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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】排水ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04D 1/14 20060101AFI20240227BHJP
【FI】
F04D1/14
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020090875
(22)【出願日】2020-05-25
(65)【公開番号】P2021188515
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2022-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】110002608
【氏名又は名称】弁理士法人オーパス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 克司
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 良樹
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-194671(JP,A)
【文献】特開2012-127281(JP,A)
【文献】特開2003-262355(JP,A)
【文献】特開2020-169639(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 1/14
F04D 13/06
F04D 29/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸込口および吐出口を有するハウジングと、前記ハウジングに収容される回転羽根と、前記ハウジングの上方に配置され、前記回転羽根の軸部に連結される駆動軸を有するモーターと、前記ハウジングに取り付けられ、前記モーターを収容するモーターケースと、を有し、
前記モーターケースが、
前記ハウジングの上端開口を塞ぎ、当該ハウジングとともに前記回転羽根が配置されるポンプ室を画定する板状の底壁部と、
前記底壁部に下端が接続された円筒形状の内側壁部と、
前記底壁部に下端が接続された平面視円弧形状の外側壁部、または、前記底壁部に下端が接続された円筒形状の外側壁部と、
前記内側壁部の上端に接続されたモーター支持部と、を有し、
前記外側壁部が、前記内側壁部の径方向外方に配置され、
前記外側壁部の上端が、前記内側壁部の上端より下方に配置され、
前記底壁部が、前記ポンプ室と前記内側壁部の内部空間とを接続しかつ前記回転羽根の軸部が挿入される孔を有し、
前記内側壁部の内部空間において前記モーターの駆動軸が前記回転羽根の軸部と連結され、
前記外側壁部が、前記内側壁部、前記モーター支持部および前記モーターと間隔をあけて配置されていることを特徴とする排水ポンプ。
【請求項2】
吸込口および吐出口を有するハウジングと、前記ハウジングに収容される回転羽根と、前記ハウジングの上方に配置され、前記回転羽根に連結される駆動軸を有するモーターと、前記ハウジングに取り付けられ、前記モーターを収容するモーターケースと、を有し、
前記モーターケースが、
前記ハウジングの上端開口を塞ぎ、当該ハウジングとともに前記回転羽根が配置されるポンプ室を画定する底壁部と、
前記底壁部に下端が接続された円筒形状の内側壁部と、
前記底壁部に下端が接続された平面視円弧形状の外側壁部、または、前記底壁部に下端が接続された円筒形状の外側壁部と、
前記内側壁部の上端に接続されたモーター支持部と、を有し、
前記外側壁部が、前記内側壁部、前記モーター支持部および前記モーターと間隔をあけて配置されており、
前記モーター支持部が、円弧形状の平板部と、前記平板部の外縁に接続された側壁部と、を有し、
前記平板部の内縁の一部のみが、前記内側壁部の上端に接続されている、排水ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、空気調和機のドレン水の排出に用いられる排水ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来の排水ポンプの一例が開示されている。特許文献1の排水ポンプは、ハウジングと、ハウジングに収容された回転羽根と、を有している。ハウジングには、モーターケースが取り付けられている。モーターケースに収容されたモーターによって回転羽根が回転される。モーターケースは、下部ケースと、上部ケースと、を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-68205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図8図9に、従来の排水ポンプの下部ケースの一例を示す。図8は、従来の排水ポンプの下部ケースの平面図である。図9は、図8のIX-IX線に沿う断面図である。
【0005】
図8図9に示す下部ケース950は、底壁部951と、内側壁部952、953と、外側壁部954と、モーター支持部956と、を有している。底壁部951は、円板形状を有している。底壁部951は、図示しないハウジングの上部開口を塞ぐように配置される。内側壁部952、953は、平面視円弧形状を有している。外側壁部954は、円筒形状を有している。内側壁部952、953の下端および外側壁部954の下端は、底壁部951に接続されている。モーター支持部956は、円弧形状の平板部956aと、平板部956aの外縁に接続された側壁部956bと、を有している。平板部956aの内縁は、外側壁部954の上端に接続されている。
【0006】
図示しないモーターは、モーター支持部956の平板部956aおよび側壁部956bに接する。また、モーターは、内側壁部952、953の上端にも接する。そのため、内側壁部952、953および外側壁部954にモーターの振動が伝わってしまい、騒音を十分に低減することができなかった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、騒音を効果的に低減できる排水ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係る排水ポンプは、吸込口および吐出口を有するハウジングと、前記ハウジングに収容される回転羽根と、前記ハウジングの上方に配置され、前記回転羽根の軸部に連結される駆動軸を有するモーターと、前記ハウジングに取り付けられ、前記モーターを収容するモーターケースと、を有し、前記モーターケースが、前記ハウジングの上端開口を塞ぎ、当該ハウジングとともに前記回転羽根が配置されるポンプ室を画定する板状の底壁部と、前記底壁部に下端が接続された円筒形状の内側壁部と、前記底壁部に下端が接続された平面視円弧形状の外側壁部、または、前記底壁部に下端が接続された円筒形状の外側壁部と、前記内側壁部の上端に接続されたモーター支持部と、を有し、前記外側壁部が、前記内側壁部の径方向外方に配置され、前記外側壁部の上端が、前記内側壁部の上端より下方に配置され、前記底壁部が、前記ポンプ室と前記内側壁部の内部空間とを接続しかつ前記回転羽根の軸部が挿入される孔を有し、前記内側壁部の内部空間において前記モーターの駆動軸が前記回転羽根の軸部と連結され、前記外側壁部が、前記内側壁部、前記モーター支持部および前記モーターと間隔をあけて配置されていることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る排水ポンプは、吸込口および吐出口を有するハウジングと、前記ハウジングに収容される回転羽根と、前記ハウジングの上方に配置され、前記回転羽根に連結される駆動軸を有するモーターと、前記ハウジングに取り付けられ、前記モーターを収容するモーターケースと、を有し、前記モーターケースが、前記ハウジングの上端開口を塞ぎ、当該ハウジングとともに前記回転羽根が配置されるポンプ室を画定する底壁部と、前記底壁部に下端が接続された円筒形状の内側壁部と、前記底壁部に下端が接続された平面視円弧形状の外側壁部、または、前記底壁部に下端が接続された円筒形状の外側壁部と、前記内側壁部の上端に接続されたモーター支持部と、を有し、前記外側壁部が、前記内側壁部、前記モーター支持部および前記モーターと間隔をあけて配置されており、前記モーター支持部が、円弧形状の平板部と、前記平板部の外縁に接続された側壁部と、を有し、前記平板部の内縁の一部のみが、前記内側壁部の上端に接続されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、モーターケースが、底壁部と、底壁部に下端が接続された円筒形状の内側壁部と、底壁部に下端が接続された平面視円弧形状の外側壁部、または、底壁部に下端が接続された円筒形状の外側壁部と、内側壁部の上端に接続されたモーター支持部と、を有している。そして、外側壁部が、内側壁部、モーター支持部およびモーターと間隔をあけて配置されている。このようにしたことから、モーターの振動が直接伝わるのは内側壁部のみとなる。そのため、モーターの振動が内側壁部に伝わって騒音が発生しても、騒音を外側壁部で効果的に遮蔽できる。
【0011】
また、モーター支持部の平板部の内縁の一部のみが内側壁部の上端に接続されていることで、平板部の内縁全体が内側壁部の上端に接続された構成に比べて、内側壁部に伝わるモーターの振動をより少なくすることができる。これにより、モーターの振動に起因する騒音をより効果的に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施例に係る排水ポンプの正面図である。
図2図1の排水ポンプの断面図である。
図3図1の排水ポンプが有する下部ケースの斜視図である。
図4図1の排水ポンプが有する下部ケースの平面図である。
図5図4のV-V線に沿う断面図である。
図6図5のVI-VI線に沿う断面図である。
図7】排水ポンプの排水動作時における周波数と騒音との関係を示すグラフである。
図8】従来の排水ポンプの下部ケースの平面図である。
図9図8のIX-IX線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施例に係る排水ポンプについて、図1図6を参照して説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施例に係る排水ポンプの正面図である。図2は、図1の排水ポンプの断面図である。図2において、ハウジングおよびモーターケースのみ断面図で示している。図3および図4は、図1の排水ポンプが有する下部ケースの斜視図および平面図である。図5は、図4のV-V線に沿う断面図である。図6は、図5のVI-VI線に沿う断面図である。
【0015】
本実施例に係る排水ポンプは、例えば、空気調和機の室内ユニットのドレンパン内に溜まったドレン水を外部に排出するためのものである。この排水ポンプの用途は、ドレン水の排出に限られず、容器内の各種液体の排出や汲み上げなどに用いることができる。
【0016】
図1図2に示すように、本実施例の排水ポンプ1は、ハウジング10と、回転羽根20と、モーター30と、モーターケース40と、を有している。ハウジング10、回転羽根20およびモーターケース40は、合成樹脂製である。
【0017】
ハウジング10は、略逆円錐台形状の本体部11を有している。本体部11には、下方に延びる吸込管12が設けられている。吸込管12は、上下方向に直線的に延在する円筒形状を有している。吸込管12は、下方を向く吸込口12aを有している。本体部11には、側方に延びる吐出管13が設けられている。吐出管13は、側方を向く吐出口13aを有している。本実施例において、吐出管13は、横方向に直線的に延在する円筒形状を有している。これ以外にも、吐出管13は、吐出口13aが上方を向く略L字形状や円弧形状を有していてもよい。吸込管12および吐出管13は、本体部11の内側に設けられたポンプ室14に接続されている。
【0018】
回転羽根20は、軸部21と、大径羽根部22と、小径羽根部23と、を有している。軸部21は、円柱形状を有している。大径羽根部22は、軸部21から放射状に延びる複数の平板形状の大径羽根(図示なし)を有している。大径羽根部22は、複数の大径羽根の先端を連結する円筒形状のリング22aと、リング22aの下端に外周縁が接続された円環形状の下板22bと、を有している。大径羽根部22は、ポンプ室14に配置されている。小径羽根部23は、複数の大径羽根の下端から下板22bの内側を通り下方に延びる複数の平板形状の小径羽根23aを有している。小径羽根部23は、吸込管12の内側に配置されている。
【0019】
モーター30は、ハウジング10の上方に配置されている。モーター30は、モーター本体31と、モーター本体31から下方に延びる駆動軸32と、を有している。駆動軸32は、回転羽根20の軸部21に連結されている。
【0020】
モーターケース40は、スナップフィット機構41によってハウジング10に取り付けられている。モーターケース40は、下部ケース50と、上部ケース60と、を有している。
【0021】
下部ケース50は、底壁部51と、内側壁部52と、外側壁部54、55と、モーター支持部56と、を有している。
【0022】
底壁部51は、円板形状を有している。底壁部51は、ハウジング10の本体部11の上端開口を塞ぐように配置される。底壁部51は、本体部11とともにポンプ室14を画定する。底壁部51の中央には、軸孔51aが設けられている。軸孔51aには、回転羽根20の軸部21が挿入される。
【0023】
内側壁部52は、円筒形状を有している。内側壁部52の下端は、底壁部51に接続されている。内側壁部52は、底壁部51から上方に延びるように配置されている。
【0024】
外側壁部54、55は、平面視円弧形状を有している。外側壁部54、55の下端は、底壁部51に接続されている。外側壁部54、55は、底壁部51から上方に延びるように配置されている。外側壁部54、55は、内側壁部52を間に挟むように当該内側壁部52の外側に配置されている。平面視で、内側壁部52の中心と、外側壁部54、55の円弧中心と、は同一位置にある。外側壁部54、55の上端の位置は、内側壁部52の上端の位置より低い。なお、平面視円弧形状の外側壁部54、55に代えて、内側壁部52の外側に配置される1つの平面視円弧形状の外側壁部または3つ以上の平面視円弧形状の外側壁部を採用してもよい。または、内側壁部52を囲むように配置される円筒形状の外側壁部を採用してもよい。
【0025】
モーター支持部56は、平板部56aと、側壁部56bと、を有している。平板部56aは、円弧形状を有している。側壁部56bの下端は、平板部56aの外縁に接続されている。平板部56aの内縁の一部(図4において、符号kで示す)が、内側壁部52の上端に接続されている。平板部56aの内縁の一部の長さは、当該内縁の全長の5%以上でかつ20%以下であることが好ましい。モーター30は、平板部56aおよび側壁部56bに接するように配置される。
【0026】
上部ケース60は、下部ケース50のモーター支持部56の側壁部56bにスナップフィット機構42によって取り付けられる。上部ケース60は、モーター30の上部を覆うように配置される。モーターケース40は、モーター支持部56と上部ケース60との間にモーター30を収容する。モーター30の配線部分などの一部が、モーターケース40の外側に配置される。
【0027】
モーターケース40の外側壁部54、55は、内側壁部52、モーター支持部56およびモーター30と間隔をあけて配置されている。つまり、外側壁部54、55は、底壁部51だけと接続されており、底壁部51以外とは直接接していない。
【0028】
以上より、本実施例の排水ポンプ1は、モーターケース40が、底壁部51と、底壁部51に下端が接続された円筒形状の内側壁部52と、底壁部51に下端が接続された平面視円弧形状の外側壁部54、55と、内側壁部52の上端に接続されたモーター支持部56と、を有している。そして、外側壁部54、55が、内側壁部52、モーター支持部56およびモーター30と間隔をあけて配置されている。このようにしたことから、モーター30の振動が直接伝わるのは内側壁部52のみとなる。そのため、モーター30の振動が内側壁部52に伝わって騒音が発生しても、騒音を外側壁部54、55で効果的に遮蔽できる。したがって、モーター30の振動に起因する騒音を効果的に抑制できる。
【0029】
また、モーター支持部56の平板部56aの内縁の一部のみが内側壁部52の上端に接続されている。そのため、平板部56aの内縁全体が内側壁部52の上端に接続された構成に比べて、内側壁部52に伝わるモーター30の振動をより少なくすることができる。これにより、モーター30の振動に起因する騒音をより効果的に抑制できる。特に、平板部56aの内縁の一部の長さを、当該内縁の全長の5%以上でかつ20%以下にすることで、モーター支持部56の剛性と騒音の抑制とをバランスよく両立できる。
【0030】
上記に本発明の実施例を説明したが、本発明はこれらの例に限定されない。前述の実施例に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、実施例の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0031】
本発明者らは、本発明に係る排水ポンプの実施例1および比較例1を用いて、排水動作時の騒音を計測し、本発明の効果について検証した。
【0032】
実施例1は、上記で説明した排水ポンプ1の構成を有する。
【0033】
比較例1は、図8図9に示す従来の排水ポンプの下部ケース950を採用した構成を有する。比較例1は、下部ケース950以外は、実施例1と同一の構成を有する。
【0034】
実施例1および比較例1の上方1mの位置にマイクを設置し、実施例1および比較例1においてドレンパンからドレン水を排出する排水動作を行い、排水動作時の騒音を計測した。図7に計測結果を示す。図7は、排水ポンプの排水動作時における周波数と騒音との関係を示すグラフである。
【0035】
図7から明らかなように、実施例1および比較例1において350Hz付近および900Hz付近で騒音が大きくなる波形が観測された。比較例1では騒音の大きさが20dBを超える値だったのに対し、実施例1では騒音の大きさが20dBより低い値に抑えられている。
【0036】
このことから、実機を用いた検証でも、本発明の効果が明らかとなった。
【符号の説明】
【0037】
1…排水ポンプ、11…本体部、12…吸込管、12a…吸込口、13…吐出管、13a…吐出口、14…ポンプ室、10…ハウジング、20…回転羽根、21…軸部、22…大径羽根部、22a…リング、22b…下板、23…小径羽根部、23a…小径羽根、30…モーター、31…モーター本体、32…駆動軸、40…モーターケース、41、42…スナップフィット機構、50…下部ケース、51…底壁部、51a…軸孔、52…内側壁部、54、55…外側壁部、56…モーター支持部、56a…平板部、56b…側壁部、60…上部ケース

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9