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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】リハビリ支援システム
(51)【国際特許分類】
   A63B 23/16 20060101AFI20240227BHJP
   G16H 20/30 20180101ALI20240227BHJP
   G06F 3/01 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
A63B23/16
G16H20/30
G06F3/01 510
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023113941
(22)【出願日】2023-07-11
【審査請求日】2023-10-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】305060567
【氏名又は名称】国立大学法人富山大学
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(74)【代理人】
【識別番号】100222324
【弁理士】
【氏名又は名称】西野 千明
(72)【発明者】
【氏名】小熊 規泰
(72)【発明者】
【氏名】服部 憲明
(72)【発明者】
【氏名】丸山 博
(72)【発明者】
【氏名】上田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】城戸 良介
(72)【発明者】
【氏名】乙宗 宏範
【審査官】宮本 昭彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-131031(JP,A)
【文献】特表2021-526700(JP,A)
【文献】特開平11-136706(JP,A)
【文献】特開2011-076589(JP,A)
【文献】特開2019-122496(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 1/00 - 26/00
A63B 69/00 - 71/16
A63F 13/00 - 13/98
G09B 1/00 - 9/56
G09B 17/00 - 19/26
G16H 10/00 - 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
MR画像を用いたリハビリ支援システムであって、
MR画像を生成表示させる画像生成装置と、ユーザに物理的な負荷を付与するための対象物と、前記対象物上のマーカーとを備え
前記画像生成装置は、前記対象物に触れるユーザの身体部位と該対象物上のマーカーの位置を測定する測定部と、前記ユーザの身体部位とマーカーの情報からオフセット情報を取得する取得部と、前記オフセット情報を利用して前記MR画像を表示制御する表示制御部と、前記オフセット情報を利用して前記ユーザの身体部位が前記対象物上に表示されたMR画像に触れたことを判定する判定部とを有することを特徴とするリハビリ支援システム。
【請求項2】
前記オフセット情報にマーカーの寸法が含まれることを特徴とする請求項1に記載のリハビリ支援システム。
【請求項3】
前記対象物は机、壁、床から選択される1種以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のリハビリ支援システム。
【請求項4】
前記MR画像が前記対象物の表面上に沿って投影される対象オブジェクトのほかに、補助オブジェクトを含むことを特徴とする請求項1に記載のリハビリ支援システム。
【請求項5】
前記補助オブジェクトがリハビリの指示、リハビリの時間、スコア、リハビリ部位の動作方向を制限する障害オブジェクト、ゴール地点やリハビリ部位の動作エリアとなるエリアオブジェクト、マーカーに沿って投影されるマーカー用オブジェクト、ユーザの身体部位に沿って投影される身体部位用オブジェクトから選択される1種以上であることを特徴とする請求項4に記載のリハビリ支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リハビリ支援システムに係る。
【背景技術】
【0002】
運動機能のリハビリテーション(以下リハビリという)は、特定の施設などで医師や理学療法士、作業療法士等の指導の下、徒手的に実施され、リハビリ対象者に負荷の付与や運動の補助等をするためにリハビリ用機器が用いられてきた。
しかし、リハビリは意欲の維持が難しく、昨今の感染症対策下では、特定の施設に赴くことや機器の頻繁な使用も難しくなっている。
【0003】
特許文献1、2には、仮想画像を用いて、高次脳機能障害のリハビリを行う装置などが提案されている。
仮想画像を用いることで、リハビリを楽しみながら取り組める環境が整備しやすく、在宅等での遠隔地でのリハビリも実現しやすくなる。
しかし、運動機能のリハビリのために、身体に物理的な負荷の付与等をする専用機器を個人などで備えることは容易でなく、医療従事者などが考慮してきた安全性は、仮想画像を用いたリハビリの場合にも重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第7029717号公報
【文献】特許第6768231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、身近な物を用いて身体に物理的な負荷の付与等ができ、安全性を考慮したリハビリ支援システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るリハビリ支援システムは、MR画像を用いたリハビリ支援システムであって、MR画像を生成表示させる画像生成装置と、前記MR画像の少なくとも一部を対象物上に投影制御するためのマーカーとを備える。
対象物とは身近な物をいい、安全性の観点からは移動しにくい、例えば、机、壁、床から選択される1種以上であってもよい。
リハビリ対象者であるユーザは、対象物上に投影したMR画像に触れようと意識して、その身体部位が対象物に触れやすくなり、対象物に接触することで反発力が掛かって、これが物理的な負荷となる。
【0007】
本発明において、前記画像生成装置は、前記対象物に触れようとするユーザの身体部位と該対象物上のマーカーの位置を測定する測定部と、前記ユーザの身体部位とマーカーの情報からオフセット情報を取得する取得部とを有するものであってもよい。
例えば、上方に位置する赤外線カメラで、下方に位置する手を検出する場合、手が机表面に近すぎると、手を机から確実に分離できないことが知られている(例えば、Grushko, S., et al., Analysis of Precision and Stability of Hand Tracking with Leap Motion Sensor, Sensors, 2020, 20(15), 4088.参照)。
赤外線LED等照射による反射光の計測で、対象物上の手などの位置を測定しようとすると、対象物からの不要な反射などで身体部位や対象物の距離測定に誤差が生じてしまい、これは気温や湿度、照明等の環境条件による影響も受ける。
また、角速度センサ、加速度センサ、磁気センサ等を使う場合にも、手などの相対位置は、ユーザの頭部に位置する各センサの絶対位置による影響を受け、誤差が少しずつ蓄積していくために補正が必要で、必ずしも測定精度が高いとはいえない。
しかし、繰返し実施するリハビリにおいて、安全性を考慮した上で対象物から適切な反発力を受けるためには、毎回対象物の位置を正確に認識することが重要である。
そこで本発明は、対象物に触れようとするユーザの身体部位のほかに、対象物上のマーカーの位置を測定し、ユーザの身体部位とマーカーの各位置座標等を利用してオフセット情報を取得することで、より正確かつ簡便に対象物の位置を認識することにした。
マーカーは、例えば、反射率が低い素材であれば赤外線カメラを用いて位置を測定してもよく、複数の可視光線カメラで撮影した画像の視差から距離情報を得てもよい。
【0008】
本発明において、前記画像生成装置は、前記MR画像を表示制御する表示制御部を有し、前記表示制御部はオフセット情報を利用するものであってもよい。
オフセット情報を利用することで、より正確に対象物上にMR画像を投影できる。
また、前記画像生成装置は、前記ユーザの身体部位がMR画像に触れたことを判定する判定部を有し、前記判定部はオフセット情報を利用してもよい。
これにより、MR画像に触れたことを精度よく判定でき、例えば、身体部位の可動距離の定量や、リハビリに対する評価精度も向上する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、リハビリ専用の機器がなくても、身近な物を用いて身体に物理的な負荷の付与等ができ、MR画像を用いて楽しみながら、安全に運動機能のリハビリができ、在宅等での実施もしやすい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係るリハビリ支援システムを示し、(a)は対象物が机、(b)は対象物が壁の例である。
図2】画像生成装置の構成例を示すブロック図である。
図3】画像生成装置の処理例を示すフローチャートである。
図4】リハビリアプリ例1を用いたリハビリイメージ図を示す。
図5】リハビリアプリ例2を用いたリハビリイメージ図を示す。
図6】リハビリアプリ例3を用いたリハビリイメージ図を示す。
図7】リハビリアプリ例4を用いたリハビリイメージ図を示す。
図8】リハビリアプリ例5を用いたリハビリイメージ図を示す。
図9】リハビリアプリ例6を用いたリハビリイメージ図を示す。
図10】リハビリアプリ例7を用いたリハビリイメージ図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
MR(Mixed Reality、複合現実)画像を用いたリハビリ支援システムは、図1に示すようにMR画像を生成表示させる画像生成装置1と、MR画像の少なくとも一部を対象物3上に投影制御するためのマーカー2を備える。
【0012】
本発明に係るリハビリ支援システムは、特に運動機能のリハビリに用いられることが好ましい。
運動機能のリハビリは、例えば、筋力の低下した高齢者や、運動機能障害を有する中枢神経疾患(脳卒中やパーキンソン病等)、運動器疾患(脊髄損傷、関節疾患、腱断裂等)の患者などに有用である。
本明細書において「ユーザ」とは、以下、リハビリ対象者をいう。
ユーザを仮想空間に没入させるVR(Virtual Reality、仮想現実)下では、現実空間からの視覚情報が遮断されてバランスを崩しやすく、ユーザがめまいや気分の悪さなど、いわゆるVR酔いを生じやすいが、現実空間に2次元像又は3次元像を映し出すMR下においては、ユーザの安全性に考慮したリハビリを実施しやすい。
【0013】
本明細書において「身体部位」とは、後述する画像生成装置1の表示部12を介して視認でき、検出部13に認識される部位をいう。
例えば、ユーザの身体部位は、手指、手の平、手の甲、手首等であってもよい。
なお、リハビリ部位は、ユーザの身体部位と同じでも異なっていてもよい。
例えば、ユーザのリハビリ部位は、手指、手の平、手の甲、手首、前腕、肘、上腕、肩等、さらにこれらの組合わせであってもよい。
身体部位は、コントローラの把持や運動の妨げになるようなセンサ等の装着がないことで、手関節の掌屈・背屈、手指の集団屈曲・伸展、各指の屈曲・伸展がしやすく、肩関節や肘関節、前腕等のリハビリの際に、手指を伸展した状態で実施することもできる。
本明細書において、ユーザの身体部位の情報とは、ユーザの身体部位の位置情報のほかに、身体部位のサイズなどの基本情報を含んでいてもよい。
【0014】
対象物3は、家庭にあるような身近な物であり、安全性の観点からは、移動しにくい机や壁、床等が好ましい。
例えば、図1(a)に示すように対象物を机3aとし、ユーザは椅子やベッド、床などに座った状態でリハビリしてもよく、図1(b)に示すように対象物を壁3bとして、椅子等に座った状態あるいは立った状態でリハビリしてもよい。
例えば、ユーザが右指に運動障害を有する場合に、机上に右前腕等を置いた状態で、動かせる左手で右指を補助してもよく、ユーザ自身が対象物3を利用して運動の補助をすることで、医療従事者等の補助者が近くにいなくても、安全にリハビリしやすい。
【0015】
マーカー2は、画像生成装置1を用いて位置を検出できるものである。
例えば、1次元バーコード、2次元バーコード、NFCタグ、RFIDタグ等のほか、対象物3に載置された状態で位置を測定可能であれば、家庭にあるような小物(例えば、ペン、付箋紙等)がマーカーとして機能してもよい。
図1(a)は、対象物3に薄い紙状やシート状、シール状のマーカー(例えば、2次元バーコード)2aを載置した例であるが、スマートフォンなどの電子機器(画面)上に表示されるバーコード等をマーカーとしてもよい。
本明細書において、マーカーの情報とは、マーカーの位置情報のほかに、マーカーの種類やサイズ等の基本情報を含むことが好ましい。
後述するが、マーカーの位置情報と基本情報を利用することで、より対象物3の表面距離を正確に求められる。
また、図1(a)に示すように、クッション性や反発力等を調整したリハビリマット2bがマーカー機能を有してもよく、例えば、リハビリマット2b上にバーコードが貼付等されていてもよい。
ここで、リハビリマット2bとは、「対象物3上に載せて、さらにその上でリハビリを実施するのに使用される物」をいい、安全性の観点からは、対象物3上から移動しにくい(例えば、裏面に滑り止めやシール等を備える)ことが好ましい。
なお、リハビリマット上でリハビリする場合には、「対象物上」とは「リハビリマット上」を指す。
別の例としては、ユーザの身体部位に転写材(例えば、転写シール、転写シート、インク等)を付着させ、対象物3上に転写材が触れることで、身体部位から対象物3に転写されるマーカー2であってもよい。
【0016】
画像生成装置1は、ユーザの頭部に装着可能なヘッドマウントディスプレイ(MRデバイス)であり、例えば、HoloLens(登録商標)等であってもよい。
図2に示すように制御部11、表示部12、検出部13、記憶部14、通信部15、音声入出力部16を備え、本実施例は制御部11に実装される機能として、測定部17、取得部18、表示制御部19、判定部20、提案部21を備える例である。
【0017】
制御部11は、CPUやGPU等のプロセッサを含み、画像生成装置1全体の動作を制御する。
【0018】
表示部12は、透視可能な光透過性のディスプレイであり、例えば、HoloLens(登録商標)における眼鏡型のディスプレイ等が挙げられる。
【0019】
検出部13は、可視光線カメラ、近赤外線カメラ、深度センサ(例えば、ToF方式)、角度センサ、加速度センサ、地磁気センサ、温度センサ等を含み、MRデバイスを装着したユーザの頭部の位置や動き、身体部位の位置や動き、マーカーの位置を検出する。
なお、計測したい空間を複数回移動する必要があり、時間の掛かる空間マッピング機能は、リハビリを実施するユーザの安全性や利便性等の観点からは使用しないことが好ましく、本実施例においては使用しない。
赤外線カメラ等によるハンドトラッキング機能のほかに、ユーザの瞳孔や虹彩の位置を検出するアイトラッキング機能を備えてもよく、例えば、ハンドトラッキングやアイトラッキングにより、画像生成装置1の操作、マーカーやユーザの身体部位の基本情報などが入力されてもよい。
【0020】
記憶部14は、プログラムやリハビリアプリ、マーカーの基本情報などを記憶するもので、例えば、後述する通信部15を介して記憶部14に新しいリハビリアプリが追加されてもよい。
また、リハビリ支援システムによるサービスをユーザが利用した利用履歴情報や、ユーザに合わせた設定情報等が記憶されてもよい。
【0021】
通信部15は、ネットワークに接続可能なもので、ネットワークを介して外部機器(例えば、サーバや端末装置(コンピュータ、スマートフォン等))との間でデータの送受信が可能である。
なお、マーカーやユーザの身体部位の基本情報等は外部機器を用いて入力されてもよく、ユーザ以外に補助者等が実施してもよい。
また、入力情報としては、ユーザの身長(腕の長さ、足の長さ等)や性別、年齢等のユーザ情報も挙げられる。
【0022】
音声入出力部16は、マイクやスピーカを含み、音声にて入力操作を行ってもよい。
リハビリアプリの開始音やユーザの動作に対するリアクションの音など、様々な音が出力されることが好ましい。
【0023】
測定部17は、検出部13を利用して、対象物3に触れようとするユーザの身体部位の位置と、マーカー2の位置を測定する。
例えば、赤外線LED照射等による反射を利用する場合、身体部位の位置情報に誤差が生じやすいのは、検出部13を備える画像生成装置1と対象物3との対面方向であり、これを「誤差方向」という。
図1(a)では、誤差方向はZ軸(画像生成装置1と机3aの上下)方向、図1(b)では、X軸(画像生成装置1と壁3bの前後)方向である。
そこで、対象物3に触れようとするユーザの身体部位の3次元座標と、少なくとも対象物3上のマーカー2の誤差方向座標を測定することが好ましい。
図1(a)ではマーカー2の誤差方向座標(Z)、図1(b)では、誤差方向座標(X)である。
以下、tを時間として、ユーザの身体部位(例えば、指先や関節(DIP関節、PIP関節、MP関節、IP関節)、中手骨、手首等)の3次元座標を(Xt,Yt,Zt)、マーカー2の3次元座標を(X,Y,Z)と表記する。
また、便宜上、図1(a)の対象物が机3a、マーカー2の誤差方向座標(Z)を例に説明するが、これに限定されるわけではない。
【0024】
取得部18は、ユーザの身体部位とマーカー2の情報から対象物3上にMR画像を投影するためのオフセット情報を取得する。
ユーザの身体部位とマーカー2の各位置座標(各位置情報)を利用して、例えば、測定部17で得られる対象物3に触れる人差し指のMP関節のZ座標(Zt)と、マーカー2の誤差方向座標(Z)が、Zt<Zであれば「Zt=0」、Zt>Zであれば「Zt-Z=ΔZ」がオフセットとなる。
なお、誤差方向がX軸方向であればXt-X=ΔXと、Y軸方向であればYt-Y=ΔYと表記できる。
また、オフセット情報にマーカーの基本情報が含まれてもよい。
マーカー2(例えば、リハビリマット)上でリハビリを実施しない場合には、対象物3の表面距離をより正確に求めるために、マーカーの基本情報のうち、マーカーの誤差方向の寸法(図1(a)におけるZ軸方向の寸法(以下Z幅という))をオフセットに含めることができる。
この場合、Zt<Zであれば「マーカーのZ幅」、Zt>Zであれば「ΔZ+マーカーのZ幅」がオフセットとなってもよい。
【0025】
表示制御部19は、オフセット情報に基づいて表示部12にMR画像を表示制御する。
例えば、Zt<ZであればZt=0とし、Zt>ZであればΔZを差分することで、MR画像のZ座標(誤差方向座標)が決まる。
また、Zt>ZであればΔZを差分し、さらにマーカー2のZ幅を差分すれば、より対象物3の表面上に沿った表示制御が可能となる。
なお、「MR画像」とは、ほぼ対象物3の表面上に沿って投影される対象オブジェクトTのほかに、補助オブジェクトを含んでもよい。
補助オブジェクトとしては、例えば、リハビリの指示や時間、スコア等の指示オブジェクト、リハビリ部位の動作方向を制限する障害オブジェクトD、ゴール地点やリハビリ部位の動作エリアとなるエリアオブジェクトE、マーカー2に沿って投影されるマーカー用オブジェクト、ユーザの身体部位に沿って投影される身体部位用オブジェクトB等が挙げられる。
例えば、マーカー2の3次元座標(X,Y,Z)測定後に、マーカー2に重ねるようにマーカー用オブジェクトを投影してもよい。
また、ユーザの身体部位(例えば、指先、関節、中手骨、手首等)に重ねるように身体部位用オブジェクトBを表示してもよく、その表示サイズがオフセット情報に基づいて調整されてもよい。
なお、対象オブジェクトTは、ユーザがリハビリ部位を動かす目標となることが好ましく、表示制御部19は、検出部13で取得したトラッキング情報を用いて、ユーザの頭部の向きに応じたMR画像を表示制御できる。
【0026】
判定部20は、オフセット情報に基づいてユーザの身体部位がMR画像(特に、対象オブジェクトT)に触れたことを判定する。
対象オブジェクトTは、ほぼマーカー2の表面上に沿って投影される場合、そのZ幅は(Ztop-Z)と表現でき、ほぼ対象物3の表面上に沿って投影される場合には、{Ztop-(Z+マーカーのZ幅)}と表現できる。
例えば、対象オブジェクトTのZ幅が(Ztop-Z)で、対象オブジェクトTに向かって動かした人指し指のMP関節のZ座標(Zt)が、Zt<Zであれば「Zt=0」として、Zt>Zであれば「Zt-Z=ΔZ<Ztop」で、対象オブジェクトTのZ軸寸法内に人指し指のMP関節が位置していることになる。
上記Z座標の情報に、X、Y座標の情報も合わせることで、対象オブジェクトTに身体部位が触れたことを判定できる。
オフセット情報を利用することで、より正確に身体部位の可動距離を求めることができ、例えば、通信部15を介して医療関係者等に情報を共有することで、リハビリの評価が定量的にしやすくなる。
例えば、身体部位のZ座標(Zt)-ΔZがZ値におおよそ等しくなれば、対象物3に身体部位が接触したと判定することもできる。
【0027】
提案部21がユーザに対して、次のリハビリアプリを選択して提案してもよい。
リハビリ実行中に、例えば、指の付け根であるMP関節のZ座標(MPZt)がZ値に近くなれば「指が伸びている」、Z値から離れた状態が継続するようであれば、「指を伸ばすことが難しい可能性が高い」のように判断できる。
提案部21はユーザのリハビリが急激に難しくならないように、例えば、Z座標(MPZt)がZ値に近くなるユーザには「指を伸ばすタイプのリハビリアプリ」を、Z値から離れた状態が継続するユーザには、「指を伸ばさなくてもできるタイプのリハビリアプリ」を提案してもよい。
【0028】
提案部21よるリハビリアプリの選択のほかに、ユーザや補助者等が次のリハビリアプリを選択してもよい。
リハビリアプリの種類に特に制限はないが、例えば、「リハビリ動作」と「対象オブジェクトTの動き」で分類される複数のリハビリアプリから選択してもよい。
「リハビリ動作」は身体部位を、例えば、「対象物3(対象オブジェクトT)に軽く触れさせる」、「摘まむあるいは弾くように対象物3上をスライドさせる」、「対象物3を叩くように誤差方向に移動させる」、「手首等を対象物3に触れさせながら回転させる」等が挙げられる。
「対象オブジェクトの動き」としては、例えば、「対象オブジェクトTが所定位置に停止している」、「対象オブジェクトTがユーザの身体部位に向かって移動する」、「対象オブジェクトTがユーザの身体部位から離れるように移動する」、「対象オブジェクトTがユーザの身体部位の動きによって出現する」、「対象オブジェクトTがユーザの身体部位の動きによって移動させられる」等が挙げられる。
【0029】
図3に、画像生成装置1の処理例をフローチャートで示す。
ステップS1で、ユーザの頭部位置(絶対位置)測定後にマーカー2の位置を測定する。
次に、ステップS2で、対象物3に触れようとするユーザの身体部位の位置を測定する。
この際、例えば、リハビリ部位が指や手の平、手の甲、手首等の場合には、対象物3に手首等を触れた状態で指の開閉等を、リハビリ部位が前腕、肘、上腕等の場合には、対象物3に手の平等が触れるように前後左右上下に動かして相対位置情報を蓄積してもよい。
対象物3上にMR画像を投影するためのオフセット情報が取得される。
なお、マーカーやユーザの身体部位の基本情報の入力は、オフセット情報の取得前であれば、その実施のタイミングに制限はない。
また、身体部位の位置測定前に、ユーザや補助者等にリハビリ部位等を選択する画面が表示されてもよく、選択に合せて指示オブジェクトやリハビリ難易度(対象オブジェクトTのサイズ、移動速度、移動方向、リハビリ時間等)のほか、リハビリアプリの選択が絞り込まれてもよい。
リハビリアプリ上のリハビリ開始指示を実行することで、リハビリが開始される。
ステップS3のリハビリ実行中、オフセット情報に基づいてMR画像が表示され、特に対象オブジェクトTに触れたことを判定しながら、繰返し対象オブジェクトTの表示と判定が行われる。
この際、採点(スコア)表示がされていてもよい。
リハビリ終了後に、次回のリハビリとして、お勧めのリハビリアプリが提案されてもよく、この際、リハビリアプリの提案だけでなく、リハビリアプリ内で異なったリハビリ指示(例えば、「次は人指し先ではなく、小指で触れてください」等)が提案されてもよい。
【0030】
以下、具体的なリハビリアプリの例を挙げて説明する。
リハビリアプリ例1~6(図4図9)は対象物を机3aとして、リハビリアプリ例7(図10)は、対象物が壁3bの例として説明するが、これに限定されるわけではない。
【0031】
図4に、リハビリアプリ例1を用いたリハビリイメージ図を示す。
例えば、リハビリ動作としては「対象物に軽く触れさせる」、対象オブジェクトの動きとしては「対象オブジェクトが所定位置に停止している」に分類されてもよい。
対象オブジェクトT1は、現実空間における机3aに沿って投影される。
本実施例は、対象オブジェクトT1が、ボールやしゃぼん玉をイメージした画像(以下、バブルT1という)であるが、これに限定されるわけではない。
図4(a)~(c)は、画像生成装置1を装着したユーザから見えている視界を示しており、机3aに右前腕等を載せた状態で、動かせる左手で運動障害を有する右手を補助する例を示す。
例えば、右前腕等を机3aに沿わせて移動させることで、左手で補助しやすく、図4(b)に示すようにバブルT1に向かって左右方向に右手を動かし、指先等がバブルT1に触れたと判定部20が判定することで、図4(c)に示すようにバブルT1が消える。
繰返しバブルT1が表示され、時間内においてユーザはリハビリを行う。
なお、バブルT1は机3a上に投影される位置やサイズに特に制限はなく、リハビリ難易度等に対応して表示されてよい。
【0032】
図5に、リハビリアプリ例2を用いたリハビリイメージ図を示す。
例えば、リハビリ動作としては「対象物に軽く触れさせる」、対象オブジェクトの動きとしては「対象オブジェクトがユーザの身体部位に向かって移動する」に分類される。
対象オブジェクトT2はボールの例であり、図5(a)~(c)に示すように机3aに沿ってユーザ側にボールT2が移動する。
ボールT2が、例えば、机3aに沿って前方向からユーザに向かって移動してくることで、ユーザの身体部位はボールT2を受け止めるように移動が促される。
例えば、右手首に運動障害を有する場合に、右手首を机3a上に載せたまま、左手で補助して右手首を回転させるようにボールT2に手の甲等を触れさせてもよい。
【0033】
図6に、リハビリアプリ例3を用いたリハビリイメージ図を示す。
例えば、リハビリ動作としては「対象物を叩くように誤差方向に移動させる」、対象オブジェクトの動きとしては「対象オブジェクトが所定位置に静止している」に分類される。
本実施例は、対象オブジェクトT3がピアノの例である。
図6(a)に示すように、机3aに沿ってピアノT3が表示された後、いずれかの鍵盤の色が変化してもよい。
図6(b)に示すように、例えば、右手の中指がリハビリ部位である場合、中指に重ねるように身体部位用オブジェクトB(例えば、指先Btip、PIP関節BPIP、MP関節BMP)が表示されてもよい。
図6(c)に示すように、対象物3を叩くように誤差方向(この場合は、上下(Z軸)方向)に、リハビリ部位である中指の移動が促される。
例えば、対象オブジェクトであるピアノの鍵盤に触れたと判定部20が判定した際に、音声入出力部16から鍵盤の音が出力されてもよく、対象物3からの反発力のほかに聴覚も刺激されることで、MR画像であるピアノが現実空間にあるような感覚をユーザに与えやすい。
【0034】
図7に、リハビリアプリ例4を用いたリハビリイメージ図を示す。
例えば、リハビリ動作としては「摘まむように対象物上をスライドさせる」、対象オブジェクトの動きとしては「対象オブジェクトがユーザの身体部位の動きによって移動させられる」に分類される。
本実施例は、エリアオブジェクトE及び対象オブジェクトであるボックスT4が、現実空間における机3aに沿って投影されている。
机3aに触れながら、エリアオブジェクトE内をスライドさせるように身体部位(対象オブェクトT4)を移動させるリハビリアプリであってもよいが、さらに上下方向にリハビリ部位(例えば、前腕等)を動かすために、厚み(Z幅)が変動する障害オブジェクトDを投影して前後左右上下の移動を促すアプリであってもよい。
【0035】
図8に、リハビリアプリ例5を用いたリハビリイメージ図を示す。
例えば、リハビリ動作としては「弾くように対象物上をスライドさせる」、対象オブジェクトの動きとしては「対象オブジェクトがユーザの身体部位の動きによって出現する」に分類されてもよい。
本実施例は、図8(a)に示すように、ユーザの左手の親指と人指し指を机3aに触れさせながら互いの指先同士を広げることで、図8(b)に示すように、おおよそ指の間で机3aに沿って対象オブジェクトT5が出現する例である。
図8(c)に示すように、右手で対象オブジェクトT5を追うように触れることで、左手の移動でリハビリの難易度を自己調整できる。
【0036】
図9に、リハビリアプリ例6を用いたリハビリイメージ図を示す。
例えば、リハビリ動作としては、「手首等を対象物に触れさせながら回転させる」、対象オブジェクトの動きとしては「対象オブジェクトがユーザの身体部位の動きによって移動させられる」に分類されてもよい。
本実施例は、エリアオブジェクトEが机3aに沿って投影されるが、筒状のような厚みがあるような画像であり、図9(a)に示すようにユーザが触れている対象オブジェクトT6をエリアオブジェクトE内に収めるように移動する例である。
図9の例では、ユーザは手首等を対象物3に触れさせながら回転することになり、手首等のリハビリに有用である。
なお、図9(c)に示すようにエリアオブジェクトEが消えた後に、リハビリアプリ例5のように、エリアオブジェクトEや対象オブジェクトT6をユーザの身体部位の動きにより出現させてもよい。
【0037】
図10に、リハビリアプリ例7を用いたリハビリイメージ図を示す。
リハビリ動作としては「対象物に軽く触れさせる」、対象オブジェクトの動きとしては「対象オブジェクトがユーザの身体部位に向かって移動する」に分類される。
対象オブジェクトT7はコップの例であり、図10(a)~(c)に示すように現実空間における壁3bに沿ってコップT7がユーザ側に移動する。
例えば、コップ7が前後(X軸)方向には移動しないことで、ユーザは手の平等を壁3bに沿わせたまま前腕や上腕、肩等を上下左右に動かすことができる。
【要約】
【課題】身近な物を用いて身体に物理的な負荷の付与等ができ、安全性を考慮したリハビリ支援システムの提供を目的とする。
【解決手段】MR画像を用いたリハビリ支援システムであって、MR画像を生成表示させる画像生成装置と、前記MR画像の少なくとも一部を対象物上に投影制御するためのマーカーとを備える。
【選択図】 図1
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図2
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図10