダンパーのスプール弁を提供することであった。スプール弁は、比例的に遮断される成形開口部に基づく可変オリフィス配置を介して、ダンパーのメインピストンを横切る油圧流体のフローを、メインピストンを横切る圧力差に対して所定の関係で制御するように構成された。成形開口部は、ダンパー本体の上部と下部との間に油圧流体の単一の経路を提供するように構成され、メインピストンを横切る圧力差に応じて比例的に開閉するように適合された。このように、ダンパーの動作特性は、成形開口部の幾何学的構成によって単純かつ予測可能に決定された。成形開口部の正確に定義された開口面積は、数学的に予測可能な油圧流体制限を提供し、これは、主に乱流領域で動作し、その結果、油圧流体の粘度に対する感度の低下、結果として温度変化に対する感度の低下をもたらす。
【0014】
ホルト等のUS8235186には、本体、メインピストン及び弁体を含むこのような油圧ダンパーアセンブリが記載されている。弁体は、少なくとも1つの成形開口部を備えた単一の弁スプールと、圧縮ストロークと反発ストロークとの間の油圧流体のフローに対して成形開口部を閉じ、成形開口部を様々な程度に開くことによって、それぞれ圧縮ストローク及び反発ストローク中に反対方向にそのような油圧流体のフローを可能にするように適合された弁スリーブとを備えている。ダンパーの上部と下部とをつなぐ単一の流路がある。単一の弾性貯蔵部材、典型的には、コイルばねは、弁スプール及び弁スリーブを互いに付勢する。あるいは、2つのエネルギー貯蔵体を使用して、弁スプール及び弁スリーブを弁体に対して別々に付勢し得る。圧縮ストロークでは、弁スリーブの端の油圧が、弁スプールが静止している間にコイルばねを圧縮し、油圧流体が一方向にのみ流れることを可能にする。油圧が低下すると、コイルばねが成形開口部を閉じたまま弁スリーブを静止位置に押し戻す。次に、反発ストロークでは、逆方向の油圧が、弁スプールが静止している間に、弁スプールにコイルばねを圧縮するよう促す。これにより再び成形開口部が開き、油圧流体が反対方向に流れることが可能になる。弁スプールに単一の成形開口部又は一組のそのような開口部を使用することは効果的であるが、圧縮フローと反発フローとの間に差を作るために1つ以上の成形開口部のみを使用して油圧フローを調整することはできない。
【0015】
ホルト等のUS8800732には、本体、メインピストン及び弁体を含む改良型油圧ダンパーアセンブリが記載されている。弁体は、2つの弁スプールと、個別の圧縮フロー及び反発フローの開口部を備えた単一の弁スリーブとを備えている。単一の弾性エネルギー貯蔵手段は、やはり典型的にはコイルばねであり、弁スプールの一方の油圧流体圧が反発フローの開口部を開き、他方の弁スプールへの圧力が圧縮フローの開口部を開くように、弁スプールを互いに付勢する。全てのフロー開口部は、油圧流体の差圧がない場合に閉じられる。ここでも単一の流路が採用されている。一方向チェックシムは、圧力差が存在する場合に、油圧流体が望ましくない方向に逆流するのを防ぐために使用される。この改良されたダンパーにより、圧縮ストロークと反発ストロークとの間の油圧フローを調整することが可能になる。ダンパーの1つの欠点は、一方向チェックシムが非常に多くの曲げサイクルによって応力を受け、摩耗し又は場合によっては破損し得ることである。ダンパーの動作にとって致命的ではない可能性があるが、このような摩耗又は破損は最終的にダンパーの性能を低下させ得る。
【0016】
これらの革新により、油圧ダンパーの非常に成功した世代がもたらされた。それでもなお、連続使用による摩耗を避けつつ、圧縮と反発とのピストンストローク間の油圧フローの調整が可能なダンパーが望まれている。
【発明の概要】
【0017】
さらに改良された油圧ダンパーアセンブリは、可動部品が少なく機能性が強化された‘186及び‘732特許の利点を提供する。これは、構造的に分離された油圧流路の使用による一方向弁をなくすことによって部分的に達成される。
【0018】
本発明の第1の主要な実施形態では、圧ダンパースプール弁は、圧ダンパーのメインピストンロッドに取り付けられるように適合される弁体であって、前記弁体はその反対側の端に隣接して開口を備えるように構成され、作動圧力下で前記油圧ダンパーの上部と下部との間の油圧流体のフローを容易にするために、一方の開口が前記上部と流体連通し、他方の開口が前記下部と流体連通する、弁体と、分割部又は弁体膜によって中断されるボアを画定し、かつ前記弁体に対して固定される一対の中空円筒形弁スリーブであって、各々が、前記油圧ダンパーの前記上部と前記下部とを油圧接続するように選択的に適合される各弁スリーブの反対側の端に隣接して少なくとも1つの成形開口部を備えるように構成される、中空円筒形弁スリーブと、一対の弁スプールであって、各々が、前記各弁スリーブの前記ボア内において移動可能に配置されるように動作可能に構成され、全ての成形開口部、又は一方の弁スリーブの反対側の端に隣接する前記少なくとも1つの成形開口部のみ、又は他方の弁スリーブの反対側の端に隣接する少なくとも1つの成形開口部のみを任意の時点で選択的に遮断するように適合される、一対の弁スプールと、一対の弾性エネルギー貯蔵部材であって、その一方が前記油圧ダンパーの前記油圧流体における作動圧力によって生じる力に対して前記弁スプールを反対方向に付勢するように、各弁スプールと前記弁体の分割部又は膜との間に配置され、前記弁体開口のいずれかにおいて作動圧力が誘導されるにつれて各エネルギー貯蔵部材が圧縮されると、移動している前記弁スプールに隣接する前記少なくとも1つの成形開口部の開口面積が前記圧力に比例して変化するように、前記弁スプールの一方又は他方が前記各弁スリーブに対して移動し、それによって前記油圧ダンパーの前記上部と前記下部との間の油圧フロー制限が変化する一方で、移動していない前記弁スプールが前記移動していない弁スプールに隣接する前記少なくとも1つの成形開口部を遮断する、一対の弾性エネルギー貯蔵部材と、いずれかの方向の油圧フロー中に他方の油圧流路を介する逆流を防止するために、反発油圧流路から構造的に分離された圧縮油圧流路であって、各流路が前記弁スリーブの一方の反対側の端に隣接する前記少なくとも1つの成形開口部のみと連通する、圧縮油圧流路とを備える。
【0019】
本発明のさらなる態様では、前記中空円筒形弁スリーブは、圧縮フロー成形開口部の配列を備えるように構成される圧縮弁スリーブ、及び反発フロー成形開口部の配列を備えるように構成される反発弁スリーブを備え、前記エネルギー貯蔵部材は、圧縮エネルギー貯蔵部材及び反発エネルギー貯蔵部材を備え、前記一対の弁スプールは、対応する圧縮フロー成形開口部を選択的に開閉するように構成される圧縮弁スプール、及び対応する反発フロー成形開口部を選択的に開閉するように構成される反発弁スプールを備える。
【0020】
本発明のさらなる態様では、反発フロー及び圧縮フローの成形開口部の配列は、既定の精密な形状を備えるように構成され、前記反発弁スプール及び前記圧縮弁スプールのそれぞれは、所望の圧力-フロー特性を提供するように、前記ダンパーにおける前記作動圧力に比例して、それぞれの反発フロー及び圧縮フローの開口部の可変開口面積を正確に制御するように適合される前縁を備えるように構成される。
【0021】
本発明のさらなる態様では、前記弾性エネルギー貯蔵部材はコイルばねである。
【0022】
本発明のさらなる態様では、前記中空円筒形弁スリーブの前記ボアは、半径隙間を通る油圧フローを防ぎながら、それぞれのボア内における各弁スプールの縦方向の動きを選択的に許容するように構成される既定の精密公差半径隙間を備える前記弁スプールを受け入れるように適合される。
【0023】
本発明のさらなる態様では、前記油圧スプール弁は、機械的な締め付け、溶接、ねじ山等によって前記メインピストンに固定される。
【0024】
本発明のさらなる態様では、前記少なくとも1つの対応する成形開口部を介して油圧流体のフローにさらされる各弁スプールの前縁は、前記弁スプールを横切る油圧流体のフローの最小の摂動を提供するように、鋭利な縁を示すように面取りされる。
【0025】
本発明のさらなる態様では、前記弁スリーブは、前記弁体の分割部によって分離される圧縮弁スリーブ及び反発弁スリーブを備え、前記弾性エネルギー貯蔵部材は、前記一対の弁スプールのうちの一方を前記弁体の前記分割部に対してそれぞれ付勢する圧縮エネルギー貯蔵部材及び反発エネルギー貯蔵部材を備える。
【0026】
本発明の第2の主要な実施形態では、油圧ダンパーアセンブリは、本体、軸アセンブリ及びメインピストンであって、前記メインピストンは、前記本体内の上部及び下部を画定するように動作可能に構成されるピストンロッドに固定される弁体を備え、前記弁体はその両端に開口を備えるように構成され、一方の開口が選択的に前記本体の上部と流体連通し、他方の開口が選択的に前記本体の下部と流体連通する、本体、軸アセンブリ及びメインピストンと、いずれかの方向の油圧フロー中に他方の油圧流路を介する逆流を防止するために、反発油圧流路から構造的に分離された圧縮油圧流路と、弁体の膜によって中断されるボアを画定し、前記弁体に対して固定される一対の中空円筒形弁スリーブであって、各々が、前記油圧ダンパーの前記上部と前記下部とを油圧接続するように選択的に適合される各弁スリーブの反対側の端に隣接して少なくとも1つの成形開口部を備えるように構成される、中空円筒形弁スリーブと、一対の弁スプールであって、各々が、前記各弁スリーブの前記ボア内において移動可能に配置されるように動作可能に構成され、全ての成形開口部、又は前記弁スリーブの第1の端に隣接する前記少なくとも1つの成形開口部のみ、又は前記弁スリーブの第2の端に隣接する少なくとも1つの成形開口部のみを任意の時点で選択的に遮断するように適合される、一対の弁スプールと、前記油圧ダンパーの前記油圧流体における作動圧力によって生じる力に対して反対方向に前記弁スプールを付勢するように、弁スプール間に配置される弾性エネルギー貯蔵部材であって、前記弁体開口のいずれかにおいて作動圧力が誘導されるにつれてエネルギー貯蔵部材が圧縮されると、移動している前記弁スプールに隣接する前記少なくとも1つの成形開口部の開口面積が前記圧力に比例して変化するように、前記弁スプールの一方又は他方が前記弁スリーブに対して移動し、それによって前記油圧ダンパーの前記上部と前記下部との間の油圧フロー制限が変化する一方で、移動していない前記弁スプールが前記移動していない弁スプールに隣接する前記少なくとも1つの成形開口部を遮断する、一対の弾性エネルギー貯蔵部材とを備える。
【0027】
本発明の第2の主要な実施形態のさらなる態様では、前記弁スリーブは、前記弁体の分割部によって分離される圧縮弁スリーブ及び反発弁スリーブを備え、前記弾性エネルギー貯蔵部材は、前記一対の弁スプールのうちの一方を前記弁体の前記分割部から離れるようにそれぞれ付勢する圧縮エネルギー貯蔵部材及び反発エネルギー貯蔵部材を備える。
【0028】
本発明の第2の主要な実施形態のさらなる態様では、前記油圧ダンパー本体は円筒形の内部ボア壁を備え、前記油圧ダンパースプール弁は、その間の油圧フローを防止しながら、前記本体の内部円筒形ボア壁内における前記スプール弁の縦方向の移動を許容にするように、精密公差で前記本体の内部ボア壁に摺動可能に接触するように構成される。
【0029】
本発明の第2の主要な実施形態のさらなる側面では、前記油圧スプール弁は、前記弁体と前記本体の内部円筒ボアとの間に弾性シールを備えるように構成される。
【0030】
本発明の好ましい実施形態は、以下の添付図面に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】油圧ダンパーアセンブリの斜視図である。
【0032】
図2図1の油圧ダンパーアセンブリの部分断面図である。
【0033】
図3】油圧流体が流れていない油圧ダンパーアセンブリの一部の断面立面図である。
【0034】
図4】圧縮又はバンプストローク中の油圧ダンパーアセンブリの一部の断面立面図である。
【0035】
図5】圧縮又はバンプストローク中の油圧流体のフローを示す図4のビューである。
【0036】
図6】反発ストローク中の油圧ダンパーアセンブリの一部の断面立面図である。
【0037】
図7】反発ストローク中の油圧流体のフローを示す図6のビューである。
【0038】
図8】油圧ダンパースプール弁の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
様々な態様又は個々の特徴の何れかを含む前の段落、請求項又は以下の記載及び図面の実施形態、例示及び代替物は、独立して又は任意の組み合わせで理解されてもよい。一実施形態に関連して記載された特徴は、このような特徴が非互換性でない限り、全ての実施形態に適用可能である。
【0040】
図1及び図2を参照すると、油圧ダンパーアセンブリ(1)は、本体(3)、軸アセンブリ又はピストンロッド(5)、及び本体(3)の内部チャンバ(9)を上部(11)と下部(13)とに分割するように構成されるメインピストン(7)から構成される。本体(3)の上部(11)及び下部(13)には油圧流体が含まれている。ここでは、上及び下という用語は、相対的な位置を定義するために使用され、ダンパーアセンブリの特定の空間的方向を示すものではない。メインピストン(7)は、軸アセンブリ(5)に取り付けられる油圧ダンパースプール弁(15)を備える。油圧ダンパースプール弁(15)は、機械的留め具、溶接、ねじ接続等を使用して軸アセンブリ(5)に固定されてもよい。図3及び図8に示すように、油圧ダンパースプール弁(15)と本体(3)との間に1つ以上のシール(17)が配置されてもよい。
【0041】
油圧ダンパースプール弁(15)は弁体(19)を備える。
【0042】
油圧ダンパースプール弁(15)は、弁体(19)内の中央に確実に取り付けられる一対の中空円筒形弁スリーブ(23、25)も備える。これらは圧縮弁スリーブ(23)及び反発弁スリーブ(25)を備える。弁スリーブ(23、25)は、弁体(19)内に確実に取り付けられ、弁スリーブ(23、25)の両端で弁体(19)に着座し、中央で弁体(19)の分割部又は膜(27)に着座して、それらの端での油圧のフローを防止する。弁スリーブ(23、25)は、弁体の分割部又は膜(27)によって中断される内部円筒形ボア(29)を画定する。ボア(29)は、弁体分割部又は膜(27)によって分離される2つのボア(31、33)を備える。あるいは、分割部又は膜(27)は、弁体自体の一部ではなく、別の構成要素を備えてもよい。
【0043】
弁スリーブ(23、25)は、成形フロー開口部(35、37)の配列を備えて構成される。これらは、一方の弁スリーブ(23)の端部に隣接する圧縮フロー成形開口部(35)、及び他方の弁スリーブ(25)の反対側又は対向する端に隣接する反発フロー成形開口部(37)を備える。
【0044】
弁スリーブの内部円筒形ボア(31、33)は、一対の弁スプール(39、41)を受け入れるように適合される。圧縮弁スプール(39)は、圧縮フロー成形開口部(35)に隣接して配置される。反発弁スプール(41)は、反発フロー成形開口部(37)に隣接して配置される。弁スプール(39、41)の前縁(43、45)は、鋭利な縁を作成するように面取りされてもよい。これにより、このような縁を横切る油圧流体フローの摂動が減少し、油圧ダンパーのより円滑な動作が容易になる。
【0045】
一対の弾性エネルギー貯蔵手段(47、49)が設けられており、その一方は各弁スプール(39、41)と弁体分割部又は膜(27)との間に配置されている。典型的には、これらの弾性エネルギー貯蔵手段は、弁スプール(39、41)を反対方向に付勢するコイルばねである。弁スプール(39、41)は、静止時には弁体(19)に接触していてもよく、好ましくは、常にコイルばね(47、49)によって付勢されている。圧縮コイルばね(47)は圧縮弁スプール(39)に関連付けられ、反発コイルばね(49)は反発弁スプール(41)に関連付けられる。
【0046】
弁体(19)の両端には複数の開口が設けられている。第1の組の開口(51、53)は、それぞれダンパーの下部(13)及び上部(11)から弁スリーブ(23、25)の内部ボア(31、33)につながっている。これらは、圧縮フローの第1の開口(51)及び反発フローの第1の開口(53)を備える。第2の組の開口、圧縮フローの第2の開口(55)及び反発フローの第2の開口(57)は、弁スリーブ(23、25)の外側にあり、上部(11)と下部(13)とを接続する別々の流路(59、61)と連通する。これらの第2の流路の1つである圧縮流路(59)は圧縮フローの成形開口部(35)と連通し、もう1つの第2の流路である反発流路(61)は反発フローの成形開口部(37)と連通している。
【0047】
図3に示すように、ダンパーに方向性の作動圧力がない場合、弾性エネルギー貯蔵手段(47、49)は、圧縮及び反発フローの成形開口部(35、37)のそれぞれの配列を完全に遮断し、油圧ダンパーの上部(11)と下部(13)との間の油圧経路を遮断するように、圧縮及び反発弁スプール(39、41)を反対方向に付勢する。圧縮又は反発フローの成形開口部が油圧にさらされるまで、油圧流体が流れなくてもよい。
【0048】
一般的に、油圧ダンパーが静止しているときは、上部(11)と下部(13)との間に誘導される圧力差はない。図4及び図5に示すように、ダンパーの圧縮(又はバンプ)ストロークが発生すると、油圧流体は(ピストンロッドから離れた)下部(13)から(ピストンロッドを含む)上部(11)へ流れようとする。したがって、油圧流体は圧縮コイルばね(47)を圧縮する圧縮弁スプール(39)に圧力を加える。これにより、圧縮弁スリーブ(23)における1つ以上の圧縮フロー成形開口部(35)を徐々に露出させる圧縮弁スリーブ(23)に関連する圧縮弁スプール(39)の移動が引き起こされる。次に、油圧流体は下部(13)から圧縮弁スリーブ(23)における1つ以上の露出した圧縮フロー成形開口部(35)を通り、圧縮流路(59)を通り、圧縮フローの第2の開口(55)を通って、上部(11)へと流れる。圧縮流路(59)によって油圧流体のフローの方向が制御される。反発弁スプール(41)が反発フロー成形開口部(37)を遮断するため、圧縮ストローク中に下部(13)への油圧流路はない。図3に示すように、圧縮ストローク中にピストン(7)がその移動限界に向かって移動すると、ピストンが減速するにつれて上部と下部と間の圧力差(11、13)が次第に小さくなり、圧縮コイルばね(47)は減圧し、圧縮弁スプール(39)が静止位置に戻るにつれて圧縮フロー成形開口部(35)は閉じる。ダンパー内の圧縮ストロークピストン運動の限界において、油圧は上部(11)と下部(13)とで少なくとも瞬間的に等しくなり、圧縮成形開口部(35)は再び完全に遮断される。
【0049】
これに対して、図6及び図7に示すように、圧縮後にピストンの反発ストロークが発生すると、油圧流体は上部(11)から下部(13)へ流れようとする。したがって、油圧流体は、反発コイルばね(49)を圧縮する反発弁スプール(41)に圧力をかける。これにより、反発弁スリーブ(25)に関連する反発弁スプール(41)の移動が引き起こされ、これは反発弁スリーブ(25)における1つ以上の反発フロー成形開口部(37)を徐々に露出させる。次に、油圧流体は、上部(11)から、反発弁スリーブ(25)の露出した反発フロー成形開口部(37)を通って、反発流路(61)を通って下部(13)に流れる。この場合、反発ピストンストローク中の油圧流体のフローの方向は、反発流路(61)によって制御される。圧縮弁スプール(39)が圧縮フロー成形開口部(35)を遮断するため、反発ストローク中に上部(11)への油圧流路はない。ピストンが反発ストローク中に移動限界から戻ると、図3に示すように、ピストンが減速するにつれて、下部と上部との圧力差(13、11)が徐々に小さくなり、反発コイルばね(49)が減圧し、反発弁スリーブ(25)における反発フロー成形開口部(37)が閉じ、反発弁スプール(41)が静止位置に戻る。ダンパー内の反発ストロークピストン運動の限界では、油圧は上部(11)と下部(13)との間で少なくとも瞬間的に等しくなり、反発フロー成形開口部(37)は再び完全に遮断される。
【0050】
このようにして、特定の時間に一組の成形開口部のみが開いている。ダンパーに負荷がかからないときは、両組の成形開口部が閉じている。油圧ダンパー内の油圧流体の誘導された作動圧を変化させると、それぞれのコイルばねの付勢力に対して1つの弁スプールの比例した縦方向の動きが生じ、これにより、任意の特定の時点の場合に、圧縮及び反発フローの成形開口部のより大きな面積と小さな面積とを比例的に露出させることによって、限定する油圧流制限の面積が変化する。したがって、油圧ダンパーの動作特性は、誘導された作動圧力に応じて、それぞれのフロー成形開口部が比例的に開閉することによって定義され、これは数学的に予測可能で安定した圧力対フローの関係をもたらす。油圧ダンパーのこの圧力対フローの関係は、圧縮方向又は反発方向に移動するときに、それぞれの成形開口部の断面形状を変更することによって、それぞれのコイルばねに異なるばね定数を使用することによって、又はそれぞれのコイルばねの事前負荷を変更することによって調整することができる。
【0051】
反発フロー成形開口部及び圧縮フロー成形開口部の配列は、それぞれの場合に複数の成形開口部として、又は単一の成形開口部として構成されてもよい。開口部は、所望の圧力-フロー特性を容易にする可変幅を有する所定の断面によって構成されてもよい。成形開口部の開放は、弁スプールの縦方向の移動中の任意の点で、確立されたオリフィスフロー理論に基づいて、数学的に予測可能な油圧フロー制限を提供する。反発フロー及び圧縮フローの開口部の配列の断面は、互いに同一であり又は独立していてもよく、一般に複雑で不規則な形状をしている。
【0052】
圧縮流路及び反発流路を別々に使用することで、一方向弁又はチェックシムが不要になり、ダンパーの摩耗が減少する。チェックシムをなくすことで、チェックシム故障のリスクもなくなる。結果として得られるダンパーは堅牢で信頼性が高い。
【0053】
本発明の文脈において同じ結果を生み出す他の手段も、特にダンパーの組み立てを容易にするために、当業者には明らかであろう。例えば、弁体を複数の部品で作成して、弁体の部品を接続する前に内部構成要素を組み立ててもよい。
【0054】
特定の構成要素の配置が図示された実施形態に開示されているが、他の配置も本発明から利益を得ることが理解されるべきである。特定のステップシーケンスが示されかつ説明されているが、ステップは、他に示されていない限り、任意の順序で、分離され又は組み合わされて実行されてもよく、それでも本発明から利益を受けることが理解されるべきである。
【0055】
異なる例は例示された特定の構成要素を有するが、本発明の実施形態は、こうした特定の組合せに限定されない。一例による構成要素又は特徴の一部を別の例による特徴又は構成要素と組み合わせて使用することも可能である。
【0056】
例示的な実施形態が開示されているが、当業者であれば、所定の変更が特許請求の範囲内に含まれることを認識するであろう。そのため、以下の特許請求の範囲について検討し、その実際の範囲及び内容を決定すべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8