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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-22
(45)【発行日】2024-03-04
(54)【発明の名称】情報処理装置及び情報処理方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20240226BHJP
【FI】
G08G1/00 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023158408
(22)【出願日】2023-09-22
【審査請求日】2023-12-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】大野 勝弘
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 学
【審査官】佐藤 吉信
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-170133(JP,A)
【文献】特開2012-174032(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
G05D 1/00- 1/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
時刻を示す時刻情報と、前記時刻における車両の位置を示す位置情報と、前記時刻における車両の向きを示す向き情報とを関連付けた走行履歴情報を参照し、第1時刻における前記車両の位置と、前記第1時刻よりも後の第2時刻における前記車両の位置とに基づいて、前記第1時刻から前記第2時刻までの期間である第1期間における前記車両の進行方向を特定するとともに、前記第1時刻における前記車両の向きを特定する第1特定部と、
前記第1特定部が特定した前記第1期間における車両の進行方向と前記第1時刻における前記車両の向きとがなす角度である第1角度を特定する第2特定部と、
前記第2特定部が特定した前記第1角度に基づいて、前記第1時刻における前記車両の前輪の向きを特定する第3特定部と、
を有する情報処理装置。
【請求項2】
前記第3特定部は、前記第1角度に所定の係数を乗算することにより、前記車両の向きと前記車両の前輪の向きとがなす角度を算出し、算出した角度に基づいて、前記車両の前輪の向きを特定する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記第2特定部が特定した前記第1角度が所定の角度を超える場合に、前記第1時刻において前記車両がドリフト走行をしていると判定し、前記第1角度が所定の角度以下である場合に、前記第1時刻において前記車両がドリフト走行をしていないと判定する判定部を有し、
前記第3特定部は、前記車両がドリフト走行をしていると前記判定部が判定すると、前記車両がドリフト走行をしていないと前記判定部が判定した場合に比べて、前記所定の係数を小さくする、
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記第1特定部は、第2時刻における前記車両の位置と、前記第2時刻よりも後の第3時刻における前記車両の位置とに基づいて、前記第2時刻から前記第3時刻までの期間である第2期間における前記車両の進行方向を特定するとともに、前記第2時刻における前記車両の向きを特定し、
前記第2特定部は、前記第1特定部が特定した前記第2期間における車両の進行方向と前記第2時刻における前記車両の向きとがなす角度である第2角度を特定し、
前記判定部は、前記第1時刻において前記車両がドリフト走行をしているか否かを判定するとともに、前記第2角度が所定の角度を超える場合に、前記第2時刻において前記車両がドリフト走行をしていると判定し、
前記第3特定部は、前記第2時刻において前記車両がドリフト走行をしていると前記判定部が判定し、前記第1時刻において前記車両がドリフト走行をしていないと前記判定部が判定すると、前記第1時刻及び前記第2時刻において前記車両がドリフト走行をしていないと判定した場合に比べて、前記所定の係数を大きくする、
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記第1特定部は、第1時刻における前記車両の位置と、前記第1時刻よりも後の第2時刻における前記車両の位置とに基づいて、前記第1期間における前記車両の速度を特定し、
前記第3特定部は、前記車両がドリフト走行をしていないと前記判定部が判定した場合に、前記第1特定部が特定した前記車両の速度が小さければ小さいほど、前記所定の係数を小さくする、
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項6】
コンピュータが実行する、
時刻を示す時刻情報と、前記時刻における車両の位置を示す位置情報と、前記時刻における車両の向きを示す向き情報とを関連付けた走行履歴情報を参照し、第1時刻における前記車両の位置と、前記第1時刻よりも後の第2時刻における前記車両の位置とに基づいて、前記第1時刻から前記第2時刻までの期間である第1期間における前記車両の進行方向を特定するとともに、前記第1時刻における前記車両の向きを特定するステップと、
特定した前記第1期間における車両の進行方向と前記第1時刻における前記車両の向きとがなす角度である第1角度を特定するステップと、
前記第1角度に基づいて、前記第1時刻における前記車両の前輪の向きを特定するステップと、
を有する情報処理方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置及び情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現実世界を模擬した模擬データを構築し、構築した模擬データを用いて現実世界と同じ環境を仮想空間で再現する技術であるデジタルツインが知られている。例えば、特許文献1では、走行車両の走行データを生成し、生成した走行データに基づいて当該走行車両の走行を仮想空間で再現する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2023-44080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
走行データを示す情報が車両の位置情報であり、走行データを示す情報に車両の操舵情報が含まれない場合、位置情報に基づいて車両の走行を再現することができるものの、操舵情報に基づいて前輪の向きを再現することができない。このため、仮想空間に再現した車両の挙動と前輪の向きとが対応せず、不自然な状態となってしまう。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、仮想空間において車両を再現する場合に車両の挙動に対応して車両の前輪の向きを再現できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係る情報処理装置は、時刻を示す時刻情報と、前記時刻における車両の位置を示す位置情報と、前記時刻における車両の向きを示す向き情報とを関連付けた走行履歴情報を参照し、第1時刻における前記車両の位置と、前記第1時刻よりも後の第2時刻における前記車両の位置とに基づいて、前記第1時刻から前記第2時刻までの期間である第1期間における前記車両の進行方向を特定するとともに、前記第1時刻における前記車両の向きを特定する第1特定部と、前記第1特定部が特定した前記第1期間における車両の進行方向と前記第1時刻における前記車両の向きとがなす角度である第1角度を特定する第2特定部と、前記第2特定部が特定した前記第1角度に基づいて、前記第1時刻における前記車両の前輪の向きを特定する第3特定部と、を有する。
【0007】
前記第3特定部は、前記第1角度に所定の係数を乗算することにより、前記車両の向きと前記車両の前輪の向きとがなす角度を算出し、算出した角度に基づいて、前記車両の前輪の向きを特定してもよい。
【0008】
前記情報処理装置は、前記第2特定部が特定した前記第1角度が所定の角度を超える場合に、前記第1時刻において前記車両がドリフト走行をしていると判定し、前記第1角度が所定の角度以下である場合に、前記第1時刻において前記車両がドリフト走行をしていないと判定する判定部を有し、前記第3特定部は、前記車両がドリフト走行をしていると前記判定部が判定すると、前記車両がドリフト走行をしていないと前記判定部が判定した場合に比べて、前記所定の係数を小さくしてもよい。
【0009】
前記第1特定部は、第2時刻における前記車両の位置と、前記第2時刻よりも後の第3時刻における前記車両の位置とに基づいて、前記第2時刻から前記第3時刻までの期間である第2期間における前記車両の進行方向を特定するとともに、前記第2時刻における前記車両の向きを特定し、前記第2特定部は、前記第1特定部が特定した前記第2期間における車両の進行方向と前記第2時刻における前記車両の向きとがなす角度である第2角度を特定し、前記判定部は、前記第1時刻において前記車両がドリフト走行をしているか否かを判定するとともに、前記第2角度が所定の角度を超える場合に、前記第2時刻において前記車両がドリフト走行をしていると判定し、前記第3特定部は、前記第2時刻において前記車両がドリフト走行をしていると前記判定部が判定し、前記第1時刻において前記車両がドリフト走行をしていないと前記判定部が判定すると、前記第1時刻及び前記第2時刻において前記車両がドリフト走行をしていないと判定した場合に比べて、前記所定の係数を大きくしてもよい。
【0010】
前記第1特定部は、第1時刻における前記車両の位置と、前記第1時刻よりも後の第2時刻における前記車両の位置とに基づいて、前記第1期間における前記車両の速度を特定し、前記第3特定部は、前記車両がドリフト走行をしていないと前記判定部が判定した場合に、前記第1特定部が特定した前記車両の速度が小さければ小さいほど、前記所定の係数を小さくしてもよい。
【0011】
本発明の第2の態様に係る情報処理方法は、コンピュータが実行する、時刻を示す時刻情報と、前記時刻における車両の位置を示す位置情報と、前記時刻における車両の向きを示す向き情報とを関連付けた走行履歴情報を参照し、第1時刻における前記車両の位置と、前記第1時刻よりも後の第2時刻における前記車両の位置とに基づいて、前記第1時刻から前記第2時刻までの期間である第1期間における前記車両の進行方向を特定するとともに、前記第1時刻における前記車両の向きを特定するステップと、特定した前記第1期間における車両の進行方向と前記第1時刻における前記車両の向きとがなす角度である第1角度を特定するステップと、前記第1角度に基づいて、前記第1時刻における前記車両の前輪の向きを特定するステップと、を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、仮想空間において車両を再現する場合に車両の挙動に対応して車両の前輪の向きを再現することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】情報処理装置の概要を説明する図である。
図2】情報処理装置の機能構成を示す図である。
図3】走行履歴情報の一例を示す図である。
図4】第1時刻から第3時刻までの車両の挙動の一例を示す図である。
図5】車両が第1時刻及び第2時刻においてドリフト走行をしていないときの車両の挙動の一例を示す図である。
図6】車両が第1時刻及び第2時刻においてドリフト走行をしているときの車両の挙動の一例を示す図である。
図7】車両が第1時刻においてドリフト走行をしておらず、第2時刻においてドリフト走行をしているときの車両の挙動の一例を示す図である。
図8】情報処理装置における車両を示すオブジェクトの三次元空間への配置に係る処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[情報処理装置1の概要]
図1は、情報処理装置1の概要を説明する図である。情報処理装置1は、車両Vの走行履歴情報に基づいて、車両Vの走行を仮想空間で再現する装置である。
【0015】
まず、情報処理装置1が車両Vの走行を仮想空間で再現するにあたり、車両Vの走行履歴情報が記憶部に記憶されているとともに、車両Vが走行した実空間に存在する道路を含む現実空間を再現した三次元仮想空間が予め設けられている。
【0016】
走行履歴情報は、例えば、車両Vが走行したときの時刻を示す時刻情報と、当該時刻における車両Vの位置を示す位置情報と、当該時刻における車両の向きを示す向き情報とを関連付けた情報である。位置情報は、車両Vに設けられた基準点である車両基準点に設けられているデバイスであって、GNSS(Global Navigation Satellite System)を用いて測位可能な測位デバイスが測定した三次元位置を示す情報である。三次元位置情報は、車両基準点における水平方向の二次元位置である車両二次元位置と、垂直方向の車両の位置である車両高さ位置とを示す三次元位置を示すものとする。
【0017】
情報処理装置1は、第1時刻における車両Vの位置Pと、第1時刻よりも後の第2時刻における車両Vの位置Pとに基づいて、第1時刻から第2時刻までの期間である第1期間における車両の進行方向D12を特定するとともに、第1時刻における車両Vの向きDを特定する。ここで、車両Vの後輪の移動方向は、車両Vの向きDと常に一致しているものとする。
【0018】
情報処理装置1は、特定した第1期間における車両Vの進行方向D12と第1時刻における車両Vの向きDとがなす角度である第1角度θを特定する。情報処理装置1は、特定した第1角度θに基づいて、第1時刻における車両Vの前輪の向きDを特定する。
【0019】
図1に示すように、車両Vの前輪の向きDと、後輪の向き、すなわち、車両Vの進行方向Dとに基づいて車両Vの進行方向D12が定まる。このことから、第1時刻における車両Vの前輪の向きDと、第1期間における車両Vの進行方向D12とのなす角度を角度θとすると、角度θと第1角度θとは一定の関係を有しているといえる。
【0020】
これに対し、情報処理装置1は、第1角度θに対して予め定められた所定の係数nを乗算することにより角度θを簡易的に算出し、算出した角度θに基づいて、第1時刻における車両Vの前輪の向きDを特定する。このようにすることで、情報処理装置1は、仮想空間において車両Vを再現する場合に車両Vの挙動に対応して車両の前輪の向きDを再現することができる。
【0021】
[情報処理装置1の機能構成]
続いて、情報処理装置1の構成について説明する。図2は、情報処理装置1の機能構成を示す図である。図2は、情報処理装置1は、通信部11と、記憶部12と、制御部13とを有する。
【0022】
通信部11は、携帯電話回線、インターネット、無線LAN等の通信ネットワークを介して、ユーザが使用する端末(不図示)等の外部装置とデータを送受信するための通信インターフェースである。
【0023】
記憶部12は、各種のデータを記憶する記憶媒体であり、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、及びハードディスク等を有する。記憶部12は、制御部13が実行するプログラムを記憶する。記憶部12は、制御部13を、第1特定部131、第2特定部132、判定部133、第3特定部134、配置部135、及び表示制御部136として機能させるプログラムを記憶する。
【0024】
また、記憶部12は、車両Vの走行履歴を示す走行履歴情報を記憶する。走行履歴情報は、時刻を示す時刻情報と、当該時刻における車両Vの位置を示す位置情報と、当該時刻における車両の向きを示す向き情報とを関連付けた情報である。
【0025】
図3は、走行履歴情報の一例を示す図である。図3に示すように、走行履歴情報は、時刻情報としての車両Vが走行を開始した時刻である開始時刻からの経過時間と、開始時刻から当該経過時間が対応した時刻における車両Vの三次元位置を示す三次元位置情報と、開始時刻から当該経過時間が経過した時刻における向き情報である、車両Vが基準方向に対して向いている角度を示す方位角と、を関連付けた情報である。なお、基準方向は、例えば北であり、方位角は、北を基準として時計回りに角度を割り当てたものとする。また、隣接する2つの経過時間の時間間隔は、例えば、一般的なディスプレイ装置のフレームレート(例えば、60Hz)に基づく画面の書き換え間隔(例えば、1/60sec)と一致しているものとする。
【0026】
三次元位置情報は、車両基準点における水平方向の二次元位置である車両二次元位置を示す二次元位置情報と、垂直方向の車両の位置である車両高さ位置を示す高さ位置情報とにより構成される。
【0027】
また、記憶部12は、車両Vが走行した実空間を示す実空間情報が記憶されている。実空間情報は、例えば、測量機器を用いて実空間を測量することにより生成された点群データである。点群データは、実空間を示す複数の特徴点それぞれにおける三次元位置情報と、当該特徴点における実空間を示すオブジェクトの色とを関連付けた情報である。情報処理装置1は、実空間情報に基づいて、道路オブジェクト等の各種オブジェクトを配置した三次元仮想空間を生成することにより、現実空間を再現することができる。
【0028】
制御部13は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。制御部13は、記憶部12に記憶されたプログラムを実行することにより、第1特定部131、第2特定部132、判定部133、第3特定部134、配置部135、及び表示制御部136として機能する。
【0029】
第1特定部131は、車両Vの前輪の向きを特定する対象の時刻である第1時刻を特定し、第1時刻における車両Vの前輪の向きを特定するための情報を特定する。例えば、第1特定部131は、車両Vの再現映像を視聴するユーザの端末(不図示)から、視聴を要求することを示す要求情報を取得すると、計時を開始する。
【0030】
第1特定部131は、所定時間おきに、計時を開始した時刻である開始時刻からの経過時間を特定する。第1特定部131は、記憶部12に記憶されている走行履歴情報を参照し、開始時刻から特定した経過時間が経過した時刻である第1時刻における車両Vの位置Pと、第1時刻よりも後の第2時刻における車両Vの位置Pとを特定する。そして、第1特定部131は、第1時刻における車両Vの位置Pと、第2時刻における車両Vの位置Pとに基づいて、第1時刻から第2時刻までの期間である第1期間における車両Vの進行方向D12を特定するとともに、第1時刻における車両Vの向きDを特定する。ここで、所定時間は、例えば、一般的なディスプレイ装置のフレームレート(例えば、60Hz)に基づく画面の書き換え間隔に基づいて設定されるものとする。また、第2時刻は、第1時刻から所定時間が経過した時刻であるものとし、走行履歴情報において、第1時刻に対応する経過時間の次の経過時間が、第2時刻に対応するものとする。
【0031】
また、第1特定部131は、第2時刻における車両Vの位置Pと、第2時刻よりも後の第3時刻における車両Vの位置Pとに基づいて、第2時刻から第3時刻までの期間である第2期間における車両Vの進行方向D23を特定するとともに、第2時刻における車両Vの向きDを特定する。ここで、第3時刻は、第2時刻から所定時間が経過した時刻であるものとする。
【0032】
図4は、第1時刻から第3時刻までの車両Vの挙動の一例を示す図である。以下、図4を適宜参照しながら説明を進める。まず、第1特定部131は、走行履歴情報を参照し、開始時刻から所定の経過時間が経過した時刻である第1時刻に対応する車両Vの三次元位置情報が示す車両Vの二次元位置Pを特定する。
【0033】
また、第1特定部131は、走行履歴情報を参照し、第1時刻から所定時間が経過した第2時刻に対応する車両Vの三次元位置情報が示す車両Vの二次元位置Pを特定する。同様に、第1特定部131は、走行履歴情報を参照し、第2時刻から所定時間が経過した第3時刻に対応する車両Vの三次元位置情報が示す車両Vの二次元位置Pを特定する。
【0034】
第1特定部131は、第1時刻に対応する車両Vの二次元位置Pから、第2時刻に対応する車両Vの二次元位置Pに向かう方向を、第1期間における車両Vの進行方向D12と特定する。第1特定部131は、第2時刻に対応する車両Vの二次元位置Pから、第3時刻に対応する車両Vの二次元位置Pに向かう方向を、第2期間における車両Vの進行方向D23と特定する。
【0035】
第1特定部131は、走行履歴情報を参照し、第1時刻に対応する方位角情報が示す方位角が示す向きを、第1時刻における車両Vの向きDとして特定する。第1特定部131は、走行履歴情報を参照し、第2時刻に対応する方位角情報が示す方位角が示す向きを、第2時刻における車両Vの向きDとして特定する。
【0036】
また、第1特定部131は、第1時刻における車両Vの位置Pと、第2時刻における車両Vの位置Pとに基づいて、第1期間における車両Vの速度を特定する。具体的には、第1特定部131は、第1時刻における車両Vの二次元位置Pと、第2時刻における車両Vの二次元位置Pとに基づいて車両Vが第1期間に進んだ距離を算出し、当該距離を、第1期間の時間間隔で除算することにより、車両Vの速度を算出する。また、第1特定部131は、第2時刻における車両Vの位置Pと、第3時刻における車両Vの位置Pとに基づいて、第2期間における車両Vの速度を特定する。
【0037】
第2特定部132は、第1特定部131が特定した第1期間における車両の進行方向D12と、第1時刻における車両の向きDとがなす角度である第1角度θを特定する。例えば、第2特定部132は、第1期間における車両Vの進行方向D12が示す方位角を算出し、当該方位角と、第1時刻における車両Dの向きに対応する方位角との差を、第1角度θとして特定する。例えば、第2特定部132は、第1角度θの値が0°から180°の範囲内となるように第1角度θを特定する。同様に、第2特定部132は、第1特定部131が特定した第2期間における車両Vの進行方向D23と第2時刻における車両Vの向きDとがなす角度である第2角度θを特定する。
【0038】
判定部133は、第2特定部132が特定した第1角度θに基づいて、第1時刻において車両Vがドリフト走行をしているか否かを判定するとともに、第2特定部132が特定した第2角度θに基づいて、第2時刻において車両Vがドリフト走行をしているか否かを判定する。ここで、ドリフト走行は、車両Vの後輪のグリップ力が失われ、車両Vの後輪が道路を滑りながら走行している状態である。
【0039】
具体的には、判定部133は、第2特定部132が特定した第1角度θが第1時刻における角度の閾値である第1閾値Thを超える場合に、第1時刻において車両Vがドリフト走行をしていると判定する。角度の閾値は、車両Vの速度に基づいて予め定められており、判定部133は、第1特定部131が特定した第1期間における車両Vの速度に対応する第1閾値Thを特定する。そして、判定部133は、第1角度θが第1閾値Thを超える場合に、第1時刻において車両Vがドリフト走行をしていると判定し、第1角度θが第1閾値Th以下である場合に、第1時刻において車両Vがドリフト走行をしていないと判定する。
【0040】
同様に、判定部133は、第1特定部131が特定した第2期間における車両Vの速度に対応する角度の閾値である第2閾値Thを特定する。判定部133は、第2角度θが第2閾値Thを超える場合に、第2時刻において車両Vがドリフト走行をしていると判定し、第2角度θが第2閾値Thである場合に、第2時刻において車両Vがドリフト走行をしていないと判定する。
【0041】
第3特定部134は、第2特定部132が特定した第1角度θに基づいて、第1時刻における車両Vの前輪の向きDを特定する。第3特定部134は、第1角度θに所定の係数である係数nを乗算することにより、第1時刻における車両Vの向きDと、車両Vの前輪の向きとがなす角度θを算出し、算出した角度θに基づいて、車両Vの前輪の向きDを特定する。
【0042】
具体的には、第3特定部134は、判定部133による、第1時刻において車両Vがドリフト走行をしているか否か、及び第2時刻において車両Vがドリフト走行をしているか否かの判定結果に基づいて、係数nを変化させ、第1角度θに係数nを乗算することにより、第1時刻における車両Vの向きDと、車両Vの前輪Dの向きとがなす角度θtを算出する。
【0043】
図5は、車両Vが第1時刻及び第2時刻においてドリフト走行をしていないときの車両Vの挙動の一例を示す図である。図5に示すように、第1時刻及び第2時刻において車両Vがドリフト走行をしていない場合、すなわち、車両Vがグリップ走行をしている場合には、前輪の向きに追従して車両の向きが変化することから、角度θと第1角度θとの比率がほぼ等しくなる。このため、第3特定部134は、第1時刻及び第2時刻において車両Vがドリフト走行をしていないと判定部133が判定すると、係数nの値を、グリップ走行に対応する値n(例えば、n=1)に設定する。
【0044】
図6は、車両Vが第1時刻及び第2時刻においてドリフト走行をしているときの車両Vの挙動の一例を示す図である。図6に示すように、車両Vが第1時刻においてドリフト走行をしている場合には、車両Vの後輪が滑りながら走行しており、第1角度θの値が大きいのに対して、前輪の向きを車体の向きに合わせて微調整しながら走行することから、ドリフト走行をしていない場合に比べて、角度θに対する第1角度θの比率が小さくなることが多い。このため、第3特定部134は、第1時刻において車両Vがドリフト走行をしていると判定すると、係数nの値を、第1時刻及び第2時刻において車両Vがドリフト走行をしていないと判定部133が判定した場合における係数nの値nに比べて、小さい値n(例えば、n=0.5)に設定する。
【0045】
図7は、車両Vが第1時刻においてドリフト走行をしておらず、第2時刻においてドリフト走行をしているときの車両Vの挙動の一例を示す図である。図7に示すように、車両Vが第1時刻においてドリフト走行をしておらず、車両Vが第2時刻においてドリフト走行をしている場合、すなわち、第1時刻における車両Vの状態がドリフト走行をする直前の状態である場合には、車両Vをドリフト走行させるために、車両Vの前輪がオーバーステアリング状態となっており、ドリフト走行をしていない場合に比べて、角度θに対する第1角度θの比率が小さくなる。
【0046】
このため、第3特定部134は、第2時刻において車両Vがドリフト走行をしていると判定部133が判定し、第1時刻において車両Vがドリフト走行をしていないと判定部133が判定すると、第1時刻及び第2時刻において車両Vがドリフト走行をしていないと判定部133が判定した場合における所定の係数nの値nに比べて、所定の係数nの値を大きい値n(例えば、n=2)に設定する。
【0047】
第3特定部134は、第1角度θに、設定した係数nを乗算することにより、第1時刻における車両Vの向きDと、車両Vの前輪の向きDとがなす角度θを算出する。そして、第3特定部134は、第1時刻における車両Vの向きDに対応する方位角と、第1角度θ及び角度θとに基づいて、車両Vの前輪の向きDに対応する方位角を特定する。
【0048】
なお、第3特定部134は、車両Vの走行時には、車両Vの速さが小さければ小さいほど、前輪の向きに従って車両Vが移動することから、第1角度θと、角度θとが近くなる。このため、第3特定部134は、第1時刻及び第2時刻において車両Vがドリフト走行をしていないと判定部133が判定すると、第1特定部131が特定した車両Vの速度が小さければ小さいほど、所定の係数nを小さくしてもよい。このようにすることで、情報処理装置1は、車両Vが走行しているときの速さに応じて、前輪の向きを適切に再現することができる。
【0049】
配置部135は、三次元仮想空間において、第1特定部131が特定した第1時刻に対応する三次元位置に、車両オブジェクトと、タイヤオブジェクトとを配置する。ここで、車両オブジェクトは、車体と後輪が一体化したオブジェクトであり、タイヤオブジェクトは、前輪を示すオブジェクトであるものとする。
【0050】
配置部135は、三次元仮想空間において、第1特定部131が特定した第1時刻に対応する三次元位置に、第1時刻に対応する車両Vの三次元位置に関連付けられている方位角に基づいて車両オブジェクトを配置するとともに、第3特定部134が特定した前輪の向きに基づいてタイヤオブジェクトを配置する。
【0051】
表示制御部136は、車両オブジェクト及びタイヤオブジェクトが配置された三次元仮想空間に一以上の仮想カメラを配置し、当該一以上の仮想カメラそれぞれにより三次元仮想空間を撮影したときの映像データを生成する。そして、表示制御部136は、生成した映像データの少なくともいずれかを、映像を視聴するユーザの端末に出力する。なお、表示制御部136は、仮想カメラの配置位置を端末から受け付け、受け付けた配置位置から三次元仮想空間を撮影したときの映像データを生成してもよい。
【0052】
[動作フロー]
続いて、情報処理装置1における車両Vを示すオブジェクトの三次元空間への配置に係る処理の流れについて説明する。図8は、情報処理装置1における車両Vを示すオブジェクトの三次元空間への配置に係る処理の流れの一例を示すフローチャートである。図8に示すフローチャートは、所定時間おきに実行されるものとする。
【0053】
まず、第1特定部131は、走行履歴情報を参照し、計時を開始した時刻からの経過時間に対応する第1時刻における車両Vの位置と、第1時刻よりも後の第2時刻における車両Vの位置とに基づいて、第1時刻から第2時刻までの期間である第1期間における車両Vの進行方向D12を特定するとともに、第1時刻における車両Vの向きDを特定する(S1)。
【0054】
続いて、第1特定部131は、第2時刻における車両Vの位置と、第2時刻よりも後の第3時刻における車両Vの位置とに基づいて、第2時刻から第3時刻までの期間である第2期間における車両Vの進行方向D23を特定するとともに、第2時刻における車両Vの向きDを特定する(S2)。
【0055】
続いて、第1特定部131は、第1時刻における車両Vの位置Pと、第2時刻における車両Vの位置Pと、第1時刻と第2時刻との時間間隔とに基づいて、第1期間における車両Vの速度を特定する(S3)。
【0056】
続いて、第2特定部132は、第1期間における車両の進行方向D12と第1時刻における車両の向きDとがなす角度である第1角度θと、第2期間における車両Vの進行方向D23と第2時刻における車両Vの向きDとがなす角度である第2角度θとを特定する(S4)。
【0057】
続いて、判定部133は、第1特定部131が特定した第1期間における車両Vの速度に対応する角度の閾値である第1閾値Thを特定するとともに、第2特定部132が特定した第2期間における車両Vの速度に対応する角度の閾値である第2閾値Thを特定する(S5)。なお、S1からS5までの処理は並列に実行されてもよいし、フローチャートに示す順番と異なる順番で実行されてもよい。
【0058】
続いて、判定部133は、第1角度θが第1閾値Thを超えるか否かを判定する(S6)。判定部133は、第1角度θが第1閾値Thを超えると判定すると(S6のYES)、S7に処理を移し、係数nの値をnよりも小さいnに設定する。
【0059】
また、判定部133は、第1角度θが第1閾値Thを超えないと判定すると(S6のNO)、S8に処理を移し、第2角度θが第2閾値Thを超えるか否かを判定する。判定部133は、第2角度θが第2閾値Thを超えると判定すると(S8のYES)、S9に処理を移し、係数nの値をnよりも大きいnに設定する。また、判定部133は、第2角度θが第2閾値Thを超えないと判定すると(S8のNO)、S10に処理を移し、係数nの値をnに設定する。
【0060】
S11において、第3特定部134は、第1角度θに、設定した係数nを乗算することにより、第1時刻における車両Vの向きDと、車両Vの前輪の向きとがなす角度θを算出し、第1角度θと角度θとに基づいて、車両Vの前輪の向きを特定する。
【0061】
続いて、配置部135は、三次元仮想空間において、第1特定部131が特定した第1時刻に対応する三次元位置に、車両オブジェクトを配置するとともに、S11において特定した前輪の向きに基づいてタイヤオブジェクトを配置する(S12)。
【0062】
[変形例]
また、上述の実施の形態では、走行履歴情報を記憶部12に記憶させておき、第1特定部131が、走行履歴情報を所定時間おきに参照して三次元位置情報を取得したが、これに限らない。走行履歴情報は記憶部12に記憶されていなくてもよく、第1特定部131は、車両Vに設けられた測位デバイスが測定した三次元位置を示す三次元位置情報を、通信部11を介してリアルタイムに取得してもよい。このようにすることで、情報処理装置1は、車両Vが実際に走行しているときの車両Vの三次元位置情報に基づいて、三次元仮想空間に車両Vの車両オブジェクトをほぼリアルタイムに再現することができる。
【0063】
[情報処理装置1による効果]
以上説明したように、本実施の形態に係る情報処理装置1は、時刻を示す時刻情報と、当該時刻における車両Vの位置を示す位置情報と、当該時刻における車両Vの向きを示す向き情報とを関連付けた走行履歴情報を参照し、第1時刻における車両Vの位置Pと、第1時刻よりも後の第2時刻における車両Vの位置Pとに基づいて、第1時刻から第2時刻までの期間である第1期間における車両Vの進行方向D12を特定するとともに、第1時刻における車両Vの向きDを特定する。そして、情報処理装置1は、特定した第1期間における車両Vの進行方向D12と第1時刻における車両Vの向きDとがなす角度である第1角度θを特定し、当該第1角度θに基づいて、第1時刻における車両Vの前輪の向きを特定する。このようにすることで、情報処理装置1は、車両Vを三次元仮想空間で再現する場合に不自然な状態で車両Vが再現されてしまうことを抑制することができる。
【0064】
なお、本発明により、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」に貢献することが可能となる。
【0065】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0066】
1 情報処理装置
11 通信部
12 記憶部
13 制御部
131 第1特定部
132 第2特定部
133 判定部
134 第3特定部
135 配置部
136 表示制御部
V 車両

【要約】      (修正有)
【課題】仮想空間において車両を再現する場合に車両の挙動に対応して車両の前輪の向きを再現する。
【解決手段】情報処理装置は、時刻を示す時刻情報と、当該時刻における車両Vの位置を示す位置情報と、当該時刻における車両の向きを示す向き情報とを関連付けた走行履歴情報を参照し、第1時刻における車両の位置と、第1時刻よりも後の第2時刻における車両Vの位置とに基づいて、第1時刻から第2時刻までの期間である第1期間における車両Vの進行方向D12を特定するとともに、第1時刻における車両Vの向きDを特定する第1特定部と、特定された第1期間における車両Vの進行方向D12と第1時刻における車両Vの向きDとがなす角度である第1角度θを特定する第2特定部と、特定された第1角度θに基づいて、第1時刻における車両Vの前輪の向きDを特定する第3特定部と、を有する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8