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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-22
(45)【発行日】2024-03-04
(54)【発明の名称】スイッチおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01H 36/00 20060101AFI20240226BHJP
   H01H 3/12 20060101ALI20240226BHJP
   H01H 11/00 20060101ALI20240226BHJP
   H01H 13/00 20060101ALI20240226BHJP
   H01H 13/52 20060101ALI20240226BHJP
【FI】
H01H36/00 Y
H01H3/12 C
H01H11/00 G
H01H13/00 B
H01H13/52 B
H01H36/00 J
H01H36/00 K
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023579592
(86)(22)【出願日】2023-09-01
(86)【国際出願番号】 JP2023032113
【審査請求日】2023-12-25
(31)【優先権主張番号】P 2022140004
(32)【優先日】2022-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022146492
(32)【優先日】2022-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000131430
【氏名又は名称】シチズン電子株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100160716
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 力
(72)【発明者】
【氏名】宮下 純二
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 真輔
(72)【発明者】
【氏名】西川 雄樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 俊太朗
(72)【発明者】
【氏名】深沢 文哉
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 武志
(72)【発明者】
【氏名】羽田 勇貴
【審査官】片岡 弘之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/019835(WO,A1)
【文献】特開昭59-119621(JP,A)
【文献】特開2020-035586(JP,A)
【文献】特開2020-123481(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 36/00
H01H 3/12
H01H 11/00
H01H 13/00
H01H 13/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部が形成された基台と、
前記凹部の底面に配置された第1電極と、
前記凹部の周囲に配置された第2電極と、
前記凹部内に配置され、前記第1電極と電気的に接続する誘電体と、
前記誘電体の上方に配置され、前記第2電極と電気的に接続する導電シートと、
中央に貫通孔が形成され、前記貫通孔の周囲で前記誘電体と前記導電シートとの間の間隔を保持する絶縁性の間隔保持部材と、を有し、
前記誘電体と前記導電シートとは、前記導電シートを前記誘電体の方向に押圧する押圧力に応じて前記導電シートと前記誘電体との接触面積が変化するように配置され、
前記間隔保持部材の一方の面には、前記貫通孔の外縁に沿ってへこみが形成され、
前記間隔保持部材は、前記へこみが前記導電シートの側に位置するように配置される、
ことを特徴とするスイッチ。
【請求項2】
前記へこみは、前記貫通孔を穴抜き加工で形成する際に形成されるダレである、
請求項1に記載のスイッチ。
【請求項3】
前記導電シートを囲み、前記間隔保持部材の上方から前記基台に接着される枠部材と、
前記枠部材に接着されて前記導電シートを覆うことにより前記導電シートを保護する保護シートと、をさらに有する、
請求項1に記載のスイッチ。
【請求項4】
前記基台の外周に配置され、前記第1電極と電気的に接続される第1端子と、
前記基台の外周に配置され、前記第2電極と電気的に接続される第2端子と、をさらに有する、
請求項1に記載のスイッチ。
【請求項5】
前記凹部の底面から前記誘電体の上面までの高さは、前記凹部の底面から前記第2電極の上面までの高さと等しい、請求項1~4の何れか一項に記載のスイッチ。
【請求項6】
前記凹部の底面から前記間隔保持部材の上面までの高さは、前記凹部の底面から前記第2電極の上面までの高さと等しい、請求項1~4の何れか一項に記載のスイッチ。
【請求項7】
凹部が形成され、前記凹部の底面に配置された第1電極と、前記凹部の周囲に配置された第2電極と、を有する基台を準備し、
前記第1電極と電気的に接続する誘電体を、前記誘電体の一方の面が前記第1電極に対向するように前記前記凹部内に配置し、
中央に貫通孔が形成された絶縁性の間隔保持部材を前記誘電体の他方の面に配置し、
前記間隔保持部材の上方に導電シートを配置する、工程を含み、
前記誘電体と前記導電シートとは、前記導電シートを前記誘電体の方向に押圧する押圧力に応じて前記導電シートと前記誘電体との接触面積が変化するように配置され、
前記間隔保持部材の一方の面には、前記貫通孔の外縁に沿ってへこみが形成され、
前記間隔保持部材は、前記へこみが前記導電シートの側に位置するように配置される、
ことを含む、ことを特徴とするスイッチの製造方法。
【請求項8】
前記誘電体を前記凹部内に配置する工程は、
未硬化の接着部材を介して前記第1電極と電気的に接続するように、前記凹部に誘電体を収容し、
前記誘電体の上面が前記基台の上面を基準として所定の高さとなるように前記誘電体を固定した状態で前記接着部材を硬化させて、所望の厚さを有し、前記誘電体を前記第1電極と電気的に接続する導電性の接着層を形成する、
ことを含む、請求項7に記載のスイッチの製造方法。
【請求項9】
前記間隔保持部材の他方の面には、前記誘電体の上面に向かって延伸する突出部が前記貫通孔の外縁に沿って形成され、
前記誘電体を前記凹部内に配置する工程は、
未硬化の接着部材を介して前記第1電極と電気的に接続するように、前記凹部に誘電体を収容し、
前記誘電体の他方の面に配置された前記間隔保持部材の上面が前記基台の上面を基準として所定の高さとなるように前記誘電体を固定した状態で前記接着部材を硬化させて、所望の厚さを有し、前記誘電体を前記第1電極と電気的に接続する導電性の接着層を形成する、
ことを含む、請求項7に記載のスイッチの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スイッチおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の操作スイッチとして、静電容量式の感圧スイッチが用いられる。感圧スイッチは、空隙を挟んで配置された誘電体と導電性樹脂とを有し、導電性樹脂が押圧されたときの誘電体と導電性樹脂との間の空隙の大きさの変化によって生じる静電容量の変化を検出する。
【0003】
特開2020-123481号公報には、中央に開口部を有するスペーサにより誘電体と導電性樹脂の間に空隙を形成するスイッチが記載されている。
【発明の概要】
【0004】
このようなスイッチは、繰り返し押圧操作を受けることにより特性が変化することがある。そこで、このようなスイッチにおいて、使用に伴う特性の変化を抑えることが求められている。
【0005】
本開示は上述の課題を解決するためになされたものであり、使用に伴う特性の変化を抑えることを可能とする感圧スイッチおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
本開示の実施形態に係るスイッチは、凹部が形成された基台と、凹部の底面に配置された第1電極と、凹部の周囲に配置された第2電極と、凹部内に配置され、第1電極と電気的に接続する誘電体と、誘電体の上方に配置され、第2電極と電気的に接続する導電シートと、中央に貫通孔が形成され、貫通孔の周囲で誘電体と導電シートとの間の間隔を保持する絶縁性の間隔保持部材と、を有し、誘電体と導電シートとは、導電シートを誘電体の方向に押圧する押圧力に応じて導電シートと誘電体との接触面積が変化するように配置され、間隔保持部材の一方の面には、貫通孔の外縁に沿ってへこみが形成され、間隔保持部材は、へこみが導電シートの側に位置するように配置される、ことを特徴とする。
【0007】
また、へこみは、貫通孔を穴抜き加工で形成する際に形成されるダレであることが好ましい。
【0008】
また、スイッチは、導電シートを囲み、間隔保持部材の上方から基台に接着される枠部材と、枠部材に接着されて導電シートを覆うことにより導電シートを保護する保護シートと、をさらに有することが好ましい。
【0009】
また、スイッチは、凹部の底面から誘電体の上面までの高さは、凹部の底面から第2電極の上面までの高さと等しいことが好ましい。
【0010】
また、スイッチは、凹部の底面から間隔保持部材の上面までの高さは、凹部の底面から第2電極の上面までの高さと等しいことが好ましい。
【0011】
本開示の実施形態に係るスイッチの製造方法は、凹部が形成され、凹部の底面に配置された第1電極と、凹部の周囲に配置された第2電極と、を有する基台を準備し、第1電極と電気的に接続する誘電体を凹部内に配置し、中央に貫通孔が形成された絶縁性の間隔保持部材を誘電体の上方に配置し、間隔保持部材の上方に導電シートを配置する、工程を含み、誘電体と導電シートとは、導電シートを誘電体の方向に押圧する押圧力に応じて導電シートと誘電体との接触面積が変化するように配置され、間隔保持部材の一方の面には、貫通孔の外縁に沿ってへこみが形成され、間隔保持部材は、へこみが導電シートの側に位置するように配置される、ことを特徴とする。
【0012】
また、スイッチの製造方法では、誘電体を凹部内に配置する工程は、未硬化の接着部材を介して第1電極と電気的に接続するように、凹部に誘電体を収容し、誘電体の上面が基台の上面を基準として所定の高さとなるように誘電体を固定した状態で接着部材を硬化させて、所望の厚さを有し、誘電体を第1電極と電気的に接続する導電性の接着層を形成することを含むことが好ましい。
【0013】
また、スイッチの製造方法では、間隔保持部材の他方の面には、誘電体の上面に向かって延伸する突出部が貫通孔の外縁に沿って形成され、誘電体を凹部内に配置する工程は、未硬化の接着部材を介して第1電極と電気的に接続するように、凹部に誘電体を収容し、誘電体の他方の面に配置された間隔保持部材の上面が基台の上面を基準として所定の高さとなるように誘電体を固定した状態で接着部材を硬化させて、所望の厚さを有し、誘電体を第1電極と電気的に接続する導電性の接着層を形成することを含むことが好ましい。
【0014】
本開示に係る感圧スイッチおよびその製造方法は、使用に伴う特性の変化を抑えることを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態に係るスイッチの斜視図である。
図2図1に示すスイッチの分解斜視図である。
図3図1に示すスイッチの断面図である。
図4図1に示す貫通孔の周辺の構造を説明するための間隔保持部材の模式的な断面図である。
図5図1に示すスイッチの製造方法の流れを示すフロー図である。
図6】(A)は図5においてS1で示される工程を示す図であり、(B)は図5においてS2で示される工程を示す図であり、(C)は図5においてS3で示される工程を示す図である。
図7】(A)は図5においてS4で示される工程を示す図であり、(B)は図5においてS5で示される工程を示す図であり、(C)は図5においてS6で示される工程を示す図である。
図8】第2実施形態に係るスイッチの断面図である。
図9図8に示すスイッチ2の製造方法の流れを示すフロー図である。
図10】(A)は図9においてS11で示される工程を示す図であり、(B)は図9においてS12で示される工程を示す図であり、(C)は図9においてS13で示される工程を示す図である。
図11】(A)は図9においてS14で示される工程を示す図であり、(B)は図9においてS15で示される工程を示す図であり、(C)は図9においてS16で示される工程を示す図である。
図12】(A)は図9においてS17で示される工程を示す図であり、(B)は図9においてS18で示される工程を示す図である。
図13】第3実施形態に係るスイッチの断面図である。
図14図13に示すスイッチの製造方法の流れを示すフロー図である。
図15】(A)は図14においてS13で示される工程を示す図であり、(B)は図9においてS15で示される工程を示す図である。
図16図8に示す接着層の厚さと凹部の深さとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、本開示の様々な実施形態について説明する。本開示の技術的範囲はそれらの実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明及びその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0017】
(第1実施形態に係るスイッチ)
図1は第1実施形態に係るスイッチ1の斜視図であり、図2はスイッチ1の分解斜視図である。スイッチ1は、基台11、配線12、誘電体13、間隔保持部材14、導電シート15、枠部材16、保護シート17および保持部材18を有する。スイッチ1は、内部に形成されるコンデンサの静電容量の変化に基づいて押圧操作を検出する静電容量式の感圧スイッチである。
【0018】
基台11は、絶縁性のセラミックまたは樹脂により形成される略直方体の部材である。セラミックは、窒化アルミ、酸化アルミ(アルミナ)又はLTCC(Low Temperature Co-fired Ceramics)等である。樹脂は、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂又はポリエステル樹脂等である。基台11の上面には、誘電体13を収容可能な凹部111が形成される。基台11の外周側面の四隅には、丸みを帯びた切欠きが形成される。
【0019】
配線12は、第1電極121、第2電極122、第1端子123および第2端子124を有する。第1電極121、第2電極122、第1端子123および第2端子124は、いずれも銅等の導電性材料により形成された導電性薄膜である。第1電極121は、基台11の凹部111の底面に配置される。第2電極122は、基台11の上面の、凹部111の周囲に配置される。第1端子123は、基台11の外周側面に形成された四つの切欠きのうち隣接する二つの切欠きを覆うように配置され、第2端子124は他の隣接する二つの切欠きを覆うように配置される。第1端子123は、後述する基台11の内部配線を介して第1電極121と電気的に接続される。第2端子124は、基台11の上面において第2電極122と電気的に接続される。第1電極121および第1端子123と、第2電極122および第2端子124とは、相互に電気的に絶縁される。第2電極122の上面および基台11の上面の外縁には、フェノール樹脂またはポリイミド樹脂等の絶縁性を有する樹脂によって形成されるレジスト125が配置される。
【0020】
誘電体13は、1.0以上の比誘電率を有するチタン酸バリウム等の強誘電体材料により、略直方体に形成される。誘電体13は、底面が第1電極121に接するように凹部111の内部に配置される。誘電体13の底面は、銀ペースト等の導電性材料により第1電極121に接着される。これにより、誘電体13は第1電極121と電気的に接続される。
【0021】
間隔保持部材14は、ポリイミド樹脂等の合成樹脂により形成される矩形の平板状の絶縁性部材である。間隔保持部材14は、誘電体13と導電シート15との間の間隔を保持するスペーサとして機能する。間隔保持部材14の中央には、上面から底面までを貫通する貫通孔141が形成される。貫通孔141は、間隔保持部材14に穴抜き加工を施すことにより形成される。
【0022】
導電シート15は、シリコーン等の可撓性の合成樹脂に金属粉末または導電性カーボンブラックを配合した導電性ゴムにより、平板状に形成される。導電シート15は、間隔保持部材14を挟んで誘電体13の上方に配置される。導電シート15の底面の中央部は、間隔保持部材14の貫通孔141を介して誘電体13の上面の中央部と対向する。導電シート15の底面と誘電体13の上面との間の間隔は、間隔保持部材14の厚さに相当する距離である。なお、導電シート15は、ポリイミドにアルミを蒸着したフィルムや導電性の樹脂シート等の、他の導電性を有する弾性体であってもよい。
【0023】
枠部材16は、ポリイミドまたはポリフタルアミド等の合成樹脂により形成される。枠部材16は、導電シート15を囲み、かつ枠部材16の外縁が基台11の外縁と一致するように、基台11の上面に配置される。枠部材16の底面は、アクリル樹脂系接着剤等の合成系接着剤により基台11の上面に接着される。枠部材16は、枠部材16を形成する合成樹脂の粘性により導電シート15を保持する。
【0024】
保護シート17は、ポリイミドまたはポリアミド等の防水性の高い合成樹脂により、薄膜状に形成される。保護シート17は、導電シート15を覆うように配置される。保護シート17は、誘電体13、間隔保持部材14および導電シート15を水滴、湿気、塵芥等から保護する。
【0025】
保護シート17は、基部171、傾斜部172および押下面173を有する。基部171は、傾斜部172および押下面173を囲む平面状の部分である。基部171が枠部材16の上面に合成系接着剤により接着されることにより、保護シート17が導電シート15を覆うように配置される。基部171の外縁は、基台11および枠部材16の外縁と一致する。傾斜部172は、押下面173を囲む環形の平面形状を有し、基部171との接続部から内側に向かって上方に傾斜する面である。押下面173は、基部171に対して上方に突出した円形の平面である。
【0026】
押下面173が押下されると、押下面173は下方に移動して導電シート15の上面に接触する。この状態で押下面173がさらに押下されると、押下面173は導電シート15を誘電体13の方向に押圧する。誘電体13の方向に押圧された導電シート15は下方に湾曲して、導電シート1の底面が誘電体13の上面と接触する。
【0027】
押圧力が小さい状態では、導電シート15の押圧されている部分の中央部のみが誘電体13の上面と接触する。押圧力が大きくなるにつれて、導電シート15は、押圧されている中央部を中心とするより広い範囲で誘電体13の上面と接触するようになる。すなわち、導電シート15と誘電体13とは、導電シート15を誘電体13の方向に押圧する押圧力に応じて導電シート15と誘電体13との接触面積が変化するように配置される。導電シート15と誘電体13との接触面積が増加することにより、導電シート15と第1電極121とで形成されるコンデンサの静電容量が増加する。第1端子123および第2端子124は、コンデンサの静電容量を示す電気信号を出力する。このようにして、押下面173に加わる押圧力が検出される。
【0028】
保持部材18は、ポリアミド樹脂等の高い剛性を有する合成樹脂により形成される。保持部材18には、上面から下面まで貫通する貫通孔181が形成される。保持部材18は、貫通孔181の内部に、押下面173を押下する方向に摺動可能に、押下面173を押圧するための押圧部材(不図示)を保持するための部材である。また、保持部材18の底面は、合成系接着剤により保護シート17に接着される。
【0029】
図3は、図1のIII-III断面におけるスイッチ1の断面図である。配線12は、さらに底面配線126および内部配線127を有する。底面配線126は、基台11の底面の近傍に配置され、第1端子123と電気的に接続される。内部配線127は、基台11の内部の、凹部111の下方に配置され、第1電極121と底面配線126を接続する。底面配線126および内部配線127により、第1電極121と第1端子123とが電気的に接続される。
【0030】
図4は、貫通孔141の周辺の構造を説明するための間隔保持部材14の模式的な断面図である。貫通孔141は、平板状の間隔保持部材14の一部を穴抜き加工によりせん断することにより形成される。貫通孔141を穴抜き加工で形成する際に、間隔保持部材14の一方の面(図4では上面)には、貫通孔141の外縁に沿って丸みを帯びたダレ142が形成され、他方の面には、貫通孔141の外縁に沿って穴抜き加工の抜き方向(図4では下方向)に突出したカエリ143が形成される。ダレ142およびカエリ143は、間隔保持部材14を構成する材料が抜き方向に引っ張られることにより形成される。間隔保持部材14は、ダレ142が導電シート15の側に位置し、カエリ143が誘電体13の側に位置するように配置される。ダレ142はへこみとも称され、カエリ143は突出部とも称される。
【0031】
導電シート15が押圧されたときには、導電シート15の、貫通孔141の外縁との接点に大きい力が加わる。このとき、カエリ143が導電シート15の側に位置していると、カエリ143が導電シート15に食い込む。スイッチ1の使用に伴いカエリ143が導電シート15に繰り返し食い込むことにより、導電シート15が変形し、導電シート15と誘電体との間の距離や接触面積が変化するため、静電容量が変化するおそれがある。スイッチ1の間隔保持部材14が、カエリ143が誘電体13の側に位置するように配置されることにより、カエリ143が導電シート15に食い込むことが防止される。
【0032】
また、カエリ143が誘電体13の側に位置する場合でも、導電シート15の側にダレ142が形成されておらず貫通孔141の外縁が角張っていると、貫通孔141の外縁が導電シート15に食い込む。したがって、カエリ143が導電シート15の側に位置している場合と同様に、静電容量が変化するおそれがある。スイッチ1の間隔保持部材14が、丸みを帯びたダレ142が導電シート15の側に位置するように配置されることにより、貫通孔141の外縁が導電シート15に食い込むことが防止される。これにより、スイッチ1の特性が変化することが防止される。
【0033】
図5はスイッチ1の製造方法の流れを示すフロー図であり、図6および図7はスイッチ1の製造方法の各工程を説明するための模式的な断面図である。図6および図7では一つのスイッチ1の製造工程が示されるが、このような例に限られず、複数の基台11を連結した集合基板を用いることにより、複数のスイッチ1が一括して製造されてもよい。
【0034】
最初に、図6(A)に示すように、基台11が準備される(ステップS1)。基台11には凹部111が形成されるとともに、基台11は、凹部111の底面に配置された第1電極121と、凹部111の周囲に配置された第2電極122とを有する。第1電極121は第1端子123に、第2電極122は第2端子124にそれぞれ電気的に接続されている。
【0035】
次に、図6(B)に示すように、第1電極121と電気的に接続する誘電体13が凹部111内に配置される(ステップS2)。凹部111の底面の第1電極を覆うように、熱硬化性の導電性接着層が形成される。導電性接着層の上方に誘電体13が配置された後、基台11が加熱されることにより導電性接着層が硬化される。このようにして、誘電体13が凹部111内に配置され、第1電極121と電気的に接続する。
【0036】
次に、図6(C)に示すように、穴抜き加工により中央に貫通孔が形成された絶縁性の間隔保持部材14が誘電体13の上方に配置される(ステップS3)。間隔保持部材14は、ダレ142が導電シート15の側に位置し、カエリ143が誘電体13の側に位置するように配置される。
【0037】
次に、図7(A)に示すように、間隔保持部材14の上方に導電シート15が配置される(ステップS4)。導電シート15は、枠部材16に保持されて枠部材16と一体化した状態で、枠部材16の底面が基台11の上面と接着されることにより、間隔保持部材14の上方に配置される。このようにして、導電シート15が、間隔保持部材14の貫通孔141の周囲が誘電体13と導電シート15との間の間隔を保持するように配置される。
【0038】
次に、図7(B)に示すように、導電シート15を覆うように保護シート17が配置される(ステップS5)。保護シート17は、枠部材16の上面に接着されることにより配置される。
【0039】
次に、図7(C)に示すように、保護シート17の上方に保持部材18が配置される(ステップS6)。保持部材18は、下面が保護シート17に接着されることにより配置される。以上のようにして、スイッチ1が製造される。
【0040】
以上説明したように、スイッチ1は、貫通孔141の周囲で誘電体13と導電シート15との間の間隔を保持する絶縁性の間隔保持部材14を有する。間隔保持部材14は、貫通孔141を穴抜き加工で形成する際に貫通孔141の外縁に形成されるダレ142が導電シート15の側に位置するように配置される。これにより、スイッチ1は、使用に伴う特性の変化を抑えることを可能とする。
【0041】
また、スイッチ1は、枠部材16に接着されて導電シート15を覆うことにより導電シート15を保護する保護シート17を有する。これにより、スイッチ1の防塵性、防水性、防湿性が高められ、塵芥、水滴、湿度等によるスイッチの特性の変化が抑えられる。
【0042】
また、スイッチ1は、基台11の外周に配置され、第1電極121と電気的に接続される第1端子123と、基台11の外周に配置され、第2電極122と電気的に接続される第2端子124をさらに有する。第1端子123および第2端子124が基台11の外周に配置されることにより、基台11の内部の構造が簡素化され、スイッチ1が小型化される。
【0043】
スイッチ1には、次に述べるような変形例が適用されてもよい。
【0044】
上述した説明では、ダレ142は丸みを帯びているものとしたが、このような例に限られない。ダレ142は、間隔保持部材14の一方の面と貫通孔141の内周側面とが傾斜平面によって接続された、いわゆるC面取りの形状を有していてもよい。この場合も同様に、貫通孔141の外縁が導電シート15に食い込むことが防止され、スイッチ1の特性が変化することが防止される。
【0045】
上述した説明では、貫通孔141は穴抜き加工で形成されるものとしたが、このような例に限られない。例えば、射出成形等の成形加工により、貫通孔141を有する間隔保持部材14が形成されてもよい。この場合、貫通孔141の外縁が丸みを帯びた形状となるような型を用いて間隔保持部材14が成形されてもよく、間隔保持部材14が成形された後に、貫通孔141の外縁が丸みを帯びた形状となるように面取り(R面取りまたはC面取り)がされてもよい。
【0046】
上述した説明では、スイッチ1は保護シート17を有するものとしたが、スイッチ1は保護シート17を有しなくてもよい。すなわち、利用者が直接、または押圧部材を介して間接的に、導電シート15を押圧するようにしてもよい。
【0047】
上述した説明では、第1端子123および第2端子124は基台11の外周に配置されるものとしたが、第1端子123および第2端子124は基台11の上面や底面等の任意の位置に配置されてもよい。
【0048】
(第2実施形態に係るスイッチ)
図8図1のIII-III断面に対応する断面における第2実施形態に係るスイッチ2の断面図である。スイッチ2は、スイッチ1と同様に、内部に形成されるコンデンサの静電容量の変化に基づいて押圧操作を検出する静電容量式の感圧スイッチである。
【0049】
スイッチ2は、所望の高さを有する接着層19を有することがスイッチ1と相違する。また、スイッチ2は、誘電体13の上面の高さが基台11の上面に配置される第2電極122の上面の高さと略一致することがスイッチ1と相違する。接着層19及び誘電体13の上面の高さ以外のスイッチ2の構成要素の構成及び機能は、同一符号が付されたスイッチ1の構成要素の構成及び機能と同一なので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0050】
接着層19は、導電性接着材料により形成され、第1電極121に誘電体13を固定すると共に、第1電極121と誘電体13との間を電気的に接続する。接着層19の高さは、誘電体13の上面の高さが基台11の上面に配置される第2電極122の上面の高さと略一致するように調整される。
【0051】
スイッチ2では、基台11の底板112の上面から誘電体13の上面までの高さである第1高さH1は、基台11の底板112の上面から第2電極122の上面までの高さである第2高さH2と等しい。第1高さH1は、第1電極121の高さH121、接着層19の高さH19及び誘電体13の高さH13から
H1 = H121 + H19 + H13
で示される。一方、第2高さH2は、基台11の側壁113の高さH113、及び第2電極122の高さH122から
H2 = H113 + H122
で示される。
【0052】
誘電体13は、誘電体13の上面が基台11の上面に対して所定の高さとなるように配置される。例えば、誘電体13は、上面が基台11の上面に配置される第2電極122と同じ高さとなるように配置される。基台11の上面には第2電極122およびレジスト125が配置されているため、基台11の上面とは、第2電極122の上面またはレジスト125の上面と一致する。図3に示す例では、誘電体12は、上面が第2電極122の上面と同じ高さとなるように配置されている。誘電体13は、上面が基台11の上面に配置されたレジスト125と同じ高さになるように配置されてもよい。
【0053】
図9はスイッチ2の製造方法の流れを示すフロー図であり、図10~12はスイッチ2の製造方法の各工程を説明するための模式的な断面図である。図10(A)は図9に示すステップS11を示し、図10(B)は図9に示すステップS12を示し、図10(C)は図9に示すステップS13を示す。図11(A)は図9に示すステップS14を示し、図11(B)は図9に示すステップS15を示し、図11(C)は図9に示すステップS16を示す。図12(A)は図9に示すステップS17を示し、図12(B)は図9に示すステップS18を示す。図10~12では集合工法を用いて複数のスイッチ2を製造するための製造工程が示されるが、このような例に限られず、一つのスイッチ2のみが製造されてもよい。
【0054】
最初に、図10(A)に示すように、複数の基台11が連結された集合基板が準備される(ステップS11)。それぞれの基台11には凹部111が形成されるとともに、それぞれの基台11は、凹部111の底面に配置された第1電極121と、凹部111の周囲に配置された第2電極122とを有する。第1電極121は第1端子123に、第2電極122は第2端子124にそれぞれ電気的に接続されている。また、基台11の第2電極122の上面の一部、および隣接する二つの基台11の第2電極122の間には、レジスト116が配置されている。
【0055】
次に、図10(B)に示すように、第1電極121に未硬化の接着部材Gが配置される(ステップS12)。接着部材Gは、少なくとも硬化した状態で導電性を有する。接着部材Gは、例えばエポキシ樹脂を含む銀ペーストである。
【0056】
次に、図10(C)に示すように、誘電体13が吸着プレートP1に吸着される(ステップS13)。吸着プレートP1には、集合基板のそれぞれの凹部111に対向するように、凹部111の外径よりも大きい外径を有する複数の突出部P11が形成されている。誘電体13は、突出部P11に載置される。吸着プレートP1は、突出部P11に形成された吸気口P12の内部の気圧を低下させることにより、突出部P11に載置された誘電体12を吸着する。突出部P11の周囲には、突出部P11よりも高さが低い受け部P13が配置される受け部P13は、レジスト125が対向するように配置される。突出部P11の高さと受け部P13の高さの差は、レジスト125の高さと第2電極122の高さの差よりも大きい。
【0057】
次に、図11(A)に示すように、誘電体13が第1電極121と電気的に接続するように接着される(ステップS14)。接着部材Gが配置された集合基板が上下反転されて、誘電体13が凹部111に収容されるように吸着プレートP1に載置される。このとき、誘電体13の底面が接着部材Gと接触する。また、突出部P11の外径が凹部111の外径よりも大きいため、突出部P11の外縁は凹部111の周囲と当接する。したがって、誘電体13の上面の高さが凹部111の周囲と同一の高さとなる。凹部111の周囲と突出部P11の外縁とがより確実に当接するように、集合基板に重りプレートQ1が載置される。
【0058】
誘電体13が吸着プレートP1に吸着された状態で集合基板が加熱されることにより、接着部材Gが硬化されて導電性の接着層19が形成され、誘電体13が第1電極121と電気的に接続されるとともに第1電極121に接着される。このとき、誘電体13は吸着プレートP1に吸着されているため、接着部材Gの硬化収縮によって誘電体13が持ち上がることはない。すなわち、接着部材Gを硬化させることにより、誘電体13の上面の高さが凹部111の周囲、すなわち基台11の上面に配置される第2電極122の高さと同一の高さとなるような所望の厚さを有する接着層19が形成される。したがって、誘電体13の上面が凹部111の周囲の高さを基準として高い精度で位置決めされる。
【0059】
次に、図11(B)に示すように、中央に貫通孔141が形成された絶縁性の間隔保持部材14が、第1電極121に接着された誘電体13の上方に配置される(ステップS15)。
【0060】
次に、図11(C)に示すように、間隔保持部材14の上方に導電シート15が配置される(ステップS16)。導電シート15は、枠部材16に保持されて枠部材15と一体化した状態で、枠部材16の底面が基台11の上面と接着されることにより、間隔保持部材14の上方に配置される。このようにして、導電シート15が、間隔保持部材14の貫通孔141の周囲が誘電体13と導電シート15との間の間隔を保持するように配置される。
【0061】
次に、図12(A)に示すように、導電シート15を覆うように保護シート17が配置される(ステップS17)。保護シート17は、枠部材16の上面に接着されることにより配置される。
【0062】
次に、図12(B)に示すように、保護シート17の上方に保持部材18が配置される(ステップS18)。保持部材18は、下面が保護シート17に接着されることにより配置される。
【0063】
最後に、集合基板が切断されることにより個片化される(ステップS19)。以上のようにして、複数のスイッチ2が製造される。
【0064】
以上説明したように、スイッチ2は、誘電体13を吸着した状態で接着層19を硬化させることにより、誘電体13を第1電極121と電気的に接続した状態で接着することにより製造される。これにより、誘電体13が基台11の上面の高さを基準として高い精度で位置決めされる。一般に、基台11を製造する際に凹部111の深さを高い精度で一定にすることは困難である。また、誘電体13の厚さにもばらつきがある。したがって、凹部111の底面の高さを基準として誘電体13を位置決めした場合、誘電体13と導電シート15との間の距離のばらつきが生じやすくなる。これに対し、スイッチ2の製造方法においては、凹部111の底面ではなく基台11の上面の高さを基準として誘電体13が位置決めされるため、誘電体13と導電シート15との間の距離のばらつきが抑えられる。
【0065】
また、誘電体13は、上面が基台11の上面に配置される第2電極122と同一の高さとなるように配置され、スイッチ2は、誘電体13の上方に、誘電体13と導電シート15との間に所定の間隔を保持するための間隔保持部材14を有する。これにより、誘電体13と導電シート15との間の距離が間隔保持部材13によって規定されるため、誘電体13と導電シート15との間の距離のばらつきが抑えられる。
【0066】
(第3実施形態に係るスイッチ)
図13図1のIII-III断面に対応する断面における第3実施形態に係るスイッチ3の断面図である。スイッチ3は、スイッチ1及び2と同様に、内部に形成されるコンデンサの静電容量の変化に基づいて押圧操作を検出する静電容量式の感圧スイッチである。
【0067】
スイッチ3は、接着層20を接着層19の代わりに有することがスイッチ1と相違する。また、スイッチ3は、誘電体13の上面ではなく、間隔保持部材14の上面の高さが基台11の上面に配置される第2電極122の上面の高さと略一致することがスイッチ2と相違する。接着層20及び間隔保持部材14の上面の高さ以外のスイッチ3の構成要素の構成及び機能は、同一符号が付されたスイッチ2の構成要素の構成及び機能と同一なので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0068】
接着層20は、接着層19と同様に、導電性接着材料により形成され、第1電極121に誘電体13を固定すると共に、第1電極121と誘電体13との間を電気的に接続する。接着層20の高さは、間隔保持部材14の上面の高さが基台11の上面に配置される第2電極122の上面の高さと略一致するように調整される。
【0069】
スイッチ3では、基台11の底板112の上面から間隔保持部材14の上面までの高さである第3高さH3は、基台11の底板112の上面から第2電極122の上面までの高さである第2高さH2と等しい。第3高さH3は、第1電極121の高さH121、接着層20の高さH20、誘電体13の高さH13及び間隔保持部材14の高さH14から
H3 = H121 + H20 + H13 + H14
で示される。
【0070】
図14は、スイッチ3の製造方法の流れを示すフロー図である。図15はスイッチ2の製造方法の各工程を説明するための模式的な断面図である。図15(A)は図14に示すステップS13を示し、図15(B)は図14に示すステップS14を示す。S21~S22に示す処理は、図9に示すS11~S12の処理と同様なので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0071】
S22の処理の次に、図15(A)に示すように、間隔保持部材14が吸着プレートP1の表面に配置される(ステップS23)。間隔保持部材14は、吸着プレートP1の表面に形成される突出部P11に載置される。間隔保持部材14は、ダレ142がダレ142に対向し、カエリ143が吸着プレートP1の表面の反対方向に延伸するように配置される。
【0072】
次に、図15(B)に示すように、誘電体13が吸着プレートP1に吸着される(ステップS24)。誘電体13は、突出部P11に載置される間隔保持部材14を覆うように突出部P11の上方に配置され、吸気口P12の内部の気圧を低下させることにより、間隔保持部材14を介して突出部P11に載置された誘電体13を吸着する。
【0073】
次に、誘電体13が第1電極121と電気的に接続するように接着される(ステップS25)。S4の処理と同様に、接着部材Gが配置された集合基板が上下反転されて、誘電体13が凹部111に収容されるように吸着プレートP1に載置された状態で集合基板が加熱されることにより、接着部材Gが硬化されて導電性の接着層20が形成される。S26~S29に示す処理は、図9に示すS16~S19の処理と同様なので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0074】
以上説明したように、スイッチ3は、突出部P11に間隔保持部材14を介して載置された誘電体13を吸着した状態で接着層20を硬化させることにより、間隔保持部材14及び誘電体13が基台11の上面の高さを基準として高い精度で位置決めされる。スイッチ3の製造方法においては、間隔保持部材14のカエリ143の高さのばらつきにかかわらず、基台11の上面の高さを基準として間隔保持部材14が位置決めされるため、間隔保持部材14と導電シート15との間の距離のばらつきが抑えられる。
【実施例1】
【0075】
実施例1-10として、上述のスイッチ1に対応する構成を備えた10個のスイッチが用意された。実施例1-10に係るスイッチが有する誘電体13は0.6mmの厚さを有し、比誘電率が2500であるチタン酸バリウムであり、導電シート15は0.3mmの厚さを有する導電性ゴムであった。実施例1-10に係るスイッチが有する間隔保持部材14は、穴抜き加工により形成された貫通孔141を備え、ダレ142が導電シート15の側に位置するように配置された。また、比較例1-7として、カエリ143が導電シート15の側に位置するように間隔保持部材14が配置されている点を除き、実施例に係るスイッチと同様の構成を備えた7個のスイッチが用意された。
【0076】
押下面173が押圧されていない状態で、実施例1-10および比較例1-7に係るスイッチの第1電極121と導電シート15とによって形成されるコンデンサの静電容量が測定された。また、押下面173が所定の押圧力で押圧された状態で、各スイッチのコンデンサの静電容量が同様に測定された。その後、各スイッチを所定の押圧力で200万回打鍵する打鍵試験が実行された。打鍵試験後に、同様に各スイッチのコンデンサの静電容量が測定された。下記の表1は、実施例に係るスイッチの打鍵試験前の静電容量に対する打鍵試験後の静電容量の比率を示すものである。また、下記の表2は、比較例に係るスイッチの打鍵試験前の静電容量に対する打鍵試験後の静電容量の比率を示すものである。
【0077】
【表1】
【表2】
【0078】
表1および表2に示すように、比較例に係るスイッチにおいては、非押圧時の静電容量比は平均値で4.54であり、静電容量が大きく増加している。これに対し、実施例に係るスイッチにおいては、非押圧時の静電容量比は平均値で0.97であり、静電容量はほぼ変化していない。また、比較例に係るスイッチにおいては、押圧時の静電容量比は平均値で1.06であり、静電容量はわずかに増加している。これに対し、実施例に係るスイッチにおいては、押圧時の静電容量比は1.00であり、静電容量は変化していない。すなわち、実施例に係るスイッチの打鍵試験の前後における静電容量の変化量は小さく、実施例に係るスイッチは、使用に伴う特性の変化を抑えることを可能としている。なお、比較例において、押圧時の静電容量比は非押圧時の静電容量比よりも小さいのは、打鍵試験の前における押圧時の静電容量が非押圧時の静電容量よりも十分大きいためである。
【0079】
比較例に係るスイッチは、カエリ143が導電シート15の側に配置されることにより、押下されるたびにカエリ143が導電シート15に食い込むため、導電シート15の底面が変形し、凹凸が生じる。この場合、底面の突出した部分が誘電体13に接触しやすくなり、誘電体13と導電シート15との接触面積が増大する。したがって、比較例に係るスイッチの静電容量は、打鍵試験後に増加したと考えられる。これに対し、実施例に係るスイッチは、上述した導電シート15の底面の変形が生じにくいため、打鍵試験後にも静電容量はほとんど増加しなかったと考えられる。
【実施例2】
【0080】
実施例として、上述したスイッチ2の製造方法を用いて48個のスイッチが製造された。実施例に係るスイッチの断面解析により、各スイッチの接着層19の厚さおよび凹部111の深さが計測された。
【0081】
図16は、実施例に係るスイッチの接着層19の厚さTと凹部111の深さDとの関係を示すグラフである。図16において、厚さTと深さDとの間の相関係数Rは概ね0.968であり、厚さTと深さDとの間に強い相関があることが示された。すなわち、スイッチ2の接着層19は、誘電体13の上面の高さが凹部111の周囲と同一の高さとなるような所望の厚さを有することが確認された。
【0082】
当業者は、本発明の精神および範囲から外れることなく、様々な変更、置換及び修正をこれに加えることが可能であることを理解されたい。例えば、上述した実施形態及び変形例は、本発明の範囲において、適宜に組み合わせて実施されてもよい。
【要約】
使用に伴う特性の変化を抑えることを可能とする感圧スイッチおよびその製造方法を提供する。スイッチは、凹部が形成された基台と、凹部の底面に配置された第1電極と、凹部の周囲に配置された第2電極と、凹部内に配置され、第1電極と電気的に接続する誘電体と、誘電体の上方に配置され、第2電極と電気的に接続する導電シートと、中央に貫通孔が形成され、貫通孔の周囲で誘電体と導電シートとの間の間隔を保持する絶縁性の間隔保持部材と、を有し、誘電体と導電シートとは、導電シートを誘電体の方向に押圧する押圧力に応じて導電シートと誘電体との接触面積が変化するように配置され、間隔保持部材の一方の面には、貫通孔の外縁に沿ったへこみが形成され、間隔保持部材は、へこみが導電シートの側に位置するように配置される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16