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  • 特許-有機液体精製、回収装置および方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】有機液体精製、回収装置および方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 3/00 20060101AFI20240227BHJP
   B01D 3/10 20060101ALI20240227BHJP
   B01D 3/42 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
B01D3/00 B
B01D3/10
B01D3/42
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022538247
(86)(22)【出願日】2020-12-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-06
(86)【国際出願番号】 CN2020133001
(87)【国際公開番号】W WO2021129322
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-08-02
(31)【優先権主張番号】201922389342.8
(32)【優先日】2019-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201911368513.7
(32)【優先日】2019-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522244241
【氏名又は名称】タイヂョウ ダーシュウ インフォメーション テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】TAIZHOU DASHU INFORMATION TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Room 910, Jintian Building, Jiao Jiang Development Zone Taizhou, Zhejiang 318000 China
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】ワン ジュンホア
(72)【発明者】
【氏名】シュイ ジーリァン
(72)【発明者】
【氏名】ホア ミンユェン
(72)【発明者】
【氏名】イェン ジェンジョン
(72)【発明者】
【氏名】ワン ティェンズァ
【審査官】目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第204034299(CN,U)
【文献】中国実用新案第206518903(CN,U)
【文献】中国実用新案第206138769(CN,U)
【文献】中国実用新案第206777897(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第107515281(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110215728(CN,A)
【文献】中国実用新案第205867635(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第104587691(CN,A)
【文献】特開平10-231107(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D1/00-8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸留パイプ(102)を介してつながれた蒸留釜(1)および受入タンク(2)を含み、真空ポンプ(4)をさらに含む有機液体精製、回収装置であって、
前記受入タンク(2)と真空ポンプ(4)との間には真空貯蔵タンク(3)が設けられており、
真空貯蔵タンク(3)と受入タンク(2)との間は真空調節パイプ(203)を介してつながれており、
該真空調節パイプ(203)上には第1の真空調節弁(6)が設けられており、
真空貯蔵タンク(3)と真空ポンプ(4)との間は真空引きパイプ(304)を介してつながれており、
該真空引きパイプ(304)上には第2の真空調節弁(7)が設けられ
前記蒸留釜(1)の外部には前記蒸留釜(1)を冷却する冷却装置が設けられており、
この冷却装置の冷却水パイプおよび蒸気パイプには自動制御弁が設けられており、
この自動制御弁は制御配線を介してスマートコントローラ(5)に接続されており、
前記スマートコントローラ(5)は、真空調節コントローラ(8)と安全コントローラ(9)とを含み、
前記第1の真空調節弁(6)、第2の真空調節弁(7)および真空貯蔵タンク(3)の圧力監視装置は、真空調節コントローラ(8)に接続されており、
前記蒸留釜(1)内に設置され且つ蒸留釜(1)の内部の温度を監視する温度監視装置(1.2)、前記蒸留釜(1)内に設置され且つ蒸留釜(1)の内部の圧力を監視する圧力監視装置(1.1)、受入タンク(2)の内部と接続し且つ受入タンク(2)の内部の圧力を監視する圧力監視装置(2.1)および前記冷却装置の前記自動制御弁は、制御配線を介して安全コントローラ(9)に接続されている
ことを特徴とする有機液体精製、回収装置。
【請求項2】
蒸留パイプ(102)を介してつながれた蒸留釜(1)および受入タンク(2)を含み、真空ポンプ(4)をさらに含む有機液体精製、回収装置であって、
前記受入タンク(2)と真空ポンプ(4)との間には真空貯蔵タンク(3)が設けられており、
真空貯蔵タンク(3)と受入タンク(2)との間は真空調節パイプ(203)を介してつながれており、
該真空調節パイプ(203)上には第1の真空調節弁(6)が設けられており、
真空貯蔵タンク(3)と真空ポンプ(4)との間は真空引きパイプ(304)を介してつながれており、
該真空引きパイプ(304)上には第2の真空調節弁(7)が設けられ
前記蒸留釜(1)内に設置され且つ蒸留釜(1)の内部の温度を監視する温度監視装置(1.2)、前記蒸留釜(1)内に設置され且つ蒸留釜(1)の内部の圧力を監視する圧力監視装置(1.1)、第1の真空調節弁(6)、第2の真空調節弁(7)、真空ポンプ(4)は、いずれも制御配線を介してスマートコントローラ(5)に接続され、
前記蒸留釜(1)の外部には前記蒸留釜(1)を冷却する冷却装置が設けられており、
この冷却装置の冷却水パイプおよび蒸気パイプには自動制御弁が設けられており、
この自動制御弁は制御配線を介してスマートコントローラ(5)に接続され、
前記スマートコントローラ(5)は、真空調節コントローラ(8)と安全コントローラ(9)とを含み、
前記第1の真空調節弁(6)、第2の真空調節弁(7)および真空貯蔵タンク(3)の圧力監視装置は、真空調節コントローラ(8)に接続されており、
前記蒸留釜(1)内に設置され且つ蒸留釜(1)の内部の温度を監視する温度監視装置(1.2)、前記蒸留釜(1)内に設置され且つ蒸留釜(1)の内部の圧力を監視する圧力監視装置(1.1)、受入タンク(2)の内部と接続し且つ受入タンク(2)の内部の圧力を監視する圧力監視装置(2.1)および前記冷却装置の前記自動制御弁は、制御配線を介して安全コントローラ(9)に接続されている
ことを特徴とする有機液体精製、回収装置。
【請求項3】
前記真空貯蔵タンク(3)に凝縮装置が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の有機液体精製、回収装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の装置を採用した有機液体精製、回収方法であって、次のステップを含むことを特徴とする有機液体精製、回収方法。
1)処理する液体を蒸留釜(1)の中に入れる
2)真空貯蔵タンク(3)と受入タンク(2)との連通を断ち、真空ポンプ(4)をオンにして真空貯蔵タンク(3)を所定値まで真空引きした後、真空ポンプ(4)をオフにし、真空ポンプ(4)と真空貯蔵タンク(3)との連通を断つ
3)真空貯蔵タンク(3)と受入タンク(2)との連通を開き、有機液体を受入タンク(2)内に蒸留させる
4)真空貯蔵タンク(3)の内部の真空が不十分である場合、ステップ2)およびステップ3)をこの順に繰り返す
5)液体が蒸留されなくなるまでステップ4)を何回か繰り返す
【請求項5】
精製、回収プロセスを、スマートコントローラ(5)によって制御し、スマートコントローラ(5)の真空調節コントローラ(8)は、真空貯蔵タンク(3)の内部の圧力を監視し、第1の真空調節弁(6)、第2の真空調節弁(7)および真空ポンプ(4)のオンオフを制御し、スマートコントローラ(5)の安全コントローラ(9)は、受入タンク(2)の内部の圧力、蒸留釜(1)の内部の圧力と温度を監視し、蒸留釜(1)の冷却装置および撹拌装置のオンオフを制御することを特徴とする請求項4に記載の有機液体精製、回収方法。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか一項に記載の装置を採用した有機液体精製、回収方法であって、次のステップを含むことを特徴とする有機液体精製、回収方法。
1)受入タンク(2)と真空貯蔵タンク(3)との連通および真空貯蔵タンク(3)と真空ポンプ(4)との連通を開き、真空ポンプ(4)をオンにしてデフォルト値までシステムを真空引きした後、真空ポンプ(4)をオフにし、真空ポンプ(4)と真空貯蔵タンク(3)との連通を断つ
2)処理する液体を連続して蒸留釜(1)の中に入れ、有機液体を受入タンク(2)内に蒸留させる
3)真空貯蔵タンク(3)の内部の真空が不十分である場合、真空貯蔵タンク(3)と受入タンク(2)との連通を断ち、真空貯蔵タンク(3)と真空ポンプ(4)との連通を開き、真空ポンプ(4)をオンにしてデフォルト値まで真空貯蔵タンク(3)を真空引きした後、真空ポンプ(4)をオフにし、真空貯蔵タンク(3)と真空ポンプ(4)との連通を断ち、さらに真空貯蔵タンク(3)と受入タンク(2)との連通を開き、液体の蒸留を継続する
4)液体が蒸留されなくなるまでステップ3)を何回か繰り返す
【請求項7】
ステップ1)の前の蒸留釜(1)、およびステップ2)における蒸留釜(1)に入れる前の処理する液体は、いずれも所定値に予熱することを特徴とする請求項6に記載の有機液体精製、回収方法。
【請求項8】
精製、回収プロセスは、スマートコントローラ(5)によって制御し、
スマートコントローラ(5)の真空調節コントローラ(8)は、真空貯蔵タンク(3)の内部の圧力を監視し、第1の真空調節弁(6)、第2の真空調節弁(7)および真空ポンプ(4)のオンオフを制御し、
スマートコントローラ(5)の安全コントローラ(9)は、受入タンク(2)の内部の圧力、蒸留釜(1)の内部の圧力と温度を監視し、蒸留釜の冷却装置および撹拌装置のオンオフを制御することを特徴とする請求項6に記載の有機液体精製、回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機化学工業、医薬化学工業の分野に適用可能な有機液体精製、回収装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、有機化学工業、医薬化学工業は、廃液、廃ガス、固形廃棄物の問題のため、大きな環境汚染をもたらしており、特に、有機溶剤の回収時に、真空を用い、溶剤の揮発性が大きいので、有機溶剤の揮発による環境汚染が不可避であり、多くの技師が、この問題の解決に力を入れている。現在比較的多く用いられている方法としては、A:活性炭および活性繊維を用いて排ガスを吸収すること、B:極低温または多段冷却の方式を採用すること、C:排ガスを中和処理した後に廃水処理システムにおいて処理することが挙げられる。そのうち、Aの方法は、高温脱吸着が必要であり、操作手順が煩雑で、投資が比較的大きい。Bの方法の多段冷却は、効果が限られており、極低温の場合、大量の液体窒素を必要とし、工業生産には不便である。Cの方法は、制限が大きく、水に不溶のものは使用できず、水に溶かした後に廃水が発生したり、生化学処理システムの配備が必要になったりする。現在、有機溶剤の回収率は60~80%であり、沸点が低く、揮発性が高いほど、回収率が低くなる。例えば、クロロホルム、酢酸エチルの回収率は、一般に70%程度である。このことは、溶剤の30%が無秩序な廃ガスとして大気中に排出され、回収できず、資源が無駄になり、環境を汚染することを意味する。統計によれば、年間の有機廃ガス排出量は約1千万トン規模であるため、有機廃ガスによる環境汚染を低減し、有機液体のリサイクルを実現できるように、有機溶剤回収率を高めることができる、簡単に行うことが可能な方法が早急に求められている。
【発明の概要】
【0003】
本発明で解決しようとする技術的課題は、安全で環境に配慮した、回収率が高く、廃ガスの発生が少なく、エネルギーを節減可能な、有機液体を精製、回収する装置および方法を提供することである。
【0004】
上記技術的課題を解決するため、本発明は、まず、蒸留パイプを介してつながれた蒸留釜と受入タンクとを含む有機液体精製、回収装置であって、真空ポンプをさらに含み、前記受入タンクと真空ポンプとの間に、真空貯蔵タンクが設けられており、真空貯蔵タンクと受入タンクとの間は真空調節パイプを介してつながれており、この真空調節パイプ上には第1の真空調節弁が設けられており、真空貯蔵タンクと真空ポンプとの間は真空引きパイプを介してつながれており、この真空引きパイプ上には第2の真空調節弁が設けられており、前記蒸留釜には温度監視装置と圧力監視装置とが設けられており、前記受入タンクおよび真空貯蔵タンクにはいずれも圧力監視装置が設けられている、有機液体精製、回収装置を開示する。
【0005】
さらに、前記真空貯蔵タンクは、回収率を高めるため、凝縮装置が設けられていてもよい。凝縮装置は、内循環コイルパイプなどの内部凝縮または真空貯蔵タンク外部に設けたジャケットなどの外部凝縮等を採用してもよい。
【0006】
さらに、前記温度監視装置、圧力監視装置、第1の真空調節弁、第2の真空調節弁、真空ポンプは、いずれも制御配線を介してスマートコントローラに接続されている。
【0007】
さらに、前記蒸留釜外部には冷却装置が設けられており、この冷却装置の冷却水パイプおよび蒸気パイプには自動制御弁が設けられており、この自動制御弁は制御配線を介してスマートコントローラに接続されている。
【0008】
さらに、前記スマートコントローラは、真空調節コントローラと安全コントローラとを含み、前記第1の真空調節弁、第2の真空調節弁および真空貯蔵タンクの圧力監視装置は、真空調節コントローラに接続されており、前記蒸留釜の温度監視装置、圧力監視装置、受入タンクの圧力監視装置および冷却装置の自動制御弁は、制御配線を介して安全コントローラに接続されている。
【0009】
本発明は、さらに、前記装置を採用して有機液体を精製、回収する方法を開示している。この精製、回収方法は、次のことを含む。
1)処理する液体を蒸留釜の中に入れる。
2)真空貯蔵タンクと受入タンクとの連通を断ち、真空ポンプをオンにして真空貯蔵タンクを所定値まで真空引きした後、真空ポンプをオフにし、真空ポンプと真空貯蔵タンクとの連通を断つ。
3)真空貯蔵タンクと受入タンクとの連通を開き、有機液体を受入タンク内に蒸留させる。
4)真空貯蔵タンク内の真空が不十分である場合、ステップ2)およびステップ3)をこの順に繰り返す。
5)液体が蒸留されなくなるまでステップ4)を何回か繰り返す。
【0010】
この処理プロセスにおいて、処理する液体をステップ1)で蒸留釜内に入れた後、温度が設定値に達するまで加熱し、ステップ3)でまず蒸留釜内の温度を設定値に安定させた後、真空貯蔵タンクをゆっくりと開き、受入タンクを真空引きして蒸留する。
【0011】
さらに、精製、回収プロセスは、スマートコントローラによって制御し、スマートコントローラの真空調節コントローラは、真空貯蔵タンク内の圧力を監視し、第1の真空調節弁、第2の真空調節弁および真空ポンプのオンオフを制御し、スマートコントローラの安全コントローラは、受入タンク内の圧力、蒸留釜内の圧力と温度を監視し、蒸留釜の冷却装置および撹拌装置のオンオフを制御し、必要に応じてアラームを鳴らす。
【0012】
本発明で前記装置を採用して有機液体を精製、回収する方法のプロセスは、次のとおりであってもよい。
1)受入タンクと真空貯蔵タンクとの連通および真空貯蔵タンクと真空ポンプとの連通
を開き、真空ポンプをオンにしてデフォルト値までシステムを真空引きした後、真空ポンプをオフにし、真空ポンプと真空貯蔵タンクとの連通を断つ。
2)処理する液体を連続して蒸留釜の中に入れ、有機液体を受入タンク内に蒸留させる。
3)真空貯蔵タンク内の真空が不十分である場合、真空貯蔵タンクと受入タンクとの連通を断ち、真空貯蔵タンクと真空ポンプとの連通を開き、真空ポンプをオンにしてデフォルト値まで真空貯蔵タンクを真空引きした後、真空ポンプをオフにし、真空貯蔵タンクと真空ポンプとの連通を断ち、さらに真空貯蔵タンクと受入タンクとの連通を開き、液体の蒸留を継続する。
4)液体が蒸留されなくなるまでステップ3)を何回か繰り返す。
【0013】
さらに、ステップ1)の前の蒸留釜、およびステップ2)における蒸留釜に入れる前の処理する液体は、いずれも所定値に予熱する。
【0014】
さらに、精製、回収プロセスは、スマートコントローラによって制御し、スマートコントローラの真空調節コントローラは、真空貯蔵タンク内の圧力を監視し、第1の真空調節弁、第2の真空調節弁および真空ポンプのオンオフを制御し、スマートコントローラの安全コントローラは、受入タンク内の圧力、蒸留釜内の圧力と温度を監視し、蒸留釜の冷却装置および撹拌装置のオンオフを制御し、必要に応じてアラームを鳴らす。
【0015】
本発明は、受入タンクと真空ポンプとの間に真空貯蔵タンクを1つ設け、この真空貯蔵タンクによって受入タンクの真空度を調節し、減圧隔離真空ポンプ環境で有機液体(有機溶剤)を回収することを実現し、真空ポンプは、連続して動作するのではなく、間欠的にオンになり、真空ポンプが直接連続して系を真空引きすることを回避することにより、真空引きを持続する際に有機液体を吸い込んで有機液体の無駄および環境汚染をもたらすことを回避する。本発明は、スマートコントローラを設けることによって、システム全体に対して真空および安全のスマート制御を行い、真空度の使用精度を大幅に向上させ、プロセス全体を安定して、安全に制御可能な範囲にし、有機液体(溶剤)の回収率をさらに高め、プロセスは簡単に実現できる。本発明の装置は、精製、回収を行い、有機液体(溶剤)の回収率は、一般に98~99.5%であり、損失がほとんどない。全面的に普及すれば、年間1千万トンの有機溶剤が大気中に排出されることを回避でき、資源を節約でき、汚染も生み出さず、エネルギーを節減でき、有機溶剤回収プロセスにおける廃ガス排出を低減可能な環境に配慮した設備である。本発明は、間欠的な投入だけでなく、連続的な投入にも適しており、一般に、小規模の生産の場合は間欠的な投入を採用し、大規模の生産の場合は連続的な投入を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の接続構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施例と合わせ、本発明の内容をより具体的に説明する。本発明の実施は、以下の実施例に限定されず、本発明に対して行われるいかなる形式の変形または変更は、いずれも本発明の保護範囲に含まれる。
【0018】
本発明の有機液体精製、回収装置は、図1に示すように、蒸留釜1と、受入タンク2と、真空貯蔵タンク3と、真空ポンプ4とを含み、蒸留釜1と受入タンク2との間は、蒸留パイプ102を介してつながれており、この蒸留パイプ102は、蒸留釜1の頂部から出て、受入タンク2の頂部から入り、受入タンク2と真空貯蔵タンク3との間は、真空調節パイプ203を介してつながれており、この真空調節パイプ203は、受入タンク2の頂部から出て、真空貯蔵タンク3から入り、真空貯蔵タンク3と真空ポンプ4との間は、真空引きパイプ304を介してつながれており、この真空引きパイプ304は、真空貯蔵タンク3の頂部から真空ポンプ4に接続されている。蒸留釜1の外部には、冷却装置が設けられており、内部には、真空圧力計1.1および温度計1.2が設けられており、蒸留釜1には、さらに撹拌装置が設けられており、この撹拌装置は、撹拌モータ1.3によって駆動され、この撹拌モータ1.3には、モータ制御スイッチ1.4が設けられている。真空調節パイプ203上には、第1の真空調節弁6が設けられており、真空引きパイプ304上には、第2の真空調節弁7が設けられており、受入タンク2の上部の一方の側および真空貯蔵タンク3の上部の一方の側には、それぞれ受入タンク真空計2.1および貯蔵タンク真空計3.1が設けられている。真空貯蔵タンク3には、凝縮装置が設けられており、内循環コイルパイプ、または真空貯蔵タンク3外部に設けられたジャケットなど、内部凝縮または外部凝縮を採用する。
【0019】
この装置は、さらにスマートコントローラ5を含み、スマートコントローラ5は、安全コントローラ9と真空調節コントローラ8とを含み、安全コントローラ9および真空調節コントローラ8は、2つの機能モジュールであり、2つの独立した制御部材である。スマート安全制御は、化学工業、特にリスクが高い化学反応プロセスにおいて非常に重要であり、制御精度および安全性を大幅に向上させることができる。
【0020】
真空圧力計1.1、温度計1.2、冷却装置の自動制御スイッチ、モータ制御スイッチ1.4は、いずれも制御配線を配して安全コントローラ9に接続されており、第1の真空調節弁6、貯蔵タンク真空計3.1、第2の真空調節弁7および真空ポンプ4は、制御配線を介して真空調節コントローラ8に接続されている。
【0021】
実施例1:
90%のジクロロメタン200kg質量含有量を、蒸留釜1中に入れ、20℃まで加熱昇温した。第1の真空調節弁6を閉じ、第2の真空調節弁7を開き、真空ポンプ4をオンにして真空貯蔵タンク3を-0.095MPaまで真空引きし、第2の真空調節弁7および真空ポンプ4を閉じた。蒸留釜1の温度が20℃で安定した後、第1の真空調節弁6をゆっくりと開き、溶剤を蒸発させて受入タンク2の中で集め、流量に応じて第1の真空調節弁6が開いている大きさ(開度)を調節した。真空が不十分である場合、第1の真空調節弁6を閉じ、第2の真空調節弁7および真空ポンプ4を開いて真空を補足し、補足が完了した後に第2の真空調節弁7および真空ポンプ4を閉じ、第1の真空調節弁6を開いて蒸留を継続した。蒸留プロセスにおいて、一定した溶剤蒸留量を保証するため、後半で真空度が不十分な場合、さらに真空を補足してもよく、このプロセスにおいて、蒸留釜1内の温度を適宜調整してもよい。本実施例では、液体が流出しなくなるまで、最終的に30℃で蒸留した。回収したジクロロメタンは178.2kgであった。ジクロロメタン含有量は99.5%であり、回収率は99%であった。
【0022】
90%のジクロロメタン200kg質量含有量を、従来の減圧蒸留設備で常温において減圧蒸留し、ジクロロメタン120kgを得た。回収率は66.7%であった。含有量は99%であった。
【0023】
実施例2:
95%のエタノール200kg質量含有量を、蒸留釜1中に入れ、40℃まで加熱昇温した。第1の真空調節弁6を閉じ、第2の真空調節弁7を開き、真空ポンプ4をオンにして真空貯蔵タンク3を-0.095MPaまで真空引きし、第2の真空調節弁7および真空ポンプ4を閉じた。蒸留釜1の温度が40℃で安定したとき、第1の真空調節弁6をゆっくりと開き、溶剤を蒸発させて受入タンク2の中で集め、流量に応じて第1の真空調節弁6が開いている大きさを調節した。真空が不十分である場合、第1の真空調節弁6を閉じ、第2の真空調節弁7および真空ポンプ4を開いて真空を補足し、補足が完了したら第2の真空調節弁7および真空ポンプ4を閉じ、第1の真空調節弁6を開いて蒸留を継続した。実施例1と同様に、液体が流出しなくなるまで、最終的に蒸留温度を50℃に調整した。回収したエタノールは188.5kgであった。エタノール含有量は99.5%であり、回収率は99.2%であった。
【0024】
95%のエタノール200kg質量含有量を、従来の減圧蒸留設備で減圧蒸留し、エタノール140kgを得た。回収率は73.7%であった。含有量は99%であった。
【0025】
実施例3:
95%のキシレン200kg質量含有量を、蒸留釜1中に入れ、60℃まで加熱昇温した。第1の真空調節弁6を閉じ、第2の真空調節弁7を開き、真空ポンプ4をオンにして真空貯蔵タンク3を-0.095MPaまで真空引きし、第2の真空調節弁7および真空ポンプ4を閉じた。蒸留釜1の温度が60℃で安定したとき、第1の真空調節弁6をゆっくりと開き、溶剤を蒸発させて、流量に応じて第1の真空調節弁6が開いている大きさを調節した。真空が不十分である場合、第1の真空調節弁6を閉じ、第2の真空調節弁7および真空ポンプ4を開いて真空を補足し、補足が完了したら第2の真空調節弁7および真空ポンプ4を閉じ、第1の真空調節弁6を開いて蒸留を継続した。実施例1と同様に、液体が流出しなくなるまで、最終的に蒸留温度を80℃に調整した。回収したキシレンは189kgであった。キシレン含有量は99.5%であり、回収率は99.5%であった。
【0026】
95%のキシレン200kg質量含有量を、従来の減圧蒸留設備で減圧蒸留し、キシレン170kgを得た。回収率は89.5%であった。含有量は99%であった。
【0027】
実施例4:
95%の酢酸エチル1000kg質量含有量を、まず加熱釜またはその他の加熱装置によって45℃まで予熱した。蒸留釜1も45℃まで予熱し、第1の真空調節弁6、第2の真空調節弁7および真空ポンプ4を開き、系を-0.096MPaまで真空引きし、第2の真空調節弁7および真空ポンプ4を閉じた。酢酸エチルの連続投入を開始した(投入量および溶剤の蒸留量が基本的に一致するように保った。)蒸留釜1中で、真空が不十分である場合、第1の真空調節弁6を閉じ、第2の真空調節弁7を開き、真空ポンプ4をオンにし、真空貯蔵タンク3を-0.096MPaまで引いた。真空の補足が完了した後に第2の真空調節弁7および真空ポンプ4を閉じ、第1の真空調節弁6を開いて、蒸留液がなくなるまで蒸留を継続した。回収した酢酸エチルは946kgであった。酢酸エチル含有量は99.5%であり、回収率は99.5%であった。
【0028】
95%の酢酸エチル200kg質量含有量を、従来の減圧蒸留設備で減圧蒸留し、酢酸エチル130kgを得た。回収率は68.4%であった。含有量は99%であった。
【0029】
実施例5:ガソリン廃ガス中の溶剤回収
第1の真空調節弁6、第2の真空調節弁7および真空ポンプ4を開き、蒸留釜系を-0.096MPaまで真空引きし、第2の真空調節弁7および真空ポンプ4を閉じた。連続して0.1%のガソリン廃ガス10m3ガソリン質量含有量をゆっくりと蒸留釜1中に入れることを開始し、少量のガソリンがゆっくりと蒸留された。真空が不十分である場合、第1の真空調節弁6を閉じ、第2の真空調節弁7を開き、真空ポンプ4をオンにし、真空貯蔵タンク3を-0.096MPaまで引いた。真空の補足が完了した後に第2の真空調節弁7および真空ポンプ4を閉じ、第1の真空調節弁6を開いて、蒸留液がなくなるまで蒸留を継続した。回収したガソリン廃ガスは7kgであり、ガソリン含有量は99%であり、回収率は97.2%であった。
【0030】
質量濃度が0.1%であるガソリン廃ガスは、従来の減圧蒸留設備ではガソリンを回収できなかった。
【0031】
以上の実施例1~3は間欠型の投入であり、4~5は連続した投入であった。1~5の蒸留プロセスでは、第1の真空調節弁6、第2の真空調節弁7および真空ポンプ4の開閉は、いずれも手動操作で行ってもスマートコントローラ5によって制御してもよく、後者の制御精度は前者よりも優れている。
【0032】
後者の制御は次のとおりである。
【0033】
安全コントローラ9は、蒸留釜1、受入タンク2内の真空度を随時監視し、真空調節コントローラ8に信号を伝送する。システムの真空度の要求に応じて、真空調節コントローラ8により第1の真空調節弁6が開いている大きさを調節することにより、受入タンク2、蒸留釜1内の真空度を調節し、対応する溶剤に適した減圧蒸留を形成する。真空貯蔵タンク3内の真空度が不十分であり真空の補足が必要であることを真空調節コントローラ8が感知したとき、真空調節コントローラ8が第1の真空調節弁6を閉じ、第2の真空調節弁7を開き、真空ポンプ4をオンにするようよう制御し、真空貯蔵タンク3を真空引きする。真空貯蔵タンク3内の真空度が設定値(-0.95~-0.98MPa)に達していることを真空調節コントローラ8が感知したとき、真空調節コントローラ8が第2の真空調節弁7および真空ポンプ4を閉じた後に第1の真空調節弁6を開くよう制御し、減圧蒸留を継続する。
【0034】
安全コントローラ9は、蒸留釜1内の温度および圧力を随時監視することができ、システムに過昇温・過昇圧が現れた場合、安全コントローラ9が起動する。過昇温のときには、安全コントローラ9が警報を発し、蒸留釜1の加熱弁を閉じ、冷却水を開いて降温する。過昇圧のときには、安全コントローラ9が同様に警報を発し、蒸留釜1の撹拌をオフにし、冷却水を開いて降温し、真空減圧をオンにする。
【0035】
本発明の装置および方法は、沸点が20℃~200℃の範囲にある有機液体の精製、回収に特に適している。全体的な精製、回収効果の向上幅は20℃~200℃の範囲ほどは明らかではないが、実験によって、200℃よりも高いとき、例えば200℃~300℃の間で、従来の精製、回収装置および方法と比べて高い回収率を有することが証明されている。
【符号の説明】
【0036】
1-蒸留釜;1.1-真空圧力計;1.2-温度計;1.3-撹拌モータ;1.4-モータ制御スイッチ;102-蒸留パイプ;2-受入タンク;2.1-受入タンク真空計;203-真空調節パイプ;3-真空貯蔵タンク;3.1-貯蔵タンク真空計;304-真空引きパイプ;4-真空ポンプ;5-スマートコントローラ;6-第1の真空調節弁;7-第2の真空調節弁;8-真空調節コントローラ;9-安全コントローラ
図1