(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】砥粒検査方法および砥粒検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 33/40 20060101AFI20240227BHJP
G01B 11/02 20060101ALI20240227BHJP
G01B 11/24 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
G01N33/40
G01B11/02 H
G01B11/24 K
(21)【出願番号】P 2020057697
(22)【出願日】2020-03-27
【審査請求日】2022-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000150604
【氏名又は名称】株式会社ナガセインテグレックス
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 幸泰
(72)【発明者】
【氏名】板津 武志
【審査官】西浦 昌哉
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/230636(WO,A1)
【文献】特開2014-137367(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0151360(US,A1)
【文献】特開2001-272328(JP,A)
【文献】特開2013-002810(JP,A)
【文献】坂口 彰浩 他,画像処理を用いたダイヤモンド砥粒の形状分類に関する研究-第1報:砥粒面正常の定量的評価とその圧壊強度-,砥粒加工学会誌,日本,2018年03月01日,Vol.62/No.3,p.154-160
【文献】坂口 彰浩 他,画像処理を用いたダイヤモンド砥粒の形状分類に関する研究-第2報:ディープラーニング(CNN)を用いた分類と圧壊強度-,砥粒加工学会誌,2019年09月01日,Vol.63/No.9,p.464-469
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/00-33/46
G01N 15/00-15/14
B24D 3/00-99/00
G06T 1/00- 7/90
G06V 10/00-20/90
G06V 40/16
G06V 40/20
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転砥石に用いられる砥粒を透明板上に載置し、その透明板の表裏から砥粒を撮影し、その砥粒の表裏の画像データから
前記砥粒の形状および大きさを判別し、判別した前記砥粒の形状および大きさを分級し、分級した各グループの砥粒量の割合を算出し、算出した前記砥粒量の割合を平均化し、その砥粒を用いた前記回転砥石の能力を判別する砥粒検査方法。
【請求項2】
透明板と、
その透明板を挟んで透明板の上側および下側に設けられ、透明板上の砥粒を撮影する第1および第2撮影手段と、
前記第1および第2撮影手段によって撮影された画像データから
前記砥粒の形状および大きさを判別し、判別した前記砥粒の形状および大きさを分級し、分級した各グループの砥粒量の割合を算出し、算出された前記砥粒量の割合を平均化し、前記砥粒を用いた回転砥石の能力を判別する判別手段と
、
を備えた砥粒検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転砥石に用いられる砥粒を回転砥石の成形前において砥粒単独の状態で検査するための砥粒検査方法およびその砥粒検査方法に用いられる砥粒検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
砥粒を検査するための技術は、特許文献1に開示されている。
特許文献1においては、砥粒性能を検査するために、サンプリングした微細砥粒群を可視光線透過率が良好な容器に入れて、撹拌して、砥粒面の画像を前記容器の壁部を通して取得することにより、推定砥粒特性分布を求めるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1において、砥粒面の画像は、例えば強化ガラス製の容器に収容された砥粒を容器の底壁の下方から撮影することによって取得されるものである。従って、砥粒の画像が一方向から得られるのみであるため、重なり合う砥粒のうちの下面側に露呈する砥粒の一側面の画像が取得されるだけである。このため、砥粒の実際の形状を正確に得ることは困難であって、砥粒の性能を適切に把握し得ないことが多い。
【0005】
本発明の目的は、回転砥石に用いられる砥粒の形状を正確に把握して、その砥粒を用いた回転砥石の能力を判別できる砥粒検査方法および砥粒検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の砥粒検査方法においては、回転砥石に用いられる砥粒を透明板上に載置し、その透明板の表裏から砥粒を撮影し、その砥粒の表裏の画像データからその砥粒を用いた前記回転砥石の能力を判別することを特徴とする。
【0007】
本発明の砥粒検査装置においては、透明板と、その透明板を挟んで透明板の上側および下側に設けられ、透明板上の砥粒を撮影する第1および第2撮影手段と、前記第1および第2撮影手段によって撮影された画像データから前記砥粒を用いた回転砥石の能力を判別する判別手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明においては、透明板上に載置された砥粒の表裏の画像データを得ることができる。そして、この表裏の画像データから前記砥粒を用いた回転砥石の能力を判別できる。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明においては、砥粒の段階で回転砥石の能力を判別できるため、要求性能に応じた回転砥石を高い確率で得ることができるという効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】透明板上に砥粒を散布した状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態)
以下、本発明を具体化した実施形態を説明する。
図1に示すように、窓孔11を有する載置台12には透明板13が設置される。この透明板13は、透明であっても、偏光板などの半透明のものであってもよい。
【0012】
図2に示すように、透明板13上には砥粒14が散布されて載置される。透明板13の表裏である上方および下方にはそれぞれ第1撮影手段としての上部カメラ15および第2撮影手段としての下部カメラ16が配置される。上部カメラ15および下部カメラ16は透明板13上の砥粒14を撮影して、画像データを出力する。
【0013】
図3に示す判別手段としての制御装置17は中央処理装置18および記憶部19を有する。記憶部19には、後述の
図4のフローチャートによって示すプログラムが記憶されている。制御装置17には前記上部カメラ15および下部カメラ16によって撮影された画像データが入力される。表示部20には、制御装置17による各種の処理結果が表示される。
【0014】
次に、本実施形態の作用を
図4に基づいて説明する。
図4に示すフローチャートは、制御装置17の記憶部19に記憶されて設定されたプログラムが中央処理装置18の制御のもとに実行される動作を示すものである。
【0015】
まず、
図1および
図2に示すように、作業者により、透明板13が載置台12上に載置されるとともに、その透明板13上において、窓孔11と対向する位置に所定量の砥粒14が散布される。この場合、砥粒14の量は、砥粒14が透明板13上に均一密度で撒かれて、上下に重ならない程度の密集状態とすることが好ましい。
【0016】
そして、
図4のプログラムがスタートされる。
そのプログラムのはじめのステップS(以下、単にSという)1において、透明板13上の砥粒14全体が上部カメラ15および下部カメラ16によって上下両方向から撮影されて画像データが出力され、S2において、その画像データが制御装置17に転送されて、記憶部19に記憶される。なお、下部カメラ16によって得られる画像データは、透明あるいは半透明の透明板13を介して得られるものである。従って、この下部カメラ16によって得られる画像データは、画像が透明板13を透過することによって損失される光量に基づくため、画像データは前記損失分が補償されて記憶部19に記憶される。そして、S3およびS4において、砥粒14の上面側の画像において、各砥粒14の形状(大きさを含む)が判別されるとともに、砥粒14の下面側の画像において、各砥粒14の形状(大きさを含む)が判別される。
【0017】
次いで、S5およびS6において、前記画像データに基づいて、上面側および下面側における各砥粒14における形状および大きさの段階的な比率が算出される。つまり、このS5およびS6においては、上面側および下面側の画像データで示される各砥粒14が形状および大きさごとに段階的に分級され、その分級された各分級グループの砥粒14の個数の砥粒14の全個数に対する比率が算出されて、その比率が記憶部19に記憶される。この分級の区分け、すなわち形状および大きさごとのグループ分けの基準は、あらかじめ記憶部19に設定されている。
【0018】
S7においては、上下の砥粒14の画像データにおける砥粒14の形状および大きさの分級グループの個数割合、言い換えれば分級された上下の砥粒14の分級グループの個数の全個数に対する比率が平均化される。そして、S8においては、各形状および大きさにおける砥粒14の分級グループの個数の比率が、記憶部19内において、多くの分級個数比率のパターンと回転砥石の能力との関係を格納したデータベースと比較される。この比較により、撮影された砥粒14群を用いるとともに、砥石結合材に対する砥粒14の配合割合などが定められた回転砥石の標準的な能力が導き出される。
【0019】
そして、S9において、前記分級グループ比率の砥粒を用いた回転砥石の単位時間あたりの加工速度,言い換えれば加工能力が判別される。S10において、前記回転砥石を用いた場合における加工後ワークの面粗度が判別される。
【0020】
また、S11において、前記回転砥石を用いた場合におけるワーク端面のチッピングやバリ発生の度合いが判別される。例えば、回転砥石により、その回転砥石の厚さの幅の溝を切削する場合、ワークがセラミックなどの脆性材料である場合には、その溝の開口縁にチッピングが生じることがあり、ワークが金属の場合、溝の開口縁にバリが生じることがある。
【0021】
そして、前記加工能力、面粗度、チッピング度合いは、回転砥石の回転速度、加工送り量、ワークの種類などの加工条件や、回転砥石の径、回転砥石の砥粒結合材に対する砥粒14の割合などの砥石条件に応じて異なる。これらの加工条件と前記砥石条件との関係は、前記データベースに設定されている。従って、前記各判別は、このデータベースを参照することによって行われる。すなわち、このデータベースを参照することにより、加工条件および砥石条件に従い、標準的な回転砥石の能力が修正されて、その修正された能力が記憶され、表示部20に表示される。
【0022】
このため、前記砥粒14を用いた回転砥石の能力を事前に認識できて、要求性能に応じた回転砥石を適切に製造できて、実際の加工に役立たせることができる。
従って、本実施形態においては、以下の効果がある。
【0023】
(1)回転砥石に用いられる砥粒14の形状や大きさを判別して、その砥粒14を用いた回転砥石の能力を事前に認識できる。従って、砥粒14と砥粒結合材との割合などを選択することにより、製造される回転砥石の能力を適切に設定できて、有効な加工精度や加工速度を得ることができる。
【0024】
(2)砥粒14の検査に際して、砥粒14を透明板13上に散布するのみで、砥粒14の大きさや形状を判別できるため、その検査作業は容易である。
(3)砥粒14を透明板13の表裏である上下方向から撮影するため、表裏いずれか一方から撮影する場合と比較して、砥粒14の大きさや形状を正確に把握でき、その砥粒14を用いた回転砥石の能力を回転砥石に用いられる前に正確に把握できる。しかも、表裏の撮影を同時に実行できるため、その工程を短時間に行うことができる。
【0025】
(変更例)
前記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。そして、実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0026】
・前記実施形態においては、砥粒14の大きさおよび形状を判別するようにしたが、色彩や明度を判別して、砥粒材質を認識できるようにすること。
・
図4に示すプログラムのS9~S11の判別においては、加工能力や面粗度などを判別するようにしたが、回転砥石の摩耗度合いなどの他の要素も判別すること。
【0027】
・前記実施形態においては、1回の撮影によって砥粒14の分級比率を判別するようにしたが、砥粒14を透明板13上において移動させながら、複数回にわたって撮影し、その複数回の撮影によって得られた画像データを平均化すること。
【符号の説明】
【0028】
13…透明板
14…砥粒
15…上部カメラ
16…下部カメラ
17…制御装置