(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-22
(45)【発行日】2024-03-04
(54)【発明の名称】消費電力監視装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01R 11/00 20060101AFI20240226BHJP
G06Q 50/06 20240101ALI20240226BHJP
H02J 3/14 20060101ALI20240226BHJP
【FI】
G01R11/00 D
G06Q50/06
H02J3/14
(21)【出願番号】P 2022564880
(86)(22)【出願日】2020-11-25
(86)【国際出願番号】 JP2020043804
(87)【国際公開番号】W WO2022113201
(87)【国際公開日】2022-06-02
【審査請求日】2022-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】妻鹿 利宏
(72)【発明者】
【氏名】成井 智祐
(72)【発明者】
【氏名】村山 修一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 冬樹
(72)【発明者】
【氏名】吉村 玄太
【審査官】田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/090172(WO,A1)
【文献】特開2018-124727(JP,A)
【文献】特開2016-165209(JP,A)
【文献】国際公開第2015/151558(WO,A1)
【文献】特開2013-009500(JP,A)
【文献】国際公開第2011/024366(WO,A1)
【文献】特開平09-009502(JP,A)
【文献】特開平04-372046(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G01R 11/00-11/06、
21/00-22/10、
35/00-35/06、
H02J 13/00、
G06Q 10/00-10/10、
30/00-30/05、
50/00-50/20、
50/26-99/00、
G16Z 99/00、
H02J 3/00-5/00、
13/00、
F24F 11/00-11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設備稼働履歴情報を参照することにより、設備の消費電力を解析するための基準となる基準期間及び解析の対象となる対象期間それぞれにおいて、所定のイベントの発生時刻を抽出する発生時刻抽出手段と、
前記基準期間における前記所定のイベントの発生時刻の分布から得られる前記設備の稼働パターンに対する、前記対象期間における前記所定のイベントの発生時刻の分布から得られる設備の稼働パターンの変化度を算出する変化度算出手段と、
前記変化度算出手段により算出された変化度を出力する出力制御手段と、
を有することを特徴とする消費電力監視装置。
【請求項2】
前記所定のイベントは、前記設備の電源がオン又はオフされた場合であることを特徴とする請求項1に記載の消費電力監視装置。
【請求項3】
前記所定のイベントは、前記設備が空調設備の場合、前記空調設備の設定が所定の発生条件に合致するよう変更された場合であることを特徴とする請求項1に記載の消費電力監視装置。
【請求項4】
前記変化度算出手段は、KLダイバージェンス又はJSダイバージェンスを変化度として算出することを特徴とする請求項1に記載の消費電力監視装置。
【請求項5】
前記変化度算出手段は、KS検定統計量又はアンダーソン・ダーリング検定統計量を変化度として算出することを特徴とする請求項1に記載の消費電力監視装置。
【請求項6】
前記変化度算出手段は、前記所定のイベントとして複数のイベントが設定されている場合、イベント毎に変化度を算出し、算出した各イベントの変化度に重み付けをして、単一の変化度を算出することを特徴とする請求項1に記載の消費電力監視装置。
【請求項7】
コンピュータを、
設備稼働履歴情報を参照することにより、設備の消費電力を解析するための基準となる基準期間及び解析の対象となる対象期間それぞれにおいて、所定のイベントの発生時刻を抽出する発生時刻抽出手段、
前記基準期間における前記所定のイベントの発生時刻の分布から得られる前記設備の稼働パターンに対する、前記対象期間における前記所定のイベントの発生時刻の分布から得られる設備の稼働パターンの変化度を算出する変化度算出手段、
前記変化度算出手段により算出された変化度を出力する出力制御手段、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消費電力監視装置及びプログラム、特に消費電力の変化の検出に関する。
【背景技術】
【0002】
オフィスビルでは、自物件の過去の実績、例えば過去1年間の消費電力や設備稼働履歴等を参考にして、今後1年間の消費電力を予測し、省エネ制御計画を立案する場合がある。ただ、設備の変更、例えば設備の更新や運用パターンの変更等、設備に対して何らかの変更があると、設備の消費電力や稼働パターンが変わる可能性が生じうる。従って、このような変化を消費電力の予測に反映させないと、省エネ制御計画を高精度に立案できなくなってしまう場合がある。
【0003】
そこで、従来では、設備毎に消費電力の電流波形と電圧波形とを計測するようにし、その計測値から推定により得られた電力に、消費電力の変動量の特徴を表す電力消費パターンと一致しない変化が表れた場合、推定した電力を補正する技術が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-102526号公報
【文献】特開2017-067427号公報
【文献】特開2016-058029号公報
【文献】特開2019-049404号公報
【文献】特開2017-097578号公報
【文献】特開2007-226415号公報
【文献】特開2014-017542号公報
【文献】国際公開第2017/090172号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したように、設備の稼働パターンが変化すると、設備の消費電力にも変化が表れてくる可能性がある。しかしながら、従来技術においては、各設備の消費電力の変化を認識するためには、設備毎の消費電力を計測できるということが前提となるが、その計測のための設備コストがかかってしまう。
【0006】
本発明は、設備毎の消費電力を計測しなくても各設備の消費電力の変化の可能性を通知できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る消費電力監視装置は、設備稼働履歴情報を参照することにより、設備の消費電力を解析するための基準となる基準期間及び解析の対象となる対象期間それぞれにおいて、所定のイベントの発生時刻を抽出する発生時刻抽出手段と、前記基準期間における前記所定のイベントの発生時刻の分布から得られる前記設備の稼働パターンに対する、前記対象期間における前記所定のイベントの発生時刻の分布から得られる設備の稼働パターンの変化度を算出する変化度算出手段と、前記変化度算出手段により算出された変化度を出力する出力制御手段と、を有するものである。
【0008】
また、前記所定のイベントは、前記設備の電源がオン又はオフされた場合であるものとする。
【0009】
また、前記所定のイベントは、前記設備が空調設備の場合、前記空調設備の設定が所定の発生条件に合致するよう変更された場合であるものとする。
【0010】
また、前記変化度算出手段は、KLダイバージェンス又はJSダイバージェンスを変化度として算出するものである。
【0011】
また、前記変化度算出手段は、KS検定統計量又はアンダーソン・ダーリング検定統計量を変化度として算出するものである。
【0012】
また、前記変化度算出手段は、前記所定のイベントとして複数のイベントが設定されている場合、イベント毎に変化度を算出し、算出した各イベントの変化度に重み付けをして、単一の変化度を算出するものである。
【0013】
本発明に係るプログラムは、コンピュータを、設備稼働履歴情報を参照することにより、設備の消費電力を解析するための基準となる基準期間及び解析の対象となる対象期間それぞれにおいて、所定のイベントの発生時刻を抽出する発生時刻抽出手段、前記基準期間における前記所定のイベントの発生時刻の分布から得られる前記設備の稼働パターンに対する、前記対象期間における前記所定のイベントの発生時刻の分布から得られる設備の稼働パターンの変化度を算出する変化度算出手段、前記変化度算出手段により算出された変化度を出力する出力制御手段、として機能させるためのものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、設備毎の消費電力を計測しなくても各設備の消費電力の変化の可能性を通知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施の形態における省エネ支援装置を示すブロック構成図である。
【
図2】本実施の形態における省エネ支援装置のハードウェア構成図である。
【
図3】本実施の形態における省エネ支援処理を示すフローチャートである。
【
図4】本実施の形態において、基準期間及び対象期間の各期間におけるイベントの発生回数を確率密度分布で示す図である。
【
図5】本実施の形態において、基準期間及び対象期間の各期間におけるイベントの発生回数を累積確率分布で示す図である。
【
図6】本実施の形態において、ユーザに提示する変化度に関する情報の表示の一例を示す図である。
【
図7】本実施の形態において、ユーザに提示する変化度に関する情報の表示の他の例を示す図である。
【
図8】本実施の形態において、ユーザに提示する変化度に関する情報の表示の他の例を示す図である。
【
図9】本実施の形態において、ユーザに提示する変化度に関する情報の表示の他の例を示す図である。
【
図10】本実施の形態において、ユーザに提示する変化度に関する情報の表示の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づいて、本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0017】
図1は、本実施の形態における省エネ支援装置10を示すブロック構成図である。本実施の形態における省エネ支援装置10は、本発明に係る消費電力監視装置の一実施の形態であり、消費電力監視装置が有する機能を利用して、省エネ制御計画立案に有用な情報を計画立案者等に提供する装置である。本実施の形態における省エネ支援装置10は、パーソナルコンピュータ(PC)等の従前から存在する汎用的なハードウェア構成で実現できる。
【0018】
図2は、本実施の形態における省エネ支援装置10を形成するコンピュータのハードウェア構成図である。省エネ支援装置10は、
図2に示すようにCPU1、ROM2、RAM3、記憶手段としてのハードディスクドライブ(HDD)4、通信手段として設けられたネットワークインタフェース(IF)5、マウスやキーボード等の入力手段及びディスプレイ等の表示手段を含むユーザインタフェース6を内部バス7に接続して構成される。
【0019】
図1には、省エネ支援装置10及び設備管理装置20が示されている。省エネ支援装置10及び設備管理装置20は、図示しないネットワークにより通信可能に接続される。
【0020】
設備管理装置20は、ビル等の施設に設置されている空調、照明等の各設備から直接得られるデータ又は設備に対応させて設置されているセンサ等から計測データ等を収集し、管理する。収集するデータには、電源のオンオフ、各設備の状態や設定値を示すデータ等が含まれている。収集されたデータは、適宜処理されることによって、設備の稼働状態を示す設備稼働履歴情報が生成され、設備稼働履歴情報記憶部21に蓄積される。設備稼働履歴情報は、データの収集日時、対応する設備の識別情報、設備種別、データの種別、状態値、設定値、計測値等のデータ値等を含む。
【0021】
省エネ支援装置10は、設備稼働履歴情報を解析することによって計画立案支援情報を生成し、省エネ制御計画の立案に役立つ支援情報として計画立案者等のユーザに提供する。省エネ支援装置10は、設備稼働履歴情報取得部11、イベント発生時刻抽出部12、変化度算出部13及び表示制御部14を有している。なお、本実施の形態の説明に用いない構成要素については、図から省略している。
【0022】
設備稼働履歴情報取得部11は、ユーザにより指定された基準期間及び指定期間に含まれる設備稼働履歴情報を設備管理装置20から取得する。イベント発生時刻抽出部12は、取得された設備稼働履歴情報を参照して、基準期間及び対象期間それぞれにおいて、所定のイベントの発生時刻を抽出する。変化度算出部13は、基準期間における所定のイベントの発生時刻の分布から得られる設備の稼働パターンに対する、対象期間における所定のイベントの発生時刻の分布から得られる設備の稼働パターンの変化度を算出する。表示制御部14は、変化度算出部13により算出された変化度を可視化できるようにディスプレイへの表示制御を行う。
【0023】
本実施の形態では、消費電力の変化を検出するために、基準期間における設備の稼働パターンを基準にして、対象期間における設備の稼働パターンがどれだけ変化しているのかということを「変化度」という指標にて表すことを特徴としている。従って、本実施の形態でいう「基準期間」というのは、変化度を算出する際の基準となる設備の稼働パターンを求める期間である。一方、「対象期間」は、変化度を算出する際に基準期間の稼働パターンと比較対象となる稼働パターンを得る期間である。つまり、基準期間は、設備の稼働パターンに基づき設備の消費電力を解析するための基準となる期間である。対象期間は、設備の稼働パターンに基づき設備の消費電力を解析するため期間である。
【0024】
基準期間及び対象期間は、共に設備稼働履歴情報が得られていることから過去であることは明らかである。そして、本実施の形態では、基準期間に対する対象期間の消費電力の変化の度合いを得るので、基準期間は、対象期間より過去である。例えば、対象期間が今週、今月、今年の場合、基準期間は前週、前月、前年としてもよい。また、基準期間と対象期間は連続していなくてもよい。例えば、対象期間が今月の場合、基準期間を前年の同月としてもよい。また、対象期間は、比較する上で基準期間と同じ期間長とするのが好適であるが、必ずしも同じ期間長とする必要はない。例えば、特定の制御がされている期間とされていない期間などのように所定の期間の設定条件に従って各期間の期間長が特定されるようにしてもよい。
【0025】
省エネ支援装置10における各構成要素11~14は、省エネ支援装置10を形成するコンピュータと、コンピュータに搭載されたCPU1で動作するプログラムとの協調動作により実現される。
【0026】
また、本実施の形態で用いるプログラムは、通信手段により提供することはもちろん、CD-ROMやUSBメモリ等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して提供することも可能である。通信手段や記録媒体から提供されたプログラムはコンピュータにインストールされ、コンピュータのCPUがプログラムを順次実行することで各種処理が実現される。
【0027】
次に、本実施の形態における省エネ支援処理について、
図3に示すフローチャートを用いて説明する。
【0028】
まず、ユーザは、省エネ支援装置10のディスプレイに表示されている所定の期間指定画面(図示せず)から、消費電力の変化の程度を確認したい基準期間及び対象期間を入力指定する。設備稼働履歴情報取得部11は、ユーザにより指定された基準期間及び対象期間を受け付けると(ステップ110)、設備管理装置20から、基準期間及び対象期間それぞれに含まれる設備稼働履歴情報を取得する(ステップ120)。
【0029】
続いて、イベント発生時刻抽出部12は、取得された設備稼働履歴情報を参照して、基準期間及び対象期間それぞれにおいて、所定のイベントの発生時刻を抽出する(ステップ130)。
【0030】
所定のイベントは、設備稼働履歴情報に含まれるデータの種別及びデータ値から特定できる。所定のイベントとしては、例えば、設備の電源のオン又はオフである。具体的には、電源がオフからオンに、また、その逆にオンからオフに切り替わったという状態の変化である。また、設備が空調設備の場合、空調設備の設定が所定の発生条件に合致するよう変更されるイベントである。ここでいう所定の発生条件というのは、例えば空調設備の設定温度が上げられた若しくは下げられた場合、あるいは所定の温度以上、例えば2度以上、上げられた若しくは下げられた場合などである。また、空調設備の設定温度が25度に設定される場合などである。また、空調設備の風量においても同様に、所定の閾値以上、上げられた、若しくは下げられた、あるいは強に設定された場合などである。上記例示した所定のイベントの発生は、設備稼働履歴情報を解析することで検出できる。
【0031】
なお、所定のイベントは、1つのみとする必要はなく、複数のイベントにより構成されていてもよい。ただ、抽出するイベントは、比較のために基準期間及び対象期間で同じにする。
【0032】
所定のイベントは、予め設定しておいてもよい。あるいは、省エネ支援処理を実施させる際に、基準期間及び対象期間と合わせてユーザに指定させるようにしてもよい。また、所定のイベントの発生を確認する設備を指定させるようにしてもよい。ここでは、処理対象となる設備は、所定のイベントに組み込まれて設定されているか(たとえば、所定のイベントとして「設備Aがオン」と設定)、あるいはユーザによって指定されるなどして、1つの機器に限定されているものとして説明する。
【0033】
続いて、変化度算出部13は、基準期間及び対象期間毎に、抽出したイベントの発生時刻の分布を得る(ステップ140)。
【0034】
図4は、基準期間及び対象期間の各期間におけるイベントの発生回数を確率密度分布で示す図である。
図4において、横軸は時間であり、縦軸は確率密度分布である。横軸の時間は、1日24時間で示している。つまり、各期間においてイベントの発生を時刻毎に集計し、その集計値が各時刻のイベント発生回数となる。そして、各時刻のイベント発生回数の当該期間におけるイベント発生回数を占める割合が確率密度分布となる。従って、確率密度分布を時刻t(=0~24)で積分すると1.0になる。
【0035】
変化度算出部13は、基準期間における所定のイベントの発生時刻の分布から、処理対象の設備における稼働パターン(
図4に示す破線)を得ることができる。同様に、変化度算出部13は、対象期間における所定のイベントの発生時刻の分布から、処理対象の設備における稼働パターン(
図4に示す実線)を得ることができる。
【0036】
続いて、変化度算出部13は、各期間の稼働パターンを対比することによって、基準期間に対応する稼働パターンに対する、対象期間に対応する稼働パターンの変化度を算出する(ステップ150)。本実施の形態では、分布のKL(Kullback-Leibler)ダイバージェンスを変化度として算出する。基準期間におけるイベントの発生時刻の分布(稼働パターン)をp(t)、対象期間におけるイベントの発生時刻の分布(稼働パターン)をq(t)とすると、変化度(KLダイバージェンスKL(p||q))は、
KL(p||q)=Σtp(t)log(p(t)/q(t))
という計算式にて算出できる。
【0037】
また、変化度算出部13は、分布のJS(Jensen-Shannon)ダイバージェンスを変化度として算出してもよい。この場合、変化度(JSダイバージェンスJS(p||q))は、
JS(p||q)=(KL(p||q)+KL(q||p))/2
という計算式にて算出できる。
【0038】
また、変化度算出部13は、累積分布のKS(Kolmogorov-Smirnov)検定統計量を変化度として算出してもよい。
図5は、基準期間及び対象期間の各期間におけるイベントの発生回数を累積確率分布で示す図である。
図5において、横軸は時間であり、縦軸は累積確率分布である。
【0039】
変化度算出部13は、基準期間における所定のイベントの発生時刻の累積分布から、処理対象の設備における稼働パターン(
図5に示す破線)を得ることができる。同様に、変化度算出部13は、対象期間における所定のイベントの発生時刻の累積分布から、処理対象の設備における稼働パターン(
図5に示す実線)を得ることができる。
【0040】
基準期間におけるイベントの発生時刻の累積分布(稼働パターン)をP(t)、対象期間におけるイベントの発生時刻の分布(稼働パターン)をQ(t)とすると、変化度(KS検定統計量KS(P,Q))は、
KS(P,Q)=supt|P(t)-Q(t)|
という計算式にて算出できる。
【0041】
また、その他にもアンダーソン・ダーリング検定統計量を変化度として算出してもよい。
【0042】
ところで、前述したように、所定のイベントとして複数のイベントが設定可能である。複数のイベントが設定されている場合、変化度算出部13は、イベント毎に変化度を算出する。そして、算出した各イベントの変化度の平均値、中央値、最大値、最小値等を算出することによって、当該設備に対して単一の変化度を算出する。この際、イベントによって重み付けをしてもよい。例えば、設備の電源のオンオフのイベントは、消費電力に対する影響が相対的に大きいので、相対的に大きい重み付けとする。また、空調設備の温度設定を1度上げるイベントは、消費電力に対する影響が相対的に小さいので、相対的に小さい重み付けとする。
【0043】
変化度が相対的に大きい値を示すということは、基準期間における設備の稼働パターンに対して、対象期間における稼働パターンが相対的に大きく変化したということである。稼働パターンの変化は、イベントの発生時刻や発生回数が変わったことによって起こりうる。イベントの発生時刻の変化だけだと、発生回数に変化がないので、設備の消費電力は、大きく変化しないかもしれない。しかしながら、イベントの発生回数の変化は、設備の消費電力に変化をもたらす。例えば、設備が空調設備の場合、夏場において設定温度を下げるイベントの回数が増えたとすると、消費電力が増加すると考えられる。その反対に、冬場において設定温度を下げるイベントの回数が増えたとすると、消費電力が減少すると考えられる。このような場合、消費電力が相対的に大きく変化する。
【0044】
そこで、表示制御部14は、変化度が所定の閾値以上の場合、消費電力が大きく変化したことと判断し、ユーザに通知するようにする。これにより、ユーザは、省エネ制御計画の見直しが必要か否かの検討に入ることができる。ただ、本実施の形態では、変化度の大小に限らず、変化度算出部13が変化度を算出すると、表示制御部14に、変化度に関する情報をディスプレイに表示させるようにした(ステップ160)。
【0045】
なお、情報の出力先は、ディスプレイに限る必要はない。例えば、情報をファイルに保存して、HDD4などの記憶手段に出力することによって記憶させるようにしてもよい。あるいは、情報をネットワーク経由で他の装置に送信するようにしてもよい。本実施の形態では、情報をディスプレイに表示させるので、表示制御部14を設けたが、情報の出力先に応じた出力制御手段を設ければよい。
【0046】
図6~8は、ユーザに提示する変化度に関する情報(以下、単に「情報」)の表示例を示す図である。
図6には、基準期間及び対象期間それぞれの、ある設備(例えば、設備A)の電源オンイベントの発生時刻の確率密度分布が示されている。
図7には、基準期間及び対象期間それぞれの、設備Aの電源オフイベントの発生時刻の確率密度分布が示されている。
図8には、基準期間及び対象期間それぞれの、設備Aの電源オンイベントの発生時刻の累積分布が示されている。各図とも横軸は時間であり、
図4で説明したように、1日24時間を示している。
図6,7の縦軸は確率密度分布であり、
図8の縦軸はその累積分布である。
【0047】
図6は、前述したKLダイバージェンスを変化度として算出する場合において確率分布を示した
図4に対応する図である。ユーザは、変化度の数値が提示されることによって消費電力の変化の程度を知ることができるが、具体的には、どのような変化が発生しているのはわからない。そこで、本実施の形態では、
図6~8に例示するように、稼働パターンの具体的な変化を視認できるように表示するようにした。
【0048】
また、
図9は、設備毎の変化度を棒グラフの形式にて示す場合の表示例を示す図である。
図9に示すグラフを参照したユーザは、設備Bにおける稼働パターンが前月と比較して大きく変化したことを知ることができる。
【0049】
図10は、設備ごとの前月からの変化度をヒートマップにて示す場合の表示例を示す図である。
図10に示すグラフを参照したユーザは、各設備において、前年同月に対する稼働パターンの変化の程度を知ることができる。
【0050】
以上説明したように、本実施の形態によれば、省エネ制御計画の立案を支援しうる情報をユーザに提示することができる。これにより、提示した表示情報を参照したユーザは、主に変化度の大きい設備に対して省エネ制御計画を見直すなどの対策を講じることができる。
【符号の説明】
【0051】
1 CPU、2 ROM、3 RAM、4 ハードディスクドライブ(HDD)、5 ネットワークインタフェース(IF)、6 ユーザインタフェース(UI)、7 内部バス、10 省エネ支援装置、11 設備稼働履歴情報取得部、12 イベント発生時刻抽出部、13 変化度算出部、14 表示制御部、20 設備管理装置、21 設備稼働履歴情報記憶部。