(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-22
(45)【発行日】2024-03-04
(54)【発明の名称】分類装置および分類方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/163 20240101AFI20240226BHJP
【FI】
G06Q50/163
(21)【出願番号】P 2023554115
(86)(22)【出願日】2021-10-19
(86)【国際出願番号】 JP2021038575
(87)【国際公開番号】W WO2023067684
(87)【国際公開日】2023-04-27
【審査請求日】2023-11-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 嘉人
【審査官】久宗 義明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/090389(WO,A1)
【文献】特開2020-186850(JP,A)
【文献】特開2021-121890(JP,A)
【文献】特開2021-043955(JP,A)
【文献】特許第6844072(JP,B1)
【文献】特開2005-067759(JP,A)
【文献】特開2008-051601(JP,A)
【文献】特開2014-078151(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の管理に関する情報が記録された文章情報を分類する制御部と、
複数の学習済モデルを記憶する記憶部と、
前記建物を管理するための端末と通信する通信部とを備え、
前記建物の管理に関する情報は、前記建物の利用者からの問合せに関する情報を含み、
前記複数の学習済モデルの各々は、前記文章情報に基づき抽出された特徴量が入力された際に、前記文章情報の分類結果を出力するように、前記建物の用途ごとに用意された教師データ群を用いて機械学習処理が施されたモデルであり、
前記分類結果は、前記利用者が問合せをしたときの状況と、前記問合せの原因と、前記問合せに対する対応とを含み、
前記通信部は、前記端末から前記文章情報を受信し、
前記制御部は、
前記複数の学習済モデルから、前記文章情報から特定される前記建物の用途に対応した対応学習済モデルを選択し、
前記特徴量を前記対応学習済モデルに入力することで、前記対応学習済モデルから前記分類結果を出力し、
前記通信部は、前記端末に対して前記分類結果を送信する、分類装置。
【請求項2】
前記通信部は、検索エンジンを利用可能なサーバ装置と通信可能であり、
前記制御部は、前記文章情報から前記建物の用途を特定できない場合に、前記建物の名称を特定し、
前記通信部は、
前記建物の名称を特定した場合に、当該建物の名称を前記サーバ装置に送信し、
前記建物の名称を検索ワードとして前記検索エンジンから得られた検索結果を前記サーバ装置から受信し、
前記制御部は、前記検索結果に基づき、前記建物の用途を特定する、請求項1に記載の分類装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記文章情報から前記建物の用途および前記建物の名称のいずれも特定できない場合に、前記建物に関するキーワードを抽出し、
前記キーワードに基づき、前記建物の用途を特定する、請求項2に記載の分類装置。
【請求項4】
前記建物の用途は、オフィス用と、商業施設用と、学校用と、病院用とのうちの少なくとも2つを含む、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の分類装置。
【請求項5】
コンピュータが実行する、建物の管理に関する情報が記録された文章情報を分類する分類方法であって、
複数の学習済モデルを記憶するステップを含み、
前記建物の管理に関する情報は、前記建物の利用者からの問合せに関する情報を含み、
前記複数の学習済モデルの各々は、前記文章情報に基づき抽出された特徴量が入力された際に、前記文章情報の分類結果を出力するように、前記建物の用途ごとに用意された教師データ群を用いて機械学習処理が施されたモデルであり、
前記分類結果は、前記利用者が問合せをしたときの状況と、前記問合せの原因と、前記問合せに対する対応とを含み、
前記建物を管理するための端末から前記文章情報を受信するステップと、
前記文章情報から前記建物の用途を特定するステップと、
前記複数の学習済モデルから、特定された前記建物の用途に対応する対応学習済モデルを選択するステップと、
前記特徴量を前記対応学習済モデルに入力することで、前記対応学習済モデルから前記分類結果を出力するステップと、
前記端末に対して前記分類結果を送信するステップとをさらに含む、分類方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、分類装置および分類方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オフィス、商業施設、学校あるいは病院などの各種建物において、建物(ビル)の管理者は、建物を利用する利用者から各種問い合わせ(クレーム等)があった場合、問合せに対する原因を調査してこれに対応する。あるいは、管理者は、建物に設置された各種設備の監視システムの故障警報などに対する対応等も行う。これらの日々の対応記録は、文章にまとめられて、日報文章として建物の管理に用いられる端末に記録される。
【0003】
このようにして蓄積された日報文章を分類し、建物管理のための統計データを作成し、統計データを分析することで建物管理の改善に活用させたいというニーズがある。日報文章を分類する場合、機械学習等を活用して自動分類させることが想定できる。こういった分類処理を行うものとしては、たとえば、特許第6844072号公報(特許文献1)に記載の建物管理システムが挙げられる。この建物管理システムでは、設備に対する利用者からの問合せに対する分類処理を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、建物(ビル)管理業界のセキュリティやデータ所有者の違い等を考えると、各管理者が大量の日報文章を入手して学習モデルを作成することは難しい。このため、教師データも少量となり、精度の高い学習モデルを作成することが困難となる。その結果、実務上、機械学習による分類業務を導入することは困難となる。
【0006】
また、各建物の建物管理の改善に活用させる統計データを作成するためには、建物ごとに日報文章を分類する必要がある。日報文章を機械学習により分類するためには、1つの建物ごとに学習モデルを構築する必要があるため、学習モデルの構築に時間がかかってしまう。
【0007】
本開示は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、建物の管理に関する文章情報を精度よく分類することができる分類装置および分類方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る分類装置は、制御部と、記憶部と、通信部とを備える。制御部は、建物の管理に関する情報が記録された文章情報を分類する。記憶部は、複数の学習済モデルを記憶する。通信部は、建物を管理するための端末と通信する。複数の学習済モデルの各々は、文章情報に基づき抽出された特徴量が入力された際に、文章情報の分類結果を出力するように、建物の用途ごとに用意された教師データ群を用いて機械学習処理が施されたモデルである。通信部は、端末から文章情報を受信する。制御部は、複数の学習済モデルから、文章情報から特定される建物の用途に対応した対応学習済モデルを選択する。制御部は、特徴量を対応学習済モデルに入力することで、対応学習済モデルから分類結果を出力する。通信部は、端末に対して分類結果を送信する。
【0009】
本開示に分類方法は、建物の管理に関する情報が記録された文章情報を分類する方法である。分類方法は、複数の学習済モデルを記憶するステップを含む。複数の学習済モデルの各々は、文章情報に基づき抽出された特徴量が入力された際に、文章情報の分類結果を出力するように、建物の用途ごとに用意された教師データ群を用いて機械学習処理が施されたモデルである。分類方法は、建物を管理するための端末から文章情報を受信するステップと、文章情報から建物の用途を特定するステップと、複数の学習済モデルから、特定された建物の用途に対応する対応学習済モデルを選択するステップと、特徴量を対応学習済モデルに入力することで、対応学習済モデルから分類結果を出力するステップと、端末に対して分類結果を送信するステップとをさらに含む。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、建物の管理に関する文章情報を精度よく分類することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】分類システムのハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図2】文章情報の分類処理の具体例を示す図である。
【
図6】建物用途に応じた分類結果の違いについて説明するための図である。
【
図7】建物用途に応じた分類結果の違いについて説明するための図である。
【
図8】学習処理(オフィス用)を説明するための図である。
【
図9】学習処理(オフィス用)のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0013】
[分類システム1]
図1は、分類システム1のハードウェア構成の一例を示す図である。分類システム1は、分類サーバ100と、各建物を管理するための端末(端末A201,端末B301,端末C401等)を含む。
【0014】
分類サーバ100は、建物の管理に関する情報(問合せ等に対する対応記録)が記録された文章情報(日報文章)を分類するサーバである。分類サーバ100は、API(Application Programming Interface)を使用して、端末からの分類要求に応答して文章情報の分類結果を送信する。詳細については、
図2以降を用いて後述する。
【0015】
端末A201,端末B301,端末C401等は、インターネット等のネットワークを介して、分類サーバ100と接続可能である。
【0016】
端末A201は、Aビル200内に設置されている。Aビル200は、オフィスビルである(建物の用途=オフィス)。端末B301は、Bビル300内に設置されている。Bビル300は、商業施設である(建物の用途=商業施設)。端末C401は、Cビル400内に設置されている。Cビル400は、学校である(建物の用途=学校)。
【0017】
本実施の形態においては、各建物(ビル)では、建物設備の管理業務を行う管理者が管理を行っているものとする。管理者は、建物を利用する利用者からの各種問い合わせ(クレーム等)に対応する。あるいは、管理者は、建物に設置された各種設備の監視システムの故障警報などにも対応する。管理者は、利用者からの問合せあるいは警報等(以下、「問合せ等」と称する)を受け付けると、問合せ等に対して原因を究明した上でこれに対応する。
【0018】
これらの対応記録(日々の出来事)は、管理者によって文章にまとめられ、日報文章として端末に記録される。日報文章は、1案件につき、100~300字程度の文章でまとめられる。
【0019】
本例では、Aビル200の問合せ等は、Aビル200の管理者によって端末A201に記録される。Bビル300の問合せ等は、Bビル300の管理者によって端末B301に記録される。Cビル300の問合せ等は、Cビル400の管理者によって端末C401に記録される。なお、管理者は、必ずしも建物に常駐していなくてもよく、複数の建物を管理する者であってもよい。建物を管理する端末は、遠隔地に設置されるものであってもよく、1つの端末で複数の建物を管理するものであってもよい。
【0020】
分類サーバ100は、CPU(Central Processing Unit)111と、ROM(Read Only Memory)112と、RAM(Random Access Memory)113と、記憶部114と、通信インターフェイス115とを備える。
【0021】
CPU111は、分類サーバ100全体を総括的に制御する。CPU111は、ROM112に格納されているプログラムをRAM113に展開して実行する。ROM112は、分類サーバ100の処理手順が記されたプログラムを格納する。RAM113は、CPU111がプログラムを実行する際の作業領域となるものであり、プログラムやプログラムを実行する際のデータ等を一時的に記憶する。
【0022】
通信インターフェイス115は、端末A201,端末B301,端末C401と通信するためのインターフェイスである。記憶部114は、不揮発性の記憶装置である。記憶部114は、たとえば、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等であってもよい。
【0023】
記憶部114は、学習済モデル群131と、学習用データセット群140と、単語辞書150とを記憶している。学習済モデル群131は、複数の学習済みモデルにより構成される。具体的には、学習済モデル群131は、オフィス用学習済モデル132と、商業施設用学習済モデル133と、学校用学習済モデル134とを含む(以下、単に「学習済モデル132~134とも称する)。
【0024】
本実施の形態においては、端末から分類要求があった場合、学習済モデル群131(複数の学習済モデル132~134)から、日報文章から特定される建物の用途に対応した学習済モデルが選択されるように構成されている。
【0025】
具体的には、建物の用途=オフィスであるAビル200の場合、端末A201からの分類要求があった場合、オフィス用学習済モデル132が選択される。建物の用途=商業施設であるBビル300の場合、端末B301からの分類要求があった場合、商業施設用学習済モデル133が選択される。建物の用途=学校であるCビル400内の場合、端末C401からの分類要求があった場合、学校用学習済モデル134が選択される。
【0026】
なお、建物の用途は、上記に限らない。たとえば、建物の用途として「病院」を含むものであってもよい。この場合、用途が病院である建物において使用する端末からの分類要求があった場合、病院用の学習済モデルが選択されることになる。学習モデルの詳細については、
図2,
図8,
図9を用いて後述する。
【0027】
端末A201は、CPU211と、ROM212と、RAM213と、記憶部214と、通信インターフェイス215と、入力部220と、表示部221とを備える。
【0028】
CPU211は、利用者端末200全体を総括的に制御する。CPU211は、ROM212に格納されているプログラムをRAM213に展開して実行する。ROM212は、利用者端末200の処理手順が記されたプログラムを格納する。RAM213は、CPU211がプログラムを実行する際の作業領域となるものであり、プログラムやプログラムを実行する際のデータ等を一時的に記憶する。
【0029】
通信インターフェイス215は、分類サーバ100と通信するためのインターフェイスである。記憶部214は、不揮発性の記憶装置である。記憶部214は、たとえば、HDDやSSD等であってもよい。
【0030】
入力部220は、ユーザからの入力を受け付ける。入力部220は、たとえば、キーボード、マウス、タッチパネルである。表示部221は、各種情報の表示を行う。表示部221は、たとえば、液晶表示器、ディスプレイである。
【0031】
同様に、端末B301,端末C401も、CPUと、ROMと、RAMと、記憶部と、通信インターフェイスと、入力部と、表示部とを備える。端末A201,端末B301,端末C401は、たとえば、デスクトップコンピュータ、ノートパソコン、タブレット端末等である。
【0032】
なお、分類サーバ100は、1つのサーバ装置によって構成されるものに限らず、複数のサーバ装置によって構成されるものであってもよい。たとえば、地域ごとにサーバ装置を設置して各地域からの分類要求に応答するものであってもよい。この場合、各地域のサーバ装置が互いに通信し、互いの情報(学習済モデル等)を共有可能に構成するものであってもよい。あるいは、各地域のサーバを管理するメインサーバ装置を備え、メインサーバ装置が各地域の情報を管理(学習済モデル等)するものであってもよい。
【0033】
上記各地域は、日本国内の各地域に限らず、日本国外の地域を含むものであってもよい。たとえば、日本国内外の1以上の国または地域にサーバ装置を設置するようにしてもよい。この場合、日本国内にサーバ装置を置いて、日本国外に設置されたサーバ装置と情報(学習済モデル等)を共有するように構成してもよい。また、いずれかの国にメインサーバ装置を設置し、各国に設置されたサーバ装置からメインサーバ装置に記憶された情報を参照させるようにしてもよい。
【0034】
各国において設置されたサーバ装置は、管理する国または地域ごとに、言語コードを有する。たとえば、日本国内の建物を管理するサーバ装置には、言語コードとして「日本語」が設定される。中国国内の建物を管理するサーバ装置には、言語コードとして「中国語」が設定される。英語圏の国の建物を管理するサーバ装置には、言語コードとして「英語」が設定される。
【0035】
サーバ装置は、各言語コードに対応した言語データを有する。たとえば、日本国内の端末からアクセスがあった場合は、これらの端末上には日本語で情報が表示される。中国国内の端末からアクセスがあった場合は、これらの端末上には中国語で情報が表示される。また、言語ごとに問合せ情報を管理するようにしてもよい。
【0036】
[分類処理の手順]
図2は、文章情報の分類処理の具体例を示す図である。ここでは、端末A201が分類サーバ100に対して日報文章の分類要求を行う例について説明する。
【0037】
日報文章は、建物用途(建物の用途)、建物名称(建物の名称)、日報文章データを含む。日報文章データの内容としては、一般的に、問合せ等があった時の状況、その原因、その対応が含まれる。また、日報文章には、必ずしも建物用途、建物名称が記録されているわけではなく、これらの記載が省略されることもある。
【0038】
記憶部214には、日報文章の一例として、建物用途「オフィス」、建物名称「Aビル」、日報文章データ「5Fトイレが濡れているとテナントから連絡あり。確認結果、大便器が詰まっていたいので、ラバーカップで処置し復旧した。」が記録されているとする。
【0039】
この日報文章データは、Aビル(オフィスビル)200を利用する利用者(たとえば、Aビル200に入居している会社の従業員)からの問合せ(クレーム)に関して記録されたものである。Aビル200の管理人は、利用者から「5階のトイレの床が濡れている」というクレームを受け付けた。これに対して、管理人は、5階のトイレを確認したところ、トイレの大便器が詰まっていることが原因であることを確認している。管理人は、その対応として、ラバーカップを用いて、大便器の詰まりを解消している。
【0040】
このような、建物ごとに蓄積された日報文章を分類すると、建物管理のための統計データを作成することが可能となる。この統計データを分析することで、その建物において発生しやすい問合せの傾向等が把握できるため、ビル管理の改善に役立てることができる(たとえば、トラブルが発生しやすい場所を特定して、その対策を講じる等)。
【0041】
ところで、日報文章から統計データを作成するためには、文章を分類して集計する必要がある。従来は、作業者が文章を読んで、これを手動で分類していた。一方、機械学習などのAIを活用して自動分類を行うことができれば、建物管理者の業務の効率化を図ることができる。
【0042】
ここで問題となるのが、機械学習を行うための日報文章データの収集と日報文章データのセキュリティ等に関する点である。機械学習の精度を上げるためには、大量の日報文章を収集する必要がある。しかしながら、日報文章はその建物の管理情報を含むため、その内容が外部に漏れないように厳重に管理する必要がある。このため、所有者が異なる建物の日報文章を入手して、別の所有者がこれを活用することができない。
【0043】
このように、ビル管理業界のセキュリティやデータ所有者の違い等を考えると、大量の日報文章を入手して学習モデルを作成することは難しい。このため、教師データも少量となり、精度の高い学習モデルを作成することが困難となる。その結果、実務上、機械学習による分類業務を導入することは困難となる。
【0044】
また、各建物の建物管理の改善に活用させる統計データを作成するためには、建物ごとに日報文章を分類する必要がある。日報文章を機械学習により分類するためには、1つの建物ごとに学習モデルを構築する必要があるため、学習モデルの構築に時間がかかってしまう。また、建物設備の管理者ごとに異なる表現を用いて日報文章を作成するため、複数のビルを同一の分類で集計することが困難である。
【0045】
以上の点を鑑みて、本実施の形態では、建物ごとに学習モデルの構築および分類処理を行わせるのではなく、分類サーバ100を用意した。そして、分類サーバ100が、一括して学習モデルの構築および分類処理を行うようにした。さらに、建物用途ごとに学習モデルを用意した。
【0046】
建物は、建物用途が同じであれば、建物構造、設置する設備、利用者、利用用途などがほぼ同じとなる。このため、建物用途が同じであれば、日報文章の記録内容も類似する。建物用途ごとに建物をグルーピングすることで、各建物において日報文章の蓄積が少ない場合であっても、データを共有化して精度の高い学習モデルを構築することができる。これにより、高精度の文章分類が可能となる。
【0047】
その際、分類サーバ100においては、各建物(各端末)からの日報文章を取得し、これを元に分類のための学習処理を行う。分類サーバ100は、建物(ビル)のオーナーから委託を受け、オーナーと守秘義務契約を締結した管理業者が管理を行うものである。
【0048】
分類サーバ100においては、各オーナーが所有する日報文章を用いて学習処理を行うが、これらのデータを異なる所有者に提示しないように、データ管理がされている。また、分類サーバ100は、APIを介して、日報文章を受け付け、その分類結果を返すが、分類結果自体には他のオーナーが所有する日報文章に関する秘密情報が含まれない。このように構成することで、会社や団体を問わず、各建物の管理者が、1つの学習モデルを共用利用可能することが可能となる。これにより、データの守秘義務を守りつつ、建物ごとに学習モデルを構築しなくてもよくなる。
【0049】
また、建物の管理者ごとに、同一の設備・同一の状況に対して、異なる表現を用いて日報を記録することがある。このため、建物ごとに日報文章を分類した場合、建物ごとに分類結果の表現にばらつきが出る。本実施の形態のように、共通化した学習モデルを用いた場合、建物に依存することなく分類結果の表現が統一される。このため、複数のビルの日報文章をまとめて分類し、まとめて統計処理を行うことも可能となる。
【0050】
このように、本実施の形態では、建物の管理に関する文章情報(日報文章)を精度よく分類することができる。以下、本実施の形態の構成について詳細に説明する。
【0051】
図2の説明に戻り、端末A201のユーザは、分類サーバ100に対して、上述の日報文章とともに日報文章の分類要求を行ったとする。以下、フローチャートを用いて、分類サーバ100のCPU111が実行する分類処理の流れを説明する。分類処理は、周期的に起動する。
図4は、分類処理のフローチャートである。以下、「ステップ」を単に「S」とも称する。
【0052】
分類処理が開始した後、分類サーバ100の通信インターフェイス115は、端末A201から日報文章の分類要求とともに日報文章を受信する。CPU111は、S11において、通信インターフェイス115が日報文章の分類要求を受信したか否かを判定する。CPU111は、日報文章の分類要求を受信したと判定した場合(S11においてYES)は、処理をS12に進める。一方、CPU111は、日報文章の分類要求を受信したと判定しなかった場合(S11においてNO)は、分類処理を終了する。
【0053】
CPU111は、S12において、建物用途特定処理(
図5参照)を実行する。CPU111は、建物用途特定処理において、建物用途を特定する。本例では、日報文章には、建物用途「オフィス」が記録されているため、CPU111は、建物用途を「オフィス」と特定する。
【0054】
CPU111は、S13において、複数の学習済モデル132~134から、日報文章から特定した建物用途に対応する学習済モデルを選択する。この例では、建物用途が「オフィス」に特定されているため、オフィス用学習済モデル132が選択される。
【0055】
CPU111は、S14において、日報文章データから抽出された特徴量を選択した学習済モデルに入力することで、当該学習済モデルから分類結果を出力する。この例では、CPU111は、特徴量をオフィス用学習済モデル132に入力して分類結果を得る。
【0056】
複数の学習済モデル132~134の各々は、日報文章に基づき抽出された特徴量が入力された際に、日報文章の分類結果を出力するように、建物の用途ごとに用意された教師データ群(学習用データセット群140)を用いて機械学習処理が施されたモデルである。
【0057】
図2の例では、日報文章データ「5Fトイレが濡れているとテナントから連絡あり。確認結果、大便器が詰まっていたので、ラバーカップで処置し復旧した。」に対して、分類結果として、状況「トイレ濡れている」、原因「便器詰まり」、対応「ラバーカップ処理」が出力されている。
【0058】
上述のように、日報文章データには、「状況」、「原因」、「対応」のうちの1以上に対応する内容が含まれている。この場合、「状況」は「5Fトイレが濡れているとテナントから連絡あり。」であり、「原因」は、「確認結果、大便器が詰まっていたので、」であり、「対応」は、「ラバーカップで処置し復旧した。」である。
【0059】
これらの「状況」、「原因」、「対応」のそれぞれに対応する文章は、簡潔な言葉で置き換えることが可能である。本実施の形態においては、このような簡潔な言葉として、2つの単語の組合せで置き換えている。この2つの単語は、主語に相当する単語および述語に相当する単語の組合せ、あるいは、述語に相当する単語および目的語に相当する単語の組合せで構成するのが適切である。
【0060】
たとえば、上記例では、「状況」として「トイレ」+「濡れている」の2単語で表現することができ、「原因」として「便器」+「詰まり」の2単語で表現することができ、「対応」として「ラバーカップ」+「処理」の2単語で表現することができる。
【0061】
このように、日報文章データは、建物設備の管理に特有の文章構造を有しており、また、建物設備の管理において用いられる特徴的な単語を用いて簡潔に表現することができる。上述のように、日報文章データは、「状況」、「原因」、「対応」という3つの属性を持つ文章に分類することができる。以下、「状況」、「原因」、「対応」を「属性代表語」と称する。また、各属性代表語に対応する文章を2単語で表したもの(「トイレ濡れている」、「便器詰まり」など)を、以下、「属性内容」と称する。特徴量の抽出および学習済モデル132~134の学習方法については、
図8,
図9を用いて後述する。
【0062】
CPU111は、S15において、生成した分類結果を通信インターフェイス115に送信を用いて端末A201に送信し、分類処理を終了する。端末A201は、分類結果として、状況「トイレ濡れている」、原因「便器詰まり」、対応「ラバーカップ処理」を得ている。
【0063】
図2の例においては、日報文章から建物の用途を特定する例について説明した。以下の
図3の例においては、日報文章から建物の用途を特定できない例について説明する。
【0064】
図3は、建物用途特定処理の具体例を示す図である。本例では、日報文章として、「建物用途」は設定されていない。「建物名称」は「Dビル」と設定されている。「日報文章データ」は、「・・・洗面台の排水が悪い・・・。」と設定されている。
【0065】
CPU111は、日報文章から建物の用途を特定できない場合に、Webサーバ500を利用して建物の名称を特定する。Webサーバ500は、検索エンジンを利用可能なサーバである。
【0066】
以下、フローチャートを用いて説明する。
図5は、建物用途特定処理のフローチャートである。建物用途特定処理は、
図4のS12において実行される処理である。
【0067】
建物用途特定処理を開始すると、CPU111は、S21において、日報文章に建物用途の記載があるか否かを判定する。CPU111は、日報文章に建物用途の記載があると判定した場合(S21においてYES)は、処理をS22に進める。一方、CPU111は、日報文章に建物用途の記載があると判定しなかった場合(S21においてNO)は、処理をS23に進める。
【0068】
CPU111は、S22において、日報文章から建物用途を特定し、建物用途特定処理を終了する。たとえば、
図2の例においては、日報文章の「建物用途」は「オフィス」であるので、建物用途を「オフィス」と特定する。
【0069】
CPU111は、S23において、日報文章に建物名称の記載があるか否かを判定する。CPU111は、日報文章に建物名称の記載があると判定した場合(S23においてYES)は、処理をS24に進める。一方、CPU111は、日報文章に建物名称の記載があると判定しなかった場合(S23においてNO)は、処理をS28に進める。
【0070】
CPU111は、S24において、建物名称を検索ワードに設定し、処理をS25に進める。
図3の例では、日報文章の「建物名称」が「Dビル」に設定されているので、検索ワードとして「Dビル」を設定する。このように、CPU111は、日報文章から建物の用途を特定できない場合に、建物の名称を特定する。
【0071】
分類サーバ100の通信インターフェイス115は、Webサーバ500と通信可能である。CPU111は、S25において、通信インターフェイス115を用いてWebサーバに検索ワードを送信する。本例では、建物の名称を特定しているので、当該建物の名称(Dビル)がWebサーバ500に送信される。
【0072】
Webサーバ500は、建物名称を検索ワードとして検索エンジンから得られた検索結果を取得し、分類サーバ100に送信する。CPU111は、S26において、Webサーバから通信インターフェイス115を経由して検索結果を取得する。
【0073】
CPU111は、S27において、検索結果から建物用途を特定し、建物用途特定処理を終了する。たとえば、検索結果として、「・・・レストラン街とショッピングセンターを・・・」という文章を含んでいたとする。「レストラン街」、「ショッピングセンター」はビルが商業施設である場合に、特徴となるキーワードである。このため、本実施の形態においては、建物用途として、「商業施設」が決定される。
【0074】
上記キーワードは、事前に用意したキーワードのリストに該当するときに検索結果から抽出してもよいし、単に、検索結果に含まれる名詞をキーワードとして抽出するようにしてもよい。建物名称(「Dビル」)を検索ワードとして検索した場合、たとえば、「テナント」という文言を含む賃貸情報等が含まれるような場合には、少なくともDビルが商業施設あるいはオフィスビルである(「病院」あるいは「学校」ではない)ことが特定できる。また、Dビルがオフィスビルである場合、検索結果の文章に「オフィス」、「オフィスビル一覧」という文言を含むオフィスの賃貸情報等が含まれることがある。Dビルが商業施設である場合、上記のような「レストラン街」、「ショッピングセンター」や、「フロアガイド」、「グルメ」等のキーワードを含む。
【0075】
たとえば、キーワード(入力)に対応する建物用途(出力)を、上記のようにルール化したルールベースで特定するようにしてもよい。あるいは、キーワード(入力)から建物用途(出力)を出力するように、機械学習処理が施された学習済モデルを用いた推定を行うようにしてもよい。また、検索結果は、文章に限らず、画像であってもよい。この場合、画像情報から抽出される情報に基づき建物用途を特定する。たとえば、画像情報から抽出される文字に基づき建物用途を特定してもよいし、建物の外観に基づき建物用途を特定してもよい。
【0076】
CPU111は、S28において、日報文章データから建物に関するキーワードを抽出する。このように、CPU111は、日報文章から建物の用途および建物の名称のいずれも特定できない場合に、建物に関するキーワードを抽出する。建物に関するキーワードは、日報文章データから抽出される。CPU111は、S29において、建物に関するキーワードから建物用途を特定し、建物用途特定処理を終了する。
【0077】
建物に関するキーワードは、事前に用意した建物に関するキーワードのリストに該当するときに日報文章から抽出してもよいし、単に、日報文章に含まれる名詞をキーワードとして抽出するようにしてもよい。たとえば、日報文章データに「店舗から連絡があり・・」という文章があった場合、「店舗」というキーワードを抽出する。「店舗」というキーワードからは、建物用途が「病院」や「学校」である可能性が排除される。また、「医者」、「患者」などのキーワードを抽出した場合、建物用途が「病院」であることが特定可能である。「教師」、「生徒」、「卒業」などのキーワードを抽出した場合、建物用途が「学校」であることが特定可能である。
【0078】
建物に関するキーワードから建物用途を特定する場合、たとえば、建物に関するキーワード(入力)に対応する建物用途(出力)を、上記のようにルール化したルールベースで特定するようにしてもよい。あるいは、建物に関するキーワード(入力)から建物用途(出力)を出力するように、機械学習処理が施された学習済モデルを用いた推定を行うようにしてもよい。なお、日報文章データから抽出された建物に関するキーワードを検索ワードに設定し、Webサーバ500から検索結果を取得し、検索結果から建物用途を特定するようにしてもよい。
【0079】
次に、建物用途に応じた分類結果の違いについて、
図6,
図7を用いて説明する。ここでは、「排水が悪い」原因が建物用途に応じてどのように違うかについて説明する。
図6,
図7は、建物用途に応じた分類結果の違いについて説明するための図である。
【0080】
図6に示すように、日報文章の日報文章データに「・・・厨房の排水が悪い・・・・」という文章が設定されているとする。この日報文章を用いて、Bビル(商業施設ビル)300において、商業施設用学習済モデル133を用いて分類結果を出力させたとする。
【0081】
また、日報文章の日報文章データに「・・・洗面台の排水が悪い・・・・」という文章が設定されているとする。この日報文章を用いて、Aビル(オフィスビル)200において、オフィス用学習済モデル132を用いて分類結果を出力させたとする。
【0082】
その結果、Bビル(商業施設ビル)300においては、分類結果として、状況「排水が悪い」、「グリストラップ 詰まり」、処置「グリストラップ清掃」が得られたとする。Aビル(オフィスビル)200においては、分類結果として、状況「排水が悪い」、「詰まり」、処置「詰まり除去」が得られたとする。
【0083】
ここでは、状況としてはいずれも「排水が悪い」が得られた。しかし、商業施設(飲食店)においては、原因として「グリストラップ」の詰まり、処置として「グリストラップ」の清掃が分類結果として得られている。これに対して、オフィスにおいて「グリストラップ」に関する分類結果は得られていない。
【0084】
グリストラップは、業務用厨房に設置が義務づけられている装置であって、排水に含まれる残飯、油脂、野菜くずなどをせき止めて、下水に直接流入させることを防ぐ装置である。飲食店が入っている商業施設ビルにおいては、飲食店の厨房にグリストラップが設置される。このため、排水が悪い原因としては、グリストラップの詰まりが想定され得る。一方で、飲食店が入っていないオフィスビルにおいては、排水が悪い原因として、グリストラップの詰まりは想定されない。
【0085】
図6の例を用いて説明したように、建物用途に応じて、状況に対する一般的に想定される原因および処置は異なる。このため、建物用途に応じて学習用データセットを用意し、建物用途に応じた学習済モデルを作成することで、より精度の高い分類結果を得ることができる。
【0086】
次に、
図7の例では、日報文章の日報文章データに「・・・洗面台に落とし物・・・・」という文章が設定されているとする。この日報文章を用いて、Aビル(オフィスビル)200において、オフィス用学習済モデル132を用いて分類結果を出力させたとする。Cビル(学校)400において、学校用学習済モデル134を用いて分類結果を出力させたとする。
【0087】
その結果、Aビル(オフィスビル)200においては、分類結果として、状況「洗面台 落し物収拾依頼」、「指輪を落とした」、処置「U字トラップの分解対応」が得られたとする。Cビル(学校)400においては、分類結果として、状況「洗面台 落し物収拾依頼」が得られたが、原因および処置の分類結果は得られなかった(「~予測不可~」)とする。
【0088】
ここでは、状況としてはいずれも「洗面台 落し物収拾依頼」が得られた。オフィスビルにおいては、原因として「指輪」を落とし、処置として「U字トラップ」を分解したことが分類結果として得られている。これに対して、学校においては分類結果がは得られていない(「予測不可」が出力)。
【0089】
オフィスビルにおいては、洗面台での落とし物の収集依頼をする問合せがあった場合、洗面台の排水溝に物を落としてしまって取れなくなる状況が想定される。この場合、落とし物としては、排水溝に入ってしまうサイズのものが想定される。典型的なものとして、オフィスビルにおいては、女性従業員が落とす指輪(あるいはイヤリング)が想定される。このため、洗面台での落とし物の原因として「指輪」を落としたことが想定され得る。一方で、学校においては、生徒が指輪を落とすことは一般的に想定されない。
【0090】
図7の例においても、建物用途に応じて、状況に対する一般的に想定される原因および処置は異なる。このため、建物用途に応じて学習用データセットを用意し、建物用途に応じた学習済モデルを作成することで、より精度の高い分類結果を得ることができる。
【0091】
[学習処理]
分類サーバ100における学習処理において、学習用データセット群140は、「単語」を入力として、「属性代表語」および「属性内容」を出力とするデータの組合せである。
【0092】
学習処理には、建物用途がオフィスである場合の学習処理(オフィス用)と、建物用途が商業施設である場合の学習処理(商業施設用)と、建物用途が学校である場合の学習処理(学校用)とが含まれる。学習用データセット群140は、学習用データセット群(オフィス用)142と、学習用データセット群(商業施設用)と、学習用データセット群(学校用)とを含む。
【0093】
オフィス用学習済モデル132は、オフィスビル用に用意された学習用データセット群(オフィス用)142を用いて学習処理が施されたモデルである。商業施設用学習済モデル133は、商業施設用に用意された学習用データセット群(商業施設用)を用いて学習処理が施されたモデルである。学校用学習済モデル134は、学校用に用意された学習用データセット群(学校用)を用いて学習処理が施されたモデルである。
【0094】
以下、オフィス用学習済モデル132を例に挙げて、学習処理(オフィス用)について説明する。その他のモデルについても、学習方法は同様である。
図8は、学習処理(オフィス用)を説明するための図である。
【0095】
オフィス用学習済モデル132(推定モデル)は、日報文章データに含まれる単語に関連する意味を持つ単語が入力された際に、1以上の属性代表語および属性代表語に関連した属性内容を出力するように、教師データを用いた機械学習処理が施されたモデルである。
【0096】
ここで、日報文章データに含まれる単語に関連する意味を持つ単語とは、単語辞書150を用いて履歴データに含まれる単語から抽出した単語であり、建物管理を行う際に特徴的に用いられる単語(単語代表語)である。
【0097】
図8に示すように、学習用データセット群(オフィス用)142には、単語01と属性代表語01と属性内容01で構成される学習用データセット、単語02と属性代表語02と属性内容02で構成される学習用データセット、単語03と属性代表語03と属性内容03で構成される学習用データセットが含まれる。
【0098】
「単語」は、単語辞書150を用いて抽出された1つまたは複数の単語である。単語辞書150は、日報文章データに使用される単語を代表する単語代表語と、単語代表語に関連する意味を持つ単語関連語とが対応付けられた辞書である。単語代表語は、単語関連語の上位概念に相当する単語を含むものであるが、関連する意味を持つものであれば、必ずしも上位概念に相当する単語でなくてもよい。
【0099】
たとえば、単語代表語「便器」に対応する属性関連語は、「大便器」、「小便器」等である。単語代表語「水道」に対応する属性関連語は、「蛇口」等である。単語代表語「照明」に対応する属性関連語は、「ライト」、「蛍光灯」、「灯」、「あかり」等である。
【0100】
このような単語辞書150を用いて、日報文章データから単語が抽出される。たとえば、本例では、「トイレ」、「濡れている」、「テナント」、「大便器」、「詰まり」、「ラバーカップ」、「処置」等の単語が抽出されたとする。このように、日報文章データから抽出された単語は、
図4の分類処理のS14において例示した、学習済モデルに入力される特徴量に相当する。
【0101】
たとえば、学習用データセット群(オフィス用)142において、単語01は、「トイレ」、「濡れている」である。これらに対応する属性代表語01は「状況」であり、これらに対応する属性内容01は「トイレ濡れている」である。
【0102】
つまり、単語辞書150を用いて抽出された単語に「トイレ」、「濡れている」が含まれている場合、履歴データには「状況」という属性を持つ文章が含まれ、「状況」という属性を持つ文章を2単語で表したものが「トイレ濡れている」となるように、学習が行われる。
【0103】
他にも、単語辞書150を用いて抽出された単語に「便器」、「詰まり」が含まれている場合、履歴データには「原因」という属性を持つ文章が含まれ、「原因」という属性を持つ文章を2単語で表したものが「便器詰まり」となるように、学習が行われる。
【0104】
図9は、学習処理(オフィス用)のフローチャートである。分類処理は、学習処理(オフィス用)を開始すると、CPU111は、S31において、学習用データセット群(オフィス用)142の中から学習用データセットを選択する。
【0105】
CPU111は、S32において、選択した学習用データの単語データを推定モデルに入力する。CPU111は、S33において、推定モデル31による推定処理によって、推定結果が出力される。CPU111は、S34において、推定結果と学習用データに対応する正解データとの誤差に基づき推定モデルのパラメータを更新する。
【0106】
CPU111は、S35において、全ての学習用データセットに基づき学習したか否かを判定する。CPU111は、全ての学習用データに基づき学習したと判定した場合(S35においてYES)は、処理をS36に進める。一方、CPU111は、全ての学習用データに基づき学習したと判定しなかった場合(S35においてNO)は、処理をS31に進める。
【0107】
CPU111は、S36において、学習済みの推定モデルをオフィス用学習済モデル132として記憶し、学習処理(オフィス用)を終了する。
【0108】
本実施の形態においては、端末A201等は、記憶部214に記憶する日報文章を分類サーバ100に送信し、分類サーバ100から分類結果を得るように構成した。分類結果は、状況と原因と対応とを含む属性項目ごとに分類されている。分類結果は、たとえば、以下のように活用される。端末A201のCPU211は、複数の日報文章に基づき、複数の日報文章に対応する複数の分類結果を分類サーバ100から取得する。CPU211は、複数の分類結果を、属性項目ごとに集計(統計)し、端末A201の表示部221に統計結果を表示させるようにしてもよい。たとえば、状況として、「トイレが漏れている」、「排水が悪い」、「落とし物収集依頼」、「便器が故障している」等があり、状況ごとに発生数を集計し、発生数順に表示させるようにしてもよい。さらに、状況「排水が悪い」の原因に複数の原因があり、その処置に複数の処置がある場合、各状況に対応する複数の原因および複数の処置を頻度順に表示させるようにしてもよい。また、このようにして集計した集計結果は、表示部221に表示させるとともに、統計データとして出力させるようにしてもよい。当該データは、分類サーバ100に送信してもよいし、記憶部214に記憶してもよいし、プリンタを用いて印刷するようにしてもよい。このようにすることで、集計結果(統計データ)を分析することができ、これにより、その建物において発生しやすい問合せの傾向等が把握できるため、ビル管理の改善に役立てることができる。
【0109】
[主な構成および効果]
以下、前述した実施の形態の主な構成および効果を説明する。
【0110】
(1) 分類サーバ100は、CPU111と、記憶部114と、通信インターフェイス115とを備える。CPU111は、建物の管理に関する情報が記録された文章情報(日報文章)を分類する。記憶部114は、複数の学習済モデル132~134を記憶する。通信インターフェイス115は、建物を管理するための端末(端末A201,端末B301,端末C401等)と通信する。複数の学習済モデル132~134の各々は、日報文章に基づき抽出された特徴量が入力された際に、日報文章の分類結果を出力するように、建物の用途ごとに用意された教師データ群(学習用データセット群140)を用いて機械学習処理が施されたモデルである。通信インターフェイス115は、端末A201から日報文章を受信する。CPU111は、複数の学習済モデル132~134から、日報文章から特定される建物の用途に対応した対応学習済モデル(132~134)を選択する。CPU111は、特徴量を対応学習済モデル(132~134)に入力することで、対応学習済モデルから(132~134)分類結果を出力する。通信インターフェイス115は、端末A201に対して分類結果を送信する。
【0111】
このように、分類サーバ100は、建物用途が異なる各建物からの要求に応じて、建物の建物用途に対応した適切な学習済モデルを選択した上で、端末に対して日報文章の分類結果を送信する。学習済モデルは、建物の用途ごとに用意された学習用データセット群140を用いて機械学習処理が施されたモデルである。これにより、建物の管理に関する文章情報(日報文章)を精度よく分類することができる。
【0112】
(2) 通信インターフェイス115は、検索エンジンを利用可能なWebサーバ500と通信可能である。CPU111は、日報文章から建物の用途を特定できない場合に、建物の名称を特定する。通信インターフェイス115は、建物の名称を特定した場合に、当該建物の名称をWebサーバ500に送信する。通信インターフェイス115は、建物の名称を検索ワードとして検索エンジンから得られた検索結果をWebサーバ500から受信する。CPU111は、検索結果に基づき、建物の用途を特定する。このように、建物用途が不明である場合も、自動的に建物用途を特定することができるため、人手に頼ることなく、効率的に分類作業を行うことができる。
【0113】
(3) CPU111は、日報文章から建物の用途および建物の名称のいずれも特定できない場合に、建物に関するキーワードを抽出する。CPU111は、建物に関するキーワードに基づき、建物の用途を特定する。建物用途および建物名称が不明である場合も、自動的に建物用途を特定することができるため、人手に頼ることなく、効率的に分類作業を行うことができる。
【0114】
(4) 建物の用途は、オフィス用と、商業施設用と、学校用と、病院用とのうちの少なくとも2つを含む。これにより、オフィス、商業施設、学校、病院などの建物用途ごとに、日報文章を精度よく分類することができる。
【0115】
(5) 建物の管理に関する情報は、建物の利用者からの問合せに関する情報を含む。分類結果は、利用者が問合せをしたときの状況と、問合せの原因と、問合せに対する対応とを含む。これにより、建物に関する問合せに関し、状況、原因、対応ごとに分類を行うことで、分類結果に基づく統計データを作成した際に、より緻密に統計データを分析することができる。
【0116】
(6) 分類方法は、建物の管理に関する情報が記録された日報文章を分類する方法である。分類方法は、複数の学習済モデル132~134を記憶するステップを含む。複数の学習済モデル132~134の各々は、日報文章に基づき抽出された特徴量が入力された際に、日報文章の分類結果を出力するように、建物の用途ごとに用意された教師データ群を用いて機械学習処理が施されたモデルである。分類方法は、建物を管理するための端末から日報文章を受信するステップと、日報文章から建物の用途を特定するステップと、複数の学習済モデル132~134から、特定された建物の用途に対応する対応学習済モデルを選択するステップと、特徴量を対応学習済モデルに入力することで、対応学習済モデルから分類結果を出力するステップと、端末に対して分類結果を送信するステップとをさらに含む。これにより、建物の管理に関する文章情報(日報文章)を精度よく分類することができる。
【0117】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0118】
1 分類システム、100 分類サーバ、111,211 CPU、112,212 ROM、113,213 RAM、114,214 記憶部、115,215 通信インターフェイス、131 学習済モデル群、132 オフィス用学習済モデル、133 商業施設用学習済モデル、134 学校用学習済モデル、140 学習用データセット群、142 学習用データセット群(オフィス用)、150 単語辞書、200 Aビル、220 入力部、221 表示部、300 Bビル、301 端末B、400 Cビル、401 端末C、500 Webサーバ。