(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-22
(45)【発行日】2024-03-04
(54)【発明の名称】接着組成物及びこれを含むカバーレイフィルム、並びにプリント回路基板
(51)【国際特許分類】
C09J 163/00 20060101AFI20240226BHJP
C09J 115/00 20060101ALI20240226BHJP
C09J 121/00 20060101ALI20240226BHJP
C09J 109/00 20060101ALI20240226BHJP
C09J 109/02 20060101ALI20240226BHJP
C09J 133/00 20060101ALI20240226BHJP
C09J 7/35 20180101ALI20240226BHJP
C08G 59/34 20060101ALI20240226BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20240226BHJP
【FI】
C09J163/00
C09J115/00
C09J121/00
C09J109/00
C09J109/02
C09J133/00
C09J7/35
C08G59/34
H05K1/03 610L
(21)【出願番号】P 2022554728
(86)(22)【出願日】2021-03-12
(86)【国際出願番号】 KR2021003091
(87)【国際公開番号】W WO2021182910
(87)【国際公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】10-2020-0030846
(32)【優先日】2020-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】504408236
【氏名又は名称】ドゥーサン コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】パク、クァン ソク
(72)【発明者】
【氏名】ユ、ウィ ドック
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、イン ギ
(72)【発明者】
【氏名】パク、ス ビョン
(72)【発明者】
【氏名】チェ、ドン ホ
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-195846(JP,A)
【文献】国際公開第2007/063580(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00 - 201/10
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 - 101/14
C08G 59/00 - 59/72
B32B 1/00 - 43/00
H05K 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)エポキシ樹脂;及び、
(b)エポキシ化ポリブタジエンゴム、及び2種以上のゴムを含有するバインダー樹脂;
を含
み、
上記エポキシ化ポリブタジエンゴムは、下記化4で示されるゴムであり、
上記2種以上のゴムは、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(acrylonitrile-butadiene rubber、NBR)、及びアクリルゴムを含有し、
上記バインダー樹脂は、エポキシ樹脂とバインダー樹脂とを合わせた総量100重量部に対して、35~90重量部の範囲であり、
上記バインダー樹脂は、上記エポキシ化ポリブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、及びアクリルゴムを、1:1~8:0.5~5の重量比で含有するものである、接着組成物。
【化4】
(式中、
lは、1~500の整数であり、
mは、1~500の整数であり、
nは、1~500の整数であり、
R1及びR2は、互いに同一又は異なり、それぞれ独立に、及び/又は、C
1
~C
12
のアルキル基からなる群から選択されるものである。)
【請求項2】
上記エポキシ化ポリブタジエンゴムは、100~400g/eqのエポキシ当量(epoxy equivalent weight、EEW)を有するものである、請求項1に記載の接着組成物。
【請求項3】
上記バインダー樹脂は、上記エポキシ化ポリブタジエンゴム、及び2種以上のゴムを、1:2~15の重量比で含有するものである、請求項1に記載の接着組成物。
【請求項4】
上記エポキシ樹脂は、100~600g/eq範囲のエポキシ当量(EEW)を有するものである、請求項1に記載の接着組成物。
【請求項5】
当該接着組成物の硬化物は、ASTM D1204試験による伸縮率が0.1~1%範囲のものである、請求項1に記載の接着組成物。
【請求項6】
当該接着組成物の硬化物は、150~200℃での最低粘度(minimum viscosity)が1,000~10,000cPsの範囲である、請求項1に記載の接着組成物。
【請求項7】
当該接着組成物の硬化物は、下記関係式1を満たすものである、請求項
6に記載の接着組成物。
[関係式1]
【数1】
(式中、
T
1は、温度180℃及び圧力8,800LBの条件下で、接着組成物Aの硬化物をプリント回路基板にホットプレスする際に、上記接着組成物Aが上記プリント回路基板のパターン同士の間に充填する時間であり;
T
2は、温度180℃及び圧力8,800LBの条件下で、当該接着組成物の硬化物がプリント回路基板のパターン同士の間に充填する時間であり;
上記接着組成物Aは、当該接着組成物から、エポキシ化ポリブタジエンゴムを除くものであり;
上記プリント回路基板は、回路パターンの厚さが35μmであり、回路パターンの幅が100μmであり、回路パターン同士の離間距離が100μmである。)
【請求項8】
温度180℃及び圧力8,800LBの条件下で、当該接着組成物の硬化物を、プリント回路基板のパターン同士の間に充填する時間が、30~90秒間であり、
このとき、上記プリント回路基板は、回路パターンの厚さが35μmであり、回路パターンの幅が100μmであり、回路パターン同士の離間距離が100μmである、請求項
6に記載の接着組成物。
【請求項9】
当該接着組成物の硬化物は、IPC-TM-650 2.4.8試験法に従って1.2~2.0kgf/cm範囲の剥離強度を有するものである、請求項1に記載の接着組成物。
【請求項10】
ベース基材;
上記ベース基材の一面上に配置され、請求項1~
9のうちのいずれか1項に記載の接着組成物から形成される接着層;及び、
上記接着層上に配置される離型基材;
を含む、カバーレイフィルム。
【請求項11】
上記ベース基材は、300℃以下の融点を有する熱可塑性高分子フィルムである、請求項
10に記載のカバーレイフィルム。
【請求項12】
基板本体;及び、
上記基板本体の少なくとも一面上に配置された、請求項
10又は
11に記載のカバーレイフィルム;
を含む、プリント回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着組成物及びこれを含むカバーレイフィルム、並びにプリント回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
カバーレイフィルム(coverlay film)は、プリント回路基板の製造工程及び使用中において、回路パターンを保護するため、回路パターン形成面に貼り付けられる。このようなカバーレイフィルムは、基材及び接着層を含んでなる。
【0003】
従来、カバーレイフィルムの接着層は、エポキシ樹脂とバインダー樹脂(例えば、NBR又はアクリルゴム)で構成されている。このようなカバーレイフィルムの接着剤層は、流れ性が低いため、プリント回路の凹凸に対する十分な充填性(埋め込み性)を有していない。それで、カバーレイフィルムの接着剤層とプリント回路基板との間の界面にボイド(void)が発生するという品質低下の問題がある。よって、ボイドを除去するため、長時間(約1~2時間)のホットプレス(hot press)工程を行う必要があり、これは、生産性低下の問題を惹起している。
【0004】
それで、生産性を高めるため、約3分程度のクイックプレス(quick press)のためのカバーレイ接着剤が開発されているが、従来のバインダー樹脂(例えば、NBR、アクリルゴム)だけでは流れ性と耐熱性とを同時に満足することが難しく、よって、クイックプレス時間の短縮に限界があった。一方、従来、バインダー樹脂であるゴムの含有量を増大して充填性を向上させようとする試みが行われている。しかし、接着剤層の流れ性及び接着力は向上できたが、ゴム材が有する物性の限界から、ゴムの含有量が一定量以上の場合は、耐熱性の低下、伸縮特性の低下などの問題が生じ、ゴム含有量の増大には限界があった。特に、生産性改善のためのロールツーロール工程(roll-to-roll process)の際において、伸縮特性の低下は、製品長さが長くなるほど公差が累積されるため、製品の寸法の問題を引き起こしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、接着性が低下することなく、クイックプレス(quick press)性、流れ性、充填性(埋め込み性)、耐マイグレーション性、耐熱性、難燃性、低伸縮性、柔軟性などに優れた接着層を形成することができる接着組成物を提供することにある。
【0006】
また、本発明の他の目的は、上述の接着組成物を用いて、プリント回路基板のホットプレス工程にかかる時間を短縮し、クイックプレス工程の適応性及び信頼性を向上させると共に、ロールツーロール工程によるプリント回路基板の品質、生産性及び効率を向上させることができるカバーレイフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述のような技術的課題を達成するため、本発明は、(a)エポキシ樹脂;及び、(b)エポキシ化ポリブタジエンゴム、及び2種以上のゴムを含有するバインダー樹脂;を含む、接着組成物を提供する。
【0008】
また、本発明は、ベース基材;上記ベース基材の一面上に配置され、上述の接着組成物から形成される接着層;及び、上記接着層上に配置された離型基材;を含む、カバーレイフィルムを提供する。
【0009】
さらに、本発明は、基板本体;及び、上記基板本体の少なくとも一面上に配置された上記カバーレイフィルム;を含む、プリント回路基板を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る接着組成物は、エポキシ樹脂、バインダー樹脂、及び硬化剤を含むが、上記バインダー樹脂が、エポキシ化ポリブタジエンゴム、及び2種以上のゴムを含有することにより、接着性、流れ性、充填性(埋め込み性)、耐マイグレーション性、耐熱性、難燃性、低伸縮性、柔軟性などに優れた接着層を形成することができる。
【0011】
また、本発明のカバーレイフィルムによれば、上述の接着組成物から形成された接着層を含むことにより、プリント回路基板の製造時に、ホットプレス工程の効率を向上させると共にプリント回路基板の不良率を減少させることができ、ひいてはプリント回路基板の信頼性を向上させることができる。さらに、本発明のカバーレイフィルムによれば、ロールツーロール工程によるプリント回路基板の製造時に、プリント回路基板の品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るカバーレイフィルムの概略断面図である。
【0013】
【
図2】本発明の第2の実施形態に係るカバーレイフィルムの概略断面図である。
【0014】
【
図3】(a)は、カバーレイフィルムの接着層がプリント回路基板の回路パターン同士の間に充填された状態で、充填性がPassである回路を例示する写真であり、(b)は、カバーレイフィルムの接着層がプリント回路基板の回路パターン同士の間に未充填の状態で、充填性がFailである回路を例示する写真である。
【0015】
【
図4】伸縮率を測定するためのサンプルを示す概略平面図である。
【0016】
**符号の説明**
【0017】
10A、10B:カバーレイフィルム、11:基材、
【0018】
12:接着層、13:離型基材、
【0019】
14:表面保護基材
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明について説明する。
【0021】
<接着組成物>
【0022】
本発明に係る接着組成物は、(a)エポキシ樹脂;及び、(b)エポキシ化ポリブタジエンゴム、及び2種以上のゴムを含むバインダー樹脂;を含み、必要に応じて、硬化剤、難燃剤、分散剤、シランカップリング剤、無機フィラー、硬化促進剤、有機溶媒、及び添加剤からなる群から選択される1種以上をさらに含むことができる。
【0023】
以下、本発明に係る接着組成物の各成分について説明する。
【0024】
(a)エポキシ樹脂
【0025】
本発明の接着組成物において、エポキシ樹脂は、熱硬化性樹脂であって、硬化後、三次元網状構造を形成することで、プリント回路基板に対するカバーレイフィルムの接着力を向上させると共に、耐熱性、耐水性、耐湿性に優れ、カバーレイフィルムの耐熱信頼性を向上させることができる。また、エポキシ樹脂は、機械的強度、電気絶縁性、耐化学薬品性、寸法安定性、成形性に優れ、かつ、他の樹脂との相溶性にも優れている。
【0026】
本発明で使用可能なエポキシ樹脂は、分子内に少なくとも1以上のエポキシ基(epoxide group)を含有する高分子であって、分子内に臭素などのハロゲン原子を含まないエポキシ樹脂であることが好ましい。なお、エポキシ樹脂は、分子内にシリコン、ウレタン、ポリイミド、ポリアミドなどを含有していると共に、分子内にリン原子、硫黄原子、窒素原子などを含むことができる。
【0027】
このようなエポキシ樹脂の種類は、特に制限されず、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、又はこれらに水素添加したもの、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などのグリシジルエーテル系エポキシ樹脂、ヘキサヒドロフタル酸グリシジルエステル、ダイマー酸グリシジルエステルなどのグリシジルエステル系エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンなどのグリシジルアミン系エポキシ樹脂、エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化大豆油などの線状脂肪族エポキシ樹脂などが挙げられ、好ましくは、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル(biphenyl)型エポキシ樹脂、多官能エポキシ樹脂などが挙げられる。これらは、単独で使用、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0028】
一例では、エポキシ樹脂は、多官能性エポキシ樹脂であることができる。なお、多官能性エポキシ樹脂は、1分子当たり2つ以上、具体的には2~5個のエポキシ基を含有するエポキシ樹脂であって、樹脂は、接着層に電気絶縁性、耐熱性、化学安定性、強度(toughness)及び成形性を付与することができる。
【0029】
多官能性エポキシ樹脂としては、例えば、フェノール又はアルキルフェノール類とヒドロキシベンズアルデヒドとの縮合物をエポキシ化して得られるエポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、キシロック型エポキシ樹脂、多官能型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA/ビスフェノールF/ビスフェノールADのノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA/ビスフェノールF/ビスフェノールADのグリシジルエーテルエポキシ樹脂、ビスヒドロキシビフェニル系エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン系エポキシ樹脂、ナフタレン系エポキシ樹脂などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
このようなエポキシ樹脂のエポキシ当量(epoxy equivalent weight、EEW)は、特に限定されないが、約100~600g/eqの範囲、具体的に約300~600g/eqの範囲であることができる。この場合、接着組成物の耐熱性及び成形性が向上すると共に、接着組成物の(半)硬化物(例えば、カバーレイフィルムの接着層)の流れ性が向上することができる。特に、上述の範囲のように、エポキシ当量が低いエポキシ樹脂は、バインダー樹脂の一種であるNBRあるいはアクリルゴムと混合されることで、接着層の流れ性が極めて向上し、カバーレイフィルムの接着層がプリント回路基板における回路間の段差を短時間で充填することができる。
【0031】
本発明の接着組成物において、エポキシ樹脂の含有量は、特に限定されず、一例では、エポキシ樹脂とバインダー樹脂とを合わせた総量100重量部に対して、約10~65重量部、具体的に約20~46.5重量部、より具体的に約20~40重量部であることができる。他の一例では、エポキシ樹脂の含有量は、当該接着組成物の総量を基準に、約5~50重量%、具体的に約5~35重量%であることができる。この場合、接着組成物の流れ性に優れ、接着層の充填特性が極めて向上すると共に、銅箔との接着力が増大し、耐熱性がさらに向上することができる。
【0032】
(b)バインダー樹脂
【0033】
本発明の接着組成物は、バインダー樹脂を含む。バインダー樹脂は、3種以上のゴムを含有するものであって、相互結合力を付与して組成物のフィルム化を誘導するだけでなく、硬化後、硬化物(例えば、接着層)の接着力の向上、柔軟性(flexibility)、屈曲性、耐クラック性の向上、熱応力の緩和などのような効果を得ることができる。
【0034】
特に、本発明では、3種以上のゴムのうち、1種として、エポキシ化ポリブタジエンゴムを含むことにより、ゴムの流れ特性を維持しながら、上記エポキシ化ポリブタジエンゴムの末端部分のエポキシ反応によって架橋密度を向上させ、接着力はもちろん、耐熱性及び伸縮特性を同時に向上させることができる。
【0035】
一例では、バインダー樹脂は、エポキシ化ポリブタジエンゴム、及び2種以上のゴムを含有し、上記2種以上のゴムは、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(acrylonitrile-butadiene rubber、NBR)、及びアクリルゴムを含有することができる。
【0036】
本発明のバインダー樹脂において、エポキシ化ポリブタジエンゴムは、主鎖内にエポキシ基を含有するポリブタジエンゴムであって、ブタジエン繰り返し単位、及びエポキシ基含有繰り返し単位を含有する。
【0037】
なお、ブタジエン繰り返し単位の構造は、トランス-1,4構造、シス-1,4構造、及び1,2-ビニル構造からなる群から選択される1種以上の構造であることができる。一例では、上記ブタジエン繰り返し単位は、シス-1,4構造のブタジエン繰り返し単位、及び1,2-ビニル構造のブタジエン繰り返し単位を含有することができる。
【0038】
上記エポキシ化ポリブタジエンゴムにおいて、シス-1,4構造を有するブタジエン繰り返し単位は、分枝を有しない直鎖状の構造である。このため、上記エポキシ化ポリブタジエンゴムは、他のゴムに比べて柔軟性に優れている。また、上記エポキシ化ポリブタジエンゴムは、低温での柔軟性を向上させるためにNBRと共にブレンドする場合、NBR単独使用に比べて、より低温で流れ性を誘導することができる。
【0039】
また、上記エポキシ化ポリブタジエンゴムは、エポキシ基含有繰り返し単位が、硬化剤との反応によって開環されることで、架橋密度が向上し、高耐熱性、低伸縮性、及び高接着性を確保することができる。また、上記エポキシ化ポリブタジエンゴムのエポキシ基繰り返し単位によって、NBR及びアクリルゴムを単独で使用、又はこれらを混合して使用する場合に比べて、バインダー樹脂の全含有量を増加させても高耐熱性を確保することができる。
【0040】
また、上記エポキシ化ポリブタジエンゴムのブタジエン繰り返し単位のうち、1,2-ビニル構造を有するブタジエン繰り返し単位は、アモルファス状態(amorphous state)である。このため、上記1,2-ビニル構造を有するブタジエン繰り返し単位の含有量が増大する場合、高分子鎖の間のフリーボリュームの増加によって高分子鎖の流動性が高く、ガラス転移温度が低くなって、エポキシ化ポリブタジエンゴムが、低いガラス転移温度を有することが可能となる。
【0041】
一例では、上記エポキシ化ポリブタジエンゴムは、下記化1で示される繰り返し単位~下記化3で示される繰り返し単位を含有するゴムであることができる。
【0042】
【0043】
【0044】
【0045】
具体的に、上記エポキシ化ポリブタジエンゴムは、例えば、下記化4で示されるゴムであることができるが、これに限定されない。
【0046】
【0047】
(式中、
【0048】
lは、1~500の整数であり、
【0049】
mは、1~500の整数であり、
【0050】
nは、1~500の整数であり、
【0051】
R1及びR2は、互いに同一又は異なり、それぞれ独立に、水素及びC1~C12のアルキル基からなる群から選択されるものである。)
【0052】
上記エポキシ化ポリブタジエンゴムは、約100~400g/eqのエポキシ当量(epoxy equivalent weight、EEW)を有することができる。
【0053】
このようなエポキシ化ポリブタジエンゴムを単独で使用する場合、接着組成物からなる硬化物(接着層)の接着性、流れ性及び充填性が低下することがある。従って、本発明では、バインダー樹脂としてエポキシ化ポリブタジエンゴムを、2種以上のゴム(例えば、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、アクリルゴムなど)と共に混合して使用する。
【0054】
本発明のバインダー樹脂において、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)は、アクリロニトリル(acrylonitrile)とブタジエン(Butadiene)との共重合体の合成ゴムである。アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)は、一般的に、耐油性、耐摩耗性、耐老化性に優れ、ブタジエンゴムに対比して、相溶温度が高くなるため、耐熱性を付与することができる。また、接着層に接着性、耐熱性を付与することができる。
【0055】
上記アクリロニトリル-ブタジエンゴム中のアクリロニトリルの含有量は、特に限定されず、例えば、約20~40重量%の範囲であることができる。但し、アクリロニトリル-ブタジエンゴム中のアクリロニトリルの含有量が上述の範囲内である場合、エポキシ樹脂と反応して優れた耐熱特性を実現することができ、また、反応速度の調節が容易であるため、接着層の充填性及び工程性を確保することができる。なお、アクリロニトリルの含有量が20重量%より低い場合、溶媒に対する相溶性が低下し、40重量%より高い場合、絶縁特性に問題が発生することがある。
【0056】
上記アクリロニトリル-ブタジエンゴムは、末端及び/又は側鎖にカルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、水酸基、メトキシ基、イソシアネート基、及びビニル基からなる群から選択される1種以上の官能基を含有することができる。このような官能基は、エポキシ樹脂と反応して接着性、耐湿性、耐熱性などの物性を向上させることができる。
【0057】
一例では、アクリロニトリル-ブタジエンゴムは、末端及び/又は側鎖にカルボキシル基を含有するアクリロニトリル-ブタジエンゴム(以下、「カルボキシル基含有NBR」という。)であることができる。上記カルボキシル基含有NBRは、カルボキシル基を含有しているため、接着組成物の安定性が増加し、他の成分との混和性が向上し、接着組成物の加工性を向上させることができる。また、カルボキシル基含有NBRのカルボキシル基は、エポキシ樹脂との反応が可能であるため、接着性の向上はもちろん、耐湿性、耐熱性などの物性を向上させることもできる。
【0058】
このようなカルボキシル基含有NBR中のカルボキシ基の含有率は、特に限定されず、例えば、約0.5~2重量%であることができる。このとき、カルボキシル基含有NBR中のアクリロニトリルの含有率は、約20~40重量%であることができる。
【0059】
また、カルボキシル基含有NBRは、耐マイグレーション性を付与するため、K+、NH4+、Na+、Cl-などのようなイオンの総含有量を、約0.1~20ppm程度に下げた高純度ゴムを使用することができる。一般的なゴムは、上記イオンのような不純物を約150ppm以上含有するが、高純度のカルボキシル基含有NBRを使用する場合、金属層で導電性イオンの移動が極力抑制され、優れた耐マイグレーション性と高信頼度を有する製品を備えることが可能となる。一例では、カルボキシル基含有NBRは、Na+イオンを約5~15ppm、K+イオンを約2~5ppm、Cl-イオンを約0.1~0.5ppm程度含有することができる。
【0060】
本発明のバインダー樹脂において、アクリルゴム(acrylic rubber)は、(メタ)アクリル酸エステルに由来する繰り返し単位を含む合成ゴムである。このようなアクリルゴムは、カバーレイフィルムをプリント回路基板に仮接した後、約150~190℃の温度、約10~100kgf/cm2の面圧、及び約2~20kNの線圧の条件下で、ホットプレス(hot press)する際に、接着層内において未架橋状態又は半架橋状態にあり、接着層の流れ性をエポキシ樹脂と共に極大化させることができ、接着層の熱硬化後、架橋されて接着層の接着性、剪断性、及び弾性を向上させることができる。
【0061】
上記アクリルゴムは、末端及び/又は側鎖にカルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、水酸基、メトキシ基、イソシアネート基、及びビニル基からなる群から選択される1種以上の官能基を含有することができる。このような官能基は、エポキシ樹脂と反応して接着性、耐湿性、耐熱性などの物性を向上させることができる。
【0062】
一例では、上記アクリルゴムは、末端及び/又は側鎖にカルボキシル基を含有するアクリルゴム(以下、「カルボキシル基含有アクリルゴム」という。)であることができる。
【0063】
このようなカルボキシル基含有アクリルゴム中のカルボキシ基の含有率は、特に限定されず、例えば、約0.1~5重量%であることができる。
【0064】
本発明で使用可能なアクリルゴムとしては、当業界で周知のものであれば、特に制限されない。例えば、(メタ)アクリル酸エステルに由来する繰り返し単位を含む単独重合体;(メタ)アクリル酸エステルに由来する繰り返し単位と、アクリロニトリルに由来する繰り返し単位とを含有する共重合体;(メタ)アクリル酸エステルに由来する繰り返し単位と、塩素原子含有モノマーに由来する繰り返し単位とを含有する共重合体;などが挙げられる。また、上記共重合体は、上述の繰り返し単位の他に、アクリル酸、メタアクリル酸、グリシジルアクリレート、グリシジルメタアクリレートなどのモノマーに由来する繰り返し単位をさらに含有することができる。ここで、(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルを意味する。
【0065】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチル(メタ)ヘキシルアクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレートなどのようなC1~C20のアルキル基を含有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル;ブタジエンなどのように、炭素数4~6の炭素原子からなる共軛ジエンモノマー類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテルなどのようなビニルエーテル類などが挙げられるが、これらは単独で使用、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0066】
本発明のバインダー樹脂は、上述のエポキシ化ポリブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)及びアクリルゴムの他に、当業界で周知のその他のゴムであれば、特に制限されず、さらに含有することができる。例えば、天然ゴム、イソプレンゴム(isoprene rubber)、1,2-ポリブタジエン(1,2-polybutadiene)、スチレン-ブタジエンゴム(styrene butadiene rubber、SBR)、クロロプレンゴム(chloroprene rubber)、ブチルゴム(butyl rubber)、エチレン-プロピレンゴム(ethylene propylene rubber)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(chlorosulphonated polyethylene rubber)、エピクロロヒドリンゴム(epichlorohydrine rubber)、多硫化ゴム、シリコンゴム(silicone rubber)、フッ素ゴム(fluoro rubber)、ウレタンゴム(urethane rubber)、カルボキシル末端化ブタジエンアクリロニトリルゴム(CTBN)などのような合成ゴムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0067】
上述したその他のゴムの含有量は、特に限定されず、バインダー樹脂の総量を基準に、約5重量%以下、具体的に約3重量%以下、より具体的に約0~1重量%であり、さらに具体的に約0重量%超~0.5重量%以下であることができる。
【0068】
本発明の接着組成物において、バインダー樹脂の含有量は、特に限定されず、一例では、エポキシ樹脂とバインダー樹脂とを合わせた総量100重量部に対して、約35~90重量部、具体的に約53.5~80重量部、より具体的に約60~80重量部であることができる。他の一例では、バインダー樹脂の含有量は、当該接着組成物の総量を基準に、約25~55重量%、具体的に約30~45重量%であることができる。この場合、接着組成物の流れ性に優れ、接着層の充填特性が極めて向上すると共に、接着力がさらに向上することができる。
【0069】
ここで、上記エポキシ化ポリブタジエンゴムと2種以上のゴムとの使用比率(混合比率)は、特に限定されず、例えば、1:2~15重量比であることができる。但し、エポキシ化ポリブタジエンゴムと2種以上のゴムとの使用比率が上述の範囲内である場合、接着組成物の硬化物(接着層)は、約150~200℃での最低粘度(minimum viscosity)が、1,000~10,000cPsの範囲に制御され、接着層の流れ性が極めて向上することで、カバーレイフィルムのホットプレス(hot press)時における接着層の充填特性が向上することができる。特に、本発明の接着組成物では、エポキシ化ポリブタジエンゴムを含まない従来の接着組成物に比べて、ホットプレス工程時間が約3~5倍短縮され、工程効率が向上することができる。さらに、本発明の接着組成物からなる接着層は、接着性、耐熱性、電気絶縁性に優れていると共に、耐マイグレーション(anti-migration)特性及び柔軟性によって、カバーレイフィルムの信頼性を向上させることができる。
【0070】
このとき、上記2種以上のゴムが、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、及びアクリルゴムを含有する場合、上記エポキシ化ポリブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、及びアクリルゴムの使用比率(混合比率)は、1:1~8:0.5~5重量比であることができる。
【0071】
一例では、上記バインダー樹脂が、エポキシ化ポリブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、及びアクリルゴムを含有する場合、エポキシ樹脂とバインダー樹脂とを合わせた総量100重量部に対して、上記エポキシ化ポリブタジエンゴムの含有量は、約3~20重量部、具体的に約5~20重量部であり、上記アクリロニトリル-ブタジエンゴムの含有量は、約10~40重量部、具体的に約20~35重量部であり、上記アクリルゴムの含有量は、約10~40重量部、具体的に約10~20重量部であることができる。
【0072】
(c)硬化剤
【0073】
本発明の接着組成物は、硬化剤をさらに含むことができる。硬化剤は、エポキシ樹脂及びバインダー樹脂を硬化させる成分である。
【0074】
本発明で使用可能な硬化剤としては、当該技術分野で周知の硬化剤成分、例えば、酸無水物系硬化剤、アミン(amine)系硬化剤、フェノール系硬化剤などが挙げられる。
【0075】
具体的に、硬化剤としては、例えば、テトラヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、トリアルキルテトラヒドロフタル酸無水物、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物、フタル酸無水物、マレイン酸無水物、ピロメリット酸無水物などの酸無水物系硬化剤;メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホンなどの芳香族アミン系硬化剤;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミンなどの脂肪族アミン系硬化剤;フェノールアラルキル型フェノール樹脂、フェノールノボラック型フェノール樹脂、キシロック型フェノール樹脂、クレゾールノボラック型フェノール樹脂、ナフトール型フェノール樹脂、テルペン型フェノール樹脂、多官能型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン系フェノール樹脂、ナフタレン型フェノール樹脂、ビスフェノールAとレゾールから合成されたノボラック型フェノール樹脂などのようなフェノール系硬化剤;ジシアンジアミド(dicyandiamide)などの潜在性硬化剤などが挙げられるが、これらに限定されない。これらは、単独で使用、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0076】
このような硬化剤の含有量は、特に限定されず、一例では、エポキシ樹脂とバインダー樹脂とを合わせた総量100重量部に対して、約1~10重量部、具体的に約1~6重量部であることができる。他の一例では、硬化剤の含有量は、当該接着組成物の総量を基準に、約0.5~10重量%、具体的に約1~5重量%であることができる。
【0077】
(d)難燃剤
【0078】
本発明に係る接着組成物は、難燃剤をさらに含むことができる。難燃剤は、接着組成物に難燃性を付与する。
【0079】
本発明で使用可能な難燃剤は、当業界で周知のものであれば、制限なく使用することができ、例えば、ハロゲン系難燃剤(具体的に、臭素系難燃剤)、有機リン系難燃剤、有機系含窒素リン化合物、窒素化合物、シリコン系難燃剤、金属水酸化物などが挙げられる。具体的に、例えば、Decabromdiphenylethan(例えば、Firemaster-2100R)、ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモトルエン、ヘキサブロモビフェニル、デカブロモビフェニル、ヘキサブロモシクロデカン、デカブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、ヘキサブロモジフェニルエーテル、ビス(ペンタブロモフェノキシ)エタン、エチレン-ビス(テトラブロモフタルイミド)、テトラブロモビスフェノール、ポリ(臭素化ベンジルアクリレート)、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ビスフェノールA、臭素化(ポリスチレン)、ポリ(臭素化スチレン)などのようなハロゲン系難燃剤;メラミンホスフェート(melamine phosphate)、メラミンピロホスフェート(melamine pyrophosphate)、アンモニウムポリホスフェート(ammonium polyphosphate)、アルキルアミンホスフェート(alkylamine phosphate)、ピペラジンアシッドポリホスフェート(piperazine acid polyphosphate)、メラミンポリホスホネートなどのような窒素-リン含有難燃性、メラミン(melamine)、メラミンシアヌレート(melamine cyanurate)、トリフェニルイソシアヌレートなどのような含窒素難燃剤;トリフェニルホスフェート(triphenyl phosphate、TPP)、トリキシレニルホスフェート(trixylenyl phosphate、TXP)、トリクレシルホスフェート(tricresyl phosphate、TCP)、レゾルシニルジフェニルホスフェート(resorcinyl diphenyl phosphate、RDP)、フェニルジレゾルシニルホスフェート(phenyl diresorcinyl phosphate)、クレシルジフェニルホスフェート(cresyl diphenyl phosphate)、キシレニルジフェニルホスフェート(xylenyldiphenyl phosphate)、フェニル ジ(イソプロピルフェニル)ホスフェート(phenyl di(isopropylphenyl)phosphate)などのようなリン系難燃剤などが挙げられるが、これらに限定されない。これらは、単独で使用、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0080】
このような難燃剤の含有量は、特に制限されず、当業界で周知の通常の範囲内で適宜調節することができる。一例では、難燃剤の含有量は、エポキシ樹脂とバインダー樹脂とを合わせた総量100重量部に対して、約20~50重量部、具体的に約30~50重量部であることができる。他の一例では、難燃剤の含有量は、当該接着組成物の総量を基準に、約10~40重量%、具体的に約15~35重量%、より具体的に約20~30重量%であることができる。
【0081】
(e)無機フィラー
【0082】
本発明に係る接着組成物は、無機フィラーをさらに含むことができる。無機フィラーは、絶縁性、耐熱性、強度などの機械的物性、低応力性を向上させると共に、溶融粘度を調節することができる。
【0083】
本発明で使用可能な無機フィラーとしては、例えば、天然シリカ(natural silica)、溶融シリカ(fused silica)、アモルファスシリカ(amorphous silica)、結晶シリカ(crystalline silica)などのようなシリカ;水酸化アルミニウム(aluminum hydroxide、ATH)、ベーマイト(boehmite)、アルミナ、タルク(talc)、ガラス(例えば、球状ガラス)、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、マグネシア、クレイ、ケイ酸カルシウム、酸化マグネシウム(MgO)、酸化チタン、酸化アンチモン、ガラス繊維、ホウ酸アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、チタニア(例えば、TiO2)、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、滑石(talc)、雲母(mica)などが挙げられるが、これらに制限されない。このような無機フィラーは、単独で使用、又は2つ以上を混用して使用することができる。この中で、シリカ、アルミナ、及びチタニアは、低い誘電定数を有するため、樹脂層と金属層との間の熱膨張係数差を低減すると共に、樹脂層の誘電率及び誘電正接を低下することができる。
【0084】
このような無機フィラーの大きさ(例えば、平均粒径)、形状、及び含有量は、接着層の特性に影響を与える重要なパラメータ(parameter)である。
【0085】
具体的に、無機フィラーは、平均粒径(D50)が、約1~15μm、具体的に約3~8μmの範囲であることができる。この範囲では、無機フィラーの分散性に有利である。
【0086】
また、無機フィラーの形状は、特に限定されず、例えば、球状、フレーク状、樹枝状(dendrite)、円錐状、ピラミッド状、無定形などが挙げられる。
【0087】
本発明では、形状及び平均粒径が同一である1種の無機フィラーを単独で使用し、又は、形状及び/又は平均粒径が異なる2種以上の無機フィラーを混合して使用することができる。
【0088】
本発明の接着組成物において、無機フィラーの含有量は、特に限定されず、絶縁性、耐熱性、強度などの機械的物性、低応力性などを考慮して適宜調節することができる。但し、無機フィラーの含有量が過剰になると、接着層の接着性が低下し、また、接着層の流れ性及び充填性が低下することがある。一例として、無機フィラーの含有量は、エポキシ樹脂とバインダー樹脂とを合わせた総量100重量部に対して、約1~20重量部、具体的に約1~10重量部であることができる。他の一例として、当該接着組成物の総量を基準に、約0.5~10重量%、具体的に約1~7重量%、より具体的に約1~5重量%であることができる。
【0089】
(f)硬化促進剤
【0090】
本発明の接着組成物は、必要に応じて、硬化促進剤をさらに含むことができる。硬化促進剤は、接着組成物中の成分が完全に硬化できるように硬化時間を短縮させる触媒であって、当該技術分野で周知のものであれば、特に制限されない。例えば、イミダゾール系硬化促進剤、ホスホニウム系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、金属系硬化促進剤などが挙げられるが、これは、単独で使用、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0091】
本発明で使用可能なイミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-デシルイミダゾール、2-ヘキチルイミダゾール、2-イソプロピルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタンデシルイミダゾール、2-メチル-4-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシル-イミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシル-イミダゾールトリメリテート、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾールトリメリテート、2,4-ジアミノ-6-(2’-メチルイミダゾール-(1’)-エチル-s-トリアジン、2-フェシル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェシル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェシル-4-ベンジル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、4,4’-メチレン-ビス(2-エチル-5-メチルイミダゾール)、2-アミノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニル-4,5-ジ(シアノエトキシメチル)イミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリニウムクロライド、イミダゾール含有ポリアミドなどが挙げられるが、これらに制限されない。
【0092】
上記ホスホニウム系硬化促進剤としては、例えば、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド、ブチルトリフェニルホスホニウムクロライド、ブチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、エチルトリフェニルホスホニウムアセテート、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、エチルトリフェニルホスホニウムヨーダイド、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、テトラフェニルホスホニウムクロライド、又はテトラフェニルホスホニウムヨーダイドなどが挙げられるが、これらに制限されない。
【0093】
上記アミン系硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、テトラメチル-1,3-ブタンジアミン、エチルモルホリン、ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネンなどが挙げられるが、これらに制限されない。
【0094】
上記金属系硬化促進剤としては、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズなどの有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。上記有機金属錯体としては、例えば、コバルト(II)アセチルアセトネート、コバルト(III)アセチルアセトネートなどの有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトネートなどの有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトネートなどの有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトネートなどの有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトネートなどの有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトネートなどの有機マンガン錯体などが挙げられるが、これらに限定されない。上記有機金属塩としては、例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸スズ、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛などが挙げられるが、これに限定されない。
【0095】
このような硬化促進剤の含有量は、特に限定されず、一例では、エポキシ樹脂とバインダー樹脂とを合わせた総量100重量部に対して、約0.001~10重量部、具体的に約0.001~5重量部、より具体的に約0.01~1重量部であることができる。他の一例では、硬化促進剤の含有量は、当該接着組成物の総量を基準に、約0.0001~10重量%、具体的に約0.01~5重量%、より具体的に約1~3重量%であることができる。
【0096】
(g)溶媒
【0097】
本発明の接着組成物は、必要に応じて、溶媒をさらに含むことができる。
【0098】
本発明で使用可能な溶媒としては、反応に参加せず、かつ他の物質を容易に溶解できるものであれば、特に制限されず、また、乾燥ステップで容易に蒸発できるものが好ましい。例えば、当業界で周知のケトン(ketone)類、エステル(ester)類、アルコール(alcohol)類、エーテル(ether)類溶媒などが挙げられる。より具体的な溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ベンゼン、アセトン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアルデヒド、シクロヘキサノン、メタノール、エタノールなどが挙げられる。これらは、単独で使用、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0099】
本発明の接着組成物において、溶媒の含有量は、特に限定されない。一例では、溶媒は、液体状態の接着組成物が約300~2000cpsの粘度を有するように固形分の含有量を調節することができ、例えば、固形分の含有量を約20~40重量%の範囲に調節することが好適である。他の一例では、溶媒の含有量は、当該接着組成物の総量が100重量%になるように調節する残量であることができる。これにより、カバーレイフィルムの基材に対する接着組成物の塗布性が向上して作業効率が向上することができ、また、基材の表面に均一な接着層を形成することができる。
【0100】
(h)添加剤
【0101】
本発明に係る接着組成物は、必要に応じて、上述した成分の他に、当該技術分野で周知の添加剤を、当該組成物の使用目的及び使用環境に応じて選択的にさらに含むことができる。例えば、ゴム架橋剤、シランカップリング剤、レベリング剤(leveling agent)、帯電防止剤、分散剤などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0102】
このような添加剤の含有量は、特に限定されず、当該技術分野で周知の通常の範囲内で使用することができる。一例では、エポキシ樹脂とバインダー樹脂とを合わせた総量100重量部に対して、約0.001~10重量部、具体的に約0.01~5重量部、より具体的に約0.01~3重量部であることができる。他の一例では、当該接着組成物の総量を基準に、約0.0001~10重量%、具体的に約0.01~5重量%、より具体的に約0.1~3重量%であることができる。
【0103】
本発明で使用可能なゴム架橋剤としては、当業界で周知のものであれば、特に制限されず、例えば、加硫剤、有機過酸化物(organic peroxide)などが挙げられる。具体的には、硫黄、ジ-(2,4-ジクロロベンゾイル)-パーオキシド、ジベンゾイルパーオキシド、1,1-ジ-(tert-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、ブチル-4,4-ジ-(tert-ブチルパーオキシ)バレレート、ジクミルパーオキシド、ジ-(2-tert-ブチル-パーオキシイソプロピル)-ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルパーオキシ)-ヘキサン、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、ジ-tert-ブチルパーオキシドなどが挙げられる。
【0104】
このようなゴム架橋剤の含有量は、特に限定されない。一例では、ゴム架橋剤の含有量は、エポキシ樹脂とバインダー樹脂とを合わせた総量100重量部に対して、約0.1~20重量部、具体的に約0.1~10重量部、より具体的に約1~5重量部の範囲であることができる。他の一例では、ゴム架橋剤の含有量は、当該接着組成物の総量を基準に、約0.0001~10重量%、具体的に約0.01~5重量%、より具体的に約0.1~3重量%であることができる。
【0105】
また、本発明で使用可能なシランカップリング剤としては、当該技術分野で周知のものであれば、特に限定されず、例えば、エポキシ系、メタクリルオキシ系、アミノ系、ビニル系、メルカプト・スルフィド系、ウレイド系などのシランカップリング剤が挙げられ、単独で使用、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。このようなシランカップリング剤は、接着組成物の硬化時に、無機フィラーと他の成分との間の接着性を向上させることができる。一例では、シランカップリング剤は、エポキシ系シランカップリング剤であることができ、具体的にグリシジルオキシ(C1~C20)アルキルトリ(C1~C20)アルコキシシランであることができる。このようなシランカップリング剤としては、例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、又は3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランなどが挙げられる。
【0106】
上記シランカップリング剤の含有量は、特に限定されず、一例では、無機フィラー100重量部に対して、約0.01~10重量部、具体的に約0.1~5重量部であることができる。他の一例では、シランカップリング剤の含有量は、当該接着組成物の総量を基準に、約0.0001~10重量%、具体的に約0.01~5重量%、より具体的に約0.1~3重量%であることができる。
【0107】
また、本発明で使用可能なレベリング剤としては、当業界で周知のものであれば、特に制限されず、主にフッ素系レベリング剤などを使用することができる。
【0108】
このようなレベリング剤の含有量は、特に限定されず、当該技術分野で周知の通常の範囲内で使用することができる。一例として、レベリング剤の含有量は、全固形分100重量部に対して、約0.01~1重量部の範囲であることができる。他の一例として、レベリング剤の含有量は、当該接着組成物の総量を基準に、約0.0001~10重量%、具体的に約0.01~5重量%、より具体的に約0.1~3重量%であることができる。
【0109】
また、本発明で使用可能な分散剤としては、当業界で周知のものであれば、特に限定されず、例えば、脂肪酸塩(石鹸)、α-スルホ脂肪酸エステル塩(MES)、アルキルベンゼンスルホン酸塩(ABS)、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩(LAS)、アルキル硫酸塩(AS)、アルキルエーテル硫酸エステル塩(AES)、アルキル硫酸トリエタノールなどのような低分子陰イオン性(アニオン性)化合物;脂肪酸エタノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(AE)、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(APE)、ソルビトール、ソルビタンなどのような低分子非イオン系化合物;アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウムクロリド、アルキルピリジニウムクロリドなどのような低分子陽イオン性(カチオン性)化合物;アルキルカルボキシルベタイン、スルホベタイン、レシチンなどのような低分子両性系化合物;ナフタレンスルホン酸塩のホルマリン縮合物、ポリスチレンスルホン酸塩、ポリアクリル酸塩、ビニル化合物とカルボン酸系単量体との共重合体塩、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコールなどに代表される高分子水系分散剤などが挙げられる。また、市販の分散剤としては、例えば、DIC(DaiNippon Ink&Chemiclas)社製のF-114、F-177、F-410、F-411、F-450、F-493、F-494、F-443、F-444、F-445、F-446、F-470、F-471、F-472SF、F-474、F-475、F-477、F-478、F-479、F480SF、F-482、F-483、F-484、F-486、F-487、F-172D、MCF-350SF、TF-1025SF、TF-1117SF、TF-1026SF、TF-1128、TF-1127、TF-1129、TF-1126、TF-1130、TF-1116SF、TF-1131、TF1132、TF1027SF、TF-1441、TF-1442、TF-1740などが挙げられるが、これらに限定されない。これらは、単独で使用、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0110】
このような分散剤の含有量は、特に限定されず、当該技術分野で周知の通常の範囲内で使用することができる。一例として、分散剤の含有量は、エポキシ樹脂とバインダー樹脂とを合わせた総量100重量部に対して、約0.01~5重量部、具体的に約0.05~1重量部であることができる。他の一例として、分散剤の含有量は、当該接着組成物の総量を基準に、約0.0001~10重量%、具体的に約0.01~5重量%、より具体的に約0.05~1重量%であることができる。
【0111】
本発明に係る接着組成物の硬化温度は、約130℃以上であり、具体的に約130~200℃の範囲であることができる。
【0112】
本発明に係る接着組成物の粘度は、常温条件(具体的には、約25~30℃の温度)で約500~2000cpsであることができる。この場合、接着組成物の塗布性が向上して作業効率を向上させることができ、また、基材の表面に均一な厚さの接着層を形成することができる。
【0113】
本発明の接着組成物は、当該技術分野で周知の常法で製造することができる。例えば、エポキシ樹脂;エポキシ化ポリブタジエンゴム及び2種以上のゴム(例えば、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、アクリルゴムなど)を含有するバインダー樹脂;及び、選択的に硬化剤、無機フィラー、硬化促進剤、溶媒及び添加剤(例えば、ゴム架橋剤など)を、ボールミル、ビードミル、3本ロールミル(3 roll mill)、バスケットミル(basket mill)、ダイノ-ミル(dyno mill)、遊星(planetary)ミルなどの混合装備を用いて、室温~適宜昇温をした温度で混合及び撹拌して接着組成物を製造することができる。
【0114】
上記のような本発明の接着組成物は、接着性はもちろん、流れ性、充填性(埋め込み性)、耐マイグレーション性、耐熱性、難燃性、低伸縮性、柔軟性、絶縁性、耐変色性、耐湿性、耐化学薬品性、寸法安定性、成形性などに優れている。
【0115】
一例では、本発明に係る接着組成物の硬化物は、ASTM D1204試験法による伸縮率が、約0.1~1.0%の範囲であることができる。このように、本発明の接着組成物から形成される硬化物、すなわち接着層が低伸縮特性を有するため、ロールツーロール工程によってプリント回路基板を製造する時に、カバーレイフィルムが優れた寸法安定性を有し、これにより、プリント回路基板の品質、生産性、及び効率性が向上することができる。なお、上記接着組成物の硬化物は、半硬化~完全硬化状態で、例えば、硬化度が約40~80%、具体的に約40~70%のゲル化の範囲であることができる。
【0116】
他の一例では、本発明に係る接着組成物の硬化物は、約150~200℃での最低粘度(minimum viscosity)は、約1,000~10,000cPsの範囲であることができる。従って、本発明の接着組成物を含むカバーレイフィルムは、接着層の充填特性に優れているため、従来のカバーレイフィルムに比べて、ホットプレス工程時間を約3~5倍短縮し、工程効率を向上させることができる。
【0117】
具体的に、本発明に係る接着組成物の硬化物は、下記関係式1を満たすことができる。
【0118】
[関係式1]
【0119】
【0120】
(式中、
【0121】
T1は、温度180℃及び圧力8,800LBの条件下で、接着組成物Aの硬化物をプリント回路基板にホットプレスする際に、上記接着組成物Aが上記プリント回路基板のパターン同士の間に充填する時間であり;
【0122】
T2は、温度180℃及び圧力8,800LBの条件下で、当該接着組成物の硬化物がプリント回路基板のパターン同士の間に充填する時間であり、具体的には約30~90秒間であることができ;
【0123】
上記接着組成物Aは、当該接着組成物から、エポキシ化ポリブタジエンゴムを除くものであり;
【0124】
上記プリント回路基板は、回路パターンの厚さが35μmであり、回路パターンの幅が100μmであり、回路パターン同士の離間距離が100μmである。)
【0125】
他の一例では、本発明に係る接着組成物の硬化物は、剥離強度試験法(IPC-TM-650 2.4.8試験法)による剥離強度試験において、約1.2~2.0kgf/cm範囲の剥離強度を有することができる。このように、本発明の接着組成物からなる硬化物は、優れた接着性を有する。
【0126】
【0127】
<カバーレイフィルム>
【0128】
本発明は、上述の接着組成物を用いたカバーレイフィルムを提供する。
【0129】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るカバーレイフィルムを示す概略断面図であり、
図2は、本発明の第2の実施形態に係るカバーレイフィルムを示す概略断面図である。
【0130】
本発明に係るカバーレイフィルム10A、10Bは、プリント回路基板、特に、プリント回路基板の回路を保護するために使用されるカバーレイフィルムであって、ベース基材11;上記基材の一面上に配置され、上述の接着組成物から形成される接着層12;及び、上記接着層上に配置された離型基材13;を含む。また、必要に応じて、本発明は、上記ベース基材11の他面上に配置される表面保護基材14をさらに含むことができる。
【0131】
以下、
図1を参照して、本発明の第1の実施形態に係るカバーレイフィルム10Aについて説明する。
【0132】
図1に示されるように、本発明の第1の実施形態に係るカバーレイフィルム10Aは、ベース基材11、接着層12、及び離型基材13が順次積層された構造を有する。
【0133】
(1)ベース基材
【0134】
本発明に係るカバーレイフィルム10Aにおいて、ベース基材11は、接着層12によりプリント回路基板に取り付けられ、プリント回路基板の回路を保護する。
【0135】
一例では、ベース基材11は、絶縁性基材であることができる。この場合、カバーレイフィルムの低誘電特性を確保することができる。
【0136】
このようなベース基材11としては、当業界で周知のプラスチックフィルムであれば、制限なく使用可能である。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、アセチルセルロースブチレートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ポリアミドフィルム、アクリル樹脂フィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム、シクロオレフィン樹脂フィルムなどが挙げられる。このようなプラスチックフィルムは、透明あるいは半透明であることができ、又は、着色あるいは無着色のものであることができる。
【0137】
一例では、ベース基材11は、約300℃以下、具体的に約150~300℃の融点を有する熱可塑性高分子フィルムであることができる。具体的には、ベース基材11は、ポリエチレンナフタレート(polyethylene naphthalate、PEN)フィルムであることができる。これは、接着層の耐熱性に優れ、低融点の熱可塑性高分子フィルムに熱安定性を付与することができる。
【0138】
上記ベース基材の厚さは、特に限定されず、例えば、約5~50μmであることができる。
【0139】
(2)接着層
【0140】
本発明に係るカバーレイフィルム10Aにおいて、接着層12は、ベース基材11の一面上に配置され、カバーレイフィルム10Aをプリント回路基板の表面に接着させる。
【0141】
本発明の接着層12は、半硬化~完全硬化状態で、上述の接着組成物から形成される硬化物を含む。このとき、接着層12の硬化度(ゲル化度)は、約40~80%、具体的に約40~70%のゲル化範囲であることができる。
【0142】
但し、本発明では、接着組成物が、エポキシ樹脂、バインダー樹脂、及び無機フィラーを含むが、上記バインダー樹脂が、エポキシ化ポリブタジエンゴム及び2種以上のゴム(例えば、アクリロニトリル-ブタジエンゴム及びアクリルゴム)を含む。従って、本発明の接着層は、約150~200℃での最低粘度(minimum viscosity)が、約1,000~10,000cPsの範囲に制御され、優れた流れ性及び充填性(埋め込み性)を有することができる。
【0143】
このように、本発明の接着層12は、流れ性に優れているため、従来のカバーレイフィルムに比べて、ホットプレス工程時間を、約3~5倍程度短縮し、工程効率を向上させることができる。また、本発明の接着層12は、約30~90秒(具体的には約30~60秒)以内で、充填性(埋め込み性)に優れているため、カバーレイフィルムとプリント回路基板との間のボイド(void)発生による不良を抑制することができる。また、本発明の接着層12は、剥離強度試験法(IPC-TM-650 2.4.8試験法)による剥離強度試験において、1.2~2.0kgf/cm範囲の剥離強度を有することができる。また、本発明の接着層12は、ASTM D 1204試験法に準拠して、伸縮率が0.1~1.0%であり、低伸縮特性及び寸法安定性に優れているため、ロールツーロール工程によってプリント回路基板を製造する時に、プリント回路基板の品質、生産性及び効率性が向上することができる。また、本発明の接着層12は、耐マイグレーション性及び耐変色性に優れているため、カバーレイフィルムがプリント回路基板を保護しながら、接着層によるプリント回路基板の短絡発生を極力抑制することができる。さらに、接着層は、耐熱性、耐湿性、耐化学薬品性などに優れているため、プリント回路基板の信頼性を向上させることができる。
【0144】
上記接着層の厚さは、特に限定されず、例えば、約10~50μmであることができる。但し、接着層が、上述の範囲内の厚さを有する場合、フィルムの製膜性、厚さ均一性などが向上することができる。
【0145】
(3)離型基材
【0146】
本発明に係るカバーレイフィルム10Aにおいて、離型基材13は、カバーレイフィルムのプリント回路基板への適用前において、接着層12上に配置され、接着層12の外部環境からの異物による汚染を防ぐものであり、カバーレイフィルムがプリント回路基板の一面又は両面上に適用される前に剥離して除去される。
【0147】
このような離型基材13としては、当業界に周知のものであって、接着層12が損傷することなく剥離可能なものであれば、特に限定されず、例えば、フッ素系離型基材(fluorine release film)、具体的に白金触媒が自体に含まれたフッ素シリコン離型剤、フッ素系硬化剤と接着性添加剤とが混合されたフッ素離型剤などが挙げられる。
【0148】
本発明において、離型基材の離型力は、特に限定されず、例えば、ASTM D3330により測定された接着層に対する離型基材の離型力は、約20~150gf/inchであることができる。
【0149】
また、離型基材の厚さは、特に限定されない。例えば、接着層の厚さT2に対する離型基材の厚さT3の割合(T3/T2)は、約1~5であることができる。
【0150】
【0151】
以下、
図2に示される本発明の第2の実施形態に係るカバーレイフィルム10Bについて説明する。
【0152】
図2に示されるように、第2の実施形態に係るカバーレイフィルム10Bは、ベース基材11;ベース基材の一面に配置された、上述の接着組成物から形成される接着層12;上記接着層12上に配置された離型基材13;及び、ベース基材11の他面上に配置される表面保護基材14;を含む。
【0153】
第2の実施形態に係るカバーレイフィルム10Bにおいて、ベース基材11、接着層12、及び離型基材13に関する説明は、第1の実施形態と同様であるため、省略する。
【0154】
第2の実施形態に係るカバーレイフィルム10Bにおいて、表面保護基材14は、ベース基材11の他面(具体的には、外部表面)上に配置される部分であり、ベース基材11の外部からの異物による汚染を防ぎ、カバーレイフィルムをホットプレス工程でプリント回路基板に貼り付ける際、フィルムの表面、特に基材の表面を保護する。このような表面保護基材14は、カバーレイフィルムをプリント回路基板に適用する時に、必要に応じて剥離して除去することができる。
【0155】
本発明で使用可能な表面保護基材としては、当業界で周知の保護フィルムであれば、特に制限されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、アセチルセルロースブチレートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート、フッ素樹脂フィルム、ポリアミドフィルム、アクリル樹脂フィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム、シクロオレフィン樹脂フィルムなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0156】
なお、表面保護基材14は、少なくとも一面、具体的にベース基材11と接触する表面がマット(matt)な表面であることができる。この場合、表面保護基材14のマットな面は、基材に対して約30~150gf/inch範囲の剥離力を有することができる。このような表面保護基材14は、カバー遮蔽フィルムがフレキシブルプリント回路基板に貼り付けられた後、カバーレイフィルムから簡単に剥離して除去することができる。
【0157】
また、表面保護基材の厚さは、特に限定されず、例えば、約20~150μmであり、具体的には約80~120μmであることができる。
【0158】
【0159】
本発明のカバーレイフィルム10A、10Bは、上述の接着組成物を用いて接着層を形成する以外は、当該分野で周知の常法により製造することができる。
【0160】
一例として、本発明に係るカバーレイフィルムの製造方法は、ベース基材の一面上に、上述の接着組成物をコート及び熱硬化して接着層を形成した上で、上記接着層上に離型基材を配置した後、ラミネーションを行い、必要に応じて上記ベース基材の他面に表面保護基材をラミネートして製造することができる。
【0161】
上記接着組成物の塗布方法としては、当該分野で周知の塗布方法、例えば、ディップコート法、エアナイフコート法、カーテンコート法、ワイヤバーコート法、グラビアコート法、コンマコート法、スロットコート法、エクストルージョンコート法、スピンコート法、スリットスキャン法、インクジェット法などが挙げられる。
【0162】
上記熱硬化工程は、当該分野で周知の条件下で適宜実施することができる。例えば、熱硬化は、約130℃以上(具体的に約130~200℃、より具体的に約130~150℃)で約5~10分間行うことができる。このような熱硬化により形成された接着層は、半硬化状態で、硬化度が約40~80%である。
【0163】
上述のように、本発明のカバーレイフィルムは、接着性、流れ性、充填性(埋め込み性)、低伸縮性、耐マイグレーション性、耐変色性、耐熱性、耐湿性、耐化学薬品性などに優れた接着層を含むため、プリント回路基板の製造時に、ホットプレス工程の効率を向上させることができ、プリント回路基板の不良率を低減させることができ、ひいてはプリント回路基板の信頼性を向上させることができる。また、本発明のカバーレイフィルムは、ロールツーロール工程によるプリント回路基板の製造時に、プリント回路基板の品質、生産性及び効率を向上させることができる。
【0164】
【0165】
<プリント回路基板>
【0166】
本発明は、上述のカバーレイフィルムを含むプリント回路基板を提供する。
【0167】
一例では、本発明のプリント回路基板は、基板本体;及び、上記本体の少なくとも一面上に配置された上述のカバーレイフィルム10A、10B;を含む。この場合、上記カバーレイフィルム10A、10Bの接着層12は、流れ性及び充填性に優れている。よって、60倍顕微鏡を用いた外観検査において、カバーレイフィルム10A、10Bと基板本体との間でのボイド(void)発生が約0%である。また、本発明のプリント回路基板は、上述のカバーレイフィルム10A、10Bが、耐熱性、吸湿耐熱性、耐変色性に優れているため、優れた信頼性を有する。
【0168】
【0169】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより詳述する。しかし、本発明は、これらの例に限定されない。
【実施例】
【0170】
[実施例1]
【0171】
1-1.接着組成物の製造
【0172】
下記表1に記載の組成により各成分を混合して接着組成物を製造した。下記表1中、エポキシ樹脂、エポキシ化ポリブタジエンゴム(EBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、アクリル樹脂(acrylic rubber、AR)、硬化促進剤、無機フィラー、難燃剤、分散剤、シラン系カップリング剤、及び硬化剤の含有量単位は、重量%であり、接着組成物の総量を基準にしている。また、表1に記載の各組成物を構成する原料物質の仕様は、下記表3の通りである。
【0173】
1-2.カバーレイフィルムの製造
【0174】
ベース基材であるポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ:約50μm)の一面上に、実施例1-1で製造された接着組成物を塗布した後、約150℃で約5分間、熱硬化させて接着層(硬化度:約40%、厚さ:約38μm)を形成した。次に、上記接着層上にフッ素系離型基材(厚さ:約116μm)を積層してカバーレイフィルムを製造した。
【0175】
【0176】
[実施例2~4及び比較例1~12]
【0177】
下記表1~2に記載の組成により各成分を混合した以外は、実施例1と同様にして実施例2~4及び比較例1~12の接着組成物及びカバーレイフィルムをそれぞれ製造した。下記表1~2に記載の各組成物を構成する原料物質の仕様は、下記表3の通りである。
【0178】
【0179】
【0180】
【0181】
【0182】
[実験例1]物性評価
【0183】
実施例1~4及び比較例1~12でそれぞれ製造されたカバーレイフィルムの物性評価を下記のように実施し、その結果を下記表4~5に示す。
【0184】
1)剥離強度(Peel Strength、P/S)
【0185】
カバーレイフィルム(離型基材は除く。)を、銅箔(厚さ:35μm、大きさ:5cm×5cm)に、温度160℃及び圧力5,700LBの条件下で、1時間、ホットプレスを行い、製品を準備した。次に、IPC-TM-650 2.4.8試験法に従って、50.8mm/minの剥離速度でカバーレイフィルムの180度剥離強度を測定した。
【0186】
2)半田フロート(Solder Floating)(S/F)
【0187】
カバーレイフィルム(離型基材は除く。)を、プリント回路基板(回路パターンの厚さ:35μm、幅:100μm、パターン同士の離間距離:100μm)に、温度160℃及び圧力5,700LBの条件下で、1時間、ホットプレスを行い、製品を準備した。次に、260℃の半田槽に、製品を10秒間フローティング(floating)させた後、製品の外観にブラスター(blaster)や層間剥離(delamination)が発生したか否かを確認し、カバーレイフィルム中の接着層の耐熱性を評価した。このとき、製品の外観にブラスター/層間剥離が発生した場合は「fail」と、ブラスター/剥離が発生しない場合は「Pass」とした。
【0188】
3)リフロー(Reflow)(@260℃)
【0189】
カバーレイフィルム(離型基材は除く。)を、銅箔(厚さ:35μm、大きさ:50mm×50mm)に、温度160℃及び圧力5,700LBの条件下で、1時間、ホットプレスを行い、製品を準備した。次に、温度240℃で30秒間、リフロー(reflow)を行った。リフロー後、カバーレイと銅箔との界面でブラスター(blaster)や層間剥離(delamination)が発生した場合は「fail」と、ブラスター/剥離が発生しない場合は「Pass」とした。
【0190】
4)充填性
【0191】
温度180℃及び圧力8,800LBの条件下で、カバーレイフィルム(離型基材は除く。)を、プリント回路基板(回路パターンの厚さ:35μm、幅:300μm、パターン同士の離間距離:100μm)に、ホットプレスを行った(
図3参照)。このとき、時間によって、プレスしながらプリント回路基板のパターン同士の間にカバーレイフィルムの接着層が充填される時点を確認した。なお、
図3(a)は、カバーレイフィルムの接着層がプリント回路基板の回路パターン同士の間に充填された状態で、充填性がPassである回路を例示する写真であり、
図3(b)は、カバーレイフィルムの接着層がプリント回路基板の回路パターン同士の間に未充填の状態で、充填性がFailである回路を例示する写真である。
【0192】
5)伸縮率
【0193】
カバーレイフィルム(離型基材は除く。)を、200mm×300mmの大きさに切り出してサンプルを準備した。
図4に示されるように、準備されたサンプルの4角部に、ドリル(直径:1mm以下)でホール(hole)を開けた。次に、3次元測定器を用いて上記ホール間の距離(A-B、C-D、A-C、B-D)をそれぞれ測定した(
図4参照)。次に、上記サンプルを150℃のオーブンに入れ、30分間加熱した後、常温(23℃、50%)で24時間安定化させた。安定化完了したサンプルに対して、上記ホール間の距離を測定した後、製品の伸縮率を下記式1によって計算した。
【0194】
[数学式1]
【0195】
【0196】
(式1中、
【0197】
(A-B)Fは、オーブン加熱後、サンプル内のA-B間の距離であり、
【0198】
(A-B)Iは、オーブン加熱前、サンプル内のA-B間の距離であり、
【0199】
(C-D)Fは、オーブン加熱後、サンプル内のC-D間の距離であり、
【0200】
(C-D)Iは、オーブン加熱前、サンプル内のC-D間の距離である。)
【0201】
6)難燃性
【0202】
UL-94規格のVTM試験法によって次のように評価した。
【0203】
カバーレイフィルムの試験片を、200mm×50mmの規格として準備した後、上記試験片を棒(Mandrel)(直径:12mm)に巻き付けて上部をテーピングし、クランプを用いて固定した。次に、固定された試験片に、バーナーで3秒間、2回接炎した後、製品の燃焼状態から、難燃性を判断した。このとき、VTM-0レベルである場合は、○、VTM-1レベルである場合は、△、VTM-2レベルの場合は、Xと表記した。
【0204】
【0205】