(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】支保工の配置及び本数の決定プログラム
(51)【国際特許分類】
E04G 25/00 20060101AFI20240227BHJP
E04G 11/48 20060101ALI20240227BHJP
G06Q 50/08 20120101ALI20240227BHJP
【FI】
E04G25/00 A ESW
E04G11/48
G06Q50/08
(21)【出願番号】P 2022016198
(22)【出願日】2022-02-04
【審査請求日】2022-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】308003460
【氏名又は名称】株式会社フォービル
(74)【代理人】
【識別番号】110003155
【氏名又は名称】弁理士法人バリュープラス
(72)【発明者】
【氏名】森本 隆之
【審査官】菅原 奈津子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-187157(JP,A)
【文献】特開2006-201979(JP,A)
【文献】特開2017-166249(JP,A)
【文献】特開2016-056516(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0087911(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106894639(CN,A)
【文献】木下拓也 他3名,遺伝的アルゴリズムを用いたスラブ支保工及び型枠の早期解体工法に関する検討,第63回理論応用力学講演会 講演論文集,日本,2014年,https://www.jstage.jst.go.jp/article/japannctam/63/0/63_98/_pdf/-char/ja
【文献】ピンポイント工法,[online],株式会社フォービル,2018年08月30日,[2023年11月27日検索], <https://web.archive.org/web/20180830155657/http://www.forbuild.co.jp/pinpoint/index.php><http://www.forbuild.co.jp/pinpoint/>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 9/00-19/00
E04G 21/00-21/10
E04G 21/14-21/22
E04G 25/00-25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子計算機を用いて、構造物を構築する際に打設したコンクリートの型枠を解体するときに撤去する支保工と、残置する支保工の本数と配置の決定を支援する支保工の配置及び本数の決定プログラムであって、
電子計算機
が処理する、
構造物の設計図面における寸法データ
、スラブスパンについてはスラブを支持する両梁幅の中心(梁芯)同士の間隔の寸法、の入力を受け付ける構造入力ステップと、
前記構造入力ステップの入力データに基づいて解析モデルを作成する解析モデル作成ステップと、
前記構造入力ステップ
の入力データに基づいた構造要素の荷重値の入力を受け付ける荷重値入力ステップと、
前記構造入力ステップと前記荷重値入力ステップとに基づいて
、前記スラブスパンを梁の空間内側の縁部間の寸法に補正したうえ、施工荷重値、壁面部の応力値、許容応力値、梁の断面係数値を演算する演算ステップと、
前記
演算ステップにおける各演算値を前記解析モデルにおい
て反映させて梁応力、スラブ応力、スラブたわみを解析する解析ステップと、
前記解析ステップに基づいて支保工の配置及び本数を、前記構造入力ステップで受け付けた設計図面のデータに反映させる支保工設定ステップと、
を有
した支保工の配置及び本数の決定プログラム。
【請求項2】
前記支保工設定ステップにおいて、型枠構築のための支保工の配置と本数の決定と共に、型枠解体時に残置する支保工の配置と本数を決定する請求項1記載の支保工の配置及び本数の決定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造体を施工する際に構築する型枠の支保工の配置場所と本数の決定プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
マンションやビルなどの多数階のコンクリート構造体では、各階を1つの単位として、下側から順番に、現場でコンクリートを打設して当該階について箱体を構成し、順次上階を構築する。手順としては、コンクリートの打設には、柱や梁、壁面や階上の床面(当該階の天井面、以下スラブという)について、所定のコンクリートの厚み及び形状となるように型枠や支保工(パイプサポート、又はサポートとも言う)を組み、この型枠内にコンクリートを流して、コンクリートを養生して所定の強度を発現するまで硬化させた後、型枠及び支保工を解体・撤去していく。
【0003】
例えば、3階のコンクリート構造体については、1階のスラブ(天井面)のコンクリートが完全に硬化するまで待っていると全体工期が長期化するので、所定の圧縮強度が発現する程度養生期間を経た後、1階のスラブについて特定の必要最低限の支保工を残置して荷重を支えておいて、2階について型枠を組み、コンクリートを打設し、3階について2階同様の作業を行う際に、1階の前記残置した支保工を撤去し、型枠や支保工を3階の型枠構築用に使用する、といった作業を行う。こうした手法は、例えば特許文献1(特開平6-336838号公報)及び特許文献2(特開2004-116281号公報)に開示されている。
【0004】
特許文献1,2の工法において、例えば、上記の例において、階下の型枠解体は、JASS5(型枠の存置期間)の次の(ア)~(ウ)の条件を満たす必要がある。
【0005】
(ア)スラブのコンクリート圧縮強度が12N/mm2 以上であること
(イ)スラブの打設後のコンクリートにおいて施工中に受ける荷重および外力によって著しい変形または亀裂が生じないことが構造検討により確認されること
(ウ)スラブが、構造検討において必要とされたコンクリート圧縮強度に達していることを圧縮試験にて確認されること
【0006】
上記(ア)~(ウ)の条件は、階上のコンクリート構造体及び全体構造を確実に構築するうえでの最低基準であるが、全てを満たすまで階下の型枠解体を待つことは、型枠及び支保工資材を多量に必要となるほか、工期遅延が生じることとなる。そのため、上記(ア)及び(ウ)の条件を満たすことを確認した後、階下においては上記(イ)を満たすまで、必要最低限の本数の支保工を残置して、その残りの支保工は撤去して階上のコンクリート打設に使用するようにしているのである。
【0007】
つまり、従来から、コンクリート構造体のコンクリート打設計画(型枠構築及び型枠解体)では、予め、コンクリート打設時に要する支保工の本数と配置のうち残置する支保工の本数と位置を決定しておく必要があった。
【0008】
支保工の本数と配置の決定に関しては、例えば特許文献3(特開2001-49875号公報)には、有限要素解析(以下、FEM解析という)を用いて上記(イ)を満たすように複数の支保工の配置や本数を決定する手法では、建築構造の専門的な知識を有する者によるコンピュータでの精密解析を必要とするため、決定した支保工の配置や本数について妥当であるか否かについての検証が容易でないことを課題として、次の手法が提案されている。
【0009】
すなわち、特許文献3は、鉄筋コンクリート床スラブを支保工に支持された複数の梁と見立て、鉄筋コンクリート床スラブがその自重とその直上階の鉄筋コンクリート床スラブを形成するために用いられる資材の重量とからなる荷重を受けるとき、(前記梁の撓み量δ)≦(前記梁の撓み量限界値)および(前記梁の曲げモーメントMD)<(前記梁のひび割れモーメントMcr)の条件を満たすように支保工を配置するというものである。
【0010】
ところで、特許文献3では、FEM解析を用いて決定した決定した支保工の配置や本数について「検証が容易でない」ことを課題としているのであって、昨今では材料など必要とされる情報は容易に入手でき、また、解析モデルも信ぴょう性の高い(近似した)モデルがあるので、検証をほぼ要しない妥当な支保工の配置や本数は問題なくFEM解析によって決定することができるようになってきた。
【0011】
また、昨今では、いわゆるパーソナルコンピュータにインストールされたFEM解析用のソフトウェアにおいて、解析と評価、設計への反映も可能となっており、該評価においては、前記の情報量と近似モデルを用いることと相俟って、妥当性の高い解析結果を出力できるようになっている。なお、本出願人は、前記FEM解析用ソフトウェアを使った「ピンポイント工法」(商標登録第6436308号)という商標のコンクリート構造物の型枠構築設計を行っている。
【0012】
しかし、従来のFEM解析用のソフトウェアを用いた手法においては次の問題があった。すなわち、従来手法では、FEM解析用のソフトウェアにおいて構造に係る線形モデルにおける数値を入力する際に、例えばスラブを支持する梁間の間隔は、両梁幅の中心(梁芯)同士の間隔数値を入力していたので、向かい合う両梁端部同士が実際のスラブ幅(スラブスパン)であるにもかかわらず、スラブスパンが実際より大きく計算解析されることとなる(梁芯間隔>実際のスラブスパン)。
【0013】
すると、FEM解析結果も長間隔のスラブについてのものとなり、型枠構築のための支保工や、残置する支保工の本数も実際に要するより多く必要である旨の結果を出力することとなり、解析結果と実際との乖離が生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】特開平6-336838号公報
【文献】特開2004-116281号公報
【文献】特開2001-49875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
解決しようとする問題は、従来の支保工残置場所及び本数の決定方法では、FEM解析用ソフトウェアにおける入力において両梁幅中心同士の間隔数値を入力していたので、解析結果と実際との乖離が生じていた点である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するため、本発明は、電子計算機が処理する、構造物の設計図面における寸法データ、スラブスパンについてはスラブを支持する両梁幅の中心(梁芯)同士の間隔の寸法、の入力を受け付ける構造入力ステップと、この構造入力ステップの入力データに基づいて解析モデルを作成する解析モデル作成ステップと、前記構造入力ステップの入力データに基づいた構造要素の荷重値の入力を受け付ける荷重値入力ステップと、前記構造入力ステップと前記荷重値入力ステップとに基づいて、前記スラブスパンを梁の空間内側の縁部間の寸法に補正したうえ、施工荷重値、壁面部の応力値、許容応力値、梁の断面係数値を演算する演算ステップと、前記演算ステップの各演算値を前記解析モデルにおいて反映させて梁応力、スラブ応力、スラブたわみを解析する解析ステップと、前記解析ステップに基づいて支保工の配置及び本数を前記構造入力ステップで受け付けた設計図面のデータに反映させる支保工設定ステップと、を有するプログラム構成とした。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、スラブスパンを梁の空間内側の縁部間の寸法に補正して採用するので、実際に近い状況で必要十分な本数の支保工を適切に配置する旨の決定を出力させることができる。これにより、使用する支保工の本数減少化、支保工設置、撤去の時間の削減、ひいてはコストの低廉化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】型枠構築及び型枠解体モデルを説明するための図である。
【
図2】型枠構築及び型枠解体モデルを説明するための図である。
【
図3】本発明による支保工残置場所及び本数の決定手順を説明するためのフローチャートである。
【
図4】実施例におけるコンクリート構造物のスラブを示す図である。
【
図5】従来のプログラムにおける概念を説明するための図である。
【
図6】スラブスパンの捉え方を説明するための図である。
【
図7】(a)は本発明による支保工決定状況を、(b)は従来による支保工決定状況を、各々説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、実際に近い状況で必要十分な本数の支保工を適切に配置決定するという目的を、電子計算機が処理する、構造物の設計図面における寸法データ、スラブスパンについてはスラブを支持する両梁幅の中心(梁芯)同士の間隔の寸法、の入力を受け付ける構造入力ステップと、この構造入力ステップの入力データに基づいて解析モデルを作成する解析モデル作成ステップと、前記構造入力ステップの入力データに基づいた構造要素の荷重値の入力を受け付ける荷重値入力ステップと、前記構造入力ステップと前記荷重値入力ステップとに基づいて、前記スラブスパンを梁の空間内側の縁部間の寸法に補正したうえ、施工荷重値、壁面部の応力値、許容応力値、梁の断面係数値を演算する演算ステップと、前記演算ステップの各演算値を前記解析モデルにおいて反映させて梁応力、スラブ応力、スラブたわみを解析する解析ステップと、前記解析ステップに基づいて支保工の配置及び本数を前記構造入力ステップで受け付けた設計図面のデータに反映させる支保工設定ステップと、を有するプログラム構成とすることで達成した。
【0020】
本発明は、入力されたデータを所定の演算処理を行って出力する電子計算機、例えば(パーソナル)コンピュータにインストールされるプログラムである。すなわち、本発明は、入力されるデータとは、「構造入力ステップ」において構造物の設計図面における寸法データ、スラブスパンについてはスラブを支持する両梁幅の中心(梁芯)同士の間隔の寸法、「荷重値入力ステップ」において構造入力ステップにおける寸法データに基づいた構造要素の荷重値、である。
【0021】
電子計算機に入力された(受け付けられた)上記データに基づく演算処理とは、「解析モデル作成ステップ」において構造入力ステップで受け付けられた入力データに基づいて解析モデルを作成する処理、「演算ステップ」において構造入力ステップと荷重値入力ステップとに基づいてスラブスパンを梁の空間内側の縁部間の寸法に補正したうえで施工荷重値、壁面部の応力値、許容応力値、梁の断面係数値を演算する処理、「解析ステップ」において前記演算ステップにおける各演算値を前記解析モデルに反映させて梁応力、スラブ応力、スラブたわみを解析する処理、である。
【0022】
電子計算機に入力された(受け付けられた)上記データを上記演算処理して出力されるデータとは、「支保工設定ステップ」において、解析ステップに基づいて支保工の配置及び本数を前記構造入力ステップで受け付けた設計図面に反映させたデータ、である。
【0023】
上記において、通常のFEM解析プログラムでは、梁の厚みは梁幅中心の線で表され、スラブスパンは前記梁中心線間の寸法となって実際より長くなり、荷重を受ける面積が実際より広くなる。
【0024】
これに対し、本発明は、演算ステップにおいて、スラブスパンを梁の空間内側の縁部間の寸法に補正するから、従来に比べ、スラブスパンは実際に近い状態で短くなり、また、荷重を受ける面積も実際に近くなる。したがって、本発明であれば、使用する支保工の本数を従来に比べて少なくでき、また、配置に関しても適切な位置に設定できる。
【0025】
また、本発明は、上記支保工設定ステップにおいて、型枠構築のための支保工の配置と本数の決定と共に、型枠解体時に残置する支保工の配置と本数を決定するようにしてもよい。このように、型枠解体時に残置する支保工の本数と配置を適切に決定できるので、その階における時期に適した他の支保工は他の場所で使いまわしができ、必要資材の削減などが可能となる。
【実施例】
【0026】
以下、
図1~
図7を参照して本発明の具体的実施形態について説明する。本実施例においては、所定条件を満たした際に先に撤去する一般支保工と、一般支保工を撤去してなお所定条件を満たすまで残置するピンポイント支保工、の二種類存在する。なお、両者を総称する場合には、単に支保工という。
【0027】
図1、
図2には、JASS5(2015)における複数階のコンクリート構造物を構築する際の型枠の設置と解体計画モデルを示している。
(1)2階スラブのための支保工のうちの所定場所の所定本数をピンポイント支保工とし、残りを一般支保工として型枠を構築し、1階部分のコンクリートを打設する。
【0028】
(2)1階部分のコンクリートを打設した後、2階スラブのコンクリート圧縮強度が19N/mm2 以上であることを確認して、1階の一般支保工と共に型枠を解体すると共に、3階スラブのための支保工のうちの所定場所の所定本数をピンポイント支保工とし、残りを一般支保工として2階部分の型枠を構築する。
【0029】
(3)2階部分のコンクリートを打設する。
(4)2階部分のコンクリートを打設した後、後述する2階スラブのコンクリート圧縮強度が所定値以上であることを確認して、2階の一般支保工と共に型枠を解体すると共に、3階スラブのための支保工のうちの所定場所の所定本数をピンポイント支保工とし、残りを一般支保工として3階部分の型枠を構築する。
【0030】
(5)3階部分のコンクリートを打設する。
(6)3階部分のコンクリートを打設した後、後述する2階スラブのコンクリート圧縮強度が所定値以上であることを確認して、2階の一般支保工と共に型枠を解体すると共に、3階スラブのための支保工のうちの所定場所の所定本数をピンポイント支保工とし、残りを一般支保工として4階部分の型枠を構築する。
【0031】
(7)1階部分のピンポイント支保工を解体する。
(8)4階部分のコンクリートを打設する。
【0032】
(9)4階部分のコンクリートを打設した後、後述する4階スラブのコンクリート圧縮強度が所定値以上であることを確認して4階の一般支保工と共に型枠を解体する。
(10)2階スラブのコンクリート圧縮強度が設計強度であることを確認して2階のピンポイント支保工を撤去する。
(11)3階スラブのコンクリート圧縮強度が設計強度であることを確認して3階のピンポイント支保工を撤去する。
(12)4階スラブのコンクリート圧縮強度が設計強度であることを確認して4階のピンポイント支保工を撤去する。
【0033】
上記計画において、本発明の支保工の配置及び本数の決定プログラム(以下、プログラムという)は、例えば不図示の、中央演算装置(CPU)、主記憶装置(RAM)、記憶装置(HDD)、入力装置(キーボード及びマウス)、並びに表示装置(ディスプレイ)をハードウェアとして有した(パーソナル)コンピュータにおける記憶装置にインストールされて、コンピュータと協働して、主記憶装置に読みだされて、入力に応じて中央演算装置によりその処理規則に応じて入力データを処理して、表示装置や記憶装置に演算結果を出力するものである。なお、以下の説明では、処理主体として、上記構成の電子計算機ということとする。
【0034】
本発明のプログラムは、上記、JASS5(2015)の解体計画モデルにおいて、
図3に示す手順により支保工の配置及び本数の決定を行う。
処理が開始されると、電子計算機は、入力された構造物の設計図面データに基づいて寸法データ
、スラブスパンについてはスラブを支持する両梁幅の中心(梁芯)同士の間隔の寸法、を受け付ける(ステップ1、以下S1と記す S1:「構造入力ステップ」)。
【0035】
続いて、電子計算機は、S1で受け付けた寸法データに基づいて、解析モデルを作成する(S2:「解析モデル作成ステップ」)。解析モデル作成ステップでは、構造入力ステップに基づいて安全性を考慮して、応力が大きくなる方向に単純化した計算ルールを作成することを意味する。これが後のS5において必要となるそのコンクリート構造のメッシュモデル(線形モデル)となる。
【0036】
解析モデル作成ステップにおいては、設計基準強度等が必要となる。設計基準強度とは、対象階での最小コンクリート圧縮強度値であり、
図1の(2)の計算対象階における必要圧縮強度は、自重+1.5kN、に基づいて、また、(3)及び(5)~(8)の計算対象階における必要圧縮強度は、1.8(自重+型枠荷重)+積載荷重量、に基づいて算出して設定する。
【0037】
その他、例えば、階高値、標準的柱間スパン、柱部材、ボイドスラブ部材、片持スラブ部材、大梁部材、段差補強部材、片持部線荷重の立上、一般線荷重の立上、の各値を設計図面データに基づいて算出して設定し、また、必要な場合はマウスやキーボードからの入力を受け付ける。
【0038】
次に、前記構造入力ステップ(S2)における入力データに基づいた構造要素の荷重値の入力を受け付ける(S3:「荷重値入力ステップ」)。構造要素の荷重値とは、例えば、構造部材の面荷重、構造部材の線荷重、片持部分の施工線荷重、一般部の施工線荷重、の各値である。これら各値は、設計図面の寸法データに基づいて算出して設定され、また、必要な場合はマウスやキーボードからの入力を受け付ける。
【0039】
この荷重値入力ステップS3における本発明の特徴的処理について説明する。例えば
図4のようなコンクリート構造物CSを構築する際、このスラブSLの線荷重は、従来では
図5(a)~(c)に示すように、(a)I型の梁IB、(b)L型の梁LB、(c)T型の梁TBの芯寸法(梁芯BS)で行う、つまり
図6に破線で示すスラブSLのスパンにて行っていた。
【0040】
しかし、その場合、スラブSLを支持する梁とスラブSLの荷重が重複することとなるから、この場合は構造梁高よりスラブ厚を減じて荷重断面とするなどをしていたが、これでは全体としての誤差が生じてしまう。
【0041】
上記誤差の弊害は、例えば、スラブSLのスパンを梁芯BSで見た場合、
図7(b)に示すようにスラブSLの面積は破線ハッチング領域となり、相対する梁と重複する面積が生じて広くなるため、スラブ荷重が増加することになる。その結果、今、説明として極端ではあるが、必要な一般支保工PSが全体で40本、ピンポイント支保工PPPSが18本、つまり58本の支保工が必要となる。
【0042】
そこで、本発明は、
図6に実線で示す寸法のように、梁の空間内側の縁部間の寸法に補正することで、スラブSLのスパンが短くなり、
図7(a)に示すように破線ハッチング領域が実際に沿ったものとできるため、スラブSLの荷重もまた実際に沿ったものとなる。その結果、今、説明としては極端であるが、必要な一般支保工PSが全体で24本、ピンポイント支保工PPPSが10本、つまり34本の支保工で済むこととなる。
【0043】
図7に示す例は、極端なので、同図(a)(b)の支保工の本数を比較することはしないが、
図7(b)の従来の梁芯BS間寸法をスラブSLのスパンとしてスラブSLの荷重を計算していた場合と比べて、
図7(a)の本発明は、同図(b)よりスラブSLのスパンが短くなってスラブSLの荷重も軽くなるから、必要となる支保工が少なくて済むことは間違いない。
【0044】
さらに、演算ステップ(S4)においては、壁部において垂直に力が加えられた時に変形しながら元に戻ろうとする力(本発明ではこれをバネ値kN/cmという)、スラブや梁の構造部材の許容応力(JASS5に基づく)、梁の断面係数、の各値を演算する。
【0045】
S4の後、解析モデルにおいて、上記S3、S4の各値に基づいて、梁及びスラブの応力、及びスラブのたわみを、コンクリート構造物の構築をシミュレーションしながら解析する。ここで、電子計算機は、例えばモニターに、階上への構築シミュレーションの進捗に応じて解析モデルにおいてどこがたわみやすいかなどを表示する。
【0046】
その後、たわみやすい部分、荷重が集中する部分を(例えば許容値を超えたか否かで)判定して、一般支保工を配置する場所と本数、階上へと構築する際に、一般支保工を撤去して残置しておくピンポイント支保工の場所と本数、を決定し、設計図面データに反映、出力する。
【0047】
このように、本発明であれば、実際のスラブスパンに沿った解析ができるので、一般支保工、ピンポイント支保工の数を減らすことができると共に、ピンポイント支保工を必要最低限で適切な位置に配置することで、型枠解体も早期化でき、全体としての工期短縮が可能となる。
【符号の説明】
【0048】
CS コンクリート構造物
B 梁
BS 梁芯
SL スラブ
PS 一般支保工
PPPS ピンポイント支保工