IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社都ローラー工業の特許一覧

<>
  • 特許-塗布装置 図1
  • 特許-塗布装置 図2
  • 特許-塗布装置 図3
  • 特許-塗布装置 図4
  • 特許-塗布装置 図5
  • 特許-塗布装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】塗布装置
(51)【国際特許分類】
   B05C 1/02 20060101AFI20240227BHJP
   B05C 13/00 20060101ALI20240227BHJP
   B05C 9/04 20060101ALI20240227BHJP
   B05C 21/00 20060101ALI20240227BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
B05C1/02 102
B05C13/00
B05C9/04
B05C21/00
H05K3/28 E
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022117710
(22)【出願日】2022-07-25
(62)【分割の表示】P 2020042924の分割
【原出願日】2020-03-12
(65)【公開番号】P2022132632
(43)【公開日】2022-09-08
【審査請求日】2023-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】391052622
【氏名又は名称】株式会社都ローラー工業
(74)【代理人】
【識別番号】100144749
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 正英
(74)【代理人】
【識別番号】100076369
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 正治
(72)【発明者】
【氏名】町田 成司
(72)【発明者】
【氏名】町田 成康
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-319754(JP,A)
【文献】特開平9-290191(JP,A)
【文献】特開2000-354807(JP,A)
【文献】特開2003-251248(JP,A)
【文献】特開2006-846(JP,A)
【文献】特開2000-254573(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C1/00- 3/20
7/00-21/00
B05D1/00- 7/26
H05K3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも基材を吊持する吊持具と、基材に塗料を塗布する塗布ロールを備え、当該吊持具で引き上げられる基材に当該塗布ロール表面の塗料を転写させることによって基材に塗料を塗布する塗布装置において、
基材を押さえる押さえピンと、
前記押さえピンを前記基材に近づく方向及び基材から離れる方向に移動させるピン駆動手段を備えた、
ことを特徴とする塗布装置。
【請求項2】
請求項1記載の塗布装置において、
押さえピンが複数本設けられた、
ことを特徴とする塗布装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の塗布装置において、
押さえピンが基材のそれぞれの面の外側に二本以上設けられた、
ことを特徴とする塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材への塗料の塗布に用いる塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板やフィルム、シート、板、パネル等の基材の表面に、レジスト塗料や導電塗料、絶縁塗料、保護塗料、強化塗料、UV光遮光塗料、帯電防止塗料、着色塗料、機能性コーティング剤等の塗料が塗布されることがある。一例としては、プリント配線基材やその表面の銅箔にレジストを塗布する場合があげられる。
【0003】
従来、基材に塗料を塗布する装置として、基材に接触する二つの塗布ロールと、当該塗布ロールに供給される塗料の量を調整するドクターバーを備えたものが知られている(特許文献1)。
【0004】
前記塗布装置をはじめとする従来の塗布装置では、図6(a)~(c)に示すように、吊持具Aで保持された基材Pが両塗布ロールB間を下向きに下降して下受け具Cに到達すると、当該基材Pの両面が押さえピンDで支持され、その後、両塗布ロールBが基材Pに当接して塗布ロールBに供給された塗料が基材Pに転写されて塗料が基材Pに塗布される。
【0005】
前記塗布装置では、塗布ロールBは基材Pに接触しているか否かにかかわらず回転しており、押さえピンDで基材Pを押さえたまま塗布ロールBを接触させると、基材Pが塗布ロールBの回転力で上昇するときに押さえピンDによって傷つくおそれがあるため、両押さえピンDは両塗布ロールBが基材Pに当接する直前に基材Pから離れるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-20287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、近年、スマートフォンやタブレット、携帯電話等には、フレキシブル基板が多用されている。フレキシブル基板はリジッド基板に比べて柔らかいため起立姿勢を保持しにくく、フレキシブル基板が傾いたりよれたりして塗料の塗布に不都合を生じることがある。
【0008】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、基材の種類に関わらず、起立姿勢を保持しやすい塗布装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の塗布装置は、基材を吊持する吊持具と、基材を押さえる押さえピンと、基材に塗料を塗布する塗布ロールを備えた塗布装置であって、基材を押さえる押さえピンと、押さえピンを基材に近づく方向及び基材から離れる方向に移動させるピン駆動手段を備えたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の塗布装置は基材の起立姿勢を保持する姿勢保持具を備えているため、基材が起立姿勢を保持しやすく、姿勢の乱れによる不具合が生じにくい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】(a)は本発明の塗布装置の斜視図、(b)は(a)の塗布装置を左側面側から見た場合の説明図、(c)は(a)の塗布装置を正面側から見た場合の説明図。
図2】(a)~(c)は図1に示す塗布装置の動作説明図。
図3】(a)~(c)は図1に示す塗布装置の動作説明図。
図4】(a)~(d)は他の実施形態の塗布装置を正面側から見た場合の動作説明図。
図5】(a)~(d)は図4(a)~(d)の縦断面説明図。
図6】(a)~(c)は従来の塗布装置の動作説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(塗布装置の実施形態)
本発明の塗布装置10の実施形態の一例を、図面を参照して説明する。一例として図1(a)~(c)に示す塗布装置10は、基材Pを吊持する吊持具1と、基材Pを押さえる押さえピン2と、基材Pに塗料を塗布する塗布ロール3と、塗布ロール3の周方向外側に配置されたドクターバー4と、塗布ロール3の塗布部の長手方向外側に配置されたこぼれ止め5と、基材Pの両面に接触又は近接して当該基材Pの起立姿勢を保持する姿勢保持具6と、降下した基材Pの下側を支持する下受け具7を備えている。
【0013】
本願の基材Pには基板やフィルム、シート、板、パネル等が含まれる。ここでいう基板には、リジッド基板やフレキシブル基板、これらに銅箔が接着されたものなどが含まれる。また、本願の塗料には、レジスト塗料や導電塗料、絶縁塗料、保護塗料、強化塗料、UV光遮光塗料、帯電防止塗料、着色塗料、機能性コーティング剤等が含まれる。
【0014】
前記吊持具1は基材Pを保持して吊り下げる部材である。この実施形態の吊持具1は、基材Pの上部を挟持するクリップ状の部材である。吊持具1は図示しない昇降装置によって、昇降するように構成されている。この実施形態では、吊持具1が三つの場合を一例としているが、吊持具1は三つより多くても少なくてもよい。
【0015】
前記押さえピン2は所定位置まで降下した基材Pの両面を押さえるピン状の部材である。この実施形態の押さえピン2は、図示しない駆動手段(ピン駆動手段)によって基材Pに接近する方向と基材Pから離れる方向に移動するように構成されている。この実施形態では、基材Pのそれぞれの面の外側に二本ずつ(合計四本)設けられた場合を一例としている。押さえピン2は四本より多くても少なくてもよい。
【0016】
前記塗布ロール3は、基材Pに塗料を塗布するためのロールである。この実施形態では、塗布ロール3としてゴムロールを用いている。ゴムロールには天然ゴム及び合成ゴムが含まれる。図示は省略しているが、塗布ロール3の外周面には格子状やピラミッド状、螺旋状といった各種形状の凹凸(セル)設けられている。セルの形状は一例でありこれ以外であってもよい。塗布ロール3にはセルのないベタロールを用いることもできる。
【0017】
図示は省略しているが、この実施形態の塗布ロール3は、一端側に駆動モータに接続されたギヤが設けられるとともに、他端側がベアリングで回転可能に軸支されている。この実施形態の塗布ロール3は、基材Pに接触しているか否かにかかわらず常時回転するように構成されている。塗布ロール3の回転方向は、基材Pに接触したときに基材Pを上昇させる方向、具体的には、図1(b)のように、一方(図中左側)の塗布ロール3は反時計回りに、他方(図中右側)の塗布ロール3は時計回りに回転するようにしてある。
【0018】
前記ドクターバー4は、各塗布ロール3の外周に当接して当該塗布ロール3との間に塗料貯留部を形成するとともに、塗布ロール3に供給された塗料の余剰分をかき落とす役割を果たす部材である。この実施形態では、塗布ロール3の長さ方向に長い長方形状の平板材を用いている。
【0019】
前記こぼれ止め5は、塗料貯留部に貯留した塗料が外側にこぼれるのを防止するための部材である。各こぼれ止め5は塗布部の長手方向の端面に近接又は当接するようにしてある。
【0020】
基材Pの一方の面側に配置された塗布ロール3、ドクターバー4及びこぼれ止め5は一つのユニットとして基材Pに近づく方向又は基材Pから離れる方向に移動するようにしてある。同様に、基材Pの他方の面側に配置された塗布ロール3、ドクターバー4及びこぼれ止め5は一つのユニットとして基材Pに近づく方向又は基材Pから離れる方向に移動するようにしてある。この移動は図示しない駆動手段によって行われる。
【0021】
前記姿勢保持具6は基材Pの両面に接触又は近接して当該基材Pの起立姿勢を保持するための部材である。この実施形態の姿勢保持具6はゴム製の直方体状ブロックである。この実施形態では、姿勢保持具6を基材Pの一方の面の外側に二つ、他方の面の外が側に二つ(合計四つ)設けられている。図1(a)(c)に示すように、各面の外側の姿勢保持具6は、基材Pの幅方向に間隔をあけて設けられている。姿勢保持具6の数は四つより多くすることも少なくすることもできる。
【0022】
この実施形態の各姿勢保持具6は、図示しない駆動手段によって基材Pに接近する方向と基材Pから離れる方向に移動するように構成されている。各姿勢保持具6は個別に移動するように構成することもできるが、この実施形態では、基材Pの同一面を押さえる二つの姿勢保持具6が同期して移動するようにしてある。この実施形態では、姿勢保持具6を塗布ロール3と別々に移動するようにしてあるが、塗布ロール3と同期して移動するようにしてもよい。各姿勢保持具6は移動せずに一定位置に固定しておくこともできる。
【0023】
各姿勢保持具6は、塗布ロール3の下側に設けられている。姿勢保持具6は、塗布ロール3に接触するように設けることも、離して設けることもできる。塗布ロール3に接触するように設ける場合、姿勢保持具6の上面を塗布ロール3の外周に沿うように円弧状に窪ませておくこともできる。
【0024】
この実施形態では姿勢保持具6をゴム製としているが、姿勢保持具6はゴム製以外であってもよい。いずれの場合も、塗布ロール3での塗料の塗布に際して、基材Pのスムーズな上昇を阻害しない程度の摩擦抵抗の低い材質性とするのが好ましい。姿勢保持具6は、基材Pのスムーズな上昇を阻害しないように接触面積の小さな形状とすることもできる。また、姿勢保持具6の少なくとも当接面にフッ素樹脂加工を施して摩擦抵抗を小さくしてもよい。
【0025】
前記下受け具7は、所定位置まで下降した基材Pの下端側を支持するための部材である。この実施形態では、下受け具7として基材Pの幅方向よりも上向きコ字状の樋状部材を用いている。下受け具7は塗布ロール3や姿勢保持具6、押さえピン2よりも低い位置に配置されている。下受け具7は、当該下受け具7に基材Pが到達したときに、当該基材Pの上端付近(塗料塗布部の上端)が塗布ロール3と同程度の高さになるような位置に設けてある。
【0026】
ここで説明した塗布装置10は一例であり、本発明の塗布装置10は前記実施形態と異なる構成とすることもできる。いずれの場合も、姿勢保持具6を設けることによって、フレキシブル基板Pが起立姿勢を保持しやすくなり、姿勢の乱れによる不都合が生じにくくなる。また、前記塗布装置10の各構成はすべてが必須の構成というわけではなく、不要な構成は適宜省略することができる。
【0027】
(動作)
この実施形態の塗布装置10は、次のように動作する。
(1)図2(a)は基材Pが吊持具1によって吊られた状態を示すものである。
(2)吊持具1で保持された基材Pは、図2(b)のように所定位置まで降下し、下受け具7で支持される。
(3)基材Pが下受け具7で支持されると、図2(c)のように基材Pの両面の押さえピン2が基材Pに当接し、基材Pが保持される。このとき、基材Pが押さえピン2で保持される直前に、吊持具1による基材Pの挟持が解除される。
(4)基材Pが押さえピン2で保持されると、図3(a)のように基材Pの両面の塗布ロール3が基材Pに当接し、塗布ロール3表面に保持された塗料が基材Pに転写される。このとき、基材Pが塗布ロール3で保持される直前に、押さえピン2による基材Pの保持が解除される。
(5)前記(4)において塗布ロール3が基材Pに当接するとき、姿勢保持具6が基材Pの両面に接近又は接触して基材Pの起立姿勢が保持される。
(6)塗布ロール3による塗布が開始されると、図3(b)のように吊持具1が下降して基材Pの上端部が挟持される。
(7)吊持具1によって基材Pの上端部が挟持されると、図3(c)のように吊持具1が上昇を開始し、その上昇によって基材Pが上方に引き上げられる。このとき、基材Pに当接した塗布ロール3表面の塗料が基材Pに転写され、基材Pへの塗料の塗布が完了する。
【0028】
なお、姿勢保持具6は塗布ロール3が基材Pに当接する直前や、吊持具1に基材Pの上端部が挟持される直前に、基材Pから離れるようにすることもできる。
【0029】
(その他の実施形態)
前記実施形態では、吊持具1によって基材Pの上端部が挟持される場合を一例としているが、フレキシブル基板のような柔軟な(腰のない)基材Pを挟持する場合、図4(a)~(d)及び図5(a)~(d)に示すような基材Pの幅方向の両端側を挟持する吊持具1が用いられることがある。
【0030】
この吊持具1は、基材Pの長さ方向の全長又は略全長を挟持できる長さを備えている。この吊持具1は、塗料が塗布される塗布部P1と塗料が塗布されない非塗布部P2を備えた基材Pの挟持に用いられるものであり、基材Pの非塗布部P2を挟持する。本発明の塗布装置10は、このような吊持具1を備えたものとすることもできる。
【0031】
上記吊持具1を備えた塗布装置10は次のように動作する。
(1)図4(a)及び図5(a)は、基材Pが吊持具1によって吊られた状態を示すものである。
(2)吊持具1で保持された基材Pは、図4(b)及び図5(b)に示すように、所定位置まで降下し、下受け具7で支持される。
(3)基材Pが下受け具7で支持されると、基材Pのしわ防止のため、吊持具1による基材Pの挟持が図4(c)のように一旦解除される(図4(c)の二点鎖線は吊持具1による基材Pの挟持が解除されていることを意味する)。
(4)吊持具1による基材Pの挟持が解除されると、図4(c)及び図5(c)のように、基材P両面の押さえピン2が基材Pに当接して基材Pが保持されるとともに、姿勢保持具6が基材Pに接近又は接触して基材Pの起立姿勢が保持される。
(5)基材Pが押さえピン2で保持され、姿勢保持具6でその起立姿勢が保持されると、図4(d)及び図5(d)に示すように、吊持具1によって当該基材Pが再度挟持される。このとき、基材Pが吊持具1で挟持される直前に、押さえピン2による基材Pの保持が解除される。
(6)吊持具1によって基材Pが挟持されると、図4(d)及び図5(d)に示すように、基材Pの両面の塗布部P1に塗布ロール3が当接し、当該塗布ロール3表面に保持された塗料が基材Pに転写される。このとき、吊持具1と塗布ロール3とは、吊持具1による基材Pの引き上げ速度と、塗布ロール3の回転力による引き上げ速度が一致するようにしてある。
(7)吊持具1及び塗布ロール3によって基材Pが上昇すると、基材Pに当接した塗布ロール3表面の塗料が基材Pの塗布部P1に転写され、基材Pへの塗料の塗布が完了する。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の塗布装置10は、各種基材Pへの塗料の塗布に用いることができ、フレキシブル基板Pやフレキシブル基板Pの表面に接着された銅箔にレジスト等を塗布する装置として特に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0033】
1 吊持具
2 押さえピン
3 塗布ロール
4 ドクターバー
5 こぼれ止め
6 姿勢保持具
7 下受け具
10 塗布装置
A 吊持具
B 塗布ロール
C 下受け具
D 押さえピン
P 基材(フレキシブル基板)
P1 塗布部
P2 非塗布部
図1
図2
図3
図4
図5
図6