(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】りん装置およびりん棒保持具
(51)【国際特許分類】
A47G 33/00 20060101AFI20240227BHJP
G10K 1/072 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
A47G33/00 L
G10K1/072 Z
(21)【出願番号】P 2023183890
(22)【出願日】2023-10-26
【審査請求日】2023-10-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】399073931
【氏名又は名称】株式会社関菊
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100173462
【氏名又は名称】宮本 一浩
(74)【代理人】
【識別番号】100194179
【氏名又は名称】中澤 泰宏
(74)【代理人】
【識別番号】100145229
【氏名又は名称】秋山 雅則
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 尚和
【審査官】粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-013104(JP,A)
【文献】特開2022-101493(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 33/00
G10K 1/072
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
小外径部と、該小外径部と隣り合って設けられ、該小外径部よりも外径が大きい大外径部とを有するりん棒と、
前記大外径部を前記小外径部の上に位置させた状態で椀状のりんの開口の上に前記りん棒を保持することが可能なりん棒保持部と、
を備えるりん装置であって、
前記りん棒保持部は、前記りんの側方に配置された場合に前記りんの前記開口の上まで延びると共に、前記開口の上に位置する部分に鉛直方向へ貫通する貫通孔を有する腕部を備え、
前記貫通孔は、前記りん棒の前記小外径部の外径よりも大きく、かつ前記りん棒の前記大外径部の外径よりも小さい内径を有する小内径部分を備え、
前記貫通孔では、前記小内径部分の上側と下側のいずれか一方で前記小内径部分よりも内径が大きくなり、かつ前記小内径部分の上側と下側のいずれか他方で前記小内径部分よりも内径が大きいか、または前記小内径部分が上側と下側のいずれか他方で前記貫通孔の開口端に隣接し、
前記貫通孔の内壁は、前記りん棒の前記小外径部が前記貫通孔の前記小内径部分に通され、前記りん棒の前記大外径部が前記貫通孔の前記小内径部分に掛かることにより、前記りん棒を保持する、
りん装置。
【請求項2】
前記腕部は、前記貫通孔の延在方向に沿うと共に、前記りん棒の前記小外径部の外径以上の幅で前記貫通孔の内壁から前記腕部の側方へ前記腕部を切り欠いた形状の切り欠き部を有し、
前記切り欠き部には、前記りん棒の前記小外径部の延在方向を前記貫通孔の延在方向に向けた状態で前記小外径部が抜き差し可能である、
請求項1に記載のりん装置。
【請求項3】
前記腕部は、上面視で前記貫通孔が形成された貫通部分から放射状に延びる2つの小腕部を有し、
前記切り欠き部は、前記貫通部分かつ、前記2つの小腕部が形成する内角の頂点部分に形成されている、
請求項2に記載のりん装置。
【請求項4】
小外径部と、該小外径部と隣り合って設けられ、該小外径部よりも外径が大きい大外径部とを有するりん棒
を保持する
ためのりん棒保持具であって、
前記りん棒保持具は
、りんの側方に配置された場合に前記りん
の開口の上まで延びると共に、前記開口の上に位置する部分に鉛直方向へ貫通する貫通孔を有する腕部を備え、
前記貫通孔は
、上側と下側のいずれか一方
で内径が大きくなり、か
つ上側と下側のいずれか他方
で内径が大き
くなるか、または
上側と下側のいずれか一方で内径が大きくなり、かつ上側と下側のいずれか他方で前記貫通孔の開口端に隣接
する小内径部分を有し、
前記小外径部の外径が前記小内径部分よりも小さく、かつ前記大外径部の外径が前記小内径部分よりも大きい前記りん棒が、前記大外径部を前記小外径部の上に位置させた状態で前記貫通孔に差し込まれた場合に、前記小内径部分は、前記りん棒の前記小外径部
を通し、前記小内径部分に前記りん棒の前記大外径部
が掛かることにより、
前記貫通孔の内壁は、前記りん棒を保持する、
りん棒保持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はりん装置およびりん棒保持具に関する。
【背景技術】
【0002】
りんは、通常、りん棒と呼ばれる道具で叩いて鳴らされることにより使用されている。そのりんを鳴らすのに使用されるりん棒は、一般に円柱状である。このため、転がりやすい。その結果、りん棒が転がって移動してしまい、りんを使用したいときにりんの近傍にりん棒がないことがある。このような不具合をなくすため、りん棒を保持するりん棒保持部が設けられた、りん装置が開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、りんを支持する台座と、台座からりんの上に延びる針金状の腕部を有し、その腕部の上端部分に針金状のフック部が設けられたりん棒保持部と、を備えるりん装置が開示されている。特許文献1に記載のりん装置では、フック部は、下に屈曲した後、その先が上を向いた形状に形成されている。一方、りん棒は、棒上端にリング部が設けられている。そして、りん棒は、リング部にフック部が引っ掛けられることにより、りん装置のりん棒保持部に保持される。これにより、特許文献1に記載のりん装置では、りん棒の紛失を防いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のりん装置では、フック部は、台座に支持されたりんの真上に位置する。また、りん棒は、そのフック部にリング部が掛けられているため、揺動可能である。その結果、このりん装置では、保持されたままの状態でりん棒が揺動することにより、りん棒がりんを叩いてりんを鳴らす。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のりん装置では、りん棒が揺動できる方向は、主としてりん棒のリング部の円周方向である。このため、りん棒をリング部の円周方向へ揺すった場合にりん棒が大きく揺動してりんを強く鳴らすことができるが、リング部を貫通する方向へりん棒を揺すった場合には、りん棒が大きく揺動せず、りんを強く鳴らすことができない。このように、特許文献1に記載のりん装置では、りん棒を特定の方向へ揺動させたときだけりんが強く鳴ってしまう。
【0007】
本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、りん棒を保持する共に、りん棒を前後左右のいずれの方向にも均等に揺動させてりんを均一な音量で鳴らすことが可能なりん装置およびりん棒保持具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明の第1の観点に係るりん装置は、
小外径部と、該小外径部と隣り合って設けられ、該小外径部よりも外径が大きい大外径部とを有するりん棒と、
前記大外径部を前記小外径部の上に位置させた状態で椀状のりんの開口の上に前記りん棒を保持することが可能なりん棒保持部と、
を備えるりん装置であって、
前記りん棒保持部は、前記りんの側方に配置された場合に前記りんの前記開口の上まで延びると共に、前記開口の上に位置する部分に鉛直方向へ貫通する貫通孔を有する腕部を備え、
前記貫通孔は、前記りん棒の前記小外径部の外径よりも大きく、かつ前記りん棒の前記大外径部の外径よりも小さい内径を有する小内径部分を備え、
前記貫通孔では、前記小内径部分の上側と下側のいずれか一方で前記小内径部分よりも内径が大きくなり、かつ前記小内径部分の上側と下側のいずれか他方で前記小内径部分よりも内径が大きいか、または前記小内径部分が上側と下側のいずれか他方で前記貫通孔の開口端に隣接し、
前記貫通孔の内壁は、前記りん棒の前記小外径部が前記貫通孔の前記小内径部分に通され、前記りん棒の前記大外径部が前記貫通孔の前記小内径部分に掛かることにより、前記りん棒を保持することを特徴とする。
【0009】
前記腕部は、前記貫通孔の延在方向に沿うと共に、前記りん棒の前記小外径部の外径以上の幅で前記貫通孔の内壁から前記腕部の側方へ前記腕部を切り欠いた形状の切り欠き部を有し、
前記切り欠き部には、前記りん棒の前記小外径部の延在方向を前記貫通孔の延在方向に向けた状態で前記小外径部が抜き差し可能であってもよい。
【0010】
前記腕部は、上面視で前記貫通孔が形成された貫通部分から放射状に延びる2つの小腕部を有し、
前記切り欠き部は、前記貫通部分かつ、前記2つの小腕部が形成する内角の頂点部分に形成されていてもよい。
【0011】
本発明の第2の観点に係るりん棒保持具は、
小外径部と、該小外径部と隣り合って設けられ、該小外径部よりも外径が大きい大外径部とを有するりん棒を保持するためのりん棒保持具であって、
前記りん棒保持具は、りんの側方に配置された場合に前記りんの開口の上まで延びると共に、前記開口の上に位置する部分に鉛直方向へ貫通する貫通孔を有する腕部を備え、
前記貫通孔は、上側と下側のいずれか一方で内径が大きくなり、かつ上側と下側のいずれか他方で内径が大きくなるか、または上側と下側のいずれか一方で内径が大きくなり、かつ上側と下側のいずれか他方で前記貫通孔の開口端に隣接する小内径部分を有し、
前記小外径部の外径が前記小内径部分よりも小さく、かつ前記大外径部の外径が前記小内径部分よりも大きい前記りん棒が、前記大外径部を前記小外径部の上に位置させた状態で前記貫通孔に差し込まれた場合に、前記小内径部分は、前記りん棒の前記小外径部を通し、前記小内径部分に前記りん棒の前記大外径部が掛かることにより、前記貫通孔の内壁は、前記りん棒を保持することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の構成によれば、貫通孔は、りん棒の小外径部よりも内径が大きく、りん棒の大外径部よりも内径が小さい小内径部分を備え、小内径部分の上側と下側のいずれか一方で小内径部分よりも内径が大きくなり、かつ小内径部分の上側と下側のいずれか他方で小内径部分よりも内径が大きいか、または小内径部分が上側と下側のいずれか他方で貫通孔の開口端に隣接する。このため、りん棒は、貫通孔に通された場合に、前後左右へ均等に揺動できる。その結果、りん装置では、りん棒がどの方向へ揺動したときでも、均一な音量でりんを鳴らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の形態に係るりん装置の正面図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係るりん装置の右側面図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係るりん装置の上面図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係るりん装置の動作を示す断面図である。
【
図6】
図5に示すVI-VI切断線の断面図である。
【
図7】(A)本発明の実施の形態に係るりん装置が備えるりん棒保持部の変形例の断面図である。(B)本発明の実施の形態に係るりん装置が備えるりん棒保持部の他の変形例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態に係るりん装置、りん棒保持具およびりん棒について図面を参照して詳細に説明する。なお、図中、同一又は同等の部分には同一の符号を付す。また、図に示す直交座標系XYZにおいて、りん棒保持部に保持された、りん棒が重力により鉛直方向に向くとした場合の、鉛直方向がZ軸、鉛直方向に垂直な水平面がXY平面である。また、りん装置、りん棒保持具およびりん棒は「鈴装置、鈴棒保持具および鈴棒」とも表記するが、以下、りん装置、りん棒保持具およびりん棒で統一するものとする。
【0016】
本実施の形態に係るりん装置は、りん台とりん棒保持具が一体的に設けられた装置(単にりん台ともいう)である。まず、
図1-
図3を参照して、りん装置1の全体の構成について説明する。
【0017】
図1-
図3は、実施の形態に係るりん装置1の正面図、右側面図および上面図である。
図1-
図3に示すように、本発明の実施の形態に係るりん装置1は、りん棒3と、りん棒3を揺動可能に保持するりん棒保持部(りん棒保持具ともいう)2とを備える。このりん装置1では、りん棒3でりん4を叩いて鳴らすため、りん棒保持部2が、りん4を支持する台座11と、台座11から延びて、りん棒3を吊す腕部12とを備える。
【0018】
りん4(おりんともいう)は、上面視円形状、かつ上側が開口した椀状に形成されている。そして、りん4の底面には、
図1に示すように、円柱状のピン21が設けられている。そのピン21は、りん4の上面視円形の中心を鉛直方向に貫く中心軸Cに沿って下に向かって突出している。
【0019】
これに対して、台座11は、端面が面取りされたプレートの形状に形成されている。さらに、その上面側に図示しない円筒状の孔が形成されている。その図示しない円筒状の孔には、りん4のピン21が嵌め合わされている。これにより、台座11は、りん4を支持している。
【0020】
また、台座11の、図示しない円筒状の孔の深さは、りん4のピン21の長さよりも短い。その結果、
図1に示すように、台座11の上面とりん4の底面との間には隙間が形成されている。その結果、台座11は、りん4が叩かれた場合に、りん4が鳴りやすくしている。
【0021】
さらに、台座11には、りん4を叩くためのりん棒3を保持するため、背面側から上へ延びる腕部12が設けられている。
【0022】
台座11の背面側には、図示しないが、上述した中心軸Cを中心とする円弧状の端部が形成されている。腕部12は、その円弧状の端部の離れた2つの箇所からそれぞれ上に向かって延びる、
図1および
図3に示す小腕部121と122とを有している。
【0023】
小腕部121と122は、
図2に示すように、側面視で円弧状に湾曲した板の形状に形成されている。
【0024】
詳細には、小腕部121と122は、りん4の椀形が球形を半分に切断した形状に近似すると仮定した場合の、その球形に沿った板の形状に形成されている。これにより、小腕部121と122は、りん4の側方に配置されると共に、そのりん4への干渉が防がれている。
【0025】
さらに、小腕部121と122は、
図3に示すように、上に向かうに従い徐々に幅が細くなる帯の形状に形成されている。そして、小腕部121と122の上端部分は、上述した中心軸Cで合わさって結合している。小腕部121と122が合わさって結合した結合部分123(特許請求の範囲では、貫通孔が形成されるため、貫通部分ともいうが、その貫通部分に含まれる部分のことである)では、小腕部121と122が鋭角状の内角を形成している。換言すると、小腕部121と122は、上面視で中心軸Cから互いの間に鋭角を形成しながら放射状に延び、さらに、
図1および
図2に示すように、放射状に延びると共に、下へ円弧を描きながら延びて台座11につながっている。
【0026】
小腕部121と122は、上述した形状を有することにより、結合部分123をりん4の開口22の上に位置させている。そして、小腕部121と122の結合部分123には、りん棒3を通して開口22の上にりん棒3を保持するため、
図3に示すように、貫通孔13が形成されている。
【0027】
続いて、
図4-
図6を参照して貫通孔13とりん棒3の構成について詳細に説明する。
図4は、りん装置1の動作を示す断面図である。
図5は、
図3に示すV領域の拡大図である。
図6は、
図5に示すVI-VI切断線の断面図である。
なお、
図4は、
図1に示すIV-IV切断線の断面を示している。また、
図5と
図6に示すりん棒3のくびれ部39の最小外径部31は、実際は、貫通孔13の最小内径部分131よりも下へ位置する。しかし、
図5と
図6では、理解を容易にするため、りん棒3のくびれ部39の最小外径部31と貫通孔13の最小内径部分131を同じ高さで表示している。
【0028】
まず、保持対象のりん棒3の構成について説明する。
図4に示すように、りん棒3は、上端部分35と下端部分37が太く、中央部分よりもやや上側部分がくびれた形状に形成されている。詳細には、りん棒3は、下端部分37でりん4を叩くことから、上端部分35よりも下端部分37が太い。これにより、図示しないが、りん棒3は、上端部分35よりも下端部分37の側に重心を位置させている。そして、その重心よりも上側の、中央よりやや上側の部分には、上述した貫通孔13に嵌め込むため、くびれ部39が形成されている。
【0029】
くびれ部39は、
図6に示すように、貫通孔13に嵌め込むため、円柱状の最小外径部31(特許請求の範囲でいう小外径部に含まれる部分のことである)を有する。また、くびれ部39は、上端部分35とつながるため、最小外径部31から上へ向かうに従い外径が徐々に大きくなる、逆円錐台状の外径拡大部32と、下端部分37とつながるため、最小外径部31から下へ向かうに従い外径が徐々に大きくなる、円錐台状の外径拡大部33とを有する。くびれ部39は、このような形状を有することにより、貫通孔13への嵌め込みを容易にしている。
【0030】
これに対して、貫通孔13は、このような形状のりん棒3のくびれ部39を嵌め込むため、
図5に示すように、上面視略円形に形成されている。その位置は、りん4の開口22中心の上に位置させるため、中心軸C上である。貫通孔13は、その位置で小腕部121と122の結合部分123を上下方向へ貫通している。そして、貫通孔13は、
図6に示すように、上下方向の中央部分が狭く、その中央部分よりも上側と下側で広くなる形状を有する。その結果、貫通孔13は、上下方向の中央部分に、最も内径が小さい最小内径部分131(特許請求の範囲でいう小内径部分に含まれる部分のことである)を有している。そして、最小内径部分131の内径R1は、くびれ部39の最小外径部31の外径R2よりも大きい。これにより、貫通孔13は、くびれ部39を通すことを可能にしている。
【0031】
また、貫通孔13は、りん棒3を貫通孔13に抜き差し可能とするため、
図5に示すように、切り欠き部14とつなげられている。
【0032】
詳細には、上述した小腕部121と122の結合部分123には、結合部分123の背面から、すなわち、-Y端面から結合部分123を+Y方向へ切り欠いて最小内径部分131まで達する切り欠き部14が形成されている。切り欠き部14は、最も狭い部分の幅W1が、りん棒3の最小外径部31の外径R2よりも大きい。そして、切り欠き部14は、図示しないが、その幅W1のまま、結合部分123を貫通孔13の延在方向である上下方向へ、すなわち、Z方向へ真っ直ぐ貫通している。その結果、切り欠き部14では、りん棒3の最小外径部31を、
図5に示す矢印A方向へ移動させて切り欠き部14を通過させることにより、りん棒3を貫通孔13へ差し込んだり貫通孔13から抜き出したりすることが可能である。
【0033】
上述したように、小腕部121と122は、中心軸Cから放射状に延びている。このため、小腕部121と122の隙間は、中心軸Cに向かうに従い、狭くなる。切り欠き部14の内壁は、その狭くなる隙間を形成する小腕部121と122の側壁と滑らかにつながっている。その結果、切り欠き部14の内壁は、小腕部121と122の側壁と共に、りん棒3を貫通孔13へ差し込むときにりん棒3を導く案内部として機能する。これにより、切り欠き部14と小腕部121、122は、りん棒3の貫通孔13への差し込みを容易にしている。
【0034】
また、貫通孔13の最小内径部分131の内径R1は、りん棒3のくびれ部39が有する最小外径部31の上に形成された外径拡大部32の上端部分、すなわち、+Z端部分(特許請求の範囲でいう大外径部に含まれる部分のことである)の外径よりも小さい。りん棒3は、ユーザーがりん棒3の最小外径部31を、切り欠き部14に通過させて貫通孔13の最小内径部分131に差し込んだ後、りん棒3から手を離した場合に、その自重で-Z方向へスライドする。そして、りん棒3のくびれ部39の最小外径部31よりも+Z側にある、
図6に示す外径拡大部32が、貫通孔13の最小内径部分131に嵌める。貫通孔13は、上記の内径R1の最小内径部分131を有することにより、差し込まれた後のりん棒3を保持する。
【0035】
さらに、貫通孔13の最小内径部分131の内径R1は、
図5に示す切り欠き部14の幅W1よりも大きい。上述したりん棒3の外径拡大部32が貫通孔13の最小内径部分131に嵌まったときの、外径拡大部32の、貫通孔13の最小内径部分131に嵌まった部分の外径は、最小外径部31の内径R1と同じである。上記のように、最小内径部分131の内径R1が切り欠き部14の幅W1よりも大きいので、外径拡大部32は、貫通孔13の最小内径部分131に嵌まった後、自重により、その最小外径部31から切り欠き部14へ移動できない。これにより、貫通孔13と切り欠き部14は、貫通孔13に差し込まれた後のりん棒3を抜けにくくしている。
【0036】
また、貫通孔13は、上述したように上下方向の中央部分にある最小内径部分131の内径R1が小さく、その最小内径部分131よりも上側と下側で内径が大きい。詳細には、
図6に示すように、貫通孔13は、最小内径部分131と、最小内径部分131よりも上側に形成され、上へ向かうに従い内径が大きくなる、逆円錐台状の内径拡大部132と、最小内径部分131よりも下側に形成され、下に向かうに従い内径が大きくなる、円錐台状の内径拡大部133とを有する。
【0037】
内径拡大部132の上下方向の長さL1は、りん棒3の外径拡大部32の上下方向の長さL2よりも小さい。また、内径拡大部132が有する内壁の上下方向に対する傾斜角θ1は、りん棒3の外径拡大部32が有する外壁の、軸方向に対する傾斜角θ2よりも大きい。同様に、内径拡大部133の上下方向の長さL3は、りん棒3の外径拡大部33の上下方向の長さL4よりも小さい。また、貫通孔13の内径拡大部133が有する内壁の上下方向に対する傾斜角θ3は、りん棒3の外径拡大部32が有する外壁の、軸方向に対する傾斜角θ4よりも大きい。
【0038】
貫通孔13は、上述した長さL1、L3と傾斜角θ1、θ3を有することにより、りん棒3が通された後に、上述した最小内径部分131にりん棒3の外径拡大部32が嵌まった場合に、最小内径部分131の上側かつりん棒3との間に、上へ向かうに従い広くなる隙間を有する。さらに、貫通孔13は、最小内径部分131の下側かつりん棒3との間に下へ向かうに従い広くなる隙間を有する。その結果、貫通孔13では、りん棒3が棒軸線を鉛直方向へ向けるだけでなく、棒軸線を傾斜させることができる。そして、上述した貫通孔13とりん棒3とのそれら隙間は、貫通孔13の回りの全周にわたって形成されている。このため、貫通孔13内でりん棒3が貫通孔13の回りのいずれの方向に傾斜可能である。その結果、貫通孔13では、りん棒3が揺動可能である。また、りん棒3は、貫通孔13の回りのいずれの方向にも揺動可能である。
【0039】
図4に戻って、りん棒3は、くびれ部39から下端部分37の最下面までの長さL3が、くびれ部39が通される貫通孔13がある腕部12の結合部分123からりん4の開口端(上端)までの距離D1よりも大きい。その結果、りん棒3の下端部分37は、貫通孔13に通されて貫通孔13に保持された状態で、りん4の開口22内部に位置する。この状態で、りん棒3は、上述したように、貫通孔13の回りのいずれの方向にも揺動可能である。そして、貫通孔13は、りん4の中心軸C上に位置する。その結果、ユーザーがりん棒3を大きく揺らすと、りん棒3は、りん4の内壁に当たってりん4を鳴らす。このとき、りん棒3が貫通孔13の回りのいずれの方向にも揺動可能であるので、ユーザーがいずれの方向へりん棒3を揺らしても、特に制限無く揺動するため、いずれの方向でも、同様の音量でりん4を鳴らすことができる。さらに、ユーザーがいずれの方向へりん棒3を揺らしても、重心がくびれ部39よりも下に位置するので、りん棒3は、貫通孔13の下に下端部分37が位置する状態に戻る。
【0040】
以上のように、実施の形態に係るりん装置1では、貫通孔13は、りん棒3の最小外径部31よりも内径が大きく、りん棒3の外径拡大部32の外径よりも内径が小さい最小内径部分131を備える。そして、貫通孔13は、最小内径部分131の上側と下側のそれぞれで、最小内径部分131よりも内径が大きくなる形状を有する。このため、りん棒3は、貫通孔13に通された場合に、前後左右へ均等に揺動できる。すなわち、貫通孔13のいずれの方向にも均等に揺動できる。その結果、りん棒3がどの方向へ揺動したときでも、均一な音量でりん4を鳴らすことができる。
【0041】
また、りん装置1には、りん棒3の最小外径部31の外径R2よりも大きい幅W1を有し、貫通孔13とつながる切り欠き部14が貫通孔13の側方に形成されている。このため、りん装置1では、切り欠き部14を介して、容易にりん棒3を抜き差しすることができる。
【0042】
りん装置1は、貫通孔13がある結合部分123であわさる結果、結合部分123の側に向かうに従い、互いの間の隙間が狭くなる小腕部121、122を有する。そして、小腕部121、122の隙間が狭くなった先の内角の頂点部分に切り欠き部14が形成されている。その切り欠き部14の内壁は、小腕部121、122が有する、上記隙間に面する側壁と滑らかに連続する。このため、りん装置1では、小腕部121と122の側壁を案内部として利用することにより、りん棒3を切り欠き部14へ導くことができる。その結果、りん装置1では、りん棒3の貫通孔13への差し込みが容易である。
【0043】
以上、本発明の実施の形態に係るりん装置1、りん棒保持具(りん棒保持部2)およびりん棒について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、実施の形態では、貫通孔13の最小内径部分131の上側と下側のそれぞれに、内径拡大部132と133を有する。しかし、本発明はこれに限定されない。
【0044】
図7(A)は、実施の形態に係るりん装置1が備えるりん棒保持部2の変形例の断面図である。
図7(B)は、りん棒保持部2の他の変形例の断面図である。
【0045】
図7(A)に示すように、貫通孔13は、最小内径部分131の下側に内径拡大部133を備えず、最小内径部分131の上側だけに内径拡大部132を有していてもよい。この場合、貫通孔13の開口22の下側端部(開口端)に最小内径部分131が隣接するとよい。逆に、貫通孔13は、
図7(B)に示すように、最小内径部分131の上側に内径拡大部132を備えず、最小内径部分131の下側だけに内径拡大部133を有していてもよい。この場合、貫通孔13の開口22の上側端部(開口端)に最小内径部分131が隣接するとよい。貫通孔13は、このような形状であっても、りん棒3が通され、そのりん棒3がユーザーによって揺らされた場合に、りん棒3を貫通孔13のいずれの方向にも均等に揺動させることができるからである。その結果、貫通孔13は、りん棒3がどの方向へ揺動したときでも、均一な音量でりん4を鳴らすことができるからである。
【0046】
また、りん装置1では、腕部12が2つの小腕部121、122が組み合わされて形成されている。しかし、本発明はこれに限定されない。本発明では、腕部12は、りん4の側方に配置された場合にりん4の開口22の上まで延びると共に、開口22の上に位置する部分に鉛直方向へ貫通する貫通孔13を有していればよい。このため、この条件を満たす限りにおいて、腕部12の形状は任意である。例えば、腕部12は1つの小腕部121または122で形成されてもよいし、3つ以上の小腕部121、122が組み合わされて形成されていてもよい。さらに、腕部12は、鉛直方向に延びる支柱とその支柱に対して直交する方向へまたは傾斜方向へ延びる棒により形成されていてもよい。
【0047】
さらに、りん装置1では、りん4の台座11が一体的に設けられている。しかし、本発明はこれに限定されない。りん装置1は、りん4の側方に配置されるものであればよい。従って、りん装置1は、台座11と別体であってもよい。また、りん装置1は、布、小型クッション等の上に載置されたりん4の側方に配置されて使用されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0048】
1…りん装置
2…りん棒保持部(りん棒保持具)
3…りん棒
4…りん
11…台座
12…腕部
13…貫通孔
14…切り欠き部
21…ピン
22…開口
31…最小外径部
32,33…外径拡大部
35…上端部分
37…下端部分
39…くびれ部
121,122…小腕部
123…結合部分
131…最小内径部分
132,133…内径拡大部
A…矢印
C…中心軸
D1…距離
L1-L3…長さ
R1…内径
R2,R3,R4…外径
T1,T2…厚み
θ1-θ4…傾斜角
【要約】
【課題】りん棒を保持する共に、りん棒を前後左右のいずれの方向にも均等に揺動させてりんを均一な音量で鳴らすことが可能なりん装置、りん棒保持具およびりん棒を提供する。
【解決手段】りん装置は、最小外径部31と、最小外径部31と隣り合って設けられ、最小外径部31よりも外径が大きい外径拡大部32とを有するりん棒3と、最小外径部31を外径拡大部32上に位置させた状態で椀状のりんの開口の上にりん棒3を保持することが可能なりん棒保持部2とを備える。そして、りん棒保持部2は、りんの側方に配置された場合にりんの開口の上まで延びると共に、開口の上に位置する部分に鉛直方向へ貫通する貫通孔13を有する腕部12を備える。貫通孔13の内壁は、最小外径部31が貫通孔13の最小内径部分131に通され、外径拡大部32が貫通孔13の最小内径部分131に掛かることにより、りん棒3を保持する。
【選択図】
図6