(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】害虫防除具
(51)【国際特許分類】
A01M 1/20 20060101AFI20240227BHJP
【FI】
A01M1/20 D
(21)【出願番号】P 2020121416
(22)【出願日】2020-07-15
【審査請求日】2023-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000149181
【氏名又は名称】株式会社大阪製薬
(74)【代理人】
【識別番号】100119725
【氏名又は名称】辻本 希世士
(74)【代理人】
【識別番号】100168790
【氏名又は名称】丸山 英之
(72)【発明者】
【氏名】池田 直子
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-059284(JP,A)
【文献】特開2014-094752(JP,A)
【文献】特開2001-039807(JP,A)
【文献】特開2013-135693(JP,A)
【文献】特開2017-000016(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピレスロイド系化合物と液状イソパラフィン系炭化水素を含有する薬剤と、
前記薬剤を収容する本体容器と、
前記本体容器の開口部を封止する低密度ポリエチレンからなる揮散フィルム
を備え、
揮散フィルムのガス透過度が、23℃において1000~6000cc/(m
2・24hr・atm)であることを特徴とする害虫防除具。
【請求項2】
揮散フィルムの膜厚が50~100μmであることを特徴とする請求項1に記載の害虫防除具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件発明は、蚊、蠅、虻などの害虫を防除する薬剤を空気中に飛散、拡散させるように構成された害虫防除具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、容器に収容された揮発性の薬剤をその容器から徐々に放出して空気中に飛散、拡散させることにより、蚊、蠅、虻などの害虫を死滅、忌避させるなどして防除する害虫防除具が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、トランスフルトリン等の薬効成分とメタノール、エタノールなどのアルコールなどからなる薬剤と、その薬剤を収容するPETなどからなる容器と、直鎖状低密度ポリエチレンなどからなる揮散薬剤透過フィルムからなり、その揮散薬剤透過フィルムからその薬剤が徐々に揮散される薬剤収容具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の薬剤収容具においては、収容される薬剤と、その薬剤を透過する揮散薬剤透過フィルムとの関係から、実際の商品において、使用の開始初期、中盤、終盤の各時期によって揮散される薬剤の量がばらつくことで、害虫に対する防除効果が変動するおそれがあった。
【0006】
そこで、本件発明では、蚊、蠅、虻などの害虫に対する防除効果が大きく変動しないようにするために、内包される薬剤の揮散量が使用時期によって大きく変わらないようにすることができる害虫防除具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
〔1〕すなわち、本発明は、ピレスロイド系化合物と液状イソパラフィン系炭化水素を含有する薬剤1と、前記薬剤1を収容する本体容器2と、前記本体容器2の開口部を封止する低密度ポリエチレンからなる揮散フィルム3を備え、揮散フィルム3のガス透過度が、23℃において1000~6000cc/(m2・24hr・atm)であることを特徴とする害虫防除具である。
【0008】
〔2〕そして、揮散フィルム3の膜厚が50~100μmであることを特徴とする前記〔1〕に記載の害虫防除具である。
【発明の効果】
【0009】
本件発明によれば、蚊、蠅、虻などの害虫に対する防除効果が大きく変動しないようにするために、内包される薬剤の揮散量が使用時期によって大きく変わらないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】本発明の害虫防除具におけるA-A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本件発明の害虫防除具に関する実施形態について詳しく説明する。鉛直方向は
図1、
図2における上下方向であり、幅方向は、
図1における左右方向である。なお、説明中における範囲を示す表記「~」のある場合は、上限と下限を含有するものである。
【0012】
本発明の薬剤1は、ピレスロイド系化合物と液状イソパラフィン系炭化水素を含有する組成物であって、本発明の害虫防除具の容器を構成する本体容器2と揮散フィルム3によって収容されている。この薬剤1が揮散フィルム3を通じて外部に飛散、拡散される。
【0013】
本発明の薬剤1に含有されるピレスロイド系化合物は、除虫菊に含有される殺虫作用を有する成分及びその誘導体であり、植物等から抽出などの方法で取り出される天然物、有機合成の手法で合成される合成物のいずれも含むものである。ピレスロイド系化合物を用いることにより、蚊、蠅、虻などの害虫の神経に作用してそれら害虫を死滅、忌避させるなどの防除効果を奏し有効成分として作用する。
【0014】
ピレスロイド系化合物としては、天然ピレスロイドとして、ピレトリンI<(1R,3R)-2,2-ジメチル-3-(2-メチル-1-プロペニル)シクロプロパンカルボン酸(1S)-2-メチル-4-オキソ-3-(2Z)-2,4-ペンタジエニル-2-シクロペンテン-1-イルエステル>、ピレトリンII<(1R,3R)-3-[(1E)-3-メトキシ-2-メチル-3-オキソ-1-プロペニル]-2,2-ジメチルシクロプロパンカルボン酸(1S)-2-メチル-4-オキソ-3-(2Z)-2,4-ペンタジエニル-2-シクロペンテン-1-イルエステル>、シネリンI<(1R,3R)-2,2-ジメチル-3-(2-メチル-1-プロペニル)シクロプロパンカルボン酸(1S)-3-(2Z)-(2-ブテニル)-2-メチル-4-オキソ-2-シクロペンテン-1-イルエステル>、シネリンII<(1R,3R)-3-[(1E)-3-メトキシ-2-メチル-3-オキソ-1-プロペニル]-2,2-ジメチルシクロプロパンカルボン酸(1S)-3-(2Z)-(2-ブテニル)-2-メチル-4-オキソ-2-シクロペンテン-1-イルエステル>、ジャスモリンI<(1R,3R)-2,2-ジメチル-3-(2-メチル-1-プロペニル)シクロプロパンカルボン酸 (1S)-2-メチル-4-オキソ-3-(2Z)-2-ペンテニル-2-シクロペンテン-1-イルエステル>、ジャスモリンII<(1R,3R)-3-[(1E)-3-メトキシ-2-メチル-3-オキソ-1-プロペニル]-2,2-ジメチルシクロプロパンカルボン酸 (1S)-2-メチル-4-オキソ-3-(2Z)-2-ペンテニル-2-シクロペンテン-1-イルエステル>、合成ピレスロイドとして、アレスリンI<2,2-ジメチル-3-(2-メチル-1-プロペニル)シクロプロパンカルボン酸2-メチル-4-オキソ-3-(2-プロペニル)-2-シクロペンテン-1-イルエステル>、アレスリンII<3-(3-メトキシ-2-メチル-3-オキソ-1-プロペニル)-2,2-ジメチルシクロプロパンカルボン酸2-メチル-4-オキソ-3-(2-プロペニル)-2-シクロペンテン-1-イルエステル>、フタルスリン(別名;D-テトラメトリン)<(1,3-ジオキソ-4,5,6,7-テトラヒドロイソインドリン-2-イル)メチル=2,2-ジメチル-3-(2-メチルプロパ-1-エン-1-イル)シクロプロパン-1-カルボキシラート>、レスメトリン<(5-ベンジル-3-フリル)メチル=2,2-ジメチル-3-(2-メチルプロパ-1-エン-1-イル)シクロプロパンカルボキシラート>、フェノトリン<3-フェノキシベンジル=2-ジメチル-3-(メチルプロペニル)シクロプロパンカルボキシラート>、ペルメトリン<3-フェノキシベンジル=3-(2,2-ジクロロビニル)-2,2-ジメチルシクロプロパンカルボキシラート>、シフェノトリン<シアノ(3-フェノキシフェニル)メチル=2,2-ジメチル-3-(2-メチルプロパ-1-エン-1-イル)シクロプロパンカルボキシラート>、エトフェンプロックス<4-(4-エトキシフェニル)-4-メチル-1-(3-フェノキシフェニル)-2-オキサペンタン>、メトフルトリン<2,2-ジメチル-3-(プロパ-1-エン-1-イル)シクロプロパンカルボン酸=2,3,5,6-テトラフルオロ-4-(メトキシメチル)ベンジル>、トランスフルトリン<(1R,3S)-3-[(E)-2,2-ジクロロビニル]-2,2-ジメチルシクロプロパンカルボン酸=2,3,5,6-テトラフルオロベンジル>、シフルトリン<シアノ(4-フルオロ-3-フェノキシフェニル)メチル=3-(2,2-ジクロロビニル)-2,2-ジメチルシクロプロパン-1-カルボキシラート>、などが好ましい。そして、上記のうちペルメトリン、フェノトリン、アレスリン、フタルスリン、レストメトリン、メトフルトリン、トランスフルトリンがより好ましく、さらに、メトフルトリン、トランスフルトリンが最も好ましい。また、上記のピレスロイド系化合物は1種類のみ、又は2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0015】
本発明に薬剤1に含有される液状イソパラフィン系炭化水素は、使用される20~30℃程度の常温において液体であり、分岐鎖を有する鎖状炭化水素であって、上述したピレスロイド系化合物を均一に溶解する溶剤であるとともに、上述したピレスロイド系化合物と共に揮散フィルム3を通じて外部に飛散、拡散される。
【0016】
液状イソパラフィン系炭化水素としては、使用される20~30℃程度の常温において液体であり、上述したピレスロイド系化合物を均一に溶解するができることから、具体的には、分岐鎖を有する炭素数10~24の飽和炭化水素であることが好ましい。この分岐鎖を有する炭素数10~24の飽和炭化水素は、それぞれの炭素数に応じた単一化合物であってもよいし、それらの炭素数のうち複数の種類の混合物であってもよい。本発明に使用される液状イソパラフィン系炭化水素は無色透明である。
【0017】
ピレスロイド系化合物と液状イソパラフィン系炭化水素の配合当初の割合は、ピレスロイド系化合物/液状イソパラフィン系炭化水素=5/95~30/70が好ましく、7/93~25/75がより好ましい。ピレスロイド系化合物と液状イソパラフィン系炭化水素の配合割合がこの範囲にあると、内包される薬剤の揮散量が使用時期によって大きく変わらず、30℃の環境下における1日当たりの揮散量をおおよそ一定量とすることができる。
【0018】
本発明に薬剤1において、上述したピレスロイド系化合物、イソパラフィン系炭化水素の他にも種々の材料を含有することができる。例えば、薬剤1の残量を視認しやくするために、染料、顔料などの着色剤を配合することができ、使用者の臭覚で感知することができる香料を配合することができ、害虫の防除効果を補助するために精油を配合することができ、ピレスロイド系化合物の酸化を防止するためにt-ブチルメトキシジベンゾイルメタン、4-tert-ブチル-4′-メトキシジベンゾイルメタン、メトキシケイヒ酸エチルへキシル、ジブチルヒドロキシトルエンなどの酸化防止剤を配合することができ、ピレスロイド系化合物の紫外線による分解等を防止するためにトリアジン系(例えば、Phenol, 2-(4,6-Diphenyl-1,3,5-triazin-2-yl)-5-hexyloxy)、ベンゾフェノン系(例えば、Methanone, [2-hydroxy-4-(octyloxy)phenyl]phenyl,-)、ベンゾエート系、ベンゾトリアゾール系(例えば、Phenol, 2-(2H-benzotriazol-2-yl)-4-methyl)などの紫外線吸収剤を配合することができる。
【0019】
本体容器2は、薬剤1を収容する容器であり、厚みの薄い略箱型形状を有しており、一の面側に開口部が設けられており、その開口部から薬剤1を充填され、その開口部を揮散フィルム3によって封止される。
図1に示すように、本体容器2は、鉛直方向の上側に薬剤1の多くを貯留しておく貯留部21と、貯留部21と連通し下方に延びる複数の流路部22を備えている。流路部22は、貯留部21よりも鉛直方向に対して垂直方向である幅方向に短く、貯留部21よりも鉛直方向の上下方向に長く、さらに貯留部21の容積の方が流路部22の容積よりも大きくなるように成形されている。このような貯留部21と流路部22を備えることにより、長い期間に亘って、薬剤1と接触可能である揮散フィルム3の部分のうち、その多くの部分が薬剤1と接触し続けることができることから、揮散フィルム3から揮散する薬剤1の量が使用開始時期、中盤・終盤の時期によって大きく変わらないようにすることができる。流路部22は、本実施形態において、貯留部21より鉛直方向の下向きに直線状に形成されているが、他の実施形態において、貯留部21から薬剤1が鉛直方向の下向きに流れる限りにおいて、「く」の字状やジグザグ状のような折れ線形状であったり、円弧状であったりしてもよい。
【0020】
本体容器2は、内部の薬剤1が視認できるように透明性を有する樹脂によって成形されていることが好ましく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネートなどの樹脂や、脂環式オレフィン系樹脂であることが好ましい。脂環式オレフィン系樹脂は、少なくともシクロプロペン、シクロブテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、ノルボルネン、ノルボルナジエンなどの単環式又は複環式の脂環式化合物を用いた重合体である。本体容器2がこれらの材料から形成されていると、上述した透明性を確保することができるとともに、薬剤1の透過や薬剤1による変質を防止することができる。
【0021】
揮散フィルム3は、本体容器1の開口部を封止する部材であり、低密度ポリエチレンからなる。揮散フィルム3は、液状の薬剤1を通過させないが、気化した薬剤1を通すことができる。揮散フィルム3として使用される低密度ポリエチレンは、一般的なポリエチレンに比べて結晶化度が低いことから、密度が0.910~0.930であり、非結晶の部分から多くの気化した薬剤1が通過して外部に飛散される。低密度ポリエチレンのうちでも、密度が0.910~0.925であり、分岐鎖をあまり有していない直鎖状低密度ポリエチレンであることがより好ましい。このような直鎖状低密度ポリエチレンを用いることで、内包される薬剤1の揮散量が使用時期によって大きく変わらないように調整することができる。
【0022】
揮散フィルム3の膜厚は、50~100μmであることが好ましく、さらに60~90μmであることがより好ましい。このような膜厚であれば、内包される薬剤1の揮散量が使用時期によって大きく変わらないように調整することができる。また、揮散フィルム3の酸素ガス透過度は、23℃の環境において1000~6000cc/(m2・24hr・atm)であることが好ましく、1200~3000cc/(m2・24hr・atm)であることが好ましい。ガス透過度がこの範囲であると、薬剤1の揮散量が使用時期によって大きく変わらないように調整することができるとともに、害虫の防除効果を200日など長い期間持続しやすくなる。なお、ガス透過度は、JIS K 7126-2に記載された等圧法におけるガスクロ法により測定されることが好ましい。
【実施例】
【0023】
以下、本件発明における害虫防除具について具体的に説明する。なお、本件発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0024】
<実施例1>
20℃の室温中において、容量が200mlのグリフィンビーカーに、ピレスロイド系化合物としてトランスフルトリンを10g添加し、液状イソパラフィン系炭化水素として炭素数10~16の分岐鎖を有する鎖状の炭素水素の複合物を全体量が100mlとなるまで添加し、均一に溶解するまで攪拌し、合計100mlの薬剤を得た(トランスフルトリンの濃度が10w/v%)。そして、得られた薬剤を
図1に示すような本体容器2本体容器に入れ、酸素ガス透過度が2550cc/(m
2・24hr・atm)であり(JIS K 7126-2に記載された等圧法におけるガスクロ法により測定)、膜厚70μmの直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)にて薬剤を封入して、害虫防除具を得た。
【0025】
<実施例2>
実施例2は、液状イソパラフィン系炭化水素として炭素数16~24の分岐鎖を有する鎖状の炭素水素の複合物を添加した以外は、実施例1と同様にして、合計100mlの薬剤を得た。そして、得られた薬剤を
図1に示すような本体容器に入れ、酸素ガス透過度が2550cc/(m
2・24hr・atm)であり(JIS K 7126-2に記載された等圧法におけるガスクロ法により測定)、膜厚70μmの直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)にて薬剤を封入して、害虫防除具を得た。
【0026】
<実施例3>
実施例3は、液状イソパラフィン系炭化水素として炭素数10~16の分岐鎖を有する鎖状の炭素水素の複合物及び炭素数16~24の分岐鎖を有する鎖状の炭素水素の複合物を体積比1:1にて混合したものを添加した以外は、実施例1と同様にして、合計100mlの薬剤を得た。そして、得られた薬剤を
図1に示すような本体容器に入れ、酸素ガス透過度が2550cc/(m
2・24hr・atm)であり(JIS K 7126-2に記載された等圧法におけるガスクロ法により測定)、膜厚70μmの直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)にて薬剤を封入して、害虫防除具を得た。
【0027】
<実施例4>
実施例4は、液状イソパラフィン系炭化水素として炭素数10~16の分岐鎖を有する鎖状の炭素水素の複合物及び炭素数16~24の分岐鎖を有する鎖状の炭素水素の複合物を1:1にて混合したものを添加した以外は、実施例1と同様にして、合計100mlの薬剤を得た。そして、得られた薬剤を
図1に示すような本体容器に入れ、酸素ガス透過度が1540cc/(m
2・24hr・atm)であり(JIS K 7126-2に記載された等圧法におけるガスクロ法により測定)、膜厚100μmの直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)にて薬剤を封入して、害虫防除具を得た。
【0028】
<実施例5>
実施例5は、ピレスロイド系化合物としてメトフルトリンを5g添加した以外は、実施例1と同様にして、合計100mlの薬剤を得た(メトフルトリンの濃度が5w/v%)。そして、得られた薬剤を
図1に示すような本体容器2本体容器に入れ、酸素ガス透過度が2550cc/(m
2・24hr・atm)であり(JIS K 7126-2に記載された等圧法におけるガスクロ法により測定)、膜厚70μmの直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)にて薬剤を封入して、害虫防除具を得た。
【0029】
<比較例1>
比較例1は、液状イソパラフィン系炭化水素に替えて、シクロペンタン、シクロヘキサンなど環状の炭化水素の複合物である液状ナフテン系炭化水素を添加した以外は、実施例1と同様にして、合計100mlの薬剤を得た。そして、得られた薬剤を
図1に示すような本体容器に入れ、酸素ガス透過度が2550cc/(m
2・24hr・atm)であり(JIS K 7126-2に記載された等圧法におけるガスクロ法により測定)、膜厚70μmの直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)にて薬剤を封入して、害虫防除具を得た。
【0030】
<比較例2>
比較例2は、液状イソパラフィン系炭化水素に替えて、シクロペンタン、シクロヘキサンなど環状の炭化水素の複合物である液状ナフテン系炭化水素を添加した以外は、実施例1と同様にして、合計100mlの薬剤を得た。そして、得られた薬剤を
図1に示すような本体容器に入れ、酸素ガス透過度が2550cc/(m
2・24hr・atm)であり(JIS K 7126-2に記載された等圧法におけるガスクロ法により測定)、膜厚70μmの直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)にて薬剤を封入して、害虫防除具を得た。
【0031】
<比較例3>
比較例3は、実施例1と同様の処方である薬剤を
図1に示すような本体容器に入れ、酸素ガス透過度が450cc/(m
2・24hr・atm)であり(JIS K 7126-2に記載された等圧法におけるガスクロ法により測定)、膜厚30μmのポリエチレンテレフタレート(PET)にて薬剤を封入して、害虫防除具を得た。
【0032】
<比較例4>
比較例4は、実施例3及び実施例4と同様の処方である薬剤を
図1に示すような本体容器に入れ、酸素ガス透過度が6450cc/(m
2・24hr・atm)であり(JIS K 7126-2に記載された等圧法におけるガスクロ法により測定)、膜厚40μmの直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)にて薬剤を封入して、害虫防除具を得た。
【0033】
<比較例5>
比較例5は、実施例1と同様の処方である薬剤を
図1に示すような本体容器に入れ、酸素ガス透過度が950cc/(m
2・24hr・atm)であり(JIS K 7126-2に記載された等圧法におけるガスクロ法により測定)、膜厚120μmの直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)にて薬剤を封入して、害虫防除具を得た。
【0034】
このようにして得られた各種害虫防除具を、以下の評価方法において評価した。
【0035】
〔害虫への防除効果〕
各辺1mの密閉された立方状容器内の上方角側に、ヒトスジシマカ20匹を入れた籠を設置して、1時間静置させた。そして、ヒトスジシマカを設置した位置とは対角の位置である下方角側に、作製してから薬剤を揮散させていない初期状態の各害虫防除具を無風状態で設置し、90分後におけるヒトスジシマカのノックダウン数を観察した。投入されたヒトスジシマカの数に対する観察されたノックダウン数からノックダウン率(%)を求めた。このノックダウン率が90%以上のものを◎と評価し、70%以上90%未満のものを○と評価し、50%以上70%未満のものを△と評価し、50%未満のものを×と評価した。これらのうち、蚊に対する防除効果が十分あるとして◎及び○を良好、蚊に対する防除効果がおおよそあるとして△を普通、蚊に対する防除効果が乏しいとして×を不良と判断した。
【0036】
〔薬剤揮散量の増減割合〕
30℃の環境下で、各種害虫防除具を静置し、試験開始後1カ月の時点における1日あたりの薬剤の揮散量を計りにて重量の減少量として測定し、同環境下でさらに1カ月静置後(試験開始から2カ月後)の時点における1日あたりの薬剤の揮散量を同様に測定した。そして、この試験開始後1カ月の時点における1日あたりの薬剤の揮散量に対して、試験開始後1カ月の時点における1日あたりの薬剤の揮散量の増減割合を算出した。この増減割合が-10%~10%のものを◎と評価し、-20%~20%のものを○と評価し、-20%未満及び20%より大きいものを×と評価した。これらのうち、内包される薬剤の揮散量が使用時期によって大きく変わらないとして◎及び○を良好、内包される薬剤の揮散量が使用時期によって大きく変わるとして×を不良と判断した。
【0037】
これらの実施例1~5、比較例1~5の薬剤の組成及び試験結果を表1にまとめて示す。
【0038】
【0039】
表1に示すように、実施例1~5の害虫防除具は、ピレスロイド系化合物であるメトフルトリンと、所定の液状イソパラフィン系炭化水素からなる薬剤を
図1に示すような本体容器に充填し直鎖状低密度ポリエチレンからなる所定の範囲のガス透過度や厚みの揮散フィルムにて封入することによって、内包される薬剤の揮散量が使用時期によって大きく変わらないようにすることができることが分かった。比較例1~5の害虫防除具は、液状イソパラフィン系炭化水素とは異なる溶剤を使用すると、使用期間によって薬剤揮散量の増減が大きく、また、揮散フィルムの種類、ガス透過度や厚みが所定の範囲から外れると、使用期間によって薬剤揮散量の増減が大きかったり、揮散量が少なくために害虫への防除効果が弱かったりと実施例に比べると劣るものであった。
【符号の説明】
【0040】
1・・・薬剤
2・・・本体容器
21・・・貯留部
22・・・流路部
3・・・揮散フィルム