(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】カバー及び鉗子装置
(51)【国際特許分類】
A61B 17/29 20060101AFI20240227BHJP
A61B 18/14 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
A61B17/29
A61B18/14
(21)【出願番号】P 2023550699
(86)(22)【出願日】2022-03-23
(86)【国際出願番号】 JP2022013608
(87)【国際公開番号】W WO2023181199
(87)【国際公開日】2023-09-28
【審査請求日】2023-08-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515075692
【氏名又は名称】リバーフィールド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122183
【氏名又は名称】小澤 一郎
(72)【発明者】
【氏名】後谷 好紀
【審査官】菊地 康彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-530771(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0314108(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0187974(US,A1)
【文献】特開2012-070953(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/28-17/295
A61B 18/14
A61B 34/30-34/37
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の処置を行う処置部を有する鉗子装置に装着される筒状のカバーであって、
前記処置部を含む先端部を覆う第1の被覆部と、
前記先端部より後端側を覆う第2の被覆部と、を有し、
前記第2の被覆部は、前記第1の被覆部と比較して、鉗子装置を挿抜する際にトロッカーに引っかかった場合に変形しにくい構成であ
り、
前記第2の被覆部は、カバー表面の一部にコーティング材料が塗布された領域であり、
前記コーティング材料は、ガラス系コーティング材料又はアクリル系コーティング材料を含有することを特徴とするカバー。
【請求項2】
前記第1の被覆部は、ショアA硬度が40~60°のブチルゴム又はシリコーンゴムであり、
前記第2の被覆部は、ショアA硬度が60~80°のブチルゴム又はシリコーンゴムであることを特徴とする請求項1に記載のカバー。
【請求項3】
前記第1の被覆部は、該第1の被覆部の直径よりも小さい環状の小径部が後端側に延びるように設けられており、
前記第2の被覆部は、前記小径部の外周を覆うように設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のカバー。
【請求項4】
対象の処置を行う処置部を有する鉗子装置に装着される筒状のカバーであって、
前記処置部を含む先端部を覆う第1の被覆部と、
前記先端部より後端側を覆う第2の被覆部と、を有し、
前記第2の被覆部は、前記第1の被覆部と比較して、鉗子装置を挿抜する際にトロッカーに引っかかった場合に変形しにくい構成であり、
前記第2の被覆部は、内周に粘着剤が塗布されていることを特徴とす
るカバー。
【請求項5】
前記第2の被覆部は、前記第1の被覆部の表面の一部に熱的又は化学的な処理が施された領域であることを特徴とする請求項1に記載のカバー。
【請求項6】
対象の処置を行う処置部を有する先端部と、
前記先端部と接続される柱状部品と、
前記柱状部品の、前記先端部と接続される側と反対側に接続されるパイプと、
前記先端部から前記柱状部品にかけて装着される請求項1乃至5のいずれか1項に記載のカバーと、
を備えることを特徴とする鉗子装置。
【請求項7】
前記先端部は、処置部が動作するための関節部を有し、
前記関節部は、前記第2の被覆部で覆われていないことを特徴とする請求項6に記載の鉗子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉗子装置のカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、術者の負担軽減や、医療施設の省人化を図るためにロボット(マニピュレータ)を利用した医療処置の提案がされている。外科分野では、術者が遠隔操作可能な手術用マニピュレータを操作して患者の処置を行う、手術用マニピュレータシステムに関する提案が行われている。
【0003】
手術用マニピュレータの先端には各種の術具が装着されており、術具として手術の際に人体の組織を把持する鉗子が知られている。例えば、特許文献1には、外科処置具における少なくとも基部の周囲を覆う筒状に形成された部材である外科処置具用カバーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述の外科処置具用カバーは、内視鏡外科手術などで使用可能なゴムなどの柔軟性を有する材料から形成されている。そのため、トロッカーを通して外科処置具を挿抜する際に、トロッカーの端部にカバーが引っかかる可能性があり、場合によってはカバーが外科処置具から抜けるおそれがある。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その例示的な目的の一つは、鉗子装置等の術具からカバーが抜けにくくなる新たな技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のカバーは、対象の処置を行う処置部を有する鉗子装置に装着される筒状のカバーであって、処置部を含む先端部を覆う第1の被覆部と、先端部より後端側を覆う第2の被覆部と、を有する。第2の被覆部は、第1の被覆部と比較して、鉗子装置を挿抜する際にトロッカーに引っかかった場合に変形しにくい構成である。
【0008】
第1の被覆部よりも鉗子装置の根本側にある第2の被覆部は、トロッカーに引っかかると第1の被覆部と比較してめくれやすい。この態様によると、第2の被覆部は、第1の被覆部と比較して変形しにくい構成であるため、鉗子装置を挿抜する際にカバーの第2の被覆部がトロッカーに引っかかった場合でも、鉗子装置からカバーが抜けにくくなる。
【0009】
第1の被覆部は、ショアA硬度が40~60°のブチルゴム又はシリコーンゴムであり、第2の被覆部は、ショアA硬度が60~80°のブチルゴム又はシリコーンゴムであってもよい。これにより、処置部を含む先端部を覆う第1の被覆部の硬度が相対的に小さいため、カバーによる処置部の動きの抵抗を抑えることができる。一方で、第2の被覆部の硬度が相対的に大きいため、第2の被覆部がトロッカーに引っかかった場合の変形を抑えることができる。
【0010】
第1の被覆部は、該第1の被覆部の直径よりも小さい環状の小径部が後端側に延びるように設けられており、第2の被覆部は、小径部の外周を覆うように設けられていてもよい。これにより、第1の被覆部を有する第1の部品に、第2の被覆部を有する第2の部品を装着してカバーを構成できる。このように、機能ごとに複数の部品を組み合わせることで、装着する鉗子装置や使用するトロッカーの種類ごとに適切なカバーを作製できる。なお、第1の被覆部の直径と第2の被覆部の直径は実質的に同じであるとよい。この場合、第1の被覆部と第2の被覆部との境界に段差ができにくくなる。
【0011】
第2の被覆部は、カバー表面の一部にコーティング材料が塗布された領域であってもよい。これにより、カバーの一部に簡易に第2の被覆部を形成できる。
【0012】
コーティング材料は、ガラス系コーティング材料又はアクリル系コーティング材料を含有してもよい。これにより、第2の被覆部の硬度を高めることができる。
【0013】
第2の被覆部は、内周に粘着剤が塗布されていてもよい。これにより、トロッカーがカバーに引っかかっても第2の被覆部がめくれにくくなる。
【0014】
第2の被覆部は、第1の被覆部の表面の一部に熱的又は化学的な処理が施された領域であってもよい。これにより、二つの部品や材料を組み合わせることなく、第1の被覆部を準備するだけで、第1の被覆部と機能や組成が異なる第2の被覆部を形成できる。
【0015】
本発明の他の態様は鉗子装置である。この鉗子装置は、対象の処置を行う処置部を有する先端部と、先端部と接続される柱状部品と、柱状部品の、先端部と接続される側と反対側に接続されるパイプと、先端部から柱状部品にかけて装着されるカバーと、を備えている。
【0016】
この態様によると、カバーの第2の被覆部がトロッカーに引っかかった場合でも、カバーが抜けにくい鉗子装置を実現できる。
【0017】
先端部は、処置部が動作するための関節部を有してもよい。関節部は、第2の被覆部で覆われていない。これにより、第1の被覆部と比較して変形しにくい第2の被覆部で関節部が覆われていないため、関節部を中心とする処置部の動作抵抗を抑えることができる。
【0018】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、鉗子装置からカバーが抜けにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本実施の形態に係る鉗子装置の正面図である。
【
図2】
図2(a)~
図2(b)は、ジョイントカバーがベースキャップから抜ける様子を説明するための模式図である。
【
図4】
図3に示すカバーの要部を示す縦断面図である。
【
図5】本実施の形態に係る鉗子装置における第2の被覆部近傍を拡大した図である。
【
図6】本実施の形態の第1の変形例に係るカバーの要部を示す縦断面図である。
【
図7】本実施の形態の第2の変形例に係るカバーの要部を示す縦断面図である。
【
図8】本実施の形態の第3の変形例に係るカバーの要部を示す縦断面図である。
【
図9】本実施の形態の第4の変形例に係るカバーの要部を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一又は同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述される全ての特徴やその組合せは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0022】
(鉗子装置)
図1は、本実施の形態に係る鉗子装置の正面図である。
図1に示す医療用の鉗子装置10は、一対の把持部12a,12bと、一対の把持部12a,12bを保持する支持体14と、支持体14を回転可能に支持する第1の回転軸16と、第1の回転軸16を保持するベース部品18と、第1の回転軸16と同軸に配置されている4つのガイドプーリ(不図示)と、一対の把持部12a,12bと同軸に保持される4つのジョープーリ20と、4つのガイドプーリと4つのジョープーリ20との間に掛けられた4本のワイヤ22と、支持体14を第1の回転軸16を中心に回転させるための2本のワイヤ24と、を備えている。
【0023】
ベース部品18は、柱状部品であるベースキャップ26の先端側と連結されている。ベースキャップ26の後端側はパイプ28と連結されている。本実施の形態に係る鉗子装置10は、支持体14からベースキャップ26の後端部まで、円筒状のジョイントカバー30で覆われている。これにより、手術中にワイヤやプーリ等の部品間の隙間に異物が入り込みにくくなる。また、把持部12a,12bに電気を通して患者の組織を止血するタイプの鉗子装置の場合、絶縁性を有するジョイントカバー30が用いられる。
【0024】
ベースキャップ26は、材質がエンジニアリングプラスチック等で構成されている円筒状(柱状)の樹脂部品である。これにより、部品強度と絶縁性を両立し得る。具体的には、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)やPEI(ポリエーテルイミド)といった材料が用いられるが、これらに限られない。
【0025】
パイプ28の材質は、例えば、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)やGFRP(ガラス繊維強化プラスチック)が用いられる。ジョイントカバー30は、絶縁性が高く屈曲性に優れた材料が好ましく、例えば、ブチルゴムやシリコーンゴムが用いられる。
【0026】
このように、本実施の形態に係る鉗子装置10は、手術対象の処置を行う処置部としての把持部12a,12bを有する先端部31と、先端部31と接続されるベースキャップ26と、ベースキャップ26の、先端部31と接続される側と反対側に接続されるパイプ28と、先端部31からベースキャップ26にかけて装着されるジョイントカバー30と、を備える。
【0027】
図2(a)~
図2(b)は、ジョイントカバーがベースキャップから抜ける様子を説明するための模式図である。鉗子装置10は、腹腔鏡手術の際にトロッカー32を介して患者の体内に挿入される。挿入された鉗子装置10は患者の体内で傾いたりスライドしたりする場合がある。そのため、トロッカー32の端部32aに引っかかったジョイントカバー30(
図2(a))は、そのまま鉗子装置10がトロッカー32から抜ける方向に動く際に一部がベースキャップ26の凹部26aから浮き上がる(
図2(b))。そのため、ジョイントカバー30とベースキャップ26の凹部26aとの接触面積が減り、摩擦が減少することで更にジョイントカバー30が抜けやすくなる。
【0028】
その状態で更にジョイントカバー30にトロッカー32から力が加わると、最終的にジョイントカバー30が鉗子装置10から抜け落ちる可能性がある。そこで、本実施の形態に係る鉗子装置10は、トロッカー32の端部32aがジョイントカバー30に引っかかった場合にジョイントカバー30が変形しにくい構成を採用している。
【0029】
図3は、本実施の形態に係るカバーの斜視図である。
図4は、
図3に示すカバーの要部を示す縦断面図である。本実施の形態に係るジョイントカバー30は、対象の処置を行う把持部12a,12bを有する鉗子装置に装着される筒状のカバーである。ジョイントカバー30は、先端部31を覆う第1の被覆部30aと、先端部31より後端側を覆う第2の被覆部30bと、を有する。第2の被覆部30bは、第1の被覆部30aと比較して、鉗子装置10を挿抜する際にトロッカー32に引っかかった場合に変形しにくい構成である。ここで、変形しにくいとは、第2の被覆部30bの材料が第1の被覆部30aの材料よりも硬い場合(ヤング率や弾性率が大きい場合)だけでなく、第2の被覆部30bの形状や大きさを調整することで第1の被覆部30aと比較して剛性が高い構造とする場合も含む。
【0030】
通常、第1の被覆部30aよりも鉗子装置10の根本側(パイプ28側)にある第2の被覆部30bは、トロッカー32に引っかかると第1の被覆部30aと比較してめくれやすい。そこで、本実施の形態に係る第2の被覆部30bは、第1の被覆部30aと比較してショアA硬度が高くなるように構成している。具体的には、第1の被覆部30aは、ショアA硬度が40~60°のブチルゴム又はシリコーンゴムであり、第2の被覆部30bは、ショアA硬度が60~80°のブチルゴム又はシリコーンゴムである。なお、第1の被覆部30aや第2の被覆部30bは、ブチルゴムやシリコーンゴムが含まれていればよく、主成分として含まれていればより好ましく、他の成分を含んでいてもよい。
【0031】
これにより、把持部12a,12bを含む先端部31を覆う第1の被覆部30aの硬度が相対的に小さいため、ジョイントカバー30による把持部12a,12bの動きの抵抗を抑えることができる。一方で、第2の被覆部30bの硬度が相対的に大きいため、第2の被覆部30bがトロッカー32に引っかかった場合に、
図2(b)に示すようなジョイントカバー30の一部の変形によるめくれが発生しにくくなる。その結果、鉗子装置10を挿抜する際にジョイントカバー30の第2の被覆部30bがトロッカー32に引っかかった場合でも、鉗子装置10からジョイントカバー30が抜けにくくなる。
【0032】
なお、本実施の形態に係るジョイントカバー30は、裏面にジョイントカバー30よりも変形しにくい変形抑制部材36が環状凸部として設けられている。ここで、変形しにくいとは、前述と同様に、変形抑制部材36の材料がジョイントカバー30の材料よりも硬い場合(ヤング率や弾性率が大きい場合)だけでなく、変形抑制部材36の形状や大きさを調整することでジョイントカバー30と比較して剛性が高い構造とする場合も含む。このような場合、裏面の一部が変形抑制部材36でサポートされているジョイントカバー30は、ジョイントカバー30単独よりも変形しにくくなる。なお、本実施の形態に係るジョイントカバー30において、変形抑制部材36は必ずしも必須ではない。また、第2の被覆部30bと変形抑制部材36とが一体的に同じ材料で構成されていてもよい。
【0033】
図5は、本実施の形態に係る鉗子装置における第2の被覆部近傍を拡大した図である。
図3乃至
図5に示すように、本実施の形態に係る第1の被覆部30aや第2の被覆部30bは、筒状又はリング状の部材である。これにより、トロッカー32と鉗子装置10が接触する接触位置Pが第2の被覆部30bの周方向のどの位置であっても、当接したトロッカー32によるジョイントカバー30の変形を抑制できる。
【0034】
また、
図5に示すように、ベースキャップ26は、外周に環状の凹部26aが形成されている。そして、前述の変形抑制部材36は、凹部26aに嵌まる形状を有する。このように、ベースキャップ26の外周に形成された環状の凹部26aに、ジョイントカバー30よりも変形しにくい変形抑制部材36が嵌まることで、
図2(b)に示すようなジョイントカバー30の一部が変形してベースキャップ26の凹部26aから浮き上がることが抑制される。
【0035】
また、ジョイントカバー30が浮き上がりにくくなることで、ベースキャップ26の凹部26aに嵌まっている変形抑制部材36が段差26cに引っかかった状態が維持される。つまり、変形抑制部材36が設けられているジョイントカバー30は、ベースキャップ26から抜けにくくなる。
【0036】
また、本実施の形態に係るジョイントカバー30は、先端部31を覆う第1の被覆部30aの裏面の一部30dが変形抑制部材36で覆われていない。変形抑制部材36で裏面が覆われていないジョイントカバー30の先端側にトロッカー32の端部32aが食い込んでも、先端部31のジョイントカバー30は撓みづらい(変形しにくい)ため、第1の被覆部30aに第2の被覆部30bよりも相対的に硬度の低い材料を用いることができる。
【0037】
なお、本実施の形態に係る先端部31は、
図1に示すように、処置部である把持部12a,12b全体の屈曲動作をする際の関節部となる第1の回転軸16と、把持部12a,12bの開閉動作をする際の関節部となる第2の回転軸38と、が設けられている。そして、本実施の形態に係るジョイントカバー30における関節部は、第2の被覆部30bで覆われていない。第1の被覆部30aより変形しにくい材料からなる第2の被覆部30bで関節部を覆うと、関節部の動きの妨げになる。そこで、本実施の形態に係る関節部は、第1の被覆部30aと比較して変形しにくい第2の被覆部30bで覆われていないため、関節部を中心とする把持部12a,12bの動作抵抗を抑えることができる。
【0038】
次に各部の径や長さについて説明する。本実施の形態に係るジョイントカバー30のパイプ側の端面30cの直径d1は8.4±1.5mmの範囲で設定されている。また、ジョイントカバー30の厚みは0.5±0.3mmの範囲で設定されている。変形抑制部材36の直径d2は7.8±1.5mmの範囲で設定されている。また、変形抑制部材36の厚みは0.5±0.3mmの範囲で設定されている。また、ジョイントカバー30の端面30cは、パイプ28の端面28aに覆われているとよい。また、パイプ28の直径d4は8.4±1.5mmの範囲で設定されている。
【0039】
ジョイントカバー30は、鉗子装置10が挿入されるトロッカーの内径d5よりも直径d1が小さい。これにより、鉗子装置10がトロッカー32の内部で姿勢を変えることができる。本実施の形態に係る内径d5は、10~15mmの範囲で設定されており、トロッカー32の有効長L2は、30~100mmの範囲で設定されている。トロッカー32の表面材質は、例えば、ポリカーボネートやポリオレフィンといった樹脂、ステンレス等の金属である。
【0040】
ジョイントカバー30の直径d1が大きすぎると、トロッカー32に対して鉗子装置10の姿勢変化が小さくなってしまう。一方、直径d1が小さすぎると、鉗子装置10に対するトロッカー32の傾きαが大きくなりがちになり、接触位置Pにおけるトロッカー32の端部32aのジョイントカバー30への食い込み(接触荷重)が大きくなる。そこで、鉗子装置10を挿抜するトロッカー32に対して、傾きαの最大値が15±5°の範囲となるように、ジョイントカバー30の直径d1と、トロッカー32の内径d5及び有効長L2との大きさを設定するとよい。
【0041】
本実施の形態に係るベースキャップ26は、処置部である把持部12a,12bの開閉や屈曲といった動作をさせるワイヤ22やワイヤ24が通る貫通孔26bを有している。また、ベースキャップ26の第2の被覆部30bで覆われている部分に設けられている凹部26aは、長さL1が7.0±3mmの範囲であり、凹部26aの小径部分の直径d6が7.2±1.5mmの範囲で設定されている。また、ベースキャップ26の大径部分の直径d7は7.8±1.5mmの範囲で設定されている。
【0042】
なお、変形抑制部材36は、剛性及び表面の摺動性が高い材料が好ましく、例えば、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PEI(ポリエーテルイミド)及びPSU(ポリスルホン)からなる群から選択される少なくとも一つを含む樹脂材料から形成されているとよい。これにより、比較的柔らかい材料から形成されているジョイントカバー30の装着性を損なわず、装着後にはトロッカー32の食い込みによるジョイントカバー30の変形を抑制できる。
【0043】
(第1の変形例)
図6は、本実施の形態の第1の変形例に係るカバーの要部を示す縦断面図である。第1の変形例に係るジョイントカバー40における第1の被覆部40aは、第1の被覆部の直径d1'よりも直径d3が小さい環状の小径部40cが後端側に延びるように設けられている。そして、第2の被覆部40bは、小径部40cの外周を覆うように設けられている。これにより、第1の被覆部40aを有する第1の部品42に、第2の被覆部40bを有する第2の部品44を装着してジョイントカバー40を構成できる。
【0044】
このように、機能ごとに複数の部品を組み合わせることで、装着する鉗子装置10や使用するトロッカー32の種類ごとに適切なジョイントカバー40を作製できる。なお、複数の部品の組合せではなく、2色成形でジョイントカバー40を作製してもよい。また、第1の被覆部40aの直径d1'と第2の被覆部40bの直径d1は実質的に同じであるとよい。この場合、第1の被覆部40aと第2の被覆部40bとの境界46に段差ができにくくなる。
【0045】
(第2の変形例)
図7は、本実施の形態の第2の変形例に係るカバーの要部を示す縦断面図である。第2の変形例に係るジョイントカバー48は、第1の被覆部48aの後端側の一部の表面48cにコーティング材料が塗布された領域(第2の被覆部48b)が設けられている。これにより、ジョイントカバー48の一部に簡易に第2の被覆部48bを形成できる。本実施の形態に係るコーティング材料は、ガラス系コーティング材料又はアクリル系コーティング材料を含有してもよい。これにより、第2の被覆部48bの硬度を高めることができる。なお、第1の被覆部48aの裏面側であって、第2の被覆部48bと対向する位置に変形抑制部材36が設けられていてもよい。
【0046】
(第3の変形例)
図8は、本実施の形態の第3の変形例に係るカバーの要部を示す縦断面図である。第3の変形例に係るジョイントカバー50は、第1の被覆部50aより後端側であって、内周50cに粘着剤51が塗布された領域(第2の被覆部50b)が設けられている。これにより、トロッカー32がジョイントカバー50に引っかかっても第2の被覆部50bがめくれにくくなる。
【0047】
(第4の変形例)
図9は、本実施の形態の第4の変形例に係るカバーの要部を示す縦断面図である。第4の変形例に係るジョイントカバー52は、第1の被覆部52aの表面52cの一部に熱的又は化学的な処理が施された領域(第2の被覆部52b)が設けられている。これにより、二つの部品や材料を組み合わせることなく、第1の被覆部52aを準備するだけで、第1の被覆部52aと機能や組成が異なる第2の被覆部52bを形成できる。ここで、熱的な処理とは、焼き入れや焼成といった処理を含む。また、化学的な処理とは、ジョイントカバーを構成する材料の組成を変えるために、所定雰囲気(所定元素を多く含むガス雰囲気)に曝す処理や薬品を塗布する処理を含む。
【0048】
以上、本発明を上述の実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、実施の形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて実施の形態における組合せや処理の順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、鉗子装置からカバーが抜けにくくなる。
【符号の説明】
【0050】
10 鉗子装置、 12a 把持部、 14 支持体、 16 第1の回転軸、 18 ベース部品、 26 ベースキャップ、 26a 凹部、 26b 貫通孔、 26c 段差、 28 パイプ、 28a 端面、 30 ジョイントカバー、 30a 第1の被覆部、 30b 第2の被覆部、 31 先端部、 32 トロッカー、 32a 端部、 38 第2の回転軸。