(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】電磁波制御装置、電磁波制御方法、及び電磁波伝達装置
(51)【国際特許分類】
H01Q 15/24 20060101AFI20240227BHJP
G02B 26/00 20060101ALI20240227BHJP
H01P 1/165 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
H01Q15/24
G02B26/00
H01P1/165
(21)【出願番号】P 2020030068
(22)【出願日】2020-02-26
【審査請求日】2023-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】503359821
【氏名又は名称】国立研究開発法人理化学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100097515
【氏名又は名称】堀田 実
(74)【代理人】
【識別番号】100136700
【氏名又は名称】野村 俊博
(72)【発明者】
【氏名】南出 泰亜
(72)【発明者】
【氏名】大野 誠吾
(72)【発明者】
【氏名】時実 悠
【審査官】佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/174916(WO,A1)
【文献】特開2012-047953(JP,A)
【文献】特開2007-333756(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0067604(US,A1)
【文献】特開2004-078116(JP,A)
【文献】特開平07-220923(JP,A)
【文献】特開平04-230730(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 15/24
G02B 26/00
H01P 1/165
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波が伝搬する導波路と、
前記導波路に伝搬する前の電磁波の偏光状態を調整可能な偏光調整部と、
前記偏光調整部からの電磁波を前記導波路に伝達する結合器とを備え、
前記結合器は、導電材料で形成された導電体構造を有し、該導電体構造には、前記偏光調整部からの電磁波が通過する通過部が設けられ、
前記導波路は、前記結合器に関して前記偏光調整部と反対側において設けられ、前記通過部の中心軸の方向から見た場合に、互いに直交する第1方向と第2方向のうち前記第1方向の一方側から他方側へ前記導波路は延びており、前記導波路の幅方向中央は、前記第2方向において前記中心軸から僅かにずれている、電磁波制御装置。
【請求項2】
前記導波路は、前記第1方向において、前記中心軸の位置から互いに反対側に延びている、請求項1に記載の電磁波制御装置。
【請求項3】
前記導電体構造は、前記通過部の中心軸に関して回転対称に形成されている、請求項1又は2に記載の電磁波制御装置。
【請求項4】
前記導電体構造は、前記通過部の中心軸を含む対称面に関して面対称に形成され、
前記通過部の中心軸の方向から見た場合に、前記導波路は、前記対称面に直交するように延びている、請求項1~3のいずれか一項に記載の電磁波制御装置。
【請求項5】
前記通過部の中心軸の方向から見た場合に、前記導波路の幅方向中央は、前記導波路を伝搬させる電磁波の対象波長と同程度の距離だけ、前記第2方向に前記中心軸からずれている、請求項1~4のいずれか一項に記載の電磁波制御装置。
【請求項6】
前記対象波長は、テラヘルツ波の波長である、請求項5に記載の電磁波制御装置。
【請求項7】
前記中心軸の方向における前記通過部と前記導波路との間隔は、前記対象波長程度である、請求項5又は6に記載の電磁波制御装置。
【請求項8】
前記通過部の前記中心軸の方向から見た場合に、前記第2方向において前記中心軸を挟むように、2つの前記導波路が設けられている、請求項1~7のいずれか一項に記載の電磁波制御装置。
【請求項9】
電磁波が伝搬する導波路と、入射した電磁波を前記導波路に伝達する結合器とを設け、前記結合器は、導電材料で形成された導電体構造を有し、該導電体構造には、前記結合器に入射した電磁波が通過する通過部が設けられ、前記通過部の中心軸の方向から見た場合に、互いに直交する第1方向と第2方向のうち前記第1方向の一方側から他方側へ前記導波路は延びており、前記導波路の幅方向中央は、前記第2方向において前記中心軸から僅かにずれており、
前記結合器に入射する電磁波の偏光状態を調整することにより、前記導波路を伝搬する電磁波の位相を制御する、電磁波制御方法。
【請求項10】
電磁波が伝搬する導波路と、
入射した電磁波を前記導波路に伝達する結合器とを備え、
前記結合器は、導電材料で形成された導電体構造を有し、該導電体構造には、入射した電磁波が通過する通過部が設けられ、
前記通過部の中心軸の方向から見た場合に、互いに直交する第1方向と第2方向のうち前記第1方向の一方側から他方側へ前記導波路は延びており、前記導波路の幅方向中央は、前記第2方向において前記中心軸から僅かにずれている、電磁波伝達装置。
【請求項11】
電磁波が伝搬する導波路と、
前記導波路からの電磁波が伝達される結合器とを備え、
前記結合器は、導電材料で形成された導電体構造を有し、該導電体構造には、前記導波路からの電磁波が通過する通過部が設けられ、
前記通過部の中心軸の方向から見た場合に、互いに直交する第1方向と第2方向のうち前記第1方向の一方側から他方側へ前記導波路は延びており、前記導波路の幅方向中央は、前記第2方向において前記中心軸から僅かにずれている、電磁波伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導波路を伝搬する電磁波の位相を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
光波、電波、両者の中間の周波数を有するテラヘルツ波などの電磁波を用いた通信は、情報化社会を支える核となる技術である。このような通信技術において、電磁波は、伝送線路や光ファイバーなどの導波路を伝搬して、ミキシング、変調、復調などの処理を受ける。その際に、導波路を伝搬する電磁波の位相制御は、精密な情報の伝送にとって必須の基礎技術である。このような位相制御は、例えば特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来において、導波路を伝搬する電磁波の位相を動的に変化させるためには、位相変調器(例えば特許文献1の導波路型光変調器)を導波路に設ける必要がある。導波路に位相変調器を設けた構成は、寸法が増大し、また、製造プロセスが複雑化してしまう。例えば、非線形光学結晶を用いた位相変調器では、十分な位相差を得るには、装置が大型化してしまう。また、導波路に設ける位相変調器として半導体を用いた小型の位相変調器は、製造プロセスが複雑になり、その結果、高額になりやすく、微細な半導体構造であるために、静電気に対して脆弱になりやすい。
【0005】
そこで、本発明の目的は、導波路を伝搬する電磁波の位相を制御する場合に、導波路に位相変調器を設けなくても、導波路を伝搬する電磁波の位相を制御できるようにすることにある。
【0006】
また、本発明の目的は、導波路における電磁波の位相に応じた偏光状態で電磁波を伝達できる電磁波伝達装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によると、電磁波制御装置は、
電磁波が伝搬する導波路と、
前記導波路に伝搬する前の電磁波の偏光状態を調整可能な偏光調整部と、
前記偏光調整部からの電磁波を前記導波路に伝達する結合器とを備え、
前記結合器は、導電材料で形成された導電体構造を有し、該導電体構造には、前記偏光調整部からの電磁波が通過する通過部が設けられ、
前記導波路は、前記結合器に関して前記偏光調整部と反対側において設けられ、前記通過部の中心軸の方向から見た場合に、互いに直交する第1方向と第2方向のうち前記第1方向の一方側から他方側へ前記導波路は延びており、前記導波路の幅方向中央は、前記第2方向において前記中心軸から僅かにずれている。
【0008】
また、本発明の一態様によると、電磁波制御方法では、
電磁波が伝搬する導波路と、入射した電磁波を前記導波路に伝達する結合器とを設け、前記結合器は、導電材料で形成された導電体構造を有し、該導電体構造には、前記結合器に入射した電磁波が通過する通過部が設けられ、前記通過部の中心軸の方向から見た場合に、互いに直交する第1方向と第2方向のうち前記第1方向の一方側から他方側へ前記導波路は延びており、前記導波路の幅方向中央は、前記第2方向において前記中心軸から僅かにずれており、
前記結合器に入射する電磁波の偏光状態を調整することにより、前記導波路を伝搬する電磁波の位相を制御する。
【0009】
また、本発明の別の態様によると、電磁波伝達装置は、電磁波が伝搬する導波路と、入射した電磁波を前記導波路に伝達する結合器とを備え、前記結合器は、導電材料で形成された導電体構造を有し、該導電体構造には、入射した電磁波が通過する通過部が設けられ、前記通過部の中心軸の方向から見た場合に、互いに直交する第1方向と第2方向のうち前記第1方向の一方側から他方側へ前記導波路は延びており、前記導波路の幅方向中央は、前記第2方向において前記中心軸から僅かにずれている。
更に、本発明の別の態様によると、電磁波伝達装置は、電磁波が伝搬する導波路と、前記導波路からの電磁波が伝達される結合器とを備え、前記結合器は、導電材料で形成された導電体構造を有し、該導電体構造には、前記導波路からの電磁波が通過する通過部が設けられ、前記通過部の中心軸の方向から見た場合に、互いに直交する第1方向と第2方向のうち前記第1方向の一方側から他方側へ前記導波路は延びており、前記導波路の幅方向中央は、前記第2方向において前記中心軸から僅かにずれている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によると、結合器から導波路へ伝達される前の電磁波の偏光状態を調整することで、導波路における電磁波の位相を制御できる。よって、導波路に位相変調器を設けなくても、導波路を伝搬する電磁波の位相を制御できる。
【0011】
また、本発明の別の態様によると、導波路を伝搬して来た電磁波が、通過部を通過して結合部から導波路と反対側へ伝達するようにした場合には、導波路での位相に応じた偏光状態で電磁波が結合器から伝達(例えば空中へ放射)される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1実施形態による電磁波制御装置の構成を示す図である。
【
図2】
図1のII-II矢視図であり、結合器を示す。
【
図4】
図1のIV-IV矢視図であり、導波路を示す。
【
図5】導波路におけるPort1とPort2の位相差を示す複素平面である。
【
図6A】偏光方向がx軸方向である電磁波が導波路に伝達された場合の電場分布を示す。
【
図6B】偏光方向がy軸方向である電磁波が導波路に伝達された場合の電場分布を示す。
【
図6C】偏光方向がy軸方向から11度回転した方向である電磁波が導波路に伝達された場合の電場分布を示す。
【
図7A】
図6Cの状態に対して位相が90度遅れた追加の電磁波が更に導波路に伝達された場合の電場分布を示す。
【
図7B】
図6Cの状態に対して位相が90度早い追加の電磁波が更に導波路に伝達された場合の電場分布を示す。
【
図8】本発明の第2実施形態による電磁波制御装置を示す。
【
図9】本発明の第3実施形態による電磁波制御装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0014】
(第1実施形態)
<電磁波制御装置の構成>
図1は、本発明の第1実施形態による電磁波制御装置10の構成を模式的に示す図である。電磁波制御装置10は、偏光調整部3と結合器5と導波路7を備える。電磁波制御装置10において、電磁波は、偏光調整部3を通過して結合器5に入射し、結合器5により導波路7に伝達(結合)されて、導波路7を伝搬する。電磁波制御装置10は、空間を伝搬する電磁波の偏光状態(例えば偏光方向)を制御することにより、導波路7を伝搬する電磁波の位相を制御する。電磁波制御装置10は、この位相制御を、制御対象の電磁波が導波路7に伝わる前に偏光調整部3において行う。なお、
図1及び他の各図において、xとyとzは、直交座標系における互いに直交するx軸とy軸とz軸(以下で単にx軸とy軸とz軸という)を示す。
【0015】
<偏光調整部の構成>
偏光調整部3は、空間に配置され、通過する電磁波の偏光状態を調整可能である。ここで、偏光状態は、直線偏光の電磁波の偏光方向であってよい。この場合、偏光調整部3は、電磁波の偏光方向を変えることができるように構成されている。偏光調整部3は、制御部2に制御されることにより、通過する電磁波の偏光状態を調整する。例えば、制御部2は、偏光調整部3による電磁波の偏光方向の変更量を制御する。なお、本明細書では、電磁波の電場ベクトルが振動する方向を、偏光方向という。
【0016】
一例では、
図1に示すように、偏光調整部3は、結合器5へ入射する電磁波が伝搬する空間に配置された1/2波長板3aと、1/2波長板3aの光軸C0を中心に1/2波長板3aを回転させる駆動装置3bとを備える。1/2波長板3aは、通過する直線偏光の電磁波の偏光方向を、当該電磁波の伝搬方向を向く軸回りに回転させる。偏光方向の当該回転の量は、駆動装置3bにより調整された1/2波長板3aの回転方向位置に応じた量となる。なお、光軸C0は、結合器5における後述の通過部5aの中心軸C1と同軸であってよい。
【0017】
1/2波長板3aは、例えば、外周面にギアが形成された枠3cの内周面に取り付けられている。当該ギアには、駆動ギア3dが噛み合っている。駆動ギア3dは、駆動装置3bとしてのステッピングモータに駆動される。ステッピングモータ3bは、制御部2から入力される制御信号としてのパルスの数に応じた量だけ駆動ギア3dを回転させることにより、1/2波長板3aを回転させる。
【0018】
なお、偏光調整部3は、上述の例に限定されず、通過する電磁波の偏光状態(例えば直線偏光の電磁波の偏光方向)を調整できる他の構成(例えば公知である任意の構成)を有するものであってもよい。
【0019】
<結合器の構成>
結合器5には、偏光調整部3を通過した電磁波が入射する。結合器5は、偏光調整部3からの電磁波を導波路7へ伝達(結合)する。結合器5は、導電材料で形成された導電体構造である。導電体構造5はアンテナとして機能してよい。導電体構造5には、偏光調整部3からの電磁波が通過する通過部5aが設けられている。通過部5aは、その一部又は全体が導電体構造5により区画される。通過部5aは、導電体構造5を貫通する貫通孔であってよい。貫通孔5aは細孔であってよい。通過部5aは、円柱形状であってよい。なお、通過部5aは、電磁波を透過させる材料で形成されたものであってもよい。
【0020】
通過部5aから導波路7に伝達(結合)させる対象とする電磁波の波長を、以下において対象波長という。本明細書において、結合器5に入射して結合器5により導波路7に伝達され導波路7を伝搬する電磁波は、対象波長を有する電磁波である。
【0021】
通過部5aの中心軸C1に直交する平面による通過部5aの断面における各方向の寸法(例えば円柱形状の通過部5aの直径)は、対象波長程度であってよい。当該寸法は、一例では、対象波長以下又は対象波長の数倍(例えば2倍又は3倍)以下であって対象波長の数分の一(例えば対象波長の1/2、1/5、又は1/8)以上であってよい。一例では、対象波長は、テラヘルツ波の波長である。テラヘルツ波の波長は、30μm以上であって3mm以下の範囲内の波長である。すなわち、テラヘルツ波の周波数は、0.1THz以上であって100THz程度以下の範囲内の周波数である。なお、対象波長は、どのような電磁波(例えば光波又は電波)の波長であってもよい。
【0022】
図2は、
図1のII-II矢視図であり、結合器5を示す。
図3は、結合器5と導波路7の斜視図である。
図3では、偏光調整部3の図示を省略している。通過部5aの中心軸C1の方向から見て、中心軸C1は、導電体構造5の中心に位置してよい。導電体構造5は、通過部5aの中心軸C1を含む対称面Ps(以下で単に対称面Psという)に関して面対称に形成されている。対称面Psは、
図2では、破線で示されており、この図の紙面と直交し、かつ、この図の左右方向(x軸方向)と直交する。
【0023】
偏光調整部3からの電磁波を結合器5により導波路7へ伝達ことができる程度に、結合器5と導波路7とは互いに近接している。より詳しくは、通過部5aと導波路7との三次元的距離(すなわち
図1の三次元のxyz座標系における距離)は、電磁波を伝達できる範囲内の距離(例えば対象波長程度)である。したがって、中心軸C1の方向における、通過部5a(導波路7側の貫通孔5aの開口)と導波路7(貫通孔5a側の端面)との間隔も、電磁波の対象波長と同程度であり、一例では、対象波長以下又は対象波長の数倍(例えば2倍又は3倍)以下であって対象波長の数分の一(例えば対象波長の1/2、1/5、又は1/8)以上であってよい。結合器5と導波路7との間には空間又は絶縁体が存在していてよい。
【0024】
結合器5としての導電体構造は、導波路7と反対側から入射して来た対象波長の電磁波が、共鳴した状態で通過部5aを通過するように構成されてよい。また、偏光調整部3から結合器5へ入射する電磁波の偏光状態(例えば直線偏光である当該電磁波の偏光方向)が変わっても、導電体構造5から導波路7への電磁波の伝達効率(結合効率)が、あまり変わらないように導電体構造5が構成されていてよい。また、偏光調整部3から導電体構造5へ入射する電磁波の偏光状態(例えば直線偏光である当該電磁波の偏光方向)が、結合器5(通過)を通過する時に変化しないように導電体構造5が構成されていてよい。
【0025】
このような導波路7は、通過部5aの中心軸C1に関して回転対称性(例えば3回以上の回転対称性)を有するように構成されていてよい。導電体構造5は、
図1と
図2のように、例えばブルズアイ(Bull’s eye)構造であってよい。
【0026】
ブルズアイ構造5は、板状の導電体構造(例えば金属板)であり、当該導電体構造5の表面(例えば導波路7と反対側の表面)に、同心円状の複数の溝5bが回折格子として形成されている。
図1~
図3において、ブルズアイ構造5は、円板状の金属板に同心円状の複数の溝5bが中心軸C1の方向に貫通したものであってもよい。ブルズアイ構造5では、電磁波の対象波長において、上記回折格子での共鳴により通過部5aを通過する対象波長の電磁波の透過特性が向上する。
【0027】
<導波路>
図4は、
図1のIV-IV矢視図であり、導波路7を示す。導波路7には、結合器5から伝達された電磁波が伝搬する。すなわち、導波路7には、結合器5の通過部5aを通過した電磁波が伝搬する。導波路7は、対象波長を有する電磁波を伝搬させるように構成されている。導波路7は、結合器5に関して偏光調整部3と反対側において、x軸方向における一方側から他方側へ(例えば細長く)延びている。導波路7は、通過部5aの中心軸C1を含む対称面Psに直交するように延びていてよい。
【0028】
結合器5から導波路7へ電磁波を伝達するには、結合器5と導波路7が存在することにより、局所的な電場の分布が必要である。これについて、導波路7において、通過部5aと対向する位置に局所的な電場が、通過部5aからの電磁波により発生する。この場合、結合器5と導波路7との位置関係の対称性を崩すこと等により、結合器5の入射面に入射する電磁波の偏光方向に拘わらず、結合器5から導波路7へ伝達される電磁波が同じ導波モードで導波路7を伝搬するように、結合器5と導波路7が構成されて互いに対して配置されている。
【0029】
通過部5aの中心軸C1の方向(
図4の例ではz軸方向)から見た場合に、互いに直交する方向を第1方向と第2方向とする。
図2の例では、第1方向は、x軸方向であり、第2方向は、y軸方向である。本実施形態によると、第1方向の一方側から他方側(例えば第1方向に)へ導波路7は延びている、導波路7の幅方向中央(y軸方向の中央)は、第2方向(
図4では正のy軸方向)において、中心軸C1から僅かにずれている。このずれの量は、対象波長と同程度(例えば対象波長の1/2又は1/5程度)の距離であり、一例では、対象波長以下又は対象波長の数倍(例えば2倍又は3倍)以下であって対象波長の数分の一(例えば対象波長の1/2、1/5、又は1/8)以上であってよい。中心軸C1の方向から見た場合に、
図4のように、導波路7と通過部5aとは、部分的に重なっていてよい。
【0030】
また、導波路7は、第1方向(
図4では正負のx軸方向)において、通過部5a又は中心軸C1の位置から(例えば細長く)延びている。本実施形態では、導波路7は、第1方向において、通過部5a又中心軸C1の位置から互いに反対側に延びている。導波路7は、第1方向に直線状に延びていてよい。このような導波路7は、通過部5aからの電磁波を、通過部5aの位置から互いに反対側(
図1の正負のx軸方向)に伝搬させる。
【0031】
導波路7は、一例では、ストリップライン7(マイクロストリップライン)であってよい。ストリップライン7は、例えば、
図1と
図3のように、裏面(
図1の下側の面)に導体箔(図示せず)が形成された誘電体基板6の表面に形成された線状の導体箔であってよい。別の例では、ストリップライン7は、裏面と表面に導体箔を形成した誘電体基板の内部に形成した線状の導体箔であってもよい。なお、誘電体基板(例えば
図1の誘電体基板6)には、中心軸C1と同軸であり円柱形の貫通孔(例えば
図1の誘電体基板6)が形成されており、この貫通孔の直径は、例えば通過部5a(貫通孔5a)の直径と同じである。
【0032】
(導波路における位相)
図1~
図4を参照して、結合器5により導波路7へ結合した電磁波の位相について説明する。導波路7において結合器5から電磁波が伝達される位置を基準位置Pr(後述の
図6Aなどを参照)という。すなわち、基準位置Prは、x軸方向の位置であって、導波路7が対称面Psと交差する位置である。また、x軸方向において、通過部5a(基準位置Pr)から同じ距離にある導波路7上の出力ポートをPort1とPort2とする。
【0033】
対称面Psと平行な第1の偏向方向(
図1のy軸方向)に直線偏光した電磁波が結合器5から導波路7に伝達された場合、導波路7において正のx軸方向へ伝搬する当該電磁波の位相と、導波路7において負のx軸方向へ伝搬する当該電磁波の位相とは、Port1とPort2では同じになる。この状態|a>は、次の式(1)で表される。式(1)において、aは、結合係数であり、複素数a=Ae
iαで表すことができる。Aとαは実数である。ωは電磁波の電場の角振動数であり、E
port1とE
port2は、それぞれPort1とPort2の電場を示す(以下同様)。
【0034】
【0035】
一方、対称面Psと直交する第2の偏向方向(
図1のx軸方向)に直線偏光した電磁波が結合器5から導波路7に伝達された場合、導波路7において正のx軸方向へ伝搬する電磁波の位相と、導波路7において負のx軸方向へ伝搬する電磁波の位相とは、Port1とPort2では逆になる。この状態|b>は、次の式(2)で表される。式(2)において、bは、結合係数であり、複素数b=Be
iβで表すことができる。Bとβは実数である。
【0036】
【0037】
ここで、結合器5へ入射する電磁波の偏光方向が、中心軸C1の方向に見た場合に、角度θだけ回転した状態|S>は、次の式(3)のように|a>と|b>の線形結合で表すことができる。
【0038】
【0039】
式(3)は、Port1とPort2とで、電磁波の位相が異なることを表わしている。このことは、
図5のように図示される。tanθは、偏光調整部3が電磁波の偏光方向を回転させることにより任意の実数をとることができるので、Port1とPort2との間で、-π≦φ≦πの範囲の位相差φを偏光方向の回転により付与できる。偏光方向の回転により、どれぐらい滑らかに位相差φが変化するかはαとβの値に依存し、導波路7と結合器5との距離及び結合効率や、対象波長などによって定まる。これらの値を適切に設定することでβ-α=π/2を達成できる。これにより、偏光方向の回転による位相差φの変化を更に滑らかにすることができる。この場合、Port1とPort2との間で電磁波の強度の差が無くなる。
【0040】
更に、β-α=π/2のときに、結合器5に入射する電磁波の偏光成分について、偏光調整部3に1/4波長板を使うなどしてx軸方向とy軸方向とで位相差±π/2だけずれた楕円偏光状態または円偏光状態で、電磁波が結合器5により導波路7に伝達させられたとすると、次の式(4)が与えられる。
【0041】
【0042】
ここで、偏光調整部3においてx軸方向、y軸方向の偏光成分を調整してx軸方向とy軸方向の強度をtanθ=A/Bとなるように設定することにより、次の式(5)が成り立つ。
【0043】
【0044】
したがって、結合器5から導波路7への入射時の電磁波の偏光状態によっては、Port1にだけ、若しくは、Port2にだけ電磁波を伝搬させることができる。
【0045】
(シミュレーション)
一例では、貫通孔5aの直径を100μmとし、導波路7としてのストリップライン7の幅と厚みをそれぞれ50μmと10μmとする。このストリップライン7を、ブルズアイ構造5における表面(すなわち、ストリップライン7側の貫通孔5aの開口)からz軸方向に35μmずらした位置に設ける。また、ストリップライン7の幅方向中央を、貫通孔5aの中心軸C1から正のy軸方向に50μmずらした。ブルズアイ構造5は、厚みが60μmの基板であり、同心円状の複数の溝5bのピッチ(周期)が200μmであり、溝5bの深さが20μmであるとする。このようなブルズアイ構造5が、入射してくる電磁波としての2THzのテラヘルツ波を導波路7に伝達することを想定する。
【0046】
この場合に、ストリップライン7を正負のx軸方向に伝搬する電磁波のz方向の電場振動をシミュレーションにより調べると、
図6A~
図6Cに示す結果が得られた。
【0047】
図6A~
図6Cは、ストリップライン7を、z軸方向と平行な方向から見た図であり、特定の時点におけるz方向における電場を表わしている。
図6A~
図6Cにおいて、ストリップライン7の左右方向中央は、結合器5から電磁波が伝達される基準位置Pr(x軸方向における中心軸C1の位置)である。
図6A~
図6Cにおいて、斜線部分は、電場が正のz方向に最も強くなっている領域を示し、網目部分は、電場が負のz方向に最も強くなっている領域を示す。
図6A~
図6Cから、電磁波は最低次の導波モード(y方向に節がない導波モード)で伝搬することが分かる。
【0048】
図6Aは、偏光方向(電場の振動方向)がx軸方向である電磁波が結合器5からストリップライン7に伝達された場合を示し、
図6Bは、偏光方向(電場の振動方向)がy軸方向である電磁波が結合器5からストリップライン7に伝達された場合を示す。
【0049】
x軸方向に直線偏光した電磁波が結合器5からストリップライン7に入射した場合には、
図6Aに示されるように、電場の分布が、基準位置Prを含むyz平面(上述の対称面Ps)に関して反対称になっている。すなわち、正負のx軸方向において基準位置Prから同じ距離の位置では、正のx軸方向に伝搬する電磁波と、負のx軸方向に伝搬する電磁波とで、その位相が互いに逆になっている。例えば、Port1とPort2とで電磁波の位相が互いに逆になっている。
【0050】
一方、y軸方向に直線偏光した電磁波が結合器5からストリップライン7に入射した場合には、
図6Bに示されるように、電場の分布が、基準位置Prを含むyz平面(上述の対称面Ps)に関して対称になっている。すなわち、正負のx軸方向において基準位置Prから同じ距離の位置では、正のx軸方向に伝搬する電磁波と、負のx軸方向に伝搬する電磁波とで、その位相が同じになっている。例えば、Port1とPort2とで電磁波の位相が同じになっている。
【0051】
なお、
図6Aと
図6Bとで、結合器5からの電磁波の結合効率(伝達効率)が異なっている。
【0052】
図6Cは、
図6Bの場合から、偏光方向がy軸方向から11度だけ回転した電磁波が結合器5からストリップライン7に伝達された場合を示す。この場合には、
図6Cのように、Port1とPort2とで、電磁波の位相差は90度になっている。すなわち、上述のβ-α=π/2が成り立っている状態が
図6Cに示されている。
【0053】
このように、偏光調整部3により電磁波の偏光方向を調整することにより、
図6A~
図6Cのように、Port1とPort2と間の電磁波の位相差を調整することができる。
【0054】
図6Cのように、Port1とPort2とで電磁波の位相差を90度に調整可能である。このようにPort1とPort2とで電磁波の位相差を90度となる状態において、すなわち、結合器5からストリップライン7に伝達される電磁波の偏光方向がβ-α=π/2を満たす方向である状態(
図6Cの例では、θ=11度の状態)において、当該状態を生じさせている第1の電磁波に対して、同じ対象波長を有し且つ結合器5での電磁波伝搬方向における位相が90度異なる第2の電磁波を、結合器5からストリップライン7に更に伝達すると、
図7A又は
図7Bの結果が得られる。このような第1及び第2の電磁波は、例えば、互いに90度の位相差を持つ左右回りの楕円偏光の電磁波を重ね合わせることで実現されてよいが、これに限定されない。
【0055】
図7Aと
図7Bは、ストリップライン7を、z軸方向と平行な方向から見た図であり、特定の時点におけるz方向における電場を表わしている。
図7Aと
図7Bにおいて、ストリップライン7の左右方向中央は、結合器5から電磁波が伝達される基準位置Prである。
図7Aと
図7Bにおいて、斜線部分は、z方向に振動する電場の強さ(絶対値)が所定値よりも大きくなっている領域を示す。
【0056】
図6Cの状態を得ている特定時点の第1の電磁波に対して、第2の電磁波の位相を当該特定時点に対して90度遅らせた場合には、
図7Aの結果が得られる。これにより、
図7Aのように、基準位置Prから負のx軸方向には電磁波が伝搬するが、基準位置Prから正のx軸方向には電磁波は伝搬しない。すなわち、上述の第1及び第2の電磁波が正のx軸方向にストリップライン7を伝搬する時に打消し合うが、負のx軸方向にストリップライン7を伝搬する時に強め合う。
【0057】
一方、
図6Cの状態を得ている特定時点の第1の電磁波に対して、第2の電磁波の位相を当該特定時点に対して90度早めた場合には、
図7Bの結果が得られる。これにより、
図7Bのように、基準位置Prから正のx軸方向には電磁波が伝搬するが、基準位置Prから負のx軸方向には電磁波は伝搬しない。すなわち、上述の第1及び第2の電磁波が負のx軸方向にストリップライン7を伝搬する時に打消し合うが、正のx軸方向にストリップライン7を伝搬する時に強め合う。
【0058】
このように、第1及び第2の電磁波を上述のように結合器5に入射させて結合器5から導波路7へ伝達させることにより、1方向(正又は負のx軸方向)にのみ電磁波を伝搬させることができる。
【0059】
以上のように
図6A~
図7Bを参照して説明した内容は、ストリップライン以外の導波路7にも当てはまり、ブルズアイ構造以外の結合器5(導電体構造)にも当てはまる。
【0060】
(第1実施形態の効果)
本実施形態によると、通過部5aの中心軸C1の方向から見た場合に、導波路7の幅方向中央は、結合器5の通過部5aの中心軸C1から僅かにずれている。この構成により、通過部5aから導波路7へ伝達(結合)されて導波路7を伝搬する電磁波の位相は、通過部5aから導波路7へ伝達される時の電磁波の偏光状態に応じて変化する。したがって、結合器5に入射する前の段階において、電磁波の偏光状態を調整することにより、導波路7における電磁波の位相を制御することができる。このように、結合器5と導波路7へ伝搬する前の電磁波の偏光状態を調整することで、導波路7における電磁波の位相を制御できる。よって、導波路7に位相変調器を設けなくても、導波路7を伝搬する電磁波の位相を制御できる。
【0061】
本実施形態による電磁波制御装置10において、結合器5と導波路7を合わせた構造をフィルム状の微小な構造に形成することができる。例えば、結合器5と導波路7を合わせた構造は、x軸方向とy軸方向の各々における寸法を10mm程度にすることができ、z軸方向の寸法を5μm程度以上数十μm程度(例えば30μm)以下にすることができる。このような場合、
図1において、結合器5と導波路7は、この図と違って偏光調整部3に対して微小な構造となってよい。このような結合器5と導波路7は、例えばメタマテリアルにより作製されたものであってもよい。
【0062】
電磁波制御装置10は、空中を伝搬する電磁波を導波路7へ伝達させ、導波路7における当該電磁波の位相を制御することに用いることができる。例えば、導波路7を伝搬する信号(電磁波)を用いてミキシング、変調、復調などの処理を行うことに、電磁波制御装置10を適用可能である。すなわち、空中を伝達して来た電磁波を、偏光調整部3と結合器5を介して受信して導波路7へ伝達させ、導波路7を伝搬する当該電磁波(信号)を用いてミキシング、変調、復調、同期検波などの処理を行うことができる。この時、当該信号の位相の調整が必要となるが、この位相の調整は、偏光調整部3により、通過する電磁波の偏光状態を調整することにより行うことができる。
【0063】
一例では、電磁波制御装置10は、ロックインアンプにおける同期検波回路に適用可能である。この場合、参照信号として空中を伝搬する電磁波を、偏光調整部3と結合器5を介し導波路7へ伝達し、導波路7へ伝達した当該参照信号を(例えば方形波に調整した後)、導波路7とは異なる経路からの測定信号に乗算することにより、参照信号と同期した成分のみを有する測定信号を得ることができる。この場合、偏光調整部3により参照信号の偏光状態を調整することにより、導波路7における参照信号の位相を適切な位相に制御できる。
【0064】
(第2実施形態)
図8は、
図4に対応する図であるが、本発明の第2実施形態による電磁波制御装置10を示す。第2実施形態において、以下で説明しない点は、上述した第1実施形態の場合と同じであってよい。
【0065】
第2実施形態によると、通過部5aの中心軸C1の方向から見た場合に、第2方向(
図8ではy軸方向)において中心軸C1を挟むように、2つの導波路7が設けられている。すなわち、第1の導波路7の幅方向中央は、中心軸C1から正のy軸方向にずれており、第2の導波路7の幅方向中央は、中心軸C1から負のy軸方向にずれている。第1および第2の導波路7の各幅方向中央が、このように中心軸C1からy軸方向にずれている距離は、上述と同じである。
図8の例では、第1および第2の導波路7は、中心軸C1を含み対称面Psと直交する平面に関して互いに面対称に形成されていてよい。
【0066】
図8のように、第1の導波路7において基準位置Pr(この図の対称面Ps)から同じ距離にある出力ポートをそれぞれPort1とPort2とし、第2の導波路7において基準位置Pr(この図の対称面Ps)から同じ距離にある出力ポートをそれぞれPort3とPort4とする。
【0067】
この場合、x軸方向に直線偏光した電磁波が結合器5から導波路7に入射した場合には、Port1とPort2とで電磁波の位相が互いに逆になり、Port3とPort4とで電磁波の位相が互いに逆になるが、Port1とPort3とで電磁波の位相が同じになり、Port2とPort4とで電磁波の位相が同じになる。
【0068】
一方、y軸方向に直線偏光した電磁波が結合器5から導波路7に入射した場合には、Port1とPort2とで電磁波の位相が同じになり、Port3とPort4とで電磁波の位相が同じになるが、Port1とPort3とで電磁波の位相が互いに逆になり、Port2とPort4とで電磁波の位相が互いに逆になる。
【0069】
(第3実施形態)
図9は、
図4に対応する図であるが、本発明の第3実施形態による電磁波制御装置10を示す。第3実施形態において、以下で説明しない点は、上述した第2実施形態の場合と同じであってよい。
【0070】
第3実施形態では、第1および第2の導波路7は、対称面Psと直交しているが、x軸方向に対称面Psから離れた領域における両導波路7同士のy軸方向間隔は、対称面Psとその近傍における両導波路7同士のy軸方向間隔よりも大きくなっている。
【0071】
第3実施形態において、x軸方向に直線偏光した電磁波が結合器5から導波路7に入射した場合におけるPort1~Port4での電磁波の位相関係は、第2実施形態の場合と同じである。第3実施形態において、y軸方向に直線偏光した電磁波が結合器5から導波路7に入射した場合におけるPort1~Port4での電磁波の位相関係も、第2実施形態の場合と同じである。
【0072】
本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、本発明の実施形態による電磁波制御装置10は、上述した複数の事項の全て有していなくてもよく、上述した複数の事項のうち一部のみを有していてもよい。
【0073】
また、以下の変更例1~3のいずれかを採用してもよいし、変更例1~3の2つ以上を任意に組み合わせて採用してもよい。この場合、以下で述べない点は、上述と同じであってよい。
【0074】
(変更例1)
結合器5としての導電体構造は、通過部5aの中心軸C1に関して回転対称性を有する他の構造であってもよい。例えば、
図10A又は
図10Bのように導電体構造5が形成されてもよい。
図10A又は
図10Bは、通過部5aの中心軸C1の方向に見た導電体構造5を示す。
図10A又は
図10Bのように、導電体構造5は、導体材料により形成された複数の導体部5cを有している。これらの各図において、複数の導体部5cは、中心軸C1に関して互いに回転対称に形成されている。なお、例えば、複数の導体部5cは、電磁波を透過する材質の支持体(例えば基板)上に形成されていてよい。なお、
図10A又は
図10Bは、導電体構造5はメタマテリアルにより作製されたものであってもよい。
【0075】
(変更例2)
電磁波制御装置10は、上述した結合器5と導波路7を備える構造を、電磁波伝達装置として製造又は利用してもよい。この場合、電磁波伝達装置は、偏光調整部3を有していなくてよい。例えば、導波路7のPort1とPort2から基準位置Prに伝搬して来た電磁波が、通過部5aを通過して結合部5から導波路7と反対側へ放射されてもよい。この場合、電磁波伝達装置は、Port1とPort2での位相に応じた偏光状態で電磁波を結合器7から伝達(例えば空中へ放射)する。例えば、Port1とPort2に入射する電磁波の位相を適宜の手段で調整することで、結合器7から放射される電磁波の偏光状態(例えば直線偏光である電磁波の偏光方向)を制御できる。あるいは、結合器7から放射される電磁波の偏光状態(例えば直線偏光である電磁波の偏光方向)からPort1とPort2での位相(例えば両者の位相差)を推定してもよい。
【0076】
(変更例3)
導波路7は、第1方向(x軸方向)において通過部5aと同じ位置(例えば基準位置Pr)又はその近傍から、正負のx軸方向のうち一方の側にのみ延びていてもよい。
図11は、
図4に対応する図であるが、本変更例3よる電磁波制御装置10を示す。変更例3では、例えば
図11のように、2つの導波路7が、第1方向(x軸方向)において通過部5aと同じ位置又はその近傍から、正負のx軸方向のうち一方側(
図11では正のx軸方向)にのみ延びていてよい。この場合、他の構成は、上述した第2実施形態又は第3実施形態の場合と同じであってよい。
【符号の説明】
【0077】
2 制御部、3 偏光調整部、3a 1/2波長板、3b 駆動装置、3c 枠、
3d 駆動ギア、5 結合器(導電体構造、ブルズアイ構造)、5a 通過部(貫通孔)、5b 溝、5c 導体部、6 誘電体基板、6a 貫通孔、7 導波路(ストリップライン)、10 電磁波制御装置、C0 光軸、C1 中心軸、Ps 対称面、Pr 基準位置