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特許7442796遠心バレル研磨装置及び遠心バレル研磨方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】遠心バレル研磨装置及び遠心バレル研磨方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 31/033 20060101AFI20240227BHJP
【FI】
B24B31/033
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020049218
(22)【出願日】2020-03-19
(65)【公開番号】P2021146451
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】396019631
【氏名又は名称】株式会社チップトン
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三井 尚彦
【審査官】マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-018943(JP,A)
【文献】特開昭53-140484(JP,A)
【文献】特開平08-221133(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能に設けたターレットと、
前記ターレットにおける回転中心から偏心した位置に配置され、前記ターレットに対して相対回転可能な複数のバレル槽と、
前記バレル槽を遊星回転させるモータと、
前記モータの回転数を制御するインバータと、
制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記モータの加減速開始から加減速完了までに要する加減速完了時間と、加減速完了時の加減速完了周波数と、複数の加減速経過時間とを記憶する記憶部と、
前記モータの加減速が開始してから、前記加減速完了時間よりも短い前記複数の加減速経過時間が経過する毎に、次の前記加減速経過時間に対応する制御周波数を前記インバータに指示する指令部と、
前記加減速完了時間と前記加減速完了周波数と前記複数の加減速経過時間とに基づいて、複数の前記制御周波数を演算する演算部とを有している遠心バレル研磨装置。
【請求項2】
前記モータが、公転用モータと自転用モータとを含み、
前記インバータが、公転用インバータと自転用インバータとを含んでいる請求項1に記載の遠心バレル研磨装置。
【請求項3】
回転可能に設けたターレットと、
前記ターレットにおける回転中心から偏心した位置に配置され、前記ターレットに対して相対回転可能な複数のバレル槽と、
前記バレル槽を遊星回転させるモータと、
前記モータの回転数を制御するインバータと、
前記モータの加減速開始から加減速完了までに要する加減速完了時間と、加減速完了時の加減速完了周波数と、前記加減速完了時間よりも短い複数の加減速経過時間とを記憶する記憶部を設けた上で、
前記加減速完了時間と前記加減速完了周波数と前記複数の加減速経過時間とに基づいて、複数の制御周波数を演算し、
前記モータの加減速が開始してから、前記複数の加減速経過時間が経過する毎に、次の前記加減速経過時間に対応する複数の前記制御周波数を前記インバータに指示する遠心バレル研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心バレル研磨装置及び遠心バレル研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、モータによって回転する回転板と、回転板の回転中心から偏心した位置に自転するように設けた複数のバレル槽とを備え、バレル槽を遊星回転させることによって研磨を行う遠心バレル研磨機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-036778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
停止状態のバレル槽を加速して等速回転させ、等速回転しているバレル槽を停止させる方法としては、モータの回転数を制御するインバータに、加減速時間の値と加減速基準周波数の値を指示することができる。加減速時間は、バレル槽を回転停止状態と等速回転状態との間を移行させるための所要時間、又は等速回転状態から異なる等速回転状態との間を移行させるための所要時間である。
【0005】
この方法では、インバータが加減速中の加速度に自動で補正をかけるため、加減速中の加速度が安定せず、加減速基準周波数に到達するまでに実際に要する時間にばらつきが生じ、ワークの研磨品質が安定しなくなる。また、所定より早く加減速基準周波数に到達した場合は、ワークに欠けが生じたりする。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、モータの加減速中における加速度を安定させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明に係る遠心バレル研磨装置は、
回転可能に設けたターレットと、
前記ターレットにおける回転中心から偏心した位置に配置され、前記ターレットに対して相対回転可能な複数のバレル槽と、
前記バレル槽を遊星回転させるモータと、
前記モータの回転数を制御するインバータと、
制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記モータの加減速開始から加減速完了までに要する加減速完了時間と、加減速完了時の加減速完了周波数と、複数の加減速経過時間とを記憶する記憶部と、
前記モータの加減速が開始してから、前記加減速完了時間よりも短い前記複数の加減速経過時間が経過する毎に、次の前記加減速経過時間に対応する制御周波数を前記インバータに指示する指令部と、
前記加減速完了時間と前記加減速完了周波数と前記複数の加減速経過時間とに基づいて、複数の前記制御周波数を演算する演算部とを有している。
【0008】
第2の発明に係る遠心バレル研磨方法は、
回転可能に設けたターレットと、
前記ターレットにおける回転中心から偏心した位置に配置され、前記ターレットに対して相対回転可能な複数のバレル槽と、
前記バレル槽を遊星回転させるモータと、
前記モータの回転数を制御するインバータと、
前記モータの加減速開始から加減速完了までに要する加減速完了時間と、加減速完了時の加減速完了周波数と、前記加減速完了時間よりも短い複数の加減速経過時間とを記憶する記憶部を設けた上で、
前記加減速完了時間と前記加減速完了周波数と前記複数の加減速経過時間とに基づいて、複数の制御周波数を演算し、
前記モータの加減速が開始してから、前記複数の加減速経過時間が経過する毎に、次の前記加減速経過時間に対応する複数の制御周波数を前記インバータに指示する。
【発明の効果】
【0009】
モータの加減速を開始するときには、複数の加減速経過時間のうち最も短い加減速経過時間と対応する制御周波数をインバータに指示する。その後、加減速経過時間が経過する毎に、次の加減速経過時間と対応する制御周波数をインバータに指示する、という制御を繰り返す。モータは、インバータに指示された制御周波数と対応する回転数になるまで加減速する。加減速完了時間に達すると、モータの加減速制御が完了する。インバータに次の制御周波数が指示される時点でインバータがモータを制御している周波数と、指示される次の制御周波数との差は、加減速完了時間と対応する制御周波数よりも小さい。インバータがモータの回転数を制御する時間の間隔は、加減速完了時間よりも短い。つまり、インバータによるモータの回転数の制御は、加減速の開始から完了までの所要時間を小刻みに分けて、各時間毎に制御周波数を段階的に増加又は減少させる。これにより、モータの加減速中における加速度を安定させることができる。また、複数の制御周波数を入力しなくても、制御周波数をインバータへ指示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1の遠心バレル研磨装置の概略正面図
図2】遠心バレル研磨工程において公転用インバータと自転用インバータによる周波数の制御形態をあらわすグラフ
図3】遠心バレル研磨装置の構成をあらわすブロック図
図4】最初の10秒間の加速過程において制御周波数が階段状に変動する様子を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0012】
第1及び第2の発明は、前記モータが、公転用モータと自転用モータとを含み、前記インバータが、公転用インバータと自転用インバータとを含んでいてもよい。この構成によれば、ターレットとバレル槽を個別に回転させる場合にも適用することができる。
【0013】
<実施例1>
以下、本発明を具体化した実施例1を図1図3を参照して説明する。本実施例の遠心バレル研磨装置は、図1に示すように、水平方向の公転軸11を中心として回転可能に設けたターレット10と、ターレット10における回転中心(公転軸11)から偏心した位置に配置された複数のバレル槽12とを有する。ターレット10は、公転用モータ14(図3参照)によって回転駆動される。バレル槽12は、自転用モータ15(図3参照)によって回転駆動される。バレル槽12の回転は、ターレット10の回転とは独立して行われる。バレル槽12は、ターレット10と一体となって公転しながら、ターレット10に対して相対的自転することにより、遊星回転する。遊星回転するバレル槽12内では、ワークに対する研磨が行われる。
【0014】
遠心バレル研磨装置は、図3に示すように、公転用モータ14の回転数を制御する公転用インバータ16と、自転用モータ15の回転数を制御する自転用インバータ17と、公転用インバータ16及び自転用インバータ17に対しモータ制御用の周波数を指示する制御装置20とを備えている。
【0015】
公転用インバータ16は、PLC(programmable logic controller)を用いたシーケンス制御によって、公転用モータ14用の給電回路の周波数を変更し、公転用モータ14の回転数を制御する。自転用インバータ17も、公転用インバータ16と同じくPLCを用いたシーケンス制御によって、自転用モータ15用の給電回路の周波数を変更し、自転用モータ15の回転数を制御する。
【0016】
制御装置20は、記憶部21と演算部22と指令部23とを備えている。制御装置20には入力装置24が接続されている。記憶部21は、操作パネル等の入力装置24における入力操作により、公転用モータ14の加減速完了時間と、自転用モータ15の加減速完了時間と、公転用モータ14の加減速完了周波数と、自転用モータ15の加減速完了周波数と、公転用モータ14の複数の加減速経過時間と、自転用モータ15の複数の加減速経過時間とを記憶する。
【0017】
加減速完了時間は、各モータ14,15を停止状態から等速回転状態まで加速させるために要する時間と、各モータ14,15を等速回転状態から停止状態へ減速させるために要する時間である。加減速完了周波数は、各モータ14,15の加減速を完了させるときの周波数である。複数の加減速経過時間は、各モータ14,15の加減速完了時間よりも短い時間であり、各モータ14,15の加減速が開始してから経過した時間を示す。複数の加減速経過時間の間隔は、一定でもよく、ランダムでもよい。また、加減速経過時間は、毎回、入力するのではなく、固定された所定の値を、予め記憶部21に記憶させておいてもよい。
【0018】
演算部22は、記憶部21に記憶されている各モータ14,15の加減速完了時間と、各モータ14,15の加減速完了周波数と、各モータ14,15の加減速経過時間に基づき、各加減速経過時間に対応する制御周波数を演算する。演算された制御周波数は、記憶部21に記憶させておくことができる。入力装置24における入力操作により、各モータ14,15の加減速完了時間と対応する制御周波数と、各モータ14,15の複数の加減速経過時間と対応する複数の制御周波数とを記憶する。各モータ14,15の加速中における制御周波数は、加減速経過時間が短いほど低く、加減速経過時間が長くなるほど高くなる。各モータ14,15の減速中における制御周波数は、加減速経過時間が短いほど高く、加減速経過時間が長くなるほど低くなる。
【0019】
指令部23は、記憶部21に記憶されている制御周波数を、各インバータ16,17に指示する。各モータ14,15の加減速を開始する際に、指令部23は、開始時の直近の加減速経過時間(最も短い加減速経過時間)と対応する制御周波数を、各インバータ16,17に指示する。各インバータ16,17は、指示された制御周波数で各モータ14,15の回転数を制御する。各モータ14,15の加減速が開始した後は、記憶部21で記憶されている各加減速経過時間が経過する毎に、次の加減速経過時間と対応する制御周波数を各インバータ16,17に指示する。最長の加減速経過時間が経過した時には、加減速完了周波数を各インバータ16,17に指示する。
【0020】
次に、遠心バレル研磨装置による研磨工程の一例を説明する。図2に示すように、運転(バレル研磨)を開始してから10分間は、ターレット10は回転せずに、バレル槽12の逆転方向の自転だけによる研磨が行われる。バレル槽12の自転のみによる研磨工程では、停止状態の自転用モータ15が、最初の10秒間で加速し、その後、9分40秒に亘って等速回転し、最後の10秒間で減速して停止する。
【0021】
【表1】
【0022】
表1は、最初の10秒間の加速過程における運転時間(加減速経過時間)の経過と、自転用モータ15の自転回転数と、自転用インバータ17の制御周波数との関係を示す。運転開始(研磨開始)時に、指令部23は、自転用インバータ17に対し、最短の加減速経過時間(1秒)と対応する制御周波数(1Hz)で制御するように指示を出す。停止状態の自転用モータ15は、自転用インバータ17による1Hzの制御周波数により、1秒間で回転数が3rpmになるように加速される。図4は、最初の10秒間の加速過程において制御周波数が階段状に変動する様子を示す。
【0023】
運転開始後、1秒が経過すると、指令部23は、自転用インバータ17に対し、次の加減速経過時間(2秒)と対応する制御周波数(2Hz)で制御するように指示を出す。3rpmまで加速した自転用モータ15は、自転用インバータ17による2Hzの制御周波数により、1秒間で回転数が6rpmになるように加速される。以降、1秒間隔の加減速経過時間が経過する毎に、指令部23から自転用インバータ17に制御周波数の指示が出され、自転用モータ15の回転数が上昇していく。
【0024】
自転用インバータ17による周波数の制御は、1秒という短い間隔で複数回に分けて実行されるので、各回の自転用インバータ17による制御の精度が高い。したがって、自転用モータ15の回転数とバレル槽12の自転速度は、高い精度で加速される。運転開始から加減速完了時間である10秒が経過すると、指令部23は、自転用インバータ17に対し、自転用モータ15を30rpmで等速回転させるように、加減速完了時間(10秒)と対応する加減速完了周波数(10Hz)を維持する指示を出す。9分40秒に亘って等速回転した後、自転用モータ15は減速を開始する。
【0025】
【表2】
【0026】
表2は、バレル槽12の自転のみによる研磨の減速過程における運転時間(加減速経過時間)の経過と、自転用モータ15の自転回転数と、自転用インバータ17の制御周波数との関係を示す。減速開始時に、指令部23は、自転用インバータ17に対し、最短の加減速経過時間(9分51秒)と対応する制御周波数(9Hz)で制御するように指示を出す。30rpmで回転していた自転用モータ15は、自転用インバータ17による9Hzの制御周波数により、1秒間で回転数が27rpmになるように減速される。
【0027】
減速開始後、1秒が経過すると、指令部23は、自転用インバータ17に対し、次の加減速経過時間(9分52秒)と対応する制御周波数(8Hz)で制御するように指示を出す。27rpmまで減速した自転用モータ15は、自転用インバータ17による8Hzの制御周波数により、1秒間で回転数が24rpmになるように減速される。以降、1秒間隔の加減速経過時間が経過する毎に、指令部23から自転用インバータ17に制御周波数の指示が出され、自転用モータ15の回転数が下降していく。
【0028】
自転用インバータ17による周波数の制御は、1秒という短い間隔で複数回に分けて実行されるので、各回の自転用インバータ17による制御の精度が高い。したがって、自転用モータ15の回転数とバレル槽12の自転速度は、高い精度で減速される。減速開始から9秒が経過すると、指令部23は、自転用インバータ17に対し、加減速完了時間(10分00秒)と対応する加減速完了周波数(0Hz)で制御するよう指示を出す。3rpmまで減速した自転用モータ15は、自転用インバータ17による0Hzの制御周波数により、1秒間で停止するように減速される。
【0029】
運転開始から10分00秒が経過すると、バレル槽12の自転のみによる研磨が終了し、ターレット10を正転方向へ回転させると同時に、バレル槽12を正転方向へ自転させ、バレル槽12を遊星回転させることによる研磨が開始する。バレル槽12の遊星回転による研磨工程では、停止状態の公転用モータ14と自転用モータ15が、最初の10秒間で加速し、その後、9分40秒に亘って等速回転し、最後の10秒間で減速して停止する。
【0030】
【表3】
【0031】
表3は、バレル槽12の遊星回転による研磨の加速過程における運転時間(加減速経過時間)の経過と、自転用モータ15の自転回転数と、自転用インバータ17の制御周波数と、公転用モータ14の公転回転数と、公転用インバータ16の制御周波数との関係を示す。指令部23から自転用インバータ17への指示形態と、自転用インバータ17の制御による自転用モータ15の加速形態は、バレル槽12の自転のみで研磨を行う場合の加速形態と同じであるから、説明は省略する。
【0032】
加速時における指令部23から公転用インバータ16への指示形態については、各加減速経過時間における制御周波数の値が自転用インバータ17と異なる以外は、自転用インバータ17の場合と同じである。また、公転用インバータ16の制御による公転用モータ14の加速形態についても、各加減速経過時間における公転用モータ14の回転数の値が自転用モータ15と異なる以外は、自転用モータ15の加速形態と同じである。よって、詳細な説明は省略する。
【0033】
【表4】
【0034】
表4は、バレル槽12の遊星回転による研磨の減速過程における運転時間(加減速経過時間)の経過と、自転用モータ15の自転回転数と、自転用インバータ17の制御周波数と、公転用モータ14の公転回転数と、公転用インバータ16の制御周波数との関係を示す。指令部23から自転用インバータ17への指示形態と、自転用インバータ17の制御による自転用モータ15の減速形態は、バレル槽12の自転のみで研磨を行う場合の減速形態と同じであるから、説明は省略する。
【0035】
減速時における指令部23から公転用インバータ16への指示形態については、各加減速経過時間における制御周波数の値が自転用インバータ17と異なる以外は、自転用インバータ17の場合と同じである。また、公転用インバータ16の制御による公転用モータ14の減速形態についても、各加減速経過時間における公転用モータ14の回転数の値が自転用モータ15と異なる以外は、自転用モータ15の減速形態と同じである。よって、詳細な説明は省略する。図2のグラフに示すように、最初にバレル槽12の自転だけを行うようにすれば、ワークの微妙なバリを除去しておくことができ、予めバリを除去しておくことによって、その後のバレル槽12を自公転(遊星回転)させて研磨を行う際に、ワークに傷が付き難くなる。
【0036】
本実施例の遠心バレル研磨装置は、回転可能に設けたターレット10と、ターレット10を回転させる公転用モータ14と、複数のバレル槽12と、バレル槽12を自転させる自転用モータ15と、公転用インバータ16と、自転用インバータ17と、制御装置20とを備える。複数のバレル槽12は、ターレット10における回転中心から偏心した位置に配置され、ターレット10に対して相対回転可能である。公転用モータ14と自転用モータ15は、複数のバレル槽12を遊星回転させる。公転用インバータ16は、公転用モータ14の回転数を制御する。自転用インバータ17は、自転用モータ15の回転数を制御する。
【0037】
制御装置20は、記憶部21と、演算部22と、指令部23とを備えている。記憶部21は、公転用モータ14の停止状態と等速運転状態との間の移行を完了させる加減速完了時間、即ち、公転用モータ14の加減速開始から加減速完了までに要する加減速完了時間と、自転用モータ15の停止状態と等速運転状態との間の移行を完了させる加減速完了時間、即ち、自転用モータ15の加減速開始から加減速完了までに要する加減速完了時間を記憶する。記憶部21は、公転用モータ14の加減速完了時間と対応する加減速完了周波数、即ち加減速が完了するときの周波数と、公転用モータ14の加減速完了時間よりも短い複数の加減速経過時間を記憶する。記憶部21は、自転用モータ15の加減速完了時間と対応する加減速完了周波数、即ち加減速が完了するときの周波数と、自転用モータ15の加減速完了時間よりも短い複数の加減速経過時間を記憶する。
【0038】
演算部22は、公転用モータ14の加減速完了時間と加減速完了周波数と複数の加減速経過時間とに基づき、複数の加減速経過時間と対応する複数の制御周波数を演算する。演算部22は、自転用モータ15の加減速完了時間と加減速完了周波数と複数の加減速経過時間とに基づき、複数の加減速経過時間と対応する複数の制御周波数を演算する。演算部22で演算された制御周波数は、記憶部21に記憶される。指令部23は、公転用モータ14の加減速が開始してから複数の加減速経過時間が経過する毎に、次の加減速経過時間に対応する制御周波数を公転用インバータ16に指示する。指令部23は、自転用モータ15の加減速が開始してから複数の加減速経過時間が経過する毎に、次の加減速経過時間に対応する制御周波数を転用インバータ17に指示する。
【0039】
公転用モータ14の加減速を開始するときには、公転用モータ14に関する複数の加減速経過時間のうち最も短い加減速経過時間と対応する制御周波数を公転用インバータ16に指示する。その後、加減速経過時間が経過する毎に、次の加減速経過時間と対応する制御周波数を公転用インバータ16に指示する、という制御を繰り返す。公転用モータ14は、公転用インバータ16に指示された制御周波数と対応する回転数になるまで加減速する。加減速完了時間に達すると、公転用モータ14の加減速制御が完了する。
【0040】
自転用モータ15の加減速を開始するときには、自転用モータ15に関する複数の加減速経過時間のうち最も短い加減速経過時間と対応する制御周波数を自転用インバータ17に指示する。その後、加減速経過時間が経過する毎に、次の加減速経過時間と対応する制御周波数を自転用インバータ17に指示する、という制御を繰り返す。自転用モータ15は、自転用インバータ17に指示された制御周波数と対応する回転数になるまで加減速する。加減速完了時間に達すると、自転用モータ15の加減速制御が完了する。
【0041】
公転用インバータ16に次の制御周波数が指示される時点で公転用インバータ16が公転用モータ14を制御している周波数と、指示される次の制御周波数との差は、加減速完了時間と対応する加減速完了周波数よりも小さい。公転用インバータ16が公転用モータ14の回転数を制御する時間の間隔は、加減速完了時間よりも短い。つまり、公転用インバータ16による公転用モータ14の回転数の制御は、加減速の開始から完了までの所要時間を小刻みに分けて、各時間毎に制御周波数を段階的に増加又は減少させる。これにより、公転用モータ14の加減速中における加速度を安定させることができる。
【0042】
自転用インバータ17に次の制御周波数が指示される時点で自転用インバータ17が自転用モータ15を制御している周波数と、指示される次の制御周波数との差は、加減速完了時間と対応する加減速完了周波数よりも小さい。自転用インバータ17が自転用モータ15の回転数を制御する時間の間隔は、加減速完了時間よりも短い。つまり、自転用インバータ17による自転用モータ15の回転数の制御は、加減速の開始から完了までの所要時間を小刻みに分けて、各時間毎に制御周波数を増加又は減少させる。これにより、自転用モータ15の加減速中における加速度を安定させることができる。
【0043】
記憶部21は、加減速完了時の加減速完了周波数と、複数の加減速経過時間を記憶し、制御装置20は、加減速完了時間と加減速完了周波数と複数の加減速経過時間とに基づいて、複数の制御周波数を演算する演算部22を備えている。この構成によれば、複数の制御周波数を入力しなくても、制御周波数をインバータ16,17へ指示することができる。
【0044】
公転用インバータ16への制御周波数の指示と、自転用インバータ17への制御周波数の指示は、PLC(プログラマブルロジックコントローラ)を用いたシーケンス制御によって、個別に行われる。PLCを用いたシーケンス制御は、電磁リレーを用いたシーケンス制御によって制御を行う場合に比べると、シーケンス制御に必要な装置の構造を簡素化することができる。
【0045】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
インバータへの制御周波数の入力は、シーケンス制御以外の形態で行ってもよい。
1つのモータでターレットの回転とバレル槽の回転を連動させるバレル研磨装置にも適用できる。
記憶部に、加減速完了時間と加減速完了周波数と複数の制御周波数とを記憶させておき、演算部が、加減速完了時間と加減速完了周波数と複数の制御周波数とに基づいて、複数の加減速経過時間を演算するようにしてもよい。
加減速経過時間は、1秒刻みに限らず、0.1秒刻みや0.01秒刻み等、任意の間隔で設定してもよい。また、時間の間隔は、等間隔でなくてもよい。加減速経過時間の間隔を短くするほど、加速度が安定する。
演算により得られた制御周波数のうち、ワークに欠け等の不具合を生じさせる虞のある周波数に関しては、その制御周波数を飛ばしてもよい。
【符号の説明】
【0046】
10…ターレット
12…バレル槽
14…公転用モータ(モータ)
15…自転用モータ(モータ)
16…公転用インバータ(インバータ)
17…自転用インバータ(インバータ)
20…制御装置
21…記憶部
22…演算部
23…指令部
図1
図2
図3
図4