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特許7442685電気生理学的な興奮をマッピングするためのシステムおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-22
(45)【発行日】2024-03-04
(54)【発明の名称】電気生理学的な興奮をマッピングするためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/367 20210101AFI20240226BHJP
   A61B 5/287 20210101ALI20240226BHJP
【FI】
A61B5/367
A61B5/287 200
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2022570712
(86)(22)【出願日】2021-04-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-27
(86)【国際出願番号】 US2021029671
(87)【国際公開番号】W WO2021236310
(87)【国際公開日】2021-11-25
【審査請求日】2022-12-20
(31)【優先権主張番号】63/026,827
(32)【優先日】2020-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511177374
【氏名又は名称】セント・ジュード・メディカル,カーディオロジー・ディヴィジョン,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドン カーティス デノ
【審査官】佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-511166(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0296111(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/05- 5/0538
5/24- 5/398
13/00-18/18
A61F 2/01
A61N 7/00- 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓興奮をマッピングするシステムの作動方法であって、
電気解剖学的マッピングシステムにおいて、多電極カテーテルによって担持され、複数の群を規定する複数の電極から、電気生理学的データを受信することと、
前記複数の群の各群について、前記電気解剖学的マッピングシステムが、
群のユニポーラ電位図と形態学的に最も一致する群のオムニポーラ電位図の積分を特定することと、
群の前記ユニポーラ電位図と形態学的に最も一致する群の前記オムニポーラ電位図の向きを群の興奮方向として規定することと、
群の前記オムニポーラ電位図の積分と群の前記ユニポーラ電位図を用いて、群の伝導速度の大きさを計算することと、を含むプロセスを実行することと、を含み、
それによって、心臓興奮マップを特定する、システムの作動方法
【請求項2】
群の前記ユニポーラ電位図は、群の代表的なユニポーラ電位図を含む、請求項1に記載のシステムの作動方法
【請求項3】
前記代表的なユニポーラ電位図は、群の平均ユニポーラ電位図を含む、請求項2に記載のシステムの作動方法
【請求項4】
群の前記オムニポーラ電位図の前記積分と群の前記ユニポーラ電位図を用いて、群の伝導速度の大きさを計算することは、前記興奮方向に沿った群の前記オムニポーラ電位図の積分の振幅に対する群の前記ユニポーラ電位図の振幅の比として、群の前記伝導速度の大きさを計算することを含む、請求項1に記載のシステムの作動方法
【請求項5】
群の前記オムニポーラ電位図の前記積分は、群の前記オムニポーラ電位図の時間についての積分を含む、請求項1に記載のシステムの作動方法
【請求項6】
前記心臓興奮マップのグラフィカル表現を出力することをさらに含む、請求項1に記載のシステムの作動方法
【請求項7】
前記多電極カテーテルは、高密度グリッドカテーテルを含む、請求項1に記載のシステムの作動方法
【請求項8】
前記複数の群の各群は、直交する2つのバイポールを規定する3つの電極を備える、請求項1に記載のシステムの作動方法
【請求項9】
心臓興奮マップを生成するための電気解剖学的マッピングシステムであって、
興奮マッピングおよび可視化プロセッサを備え、
前記興奮マッピングおよび可視化プロセッサは、
多電極カテーテルによって担持され、複数の群を規定する複数の電極から、電気生理学的データを受信し、
前記複数の群の各群について、プロセスに従って、興奮方向および伝導速度の大きさを特定するように構成されており、
前記プロセスは、
群のユニポーラ電位図と形態学的に最も一致する群のオムニポーラ電位図の積分を特定することと、
群の前記ユニポーラ電位図と形態学的に最も一致する群の前記オムニポーラ電位図の向きを群の興奮方向として規定することと、
群の前記オムニポーラ電位図の前記積分と群の前記ユニポーラ電位図を用いて、群の伝導速度の大きさを計算することと、を含み、
それによって、心臓興奮マップを特定する、電気解剖学的マッピングシステム。
【請求項10】
前記興奮マッピングおよび可視化プロセッサは、前記興奮マップのグラフィカル表現を出力するようにさらに構成される、請求項9に記載の電気解剖学的マッピングシステム。
【請求項11】
群の前記ユニポーラ電位図は、群の代表的なユニポーラ電位図を含む、請求項9に記載の電気解剖学的マッピングシステム。
【請求項12】
群の前記代表的なユニポーラ電位図は、群の平均ユニポーラ電位図を含む、請求項11に記載の電気解剖学的マッピングシステム。
【請求項13】
群の前記オムニポーラ電位図の前記積分と群の前記ユニポーラ電位図を用いて、群の伝導速度の大きさを計算することは、群の前記オムニポーラ電位図の前記積分の振幅に対する群の前記ユニポーラ電位図の振幅の比として、群の伝導速度の大きさを計算することを含む、請求項9に記載の電気解剖学的マッピングシステム。
【請求項14】
群の前記オムニポーラ電位図の前記積分は、群の前記オムニポーラ電位図の時間についての積分を含む、請求項9に記載の電気解剖学的マッピングシステム。
【請求項15】
組織の電気的興奮をマッピングするシステムの作動方法であって、
電気解剖学的マッピングシステムにおいて、高密度グリッドカテーテルによって担持される複数の電極から、電気生理学的データを受信することであって、前記複数の電極は複数の群を規定し、各群は一対の直交するバイポールを規定する3つの電極を含む、受信することと、
前記複数の群の各群について、前記電気解剖学的マッピングシステムが、
群のユニポーラ電位図と形態学的に最も一致する群のオムニポーラ電位図の積分を特定することと、
群の前記ユニポーラ電位図と形態学的に最も一致する群のオムニポーラ電位図の向きを群の興奮方向として規定することと、
群の前記オムニポーラ電位図の積分と群の前記ユニポーラ電位図を用いて、群の伝導速度の大きさを計算することと、を含むプロセスを実行することと、を含み、
それによって、組織の興奮マップを特定する、システムの作動方法
【請求項16】
群の前記ユニポーラ電位図は、群の代表的なユニポーラ電位図を含む、請求項15に記載のシステムの作動方法
【請求項17】
前記代表的なユニポーラ電位図は、群の平均ユニポーラ電位図を含む、請求項16に記載のシステムの作動方法
【請求項18】
群の前記オムニポーラ電位図の前記積分と群の前記ユニポーラ電位図を用いて、群の伝導速度の大きさを計算することは、群の前記オムニポーラ電位図の前記積分の振幅に対する群の前記ユニポーラ電位図の振幅の比として群の前記伝導速度の大きさを計算することを含む、請求項15に記載のシステムの作動方法
【請求項19】
群の前記オムニポーラ電位図の前記積分は、群の前記オムニポーラ電位図の時間についての積分を含む、請求項15に記載のシステムの作動方法
【請求項20】
前記組織の前記興奮マップのグラフィック表現を出力することをさらに含む、請求項15に記載のシステムの作動方法
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年5月19日に出願された米国仮出願第63/026,827号の利益を主張し、この出願は、あたかも本明細書に完全に記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は概して、心臓診断および治療処置において実施される可能性がある電気生理学的マッピングに関する。特に、本開示は、高密度(「HD」)グリッドカテーテルまたは他の多電極デバイスによって収集されたデータの使用を含む、電気生理学的な組織興奮をマッピングおよび可視化するためのシステム、装置、および方法に関する。
【0003】
電気生理学的マッピング、より具体的には心電図マッピングは、数多くの心臓診断および治療処置のうちの一部である。これらの調査は、興奮波面が心臓表面に沿って伝播する際にそれをマッピングすることを含むことが多い。これは、興奮マップを可視化することによって、不整脈がどのように心腔を移動しているかや、不整脈がどこで治療され得るかに関する知見を施術者に提供することができるからである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は心臓興奮をマッピングする方法を提供し、当該方法は、電気解剖学的マッピングシステムにおいて、多電極カテーテルによって担持され、複数の群を画定する複数の電極から電気生理学的データを受信するステップと、複数の群の各群について、電気解剖学的マッピングシステムが、群のユニポーラ電位図と形態学的に最も合致する群のオムニポーラ電位図の積分を特定することと、群のユニポーラ電位図と形態学的に最も合致する群のオムニポーラ電位図の向きを群の興奮方向として規定することと、群のオムニポーラ電位図の積分と群のユニポーラ電位図を使用して、群の伝導速度の大きさを計算することとを含むプロセスを実行するステップと、を含み、それによって心臓興奮マップが決定される。
【0005】
群のユニポーラ電位図は、群の平均ユニポーラ電位図などといった群の代表的なユニポーラ電位図であってよい。
【0006】
群のオムニポーラ電位図の積分と群のユニポーラ電位図を用いて群の伝導速度の大きさを計算するステップは、群の興奮方向に沿ったオムニポーラ電位図の積分の振幅に対する群のユニポーラ電位図の振幅の比として、群の伝導速度の大きさを計算することを含んでよい。
【0007】
群のオムニポーラ電位図の積分は、時間についての群のオムニポーラ電位図の積分であってよい。
【0008】
方法はまた、心臓興奮マップのグラフィカル表現を出力することを含んでもよい。
【0009】
本開示の態様によれば、多電極カテーテルは、高密度グリッドカテーテルであってよい。
【0010】
本開示のさらなる態様では、複数の群の各群は、直交する2つのバイポールを規定する3つの電極を含む。
【0011】
本明細書には、心臓興奮マップを生成するための電気解剖学的マッピングシステムも開示される。当該システムは、興奮マッピングおよび可視化プロセッサを含み、当該プロセッサは、多電極カテーテルによって担持され、複数の群を画定する複数の電極から電気生理学的データを受信し、複数の群の各々の群について、群のユニポーラ電位図と形態学的に最も合致する群のオムニポーラ電位図の積分を特定することと、群のユニポーラ電位図と形態学的に最も合致する群のオムニポーラ電位図の向きを群の興奮方向として規定することと、群のオムニポーラ電位図の積分と群のユニポーラ電位図を使用して、群の伝導速度の大きさを計算することとを含むプロセスに従って、興奮方向および伝導速度の大きさを決定するように構成されており、それによって心臓興奮マップが決定される。
【0012】
興奮マッピングおよび可視化プロセッサは、興奮マップのグラフィック表現を出力するようにさらに構成されていてよい。
【0013】
群のユニポーラ電位図は、群の平均ユニポーラ電位図などといった群の代表的なユニポーラ電位図であってよいことが考えられる。
【0014】
電気解剖学的マッピングシステムは、群のオムニポーラ電位図の積分の振幅に対する群のユニポーラ電位図の振幅の比として、群の伝導速度の大きさを計算することによって、群のオムニポーラ電位図の積分と群のユニポーラ電位図を使用して群の伝導速度の大きさを計算してもよい。
【0015】
群のオムニポーラ電位図の積分は、時間についての群のオムニポーラ電位図の積分であってよい。
【0016】
本開示はまた、組織の電気的興奮をマッピングする方法も提供する。当該方法は、電気解剖学的マッピングシステムにおいて、高密度グリッドカテーテルによって担持された複数の電極から電気生理学的データを受信することであって、複数の電極は複数の群を画定し、各群は直交する1対のバイポールを規定する3つの電極を含む、受信することと、複数の群の各群について、電気解剖学的マッピングシステムが、群のユニポーラ電位図と形態学的に最も合致する群のオムニポーラ電位図の積分を特定することと、群のユニポーラ電位図と形態学的に最も合致する群のオムニポーラ電位図の向きを群の興奮方向として規定することと、群のオムニポーラ電位図の積分と群のユニポーラ電位図を使用して、群の伝導速度の大きさを計算することとを含むプロセスを実行することと、を含み、それによって、組織の興奮マップが決定される。
【0017】
群のユニポーラ電位図は、群の平均ユニポーラ電位図などといった群の代表的なユニポーラ電位図であってよい。
【0018】
群のオムニポーラ電位図の積分と群のユニポーラ電位図を用いて群の伝導速度の大きさを計算するステップは、群のオムニポーラ電位図の積分の振幅に対する群のユニポーラ電位図の振幅の比として、群の伝導速度の大きさを計算することを含んでよい。
【0019】
群のオムニポーラ電位図の積分は、時間についての群のオムニポーラ電位図の積分であってよい。
【0020】
当該方法は、組織の興奮マップのグラフィック表現を出力することをさらに含んでよい。
【0021】
本発明の前述および他の態様、特徴、詳細、有用性、および利点は、以下の説明および特許請求の範囲を読み、添付の図面を見ることで明らかになるのであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】例示的な電気解剖学的マッピングシステムの概略図である。
【0023】
図2】本開示の態様に関連して使用され得る例示的なカテーテルを示す。
【0024】
図3A】多電極カテーテルによって担持される電極およびそれらに関連するバイポールのための英数字符号規則を提供する。
図3B】多電極カテーテルによって担持される電極およびそれらに関連するバイポールのための英数字符号規則を提供する。
【0025】
図4】本開示の態様によって実行され得る代表的なステップのフロー図である。
【0026】
図5A】多電極カテーテル上の3電極の群、すなわち、図3Aおよび図3Bの名称体系による電極C2、からなる群の代表的なユニポーラ電位図である。
図5B】多電極カテーテル上の3電極の群、すなわち、図3Aおよび図3Bの名称体系による電極C3からなる群の代表的なユニポーラ電位図である。
図5C】多電極カテーテル上の3電極の群、すなわち、図3Aおよび図3Bの名称体系による電極D2からなる群の代表的なユニポーラ電位図である。
【0027】
図6A図3Aおよび図3Bの名称体系による電極C2、C3、およびD2からなる群の直交バイポール電位図である。
図6B図3Aおよび図3Bの名称体系による電極C2、C3、およびD2からなる群の直交バイポール電位図である。
【0028】
図7図3Aおよび図3Bの名称体系による電極C2、C3、およびD2からなる群の平均ユニポーラ電位図である。
【0029】
図8A図3Aおよび図3Bの名称体系による電極C2、C3、およびD2からなる群の32度140度でのオムニポーラ電位図を示す。
図8B図3Aおよび図3Bの名称体系による電極C2、C3、およびD2からなる群の100度でのオムニポーラ電位図を示す。
図8C図3Aおよび図3Bの名称体系による電極C2、C3、およびD2からなる群の140度でのオムニポーラ電位図を示す。
【0030】
図9A図8Aのオムニポーラ電位図の時間についての積分である。
図9B図8Bのオムニポーラ電位図の時間についての積分である。
図9C図8Cのオムニポーラ電位図の時間についての積分である。
【0031】
図10】本開示の態様による興奮マップの代表的な可視化である。
【0032】
複数の実施形態が開示されるが、例示的な実施形態を示し説明する以下の詳細な説明から、本開示のさらに他の実施形態が当業者に明らかになるであろう。したがって、図面および詳細な説明は、例示的な性質のものであり、限定的なものとみなされるべきではない。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本開示は、電気生理学的マップ、特に、組織の電気生理学的興奮のマップを生成および可視化するためのシステム、装置、および方法を提供する。説明のために、アボットラボラトリーズ社(イリノイ州アボットパーク)のAdvisor(商標)HDグリッドマッピングカテーテルなどの高密度(HD)グリッドカテーテルと、アボットラボラトリーズ社のEnSite Precision(商標)心臓マッピングシステムなどの電気解剖学的マッピングシステムとを併せて使用して収集された心内電位図から作成された心臓興奮マップを参照して、本開示の態様を説明する。しかしながら、当業者であれば、他の状況および/または他のデバイスに対して本明細書の教示をどのように有利に適用するかを理解するであろう。
【0034】
図1は、心臓カテーテルをナビゲートして患者11の心臓10において生じる電気的活動を測定し、その電気的活動、および/またはそのように測定された電気的活動に関するまたはそのように測定された電気的活動を表す情報を三次元マッピングすることによって、心臓の電気生理学調査を実施するための例示的な電気解剖学的マッピングシステム8の概略図を示す。システム8は、例えば、1つまたは複数の電極を使用して患者の心臓10の解剖学的モデルを作成するために使用されてよい。システム8はまた、例えば患者の心臓10の診断データマップを作成するために、心臓表面に沿う複数の点で電気生理学データを測定し、電気生理学データが測定された各測定点の位置情報と関連付けて測定データを記憶するのにも使用されてよい。
【0035】
当業者であれば分かるように、システム8は、通常は3次元空間内で、物の位置、いくつかの態様では物の向きを特定し、それらの位置を、少なくとも1つの基準に対して特定された位置情報として表す。本明細書では、このことを「位置特定」と呼ぶ。
【0036】
図の簡略化のために、患者11は楕円形として概略的に示されている。図1に示される実施形態では、3組の表面電極(例えば、パッチ電極)が、患者11の表面に適用された状態で示されており、本明細書でx軸、y軸、およびz軸と称される3つのほぼ直交する軸を規定する。他の実施形態では、電極は他の配置で配置されてもよく、例えば、特定の身体表面上に複数の電極が配置されてもよい。さらなる代替として、電極は、身体表面上にある必要はなく、身体の内部に配置されてもよい。
【0037】
図1において、x軸表面電極12、14は、患者の胸郭領域の側部などの第1の軸に沿って患者に適用され(例えば、患者の各腕の下の皮膚に適用され)、左電極および右電極と称される場合がある。y軸電極18、19は、x軸にほぼ直交する第2の軸に沿って、例えば患者の大腿部内側と頸部領域に沿って、患者に適用され、左脚電極および頸部電極と称される場合がある。z軸電極16、22は、x軸およびy軸の両方にほぼ直交する第3の軸に沿って、例えば胸部領域における患者の胸骨と脊椎に沿って、適用され、胸部電極および背部電極と称される場合がある。心臓10は、これらの表面電極の対12/14、18/19、および16/22の間にある。
【0038】
追加の表面基準電極(例えば、「腹部パッチ」)21は、システム8のための基準および/または接地電極を提供する。腹部パッチ電極21は、以下でさらに詳細に説明される固定心内電極31の代替であってもよい。さらに、患者11は、従来の心電図(「ECG」または「EKG」)システムリードのほとんどまたは全てを適所に有し得ることも理解されたい。特定の実施形態では、例えば、ECGリード12本の標準セットが患者の心臓10の心電図を感知するために利用されてよい。このECG情報は、システム8で利用可能である(例えば、コンピュータシステム20への入力として提供されてよい)。ECGリードが十分に理解される限りにおいて、また図面の明瞭性のために、図1には1本のリード6とそのコンピュータ20への接続のみが示されている。
【0039】
少なくとも1つの電極17を有する代表的なカテーテル13も図示されている。この代表的なカテーテル電極17は、本明細書において「ロービング電極」、「移動電極」、または「測定電極」と呼ばれる。通常、カテーテル13上または複数のそのようなカテーテル上の複数の電極17が使用される。一実施形態では、例えば、システム8は、患者の心臓および/または脈管構造内に配置される12個のカテーテル上の64個の電極を備えてよい。他の実施形態では、システム8は、複数(例えば、8つ)のスプラインを含む1つのカテーテルを使用してよく、スプラインの各々は、複数(例えば、8つ)の電極を含む。
【0040】
前述の実施形態は単に例示的なものであり、任意の数の電極および/またはカテーテルが使用されてよい。例えば、本開示の目的のために、図2には、例示的な多電極カテーテルの一部、特にAdvisor(商標)HDグリッドマッピングカテーテル、Sensor Enabled(商標)(アボットラボラトリーズ社、イリノイ州アボットパーク)などのHDグリッドカテーテル13の一部が示されている。HDグリッドカテーテル13は、パドル202に連結されたカテーテル本体200を含む。カテーテル本体200は、第1の本体電極204と第2の本体電極206をさらに含んでよい。パドル202は、第1のスプライン208と、第2のスプライン210と、第3のスプライン212と、第4のスプライン214とを含んでよく、これらのスプラインは、近位カプラ216によってカテーテル本体200に連結され、遠位カプラ218によって互いに連結されている。一実施形態では、第1のスプライン208および第4のスプライン214が1つの連続するセグメントであってよく、第2のスプライン210および第3のスプライン212が別の連続するセグメントであってよい。他の実施形態では、個々のスプライン208、210、212、214は、(例えば、近位カプラ216および遠位カプラ218によって)互いに連結される別々のセグメントであってよい。HDカテーテル13は任意の数のスプラインを含んでよく、図2に示されるスプライン4つの構成は単なる例示であることを理解されたい。
【0041】
上述のように、スプライン208、210、212、214は任意の数の電極17を含んでよく、図2では、16個の電極17が4×4アレイに配置されて示されている。また、スプライン208、210、212、214に沿っておよびスプライン間の両方で測ったときに、電極17は、均等および/または不均等に離間していてもよいことを理解されたい。本説明における参照を容易にするために、図3Aは、電極17に対して英数字記号を提供する。
【0042】
当業者であれば分かるように、任意の2つの隣り合う電極17はバイポールを規定する。したがって、カテーテル13上の16個の電極17は、スプラインに沿って12個のバイポール(例えば、電極17aと電極17bの間、または電極17cと電極17dの間)、スプラインをまたいで12個のバイポール(例えば、電極17aと電極17cの間、または電極17bと電極17dの間)、およびスプライン間を斜めに18個のバイポール(例えば、電極17aと電極17dの間、または電極17bと電極17cの間)の合計42個のバイポールを規定する。
【0043】
本説明での参照を容易にするために、図3Bは、スプラインに沿うバイポールおよびスプラインをまたぐバイポールに対して英数字記号を提供する。図3Bは斜めのバイポールの英数字記号を省略しているが、これは図を明確にする目的のためだけである。本明細書の教示は斜めのバイポールに関しても適用できるということが明確に考えられる。
【0044】
当業者によく知られている技術に従ってバイポール電位図を生成するために、任意のバイポールが用いられてよい。さらに、電極の群のE場ループを計算することによって、カテーテル13の平面の任意の方向で、やはり興奮タイミング情報を含む電位図を生成するために、これらのバイポール電位図が組み合わせられてよい(例えば、線形的に組み合わせられてよい)。米国特許出願公開第2018/0296111号('111号公報)は、HDグリッドカテーテル上の電極の群のE場ループを計算する詳細を開示しており、この内容は、本明細書に完全に記載されているかのように参照により本明細書に組み込まれる。本明細書では、これらの電位図は「オムニポーラ電位図」と呼ばれ、それらの対応する方向は「オムニポール」または「仮想バイポール」と呼ばれる。
【0045】
いずれにしても、カテーテル13は、その上に電極17によって規定される様々なバイポールの複数の電気生理学的データ点を同時に収集するために使用されてよく、そのような電気生理学的データ点の各々は、位置特定情報(例えば、選択されたバイポールの位置および向き)と選択されたバイポールの電気生理学的信号との両方を含む。説明のために、本開示による方法は、カテーテル13によって収集された個々の電気生理学的データ点を参照して説明される。しかしながら、本明細書の教示は、カテーテル13によって収集された複数の電気生理学的データ点に、順番におよび/または並行して適用されてもよいことを理解されたい。
【0046】
カテーテル13(または複数のそのようなカテーテル)は通常、1つまたは複数の導入器を介して、よく知られている手順で、患者の心臓および/または血管系に導入される。実際、経中隔アプローチなど、カテーテル13を患者の心臓に導入するための様々なアプローチは当業者にはよく知られているので、本明細書でさらに説明する必要はない。
【0047】
各電極17は患者内にあるので、システム8によって、各電極17について位置データが同時に収集される場合がある。同様に、各電極17は、心臓表面から電気生理学的データ(例えば、心内膜電位図)を集めるために使用されてよい。当業者であれば、電気生理学的データ点(例えば、接触および非接触の電気生理学的マッピングの両方を含む)の取得および処理のための様々な様式に精通しているので、これについてのさらなる議論は、本明細書に開示される技術の理解に必須ではない。同様に、当技術分野でよく知られている様々な技術を使用して、複数の電気生理学データ点から、心臓の幾何学的形状および/または心臓の電気的活動のグラフィカル表現を生成することができる。さらに、当業者が電気生理学データ点から電気生理学マップを作成するやり方を理解する範囲において、その態様は、本開示を理解するために必要な程度にのみ本明細書で説明される。
【0048】
ここで図1に戻ると、いくつかの実施形態では、第2のカテーテル29上に、(例えば、心臓10の壁に取り付けられた)オプションの固定基準電極31が示されている。較正のために、この電極31は、固定されていてもよいし(例えば、心臓の壁に取り付けられるかまたはその近くに取り付けられる)、またはロービング電極(例えば、電極17)と一定の空間的関係で配置されてもよく、したがって、「ナビゲーション基準」または「局所基準」と呼ばれる場合がある。固定基準電極31は、上述の表面基準電極21に加えてまたはその代わりに使用されてよい。多くの場合、心臓10内の冠状静脈洞電極または他の固定電極は、電圧および変位を測定するための基準として使用されてよく、すなわち、後述するように、固定基準電極31は座標系の原点を定義してよい。
【0049】
各表面電極は、多重スイッチ24に連結され、表面電極の対は、表面電極を信号発生器25に連結するコンピュータ20上で起動しているソフトウェアによって選択される。あるいは、スイッチ24が除外されてもよく、信号発生器25の複数(例えば、3つ)のインスタンスが、各測定軸(すなわち、表面電極の各対)に対して1つずつ提供されてもよい。
【0050】
コンピュータ20は、例えば、従来の汎用コンピュータ、専用コンピュータ、分散コンピュータ、または任意の他のタイプのコンピュータを含んでよい。コンピュータ20は、単一の中央処理ユニット(「CPU」)または一般に並列処理環境と呼ばれる複数の処理ユニットなどの、1つまたは複数のプロセッサ28を備えてよく、プロセッサ28は、本明細書で説明する様々な態様を実施するための指示を実行してよい。
【0051】
一般に、生体導体内でカテーテルナビゲーションを実現するために、一連の駆動されかつ感知された電気バイポール(例えば、表面電極の対12/14、18/19、および16/22)によって、3つの公称直交電界が生成される。あるいは、これらの直交場は分解されてよく、任意の表面電極の対がダイポールとして駆動されて、有効な電極三角測量を提供してよい。同様に、電極12、14、18、19、16、および22(または任意の数の電極)が、心臓内の電極へ電流を流すかまたは心臓内の電極からの電流を感知するために、任意の他の有効な配置で配置されてよい。例えば、患者11の背部、側部、および/または腹部に複数の電極を配置してよい。さらに、そのような非直交手法は、システムの柔軟性を増す。任意の所望の軸について、駆動(ソースシンク)構成の所定のセットに起因するロービング電極間で測定される電位は、単に直交軸に沿って均一な電流を流すことによって得られるものと同じ有効電位を得るために、代数的に結合されてもよい。
【0052】
したがって、表面電極12、14、16、18、19、22のうちの任意の2つが、腹部パッチ21などの接地基準に対するダイポールソースおよびドレインとして選択されてよく、その一方、非励起電極は、接地基準に対する電圧を測定する。心臓10内に配置されたロービング電極17は、電流パルスから場に曝され、腹部パッチ21などの接地に対して測定される。実際には、心臓10内のカテーテルは図示された16個よりも多いまたは少ない電極を含んでよく、各電極の電位が測定されてよい。前述のように、少なくとも1つの電極が、心臓の内面に固定されて固定基準電極31を形成してよく、この電極も、腹部パッチ21などの接地に対して測定され、システム8が位置を測定する座標系の原点として定義されてよい。表面電極、内部電極、および仮想電極の各々からのデータセットの全てが、心臓10内でのロービング電極17の位置を特定するために使用されてよい。
【0053】
測定された電圧は、基準電極31などの基準位置に対して、ロービング電極17などの心臓内の電極の3次元空間における位置を、システム8によって特定するために使用されてよい。すなわち、基準電極31で測定された電圧は座標系の原点を定義するために使用されてよく、一方で、ロービング電極17で測定された電圧は原点に対するロービング電極17の位置を表すために使用されてよい。いくつかの実施形態では、座標系は3次元(x、y、z)デカルト座標系であるが、極座標系、球座標系、および円筒座標系などの他の座標系も考えられる。
【0054】
前述の議論から明らかなように、心臓内の電極の位置を特定するために使用されるデータは、表面電極の対が心臓に電場を印加している間に測定される。電極データはまた、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,263,397号に記載されているように、電極位置の生の位置データを改善するために使用される呼吸補償値を生成するために使用されてもよい。電極データはまた、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,885,707号に記載されているように、患者の体のインピーダンス変化を補償するために使用されてもよい。
【0055】
したがって、1つの代表的な実施形態では、システム8はまず、1組の表面電極を選択し、次にそれらを電流パルスで駆動する。電流パルスが送達されている間、残りの表面電極および体内電極のうちの少なくとも1つで測定される電圧などの電気的活動が、測定および記憶される。呼吸および/またはインピーダンスシフトなどのアーチファクトの補償は、上述のように実行されてよい。
【0056】
本開示の態様では、システム8は、(例えば、上記で説明したような)インピーダンスベースの位置特定能力と磁気ベースの位置特定能力との両方を包含するハイブリッドシステムであってよい。したがって、例えば、システム8は、1つまたは複数の磁場発生器に連結される磁気源30も含んでよい。明瞭性のために、2つの磁場発生器32および33のみが図1に示されているが、本教示の範囲から逸脱することなく、追加の磁場発生器(例えば、パッチ電極12、14、16、18、19、および22によって規定される軸に似た略直交する3つの軸を規定する合計6つの磁場発生器)を使用してよいことを理解されたい。同様に、当業者であれば、そのように生成された磁場内でカテーテル13の位置を特定する目的のために、1つまたは複数の磁気位置特定センサ(例えば、コイル)を含んでよいということを理解するであろう。
【0057】
いくつかの実施形態では、システム8は、アボットラボラトリーズ社のEnSite(商標)Velocity(商標)またはEnSite Precision(商標)心臓マッピングおよび可視化システムである。しかしながら、例えば、ボストンサイエンティフィックコーポレーション(マサチューセッツ州マールボロウ)のRHYTHMIA HDX(商標)マッピングシステム、バイオセンスウェブスター社(カリフォルニア州アーバイン)のCARTOナビゲーションおよびロケーションシステム、ノーザンデジタル社(オンタリオ州ウォータールー)のAURORA(登録商標)システム、ステレオタクシス社(ミズーリ州州セントルイス)のNIOBE(登録商標)磁気ナビゲーションシステム、並びにアボットラボラトリーズのMediGuide(商標)テクノロジーを含む、他の位置特定システムを本教示と関連して使用してもよい。
【0058】
以下の特許(その全てが参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている位置特定およびマッピングシステムも、本発明と共に使用することができる:米国特許第6,990,370号、6,978,168号、6,947,785号、6,939,309号、6,728,562号、6,640,119号、5,983,126号、5,697,377号。
【0059】
本開示の態様は、電気生理学マップの生成に関し、特に組織の電気的興奮のマッピングに関する。そのような電気生理学的マップのグラフィック表現も、例えばディスプレイ23に、出力されてよい。したがって、システム8は、興奮マッピングおよび可視化モジュール58を含んでよい。
【0060】
例示として心臓興奮マッピングを使用する、本開示の態様による1つの例示的な方法が、図4として提示される代表的なステップのフロー図を参照して説明される。いくつかの実施形態では、例えば、フロー図400は、図1の電気解剖学的マッピングシステム8によって(例えば、プロセッサ28および/または興奮マッピングおよび可視化モジュール58によって)実行され得るいくつかの例示的なステップを表してよい。以下で説明する代表的なステップは、ハードウェアで実施されてもよいし、またはソフトウェアで実施されてもよいことを理解されたい。説明のために、本明細書における「信号プロセッサ」という用語は、本明細書の教示のハードウェアベースの実施とソフトウェアベースの実施の両方を説明するために使用される。
【0061】
ブロック402において、システム8は、カテーテル13上の電極17によって測定された電気生理学的データを受信する。上述のように、電極17は複数の電極群を規定し、各群は3つの(または本開示のいくつかの実施形態では、4つ以上の)電極を含む。例えば、本開示の態様は、電極C2、C3、およびD2から構成される3電極の群を参照して説明される。
【0062】
当業者であれば、電極C2、C3、およびD2の各々が、(例えば、腹部パッチに対して)ユニポーラ電位図を測定できることが分かるであろう。図5A図5B、および図5Cには、電極C2、C3、およびD2の例示的なユニポーラ電位図500a、500b、および500cがそれぞれ示されている。
【0063】
さらに、電極C2、C3、およびD2は、2つの直交バイポール、すなわち、スプライン210に沿うC3-C2とスプライン210、208にまたがるC2-D2、を規定する。バイポールC2-D2については図6Aに、バイポールC3-C2については図6Bに示すように、各バイポールはバイポール電位図を測定できる。
【0064】
ブロック404において、システム8は、φ(t)で表される群のユニポーラ電位図を特定する。本開示の実施形態では、φ(t)は群のユニポーラ電位図の平均(すなわち、ユニポーラ電位図500a、500b、および500cの平均)であるが、他の代表的なユニポーラ電位図も考えられる。例えば、群の興奮方向および伝導速度の大きさの初期推定値に基づく時間的調整によって、群の初期平均ユニポーラ電位図が精緻化されてよい。
【0065】
図7は、電極C2、C3、D2からなる群の平均ユニポーラ電位図700を示す。図7に見られるように、平均ユニポーラ電位図700は、例えば、AC電力信号に起因するノイズを示す。
【0066】
'111出願の教示が電極C2、C3、D2の群にも適用されてよく、カテーテル13の平面内の任意の向きで、オムニポール(または「仮想バイポール」)のオムニポール電位図が計算される(バイポールC2-D2は0度に配向されている一方、バイポールC3-C2は90度に配向されていることに留意されたい)。これらの教示を使用して、ブロック406において、システム8は、オムニポーラ電位図の積分がブロック404において計算された群のユニポーラ電位図に対して形態学的に最も一致するオムニポーラ配向を特定する。
【0067】
図8A~8Cおよび図9A~9Cは、ブロック406の適用を示す。図8A~8Cはそれぞれ、32度、100度、140度に配向されたオムニポールのオムニポール電位図800a、800b、800cを示す。対応する時間についての積分900a、900b、900cは、それぞれ図9A~9Cに示されている。もちろん、他のオムニポール配向について同じような電位図および積分が計算される場合もあり、図8A~8Cおよび図9A~9Cに示されるものは単なる例示である。
【0068】
オムニポーラ電位図の積分を計算するための様々なアプローチがあることを理解されたい。例えば、いくつかのオムニポーラ電位図を(例えば、'111出願の教示に従って)計算し、その後、各オムニポーラ電位図の積分を計算することもある。しかしながら、このアプローチは、各信号が特定された後に別々に積分されなければならないので、相当なコンピューティングリソースが必要となってしまう。したがって、別のアプローチは、(例えば、'111出願の教示に従って)E場ループを計算し、E場ループを積分し、そして積分されたE場ループを様々なオムニポール方向で投影することである。前者のアプローチの複数の投影(例えば、様々なオムニポール方位でのE場ループの投影)および複数の積分(例えば、様々なオムニポーラ電位図の積分)とは対照的に、後者のアプローチは、単一の積分(例えば、E場ループの積分)および複数の投影(例えば、様々なオムニポーラ方位での積分されたE場ループの投影)を要するので、計算効率がよりよい。
【0069】
さらに他の実施形態では、オムニポーラ電位図の積分は、逆の時間順序で計算されてよい(例えば、図8A図8Cのように左から右ではなく、右から左に積分の限界を表す)。実際、オムニポーラ電位図の順積分と逆積分の両方を計算し、次いで、順積分を徐々に割り引いて逆積分を徐々に強調する滑らかに時間変化する凸結合を使用するなどして、2つの積分を組み合わせることが望ましい場合がある。この組み合わせアプローチは、有利なことに、オムニポーラ電位図において増加累積するオフセットが合わさることによって生じる個々の積分のヘッドまたはテールのオフセットの影響を最小限にする。
【0070】
当業者であれば、滑らかに時間変化する凸結合は、様々な形態をとり得ることを理解するであろう。例えば、順積分は時間変化する重みa(t)によって重み付けされてよく、逆積分は時間変化する重みb(t)によって重み付けされてよく、a(t)+b(t)=1である。本開示のいくつかの態様によれば、a(t)は0から1へと線形に増加し、b(t)は1から0へと線形に減衰する。
【0071】
いずれにせよ、システム8は、φ(t)(例えば、700)と形態的に最も一致する積分(例えば、900a、900b、900c)を特定する。本明細書では、この積分を「ベストフィットオムニポール積分」と呼ぶ。形態学的マッチング技術は当業者にはよく知られており、本明細書でさらに説明する必要はない。しかしながら、そのような技術を適用すると、一方では図7、他方では図9A図9Cの場合、ベストフィットオムニポール積分は、図9Cに示されるように、約140度に配向されていることが分かる。
【0072】
ブロック408において、システム8は、ブロック406からのベストフィットオムニポール積分の向きを群の興奮方向として規定する。したがって、電極C2、C3、D2の群の興奮方向は、約140度である。
【0073】
ブロック410において、システム8は、ベストフィットオムニポール積分と群のユニポールφ(t)とから群の伝導速度の大きさを計算する。例えば、伝導速度の大きさは、群のユニポールφ(t)の振幅とベストフィットオムニポール積分の振幅との間の(すなわち、電極群の規定された興奮方向に沿った)比として計算されてよい。
【0074】
判定ブロック412は、分析すべき追加の群があるかどうかを検討する。ある場合、プロセスはブロック404から繰り返される。ない場合、ブロック414において、図10の1000などの興奮マップのグラフィック表現が出力される。
【0075】
いくつかの実施形態をある程度詳細に上述したが、当業者であれば、本発明の精神または範囲から逸脱することなく、開示された実施形態に多くの変更を加えることができる。
【0076】
例えば、本明細書の教示は、リアルタイムで(例えば、電気生理学的調査中に)または後処理中に、(例えば、以前に行われた電気生理学的調査中に収集された電気生理学的データ点に)適用することができる。
【0077】
方向に関する言及(例えば、上、下、上方、下方、左、右、左方、右方、上部、底部、上側、下側、垂直、水平、時計回り、および反時計回り)の全ては、本発明の読者の理解を助けるための識別目的のためにのみ使用されるものであり、特に位置、向き、または本発明の使用に関して限定するものではない。結合に関する言及(例えば、取り付けられた、連結された、接続された等)は、広く解釈されるべきであり、要素間の接続および要素間の相対運動において中間部材を含んでよい。したがって、結合に関する言及は、2つの要素が直接接続され、互いに固定された関係にあることを必ずしも暗示しない。
【0078】
上記の説明に含まれる全ての事項または添付の図面に示される全ての事項は、例示としてのみ解釈されるべきであり、限定として解釈されるべきではないことが意図される。詳細または構造の変更は、添付の特許請求の範囲に定義される本発明の精神から逸脱することなく、行なわれてよい。
以下の項目は、国際出願時の特許請求の範囲に記載の要素である。
(項目1)
心臓興奮をマッピングする方法であって、
電気解剖学的マッピングシステムにおいて、多電極カテーテルによって担持され、複数の群を規定する複数の電極から、電気生理学的データを受信することと、
前記複数の群の各群について、前記電気解剖学的マッピングシステムが、
群のユニポーラ電位図と形態学的に最も一致する群のオムニポーラ電位図の積分を特定することと、
群の前記ユニポーラ電位図と形態学的に最も一致する群の前記オムニポーラ電位図の向きを群の興奮方向として規定することと、
群の前記オムニポーラ電位図の積分と群の前記ユニポーラ電位図を用いて、群の伝導速度の大きさを計算することと、を含むプロセスを実行することと、を含み、
それによって、心臓興奮マップを特定する、方法。
(項目2)
群の前記ユニポーラ電位図は、群の代表的なユニポーラ電位図を含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記代表的なユニポーラ電位図は、群の平均ユニポーラ電位図を含む、項目2に記載の方法。
(項目4)
群の前記オムニポーラ電位図の前記積分と群の前記ユニポーラ電位図を用いて、群の伝導速度の大きさを計算することは、前記興奮方向に沿った群の前記オムニポーラ電位図の積分の振幅に対する群の前記ユニポーラ電位図の振幅の比として、群の前記伝導速度の大きさを計算することを含む、項目1に記載の方法。
(項目5)
群の前記オムニポーラ電位図の前記積分は、群の前記オムニポーラ電位図の時間についての積分を含む、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記心臓興奮マップのグラフィカル表現を出力することをさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目7)
前記多電極カテーテルは、高密度グリッドカテーテルを含む、項目1に記載の方法。
(項目8)
前記複数の群の各群は、直交する2つのバイポールを規定する3つの電極を備える、項目1に記載の方法。
(項目9)
心臓興奮マップを生成するための電気解剖学的マッピングシステムであって、
興奮マッピングおよび可視化プロセッサを備え、
前記興奮マッピングおよび可視化プロセッサは、
多電極カテーテルによって担持され、複数の群を規定する複数の電極から、電気生理学的データを受信し、
前記複数の群の各群について、プロセスに従って、興奮方向および伝導速度の大きさを特定するように構成されており、
前記プロセスは、
群のユニポーラ電位図と形態学的に最も一致する群のオムニポーラ電位図の積分を特定することと、
群の前記ユニポーラ電位図と形態学的に最も一致する群の前記オムニポーラ電位図の向きを群の興奮方向として規定することと、
群の前記オムニポーラ電位図の前記積分と群の前記ユニポーラ電位図を用いて、群の伝導速度の大きさを計算することと、を含み、
それによって、心臓興奮マップを特定する、電気解剖学的マッピングシステム。
(項目10)
前記興奮マッピングおよび可視化プロセッサは、前記興奮マップのグラフィカル表現を出力するようにさらに構成される、項目9に記載の電気解剖学的マッピングシステム。
(項目11)
群の前記ユニポーラ電位図は、群の代表的なユニポーラ電位図を含む、項目9に記載の電気解剖学的マッピングシステム。
(項目12)
群の前記代表的なユニポーラ電位図は、群の平均ユニポーラ電位図を含む、項目11に記載の電気解剖学的マッピングシステム。
(項目13)
群の前記オムニポーラ電位図の前記積分と群の前記ユニポーラ電位図を用いて、群の伝導速度の大きさを計算することは、群の前記オムニポーラ電位図の前記積分の振幅に対する群の前記ユニポーラ電位図の振幅の比として、群の伝導速度の大きさを計算することを含む、項目9に記載の電気解剖学的マッピングシステム。
(項目14)
群の前記オムニポーラ電位図の前記積分は、群の前記オムニポーラ電位図の時間についての積分を含む、項目9に記載の電気解剖学的マッピングシステム。
(項目15)
組織の電気的興奮をマッピングする方法であって、
電気解剖学的マッピングシステムにおいて、高密度グリッドカテーテルによって担持される複数の電極から、電気生理学的データを受信することであって、前記複数の電極は複数の群を規定し、各群は一対の直交するバイポールを規定する3つの電極を含む、受信することと、
前記複数の群の各群について、前記電気解剖学的マッピングシステムが、
群のユニポーラ電位図と形態学的に最も一致する群のオムニポーラ電位図の積分を特定することと、
群の前記ユニポーラ電位図と形態学的に最も一致する群のオムニポーラ電位図の向きを群の興奮方向として規定することと、
群の前記オムニポーラ電位図の積分と群の前記ユニポーラ電位図を用いて、群の伝導速度の大きさを計算することと、を含むプロセスを実行することと、を含み、
それによって、組織の興奮マップを特定する、方法。
(項目16)
群の前記ユニポーラ電位図は、群の代表的なユニポーラ電位図を含む、項目15に記載の方法。
(項目17)
前記代表的なユニポーラ電位図は、群の平均ユニポーラ電位図を含む、項目16に記載の方法。
(項目18)
群の前記オムニポーラ電位図の前記積分と群の前記ユニポーラ電位図を用いて、群の伝導速度の大きさを計算することは、群の前記オムニポーラ電位図の前記積分の振幅に対する群の前記ユニポーラ電位図の振幅の比として群の前記伝導速度の大きさを計算することを含む、項目15に記載の方法。
(項目19)
群の前記オムニポーラ電位図の前記積分は、群の前記オムニポーラ電位図の時間についての積分を含む、項目15に記載の方法。
(項目20)
前記組織の前記興奮マップのグラフィック表現を出力することをさらに含む、項目15に記載の方法。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
図10