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特許7442786推論システム、推論方法、推論プログラム、及びデータ構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】推論システム、推論方法、推論プログラム、及びデータ構造
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/16 20240101AFI20240227BHJP
【FI】
G06Q50/16
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019223246
(22)【出願日】2019-12-10
(65)【公開番号】P2021092975
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】519337787
【氏名又は名称】株式会社VAMOS
(74)【代理人】
【識別番号】110001106
【氏名又は名称】弁理士法人キュリーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100120053
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 哲明
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 永進
【審査官】関 博文
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-128728(JP,A)
【文献】特許第6074102(JP,B1)
【文献】特開2006-228172(JP,A)
【文献】特開2003-022314(JP,A)
【文献】福井 光,レインズのニューラルネットワークを用いた不動産価格査定について,一般社団法人 人工知能学会 第32回全国大会論文集DVD [DVD-ROM] 2018年度 人工知能学会全国大会(第32回),一般社団法人 人工知能学会,2018年06月08日,pp.1-4
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサと記憶装置を含み、前記プロセッサが区分所有建物の評価を推論する推論システムであって、
前記プロセッサは、
学習用の区分所有建物の収支決算報告書、貸借対照表、区分所有者の滞納状況もしくは属性、区分の属性、設備の管理状況、修繕工事の実施状況、及び長期修繕計画書の少なくとも1つに関する学習用の管理データと前記学習用の区分所有建物の評価データとが関連付けられた学習用データに基づいて、機械学習により学習済みモデルを生成する機械学習部と、
前記学習済みモデルに入力された推論用の区分所有建物の管理データから、前記推論用の区分所有建物の評価データを推論する推論部と、
を備え
前記機械学習部は、前記学習用の区分所有建物の収支決算報告書、貸借対照表、区分所有者の滞納状況、総会の運営状況、及び損害保険の加入状況の少なくとも1つに基づく第1の日付データと、前記学習用の区分所有建物の設備の管理状況、修繕工事の実施状況、長期修繕計画書、耐震評価、及び耐震補強工事の実施状況の少なくとも1つに基づく第2の日付データとを、関連付けることにより拡張された前記学習用の管理データに基づいて、前記機械学習により前記学習済みモデルを生成することを特徴とする推論システム。
【請求項2】
前記機械学習部は、前記学習用の管理データとして、前記学習用の区分所有建物の前記収支決算報告書の収支、前記収支決算報告書の勘定科目、前記収支決算報告書の勘定科目の額、前記収支決算報告書の簿記形式、前記収支決算報告書の管理費会計もしくは修繕積立金会計の有無、前記貸借対照表の勘定科目、前記貸借対照表の勘定科目の額、前記貸借対照表の勘定科目の合計額、前記区分所有者の修繕積立金の滞納額もしくは滞納期間、前記修繕積立金を滞納している前記区分所有者の数もしくは比率、前記区分所有者の管理費の滞納額もしくは滞納期間、前記管理費を滞納している前記区分所有者の数もしくは比率、同一の前記区分所有者の数もしくは比率、前記区分所有者の年齢、性別、職業、国籍、家族構成、収入、もしくは資産、前記区分の分譲賃貸の別、前記分譲賃貸の区分数、もしくは前記分譲賃貸の区分比率、前記区分の店舗の別、前記店舗の区分数、もしくは前記店舗の区分比率、前記設備の更新項目、更新時期、更新額、更新額の支払時期、更新のための借入額、前記設備の購入もしくはリースの別、前記修繕工事の修繕項目、修繕時期、修繕額、修繕額の支払時期、修繕のための借入額、もしくは修繕のための借入額の返済時期、及び前記長期修繕計画書の修繕項目、修繕時期、もしくは修繕額の少なくとも1つを用いて、前記学習用の区分所有建物の前記管理データと前記学習用の区分所有建物の評価データとが関連付けられた前記学習用データに基づいて、前記機械学習により前記学習済みモデルを生成することを特徴とする請求項1に記載の推論システム。
【請求項3】
プロセッサと記憶装置を含み、前記プロセッサが区分所有建物の評価を推論する推論システムであって、
前記プロセッサは、
学習用の区分所有建物の管理組合規約の有無、管理組合規約の更新の回数もしくは頻度、理事会の有無、理事会の開催の回数もしくは頻度、総会の議事録の有無、総会の開催の回数もしくは頻度、面積もしくは区分当たりの修繕積立金の額、耐震評価、耐震補強工事の実施状況、損害保険の加入状況、訴訟状況、及び管理会社への委託状況の少なくとも1つに関する学習用の管理データと前記学習用の区分所有建物の評価データとが関連付けられた学習用データに基づいて、機械学習により学習済みモデルを生成する機械学習部と、
前記学習済みモデルに入力された推論用の区分所有建物の管理データから、前記推論用の区分所有建物の評価データを推論する推論部と、
を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の推論システム。
【請求項4】
前記機械学習部は、前記学習用の区分所有建物の評価データとして、前記学習用の区分所有建物の実勢価格、販売価格、査定価格、競売の最低売却価額、競売の売却基準価額、競売の買受可能価額、競売の落札価格、及び評価スケールの少なくとも1つを用いて、前記学習用の区分所有建物の前記管理データと前記学習用の区分所有建物の評価データとが関連付けられた前記学習用データに基づいて、前記機械学習により前記学習済みモデルを
生成することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の推論システム。
【請求項5】
前記機械学習部は、前記学習用の区分所有建物の評価データとして、前記学習用の区分所有建物の収支決算報告書、貸借対照表、区分所有者の滞納状況、設備の管理状況、修繕工事の実施状況、及び長期修繕計画書の少なくとも1つに関する定量データを用いて、前記定量データを除く前記管理データと前記学習用の区分所有建物の評価データとが関連付けられた前記学習用データに基づいて、前記機械学習により前記学習済みモデルを生成することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の推論システム。
【請求項6】
前記推論部は、前記学習用の管理データに相当する前記推論用の管理データを前記学習済みモデルに入力し、前記学習用の区分所有建物の評価データに相当する前記推論用の区分所有建物の評価データを推論することを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の推論システム。
【請求項7】
プロセッサが区分所有建物の評価を推論する推論方法であって、
学習用の区分所有建物の収支決算報告書、貸借対照表、区分所有者の滞納状況もしくは属性、区分の属性、設備の管理状況、修繕工事の実施状況、及び長期修繕計画書の少なくとも1つに関する学習用の管理データと前記学習用の区分所有建物の評価データとが関連付けられた学習用データに基づいて、機械学習により学習済みモデルを生成するステップと、
前記学習済みモデルに入力された推論用の区分所有建物の管理データから、前記推論用の区分所有建物の評価データを推論するステップと、
を備え
前記学習済みモデルを生成するステップは、前記学習用の区分所有建物の収支決算報告書、貸借対照表、区分所有者の滞納状況、総会の運営状況、及び損害保険の加入状況の少なくとも1つに基づく第1の日付データと、前記学習用の区分所有建物の設備の管理状況、修繕工事の実施状況、長期修繕計画書、耐震評価、及び耐震補強工事の実施状況の少なくとも1つに基づく第2の日付データとを、関連付けることにより拡張された前記学習用の管理データに基づいて、前記機械学習により前記学習済みモデルを生成することを特徴とする推論方法。
【請求項8】
プロセッサが区分所有建物の評価を推論するコンピュータで実行される推論プログラムであって、
前記コンピュータは、
学習用の区分所有建物の収支決算報告書、貸借対照表、区分所有者の滞納状況もしくは属性、区分の属性、設備の管理状況、修繕工事の実施状況、及び長期修繕計画書の少なくとも1つに関する学習用の管理データと前記学習用の区分所有建物の評価データとが関連付けられた学習用データに基づいて、機械学習により学習済みモデルを生成する機械学習機能と、
前記学習済みモデルに入力された推論用の区分所有建物の管理データから、前記推論用の区分所有建物の評価データを推論する推論機能とを備え
前記機械学習機能は、前記学習用の区分所有建物の収支決算報告書、貸借対照表、区分所有者の滞納状況、総会の運営状況、及び損害保険の加入状況の少なくとも1つに基づく第1の日付データと、前記学習用の区分所有建物の設備の管理状況、修繕工事の実施状況、長期修繕計画書、耐震評価、及び耐震補強工事の実施状況の少なくとも1つに基づく第2の日付データとを、関連付けることにより拡張された前記学習用の管理データに基づいて、前記機械学習により前記学習済みモデルを生成する学習済みモデル生成機能を実現させることを特徴とする推論プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推論システム、推論方法、及び推論プログラムに関し、特に、区分所有建物の管理データから区分所有建物の評価を推論する推論システム、推論方法、推論プログラム、及びデータ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、分譲集合住宅(分譲マンション)などの区分所有建物は、最寄駅までの距離や周辺環境により評価されていた(特許文献1及び非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-345884号公報
【文献】横手唱幸、“中古マンション価格とマンション維持管理に関する考察”、[online]、2012年2月、政策研究大学院大学まちづくりプログラム、[令和元年12月1日検索]、インターネット<URL:http://www3.grips.ac.jp/~up/pdf/paper2011/MJU11026yokote.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、最寄駅までの距離や周辺環境による評価だけでは不十分であり、区分所有建物の管理状況による評価が加味されるべきである。例えば、区分所有建物の管理費や修繕積立金が滞納されると、区分所有建物の適切な管理や修繕の資金が不足することになり、実施することができなくなるため、区分所有建物の管理状況の悪化や資産価値へ影響を与える。
【0005】
ところが、区分所有建物の管理状況を把握するためには、収益決算報告書等の内部資料が必要となることから、これまでは、区分所有建物の資産価値から管理状況を推定したり、管理状況を把握するための指標を示唆したり、管理状況を把握するための指標自体を評価としたりしているだけであり、区分所有建物の管理状況と評価とが具体的に関連付けられて、機械学習により学習されることは行われていなかった(非特許文献1参照)。
【0006】
発明者は、内部資料にアクセス可能であり、内部資料から区分所有建物の管理状況を把握した上で区分所有建物の評価を行ってきた経験や研究から、区分所有建物の管理に関するどの項目が区分所有建物の評価に具体的に関連しているかを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の推論システムは、プロセッサと記憶装置を含み、前記プロセッサが区分所有建物の評価を推論する推論システムであって、前記プロセッサは、学習用の区分所有建物の収支決算報告書、貸借対照表、区分所有者の滞納状況もしくは属性、区分の属性、設備の管理状況、修繕工事の実施状況、及び長期修繕計画書の少なくとも1つに関する学習用の管理データと前記学習用の区分所有建物の評価データとが関連付けられた学習用データに基づいて、機械学習により学習済みモデルを生成する機械学習部と、前記学習済みモデルに入力された推論用の区分所有建物の管理データから、前記推論用の区分所有建物の評価データを推論する推論部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、区分所有建物の管理データから区分所有建物の評価を推論することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態の推論システムのシステム構成の例を示すブロック図である。
図2】本実施形態の人工知能サーバのシステム構成の例を示すブロック図である。
図3】本実施形態の学習用データベースサーバのシステム構成の例を示すブロック図である。
図4】本実施形態のコンピュータのシステム構成の例を示すブロック図である。
図5】学習用の区分所有建物の管理データと学習用の区分所有建物の評価データとが関連付けられた機械学習用データの例を示す図である。
図6】学習用の区分所有建物の管理データと学習用の区分所有建物の評価データとが関連付けられた機械学習用データの例を示す図である。
図7】区分所有建物の管理データと評価データとの相関を示す図である。
図8】学習用の区分所有建物の管理データと学習用の区分所有建物の評価データとが拡張されて関連付けられた機械学習用データの例を示す図である。
図9】本実施形態の推論方法の例を示すフローチャートである。
図10】各種データの取得及び前処理、並びに学習済みモデルの生成及び格納の動作の例を示すシーケンス図である。
図11】学習済みモデルによる推論及び推論結果の決定の動作の例を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態の推論システムについて、図面を用いて説明する。図1は、本実施形態の推論システムのシステム構成の例を示すブロック図である。推論システム1は、処区分所有建物の評価を推論する。
【0011】
図1に示すように、推論システム1は、ネットワーク2を介して電気的に接続され、相互に通信可能な人工知能サーバ3、学習用データベースサーバ4、及びコンピュータ(PC)5を備える。
【0012】
図2は、本実施形態の人工知能サーバのシステム構成の例を示すブロック図である。図2に示すように、人工知能サーバ3は、プロセッサ21、記憶装置(例えば、ROMやRAMやHDD等)22、入力装置23、インターフェース24、及び出力装置25を備える。
【0013】
プロセッサ21は、CPUやMPUやGPU等の制御装置であり、データ取得部26、機械学習部27、学習済みモデル格納部28、及び推論部29を備える。データ取得部26、機械学習部27、学習済みモデル格納部28、及び推論部29はバス(図示せず)により電気的に接続され、相互に通信可能である。
【0014】
図3は、本実施形態の学習用データベースサーバのシステム構成の例を示すブロック図である。図3に示すように、学習用データベースサーバ4は、プロセッサ30、学習用データベース40、記憶装置(例えば、ROMやRAMやHDD等)31、入力装置32、インターフェース33、及び出力装置34を備える。プロセッサ30は、CPUやMPUやGPU等の制御装置であり、データ格納部35、データ取得部36、及び前処理部37を備える。
【0015】
学習用データベース40は、区分所有建物の管理データ41及び評価データ42を備える。管理データ41及び評価データ42は、区分所有建物のID、名称、住所、もしくは管理会社等に関連付けられることにより、相互に関連付けられている。ここで、区分所有建物とは、独立して住居、店舗、事務所、もしくは倉庫等の用途に供することができる複数の区分から構成されている建物をいう。
【0016】
管理データ41は、収支決算報告書データ43、貸借対照表データ44、区分所有者データ45(滞納データ46及び属性データ47)、区分属性データ(賃貸もしくは店舗の別、数、及び比率)48、設備管理データ49、修繕工事データ50、及び長期修繕計画書データ51を含み、これらのデータは区分所有建物のID、名称、住所、及び管理会社等に関連付けられている。また、管理データ41は、管理組合規約データ52、理事会・総会データ53、修繕積立金データ54、耐震データ55、損害保険データ56、訴訟データ57、及び管理会社データ58を含み、これらのデータは区分所有建物のID、名称、住所、及び管理会社等に関連付けられている。
【0017】
学習用の区分所有建物の評価データ42として、学習用の区分所有建物の実勢価格、販売価格、査定価格、競売の最低売却価額、競売の売却基準価額、競売の買受可能価額、競売の落札価格、及び評価スケールが、区分所有建物のID、名称、住所、及び管理会社等に関連付けられて格納されている。
【0018】
ここで、区分所有建物の実勢価格は、区分所有建物の実際の取引金額である。区分所有建物の販売価格は、区分所有建物の売主が提示している価格である。区分所有建物の査定価格は、第三者の調査もしくは鑑定により提示された価格である。区分所有建物の競売の最低売却価額は、裁判所により定められた区分所有建物の最低限の入札価格である。区分所有建物の競売の売却基準価額は、裁判所により定められた区分所有建物の基準の入札価格である。区分所有建物の競売の買受可能価額は、売却基準価額の所定の割合を乗じた価格である。区分所有建物の競売の落札価格は、区分所有建物の競売により実際に落札された価格である。区分所有建物の評価スケールは、区分所有建物を複数の段階(例えば、5段階や1乃至10の数値等)で評価した値である。
【0019】
学習用の区分所有建物の管理データと評価データとが関連付けられた学習用データが、学習用データベース40に格納される。学習用データは、人工知能サーバ3の機械学習部27の機械学習に用いられるデータである。
【0020】
図4は、本実施形態のコンピュータのシステム構成の例を示すブロック図である。図4に示すように、コンピュータ5は、プロセッサ501、記憶装置(例えば、ROMやRAMやHDD等)522、入力装置523、インターフェース524、及び出力装置525を備える。プロセッサ501は、CPUやMPUやGPU等の制御装置であり、データ取得部502、選択部505、及び決定/修正部506を備える。
【0021】
データ取得部502は、学習用の区分所有建物の管理データ41と評価データ42とが関連付けられた学習用データを、学習用データベース40から取得し、学習用データを出力装置525のディスプレイに表示する。そして、コンピュータ5は操作者により操作され、操作者はディスプレイに表示された学習用データを見ながら、選択部505により学習用データを入力する箇所を選択し、入力装置523により学習用データを入力又は修正する。そして、決定/修正部506により入力又は修正された学習用データが決定され、インターフェース524を介して、決定された学習用データが学習用データベースサーバ4へ送信される。決定された学習用データは、インターフェース33を介して、学習用データベース40に格納される。
【0022】
また、操作者はディスプレイを見ながら、選択部505により推論用の管理データを入力する箇所を選択し、入力装置523により推論用の区分所有建物の管理データを入力又は修正する。ここで、推論用の管理データは、学習用の管理データに相当するデータである。
【0023】
そして、決定/修正部506により入力された推論用の管理データが決定され、インターフェース524を介して、決定された推論用の管理データが人工知能サーバ3へ送信される。決定された推論用の管理データは、インターフェース24を介して、記憶装置22に格納される。
【0024】
図5及び図6は、学習用の区分所有建物の管理データと学習用の区分所有建物の評価データとが関連付けられた機械学習用データの例を示す図である。
【0025】
図5及び図6に示すように、学習用の区分所有建物を示すID60、名称61、住所62、及び管理会社63により、学習用の評価データ64と管理データ65とが関連付けられている。
【0026】
評価データ64は、学習用の区分所有建物の実勢価格、販売価格、査定価格、競売の最低売却価額、競売の売却基準価額、競売の買受可能価額、競売の落札価格、及び評価スケールの少なくとも1つを含む。図5では、評価データ64は、学習用の区分所有建物の実勢価格66及び販売価格67を含む。
【0027】
管理データ65は、学習用の区分所有建物の収支決算報告書の収支、収支決算報告書の勘定科目、収支決算報告書の勘定科目の額、収支決算報告書の簿記形式、収支決算報告書の管理費会計もしくは修繕積立金会計の有無、貸借対照表の勘定科目、貸借対照表の勘定科目の額、貸借対照表の勘定科目の合計額、区分所有者の修繕積立金の滞納額もしくは滞納期間、修繕積立金を滞納している区分所有者の数もしくは比率、区分所有者の管理費の滞納額もしくは滞納期間、管理費を滞納している区分所有者の数もしくは比率、同一の区分所有者の数もしくは比率、区分所有者の年齢、性別、職業、国籍、家族構成、収入、もしくは資産、区分の分譲賃貸の別、分譲賃貸の区分数、もしくは分譲賃貸の区分比率、区分の店舗の別、設備の更新項目、更新時期、更新額、更新額の支払時期、更新のための借入額、設備の購入もしくはリースの別、修繕工事の修繕項目、修繕時期、修繕額、修繕額の支払時期、修繕のための借入額、もしくは修繕のための借入額の返済時期、及び長期修繕計画書の修繕項目、修繕時期、もしくは修繕額の少なくとも1つを含む。
【0028】
図5では、管理データ65は、学習用の区分所有建物の収支決算報告書の収支68、収支決算報告書の勘定科目69、収支決算報告書の勘定科目の額69、収支決算報告書の簿記形式70、収支決算報告書の管理費会計の有無71、修繕積立金会計の有無72、貸借対照表の勘定科目73、貸借対照表の勘定科目の額73、貸借対照表の勘定科目の合計額73、区分所有者の修繕積立金の滞納期間74及び滞納額75、修繕積立金を滞納している区分所有者の数74、区分所有者の管理費の滞納期間74及び滞納額75、管理費を滞納している区分所有者の数74、区分所有者の属性(年齢、性別、職業、国籍、家族構成、収入、もしくは資産)76、区分の属性(分譲賃貸の別、分譲賃貸の区分数、もしくは分譲賃貸の区分比率、区分の店舗の別)77、設備の更新(更新項目、更新時期、更新額、更新額の支払時期、もしくは更新のための借入額)78、設備の購入もしくはリースの別79、修繕工事の修繕(修繕項目、修繕時期、修繕額、修繕額の支払時期、修繕のための借入額、もしくは修繕のための借入額の返済時期)80、並びに長期修繕計画書(長期修繕計画の修繕項目、修繕時期、もしくは修繕額)81を含む。
【0029】
また、学習用の管理データ65として、学習用の区分所有建物の管理組合規約の有無、管理組合規約の更新の回数もしくは頻度、理事会の有無、理事会の開催の回数もしくは頻度、総会の議事録の有無、総会の開催の回数もしくは頻度、面積もしくは区分当たりの修繕積立金の額、耐震評価、耐震補強工事の実施状況、損害保険の加入状況、訴訟状況、及び管理会社への委託状況の少なくとも1つが含まれてもよい。
【0030】
図6では、管理データ65は、学習用の区分所有建物の管理組合規約(管理組合規約の有無、管理組合規約の更新の回数もしくは頻度)82、理事会(理事会の有無、理事会の開催の回数もしくは頻度)83、総会(総会の議事録の有無、総会の開催の回数もしくは頻度)84、修繕積立金の基準額(面積もしくは区分当たりの修繕積立金の額)85、耐震(耐震評価もしくは耐震補強工事の実施状況)86、損害保険の加入状況(損害保険87)、訴訟状況88、及び管理会社への委託状況89を含む。
【0031】
図7は、区分所有建物の管理データと評価データとの相関を示す図である。横軸は、区分所有建物の滞納額を滞納期間(管理費及び修繕積立金の滞納期間の和)で除した値であり、管理データに相当する。縦軸は、区分所有建物の競売の落札価格を売却基準価額で除した値であり、評価データに相当する。図7に示すように、区分所有建物の管理データと評価データの相関係数は、-0.82249であり、高い負の相関性を有する。したがって、区分所有建物の管理データに基づく管理状況が悪化すると、区分所有建物の評価データに基づく評価が低くなるという関係性がある。
【0032】
この他、収支決算報告書データ43における区分所有建物の収支決算報告書の収支68、収支決算報告書の勘定科目69、収支決算報告書の勘定科目の額69、収支決算報告書の簿記形式70、及び収支決算報告書の管理費会計もしくは修繕積立金会計の有無71,72に基づく管理データ65は、区分所有建物の評価データ64に基づく評価と関係性がある。このうち特に重要なものは、収支決算報告書データ43における区分所有建物の収支決算報告書の収支68である。
【0033】
例えば、収支が悪化している区分所有建物の評価データは低くなる。例えば、修繕積立金もしくは管理費の収支が赤字である場合、評価データが低くなる。また、収支決算報告書の勘定科目(管理費、駐車場使用料、専有部水道料、雑収入、受取利息、特別収入、委託業務費、設備保守管理費、電気料、水道料、電話料、組合運営費、諸会費、支払手数料、什器備品、修繕費、保険料、特別費用、前期繰越金、当期余剰金、次期繰越金、修繕積立金、工事費、修繕費、及び予備費等)に基づいて、どの勘定科目を計上しているか、どのくらいの額を計上しているか、いつ計上しているか等に基づく管理データは、評価データと関係性を有する。例えば、委託業務費を計上していない場合、自主管理である可能性が高く、評価データが低くなる。また、小規模修繕を修繕積立金からではなく管理費から拠出している場合、管理費の流用であるため、評価データが低くなる。また、駐車場使用料を管理費ではなく修繕積立金に計上している場合、修繕積立金計画が脆弱であるため、評価データが低くなる。また、栽植に関する勘定科目がある場合、区分所有建物の外観を整備しているため、評価データが高くなる。また、保険請求の回数や頻度が多い場合、区分所有建物の老朽化を推定できるため、評価データが低くなる。
【0034】
また、収支決算報告書の簿記形式が複式簿記であるか否かに基づく管理データは、評価データと関係性を有する。複式簿記であれば、企業会計と同等の処理がなされているため、管理会社へ管理を委託している可能性が高く、評価データが高くなる。また、収支決算報告書の管理費会計もしくは修繕積立金会計の有無に基づく管理データは、評価データと関係性を有する。収支決算報告書が管理費会計及び修繕積立金会計を有していれば、適切な会計運営がなされている可能性が高く、評価データが高くなる。また、管理費の収支が黒字である場合、健全な管理が行われているため、評価データが高くなる。
【0035】
また、貸借対照表データ44における区分所有建物の貸借対照表の勘定科目73、貸借対照表の勘定科目の額73、貸借対照表の勘定科目の合計額73に基づく管理データ65は、区分所有建物の評価データ64に基づく評価と関係性がある。貸借対照表の勘定科目(普通預金、定期預金、未収金、前払金、未払金、借越、貸越、 前期繰越金、当期余剰金、及び次期繰越金等)や合計額(資産の部合計及び負債・余剰金の部合計)に基づいて、どの勘定科目を計上しているか、どのくらいの額を計上しているか、いつ計上しているか等に基づく管理データは、評価データと関係性を有する。貸借対照表から区分所有建物の財務の健全性が推定できるため、評価データと関係性を有する。
【0036】
また、区分所有者データ45の滞納データ46における区分所有者の修繕積立金の滞納額もしくは滞納期間74,75、修繕積立金を滞納している区分所有者の数もしくは比率74,75、区分所有者の管理費の滞納額もしくは滞納期間74,75、管理費を滞納している区分所有者の数もしくは比率74,75、同一の区分所有者の数もしくは比率74,75、区分所有者データ45の属性データ47における区分所有者の年齢、性別、職業、国籍、家族構成、収入、もしくは資産(区分所有者属性76)、区分属性データ48における区分の分譲賃貸の別、分譲賃貸の区分数、もしくは分譲賃貸の区分比率、及び区分属性データ48における区分の店舗の別、店舗の区分数、もしくは前記店舗の区分比率(区分属性77)に基づく管理データ65は、区分所有建物の評価データ64に基づく評価と関係性がある。このうち特に重要なものは、修繕積立金もしくは管理費の滞納額及び滞納期間74,75である。
【0037】
例えば、修繕積立金もしくは管理費の滞納額が多い場合もしくは滞納期間が長い場合、区分所有建物の修繕や管理に支障をきたすおそれがあるため、評価データが低くなる。また、修繕積立金もしくは管理費を滞納している区分所有者の数が多い場合もしくは比率が高い場合、区分所有建物の修繕や管理に支障をきたすおそれがあるため、評価データが低くなる。また、同一の区分所有者の数が多い場合もしくは比率が高い場合(例えば、全体の10%を超える場合)、大口の区分所有者が存在することになり、管理組合の運営への発言力が高まるため、評価データが低くなる。また、区分所有者の年齢が高い場合、区分所有建物の修繕には消極的であるため、評価データが低くなる。また、分譲賃貸もしくは店舗の区分数が多い場合もしくは区分比率が高い場合(例えば、全体の10%を超える場合)、区分所有者は事業目的で区分を所有している可能性が高いため、管理費等を滞納した場合、収納される資金への影響が高く、評価データが低くなる。
【0038】
また、設備管理データ49における区分所有建物の設備の更新項目、更新時期、更新額、更新額の支払時期、更新のための借入額、設備の購入もしくはリースの別(設備更新78及び設備購入/リース79)に基づく管理データ65は、区分所有建物の評価データ64に基づく評価と関係性がある。例えば、区分所有建物の設備の更新項目が不十分である場合や借入額が多い場合、区分所有建物の適切な設備更新が行われていない可能性が高いため、評価データが低くなる。
【0039】
また、修繕工事データ50における区分所有建物の修繕工事の修繕項目、修繕時期、修繕額、修繕額の支払時期、修繕のための借入額、もしくは修繕のための借入額の返済時期(修繕工事80)、及び長期修繕計画書データ51における長期修繕計画書の修繕項目、修繕時期、もしくは修繕額(長期修繕計画書81)に基づく管理データ65は、区分所有建物の評価データ64に基づく評価と関係性がある。例えば、区分所有建物の修繕項目が不十分である場合や借入額が多い場合、区分所有建物の適切な修繕が行われていない可能性が高いため、評価データが低くなる。
【0040】
また、管理組合規約データ52における区分所有建物の管理組合規約の有無、管理組合規約の更新の回数もしくは頻度(管理組合規約82)、理事会・総会データ53における理事会の有無、理事会の開催の回数もしくは頻度(理事会83)、理事会・総会データ53における総会の議事録の有無、及び総会の開催の回数もしくは頻度(総会84)に基づく管理データ65は、区分所有建物の評価データ64に基づく評価と関係性がある。このうち特に重要なものは、管理組合規約82である。
【0041】
例えば、「建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)」(昭和37年4月4日法律第69号)に基づき管理組合規約が規定されている場合、管理組合や理事会や総会が適切に設立・運営されており、区分所有建物の適切な管理が期待できるため、評価データが高くなる。また、管理組合規約の更新の回数や頻度が適切である場合、国土交通省の標準管理規約の改定に基づき管理組合規約の更新が行われていることが推定できるため、評価データが高くなる。
【0042】
また、修繕積立金データ54における区分所有建物の面積もしくは区分当たりの修繕積立金の額(修繕積立金の基準額85)に基づく管理データ65は、区分所有建物の評価データ64に基づく評価と関係性がある。例えば、修繕積立金の基準額が国土交通省推奨の額(例えば、1平方メートル当たり250円)より低い場合、修繕積立金が将来的に不足する可能性が高いため、評価データが低くなる。
【0043】
また、耐震データ55における区分所有建物の耐震評価及び耐震補強工事の実施状況(耐震86)に基づく管理データ65は、区分所有建物の評価データ64に基づく評価と関係性がある。例えば、耐震評価が高い場合や耐震補強工事が実施済みである場合、評価データが高くなる。
【0044】
損害保険データ56における区分所有建物の損害保険の加入状況(損害保険87)に基づく管理データ65は、区分所有建物の評価データ64に基づく評価と関係性がある。例えば、適切な損害保険に加入している場合は、評価データが高くなる。
【0045】
訴訟データ57における訴訟状況(訴訟88)に基づく管理データ65は、区分所有建物の評価データ64に基づく評価と関係性がある。例えば、管理費等を滞納している区分所有者に対して訴訟を提起している場合は、法的措置が適切に行われていることが推定できるため、評価データが高くなる。
【0046】
管理会社への委託状況(管理会社89)に基づく管理データ65は、区分所有建物の評価データ64に基づく評価と関係性がある。例えば、管理会社へ管理を委託している場合は、適切な管理を期待することができるため、評価データが高くなる。
【0047】
このように、区分所有建物の評価と関係性を有する管理データ65と評価データ64とを関連付けることにより、この関係性に基づく学習用データを機械学習に用いることで、区分所有建物の管理データから区分所有建物の評価を推論することができる。
【0048】
なお、図7に示すように、学習用及び推論用の管理データは、区分所有建物の収支決算報告書の収支、収支決算報告書の勘定科目、収支決算報告書の勘定科目の額、収支決算報告書の簿記形式、収支決算報告書の管理費会計もしくは修繕積立金会計の有無、貸借対照表の勘定科目、貸借対照表の勘定科目の額、貸借対照表の勘定科目の合計額、区分所有者の修繕積立金の滞納額もしくは滞納期間、修繕積立金を滞納している区分所有者の数もしくは比率、区分所有者の管理費の滞納額もしくは滞納期間、管理費を滞納している区分所有者の数もしくは比率、同一の区分所有者の数もしくは比率、区分所有者の年齢、性別、職業、国籍、家族構成、収入、もしくは資産、区分の分譲賃貸の別、分譲賃貸の区分数、もしくは分譲賃貸の区分比率、区分の店舗の別、店舗の区分数、もしくは店舗の区分比率、設備の更新項目、更新時期、更新額、更新額の支払時期、更新のための借入額、設備の購入もしくはリースの別、修繕工事の修繕項目、修繕時期、修繕額、修繕額の支払時期、修繕のための借入額、もしくは修繕のための借入額の返済時期、及び長期修繕計画書の修繕項目、修繕時期、もしくは修繕額の少なくとも1つの関数であってもよい。
【0049】
また、学習用及び推論用の管理データは、学習用の区分所有建物の管理組合規約の有無、管理組合規約の更新の回数もしくは頻度、理事会の有無、理事会の開催の回数もしくは頻度、総会の議事録の有無、総会の開催の回数もしくは頻度、面積もしくは区分当たりの修繕積立金の額、耐震評価、耐震補強工事の実施状況、損害保険の加入状況、訴訟状況、及び管理会社への委託状況の少なくとも1つの関数であってもよい。
【0050】
また、学習用及び推論用の評価データは、区分所有建物の実勢価格、販売価格、査定価格、競売の最低売却価額、競売の売却基準価額、競売の買受可能価額、競売の落札価格、及び評価スケールの少なくとも1つの関数であってもよい。
【0051】
また、図5及び図6の評価データ64及び管理データ65の各項目66~89は、十系列データ(日付データ)を含んでもよい。
【0052】
図8は、学習用の区分所有建物の管理データと学習用の区分所有建物の評価データとが拡張されて関連付けられた機械学習用データの例を示す図である。
【0053】
図8に示すように、学習用の区分所有建物を示すID60、名称61、住所62、及び管理会社63により、学習用の評価データ64と管理データ65とが関連付けられている。
【0054】
学習用の管理データ65は、学習用の区分所有建物の収支決算報告書、貸借対照表、区分所有者の滞納状況、総会の運営状況、及び損害保険の加入状況の少なくとも1つに基づく第1の日付データと、学習用の区分所有建物の設備の管理状況、修繕工事の実施状況、長期修繕計画書、耐震評価、及び耐震補強工事の実施状況の少なくとも1つに基づく第2の日付データとを、関連付けることにより拡張された学習用の管理データ65であってもよい。
【0055】
図8では、管理データ65は、学習用の区分所有建物の収支決算報告書68,69、貸借対照表73、区分所有者の滞納状況(滞納区分所有者74,75)、総会の運営状況(総会84)、及び損害保険の加入状況(損害保険87)の少なくとも1つに基づく第1の日付データと、学習用の区分所有建物の設備の管理状況(設備78,79)、修繕工事の実施状況(修繕工事80)、長期修繕計画書81、耐震評価(耐震86)、及び耐震補強工事の実施状況(耐震86)の少なくとも1つに基づく第2の日付データとを含む。
【0056】
第1の日付データと第2の日付データとを関連付けることにより、第2の日付データに基づく日付の前後において、区分所有建物の収支決算報告書68,69、貸借対照表73、区分所有者の滞納状況(滞納区分所有者74,75)、総会の運営状況(総会84)、及び損害保険の加入状況(損害保険87)の少なくとも1つがどのように変化したかを把握することができる。そして、この変化を評価データと関連付けることにより、この変化に基づく学習用データを機械学習に用いることで、区分所有建物の管理データから区分所有建物の評価を推論することができる。
【0057】
例えば、大規模修繕の日付データの前後で、貸借対照表73の資産が適切に変化している場合、資産が減少していても、区分所有建物の修繕が適切に行われていると推定できるため、評価データが高くなる。このように、評価データ64及び管理データ65の時系列データを学習用データとして用いることで、区分所有建物の管理データから区分所有建物の評価を高精度で推論することができる。
【0058】
なお、学習用の区分所有建物の評価データとして、区分所有建物の実勢価格等の代わりに、学習用の区分所有建物の収支決算報告書68,69、貸借対照表73、区分所有者の滞納状況74,75、設備の管理状況78,79、修繕工事の実施状況80、及び長期修繕計画書81の少なくとも1つに関する定量データが、機械学習に用いられてもよい。この場合、この定量データを除く管理データ65と学習用の区分所有建物の評価データ64とが関連付けられた学習用データが機械学習に用いられる。
【0059】
収支決算報告書68,69、貸借対照表73、区分所有者の滞納状況74,75、設備の管理状況78,79、修繕工事の実施状況80、及び長期修繕計画書81の少なくとも1つに関する定量データを評価データとすることで、管理データ65からこの定量データを推論することができる。
【0060】
図9は、本実施形態の推論方法の例を示すフローチャートである。図10及び図11は、本実施形態の推論プログラムにより実行される動作の例を示すシーケンス図である。図10は、各種データの取得及び前処理、並びに学習済みモデルの生成及び格納の動作の例を示すシーケンス図である。図11は、学習済みモデルによる推論及び推論結果の決定の動作の例を示すシーケンス図である。推論プログラムは記録媒体に搭載されてもよい。
【0061】
図9及び図10に示すように、ステップS1において、コンピュータ5のプロセッサ501が、各種データの格納命令を学習用データベースサーバ4へ送信し(110)、学習用データベースサーバ4のデータ格納部35は、各種データの格納命令を実行し(111)、コンピュータ5又は入力装置32から入力された各種データを学習用データベース40に格納する。格納される各種データには、管理データ41及び評価データ42が含まれる。
【0062】
コンピュータ5のプロセッサ501が、各種データの取得命令及び送信命令を学習用データベースサーバ4へ送信する(112)。ステップS2において、学習用データベースサーバ4のデータ取得部36は、各種データの取得命令及び送信命令を実行し(113)、各種データを学習用データベース40から取得し、インターフェース33を介して、各種データをコンピュータ5へ送信する。
【0063】
ステップS3において、コンピュータ5は、データ取得部502により各種データを取得し、出力装置525のディスプレイに表示する。ステップS4において、コンピュータ5の選択部505が学習用データを入力する箇所を選択し、入力装置523により学習用データを入力又は修正する(114)。そして、決定/修正部506により入力又は修正された学習用データが決定され、インターフェース524を介して、決定された学習用データが学習用データベースサーバ4へ送信される。
【0064】
ステップS5において、コンピュータ5のプロセッサ501が、前処理命令を学習用データベースサーバ4へ送信し(115)、学習用データベースサーバ4の前処理部37は、各種データの前処理を実行する(116)。
【0065】
ステップS6において、前処理部37が、学習用データの拡張命令を実行し(117)、学習用データを拡張する。前処理部37は、学習用の区分所有建物の収支決算報告書68,69、貸借対照表73、区分所有者の滞納状況(滞納区分所有者74,75)、総会の運営状況(総会84)、及び損害保険の加入状況(損害保険87)の少なくとも1つに基づく第1の日付データと、学習用の区分所有建物の設備の管理状況(設備78,79)、修繕工事の実施状況(修繕工事80)、長期修繕計画書81、耐震評価(耐震86)、及び耐震補強工事の実施状況(耐震86)の少なくとも1つに基づく第2の日付データとを、関連付けることにより学習用の管理データ65を拡張する。
【0066】
また、前処理部37は、管理データ41の項目のうち少なくとの1つを複数のグループ(もしくは、スケール)に分類することにより、管理データ65を拡張してもよい。例えば、閾値を設定し、閾値を基準に、前処理部37が、収支や滞納額や滞納期間等を複数の複数のグループ(もしくは、スケール)に分類することにより、学習用データをデータ拡張してもよい。
【0067】
ステップS7において、前処理部37が、学習用データのフィルタ処理命令を実行し(118)、フィルタ処理を行う。前処理部37は、管理データ41の各項目の一部を学習データから除外するために、フィルタ処理を行う。例えば、区分所有者の属性が明らかに間違っている場合(区分所有者の年齢が200歳等)、前処理部37は、閾値を基準に学習用データから除くことにより、フィルタ処理を行う。
【0068】
ステップS8において、学習済みモデルが生成される。コンピュータ5のプロセッサ501は、機械学習によるモデル生成命令を人工知能サーバ3へ送信する(120)。人工知能サーバ3のデータ取得部26は、インターフェース24を介して、学習用データの取得命令を学習用データベースサーバ4へ送信し(121)、学習用データベースサーバ4は、学習用データの送信命令を実行し、学習用データベース40に格納された学習用データを、インターフェース33を介して、人工知能サーバ3へ送信する(122)。データ取得部26は、学習用データベース40から学習用データを取得し、機械学習部27は、学習用データ(拡張された学習用データを含む)に基づいて、機械学習による学習済みモデルの生成命令を実行する(123)。
【0069】
機械学習部27は、学習用データに基づいて、ニューラルネットワークにより学習済みモデルを生成する。機械学習部27は、管理データ65を入力層に入力し、評価データ64を出力層の正解値として入力するニューラルネットワークにより学習済みモデルを生成する。ニューラルネットワークの中間層には、Affine層又はConvolution層が設けられる。適宜、ダウンサンプリング処理等が行われてもよい。また、中間層の層数、ニューロン数、及び活性化関数は、推論結果が高精度となるように、最適なものが選択される。ニューラルネットワークとして、Feed Forward Neural Network(FFNN)やRecurrent Neural Network(RNN)等が用いられる。機械学習部27は、乱数等の所定の値で初期化されたパラメータ(重み)を用いて、管理データ65が入力層に入力された際に出力層に出力された値と出力層の正解値(評価データ64)との乖離を表すロス関数を算出し、ロス関数の微分値を勾配として、出力層に出力された値と出力層の正解値との乖離が小さくなるように、パラメータ(重み)を変化させることで、学習済みモデルを生成する。
【0070】
上記のように、管理データ65と評価データ64とは一定の関係性がある。したがって、管理データ65と評価データ64とを関連付けた学習用データに基づいて、機械学習により学習済みモデルを生成し、学習済みモデルに入力された推論用の区分所有建物の管理データから、推論用の区分所有建物の評価データを推論することにより、区分所有建物の評価を高精度に推論することができる。
【0071】
ステップS9において、学習済みモデル格納部28は、学習済みモデルの格納命令を実行することにより、生成された学習済みモデルを記憶装置22に記憶させる(123)。
【0072】
ステップS10において、区分所有建物の評価を推論するステップに進む場合は、ステップS9に進み、区分所有建物の評価を推論するステップに進まない場合は処理を終了する。
【0073】
図9及び図11に示すように、ステップS11において、コンピュータ5のプロセッサ501は、入力装置23により推論用の区分所有建物の管理データを入力し、推論用の区分所有建物の管理データを人工知能サーバ3へ送信する(129)。そして、コンピュータ5のプロセッサ501は、区分所有建物の評価の推論命令を人工知能サーバ3へ送信する(130)。
【0074】
ステップS12において、推論部29は、データチェック命令を実行し、コンピュータ5から送信された推論用の区分所有建物の管理データのデータフォーマットを確認し、正しいデータフォーマットであるか否かを判定する(131)。誤ったデータフォーマットである場合は、推論部29は、その旨を示すデータをコンピュータ5へ送信する。
【0075】
正しいデータフォーマットである場合は、ステップS13において、推論部29は、データ前処理命令を実行し、推論用の区分所有建物の管理データを学習時のエンコード方針に従ってエンコードする(131)。学習時に用いられていない値が推論用の区分所有建物の管理データに含まれている場合は、推論部29は、その値を除外するか、所定の条件に従って所定の値を割り当てる。
【0076】
ステップS14において、推論部29は、推論命令を実行し、記憶装置22に記憶された学習済みモデルを読み出し、推論用の区分所有建物の管理データを学習済みモデルに入力し、学習済みモデルに入力された区分所有建物の管理データから区分所有建物の評価を推論する(132)。
【0077】
推論部29は、インターフェース24を介して、推論結果の送信命令を実行し、推論結果をコンピュータ5へ送信する(133)。
【0078】
ステップS15において、コンピュータ5のプロセッサ501は、送信結果の表示命令を実行し、出力装置525(例えば、ディスプレイ)に推論結果を表示させる(134)。
【0079】
ステップS16において、コンピュータ5の入力装置523が適切な区分所有建物の評価を指定することにより、コンピュータ5の決定/修正部506が区分所有建物の評価の決定命令を実行する(135)。また、決定された区分所有建物の評価は、決定/修正部506により修正可能である。
【0080】
ステップS17において、決定/修正部506により決定された区分所有建物の評価が、推論用の区分所有建物の管理データと関連付けられて、学習用データベース40の学習用データに格納されたか否かを、コンピュータ5が判定する。学習用データベース40の学習用データに格納されていない場合は、コンピュータ5のプロセッサ501が、決定/修正部506により決定された区分所有建物の評価データと管理データとが関連付けられたデータを学習用データベースサーバ4へ送信し(136)、学習用データベースサーバ4のデータ格納部35は、学習用データの格納命令を実行し(137)、コンピュータ5から送信されたデータを学習用データベース40に格納する。これにより、学習用データベース40の学習用データが増え、区分所有建物の評価をさらに高精度で推論することができる。
【0081】
決定/修正部506により決定された区分所有建物の評価データと管理データとが関連付けられたデータが学習用データベース40の学習用データに格納されている場合は、処理を終了する。
【0082】
以上のように、本実施形態によれば、機械学習により区分所有建物の管理データから区分所有建物の評価を総合的に推論するため、区分所有建物の評価を高精度で推論することができる。
【0083】
以上、本発明にかかる実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、請求項に記載された範囲内において変更・変形することが可能である。
【0084】
本実施形態には、学習用の区分所有建物の管理データ65と学習用の区分所有建物の評価データ64とが関連付けられた機械学習用データのデータ構造であって、ニューラルネットワークの入力層に入力可能な学習用の区分所有建物の収支決算報告書、貸借対照表、区分所有者の滞納状況もしくは属性、区分の属性、設備の管理状況、修繕工事の実施状況、及び長期修繕計画書の少なくとも1つに関する管理データ65と、ニューラルネットワークの出力層の正解値として入力可能な機械学習用の区分所有建物の評価データ64とを備え、機械学習用データは、所定の値で初期化されたパラメータを用いて、管理データが入力層に入力された際に出力層に出力された値と正解値との乖離を表すロス関数の微分値を勾配として、乖離が小さくなるようにパラメータを変化させて学習済みモデルを生成するために用いられることを特徴とするデータ構造を含む。
【0085】
この場合、機械学習用データは、機械学習用の区分所有建物の収支決算報告書の収支、収支決算報告書の勘定科目、収支決算報告書の勘定科目の額、収支決算報告書の簿記形式、収支決算報告書の管理費会計もしくは修繕積立金会計の有無、貸借対照表の勘定科目、貸借対照表の勘定科目の額、貸借対照表の勘定科目の合計額、区分所有者の修繕積立金の滞納額もしくは滞納期間、修繕積立金を滞納している区分所有者の数もしくは比率、区分所有者の管理費の滞納額もしくは滞納期間、管理費を滞納している区分所有者の数もしくは比率、同一の区分所有者の数もしくは比率、区分所有者の年齢、性別、職業、国籍、家族構成、収入、もしくは資産、区分の分譲賃貸の別、分譲賃貸の区分数、もしくは分譲賃貸の区分比率、区分の店舗の別、店舗の区分数、もしくは店舗の区分比率、設備の更新項目、更新時期、更新額、更新額の支払時期、更新のための借入額、設備の購入もしくはリースの別、修繕工事の修繕項目、修繕時期、修繕額、修繕額の支払時期、修繕のための借入額、もしくは修繕のための借入額の返済時期、及び長期修繕計画書の修繕項目、修繕時期、もしくは修繕額の少なくとも1つを用いて、機械学習用の区分所有建物の管理データと機械学習用の区分所有建物の評価データとが関連付けられることを特徴とするデータ構造であってもよい。
【0086】
また、機械学習用データは、機械学習用の区分所有建物の管理組合規約の有無、管理組合規約の更新の回数もしくは頻度、理事会の有無、理事会の開催の回数もしくは頻度、総会の議事録の有無、総会の開催の回数もしくは頻度、面積もしくは区分当たりの修繕積立金の額、耐震評価、耐震補強工事の実施状況、損害保険の加入状況、訴訟状況、及び管理会社への委託状況の少なくとも1つを用いて、機械学習用の区分所有建物の管理データと機械学習用の区分所有建物の評価データとが関連付けられることを特徴とするデータ構造であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は、区分所有建物の管理データから区分所有建物の評価を推論することができる推論システムとして有用である。特に、区分所有建物の管理データから区分所有建物の評価を推論する推論システムとして有用である。
【符号の説明】
【0088】
1…推論システム
2…ネットワーク
4…学習用データベースサーバ
5…コンピュータ
21…プロセッサ
22…記憶装置
23…入力装置
24…インターフェース
25…出力装置
26…データ取得部
27…機械学習部
28…モデル格納部
29…推論部
30…プロセッサ
32…入力装置
33…インターフェース
34…出力装置
35…データ格納部
36…データ取得部
37…前処理部
40…学習用データベース
501…プロセッサ
502…データ取得部
505…選択部
506…修正部
523…入力装置
524…インターフェース
525…出力装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11