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  • 特許-特殊流体のエアロゾル印刷 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】特殊流体のエアロゾル印刷
(51)【国際特許分類】
   B05B 5/025 20060101AFI20240227BHJP
   B05B 5/03 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
B05B5/025 A
B05B5/03
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022501308
(86)(22)【出願日】2020-06-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-14
(86)【国際出願番号】 US2020037758
(87)【国際公開番号】W WO2021006996
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2022-02-22
(31)【優先権主張番号】62/873,033
(32)【優先日】2019-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511000957
【氏名又は名称】ザ・リージェンツ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・ミシガン
【氏名又は名称原語表記】THE REGENTS OF THE UNIVERSITY OF MICHIGAN
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ツェ,ライ・ユィ・レオ
(72)【発明者】
【氏名】マクミラン,イーサン・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】バートン,キラ
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0253638(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0163647(US,A1)
【文献】米国特許第03698635(US,A)
【文献】特開昭61-035257(JP,A)
【文献】特開2016-144786(JP,A)
【文献】特開2011-255277(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 1/00-17/08
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電場の存在下で印刷ノズルから印刷流体を抽出する抽出ガスの流れを提供するように構成された印刷機であって、
前記印刷機は、抽出ガスノズルをさらに備え、前記抽出ガスノズルは、前記印刷ノズルの外面に沿って抽出ガスの流れを放出するように構成され、前記印刷ノズルの先端は、前記抽出ガスノズルと印刷基板との間に位置し、放出された抽出ガスは、前記印刷ノズルの前記外面に沿って流れ続け、前記印刷ノズルの前記先端に到達し、ノズル軸に沿って収束し、低圧力領域が前記印刷ノズルの前記先端において生じ、前記低圧力領域は、前記印刷ノズル中の前記印刷流体を抽出させ、
前記電場は抽出された前記印刷流体を印刷基板に向かって加速させるように配置される、印刷機。
【請求項2】
前記抽出ガスノズルは前記印刷ノズルと同軸であり、かつ前記印刷ノズルを囲み、前記抽出ガスは、前記抽出ガスノズルから放出されて前記印刷ノズルの前記先端で収束する前に、前記印刷ノズルの前記外面における環状間隙に沿って流れる、請求項1に記載の印刷機。
【請求項3】
前記抽出ガスノズルと同軸であり、前記抽出ガスノズルを囲む、集束ノズルをさらに備え、前記集束ノズルは、前記抽出ガスノズルの外面における環状間隙に沿って流れる集束ガスが前記集束ノズルから放出されるように構成され、
前記集束ノズルから放出された前記集束ガスは、前記印刷ノズルと前記印刷基板との間における抽出された前記印刷流体の周りに集束ガスの覆いを提供する、請求項1に記載の印刷機。
【請求項4】
前記抽出ガスノズルは、前記抽出ガスノズルと前記印刷基板との間に前記電場を提供する帯電電極を備える、請求項1に記載の印刷機。
【請求項5】
印刷機であって、
前記印刷機は印刷ノズルを備え、前記印刷ノズルは、先端を有し、前記印刷ノズルからの抽出のために前記先端に印刷流体を供給するように構成された、前記印刷ノズルと、
出ガスノズルは、前記印刷ノズルの前記先端が抽出ガスの流れの中にある状態で、前記抽出ガスの流れを印刷基板に向かって、かつ前記印刷ノズルの外面に沿って放出し、前記抽出ガスの流れが前記印刷ノズルの前記先端に到達し、ノズル軸に沿って収束するように構成され、前記抽出ガスの速度は、低圧力領域を前記印刷ノズルの前記先端において発生させるのに十分であり、前記低圧力領域は、前記印刷ノズルから前記印刷ノズル中の前記印刷流体を抽出させ、前記印刷基板に運
前記抽出ガスノズルはガス放出ポートを含み、前記ガス放出ポートは環状であり、前記印刷ノズルを囲み、
前記印刷ノズルの前記先端と前記印刷基板との間の距離は、前記ガス放出ポートと前記印刷基板との間の距離よりも小さい、
印刷機。
【請求項6】
電極をさらに備え、前記電極は、前記印刷流体が前記印刷ノズルからの抽出後に前記印刷基板に向かって加速するように、前記電極と前記印刷基板との間に電場を提供するように構成される、請求項に記載の印刷機。
【請求項7】
前記印刷流体は前記印刷ノズルにおいて加圧され、前記印刷流体は、500センチポイズより大きく500,000センチポイズ以下の粘度を有する、または5μm~200μmの有効直径を有する固体粒子を含有する、請求項に記載の印刷機。
【請求項8】
前記抽出ガスノズルは電極を含み、前記電極は、前記印刷流体が抽出後に前記印刷基板に向かって加速するように、前記電極と前記印刷基板との間に電場を提供するように構成される、請求項に記載の印刷機。
【請求項9】
前記印刷ノズルは電気絶縁性である、請求項に記載の印刷機。
【請求項10】
前記印刷ノズルと前記印刷基板との間における抽出された前記印刷流体の周りに集束ガスの覆いを提供するように構成される、ガス放出ポートをさらに備える,請求項に記載の印刷機。
【請求項11】
印刷ノズルと基板との間に電場を選択的に生成し、前記印刷ノズルの先端に沿って抽出ガスの流れを選択的に提供するように構成された印刷機であって、
抽出ガスノズルを備え、前記抽出ガスノズルは、前記印刷ノズルの外面に沿って抽出ガスの流れを放出するように構成され、低圧力領域が前記印刷ノズルの先端において生じ、抽出ガスの流れが選択的に提供された時に前記低圧力領域は、前記印刷ノズル中の印刷流体を抽出させ、
前記印刷機は、
前記抽出ガスの前記流れが提供され、前記電場が生成されない、ガス抽出モードと、
前記抽出ガスが提供され、前記電場が生成される、eアシステッドガス抽出モードと、
前記抽出ガスが提供され、前記電場が生成される、eジェットモードと、
において動作可能である、印刷機。
【請求項12】
前記印刷ノズルの周囲を囲む電極をさらに備え、前記eアシステッドガス抽出モードおよび前記eジェットモードにおいて前記電場を生成するために、前記電極に電圧が印加される、請求項11に記載の印刷機。
【請求項13】
前記印刷ノズルと同心である第2のノズルをさらに備え、前記抽出ガスは、前記ガス抽出モードおよび前記eアシステッドガス抽出モードにおいて、前記印刷ノズルの前記先端に沿って流れる前に前記印刷ノズルと前記第2のノズルの間における間隙に沿って流れる、請求項11に記載の印刷機。
【請求項14】
前記印刷機は、電極電圧をそれぞれオフおよびオンに切り替えることによって、前記ガス抽出モードと前記eアシステッドガス抽出モードとの間で変更可能である、請求項11に記載の印刷機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本開示は、概して印刷に関し、特に特殊印刷流体の印刷に適用可能である。
【背景技術】
【0002】
背景
印刷は、主に情報提供目的のために読取可能なテキストやグラフィックイメージを生産するための技術から、将来性のある有用な製造プロセスへと発展している。特に、具体的に特定された場所のみにおいて印刷媒体上へ機能材料を堆積する能力は、従前の顔料または染料以外の材料を堆積するのに適合されるとき、廃棄物がゼロで比較的速い付加製造をもたらし得る。しかし、印刷媒体との視覚コントラスト以外の有用な特性を有する材料の堆積の難しさは、製造プロセスとしての印刷を制限し続ける。これは、部分的には、適用可能な印刷技術が、一般に、液系材料を印刷媒体へまたは印刷媒体に向かって供給する一方で、製造された製品が典型的には固体材料から形成されるためである。いくつかの固体材料は、その後に蒸発する、反応する、またはバインダとして作用する液体キャリア材料を介して微粒子形態で印刷され得るが、既知の印刷法に対応するために、固体含有量および粒径について制限が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
概要
印刷機の実施形態は、連続的な静電場の存在下で印刷ノズルから印刷流体を抽出する抽出ガスの噴出を提供するように構成され、静電場は抽出された印刷流体を印刷基板に向かって加速させるように配置される。
【0004】
いくつかの実施形態において、印刷機は、印刷ノズルと同軸の、印刷ノズルを囲む、抽出ガスノズルを含み、抽出ガスは、抽出ガスノズルから放出されて印刷ノズルの先端で収束する前に、印刷ノズルの外面における環状間隙に沿って流れる。
【0005】
いくつかの実施形態において、印刷機は、抽出ガスノズルと同軸であり、抽出ガスノズルを囲む、集束ノズルを含み、集束ガスは、集束ノズルから放出されて印刷ノズルと印刷基板との間における抽出された印刷流体の周りに集束ガスの覆いを提供する前に、抽出ガスノズルの外面における環状間隙に沿って流れる。
【0006】
いくつかの実施形態において、抽出ガスノズルは、抽出ガスノズルと印刷基板との間に静電場を提供する帯電電極を備える。
【0007】
いくつかの実施形態において、印刷ノズルの先端は、抽出ガスノズルと印刷基板との間に位置する。
【0008】
印刷機の実施形態は、ノズルと、ガス放出ポートとを含む。ノズルは、先端を有し、ノズルからの抽出のために先端に印刷流体を供給するように構成される。ガス放出ポートは、ノズルの先端が抽出ガスの流れの中にある状態で抽出ガスの流れを印刷基板に向かって放出するように構成される。抽出ガスの速度は、ノズルから印刷流体を連続的に抽出するとともに抽出された印刷流体を印刷基板に運ぶのに十分である。
【0009】
いくつかの実施形態において、印刷機は電極を含み、電極は、印刷流体がノズルからの抽出後に印刷基板に向かって加速するように、電極と印刷基板との間に電位を提供するように構成される。
【0010】
いくつかの実施形態において、印刷流体はノズルにおいて加圧され、印刷流体は、抽出ガスの流れがないときに印刷流体がノズルの先端から吐き出されることを防止する組成を有する。
【0011】
いくつかの実施形態において、印刷機は、ガス放出ポートを含む抽出ガスノズルを含む。
【0012】
いくつかの実施形態において、抽出ガスノズルは電極を含み、電極は、印刷流体が抽出後に印刷基板に向かって加速するように、電極と印刷基板との間に電位を提供するように構成される。
【0013】
いくつかの実施形態において、ガス放出ポートは環状であり、ノズルを囲む。
いくつかの実施形態において、ノズルの先端と印刷基板との間の距離は、ガス放出ポートと印刷基板との間の距離よりも小さい。
【0014】
いくつかの実施形態において、ノズルは電気絶縁性である。
いくつかの実施形態において、印刷機は、ノズルと印刷基板との間における抽出された印刷流体の周りに集束ガスの覆いを提供するように構成される、追加のガス放出ポートを含む。
【0015】
印刷機の実施形態は、印刷ノズルと基板との間に静電場を選択的に生成し、印刷ノズルの先端に沿って抽出ガスを選択的に提供するように構成され、印刷機は、抽出ガスが提供され静電場が生成されないエアロゾルモード(aerosol mode)と、抽出ガスが提供され静電場が生成されるeアシステッドエアロゾルモード(e-assisted aerosol mode)と、抽出ガスが提供され静電場が生成されるeジェットモード(e-jet mode)とにおいて動作可能である。
【0016】
いくつかの実施形態において、印刷機は、印刷ノズルの周囲を囲む電極を含む。eアシステッドエアロゾルモードおよびeジェットモードにおいて静電場を生成するために、電極に電圧が印加される。
【0017】
いくつかの実施形態において、印刷機は、印刷ノズルと同心である第2のノズルを含む。抽出ガスは、エアロゾルモードおよびeアシステッドエアロゾルモードにおいて、印刷ノズルの先端に沿って流れる前にノズル間における間隙に沿って流れる。
【0018】
いくつかの実施形態において、印刷機は、電極電圧をそれぞれオフおよびオンに切り替えることによって、エアロゾルモードとeアシステッドエアロゾルモードとの間で変更可能である。
【0019】
上述の実施形態および以下の図面または説明に示されるいずれかの他の実施形態の任意の数の個々の構成は、その構成が両立しない場合を除いて、任意の組み合わせで組み合わせられて本発明を規定し得ることが考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】ノズルから印刷流体を抽出するために流れるガスを用いる印刷機の一部の断面図である。
図2】集束ガスの覆いを提供するための追加のノズルが備えられる印刷装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
実施形態の説明
高粘度液体、大きな固体粒子を含む流体、および機能インクなどの特殊流体を、起伏のある表面を含む表面上へまたは表面にわたって制御可能に堆積することが可能なエアロゾル印刷システムならびに方法が、以下に記載される。従来型のエアロゾル印刷機は、まず印刷流体を霧化し、次いで霧化された流体を空気と混合し、結果として生じたエアロゾルを圧力下でノズルを通して放出することによって動作する。しかしながら、この技術は、約500センチポイズ未満の粘度および約1ミクロン以下の最大粒径を有する印刷流体にしか対応可能でない。以下でさらに議論されるように、システムには、エアロゾルを集束させるのを助けるまたは電気流体力学印刷に適応するために、高電圧電極が備えられ得る。
【0022】
本願に用いられるように、機能インクとは、それが印刷される表面上で凝固すると着色以外の機能を提供する印刷流体である。このような機能の例として、導電性、誘電特性、物理構造(例:剛性、弾性、または摩耗耐性)、電磁遮蔽または選別、光学特性、電界発光などが挙げられる。印刷流体は、圧力下で流れ、堆積後に凝固し得る、任意の流体である。凝固は、溶媒蒸発、化学反応、冷却、または焼結などの、様々な機構を介したものであり得る。
【0023】
図1は、所望の印刷経路に沿った印刷基板16上における制御された堆積のための、印刷流体14を含有する印刷ノズル12を含む、例示の印刷ヘッド10の一部の断面図である。印刷ヘッド10は、印刷機または印刷システムの1つの構成部品であり、他の構成部品は図示されてないが、電力供給部、印刷流体源、印刷ヘッドおよび/または基板16の配向を互いに対して動かすおよび/または変えるための機構、ならびに、移動機構および/または様々な圧力、温度、電圧などの他の印刷パラメータをたとえば時間または印刷ヘッド位置もしくは配向の関数として制御するように構成された制御システムを含んでもよい。印刷機は、基板16の表面上へ、または効果的に印刷基板になる既に印刷された材料上へ直接印刷することができる。
【0024】
ノズル12は、印刷流体14の供給源と流体連通する供給端部18から先端20まで、軸(A)に沿って延在する。ノズル12は、印刷流体14をノズルからの抽出およびその後の基板16上における堆積のために先端20において供給するように構成される。印刷流体の抽出は、ノズル12の先端20におけるオリフィス22を通して起こる。オリフィス22は50μm~250μmもしくは80μm~200μmの範囲の幅または直径(d1)を有してもよく、ノズル12は10μm~75μmの範囲の壁厚を有し得る。
【0025】
ノズル12からの印刷流体14の抽出は、ノズル12の外側に抽出ガス24の流れまたは噴出を提供することによって達成され、ノズル先端20はガスの流れの中に位置決めされる。示される実施例において、抽出ガス24の流れは、抽出ガスノズル28の端部におけるガス放出ポート26から印刷基板16に向かって放出される。抽出ガス24は、ノズル12から印刷流体14を連続的に引き出しまたは抽出し、次いで抽出された印刷流体14’を印刷基板16に運ぶのに十分な速度で放出される。抽出ガス24は、空気、窒素、希ガス、または任意の他の好適なガスであり得る。
【0026】
抽出ガス24の高速の流れは、ノズル先端20においておよびノズル先端20の前において、低圧力領域30を生み出し、これにより、印刷流体14をノズル12から抽出させる圧力差を提供する。したがって、印刷機は、圧力差のために印刷流体14上の背圧のみに依存することはない。これは、高粘度を有する流体または大きな固体粒子を含む流体の印刷を可能にする。例として、特にノズルの中の加圧された印刷流体と組み合わせられるとき、この抽出技術を用いて、100~500,000センチポイズ(cps)の範囲の粘度を有する流体を印刷することができる。同様に、5μm~200μmの有効直径を有する固体粒子を含有する印刷流体を印刷することができる。これは、従来型のエアロゾル印刷の能力をはるかに上回る。これらの値は非限定的であり、この技術によってより小さい粘度およびより小さい粒径を有する印刷流体を印刷することができる。
【0027】
いくつかの場合において、印刷流体14は、15psi(約103kPa)~90psi(約621kPa)の範囲の圧力でノズル12において加圧されるが、印刷流体は、抽出ガス24の流れまたは他の外部影響がないときに流体がオリフィス22を通って吐き出されることを効果的に防止する組成を有する。抽出ガス24の使用は、印刷機の解像度を低下させ得るオリフィス22のサイズの増加を伴わずに、このような材料の印刷を可能にする。
【0028】
有用な印刷用途の1つの例は、表面上への電子回路の電気的相互接続の堆積であり、これは従来法では伝導性インクを用いるスクリーン印刷によって実施される。凝固すると低抵抗の電気接続として機能するのに十分な導電性を有する伝導性インクは、ほとんどの印刷技術に対応しないほど高い固体含有量を有する。示された印刷ヘッド10は、印刷可能である電気的相互接続のすべての異なるパターンについて独自のマスクを必要としない。さらに、スクリーン印刷は一般に平面に制限されるが、示された印刷ヘッドは起伏のある表面上に印刷することができる。
【0029】
図1の実施形態において、抽出ガスノズル28は、印刷ノズル12と同軸であり、印刷ノズル12を囲む。印刷ノズル12の外面32および抽出ガスノズルの内面34は、抽出ガス24が放出される前に流れる環状間隙36を規定するように離間される。環状間隙36は、ガス放出ポート26において最も小さくなり、そこでは200μm~300μmの範囲、または約250μmの寸法(G)を有し得る。環状放出ポート26の外径(d2)は、1mm~5mmの範囲にあってもよく、抽出ガスノズル28は、0.5mm~1.0mmの範囲の壁厚を有してもよい。印刷ノズル12の先端20は、印刷ノズルの先端が抽出ガスノズルよりも基板16に近くなるように、0.1mm~2.0mmの範囲、または約1mmの距離(D1)だけ放出ポート26を越えて突出し得る。これは、抽出された印刷流体がガス放出ポート26などの他の印刷ヘッド構成をぬらすまたは詰まらせることを防ぐのに役立ち得る。
【0030】
入れ子になったノズルのこの構成によって、抽出ガス24は、印刷ノズル12の外面32と抽出ガスノズル28の内面34との間における環状間隙36に沿って、圧力源から(例:1psi(約6.89kPa)~30psi(約207kPa)の範囲の入力圧で)流れ、環状ガス放出ポート26を通って放出される。放出された抽出ガスは、その後、印刷ノズル12の外面32に沿って流れ続け、ノズル先端20に到達した後、ノズル軸(A)に沿って収束する。結果として生じる低圧力領域30は、ノズル12中の印刷流体14を抽出させる。ノズル12中の流体は同様に加圧されてもよく、流体抽出は印刷ノズル圧および抽出ガスフローの両方が存在するときにのみ起こり得る。したがって、流体抽出は、抽出ガスが連続的に流れる間に印刷ノズル圧を減らすおよび増やすことによって、それぞれ停止および維持されることができ、逆もまた然りである。図1に示されるように、抽出された印刷流体14’は広がり、これにより霧化されて、抽出ガスと分散された印刷流体の小滴とを含むエアロゾルを形成し得る。したがって、印刷ノズルに含まれる印刷流体14はバルク液体形態にある一方、印刷ノズル12の外側ではエアロゾルが形成される。
【0031】
示された印刷ヘッド10は、印刷ヘッドと基板16との間に静電場を提供するようにも構成される。この実施例において、抽出ガスノズル28は、静電場を生成するために電圧(V)が印加される電極でもある。静電場は、基板16に到達する前に霧化された印刷流体14’を効果的に集束させることができる。この効果的な集束は、エアロゾルの中を移動する印刷流体14’の小滴を、静電場がない場合よりも速く基板16に到達するように加速させることによって起こる。抽出された印刷流体の集束されてない錐体38が、静電場がないときのエアロゾルの流れの形状を示す点線によって、図1において概略的に示されている。静電場の存在および結果として生じる印刷流体の小滴の加速は、それが基板に到達する幅(W)を有する、より狭い錐体を生じさせる。言い換えれば、抽出された印刷流体14’の小滴の発散の度合いは、各小滴が基板に到達するのにかかる時間を短くすることによって距離(D2)にわたって低減される。ノズル先端20と基板との間の距離(D2)は、3mm~30mmの範囲にあってもよく、結果として生じる堆積された流体の幅(W)は、0.8mm~3mmの範囲にあり得る。
【0032】
静電場を生じさせる電極として機能するために、抽出ガスノズル28は、導電性材料(例:金属)、または導電性材料でコーティングされたもしくはめっきされたある種の他の材料から形成され得る。加えて、印刷ノズル12は、印刷ヘッド10内におけるアーク放電を防止するために、電気絶縁材料(例:ポリマーもしくはセラミック)から形成され得る、または電気絶縁材料でコーティングされ得る。この場合、上述のおよび示された、ある距離(D1)だけガス放出ポート26を越えた印刷ノズル12の先端20の伸張は、ように、印刷流体14が導電性を有するとき、さらに有用であり、抽出された印刷流体と伝導性抽出ガスノズルとの間に十分な距離が維持されて、抽出ガスノズルに対する抽出された流体の起こり得るアーク放電または誘引を防止する。
【0033】
印加された電圧(V)が十分に高いとき、基板を電圧供給部の逆帯電した電極に直接接地するまたは電気的に接続して、霧化された印刷流体14’の移動のスピードに影響するほど十分に強い、電極と基板との間における電場を生成する必要はない。たとえば、電圧(V)は、数千ボルトほど(例:2000~5000V)であり得る。このような高度にまで帯電されるとともに、印刷の目的のために基板16に十分近い抽出ガスノズル28によって、基板の表面および高電圧構成の付近(すなわち、ノズル12,28の下方)における材料は、帯電されたノズル28の電位よりも低い電位を有する領域のように挙動し、既に霧化された印刷流体の小滴を基板に向かって引き出すのに十分強い静電場をもたらす。
【0034】
基板16と霧化された印刷流体との間における電気誘引の正確なメカニズムは完全にはわかっていないが、それは、高度に帯電された電極が存在するときの基板における表面分極効果に関連すると考えられている。いずれの場合においても、霧化された印刷流体の流れの上方の高電圧電極および接地された基板の効果が実際に観察されている。特に、図1と一致するように構成された印刷ヘッドは、印刷流体を導電性でない、したがって印刷の間に接地され得ない基板上に印刷するために用いられている。結果として生じる印刷された流体の線は、一貫性があり制御可能である。帯電電極またはノズルが省略されるとき、たとえば抽出ガスノズルが非伝導性であるか帯電されていない場合、結果として生じる印刷の線は、集束されてない錐体38の場合と同様にあまり集束されない。
【0035】
上述の印刷プロセスは、一般に対応する個々の圧力パルスまたは電気パルスを介して個々の小滴としてノズルからそれらのそれぞれのインクを放出する、インクジェット印刷またはeジェット印刷などのドロップオンデマンド印刷プロセスとは区別されるように、連続的なものである。したがって、静電場も連続的に存在する。これは、印刷ノズルからの印刷流体の抽出が場の存在に依存しないためである。静電場を生成する電極は、抽出ガスノズル以外のある形態をとってもよい。いくつかの場合において、印加される電荷の波形は、正と負とが交互になってもよい。いくつかの基板材料(例:ポリプロピレン、ラテックス、および他のタイプのポリマー)は、それらの表面において静電荷を蓄積する傾向があり、印刷前に堆積表面に静電気防止流体を吹きかけることなどによって、印刷される前に中和される必要があり得る。
【0036】
上述の印刷ヘッド10の思いがけない利益は、抽出ガスがオフにされ、高電圧抽出ガスノズルと基板16との間に生成される静電場によって印刷流体14がノズル12から抽出される、純粋に電気流体力学的な印刷が可能であるということである。印刷ヘッド10をeジェット印刷ヘッドとして用いるために、ノズル先端20の基板までの距離(D2)は、エアロゾル印刷のために用いられる範囲の下端に、またはより下方になければならない。1~7ミリメートル、または2~3ミリメートルの範囲の、先端から基板までの距離(D2)が、eジェット印刷ヘッドとしての印刷ヘッド10の使用に好適である。従来型のeジェット印刷はドロップオンデマンドプロセスである一方、本明細書に記載される印刷ヘッドを用いたeジェット印刷は、特に高粘度の印刷流体とともに用いられるとき、効果的に連続的であり得る。従来型のエアロゾル印刷では可能でなかったような十分に高い印刷流体粘度において、印刷流体の凝集性は、印加された電圧がパルス型または波形電圧であるときでも、流体が個々に抽出された小滴に分裂することを防止し得る。それにもかかわらず、eジェット印刷に関連するより高い印刷解像度の利益をいくらか得ることができる。
【0037】
このように、印刷ヘッド10は、エアロゾルモード、eジェットモード、およびeアシステッドエアロゾルモードを含む、3つの異なる印刷モードを可能とし、印刷ヘッドが備えられた印刷機は、1つのモードから別のモードへと容易に変更するように構成され得る。たとえば、使用者が高い解像度を必要とせず高い粘度の流体の比較的高速の印刷を必要とするとき、エアロゾルモードでの印刷のために、抽出ガス24はオンにされ、電圧(V)はオフにされる。このモードは、比較的集束されてないエアロゾル錐体38を生じさせ、約10mm~約30mmのノズルから基板までの距離(D2)で有用であり、約3mm~約5mmの幅(W)を有する印刷の線を生じさせることができる。エアロゾルモードは、他の2つのモードよりも短い時間でより多くの基板面積をカバーすることができるが、サブミリメートルの構成または細部を印刷することはできない。
【0038】
より高い解像度のエアロゾル印刷が所望されるとき、eアシステッドエアロゾルモードでの印刷のために、抽出ガス24および電圧(V)の両方がオンにされる。このモードは、ノズル先端20がエアロゾルモードにおけるものと同じ距離(D2)にある状態で、3mm以下、約0.8mmまでの幅(W)を有する、図1に示された霧化された印刷流体14’のより集束されたエアロゾル錐体を生じさせる。このように、eアシステッドエアロゾルモードは、エアロゾルモードよりも高い解像度の印刷を可能にするが、単位時間あたりの基板面積はそれほど多くカバーできない。
【0039】
高解像度の印刷が必要であるとき、eジェットモードで印刷するために、抽出ガス24はオフにされ、電圧(V)はオンにされる。このモードは、印刷された材料の精密な線を生じさせ、約1mm~約7mmのノズルから基板までの距離(D2)で有用であり、印刷流体の粘度にある程度応じて、約200μm~約800μmの幅を有する印刷の線を生じさせることができる。このように、eジェットモードは、他の2つのモードよりもはるかに高い解像度で印刷することができるが、堆積速度ははるかに遅い。高粘度の特殊印刷流体の印刷を可能にすることに加えて、開示された印刷ヘッド10は多重解像度での印刷を可能にし、異なる解像度での印刷のための専用の印刷ヘッドは不要になる。
【0040】
図2に関連して、上述の印刷ヘッド10は、印刷ヘッドと基板16との間における抽出された印刷流体14’の周りに集束ガス42の覆いを提供するように構成された第2のガス放出ポート40をさらに含むように示される。集束ガス42は、ノズル先端20から基板16までの距離(D2)が同じとき、印刷された流体の幅(W’)がさらに狭くなり、図1の実施例における対応する幅(W)よりも小さくなるように、エアロゾル錐体をさらに狭めることができる。集束ガス42は、抽出ガス24の組成と同じまたは異なる組成を有することができ、抽出ガスの速度と同じまたは異なる速度で放出されてもよい。
【0041】
この実施例において、放出ポート40は、抽出ガスノズル28と同軸であり、抽出ガスノズル28を覆う、集束ガスノズル44の端部に設けられ、集束ガス42は、抽出された印刷流体14’の周りに集束ガスの覆いを提供するように放出される前に、抽出ガスノズル28の外面48と集束ガスノズル44の内面50との間に規定される環状間隙46に沿って流れる。集束ガス放出ポート40は、3mm~8mmの範囲の直径(d3)を有してもよく、抽出ガスノズル28と集束ガスノズルとの間に規定される環状間隙は、0.5mm~1.5mmの範囲、または約1mmであり得る。集束ガスノズル44は、伝導性の抽出ガスノズルによって起こり得るアーク放電を回避するために電気絶縁材料から形成されてもよく、0.5mm~1.5mmの間の範囲、または約1mmの壁厚を有してもよい。
【0042】
先の説明は本発明の1つ以上の実施形態のものであると理解されたい。本発明は、本明細書に記載される特定の実施形態に限定されず、むしろ単に以下の特許請求の範囲によって規定される。さらに、先の説明に含まれる陳述は、開示された実施形態に関し、用語または語句が上記に明示的に規定されている場合以外は、本発明の範囲または特許請求の範囲に用いられる用語の定義において限定として解釈されるべきではない。様々な他の実施形態ならびに開示された実施形態に対する様々な変更および修正が当業者にとって明らかであり得る。
【0043】
この明細書および特許請求の範囲において用いられるように、「例(e.g.)」、「たとえば(for example)」、「例として(for instance)」、「など(such as)」、および「のような(like)」という語句、ならびに動詞「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」およびそれらの他の動詞の形態は、1つ以上の構成要素または他の項目の事項と合わせて用いられるとき、各々、オープンエンド(open-ended)と解釈されるべきであり、すなわち上記事項は他の追加的な構成要素または項目を排除すると考えられるべきではない。さらに、「電気的に接続された(electrically connected)」という用語およびその変形は、無線電気接続、および1つ以上のワイヤ、ケーブルまたはコンダクタを介してなされる電気接続(有線接続)の両方を含むことが意図される。他の用語は、異なる解釈を必要とする文脈において用いられる場合を除き、それらの最も広義の理に適った意味で解釈されるべきである。
図1
図2