(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-22
(45)【発行日】2024-03-04
(54)【発明の名称】水素温度制御システム、低温貯蔵装置及び低温貯蔵装置の分割温度制御方法
(51)【国際特許分類】
F25B 9/02 20060101AFI20240226BHJP
F25D 3/00 20060101ALI20240226BHJP
【FI】
F25B9/02 J
F25D3/00 Z
(21)【出願番号】P 2023075166
(22)【出願日】2023-04-28
【審査請求日】2023-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】592246761
【氏名又は名称】財団法人車輌研究測試中心
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100196117
【氏名又は名称】河合 利恵
(72)【発明者】
【氏名】林 博煦
【審査官】五十嵐 公輔
(56)【参考文献】
【文献】特表2023-516391(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0274138(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 9/00-9/14
F25D 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素を供給すると共に、その供給された水素を利用して複数の冷却対象空間の温度を調節する、水素温度制御システムであって、膨張弁と、複数の温度調節ユニットと、制御ユニットとを含み、
前記膨張弁は、水素を通過させて、水素の圧力及び温度を下げるために用いられ、
複数の前記温度調節ユニットはそれぞれ、調整弁、熱交換器及び温度センサを備え、
該調整弁は、前記膨張弁からの水素の流量を調整し、
該熱交換器は、該調整弁と連通し、該複数の温度調節ユニットの前記熱交換器はそれぞれ、対応する複数の前記冷却対象空間内に配置され、
該複数の温度調節ユニットの前記温度センサはそれぞれ、対応する前記複数の冷却対象空間内に配置され、当該冷却対象空間の内部温度を検知し、
前記制御ユニットは、複数の前記温度調節ユニットの前記調整弁及び前記温度センサに電気接続され、
前記水素は、前記膨張弁及び複数の前記温度調節ユニットを通過して、下流流通路に流れ、
前記制御ユニットは、前記温度調節ユニットの前記温度センサから、対応する前記冷却対象空間の温度情報を受信し、それに基づいて、該温度調節ユニットの前記調整弁を制御して、水素を、対応する前記熱交換器に流すことで、当該熱交換器が対応する冷却対象空間内で熱交換を行うことを特徴とする水素温度制御システム。
【請求項2】
前記膨張弁と、複数の前記温度調節ユニットに設けられる前記調整弁と、前記下流流通路とは、順に直列接続されており、前記水素は、該膨張弁を通過した後、該複数の温度調節ユニットの前記調整弁を順に通過し、前記熱交換器を経由せずに該下流流通路に流れ、或いは、該複数の温度調節ユニットのうちの一つの前記温度調節ユニットの前記調整弁に流れて、対応する該熱交換器を経由してから該下流流通路に流れることを特徴とする請求項1に記載の水素温度制御システム。
【請求項3】
複数の逆止弁を含み、該複数の逆止弁は、直列接続されている複数の前記調整弁うちの二つの間、及び複数の前記温度調節ユニットの前記調整弁と前記下流流通路との間にそれぞれ配置されることを特徴とする請求項2に記載の水素温度制御システム。
【請求項4】
複数の前記温度調節ユニットの前記熱交換器と、前記下流流通路とは、順に直列接続されており、該直列接続されている複数の熱交換器のいずれかの二つの間に、三方弁が設置されており、該三方弁は、一方の該熱交換器の流出口と、他方の該熱交換器の流入口と、当該他方の熱交換器の前記調整弁とに接続されることを特徴とする請求項2に記載の水素温度制御システム。
【請求項5】
複数のチェックバルブを含み、複数の前記チェックバルブは、直列接続されている複数の前記熱交換器のうちの二つの間、及び複数の前記温度調節ユニットの前記熱交換器と前記下流流通路との間にそれぞれ配置されることを特徴とする請求項4に記載の水素温度制御システム。
【請求項6】
各前記温度調節ユニットは、前記熱交換器に隣接するように配置される少なくとも一つのファンを備え、該少なくとも一つのファンは、該熱交換器の周辺の空気と、対応する前記冷却対象空間内の空気との熱交換を促進することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の水素温度制御システム。
【請求項7】
低温貯蔵装置であって、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の水素温度制御システムと、
内部に前記複数の冷却対象空間を有するコンテナと、
水素を貯蔵し、貯蔵する水素を前記膨張弁に供給する水素供給源と、
前記下流流通路から水素を受けて電気エネルギを発生する燃料電池と、
前記燃料電池が発生する電気エネルギによって作動する循環装置と、
前記循環装置の駆動によって作動し、前記コンテナの内部を冷却する冷却システムとを含むことを特徴とする低温貯蔵装置。
【請求項8】
前記各温度調節ユニットは、前記熱交換器に隣接するように配置される少なくとも一つのファンを備え、該少なくとも一つのファンは、該熱交換器の周辺の空気と、対応する前記冷却対象空間内の空気との熱交換を促進することを特徴とする請求項7に記載の水素温度制御装置。
【請求項9】
前記コンテナの箱体は、内壁、外壁、及び該内壁と外壁との間に充填される断熱材を備え、前記熱交換器は、その熱交換パイプが該内壁に密着するように、該内壁と外壁との間に設置されることを特徴とする請求項7に記載の低温貯蔵装置。
【請求項10】
低温貯蔵装置の分割温度制御方法は、
水素を、膨張弁を通過させて、その圧力及び温度を下げるステップと、
コンテナ内の第1冷却対象空間の温度を検出するステップと、
前記第1冷却対象空間の温度と第1目標温度との間の温度差が設定温度範囲内にあるか否かを判断するステップと、
前記第1冷却対象空間の温度と前記第1目標温度との間の温度差が前記設定温度範囲内にあると判断した場合、第1調整弁を作動させて、水素を第1熱交換器に流し、当該第1熱交換器によって該第1冷却対象空間で熱交換を行うステップと、
前記コンテナ内の第2冷却対象空間の温度を検出するステップと、
前記第2冷却対象空間の温度と第2目標温度との間の温度差が設定温度範囲内にあるか否かを判断するステップと、
前記第2冷却対象空間の温度と前記第2目標温度との間の温度差が前記設定温度範囲内にあると判断した場合、第2調整弁を作動させて、水素を第2熱交換器に流し、当該第2熱交換器によって該第2冷却対象空間内で熱交換を行うステップと、を含むことを特徴とする低温貯蔵装置の分割温度制御方法。
【請求項11】
前記低温貯蔵装置の分割温度制御方法においては、前記第1熱交換器によって前記第1冷却対象空間内で熱交換を行った後、該第1冷却対象空間の温度を再び検出し、該第1冷却対象空間の温度と前記第1目標温度との間の温度差が前記設定温度範囲内にあるか否かを判断するステップを含むことを特徴とする請求項10に記載の低温貯蔵装置の分割温度制御方法。
【請求項12】
前記低温貯蔵装置の分割温度制御方法においては、前記第2熱交換器によって前記第2冷却対象空間内で熱交換を行った後、該第2冷却対象空間の温度を再び検出し、該第2冷却対象空間の温度と前記第2目標温度との間の温度差が前記設定温度範囲内にあるか否かを判断するステップを含むことを特徴とする請求項10に記載の低温貯蔵装置の分割温度制御方法。
【請求項13】
前記低温貯蔵装置の分割温度制御方法においては、前記第1冷却対象空間の温度と前記第1目標温度との間の温度差が前記設定温度範囲内にないと判断した場合、前記第2冷却対象空間の温度を検知するステップを含むことを特徴とする請求項10から請求項12のいずれか1項に記載の低温貯蔵装置の分割温度制御方法。
【請求項14】
前記低温貯蔵装置の分割温度制御方法においては、前記第2冷却対象空間の温度と前記第2目標温度との間の温度差が前記設定温度範囲内にないと判断した場合、水素を前記第1熱交換器及び前記第2熱交換器のいずれも通さずに、下流流通路に流すステップを含むことを特徴とする請求項13に記載の低温貯蔵装置の分割温度制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却システムに関し、特に、水素温度制御システム、低温貯蔵装置及び低温貯蔵装置の分割温度制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
低温物流とは、冷凍冷蔵コンテナが搭載された冷凍冷蔵車両が、生鮮食品や医薬品などの貨物を生産・輸送・消費の過程で途切れることなく低温に保つ物流方式である。
【0003】
従来の冷凍冷蔵車両は、エンジンの動力を、動力伝達手段(例えば、ベルト)を介して冷凍冷蔵コンテナの冷却システムの圧縮機に伝え、圧縮機を駆動して冷媒を循環させることで、冷凍冷蔵コンテナの内部を降温させる仕組みであるが、従来の冷凍冷蔵車両の冷却システムの圧縮機は、エンジンによって駆動するため、エンジンが停止している場合は圧縮機も停止しており、これにより、冷却システムの冷媒の循環が途絶えてしまうので、冷凍冷蔵コンテナの冷却効果が維持できなくなる。また、このような冷却システムの冷却効果は、エンジンの運転状況や車両の走行状況に応じて常に変化するため、低温に保つべき貨物を安定して冷凍冷蔵することができなくなる虞があった。
【0004】
上記課題に対する対策として、関連業者は、車載用冷凍冷蔵コンテナにおいて、エンジンの動力の代わりに、外部電源を使って圧縮機を駆動する冷却システムを既に開発しており、このような冷却システムは、エンジンの動力に依存しないため、エンジンが停止していても、正常に稼働することができ、且つ、エンジンの運転状況や車両の走行状況に関係なく、貨物を安定した低温保存状態に保つことができる。しかしながら、外部電源によって駆動する冷却システムの電気モジュールは、電池容量や重量といった様々な課題を抱えているので、長距離の低温物流には適していない。また、このような冷却システムの電気モジュールは、電力を使い切った後、充電が必要になるので、物流産業における車両の配車スケジュールや車両運行計画に大きく影響を与える虞があった。
【0005】
近年、水素エネルギの技術の進歩に伴い、水素を燃料源とする燃料電池車両の開発が着実に進んでいるが、そんな中、外部電源の代わりに水素燃料電池システムが発生する電力を使って、冷却システムの圧縮機を駆動して、冷凍冷蔵コンテナの内部を降温する技術が着目されている。しかしながら、現在の水素燃料電池車両の生産コストや燃料費用は高く、つまり、水素燃料電池システムを利用して冷凍冷蔵コンテナの冷却システムを駆動する冷凍冷蔵車両の購入コストや維持コストは高くて採算が合わないので、いかに水素を最大限効率よく利用するか、というのが最大の課題であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記従来技術の欠点に鑑みてなされたものであり、水素の減圧膨張時に生じる吸熱特性を活用することで、冷却システムの冷却効果を向上させ、水素を最大限効率よく利用することができる、水素温度制御システム、低温貯蔵装置及び低温貯蔵装置の分割温度制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために、水素温度制御システムを提案したものであり、当該水素温度制御システムは、水素を供給し、その供給された水素を利用して複数の冷却対象空間の温度を調節し、また、膨張弁と、複数の温度調節ユニットと、制御ユニットとを含み、
前記膨張弁は、水素を通過させて、水素の圧力及び温度を下げるために用いられ、
複数の前記温度調節ユニットはそれぞれ、調整弁、熱交換器及び温度センサを備え、
該調整弁は、前記膨張弁からの水素の流量を調整し、
該熱交換器は、該調整弁と連通し、該複数の温度調節ユニットの熱交換器はそれぞれ、対応する複数の前記冷却対象空間内に配置され、
該複数の温度調節ユニットの前記温度センサはそれぞれ、対応する前記複数の冷却対象空間内に配置され、当該冷却対象空間の内部温度を検知し、
前記制御ユニットは、複数の前記温度調節ユニットの前記調整弁及び前記温度センサに電気接続され、
前記水素は、前記膨張弁及び複数の前記温度調節ユニットを通過して、下流流通路に流れ、
前記制御ユニットは、前記温度調節ユニットの前記温度センサから、対応する前記冷却対象空間の温度情報を受信し、それに基づいて、該温度調節ユニットの前記調整弁を制御して、水素を、対応する前記熱交換器に流すことで、当該熱交換器が対応する冷却対象空間内で熱交換を行うことを特徴とする。
【0008】
前記膨張弁と、複数の前記温度調節ユニットに設けられる前記調整弁と、下流流通路とは、順に直列接続されており、前記水素は、該膨張弁を通過した後、該複数の温度調節ユニットの前記調整弁を順に通過し、前記熱交換器を経由せずに該下流流通路に流れ、或いは、該複数の温度調節ユニットのうちの一つの前記温度調節ユニットの前記調整弁に流れて、対応する該熱交換器を経由してから該下流流通路に流れることを特徴とする。
【0009】
前記水素温度制御システムは、直列接続されている、複数の前記調整弁うちの二つの間、及び前記複数の前記温度調節ユニットの前記調整弁と前記下流流通路との間にそれぞれ配置される、複数の逆止弁を含むことを特徴とする。
【0010】
複数の前記温度調節ユニットの熱交換器と、前記下流流通路とは、順に直列接続されており、該直列接続されている複数の熱交換器のいずれかの二つの間に、三方弁が設置されており、該三方弁は、一方の該熱交換器の流出口と、他方の該熱交換器の流入口と、当該他方の熱交換器の前記調整弁とに接続されることを特徴とする。
【0011】
前記水素温度制御システムは、直列接続されている、複数の前記熱交換器のうちの二つの間、及び複数の前記温度調節ユニットの熱交換器と前記下流流通路との間にそれぞれ配置される、複数のチェックバルブを含むことを特徴とする。
【0012】
各前記温度調節ユニットは、前記熱交換器に隣接するように配置される少なくとも一つのファンを備え、該少なくとも一つのファンは、該熱交換器の周辺の空気と、対応する前記冷却対象空間内の空気との熱交換を促進することを特徴とする。
【0013】
本発明は、上記目的を達成するために、さらに、低温貯蔵装置を提案しており、当該低温貯蔵装置は、前記水素温度制御システムと、
内部に前記複数の冷却対象空間を有するコンテナと、
水素を貯蔵し、貯蔵する水素を前記膨張弁に供給する水素供給源と、
前記下流流通路から水素を受けて電気エネルギを発生する燃料電池と、
前記燃料電池が発生する電気エネルギによって作動する循環装置と、
前記循環装置の駆動によって作動し、前記コンテナの内部を冷却する冷却システムとを含むことを特徴とする。
【0014】
前記コンテナの箱体は、内壁、外壁、及び該内壁と外壁との間に充填される断熱材を備え、前記熱交換器は、その熱交換パイプが該内壁に密着するように、該内壁と外壁との間に設置されることを特徴とする。
【0015】
本発明は、上記目的を達成するために、さらに、低温貯蔵装置の分割温度制御方法を提案しており、当該低温貯蔵装置の分割温度制御方法は、
水素を、膨張弁を通過させて、その圧力及び温度を下げるステップと、
コンテナ内の第1冷却対象空間の温度を検出するステップと、
前記第1冷却対象空間の温度と第1目標温度との間の温度差が設定温度範囲内にあるか否かを判断するステップと、
前記第1冷却対象空間の温度と前記第1目標温度との間の温度差が前記設定温度範囲内にあると判断した場合、第1調整弁を作動させて、水素を第1熱交換器に流し、当該第1熱交換器によって該第1冷却対象空間で熱交換を行うステップと、
前記コンテナ内の第2冷却対象空間の温度を検出するステップと、
前記第2冷却対象空間の温度と第2目標温度との間の温度差が設定温度範囲内にあるか否かを判断するステップと、
前記第2冷却対象空間の温度と前記第2目標温度との間の温度差が前記設定温度範囲内にあると判断した場合、第2調整弁を作動させて、水素を第2熱交換器に流し、当該第2熱交換器によって該第2冷却対象空間内で熱交換を行うステップと、を含むことを特徴とする。
【0016】
前記低温貯蔵装置の分割温度制御方法においては、前記第1熱交換器によって前記第1冷却対象空間内で熱交換を行った後、該第1冷却対象空間の温度を再び検出し、該第1冷却対象空間の温度と前記第1目標温度との間の温度差が前記設定温度範囲内にあるか否かを判断するステップを含むことを特徴とする。
【0017】
前記低温貯蔵装置の分割温度制御方法においては、前記第2熱交換器によって前記第2冷却対象空間内で熱交換を行った後、該第2冷却対象空間の温度を再び検出し、該第2冷却対象空間の温度と前記第2目標温度との間の温度差が前記設定温度範囲内にあるか否かを判断するステップを含むことを特徴とする。
【0018】
前記低温貯蔵装置の分割温度制御方法においては、前記第1冷却対象空間の温度と前記第1目標温度との間の温度差が前記設定温度範囲内にないと判断した場合、前記第2冷却対象空間の温度を検知するステップを含むことを特徴とする。
【0019】
前記低温貯蔵装置の分割温度制御方法においては、前記第2冷却対象空間の温度と前記第2目標温度との間の温度差が前記設定温度範囲内にないと判断した場合、水素を前記第1熱交換器及び前記第2熱交換器のいずれも通さずに、下流流通路に流すステップを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
前述した技術特徴によれば、本発明は以下に示すような優れた点と効果を有する。
1、水素燃料電池を動力源とする冷凍冷蔵車両に搭載され、冷凍冷蔵コンテナに適用される、本発明に係る水素温度制御システム及びそれを用いる低温貯蔵装置では、高圧状態で貯蔵された水素が燃料電池へ放出される際に減圧され、水素の減圧膨張による吸熱特性を利用して、冷凍冷蔵コンテナ内部で熱交換を行うことで、冷却システムの冷却効率を補助し、これにより、燃料電池システムの応用範囲を拡大しながら、水素を最大限効率よく利用することができる。
2、本発明に係る、水素温度制御システムを用いる低温貯蔵装置の分割温度制御方法は、冷凍冷蔵コンテナ内の各冷却対象空間の温度をリアルタイムで検知し、各冷却対象空間の温度と目標温度との間の温度差に応じて、水素の流れや流量を直ちに調整することから、冷却対象空間の内部温度がわずかに上昇した場合、迅速かつ精密な温度制御が可能となるので、貨物を安定した低温保存状態に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の第1の好適な実施形態に係る低温貯蔵装置の配管を示す模式図である。
【
図2】本発明の第1の好適な実施形態に係る低温貯蔵装置のシステムブロック図である。
【
図3】本発明の第1の好適な実施形態に係る低温貯蔵装置のコンテナの斜視透視図である。
【
図4】本発明の第1の好適な実施形態における熱交換器の斜視透視図である。
【
図6A】本発明の第1の好適な実施形態に係る低温貯蔵装置の分割温度制御方法のフローチャートである。
【
図6B】本発明の第1の好適な実施形態に係る低温貯蔵装置の分割温度制御方法のフローチャートである。
【
図7】本発明の第1の好適な実施形態の使用状態を示す模式図である。
【
図8】本発明の第1の好適な実施形態の使用状態を示す模式図である。
【
図9】本発明の第1の好適な実施形態の使用状態を示す模式図である。
【
図10】本発明の第1の好適な実施形態における物流車両を示す斜視模式図である。
【
図11】本発明の第2の好適な実施形態に係る低温貯蔵装置のコンテナの斜視透視図である。
【
図12】本発明の第2の好適な実施形態におけるコンテナの箱体の局部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面及び本発明の好適な実施形態を参照しながら、本発明が予め決められた発明の目的を達成するために講じた技術的手段をさらに詳述する。
【0023】
図1及び
図2は、本発明の第1の好適な実施形態に係る水素温度制御システムを示したものであり、当該水素温度制御システムは、水素を貯蔵・供給することができると共に、水素を利用して複数の冷却対象空間を冷却することもできる。図面によると、水素温度制御システムは、膨張弁10、複数の温度調節ユニット20及び制御ユニット30を含む。
【0024】
膨張弁10は、高圧状態で貯蔵された水素の放出を制御するものであり、水素が該膨張弁10から放出されると、水素が減圧膨張し、低温低圧の水素になり、外部の熱を吸収する。このような水素の減圧膨張時に生じる吸熱特性を利用して、冷却対象空間で熱交換を行う。
図1及び
図2に示すように、各温度調節ユニット20は、膨張弁10から放出される水素の流れを調整するために用いられる調整弁21と、該調整弁21と連通するように接続される熱交換器22と、温度センサ23とを備え、該複数の温度調節ユニット20の熱交換器22はそれぞれ、対応する複数の冷却対象空間内に配置される。尚、
図1に示された本発明の好適な実施形態では、複数の温度調節ユニット20の数が二つであり、該二つの温度調節ユニット20のそれぞれの熱交換器22は、二つの冷却対象空間51内に設置されている。
【0025】
二つの温度調節ユニット20の温度センサ23はそれぞれ、二つの冷却対象空間51内に設置され、対応する冷却対象空間51の内部温度を検知する。なお、該各温度調節ユニット20の温度センサ23は、対応する冷却対象空間51の内部の任意の箇所に設置されている。
図2に示すように、制御ユニット30は、二つの温度調節ユニット20の調整弁21及び温度センサ23に電気接続されており、該各温度調節ユニット20の温度センサ23から、対応する冷却対象空間51の温度情報を受信し、それに基づいて、対応する調整弁21を作動させる。具体的に述べると、調整弁21は電磁弁であることが好ましく、制御ユニット30は、制御信号を該調整弁21に送信して、該調整弁21を作動させる。
【0026】
水素は、膨張弁10から放出されて、温度調節ユニット20を通って下流流通路41に送られ、この時、制御ユニット30は、該二つの温度調節ユニット20の温度センサ23から、対応する冷却対象空間の温度情報を受信して、それに基づいて、対応する温度調節ユニット20の調整弁21を制御することにより、水素が、対応する調整弁21を通って、対応する熱交換器22に流れ、当該熱交換器22を介して、対応する冷却対象空間51内で熱交換を行う。以下、本発明に係る水素温度制御システムを備えた低温貯蔵装置の作動状況について説明する。
【0027】
図1~
図3に示すように、本発明の第1の好適な実施形態に係る低温貯蔵装置は、水素温度制御システムに加え、コンテナ50、水素供給源60、燃料電池70、循環装置81及び冷却システム82を含み、該コンテナ50の内部には、二つの冷却対象空間51を有し、該水素供給源60は、水素を貯蔵すると共に、該水素温度制御システムの膨張弁10と連通するように接続されており、貯蔵している水素を該膨張弁10に供給し、該燃料電池70は、該水素温度制御システムの下流流通路41と連通するように接続され、該下流流通路41から供給された水素を利用して電気エネルギを生成し、該循環装置81は、該燃料電池70に電気接続されると共に、該燃料電池70が生成した電気エネルギによって作動し、該冷却システム82は、該循環装置81の駆動によって作動し、コンテナ50の冷却対象空間51を冷却するための主要な手段として機能する。尚、循環装置81は、既存製品の電動モータであり、冷却システム82は、電動モータによって圧縮機を駆動し、冷却対象空間を冷却する既存の冷却システムであるので、ここではそれらの詳しい構造についての説明を省略する。
【0028】
図6A及び
図6Bは、本発明の第1の好適な実施形態に係る水素温度制御システムを備えた、低温貯蔵装置による分割温度制御方法を実行するフローチャートである。以下、
図1~
図9を参照しながら詳しく説明する。より分かりやすく説明するために、
図3及び
図7に示されている二つの温度調節ユニット20を、第1温度調節ユニット20A及び第2温度調節ユニット20Bと称し、それに対応して、該第1温度調節ユニット20A、第2温度調節ユニット20Bのそれぞれの調整弁21及び熱交換器22を、第1調整弁21A、第1熱交換器22A、及び第2調整弁21B及び第2熱交換器22Bと定義する。また、コンテナ50の二つの冷却対象空間51は、第1冷却対象空間51A及び第2冷却対象空間51Bとに分かれ、具体的に述べると、該第1冷却対象空間51A及び第2冷却対象空間51Bは、断熱カーテン52によって仕切られるが、仕切り方法はこれに限定されるものではない。第1熱交換器22Aは第1冷却対象空間51Aに、第2熱交換器22Bは第2冷却対象空間51Bにそれぞれ配置されると共に、第1温度調節ユニット20A、第2温度調節ユニット20Bの温度センサ23はそれぞれ、対応する第1冷却対象空間51A、第2冷却対象空間51Bの内部温度を検知する。
【0029】
図6Aに示すように、まず、水素を、膨張弁10を通過させて、水素の圧力及び温度を低下させる、水素吐出ステップS1を実行する。具体的に述べると、
図7に示すように、高圧状態で貯蔵されている液相水素は水素供給源60から放出されて、配管を通って膨張弁10を通過した後、低温低圧の水素となり、当該水素が減圧膨張する際に、吸熱作用が生じる。次に、コンテナ50内における第1冷却対象空間51Aの温度を検知する、第1冷却対象空間温度検知ステップS2を実行する。具体的に述べると、前記第1温度調節ユニット20Aの温度センサ23を利用して、該第1冷却対象空間51Aの内部温度を検出する。続いて、第1冷却対象空間51Aの温度と第1目標温度との温度差が設定温度差の範囲内にあるか否かを判断する、第1冷却対象空間温度判断ステップS3を実行する。具体的に述べると、
図2に示すように、温度センサ23は、第1冷却対象空間51Aの温度を検知した後、当該温度情報を制御ユニット30に送信し、該制御ユニット30は、該第1冷却対象空間51Aの温度と第1目標温度とを比較して、その温度差が予め設定された温度差の範囲内にあるか否かを判断する。本好適な実施形態では、第1冷却対象空間51Aが、コンテナ50の冷凍エリアとして使用され、第1目標温度は、-20℃に設定され、設定温度差の範囲は、該第1目標温度から+2℃の範囲に設定されることが好ましいが、これに限定されない。
【0030】
図3及び
図6Aに示すように、第1冷却対象空間51Aの温度と第1目標温度との間の温度差が、設定温度差の範囲内にあると判断された場合、第1調整弁21Aを作動させて、低温低圧の水素を前記第1熱交換器22Aに流し、当該第1熱交換器22Aによって該第1冷却対象空間51Aで熱交換を行う、第1冷却対象空間降温ステップS4を実行する。具体的に述べると、
図2及び
図7に示すように、制御ユニット30は、第1冷却対象空間51Aの温度と第1目標温度との間の温度差が設定温度差の範囲内であると判断されると、対応する調整弁21、すなわち第1調整弁21Aに作動信号を送信して作動させる。すると、膨張弁10から該第1調整弁21Aに流れる減圧膨張後の水素が前記第1熱交換器22Aに導かれ、低温低圧の水素が流れる第1熱交換器22Aが冷やされて、第1冷却対象空間51A内の熱を奪い、最後に、水素が該第1熱交換器22Aから下流流通路41を通って燃料電池70に送られて、該燃料電池70の燃料源として利用されて電力エネルギに変換される。
【0031】
第1冷却対象空間降温ステップS4を実行すると同時に、第1冷却対象空間温度検知ステップS2及び第1冷却対象空間温度判断ステップS3を繰り返し行い、該第1冷却対象空間51Aの温度が第1目標温度に達したか、又は該第1目標温度以下になった時、つまり、該第1冷却対象空間51Aの温度と該第1目標温度との間の温度差が、設定温度差の範囲外であると判断された場合、次のステップに進む。
【0032】
図6A及び
図6Bに示すように、第1冷却対象空間降温ステップS4を実行すると同時に、第1冷却対象空間温度検知ステップS2及び第1冷却対象空間温度判断ステップS3を繰り返し行い、該第1冷却対象空間51Aの温度が第1目標温度に達したか、又は該第1目標温度以下になった時、つまり、該第1冷却対象空間51Aの温度と該第1目標温度との間の温度差が、設定温度差の範囲外であると判断された場合、又は、最初から該第1冷却対象空間温度判断ステップS3を実行する際、その時の第1冷却対象空間51Aの温度は既に第1目標温度を遥かに超えており、つまり、該第1冷却対象空間51Aの温度と第1目標温度との間の温度差が同様に設定温度差の範囲外あると判断された場合には、コンテナ50内の第2冷却対象空間51Bの温度を検知する、第2冷却対象空間温度検知ステップS5を実行し、続いて、当該第2冷却対象空間51Bの温度と第2目標温度との温度差が設定温度差の範囲内にあるか否かを判断する、第2冷却対象空間温度判断ステップS6を実行する。
【0033】
つまり、上述した二つのステップS5、S6は、第1冷却対象空間温度検知ステップS2及び第1冷却対象空間温度判断ステップS3と同じように、第2温度調節ユニット20Bの温度センサ23を利用して、第2冷却対象空間51Bの内部温度を検出するものである。
図2に示すように、温度センサ23は、第2冷却対象空間51Bの温度を検知した後、当該温度情報を制御ユニット30に送信し、該制御ユニット30は、該第2冷却対象空間51Bの温度と第2目標温度とを比較して、その温度差が予め設定された温度差の範囲内にあるか否かを判断する。本好適な実施形態では、第2冷却対象空間51Bが、コンテナ50冷蔵エリアとして利用され、第2目標温度は、5℃に設定され、設定温度差の範囲は、該第2目標温度から+2℃に設定されることが好ましいが、これに限定されない。
【0034】
図6Bに示すように、第2冷却対象空間51Bの温度と第2目標温度との間の温度差が、設定温度差の範囲内にあると判断された場合、第2調整弁21Bを作動させて、低温低圧の水素を第2熱交換器22Bに流し、当該第2熱交換器22Bによって該第2冷却対象空間51Bで熱交換を行う、第2冷却対象空間降温ステップS7を実行する。具体的に述べると、
図2及び
図8に示すように、制御ユニット30は、第2冷却対象空間51Bの温度と第2目標温度との間の温度差が設定温度差の範囲内であると判断されると、第2調整弁21Bに作動信号を送信して作動させる。すると、膨張弁10から該第2調整弁21Bに流れる減圧膨張後の水素が第2熱交換器22Bに導かれ、低温低圧の水素が流れる第2熱交換器22Bが冷やされて、第2冷却対象空間51B内の熱を奪い、最後に、水素が該第2熱交換器22Bから下流流通路41を通って燃料電池70に送られて、該燃料電池70の燃料源として利用されて電気エネルギに変換される。
【0035】
第2冷却対象空間降温ステップS7を実行すると同時に、第2冷却対象空間温度検知ステップS5及び第2冷却対象空間温度判断ステップS6を繰り返し行い、該第2冷却対象空間51Bの温度が第2目標温度に達したか、又は該第2目標温度以下になった時に、つまり、該第2冷却対象空間51Bの温度と該第2目標温度との間の温度差が、設定温度差の範囲外であると判断された場合、次のステップに進む。
【0036】
図6Bに示すように、第2冷却対象空間降温ステップS7を実行すると同時に、第2冷却対象空間温度検知ステップS5及び第2冷却対象空間温度判断ステップS6を繰り返し行い、該第2冷却対象空間51Bの温度が第2目標温度に達したか、又は該第2目標温度以下になった時に、つまり、該第2冷却対象空間51Bの温度と該第1目標温度との間の温度差が、設定温度差の範囲外であると判断された場合、又は、最初から該第2冷却対象空間温度検知ステップS5を実行する際、その時の第2冷却対象空間51Bの温度は既に第2目標温度を遥かに超えており、つまり、該第2冷却対象空間51Bの温度と第2目標温度との間の温度差が同様に設定温度差の範囲外であると判断された場合には、水素を該第1熱交換器22A及び第2熱交換器22Bのいずれにも流さずに、直接下流流通路41に流す、水素バイパスステップS8を実行する。
【0037】
具体的に述べると、第1冷却対象空間51Aと第2冷却対象空間51Bの温度が既に目標温度以下に下がった場合、又は該第1冷却対象空間51Aと第2冷却対象空間51Bの温度が高すぎで、目標温度との温度差が設定温度差の範囲を超えてしまった場合、
図9に示すように、水素供給源60から放出された水素は、膨張弁10を通過して減圧膨張された後、いずれの熱交換器22も通らずに、直接下流流通路41に流れて前記燃料電池70に供給され、電気エネルギに変換される。
図2に示すように、燃料電池70による電気エネルギは、制御ユニット30及び循環装置81を作動させるための電気エネルギとして利用され、これにより、第1冷却対象空間51Aと第2冷却対象空間51Bの温度が高く、目標温度との温度差が設定温度差の範囲を超えた場合、水素が直接該燃料電池70に供給されて発電され、その生成された電気エネルギで該循環装置81を作動させて、コンテナ50内の第1冷却対象空間51Aと第2冷却対象空間51Bを冷却する。
【0038】
本発明に係る水素温度制御システムを備えた低温貯蔵装置は、燃料電池70による電気エネルギによって前記循環装置81を駆動して冷却システム82を作動させることで、コンテナ50の内部空間を冷却する。一方、コンテナ50の内部でわずかな昇温現象が起こった場合、例えば、貨物を取り出す時に外部の常温空気が入ったり、又は、太陽が直接コンテナ50に当たった場合、該水素温度制御システムは、減圧膨張後の水素を前記熱交換器22に流すことで、その吸熱特性を利用して該コンテナ50内部の冷却対象空間の温度を多少降温し、冷却システムの冷却効率を補助する。
【0039】
本発明の第1の好適な実施形態に係る低温貯蔵装置を実際に使用される場合は、定点貯蔵の冷凍冷蔵倉庫に適用されるだけでなく、
図10に示すような、バン型トラックの冷凍冷蔵物流車両90に搭載された冷凍冷蔵用のコンテナ50にも適用することができる。本発明を冷凍冷蔵物流車両90に使用する場合、燃料電池70は、当該物流車両90の動力源として利用されるので、当該物流車両90は水素燃料電池車両となる。尚、本発明を実際に利用する適用例は、上記二つの例に限定されるものではない。
【0040】
上述したように、本発明に係る水素温度制御システム及びそれを備えた低温貯蔵装置は、燃料電池を動力源とする低温貯蔵設備、特に、異なる温度帯の貯蔵室を有する低温貯蔵設備(例えば、冷凍冷蔵両用貯蔵コンテナ)に適用される。本発明によれば、水素供給源60内に高圧状態で貯蔵されている水素が燃料電池70に供給される過程では、膨張弁10を通過して減圧膨張された低温低圧の水素の吸熱作用を利用して冷凍冷蔵コンテナの内部で熱交換を行い、その内部温度をやや下げて冷却システムの冷却効果を補助し、これにより、燃料電池システムの応用範囲を拡大させながら、水素を最大限利用することができる。
【0041】
また、本発明に係る水素温度制御システムを備えた低温貯蔵装置の分割温度制御方法によれば、コンテナ50内の各冷却対象空間51の温度をリアルタイムで検知し、各冷却対象空間51の温度と目標温度との間の温度差に応じて水素の流れを調整することで、冷却対象空間51の温度がわずかに上昇した場合でも、素早く反応して降温することが可能となるので、精密かつ正確な温度制御を行うことができる。さらに、目標温度との間の温度差が大きい冷却対象空間51に対しては、冷却システム82が、燃料電池70から直接電気エネルギを供給して運転し、当該冷却対象空間51を冷却して降温することにより、より効率的に温度を下げることができる。
【0042】
尚、本発明に係る低温貯蔵装置の分割温度制御方法においては、第1の好適な実施形態のように、水素吐出ステップS1を先に実行し、その後、第1冷却対象空間温度検知ステップS2、第1冷却対象空間温度判断ステップS3を実行してもよく、他の実施形態では、まず、第1冷却対象空間温度検知ステップS2、第1冷却対象空間温度判断ステップS3を実行し、その後、水素吐出ステップS1を実行し、水素を、膨張弁10を通過させて、第1冷却対象空間降温ステップS4を実行することもできる。因みに、本発明に係る低温貯蔵装置の分割温度制御方法における水素吐出ステップS1、第1冷却対象空間温度検知ステップS2及び第1冷却対象空間温度判断ステップS3の実行順に特に制限はない。
【0043】
さらに、第1の好適な実施形態のように、第1冷却対象空間の第1冷却対象空間温度検知ステップS2、第1冷却対象空間温度判断ステップS3及び第1冷却対象空間降温ステップS4を実行してから、第2冷却対象空間の第2冷却対象空間温度検知ステップS5、第2冷却対象空間温度判断ステップS6、第2冷却対象空間降温ステップS7を実行してもよく、又は、他の実施形態では、第1冷却対象空間の第1冷却対象空間温度検知ステップS2、第1冷却対象空間温度判断ステップS3及び第1冷却対象空間降温ステップS4と、第2冷却対象空間の第2冷却対象空間温度検知ステップS5、第2冷却対象空間温度判断ステップS6及び第2冷却対象空間降温ステップS7とを同時に行ってもよい。このように、本発明に係る低温貯蔵装置の分割温度制御方法における各ステップの実際的な実行順は、第1の好適な実施形態に限定されるものではない。
【0044】
本発明の第1の好適な実施形態では、二つの冷却対象空間を有するコンテナ50と、該二つの冷却対象空間に対応するように設置される二つの温度調節ユニット20を有する水素温度制御システムの例を挙げて説明したが、他の実施形態では、コンテナ50に二つ以上の温度帯の異なる冷却対象空間を有していてもよく、それに応じて、水素温度制御システムに相応数の温度調節ユニット20が設けられるので、コンテナ50の冷却対象空間の数は、本発明の第1の好適な実施形態に限定されるものではない。
【0045】
さらに、
図1に示すように、本発明の第1の好適な実施形態においては、膨張弁10、二つの温度調節ユニット20の調整弁21及び下流流通路41が順に直列接続されており、詳しく説明すると、
図7及び
図8に示すように、各調整弁21は、流入ポート211、第1流出ポート212及び第2流出ポート213を有し、図面に示された第1調整弁21Aにおいては、その流入ポート211が膨張弁10に接続され、その第1流出ポート212が第1熱交換器22Aに接続され、その第2流出ポート213が第2調整弁21Bの流入ポート211に接続され、一方、第2調整弁21Bの第2流出ポート213は下流流通路41に接続される。以下、水素の流れについて説明する。第1調整弁21A及び第2調整弁21Bが作動しない場合には、
図9に示すように、膨張弁10から放出された水素が、第1温度調節ユニット20Aの第1調整弁21A及び第2温度調節ユニット20Bの第2調整弁21Bを順に通り、いずれの熱交換器22も通らずに、下流流通路41に送られる。一方、制御ユニット30により第1調整弁21A又は第2調整弁21Bを作動させた場合には、
図7或いは
図8に示すように、水素が当該第1調整弁21A又は第2調整弁21Bに流れ、その第1流出ポート212から流出して、第1熱交換器22A又は第2熱交換器22Bに流れ、さらに、下流流通路41に送られる。
【0046】
本発明の第1の好適な実施形態における水素温度制御システムは、二つの温度調節ユニット20の調整弁21が直列に接続されているが、これに限定されるものではなく、他の実施形態においての水素温度制御システムは、複数の温度調節ユニット20の調整弁21が並列に接続されることで構成されてもよく、このような並列接続構成であっても、低温貯蔵装置の各冷却対象空間の温度を独立して制御することができる。第1の好適な実施形態では、二つの熱交換器22に連結された調整弁21が直列に接続されており、コンテナ50内の冷却対象空間51を冷却する必要がない場合、水素は次の調整弁21に流れ、一方、コンテナ50内の冷却対象空間51を冷却する必要がある場合、水素は、対応する調整弁21を通過して熱交換器22に流れ、当該熱交換器22を介して熱交換を行い、その後、下流流通路41に送られる。このように、減圧膨張後の水素の吸熱能力を完全かつ適切に利用することができる。上述したように、本発明の第1の好適な実施形態では、複数の調整弁21が直列に接続される構成を採用しており、このような直列接続構成は、並列接続構成に比べて、水素の流路が単純で、配管を簡素化できるので、流路の全長及び水素の漏洩リスクを減らし、生産性及び使用上の安全性を高めることができる。
【0047】
さらに、
図1に示すように、本発明の第1の好適な実施形態における水素温度制御システムは、直列接続された二つの調整弁21の間、及び複数の温度調節ユニット20の調整弁21と下流流通路41との間にそれぞれ配置される、複数の逆止弁42を含み、それらの逆止弁42の設置により、水素の逆流を防ぎ、水素が正しく下流流通路41を通って燃料電池70に流れ込んで電気エネルギに変換されることを確保する。
【0048】
また、
図1に示すように、本発明の第1の好適な実施形態において、二つの温度調節ユニット20の熱交換器22と、下流流通路41とが順に直列に接続される。具体的に説明すると、
図7~
図9に示すように、二つの温度調節ユニット20の熱交換器22の間に三方弁43が設置されており、当該三方弁43は、第2熱交換器22Bの流入口221、第1熱交換器22Aの流出口222及び第2調整弁21Bの第1流出ポート212にそれぞれ接続されている。そのうち、第2熱交換器22Bの流出口222は、三方バルブ45を介して下流流通路41に接続されており、直列に接続された二つの調整弁21A、21Bも、当該三方バルブ45を介して該下流流通路41に接続される。第1熱交換器22Aの流出口222から流れ出た水素は、三方弁43を通って第2熱交換器22Bに流れ、最終的に三方バルブ45と下流流通路41を通って燃料電池70に送られる。
【0049】
本発明の第1の好適な実施形態における水素温度制御システムは、二つの温度調節ユニット20の熱交換器22が直列に接続された構成を有するが、これに限定されるものではなく、他の実施形態においては、複数の温度調節ユニット20の熱交換器22が並列に接続されるように構成されてもよく、この場合、水素は、並列に接続された熱交換器22を通過した後、下流流通路41を通って燃料電池70に送られる。複数の温度調節ユニット20の熱交換器22が直列に接続される構成を採用する本発明の第1の好適な実施形態においては、流路の全長及び水素の漏洩リスクを低減させ、生産性及び使用上の安全性が向上するとの利点を有する。
【0050】
さらに、
図1に示すように、本発明の第1の好適な実施形態における水素温度制御システムには、二つのチェックバルブ44を含み、該二つのチェックバルブ44はそれぞれ、直列に接続された二つの熱交換器22の間、及び第2温度調節ユニット20Bの第2熱交換器22Bと下流流通路41との間に配置されるが、該チェックバルブ44の数や設置箇所は、これに限定されるものではなく、設置された熱交換器及び温度調節ユニットの数に応じて、適切に配置されることから、水素の逆流を防止するので、水素を障害なく燃料電池70へ送ることができる。
【0051】
図4及び
図5に示すように、本発明の第1の好適な実施形態において、各温度調節ユニット20は、三つのファンモジュール24を含み、これらのファンモジュール24は、熱交換器22の周囲に配置されており、当該熱交換器22周辺の空気と冷却対象空間51内の空気との熱交換を促進する。具体的に述べると、各温度調節ユニット20は、ハウジングケース25を有し、該ハウジングケース25は、対応する冷却対象空間51に設置され、熱交換器22は該ハウジングケース25の内部に収容され、三つのファンモジュール24は、該ハウジングケース25の内部と外部を連通するように該ハウジングケース25に取り付けられ、該ハウジングケース25の外部の空気を吸い込んで、内部にある熱交換器22の周囲の空気を送り出すために用いられる。詳しく説明すると、三つのファンモジュール24のうち、一つは冷却対象空間51の空気をハウジングケース25の内部に吸い込み、残りの二つは、当該ハウジングケース25の内部の空気を冷却対象空間51に送り出すことから、空気を対流させて効果的に冷却を行うことができる。尚、前記ファンモジュール24の数や設置箇所は、上記第1の好適な実施形態に限定されるものではなく、空気を熱交換器22と冷却対象空間51との間で循環させることができるものであれば如何なる構成でもよい。
【0052】
本発明の第1の好適な実施形態では、ファンモジュール24の設置により、熱交換器22周辺の空気と、対応する冷却対象空間51内の空気とを循環させることができ、このように強制的に対流させることで、該冷却対象空間51内の温度をより均一にし、熱交換器22に近い箇所と遠い箇所との温度差の発生を抑えると共に、熱交換器22による熱交換効率も向上させることができる。
【0053】
図11及び
図12に示す本発明の第2の好適な実施形態は、第1の好適な実施形態とほぼ同じであるが、熱交換器22がコンテナ50の箱体500内に設置されている点において異なる。詳しく説明すると、当該箱体500は、外壁501と内壁502を有し、外壁501と内壁502との間に熱交換器22が設置される。本好適な実施形態では、箱体500の外壁501及び内壁502は、強度を確保するために、アルミニウムやスチールなどの金属材料を使用することが好ましい。また、外部からの熱伝導を阻止するために、該箱体500の外壁501と内壁502との間に断熱材Iが充填されていることから、貨物を安定した低温保存状態に保つことができる。尚、該外壁501と内壁502との間に設置された熱交換器22の熱交換パイプは、該内壁502に密着するように配置されることが好ましい。
【0054】
本発明の第1の好適な実施形態における水素温度制御システムを備えた低温貯蔵装置は、ファンモジュール24とハウジングケース25とを組み合わせることにより、冷却対象空間51内の空気を強制的に循環させることで、熱交換効率を向上させる。一方、本発明の第2の好適な実施形態に係る低温貯蔵装置では、熱交換器22の熱交換パイプ220を、熱伝導性に優れる金属材料で構成された箱体500の内壁502に密着するように配置することにより、熱交換器22と冷却対象空間51との間熱交換効率を向上させて、コンテナ50の冷却対象空間51内に貯蔵されている貨物を効率的に冷却する。
【0055】
以上の説明は、本発明の好適な実施形態に過ぎず、本発明に対して何ら限定を行うものではない。本発明について、比較的好適な実施形態をもって上記のとおり開示したが、これは本発明を限定するものではなく、すべての当業者が、本発明の技術構想を逸脱しない範囲において、本発明の技術の本質に基づいて上記の実施形態に対して行ういかなる簡単な修正、変更及び修飾も、依然としてすべて本発明の技術構想の範囲内にある。
【符号の説明】
【0056】
10 膨張弁
20 温度調節ユニット
20A 第1温度調節ユニット
20B 第2温度調節ユニット
21 調整弁
21A 第1調整弁
21B 第2調整弁
211 流入ポート
212 第1流出ポート
213 第2流出ポート
22 熱交換器
22A 第1熱交換器
22B 第2熱交換器
220 熱交換パイプ
221 流入口
222 流出口
23 温度センサ
24 ファンモジュール
25 ハウジングケース
30 制御ユニット
41 下流流通路
42 逆止弁
43 三方弁
44 チェックバルブ
45 三方バルブ
50 コンテナ
500 箱体
501 外壁
502 内壁
51 冷却対象空間
51A 第1冷却対象空間
51B 第2冷却対象空間
52 断熱カーテン
60 水素供給源
70 燃料電池
81 循環装置
82 冷却システム
90 冷凍冷蔵物流車両
I 断熱材
S1 水素吐出ステップ
S2 第1冷却対象空間温度検知ステップ
S3 第1冷却対象空間温度判断ステップ
S4 第1冷却対象空間降温ステップ
S5 第2冷却対象空間温度検知ステップ
S6 第2冷却対象空間温度判断ステップ
S7 第2冷却対象空間降温ステップ
S8 水素バイパスステップ
【要約】
【課題】水素の減圧膨張時に生じる吸熱特性を活用することで、冷却システムの冷却効果を向上させ、水素を最大限効率よく利用することができる、水素温度制御システム、低温貯蔵装置及び低温貯蔵装置の分割温度制御方法を提供する。
【解決手段】水素を利用して複数の冷却対象空間の温度を調節する、水素温度制御システムであって、膨張弁10と、複数の温度調節ユニット20と、制御ユニットとを含み、各温度調節ユニット20は、調整弁21、熱交換器22及び温度センサ23を備え、制御ユニットは、調整弁21及び温度センサ23に電気接続され、温度調節ユニット20の温度センサ23から、対応する冷却対象空間の温度情報を受信し、それに基づいて、温度調節ユニット20の調整弁21を制御して、水素を、対応する熱交換器22に流すことで、熱交換器22が対応する冷却対象空間内で熱交換を行うことを特徴とする。
【選択図】
図1