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特許7442701粘膜下層剥離術を補助するためのシステム及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-22
(45)【発行日】2024-03-04
(54)【発明の名称】粘膜下層剥離術を補助するためのシステム及び装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/02 20060101AFI20240226BHJP
   A61B 17/94 20060101ALI20240226BHJP
【FI】
A61B17/02
A61B17/94
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023010192
(22)【出願日】2023-01-26
(62)【分割の表示】P 2021117788の分割
【原出願日】2017-01-19
(65)【公開番号】P2023038351
(43)【公開日】2023-03-16
【審査請求日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】62/281,215
(32)【優先日】2016-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/293,505
(32)【優先日】2016-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500064708
【氏名又は名称】ザ クリーブランド クリニック ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100107489
【弁理士】
【氏名又は名称】大塩 竹志
(72)【発明者】
【氏名】アミット バット
(72)【発明者】
【氏名】シェンチアン ガオ
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム コロシ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン バーゴ
【審査官】山口 賢一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/034922(WO,A1)
【文献】特開2007-014807(JP,A)
【文献】特開平11-042283(JP,A)
【文献】特表平04-507363(JP,A)
【文献】特開2013-013726(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/02
A61B 17/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的患者組織を剥離するために、患者から前記標的患者組織を牽引するように構成されている組織牽引装置であって、前記組織牽引装置は、
長手方向軸を画定する湾曲されたワイヤループであって、前記湾曲されたワイヤループは、横方向に離間されている第1の端部部分および第2の端部部分を有し、前記湾曲されたワイヤループは、患者から剥離されて除去される組織への取り付けのために構成されている、湾曲されたワイヤループと、
前記湾曲されたワイヤループの前記第1の端部部分または前記第2の端部部分のうちの一方に配置されている組織係合部材であって、前記組織係合部材は、前記第2の端部部分を前記組織に固定するために、前記湾曲されたワイヤループによって画定される前記長手軸方向を横断して延在するように構成されている、組織係合部材と
を備え
前記湾曲されたワイヤループは、前記組織に張力を適用することにより、前記組織が剥離されるにつれて前記組織を牽引するように構成されている、組織牽引装置。
【請求項2】
前記湾曲されたワイヤループは、形状記憶合金で形成されている、請求項1に記載の組織牽引装置。
【請求項3】
前記湾曲されたワイヤループは、第1の状態と第2の状態との間で遷移するように構成されており、
前記第1の状態では、前記湾曲されたワイヤループは、前記第1の端部部分と前記第2の端部部分との間の湾曲の第1の半径を画定し、
前記第2の状態では、前記湾曲されたワイヤループは、前記第1の端部部分と前記第2の端部部分との間の湾曲の第2の半径を画定し、前記湾曲の第2の半径は、前記湾曲の第1の半径とは異なる、請求項1に記載の組織牽引装置。
【請求項4】
前記湾曲の第1の半径は、前記湾曲の第2の半径よりも大きい、請求項に記載の組織牽引装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2016年2月10日に出願された米国仮特許出願第62/293,505号、及び2016年1月21日に出願された米国仮特許出願第62/281,215号からの優先権を主張し、これらの両方の主題は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(技術分野)
本開示は、粘膜下層剥離術を補助するための装置、方法、及びシステムに関し、より具体的には、組織牽引装置及び使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
内視鏡的粘膜下層剥離術(「ESD」)は、限定されないが、初期消化管がんなどの病変を内視鏡的に剥離する内視鏡的手技である。ESDを実行する際の課題の1つは、従来の外科手術におけるような、牽引及び逆牽引を提供することができる助手の不足である。外科医の助手のように振る舞うことができる装置を提供することにより、ESDをより効率よく実施することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第9,579,092号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様では、組織牽引装置が提供される。この組織牽引装置は、牽引細片本体を備える。牽引細片本体は、変形可能な材料から少なくとも部分的に形成される。牽引細片本体は、第1の状態と第2の状態との間で選択的に移行させられることができる。第1の状態では、牽引細片本体は、標的患者組織と係合することが可能である。第2の状態では、牽引細片本体は、標的患者組織を牽引することができる。組織牽引装置は、少なくとも1つの組織係合部材を備える。この組織係合部材は、牽引細片本体の上に配置される。
【0006】
一態様では、粘膜下層剥離術を補助するための方法が提供される。組織牽引装置が設けられている。この組織牽引装置は、牽引細片本体を備える。牽引細片本体は、変形可能な材料から少なくとも部分的に形成される。牽引細片本体は、第1の状態と第2の状態との間で選択的に移行させられることができる。第1の状態では、牽引細片本体は、標的患者組織と係合することが可能である。第2の状態では、牽引細片本体は、標的患者組織を牽引することができる。組織牽引装置は、少なくとも1つの組織係合部材を備える。この組織係合部材は、牽引細片本体の上に配置される。組織牽引装置は、内視鏡を備える。この内視鏡は、内視鏡近位端部及び内視鏡遠位端部を有する。内視鏡は、内視鏡近位端部と内視鏡遠位端部との間の長手方向に延在する内視鏡管腔を有する。内視鏡は、患者に挿入される。内視鏡遠位端部は、標的患者組織に隣接する標的患者組織部位に位置決めされる。牽引細片本体は、第1の状態へと選択的に移行される。牽引細片本体が第1の状態にある状態で、牽引細片本体は、内視鏡管腔を通して出して、標的患者組織部位に挿入される。牽引細片本体が第1の状態にある状態で、標的患者組織は、少なくとも1つの組織係合部材と係合される。標的患者組織は、牽引細片本体を第2の状態へと選択的に移行させることによって、牽引位置へと選択的に移行される。第1の位置から第2の位置への牽引細片本体の選択的移行により、組織係合部材は、標的患者組織の当初の位置から牽引位置に標的患者組織を応答的に移行させる。
【0007】
一態様では、粘膜下層剥離術を補助するためのシステムが提供される。この粘膜下層剥離術を補助するためのシステムは、組織牽引装置を備える。この組織牽引装置は、牽引細片本体を備える。この牽引細片本体は、横方向に離間された第1の端部及び第2の端部を有する。牽引細片本体は、変形可能な材料から少なくとも部分的に形成される。牽引細片本体は、第1の状態と第2の状態と間で選択的に移行させられることができる。第1の状態では、牽引細片本体は、標的患者組織と係合することが可能である。第2の状態では、牽引細片本体は、標的患者組織を牽引することができる。牽引細片本体は、少なくとも2組の組織係合部材を含む。第1の組の組織係合部材は、牽引細片本体の第1の端部の上に配置される。第2の組の組織係合部材は、牽引細片本体の第2の端部の上に配置される。組織係合部材は、バーブ、クリップ、フック、接着剤、及び他の取り付け機構のうちの少なくとも1つである。粘膜下層剥離術を補助するためのシステムは、内視鏡及び剥離器を含む。この内視鏡は、近位端部及び遠位端部を有する。内視鏡は、内視鏡近位端部と内視鏡遠位端部との間の長手方向に延在する内視鏡管腔を有する。
例えば、本願は以下の項目を提供する。
(項目1)
牽引細片本体(102)であって、前記牽引細片本体(102)は、変形可能な材料から少なくとも部分的に形成され、前記牽引細片本体(102)は、第1の状態では、前記牽引細片本体(102)が標的患者組織(T)と係合することができ、一方、第2の状態では、前記牽引細片本体(102)が前記標的患者組織(T)を牽引することができるように、前記第1の状態と前記第2の状態との間で選択的に移行させられることができる、牽引細片本体(102)と、
少なくとも1つの組織係合部材(104)であって、前記少なくとも1つの組織係合部材(104)は、前記牽引細片本体(102)の上に配置されている、少なくとも1つの組織係合部材(104)と、を備える組織牽引装置(100)。
(項目2)
前記変形可能な材料が、弾性材料であり、前記第1の状態と第2の状態との間の遷移が、加力、及び前記牽引細片本体(102)の弾性変形のうちの少なくとも一方に応答して、生じる、項目1に記載の組織牽引装置(100)。
(項目3)
前記変形可能な材料は、弾性材料、形状記憶材料、及び布材料のうちの少なくとも1つである、項目2に記載の組織牽引装置(100)。
(項目4)
前記牽引細片本体(102)は、シース送達状態へと移行させられることが可能であり、前記シース送達状態にある前記牽引細片本体(102)は、シース(1020)のシース管腔(1022)内部に配置されるための形をしている、項目3に記載の組織牽引装置(100)。
(項目5)
前記変形可能な材料が、温度応答性形状記憶材料であり、前記牽引細片本体(102)は、前記第2の状態に予め設定されているように構成され、前記牽引細片本体(102)が遷移温度範囲未満の温度にあるときには、前記牽引細片本体(102)は、前記第2の状態から前記第1の状態へと変形させられることができるように構成され、前記牽引細片本体(102)が前記遷移温度範囲超の温度にあるときには、前記牽引細片本体(102)は、前記第2の状態に自動的に戻るように構成されている、項目1に記載の組織牽引装置(100)。
(項目6)
前記変形可能な材料が、展性材料であり、展性材料から少なくとも部分的に形成された前記牽引細片本体(102)が、前記第1の状態及び第2の状態のうちの少なくとも選択された一方の状態に、選択的に変形させられ、かつ保持されることができる、項目1に記載の組織牽引装置(100)。
(項目7)
前記変形可能な材料が、フレキシブルなステンレス鋼双安定ばねバンドである、項目1に記載の組織牽引装置(100)。
(項目8)
前記第1の状態にある前記牽引細片本体(102)は、心棒(1130)の外側表面(1128)と係合するような形をしており、前記組織係合部材(104)は、前記牽引細片本体(102)が前記第1の状態にあるときには、扁平状態にあり、前記組織係合部材(104)は、前記牽引細片本体(102)が少なくとも部分的に前記第2の状態にあるときには、開いた状態にある、項目7に記載の組織牽引装置(100)。
(項目9)
前記組織係合部材(104)が、バーブ、クリップ、フック、接着剤、及び任意の他の取り付け機構のうちの少なくとも1つである、項目1に記載の組織牽引装置(100)。(項目10)
第1の組の組織係合部材(106)は、牽引細片本体の第1の端部(108)の上に配置され、第2の組の組織係合部材(110)は、牽引細片本体の第2の端部(112)の上に配置され、前記牽引細片本体の第1の端部及び第2の端部(108及び112)は、横方向に離間されている、項目1に記載の組織牽引装置(100)。
(項目11)
前記牽引細片本体(102)は、少なくとも1つの嵌合部材(1232)を有し、前記嵌合部材(1232)は、少なくとも2つの牽引細片本体(102)を一緒に選択的に連結するように構成されている、項目1に記載の組織牽引装置(100)。
(項目12)
粘膜下層剥離術を補助するための方法であって、
組織牽引装置(100)を提供することであって、前記組織牽引装置(100)は、
牽引細片本体(102)であって、前記牽引細片本体(102)は、変形可能な材料から少なくとも部分的に形成され、前記牽引細片本体(102)は、第1の状態では、前記牽引細片本体(102)が標的患者組織(T)と係合することができ、一方、第2の状態では、前記牽引細片本体(102)が前記標的患者組織(T)を牽引することができるように、前記第1の状態と前記第2の状態との間で選択的に移行させられることができる、牽引細片本体(102)と、
少なくとも1つの組織係合部材(104)であって、前記少なくとも1つの組織係合部材(104)は、前記牽引細片本体(102)の上に配置されている、少なくとも1つの組織係合部材(104)と、
内視鏡(1334)であって、前記内視鏡(1334)は、内視鏡近位端部及び内視鏡遠位端部(1338)を有し、前記内視鏡(1334)は、前記内視鏡近位端部と前記内視鏡遠位端部(1338)との間に長手方向に延在する内視鏡管腔(1340)を有する、内視鏡(1334)と、を有する、ことと、
前記内視鏡(1334)を患者へと挿入することと、
前記標的患者組織(T)に隣接する標的患者組織部位(S)に前記内視鏡遠位端部(1338)を位置決めすることと、
前記第1の状態へと前記牽引細片本体(102)を選択的に移行させることと、
前記牽引細片本体(102)が前記第1の状態にある状態で、前記牽引細片本体(102)を、前記内視鏡管腔(1340)を通して出して、前記標的患者組織部位(S)に挿入することと、
前記牽引細片本体(102)が前記第1の状態にある状態で、前記標的患者組織(T)を少なくとも1つの組織係合部材(104)と係合させることと、 前記牽引細片本体(102)を前記第2の状態へと選択的に移行させることによって、前記標的患者組織(T)を牽引位置へと選択的に移行させることと、
前記第1の位置から前記第2の位置への前記牽引細片本体(102)の前記選択的移行により、前記組織係合部材(104)が、前記標的患者組織(T)を前記標的患者組織の当初の位置から牽引位置に応答的に移行させることと、を含む方法。
(項目13)
前記変形可能な材料は、少なくとも部分的に、弾性材料であり、前記牽引細片本体(102)は、前記第2の状態に付勢されており、前記方法は、
前記組織係合部材(104)が前記標的患者組織(T)と係合している状態で、前記標的患者組織(T)により与えられる長手方向の下方の力を利用することによって、前記牽引細片本体(102)が前記第2の状態に移行することを制限することと、
剥離器(1642)を前記標的患者組織部位(S)に提供することと、
前記牽引細片本体(102)が前記第1の状態で前記標的患者組織(T)と係合している状態で、前記標的患者組織(T)の少なくとも一部分を剥離することであって、前記標的患者組織(T)の前記剥離が、前記標的患者組織(T)により与えられる長手方向の下方の力を応答的に軽減する、ことと、
前記標的患者組織(T)により与えられる長手方向の下方の力の前記軽減を利用して、前記牽引細片本体(102)が、形状記憶材料の固有の性質に応じて、前記第2の状態に移行するように促すことと、を含む、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記変形可能な材料は、弾性材料、形状記憶材料、及び布材料のうちの少なくとも1つであり、前記方法は、
シース(1020)を提供することであって、前記シース(1020)は、シース近位端部(1024)及びシース遠位端部(1026)を有し、前記シースは、前記シース近位端部(1024)と前記シース遠位端部(1026)との間に長手方向に延在するシース管腔(1022)を有する、ことと、
前記牽引細片本体(102)をシース送達状態へと選択的に移行させることと、
前記牽引細片本体(102)が前記シース送達状態にある状態で、前記牽引細片本体(102)を前記シース管腔(1022)の内部に配置することと、
前記シース管腔(1022)の半径方向の内向き力を利用して前記牽引細片本体(102)を前記シース送達状態に制限することと、
前記牽引細片本体(102)が前記シース送達状態にある状態で、取り付けられた牽引細片本体(102)を伴う前記シース(1020)を、前記内視鏡管腔(1340)を通して前記標的患者組織部位(S)へ前進させることと、
前記牽引細片本体(102)が前記標的患者組織部位(S)に留まっている状態で、前記標的患者組織部位(S)及び前記内視鏡(1334)のうちの少なくとも一方から前記シース(1020)を後退させることと、
前記シース(1020)の前記後退を利用して、前記牽引細片本体(102)を、前記第1の状態に応答的に移行させることと、を含む、項目13に記載の方法。
(項目15)
前記変形可能な材料が、少なくとも部分的に温度応答性形状記憶材料であり、前記牽引細片本体(102)が、前記第2の状態に予め設定され、前記方法は、
前記牽引細片本体(102)を遷移温度範囲未満の温度に選択的に冷却することと、
前記牽引細片本体(102)が前記遷移温度範囲未満の温度にある状態で、前記牽引細片本体(102)を前記第2の状態から前記第1の状態に選択的に変形させることと、
前記標的患者組織(S)における周囲熱を利用して、前記牽引細片本体(102)を前記遷移温度範囲超の温度にまで加熱することと、
前記牽引細片本体(102)が前記遷移温度範囲超の温度にある状態で、前記変形可能な材料の固有の特性を利用して、前記牽引細片本体(102)を前記第2の状態に向けて選択的に促すことと、
前記組織係合部材(104)が前記標的患者組織(T)と係合している状態で、前記標的患者組織(T)により与えられる長手方向の下方の力を利用することによって、前記牽引細片本体が、前記第2の状態に移行させられることを制限することと、
剥離器(1642)を前記標的患者組織部位(S)に提供することと、
前記牽引細片本体(102)が前記第1の状態で前記標的患者組織(T)と係合している状態で、前記標的患者組織(T)の少なくとも一部分を剥離し、前記標的患者組織(T)により与えられる長手方向の下方の力を応答的に軽減することと、
前記標的患者組織(T)により与えられる長手方向の下方の力の前記軽減を伴って、前記牽引細片本体(102)が、前記温度応答性形状記憶材料の固有の性質に応答して、前記第2の状態に移行するように促すことと、を含む、項目12に記載の方法。
(項目16)
前記変形可能な材料が、少なくとも部分的に展性材料であり、前記牽引細片本体(102)は、前記第1の状態及び第2の状態のうちの少なくとも選択された一方の状態に、選択的に変形させられ、かつ保持されることができ、前記方法は、
前記牽引細片本体(102)を前記第1の状態へと選択的に変形させることと、
剥離器(1642)を前記標的患者組織部位(S)に提供することと、
前記標的患者組織(T)の少なくとも一部分を剥離することと、
前記標的患者組織(T)が剥離されるにつれて、前記牽引細片本体(102)を前記第2の状態に選択的にかつ手動で変形させることと、
前記牽引細片本体(102)を用いて、前記剥離された標的患者組織(T)を前記牽引位置へと少なくとも部分的に促すことと、を含む、項目12に記載の方法。
(項目17)
前記変形可能な材料が、フレキシブルステンレス鋼双安定ばねバンドであり、前記牽引細片本体(102)は、前記第2の状態に付勢されており、前記方法は、
心棒(1130)の外側表面(1128)の周りに前記牽引細片本体(102)を変形させることによって、前記牽引細片本体(102)を前記第1の状態へと選択的に移行させることと、
前記フレキシブルステンレス鋼双安定ばねバンドにより与えられる半径方向の内向き力を利用して、前記牽引細片本体(102)を前記心棒(1130)の前記外側表面(1128)に制限することと、
前記牽引細片本体(102)が前記第1の状態にある状態で、取り付けられた牽引細片本体(102)を伴う前記心棒(1130)を、前記内視鏡管腔(1340)を通して前記標的患者組織(T)部位に挿入することと、
前記組織係合部材(104)が、前記標的患者組織(T)の少なくとも一部分に接触しているように、前記牽引細片本体(102)を位置決めすることと、
前記牽引細片本体(102)が前記標的患者組織(T)の少なくとも一部分に接触している状態で、前記標的患者組織部位(S)及び前記内視鏡管腔(1340)のうちの少なくとも一方から前記心棒(1130)を取り除くことと、
前記牽引細片本体(102)が前記第2の状態に向けて移行するように促すように、前記牽引細片本体(102)に選択的に力を加えることと、
前記牽引細片本体(102)が前記第1の状態にある状態で、前記標的患者組織(T)により与えられる長手方向の下方の力を利用することによって、前記牽引細片本体(102)が、前記第2の状態に移行することを制限することと、
剥離器(1642)を前記標的患者組織部位(S)に挿入することと、
前記牽引細片本体(102)が前記第1の状態で前記標的患者組織(T)と係合している状態で、前記標的患者組織(T)の少なくとも一部分を剥離し、前記標的患者組織(T)により与えられる長手方向の下方の力を応答的に軽減することと、
前記標的患者組織(T)により与えられる長手方向の下方の力の前記軽減を伴って、前記牽引細片本体(102)が、前記フレキシブルステンレス鋼双安定ばねバンドの固有の性質に応答して、前記第2の状態に移行するように促すことと、を含む、項目12に記載の方法。
(項目18)
粘膜下層剥離術を補助するためのシステムであって、
組織牽引装置(100)であって、
牽引細片本体(102)であって、前記牽引細片本体(102)は、横方向に離間された第1の端部及び第2の端部(108及び112)を有し、前記牽引細片本体(102)は、変形可能な材料から少なくとも部分的に形成され、前記牽引細片本体(102)は、第1の状態では、前記牽引細片本体(102)が標的患者組織(T)と係合することができ、一方、第2の状態では、前記牽引細片本体(102)が前記標的患者組織(T)を牽引することができるように、前記第1の状態と前記第2の状態との間で選択的に移行させられることができる、牽引細片本体(102)と、
少なくとも2組の組織係合部材(104)であって、第1の組の組織係合部材(106)は、前記牽引細片本体の第1の端部(108)の上に配置され、第2の組の組織係合部材(110)は、前記牽引細片本体の第2の端部(112)の上に配置され、前記組織係合部材(104)は、バーブ、クリップ、フック、接着剤、及び任意の他の取り付け機構のうちの少なくとも1つである、少なくとも2組の組織係合部材(104)と、を有する組織牽引装置(100)と、
内視鏡(1334)であって、前記内視鏡(1334)は、近位端部及び遠位端部(1338)を有し、前記内視鏡(1334)は、前記内視鏡近位端部と前記内視鏡遠位端部(1338)との間に長手方向に延在する内視鏡管腔(1340)を有する、内視鏡(1334)と、
剥離器(1642)と、を備える、システム。
(項目19)
前記変形可能な材料が、弾性材料であり、前記第1の状態と第2の状態との間の遷移が、加力、及び前記牽引細片本体(102)の弾性変形のうちの少なくとも一方に応答して生じる、項目18に記載の組織牽引装置(100)。
(項目20)
前記変形可能な材料が、弾性材料、形状記憶材料、及び布材料のうちの少なくとも1つであり、前記牽引細片本体(102)は、シース送達状態へと移行させられることができ、前記シース送達状態にある前記牽引細片本体(102)は、シース(1020)のシース管腔(1022)の内部に配置されるような形をしている、項目19に記載のシステム。
(項目21)
前記変形可能な材料が、温度応答性形状記憶材料であり、前記牽引細片本体(102)は、前記第2の状態に予め設定されているように構成され、前記牽引細片本体(102)が遷移温度範囲未満の温度にあるときには、前記牽引細片本体(102)は、前記第2の状態から前記第1の状態へと変形させられることができるように構成され、前記牽引細片本体(102)が前記遷移温度範囲超の温度にあるときには、前記牽引細片本体(102)は、前記第2の状態に自動的に戻るように構成されている、項目18に記載のシステム。
(項目22)
前記変形可能な材料が、展性材料であり、展性材料から少なくとも部分的に形成された前記牽引細片本体(102)が、前記第1の状態及び第2の状態のうちの少なくとも選択された一方の状態に、選択的に変形させられ、かつ保持されることができる、項目18に記載のシステム。
(項目23)
前記変形可能な材料が、フレキシブルステンレス鋼双安定ばねバンドであり、前記第1の状態にある前記牽引細片本体(102)は、心棒(1130)の外側表面(1128)と係合するような形をしており、前記組織係合部材(104)は、前記牽引細片本体(102)が前記第1の状態にあるときには、扁平状態にあり、前記組織係合部材(104)は、前記牽引細片本体(102)が少なくとも部分的に前記第2の状態にあるときには、開いた状態にある、項目18に記載のシステム。
(項目24)
前記牽引細片本体(102)が、少なくとも1つの開口部(516)を含む、項目1に記載の組織牽引装置(100)。
(項目25)
前記少なくとも1つの開口部のうちの1つ以上が、ダイアモンド形(517)である、項目24に記載の組織牽引装置(100)。
(項目26)
組織牽引装置(100)を提供することが、少なくとも1つの開口部(516)を含む牽引細片本体(102)を提供することを含む、項目12に記載の方法。
(項目27)
少なくとも1つの開口部を含む牽引細片本体(102)を提供することが、少なくとも1つのダイアモンド形開口部(517)を含む牽引細片本体(102)を提供することを含む、項目26に記載の方法。
(項目28)
前記牽引細片本体(102)が、少なくとも1つの開口部(516)を含む、項目18に記載のシステム。
(項目29)
前記少なくとも1つの開口部のうちの1つ以上が、ダイアモンド形(517)である、項目28に記載のシステム。
【0008】
よりよく理解するために、添付図面を参照することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の使用構成における本発明の一態様の側面図である。
図2】第2の使用構成における、図1の態様の側面図である。
図3】様々な別の配列における図1の態様の側面図である。
図4】様々な別の配列における図1の態様の側面図である。
図5】様々な別の配列における図1の態様の側面図である。
図6】様々な別の配列における図1の態様の側面図である。
図7】様々な別の配列における図1の態様の側面図である。
図8】様々な別の配列における図1の態様の側面図である。
図9】様々な別の配列における図1の態様の側面図である。
図10】第3の使用構成における図1の態様の側面図である。
図11】第4の使用構成における図1の態様の側面図である。
図12図1の態様の構成部品の側面図である。
図13図1の態様の一連の操作例を例示する図である。
図14図1の態様の一連の操作例を例示する図である。
図15図1の態様の一連の操作例を例示する図である。
図16図1の態様の一連の操作例を例示する図である。
図17図1の態様の一連の操作例を例示する図である。
図18図11の態様の操作特徴例を例示する図である。
図19】別の配列における図15の態様の操作特徴例を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
特段の定義がなされていない限り、本明細書で使用されているすべての技術的及び科学的用語は、本開示が属する当業者により一般的に理解されている意味と同じ意味を有する。
【0011】
本明細書で使用される場合、用語「患者」は、以下に限定されないが、ヒト、ブタ、ラット、ネズミ、イヌ、ヒツジ、ウマ、サル、類人猿、ウサギ、ウシ、農場動物、家畜等を含むいかなる有機体をも指す。
【0012】
本明細書で使用される場合、用語「ユーザ」は、区別なく使用することができ、補助の準備をし、及び/又は手順を実行する個人を指す。
【0013】
本明細書中で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、その文脈が特段明確に示されていない限り、複数形も同様に含み得る。本明細書中で使用される場合、用語「備える(comprises)」及び/又は「備えている(comprising)」は、記載された機構、手順、操作、構成要素、及び/又は部品の存在を明示することができるが、1つ以上の他の機構、手順、操作、構成要素、及び/若しくは部品の存在又は追加を除外するものではないことをさらに理解されたい。
【0014】
本明細書中で使用される場合、用語「及び/又は」は、関連する列挙された1つ以上の要素の任意の又はすべての組み合わせを含むことができる。
【0015】
本明細書中で使用される場合、「XとYとの間」などの語句は、X及びYを含むものと解釈することができる。
【0016】
1つの要素が、別の要素「の上」にあり、に「取り付けられ」、に「結合され」等と引用される場合、その1つの要素は、直接他の要素の上にあり、取り付けられ、結合されることができ、若しくは接触し、又は複数の要素を介在してもよいこともまた、理解できるであろう。また、別の機構に「隣接」して配設されている構造又は機構に対する言及は、その隣接機構と重なる部分、又はその下に横たわる部分を有しないことは、当業者には理解されるであろう。
【0017】
種々の要素を説明するため、本明細書で、用語「第1の」、「第2の」等が使用されることがあるが、これらの要素は、これらの用語により限定されるべきではないことを理解されたい。これらの用語は、単に1つの要素を別の要素と区別するために使用されているにすぎない。したがって、以降に論述される「第1の」要素もまた、本開示の教示から外れることなしに、「第2の」要素と呼ばれることもできる。一連の操作(又は手順)は、特段明示されない限り、特許請求の範囲又は図面中に提示された順序に限定されない。
【0018】
本発明は、任意の組み合わせで、以下の特徴を備え、それらから構成され、又は基本的にそれらから構成される。
【0019】
図1は、組織牽引装置100を示す。組織牽引装置100は、牽引細片本体102、及び少なくとも1つの組織係合部材104を備える。組織係合部材104は、牽引細片本体102の上に配置されている。組織係合部材104は、バーブ、クリップ、フック、接着剤、及び任意の他の取り付け機構のうちの少なくとも1つとすることができる。第1の組の組織係合部材106は、牽引細片本体第1の端部108の上に配置され、第2の組の組織係合部材110は、牽引細片本体の第2の端部112の上に配置されることができる。牽引細片本体第1の端部及び第2の端部108、112は、牽引細片本体102に沿って横方向に離間されている。用語「横方向」は、図1の配置では、実質的に水平方向を示すように本明細書で使用される。
【0020】
牽引細片本体102は、変形可能な材料から少なくとも部分的に形成されている。牽引細片本体は、(図1に示す)第1の状態と(図2に示す)第2の状態との間で選択的に移行させられることができる。第1の状態では、牽引細片本体102は、標的患者組織Tと係合することが可能である。標的患者組織Tとは、限定されないが、病変とすることができる。第2の状態では、牽引細片本体102は、標的患者組織Tを牽引することができる。
【0021】
図3に示すように、牽引細片本体102は、網目状の細片としてもよい。図4に示すように、牽引細片本体102は、「細首」構造を形成するように、第1及び第2の各々の端部上に少なくとも1つの窪み414を含んでもよい。図5に示すように、牽引細片本体102は、限定されないが、ダイアモンド形の開口部517などの開口部516を含んでもよい。図6に示すように、牽引細片本体102は、限定されないが、ダイアモンド形の開口部517などの複数の窪み414及び開口部516を含んでもよい。図7~8に示すように、牽引細片本体102は、限定されないが、鉗子の先端などのクランプ器具(図示せず)の少なくとも一部分を受容するように構成されている少なくとも1つのクランプ孔718を含んでもよい。図9に示すように、牽引細片本体102は、限定されないが、矩形の開口部919などの少なくとも1つの開口部516を含んでもよい。牽引細片本体102は、ダイアモンド形としてもよい。
【0022】
変形可能な材料は、少なくとも部分的に弾性材料であってもよい。弾性材料は、限定されないが、弾性ワイヤなどの弾性材料、布材料、及び限定されないが、ニチノールなどの形状記憶材料のうちの少なくとも1つであってもよい。そのような場合、第1の状態と第2の状態との間の遷移は、加力、及び弾性材料牽引細片本体102の弾性変形のうちの少なくとも一方に応答して生じる。変形可能な材料は、第2の状態に付勢されてもよい。ユーザは、弾性材料牽引細片本体102に力を加えて、弾性材料牽引細片本体102を、第2の状態から第1の状態に変形させることができる。加力圧を除去すると直ちに、形状記憶材料の固有の性質に応答して、弾性材料牽引細片本体102は、第1の状態から第2の状態に自動的に戻る。
【0023】
図10に示すように、弾性材料牽引細片本体102は、シース1020が提供される場合、シース送達状態へと移行させられることができる。シース送達状態にある弾性材料牽引細片本体102は、シース1020のシース管腔1022の内部に配置されるための形をしている。シース送達状態にある形状記憶材料及び布材料牽引細片本体102は、当該本体自体の上に重なるように巻かれ、シース管腔1022の直径より小さい直径を有してよい。
【0024】
図10に示すように、シース1020は、シース近位端部1024及びシース遠位端部1026を有する。シース管腔1022は、シース近位端部1024とシース遠位端部1026との間に長手方向に延在する。用語「長手方向の」は、本明細書中で使用され、「横の」方向に対して実質的に垂直な方向を示し、図10の配置では、おおよそ垂直方向として示す。
【0025】
変形可能な材料は、少なくとも部分的に温度応答性形状記憶材料であってもよい。温度応答性形状記憶材料は、限定されないが、ニチノールなどの形状記憶合金であってもよい。温度応答性形状記憶材料牽引細片本体102は、遷移温度範囲超の予め設定された形状として第2の状態へと形成されてもよい。遷移温度範囲は、温度応答性形状記憶材料を形成する金属などの材料の特定の割合に依存する。遷移温度範囲未満では、温度応答性形状記憶材料は、高延性であり、第1の状態などの所望の形状へと塑性変形され得る。遷移温度範囲超に再加熱すると直ちに、温度応答性形状記憶材料は、その予め設定された形状、例えば第2の状態に戻る。
【0026】
変形可能な材料は、少なくとも部分的に展性材料であってもよい。展性材料牽引細片本体102は、第1の状態及び第2の状態のうちの選択された少なくとも一方に選択的に変形され、その状態に保持されることができる。ユーザは、展性材料牽引細片本体102を第1の状態へと変形し、次いでその展性材料牽引細片本体102を第2の状態に徐々に変形することができる。ユーザは、第1の状態と第2の状態との間の任意の所望の形状で展性材料牽引細片本体102の変形を停止することができ、その結果、展性材料牽引細片本体102を、少なくとも部分的に第1の状態にあり、かつ少なくとも部分的に第2の状態にある所望の形状に保持することができる。言い換えると、展性材料牽引細片本体102は、第1の状態、第2の状態、又は第1と第2の状態の間の任意の中間的な状態に手動で変形されることができる。
【0027】
変形可能な材料は、少なくとも部分的にフレキシブルステンレス鋼双安定ばねバンドであってもよい。この構成では、フレキシブルステンレス鋼双安定ばねバンド牽引細片本体102は、「スラップブレスレット」、又は「スラップラップ」と同じように動作することができる。スラップブレスレットは、2つの動作位置、又は2つのあるべき状態を有するステンレス鋼双安定ばねバンドを含む。第1の状態とは、細長い位置であり、例えば、フレキシブルステンレス鋼双安定ばねバンド牽引細片本体102の第1の状態である。第1の状態では、ステンレス鋼双安定ばね本体は、位置エネルギーを保持している。第2の状態は、コイルに巻いた状態であり、例えば、フレキシブルステンレス鋼双安定ばねバンド牽引細片本体102の第2の状態である。ステンレス鋼双安定ばねバンドの抵抗力に打ち克つのに十分大きい力が、ステンレス鋼双安定ばねバンドに加えられるとき、位置エネルギーにより、バンドは第1の状態から第2の状態に巻き上がることができる。
【0028】
図11に示すように、第1の状態にあるフレキシブルステンレス鋼双安定ばねバンド牽引細片本体102は、心棒1130の心棒外側表面1128と係合するための形をしている。フレキシブルステンレス鋼双安定ばねバンド牽引細片本体102が第1の状態にあるときには、フレキシブルステンレス鋼双安定ばねバンドにより与えられた半径方向の内部力が、フレキシブルステンレス鋼双安定ばねバンド牽引細片本体102を心棒の外側表面1128に制限する。心棒シース(図示せず)は、取り付けられたフレキシブルステンレス鋼双安定ばねバンド牽引細片本体102を使って、心棒1130の上方に配置されてもよく、フレキシブルステンレス鋼双安定ばねバンド牽引細片本体102を心棒の外側表面1128に制限する半径方向の内部力を与える。牽引細片本体が第1の状態にあるときに、図11の矢印で示すように、ユーザは、フレキシブルステンレス鋼双安定ばねバンド牽引細片本体102に力を加えて、フレキシブルステンレス鋼双安定ばねバンド牽引細片本体102が第2の状態に向かって移行するように促すことができる。
【0029】
組織係合部材104は、牽引細片本体102が第1の状態にあるときに、扁平状態にあり得る。扁平状態にある組織係合部材104は、少なくとも部分的に牽引細片本体102に接して位置決めされることができる。組織係合部材104が扁平状態にあるときに、牽引細片本体102は、標的患者組織Tを組織係合部材104に係合せずに、標的患者組織Sへと挿入されることができる。組織係合部材104は、牽引細片本体102が少なくとも部分的に第2の状態にあるときに、開いた状態にあり得る。開いた状態にある組織係合部材104は、標的患者組織Tと係合することができるように、少なくとも部分的に牽引細片本体102から離間されている。
【0030】
図12に示すように、牽引細片本体102は、少なくとも1つの嵌合部材1232を有してもよい。嵌合部材1232は、少なくとも2つの牽引細片本体102を一緒に選択的に結合するように構成されている。少なくとも2つの牽引細片本体102と一緒の結合は、組み合わされた牽引細片本体1233の有効な幅を増加させるのに望ましい。組み合わされた牽引細片本体1233は、ある特定の状況、例えば、以下に限定されないが、標的患者組織Tがあまりに大きいため、単一の牽引細片本体102によっては牽引することができない場合には、単一の牽引細片本体102よりも一層望ましい。
【0031】
図13に示すように、牽引細片装置100は、内視鏡1334を含んでもよい。内視鏡1334は、内視鏡近位端部(図示せず)及び内視鏡遠位端部1338を有する。内視鏡1334は、内視鏡近位端部(図示せず)と内視鏡遠位端部1338との間に長手方向に延在する内視鏡管腔1340を有する。図18に示すように、取り付けられた牽引細片本体102を伴う心棒1130及び心棒シース(図示せず)のうちの少なくとも一方は、内視鏡管腔1340の直径よりも小さい直径を有するように構成されることができる。図13に示すように、シース1020は、内視鏡管腔1340の直径よりも小さい直径を有するように構成されることができる。
【0032】
以下の説明により、例示的な目的のため、シース1020及び弾性材料牽引細片本体102の使用について述べる。上述したいかなる変形可能な材料牽引細片本体102、例えば、温度応答性形状記憶材料牽引細片本体102、展性材料牽引細片本体102、及びステンレス鋼双安定ばねバンド牽引細片本体102は、一連の同様な作動で使用されることができることを理解されたい。さらに、上述したいかなる牽引細片本体102も、シース1020の使用又は不使用の場合でも、標的患者組織部位Sに送達されることができることを理解されたい。
【0033】
上述したように、使用するときには、組織牽引装置100は、ユーザに提供される。内視鏡1334は、患者へと挿入されることができる。図13に示すように、内視鏡遠位端部1338は、標的患者組織Tに隣接する標的患者組織部位Sにおいて位置決めされる。
【0034】
弾性材料牽引細片本体102は、シース状態へと移行されることができる。弾性材料牽引細片本体102がシース管腔1026の直径よりも小さい直径を有するまで、弾性材料牽引細片本体102をそれ自体の上で回転させるユーザによって、弾性材料牽引細片本体102は、シース送達状態へと移行されることができる。弾性材料牽引細片本体102がシース送達状態にある状態で、弾性材料牽引細片本体102は、シース管腔1026の内部に配置される。シース管腔1026の半径方向の内部力は、弾性材料牽引細片本体102をシース送達状態に制限する。
【0035】
図13に示すように、弾性材料牽引細片本体102がシース送達状態にある状態で、取り付けられた弾性材料牽引細片本体102を伴うシース1020は、内視鏡管腔1340を通って標的患者組織部位Sに進行する。図14に示すように、シース1020は、弾性材料牽引細片本体102が標的患者組織部位Sに留まっている状態で、矢印で描かれているように、標的患者組織部位S及び内視鏡1334のうちの少なくとも1つから後退されることができる。シース1020の牽引により、弾性材料牽引細片本体102が、第1の状態に応答的に移行することができる。シース管腔1026により与えられた半径方向の内部力の除去により、弾性材料牽引細片本体102が、第1の状態へと移行する(例えば、ほどく)ことができる。
【0036】
図15に示すように、弾性材料牽引細片本体102が第1の状態にある状態で、標的患者組織Tは、少なくとも1つの組織係合部材104と係合される。限定されないが、第1の固定点P1に挿入されるバーブ、第1の固定点P1に取り付けられるクリップ、第1の固定点P1と結合されるフック、第1の固定点P1に取り付けられる接着剤、他の好適な任意の取り付け機構、又はそれらの組み合わせを含む仕組み等の第1の組の組織係合部材106は、提供されたとき、標的患者組織T上の第1の固定点P1に係合することができる。限定されないが、第2の固定点P2に挿入されるバーブ、第2の固定点P2に取り付けられるクリップ、第2の固定点P2に結合されるフック、第2の固定点P2に取り付けられる接着剤、他の好適な任意の取り付け機構、又はそれらの組み合わせを含む仕組み等の第2の組の組織係合部材110は、提供されたとき、標的患者組織Tから離れている第2の固定点P2に係合することができる。第2の固定点P2は、第1の固定点P1から横方向に離間された標的患者組織Tの上に配置されることができる。
【0037】
図15に示すように、組織係合部材104が標的患者組織Tと係合している状態で、標的患者組織Tにより与えられた長手方向の下方の力は、図15の配置で下向きの矢印で描かれているように、弾性材料牽引細片本体102が第2の状態へ移行することを制限する。第2の組の組織係合部材110が第2の固定点P2と係合しているときには、第1の組の組織係合部材106により係合されたときの第1の固定点P1、及び第2の固定点P2の両方とも、弾性材料牽引細片本体102が第2の状態へ移行することを制限する。言い換えれば、弾性材料牽引細片本体102は、弾性材料の固有の性質のため、その第2の状態へ促されることができる。弾性材料牽引細片本体102は、標的患者組織Tの第1の固定点P1、及び/又は第2の固定点P2に係合されているため、弾性材料牽引細片本体102は、図15の実質的に上向きの矢印で描かれているように、おおよそ長手方向の上方の力を与え、その結果、係合された組織を牽引し、第2の位置に向かって移行させる。係合された組織は、周囲の患者組織に取り付けられ、その当初の位置に留まるように促される。係合された組織は、反作用力を与え、その反作用力は、図15の下向きの矢印で描かれているように、長手方向の下向きの力であり、弾性材料牽引細片本体102の長手方向の上向きの力に対抗し、係合された組織の牽引を防いでいる。この長手方向の下向きの力が、弾性材料牽引細片本体102が第2の状態に移行するのを制限している。
【0038】
図16に示すように、剥離器1642は、標的患者組織部位Sに提供されることができる。剥離器1642は、内視鏡管腔1340を通して標的患者組織部位Sに進行することができる。弾性材料牽引細片本体102が第1の状態で標的患者組織Tと係合している状態で、標的患者組織Tの少なくとも一部分を剥離することができる。標的患者組織Tの剥離は、標的患者組織Tにより与えられた長手方向の下向きの力を応答的に軽減する。
【0039】
図16~17に示すように、標的患者組織Tに取り付けられた状態で、弾性材料牽引細片本体102を第2の状態へと選択的に移行させることによって、標的患者組織Tは、牽引位置へと選択的に移行される。標的患者組織Tにより与えられた長手方向の下向きの力の軽減により、牽引細片本体102が、弾性材料の固有の性質に応答して、第2の状態に移行するように促すことができる。
【0040】
図16~17に示すように、標的患者組織Tに取り付けられている状態で、弾性材料牽引細片本体102が第1の位置から第2の位置へ選択的に移行すると、組織係合部材104が、標的患者組織Tをその当初の位置から牽引位置まで応答的に移行させる。ユーザは、内視鏡管腔1340を通して、取り付けられ剥離された標的患者組織Tを伴う組織牽引装置100を、標的患者組織部位Sから取り除くことができる。図17に示すように、ユーザは、捕捉器具1744を使用して、内視鏡管腔1340を通して、取り付けられ剥離された標的患者組織Tを伴う組織牽引装置100を、標的患者組織部位Sから取り除くことができる。
【0041】
弾性材料牽引細片本体102は、シース1020のない上記で述べたように、おおよそ同様な順序で提供され、使用されることができる。しかしながら、シース1020がない場合、ユーザは、弾性材料牽引細片本体102を変形させて、弾性材料牽引細片本体102を第2の状態から第1の状態に移行させる。さらに、第1の状態にある弾性材料牽引細片本体102を使うと、弾性材料牽引細片本体102は、内視鏡管腔1340を通して出して、標的患者組織部位Sに挿入される。
【0042】
上述のように、温度応答性形状記憶材料牽引細片本体102は、おおよそ同様な順序で提供され、使用されることができる。しかしながら、温度応答性形状記憶材料牽引細片本体102を使って、ユーザは、温度応答性形状記憶材料牽引細片本体102を遷移温度範囲未満の温度に冷却する。ひとたび温度応答性形状記憶材料牽引細片本体102が、遷移温度範囲未満の温度に冷却されると、ユーザは、温度応答性形状記憶材料牽引細片本体102を第2の状態から第1の状態に変形させる。
【0043】
さらに、標的患者組織部位Sにおける温度応答性牽引細片本体102を使うと、標的患者組織部位Sにおける周囲熱は、温度応答性形状記憶材料牽引細片本体102を遷移温度範囲超の温度まで上げることができる。温度応答性形状記憶材料牽引細片本体102が、遷移温度範囲超の温度まで加熱されると、温度応答性形状記憶材料の固有の性質により、温度応答性形状記憶材料牽引細片本体102が第2の状態に向けて選択的に促される。標的患者組織Tにより与えられた長手方向の下向きの力の軽減により、温度応答性形状記憶材料牽引細片本体102が、温度応答性形状記憶材料の固有の性質に応答して、第2の状態に移行するのを促すことができる。
【0044】
上述のように、展性材料牽引細片本体102は、おおよそ同様の順序で提供され、使用されることができる。しかしながら、展性材料牽引細片本体102については、ユーザは、展性材料牽引細片本体102を第1の状態に移行させるように、展性材料牽引細片本体102を変形させる。標的患者組織Tが剥離されるときに、展性材料牽引細片本体102のユーザ操作により、展性材料牽引細片本体102は、第2の状態に選択的にかつ手動で変形されることができる。
【0045】
上述のように、フレキシブルステンレス鋼双安定ばねバンド牽引細片本体102は、おおよそ同様な順序で提供され、使用されることができる。しかしながら、フレキシブルステンレス鋼双安定ばねバンド牽引細片本体102を使うと、フレキシブルステンレス鋼双安定ばねバンド牽引細片本体102は、心棒の外側表面1128の周りのフレキシブルステンレス鋼双安定ばねバンド牽引細片本体102を変形させることにより、第1の状態へと移行されることができる。フレキシブルステンレス鋼双安定ばねバンドにより与えられた半径方向の内部力が、フレキシブルステンレス鋼双安定ばねバンド牽引細片本体102を心棒の外側表面1128に制限する。図18に示すように、取り付けられたステンレス鋼双安定ばねバンド牽引細片本体102を伴う心棒1130は、内視鏡管腔1340を通して標的患者組織部位Sに挿入されることができる。
【0046】
フレキシブルステンレス鋼双安定ばねバンド牽引細片本体102は、組織係合部材104が、標的患者組織Tの少なくとも一部分に直接接触しているように、位置決めされている。標的患者組織Tの少なくとも一部分に直接接触している組織係合部材104を使うと、心棒1130は、標的患者組織部位S及び内視鏡管腔1340のうちの少なくとも1つから取り除かれる。
【0047】
標的患者組織Tは、フレキシブルステンレス鋼双安定ばねバンド牽引細片本体102に選択的に力を加えるユーザによって、ステンレス鋼双安定ばねバンド牽引細片本体102により係合され、ステンレス鋼双安定ばねバンド牽引細片本体102を第2の状態に向けて移行するように促すことができる。フレキシブルステンレス鋼双安定ばねバンド牽引細片本体102に力を加えることにより、組織係合機構104が、扁平状態から開いた状態へ移行することができる。開いた状態にある組織係合機構104を使うと、組織係合機構104は、標的患者組織Tと係合されることができる。
【0048】
上述のように、フレキシブルステンレス鋼双安定ばねバンド牽引細片本体102は、同様な方法で第2の状態に移行するのを制限される。標的患者組織Tにより与えられた長手方向の下向きの力の軽減により、ステンレス鋼双安定ばねバンドの固有の性質に応答して、牽引細片本体102が、第2の状態に移行するのを促すことができる。
【0049】
牽引組織装置100は、プラットフォーム(図示せず)を含み得ることが企図される。牽引細片本体102は、そのプラットフォームと結合されるように、かつ/又はそのプラットフォーム内にカプセル化されるように構成される。プラットフォームは、少なくとも部分的にポリマーから作製されてもよい。プラットフォームは、少なくとも1つのプラットフォーム組織係合機構(図示せず)を含んでもよい。プラットフォーム組織係合機構は、クリップ、バーブ、フック、接着剤、及び任意の他の取り付け機構のうちの少なくとも1つとしてもよい。取り付けられた牽引細片本体102を有するプラットフォームは、シース管腔1026及び内視鏡管腔1340のうちの少なくとも1つを通して管の大きさとしてもよい。
【0050】
組織係合機構104は、標的患者組織T、第1の固定点P1、及び第2の固定点P2のうちの少なくとも1つと着脱可能に係合されるように構成されてもよいことが企図される。この構成では、牽引細片本体102は、標的患者組織部位Sから標的患者組織Tを取り除く前に、標的患者組織T、第1の固定点P1、及び第2の固定点P2のうちの少なくとも1つから取り除くことができる。組織係合機構104と着脱可能に係合することにより、牽引細片本体102が、標的患者組織Tの剥離中に再度位置決めされることが可能となる。
【0051】
図19に示すように、第2の固定点P2は、第1の固定点P1から横方向に離間された標的患者組織Tの上に配置されるように示し、また上述されてきたが、第2の固定点P2、又は任意の他の固定点(複数可)はまた、あるいはこれに代えて、標的患者組織T及び第1の固定点P1のうちの少なくとも1つと対向し、かつ離間され得ることが企図される。そのような場合には、標的患者組織Tが牽引状態にある場合、第2の組の組織係合部材110は、牽引される細片本体102及び剥離される標的患者組織を第2の固定点P2に固定する。
【0052】
組織牽引装置100は、手技、例えば、以下に限定されないが、内視鏡的粘膜下層剥離術の中でユーザを補助し得ることが企図される。組織牽引装置100は、別個のユーザ操作式の組織牽引ツールを必要とすることなく露出されることができるように、内視鏡1334と無関係な病変を牽引するのに使用されることができる。
【0053】
組織牽引装置100は、内視鏡的粘膜下層剥離術などの手技の中で使用されるように記載されてきたが、組織牽引装置100は、患者から標的とされた患者組織の剥離、牽引、及び除去を含み得る任意の同様な手技の中で使用されることができることを理解されたい。
【0054】
複数の変形可能な材料構成が、ある特定の性質及び使用構成を有するようにそれぞれ記載されてきたが、変形可能な様々な材料構成は、組織牽引装置100に悪影響を与えなければ、使用構成において交換可能であることを理解されたい。
【0055】
ステンレス鋼双安定ばねバンドは、ステンレス鋼であるものとして説明されてきたが、双安定ばねバンドは、任意の適切なポリマー、任意の適切な金属、任意の他の適切な材料、又はそれらの任意の組み合わせから作製されてもよいことを理解されたい。
【0056】
本開示の態様は、上記の例の態様を参照しながら具体的に示され、説明されてきたが、様々な追加の態様が企図され得ることを、当業者であれば理解するであろう。例えば、様々な装置を使用するために上述された特定の方法は、単なる例示であり、当業者ならば、上述の装置、又はそれらの構成要素を、本明細書中で示し、かつ説明したそれらに置き換えて、ツール、一連の工程、又は手段/選択肢をいくらでも簡単に確定することができる。各図の中で明瞭さを維持しようとすると、重複して示された構成要素の特定のものは、具体的に番号付けされていないが、当業者は、番号付けされた構成要素に基づいて、番号付けされていない構成要素と関連付けられているにちがいない要素番号を悟るであろうし、同様の構成要素間の区別は、意図されておらず、図中の要素番号の有無により単純に含意されていない。説明された任意の構造及び構成要素は、単一の単位若しくはモノリシックな部分品として、一体化して形成された方がよく、又は、任意の一般品若しくは特注品の構成要素、又は/又は任意の好適な材料若しくは材料の組み合わせを含むこれらの形式のどちらかを使って、別々のサブ構成要素から作り上げた方がよいが、しかしながら、選択された材料(複数可)は、多くの適用分野に対して生体適合性を持つ必要がある。任意の望ましい構造及び構成要素は、特定の使用環境に対して望ましいように、使い捨てが可能であり、又は再利用可能であった方がよい。任意の構成要素は、材料、構成、少なくとも1つの大きさ、又はその構成要素に属する同種のものを表すためのユーザ識別可能な記号と一緒に提供された方がよく、このユーザ識別可能な記号は、特定の使用環境用の同じような構成要素の配列から1つの構成要素を選択する際にユーザを潜在的に支援する。「予め設定された」状態は、現実に操作される構造がその状態に到達する前にいつでも判定されることができ、望ましい「予め設定された」状態は、その構造が予め設定された状態に達するほんの直前に判定される。用語「実質的に」は、本明細書中で使用され、大部分、ただし必ずしも完全ではない質を表し、「実質的な」質として明示された質は、いくらかの比較的少ない非良質な要素を包含する可能性を認める。本明細書中で説明された特定の構成要素は、特定の幾何学的形状を有するように示されているが、本開示のすべての構造は任意の好適な形状、大きさ、構成、相対的な関係、断面積、又は特定の適用分野の望ましい他の任意の物理的特性を有してもよい。1つの態様又は構成を参照して説明された任意の構造又は特徴は、単一で、又は他の構造若しくは特徴と組み合わせて提供されてもよく、なぜならば、他のすべての態様に関して論述されたすべての選択肢を有するように、本明細書中で論述された態様及び構成のそれぞれについて説明することは、非現実的であるからである。任意のこれらの特徴を組み合わせる装置又は方法は、以下の特許請求の範囲及びそれらの任意の等価物を基準にして判定される場合、本開示の範囲に該当することを理解されたい。
【0057】
他の態様、目的、及び利点は、図面、本発明、及び添付した特許請求の範囲の調査から獲得されることができる。
【0058】
(項目1)
牽引細片本体であって、前記牽引細片本体は、変形可能な材料から少なくとも部分的に形成され、前記牽引細片本体は、第1の状態では、前記牽引細片本体が標的患者組織と係合することができ、一方、第2の状態では、前記牽引細片本体が前記標的患者組織を牽引することができるように、前記第1の状態と前記第2の状態との間で選択的に移行させられることができる、牽引細片本体と、
少なくとも1つの組織係合部材であって、前記少なくとも1つの組織係合部材は、前記牽引細片本体の上に配置されている、少なくとも1つの組織係合部材と、を備える組織牽引装置。
(項目2)
前記変形可能な材料が、弾性材料であり、前記第1の状態と第2の状態との間の遷移は、加力、及び前記牽引細片本体の弾性変形のうちの少なくとも一方に応答して生じる、項目1に記載の組織牽引装置。
(項目3)
前記変形可能な材料は、弾性材料、形状記憶材料、及び布材料のうちの少なくとも1つである、項目2に記載の組織牽引装置。
(項目4)
前記牽引細片本体は、シース送達状態へと移行させられることが可能であり、前記シース送達状態にある前記牽引細片本体は、シースのシース管腔内部に配置されるための形をしている、項目3に記載の組織牽引装置。
(項目5)
前記変形可能な材料が、温度応答性形状記憶材料であり、前記牽引細片本体が、前記第2の状態に予め設定されているように構成され、前記牽引細片本体は、前記牽引細片本体が遷移温度範囲未満の温度にあるとき、前記第2の状態から前記第1の状態へと変形させられることが可能なように構成され、前記牽引細片本体は、前記牽引細片本体が前記遷移温度範囲を超える温度にあるとき、前記第2の状態に自動的に戻るように構成されている、項目1に記載の組織牽引装置。
(項目6)
前記変形可能な材料が、展性材料であり、展性材料から少なくとも部分的に形成された前記牽引細片本体が、前記第1の状態及び第2の状態のうちの少なくとも選択された一方の状態に、選択的に変形させられ、かつ保持されることができる、項目1に記載の組織牽引装置。
(項目7)
前記変形可能な材料が、フレキシブルなステンレス鋼双安定ばねバンドである、項目1に記載の組織牽引装置。
(項目8)
前記第1の状態にある前記牽引細片本体は、心棒の外側表面と係合するような形をしており、前記組織係合部材は、前記牽引細片本体が前記第1の状態にあるときには、扁平状態にあり、前記組織係合部材は、前記牽引細片本体が少なくとも部分的に前記第2の状態にあるときには、開いた状態にある、項目7に記載の組織牽引装置。
(項目9)
前記組織係合部材が、バーブ、クリップ、フック、接着剤、及び任意の他の取り付け機構のうちの少なくとも1つである、項目1に記載の組織牽引装置。
(項目10)
第1の組の組織係合部材は、牽引細片本体の第1の端部の上に配置され、第2の組の組織係合部材は、牽引細片本体の第2の端部の上に配置され、前記牽引細片本体の第1の端部及び第2の端部は、横方向に離間されている、項目1に記載の組織牽引装置。
(項目11)
前記牽引細片本体は、少なくとも1つの嵌合部材を有し、前記嵌合部材は、少なくとも2つの牽引細片本体を一緒に選択的に連結するように構成されている、項目1に記載の組織牽引装置。
(項目12)
粘膜下層剥離術を補助するための方法であって、
組織牽引装置を提供することであって、前記組織牽引装置は、
牽引細片本体であって、前記牽引細片本体は、変形可能な材料から少なくとも部分的に形成され、前記牽引細片本体は、第1の状態では、前記牽引細片本体が標的患者組織と係合することができ、一方、第2の状態では、前記牽引細片本体が前記標的患者組織を牽引することができるように前記第1の状態と前記第2の状態との間で選択的に移行させられることができる、牽引細片本体と、
少なくとも1つの組織係合部材であって、前記少なくとも1つの組織係合部材は、前記牽引細片本体の上に配置されている、少なくとも1つの組織係合部材と、
内視鏡であって、前記内視鏡は、内視鏡近位端部及び内視鏡遠位端部を有し、前記内視鏡は、前記内視鏡近位端部と前記内視鏡遠位端部との間に長手方向に延在する内視鏡管腔を有する、内視鏡と、を有する、ことと、
前記内視鏡を患者へと挿入することと、
前記標的患者組織に隣接する標的患者組織部位に前記内視鏡遠位端部を位置決めすることと、
前記第1の状態へと前記牽引細片本体を選択的に移行させることと、
前記牽引細片本体が前記第1の状態にある状態で、前記牽引細片本体を、前記内視鏡管腔を通して出して、前記標的患者組織部位に挿入することと、
前記牽引細片本体が前記第1の状態にある状態で、前記標的患者組織を少なくとも1つの組織係合部材と係合させることと、
前記牽引細片本体を前記第2の状態へと選択的に移行させることによって、前記標的患者組織を牽引位置へと選択的に移行させることと、
前記第1の位置から前記第2の位置への前記牽引細片本体の前記選択的移行により、前記組織係合部材が、前記標的患者組織を前記標的患者組織の当初の位置から牽引位置に応答的に移行させることと、を含む方法。
(項目13)
前記変形可能な材料は、少なくとも部分的に、弾性材料であり、前記牽引細片本体は、前記第2の状態に付勢されており、前記方法は、
前記組織係合部材が前記標的患者組織と係合している状態で、前記標的患者組織により与えられる長手方向の下方の力を利用することによって、前記牽引細片本体が前記第2の状態に移行することを制限することと、
剥離器を前記標的患者組織部位に提供することと、
前記牽引細片本体が前記第1の状態で前記標的患者組織と係合している状態で、前記標的患者組織の少なくとも一部分を剥離することであって、前記標的患者組織の前記剥離が、前記標的患者組織により与えられる長手方向の下方の力を応答的に軽減する、ことと、
前記標的患者組織により与えられる長手方向の下方の力の前記軽減を利用して、前記牽引細片本体が、形状記憶材料の固有の性質に応じて、前記第2の状態に移行するように促すことと、を含む、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記変形可能な材料は、弾性材料、形状記憶材料、及び布材料のうちの少なくとも1つであり、前記方法は、
シースを提供することであって、前記シースは、シース近位端部及びシース遠位端部を有し、前記シースは、前記シース近位端部と前記シース遠位端部との間に長手方向に延在するシース管腔を有する、ことと、
前記牽引細片本体をシース送達状態へと選択的に移行させることと、
前記牽引細片本体が前記シース送達状態にある状態で、前記牽引細片本体を前記シース管腔の内部に配置することと、
前記シース管腔の半径方向の内向き力を利用して前記牽引細片本体を前記シース送達状態に制限することと、
前記牽引細片本体が前記シース送達状態にある状態で、取り付けられた牽引細片本体を伴う前記シースを、前記内視鏡管腔を通して前記標的患者組織部位へ前進させることと、
前記牽引細片本体が前記標的患者組織部位に留まっている状態で、前記標的患者組織部位及び前記内視鏡のうちの少なくとも一方から前記シースを後退させることと、
前記シースの前記後退を利用して、前記牽引細片本体を、前記第1の状態に応答的に移行させることと、を含む、項目13に記載の方法。
(項目15)
前記変形可能な材料が、少なくとも部分的に温度応答性形状記憶材料であり、前記牽引細片本体が、前記第2の状態に予め設定され、前記方法は、
前記牽引細片本体を遷移温度範囲未満の温度に選択的に冷却することと、
前記牽引細片本体が前記遷移温度範囲未満の温度にある状態で、前記牽引細片本体を前記第2の状態から前記第1の状態に選択的に変形させることと、
前記標的患者組織における周囲熱を利用して、前記牽引細片本体を前記遷移温度範囲超の温度にまで加熱することと、
前記牽引細片本体が前記遷移温度範囲超の温度にある状態で、前記変形可能な材料の固有の特性を利用して、前記牽引細片本体を前記第2の状態に向けて選択的に促すことと、
前記組織係合部材が前記標的患者組織と係合している状態で、前記標的患者組織により与えられる長手方向の下方の力を利用することによって、前記牽引細片本体が、前記第2の状態に移行させられることを制限することと、
剥離器を前記標的患者組織部位に提供することと、
前記牽引細片本体が、前記第1の状態で前記標的患者組織と係合している状態で、前記標的患者組織の少なくとも一部分を剥離し、前記標的患者組織により与えられる長手方向の下方の力を応答的に軽減することと、
前記標的患者組織により与えられる長手方向の下方の力の前記軽減を伴って、前記牽引細片本体が、前記温度応答性形状記憶材料の固有の性質に応答して、前記第2の状態に移行するように促すことと、を含む、項目12に記載の方法。
(項目16)
前記変形可能な材料が、少なくとも部分的に展性材料であり、前記牽引細片本体は、前記第1の状態及び第2の状態のうちの少なくとも選択された一方の状態に、選択的に変形させられ、かつ保持されることができ、前記方法は、
前記牽引細片本体を前記第1の状態へと選択的に変形させることと、
剥離器を前記標的患者組織部位に提供することと、
前記標的患者組織の少なくとも一部分を剥離することと、
前記標的患者組織が剥離されるにつれて、前記牽引細片本体を前記第2の状態に選択的にかつ手動で変形させることと、
前記牽引細片本体を用いて、前記剥離された標的患者組織を前記牽引位置へと少なくとも部分的に促すことと、を含む、項目12に記載の方法。
(項目17)
前記変形可能な材料が、フレキシブルステンレス鋼双安定ばねバンドであり、前記牽引細片本体は、前記第2の状態に付勢されており、前記方法は、
心棒の外側表面の周りに前記牽引細片本体を変形させることによって、前記牽引細片本体を前記第1の状態へと選択的に移行させることと、
前記フレキシブルステンレス鋼双安定ばねバンドにより与えられる半径方向の内向き力を利用して、前記牽引細片本体を前記心棒の前記外側表面に制限することと、
前記牽引細片本体が前記第1の状態にある状態で、取り付けられた牽引細片本体を伴う前記心棒を、前記内視鏡管腔を通して前記標的患者組織部位に挿入することと、
前記組織係合部材が、前記標的患者組織の少なくとも一部分に接触しているように、前記牽引細片本体を位置決めすることと、
前記牽引細片本体が前記標的患者組織の少なくとも一部分に接触している状態で、前記標的患者組織部位及び前記内視鏡管腔のうちの少なくとも一方から前記心棒を取り除くことと、
前記牽引細片本体が前記第2の状態に向けて移行するように促すように、前記牽引細片本体に選択的に力を加えることと、
前記牽引細片本体が前記第1の状態にある状態で、前記標的患者組織により与えられる長手方向の下方の力を利用することによって、前記牽引細片本体が、前記第2の状態に移行することを制限することと、
剥離器を前記標的患者組織部位に挿入することと、
前記牽引細片本体が前記第1の状態で前記標的患者組織と係合している状態で、前記標的患者組織の少なくとも一部分を剥離し、前記標的患者組織により与えられる長手方向の下方の力を応答的に軽減することと、
前記標的患者組織により与えられる長手方向の下方の力の前記軽減を伴って、前記牽引細片本体が、前記フレキシブルステンレス鋼双安定ばねバンドの固有の性質に応答して、前記第2の状態に移行するように促すことと、を含む、項目12に記載の方法。
(項目18)
粘膜下層剥離術を補助するためのシステムであって、
組織牽引装置であって、
牽引細片本体であって、前記牽引細片本体は、横方向に離間された第1の端部及び第2の端部を有し、前記牽引細片本体は、変形可能な材料から少なくとも部分的に形成され、前記牽引細片本体は、第1の状態では、前記牽引細片本体が標的患者組織と係合することができ、一方、第2の状態では、前記牽引細片本体が前記標的患者組織を牽引することができるように、前記第1の状態と前記第2の状態との間で選択的に移行させられることができる、牽引細片本体と、
少なくとも2組の組織係合部材であって、第1の組の組織係合部材は、前記牽引細片本体の第1の端部の上に配置され、第2の組の組織係合部材は、前記牽引細片本体の第2の端部の上に配置され、前記組織係合部材は、バーブ、クリップ、フック、接着剤、及び任意の他の取り付け機構のうちの少なくとも1つである、少なくとも2組の組織係合部材と、を有する組織牽引装置と、
内視鏡であって、前記内視鏡は、近位端部及び遠位端部を有し、前記内視鏡は、前記内視鏡近位端部と前記内視鏡遠位端部との間に長手方向に延在する内視鏡管腔を有する、内視鏡と、
剥離器と、を備えるシステム。
(項目19)
前記変形可能な材料が、弾性材料であり、前記第1の状態と第2の状態との間の遷移が、加力、及び前記牽引細片本体の弾性変形のうちの少なくとも一方に応答して生じる、項目18に記載の組織牽引装置。
(項目20)
前記変形可能な材料が、弾性材料、形状記憶材料、及び布材料のうちの少なくとも1つであり、前記牽引細片本体は、シース送達状態へと移行させられることができ、前記シース送達状態にある前記牽引細片本体は、シースのシース管腔の内部に配置されるような形をしている、項目19に記載の組織牽引装置。
(項目21)
前記変形可能な材料が、温度応答性形状記憶材料であり、前記牽引細片本体は、前記第2の状態に予め設定されているように構成され、前記牽引細片本体が遷移温度範囲未満の温度にあるときには、前記牽引細片本体は、前記第2の状態から前記第1の状態へと変形させられることができるように構成され、前記牽引細片本体が前記遷移温度範囲超の温度にあるときには、前記牽引細片本体は、前記第2の状態に自動的に戻るように構成されている、項目18に記載の組織牽引装置。
(項目22)
前記変形可能な材料が、展性材料であり、展性材料から少なくとも部分的に形成された前記牽引細片本体が、前記第1の状態及び第2の状態のうちの少なくとも選択された一方の状態に、選択的に変形させられ、かつ保持されることができる、項目18に記載の組織牽引装置。
(項目23)
前記変形可能な材料が、フレキシブルステンレス鋼双安定ばねバンドであり、前記第1の状態にある前記牽引細片本体は、心棒の外側表面と係合するような形をしており、前記組織係合部材は、前記牽引細片本体が前記第1の状態にあるときには、扁平状態にあり、前記組織係合部材は、前記牽引細片本体が少なくとも部分的に前記第2の状態にあるときには、開いた状態にある、項目18に記載の組織牽引装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19