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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】表示制御装置および表示制御方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 7/18 20060101AFI20240227BHJP
   B60R 1/20 20220101ALI20240227BHJP
   B60R 1/26 20220101ALI20240227BHJP
【FI】
H04N7/18 J
B60R1/20 100
B60R1/26 200
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020004906
(22)【出願日】2020-01-16
(65)【公開番号】P2021114638
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(72)【発明者】
【氏名】篠原 善幸
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 彰洋
【審査官】益戸 宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-182348(JP,A)
【文献】特開2011-066657(JP,A)
【文献】特開2014-036268(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0079828(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 7/18
B60R 1/20
B60R 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された表示装置に映像を表示する表示制御装置であって、
前記車両の後進時に、前記車両が直線的に後進している間、そのことを検出する検出部と、
前記検出部により前記車両が直線的に後進していることが検出されていない期間は、車両の側面部から前記車両の後方に向かう成分を含む方向を撮影するカメラが出力する撮影画像に基づいて、前記車両に搭乗する運転手が実際に風景を見たときの距離感と前記表示装置に映像として映る風景を見たときの距離感とが同じになるように前記表示装置に映像を表示する標準モードで前記表示装置に映像を表示する一方、検出されている期間は、前記撮影画像に基づいて、実際の風景と前記表示装置に映像として映る風景との距離感の相違を許容して水平方向に広い風景を映すワイドモード、または、前記映像として映る風景の歪みを許容して、風景の少なくとも一部を圧縮して映す圧縮モードで前記表示装置に映像を表示する表示制御部と、
を備えることを特徴とする表示制御装置。
【請求項2】
前記検出部は、ステアリング角度がゼロ付近の所定値以下に留まっている期間を、前記車両が直線的に後進している期間として検出することを特徴とする請求項1に記載の表示制御装置。
【請求項3】
前記検出部は、前記車両が直線的に後進している期間に代えて、前記車両が駐車領域の前方側で、前記駐車領域に向かって直線的に後進している期間を検出することを特徴とする請求項1に記載の表示制御装置。
【請求項4】
前記検出部は、
前記駐車領域に対する前記車両の位置を検出する機能と、前記駐車領域の外枠の長辺が延びる方向を検出する機能と、前記駐車領域の外枠の長辺に対する前記車両の傾きを検出する機能とを有し、
前記車両が前記駐車領域の前方に位置し、かつ、前記駐車領域の外枠の長辺に対する前記車両の傾きがゼロである平行状態となったことを検出し、前記平行状態となった時点以降の期間を、前記車両が駐車領域の前方側で前記駐車領域に向かって直線的に後進している期間として検出する
ことを特徴とする請求項3に記載の表示制御装置。
【請求項5】
車両に搭載された表示装置に映像を表示する表示制御方法であって、
示制御装置の表示制御部が、前記車両が直線的に後進していない期間、車両の側面部から前記車両の後方に向かう成分を含む方向を撮影するカメラが出力する撮影画像に基づいて、前記車両に搭乗する運転手が実際に風景を見たときの距離感と前記表示装置に映像として映る風景を見たときの距離感とが同じになるように前記表示装置に映像を表示する標準モードで表示装置に映像を表示するステップと、
前記表示制御装置の表示制御部が、前記車両が直線的に後進している期間、前記撮影画像に基づいて、実際の風景と前記表示装置に映像として映る風景との距離感の相違を許容して水平方向に広い風景を映すワイドモード、または、前記映像として映る風景の歪みを許容して、風景の少なくとも一部を圧縮して映す圧縮モードで前記表示装置に映像を表示するステップと、
を含むことを特徴とする表示制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示制御装置および表示制御方法に関し、特に、車両の側面部から車両の後方に向かう成分を含む方向を撮影するカメラの撮影結果に基づいて表示装置に映像をする表示制御装置および表示制御方法に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の側部に設けられたカメラから車両の斜め後方を撮影し、カメラの撮影結果に基づく映像を車内に設けられた表示装置に表示するシステム(以下「モニタシステム」という)が知られている。運転手は、モニタシステムを、以下の方法で使用することができる。すなわち、車両を後進させる際に、運転手は、モニタシステムに係る表示装置に表示された風景を確認し、車両の後方および側方の安全を確かめながら車両を運転する。
【0003】
なお、モニタシステムに関連するシステムとして、特許文献1には、駐車枠線と車両の車体とが平行になったか否か、つまり、車両が駐車領域に向かってバックで直進するような状態となったか否かを判定し、平行になった場合、表示装置に表示する映像を、視点変換を行っていない映像から、俯瞰映像に切り替える技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-142813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したモニタシステムに関して、車両の後進時に後方および側方の安全を確認するシステムとしての機能をより効果的に発揮させるためには、表示装置に映像として表示される風景は、水平方向に広い範囲である方がよい。水平方向に広い範囲であるほど、運転手は、より広い範囲で車両の後方および側方の状況を認識できるからである。これを踏まえ、モニタシステムについて、車両の後進が行われている間ずっと、標準モードではなく、カメラの撮影範囲内で水平方向にできるだけ広い範囲で風景を表示するようなモードで映像を表示するシステムとすることが考えられる。しかしながら、モニタシステムをこのようなシステムとした場合、以下の問題がある。
【0006】
すなわち、カメラの撮影範囲内で水平方向に広い範囲で風景を表示する場合、実際の風景と表示装置に映像として映る風景との距離感の相違を許容して、標準モードのときよりも水平方向に広い風景を映すワイドモードで映像を表示するか、または、表示装置に映像として映る風景の歪みを許容して、風景の少なくとも一部を圧縮して映す圧縮モードで映像を表示するようにすることが想定される。そして車両の後進が行われている間ずっと、これらのモードで映像を表示した場合、運転手がハンドルを動かしながらハンドル操作を行っているときに、距離感の相違または風景の歪みに起因して、運転手が違和感を覚え、運転手が運転に困難性を感じる可能性がある。
【0007】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、車両が後進している間、運転手が運転に困難性を感じさせない範囲で、水平方向に広い範囲の風景が表示装置に表示されるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するために、本発明では、車両が直線的に後進していない期間は、車両の側面部から車両の後方に向かう成分を含む方向を撮影するカメラが出力する撮影画像に基づいて、運転手が実際に風景を見たときの距離感と表示装置に映像として映る風景を見たときの距離感とが同じになるように表示装置に映像を表示する標準モードで表示装置に映像を表示する一方、車両が直線的に後進している期間は、撮影画像に基づいて、実際の風景と表示装置に映像として映る風景との距離感の相違を許容して水平方向に広い風景を映すワイドモード、または、映像として映る風景の歪みを許容して、風景の少なくとも一部を圧縮して映す圧縮モードで表示装置に映像を表示するようにしている。
【発明の効果】
【0009】
上記のように構成した本発明によれば、車両が直線的に後進していない期間、つまり、ユーザが実際にハンドルを動かして車両の姿勢を調整している期間は、標準モードで映像が表示される。このため、運転手は、表示装置に表示された映像について、現実の風景と映像の風景との距離感の相違または映像の風景の歪みに起因する違和感を覚えることなくハンドルを動かすことができ、この期間、運転手が運転に困難性を感じることを防止できる。
【0010】
更に本発明では、車両が直線的に後進している期間は、ワイドモードまたは圧縮モードにより、標準モードと比較して水平方向に広い範囲で風景が映像として表示される。ここで、車両が直線的に後進している期間は、運転手は、基本的にはハンドルを動かさず、ハンドルの状態を維持している状態であり、現実の風景と映像の風景との距離感の相違または映像の風景の歪みに起因する違和感があったとしても運転手が運転に困難性を感じることがない。これを踏まえ、本発明によれば、運転手が運転に困難性を感じない範囲で、水平方向に広い範囲の風景が表示装置に表示されるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る表示制御装置の機能構成例を示すブロック図である。
図2】撮影画像を示す図である。
図3】標準領域と表示領域との関係、および、ワイド領域と表示領域との関係を示す図である。
図4】本発明の一実施形態に係る表示制御装置の動作例を示すフローチャートである。
図5】駐車後進する車両の軌跡を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係る表示制御装置1の機能構成例を示すブロック図である。図1で示すように、表示制御装置1には、右サイドカメラ2、左サイドカメラ3、右表示装置4および左表示装置5が接続されている。以下、表示制御装置1が搭載された車両を「自車両」という。
【0013】
右表示装置4は、自車両のダッシュボードの右端部に設けられた表示パネル(例えば、液晶表示パネルや、有機ELパネル等)である。左表示装置5は、自車両のダッシュボードの左端部に設けられた表示パネルである。右表示装置4および左表示装置5は、特許請求の範囲の「表示装置」に相当する。
【0014】
右サイドカメラ2は、自車両の右側面部(例えば、前部座席の右ドアの回動軸付近)に設けられた撮影装置である。右サイドカメラ2は、自車両の後方に向かってやや左に傾いた軸を光軸とし、この光軸に向かって広がる所定範囲の風景を撮影する。左サイドカメラ3は、自車両の左側面部に設けられた撮影装置である。左サイドカメラ3は、自車両の後方に向かってやや右に傾いた軸を光軸とし、この光軸に向かって広がる所定範囲の風景を撮影する。右サイドカメラ2および左サイドカメラ3は、特許請求の範囲の「カメラ」に相当する。
【0015】
図1で示すように、本実施形態に係る表示制御装置1は、その機能構成として、検出部10および表示制御部11を備えている。上記各機能ブロック10、11は、ハードウェア、DSP(Digital Signal Processor)、ソフトウェアの何れによっても構成することが可能である。例えばソフトウェアによって構成する場合、上記各機能ブロック10、11は、実際にはコンピュータのCPU、RAM、ROMなどを備えて構成され、RAMやROM、ハードディスクまたは半導体メモリ等の記録媒体に記憶されたプログラムが動作することによって実現される。
【0016】
本実施形態に係る表示制御装置1は、自車両が後進しているときに実行する処理に特徴がある。これを踏まえ、以下、自車両が後進しているときの表示制御装置1の処理を中心に、表示制御装置1の動作について説明する。
【0017】
自車両が後進している間、運転手は、表示制御装置1の機能を以下の態様で使用するものとする。すなわち、右表示装置4および左表示装置5には、右サイドカメラ2および左サイドカメラ3の撮影結果に基づく映像、つまり、自車両の後方および側方の風景が表示される。表示内容については後に詳述する。運転手は、右表示装置4および左表示装置5に映像として映る風景を確認することによって自車両の後方および側方を確認し、ハンドル操作を行って自車両を運転する。
【0018】
検出部10は、自車両の後進時に、自車両が直線的に後進している間、そのことを検出する。以下、検出部10の処理について詳述する。
【0019】
検出部10は、自車両の後進が開始された場合、そのことを検出する。本実施形態では、検出部10は、ギアがリバースになった場合に、後進が開始されたことを検出する。ただし、後進が開始されたことを検出する方法は本実施形態で例示する方法に限られず、例えば、運転手が入力装置に所定の操作を行う等、運転手(他の搭乗者であってもよい)から明示的な指示があった場合に、後進が開始されたことを検出するようにしてもよい。
【0020】
後進が開始されたことを検出すると、検出部10は、ステアリング角度を継続的に監視する。そして、検出部10は、ステアリング角度がゼロ付近の所定値以下に留まっている期間を自車両が直線的に後進している期間として検出する。自車両が直線的に後進している間は、ステアリング角度がゼロ付近で推移するからである。なお、所定値は、自車両が直線的に後進しているか否かを判断する基準値との観点の下、事前のテストやシミュレーションによって予め定められる。所定値は一例として「5°」である。本実施形態では、検出部10は、自車両のステアリング角度を監視するコントローラ(例えば、ステアリングECU)に接続されており、当該コントローラと通信して自車両の現在のステアリング角度を検出する。以下、車両が直線的に後進している期間(=本実施形態では、ステアリングがゼロ付近の所定値以下に留まっている期間)を「直線後進期間」という。検出部10は、直線後進期間を検出している間、表示制御部11に直線後進期間であることを通知する。
【0021】
例えば、検出部10は、所定周期でステアリング角度を検出し、検出したステアリング角度が所定値以下の場合は、直線後進期間であることを示す通知信号を表示制御部11に出力し、検出したステアリング角度が所定値を上回っている場合は、通知信号を表示制御部11に出力しない。この場合、表示制御部11は、検出部10から通信信号の入力がある期間を直線後進期間として認識する。また例えば、検出部10は、ステアリング角度が所定値を上回った状態から所定値以下となったときに表示制御部11に第1信号を出力し、所定値以下の状態から所定値を上回った状態となったときに表示制御部11に第2信号を出力する。この場合、表示制御部11は、検出部10から第1信号を入力した後、第2信号を入力するまでの期間を直線後進期間として認識する。
【0022】
表示制御部11は、検出部10により自車両が直線的に後進していることが検出されていない期間は、右サイドカメラ2および左サイドカメラ3が出力する撮影画像G1(図2)に基づいて、標準モードで右表示装置4および左表示装置5に映像を表示する。一方、表示制御部11は、検出部10により自車両が直線的に後進していることが検出されている期間は、撮影画像G1に基づいて、実際の風景と表示装置に映像として映る風景との距離感の相違を許容して水平方向に広い風景を映すワイドモードで右表示装置4および左表示装置5に映像を表示する。以下、表示制御部11の処理について詳述する。以下では右表示装置4に映像を表示するときの表示制御部11の処理を説明するが、表示制御部11は、以下で説明する方法と同様の方法で左サイドカメラ3が出力する撮影画像G1に基づいて左表示装置5に映像を表示する。
【0023】
表示制御部11は、検出部10と同様の方法で後進が開始されたことを検出する。後進が開始されたことを検出すると、表示制御部11は、検出部10により直線後進期間が検出されていない期間は、標準モードで右表示装置4に映像を表示する。以下、標準モードについて詳述する。
【0024】
図2は、右サイドカメラ2の撮影結果に基づく撮影画像G1(=撮影結果に基づく1フレーム分の画像)の一例を示す図である。図2は、後述する第1変形例の説明でも使用する。標準モードにおいて、表示制御部11は、撮影画像G1の領域のうち、符号WK1で示す標準領域に属する画像に基づいて右表示装置4に映像を表示する。より詳細には、表示制御部11は、右サイドカメラ2から所定周期で入力される撮影画像G1について、標準領域WK1に属する画像を切り取り、必要な画像処理を施した上で所定周期でVRAM等の画像バッファに展開し、画像バッファに展開された画像に基づいて右表示装置4を駆動することによって、右サイドカメラ2の撮影結果がリアルタイムで反映された動画を右表示装置4に表示する。標準領域WK1は以下のルールで規定される。
【0025】
図3(A)は、右表示装置4の表示領域H1と、撮影画像G1における標準領域WK1との関係を示す図である。まず標準領域WK1は、車両の後進時に運転手が確認すべき範囲を包含する範囲の領域とされる。更に標準領域WK1は、図3(A)を参照し、標準領域WK1に属する画像に対して必要な画像処理(必要に応じて画像を拡大する処理を含む)を施して表示領域H1の全域に1フレーム分の画像を表示したときに、運転手が実際に風景を見たときの距離感と右表示装置4に映像として映る風景を見たときの距離感とが大体同じになるようなサイズの領域とされる。実際に風景を見たときの距離感と右表示装置4に映像として映る風景を見たときの距離感とが大体同じとは、あるオブジェクトについて、そのオブジェクトを実際に見たときに感じるそのオブジェクトまでの距離と、右表示装置4に映るオブジェクトを見たときに感じるそのオブジェクトまでの距離とが大体同じであることを意味する。
【0026】
標準モードにおいて1フレーム分の画像を表示する際、表示制御部11は、撮影画像G1の標準領域WK1に属する画像を切り取り、当該画像について必要な画像処理を施した上で、右表示装置4に1フレーム分の画像を表示する。標準モードで施される画像処理は、必要に応じて画像を拡大する処理を含み、画像処理が施されることにより、運転手が実際に風景を見たときの距離感と右表示装置4に映像として映る風景を見たときの距離感とが大体同じになるようにされる。一方、標準モードで施される画像処理には、第2実施形態の圧縮モードで施されるような、風景の歪みを伴う圧縮処理は含まれない。
【0027】
標準モードでは、以上の態様で映像が表示されるため、後述するワイドモードのときよりも、映像として表示される風景の水平方向の範囲が狭いものの、実際に風景を見たときの距離感と右表示装置4に映像として映る風景を見たときの距離感とが大体同じとなる。
【0028】
一方、表示制御部11は、検出部10により直線後進期間が検出されている期間は、ワイドモードで右表示装置4に映像を表示する。以下、ワイドモードについて詳述する。
【0029】
図2を参照し、ワイドモードにおいて、表示制御部11は、撮影画像G1の領域のうち、符号WK2で示すワイド領域に属する画像に基づいて右表示装置4に映像を表示する。ワイド領域WK2は以下のルールで規定される。
【0030】
図3(B)は、右表示装置4の表示領域H1と、撮影画像G1におけるワイド領域WK2との関係を示す図である。まずワイド領域WK2は、標準領域WK1を包含する領域とされる。従って、ワイド領域WK2には、車両の後進時に運転手が確認すべき範囲の領域が包含されている。更にワイド領域WK2は、図3(B)を参照し、ワイド領域WK2に属する画像に対して必要な画像処理(必要に応じて画像を縮小する処理を含む)を施して表示領域H1の全域に1フレーム分の画像を表示したときに、縦横比を変えることなく表示領域H1の全域に画像を表示可能な最大のサイズの領域とされる。ワイド領域WK2は以上のようなルールで規定されているため、上述した標準領域WK1よりも大きい。
【0031】
ワイドモードにおいて1フレーム分の画像を表示する際、表示制御部11は、撮影画像G1のワイド領域WK2に属する画像を切り取り、当該画像について必要な画像処理を施した上で、右表示装置4に1フレーム分の画像を表示する。ワイドモードで施される画像処理には、運転手が実際に風景を見たときの距離感と右表示装置4に映像として映る風景を見たときの距離感とが大体同じになるようにするという観点で実行される処理は含まれず、これら距離感の相違を許容してワイド領域WK2に属する画像の全域が表示領域H1に収まるようにする処理が含まれる。
【0032】
ワイドモードでは、以上の態様で映像が表示されるため、上述した標準モードのときよりも、映像として表示される風景の水平方向の範囲が広いものの、実際に風景を見たときの距離感と右表示装置4に映像として映る風景を見たときの距離感との同一性が担保されない。
【0033】
表示制御部11は、運転手その他の搭乗者から、映像の表示を停止する旨の指示があると、映像の表示を停止する。表示制御部11が、自車両が停止したか否かを検出可能に構成し、自車両が停止した後、一定期間経過したときに表示制御部11により自動で映像が停止される構成としてもよい。
【0034】
本実施形態によれば、以上の態様で右表示装置4(左表示装置5も同様)に映像が表示されるため、以下の効果を奏する。すなわち、自車両が直線的に後進していない期間、つまり、ユーザが実際にハンドルを動かして自車両の姿勢を調整している期間は、標準モードで映像が表示される。このため、運転手は、右表示装置4に表示された映像について、現実の風景と映像の風景との距離感の相違に起因する違和感を覚えることなくハンドルを動かすことができ、この期間、運転手が運転に困難性を感じることを防止できる。
【0035】
更に本実施形態では、自車両が直線的に後進している期間は、ワイドモードにより、標準モードと比較して水平方向に広い範囲で風景が映像として表示される。ここで、自車両が直線的に後進している期間は、運転手は、基本的にはハンドルを動かさず、ハンドルの状態を維持している状態であり、現実の風景と映像の風景との距離感の相違に起因する違和感があったとしても運転手が運転に困難性を感じることがない。これを踏まえ、本実施形態によれば、運転手が運転に困難性を感じない範囲で、水平方向に広い範囲の風景が右表示装置4に表示されるようにすることができる。
【0036】
次に本実施形態に係る表示制御装置1の動作例についてフローチャートを用いて説明する。図4(A)、(B)は検出部10の動作を示し、図4(C)、(D)は表示制御部11の動作を示している。なお、以下では、表示制御部11について、右表示装置4に映像を表示するときの動作を示しているが、左表示装置5に映像を表示するときも表示制御部11は同様の流れで処理を実行する。
【0037】
図4(A)で示すように、検出部10は、自車両の後進が開始されたか否かを監視する(ステップSA1)。後進が開始されたことを検出すると(ステップSA1:YES)、検出部10は、検出処理を実行する(ステップSA2)。
【0038】
図4(B)は検出処理の詳細を示すフローチャートである。検出部10は、図4(B)のフローチャートで示す処理を所定周期で実行する。図4(B)で示すように、検出部10は、ステアリング角度を検出し(ステップSB1)、スタリング角度が所定値以下であるか否かを判定する(ステップSB2)。ステアリング角度が所定値以下の場合(ステップSB2:YES)、検出部10は、直線後進期間であることを表示制御部11に通知する(ステップSB3)。ステアリング角度が所定値以下ではない場合(ステップSB2:NO)、検出部10は、直線後進期間でないことを表示制御部11に通知する(ステップSB4)。
【0039】
図4(C)で示すように、表示制御部11は、後進が開始されたか否かを監視する(ステップSC1)。後進が開始されたことを検出すると(ステップSC1:YES)、表示制御部11は、対応処理を実行する(ステップSC2)。
【0040】
図4(D)は対応処理の詳細を示すフローチャートである。表示制御部11は、図4(D)のフローチャートで示す処理を検出部10から通知がある度に実行する。図4(D)で示すように、表示制御部11は、検出部10から通知があった場合、その通知が直線後進期間である旨の通知であるか否かを判定する(ステップSD1)。直線後進期間である旨の通知の場合(ステップSD1:YES)、表示制御部11は、ワイドモードで映像を表示する(ステップSD2)。直線後進期間である旨の通知ではない場合(ステップSD1:NO)、表示制御部11は、標準モードで映像を表示する(ステップSD3)。
【0041】
<第1変形例>
次に第1変形例について説明する。本変形例では、表示制御部11が、検出部10により直線後進期間が検出されている間、ワイドモードではなく圧縮モードで映像を表示する点で上記実施形態と異なっている。以下、圧縮モードで映像を表示するときの表示制御部11の処理について詳述する。
【0042】
図2を参照し、本変形例に係る表示制御部11は、圧縮モードにおいて、符号WK3で示す拡張領域に属する画像に基づいて映像を表示する。図2で示すように、拡張領域WK3は、標準領域WK1と比較して、図中上下方向(実際の風景の鉛直方向)の長さは同じであるものの、図中右側(左右方向において車体が映り込む側と反対側)に範囲が広く、その範囲が撮影画像G1の図中の右辺に至るまで広がっている。以下、本変形例に係る拡張領域WK3と、標準領域WK1との差分の領域を拡大領域AR1とする。
【0043】
圧縮モードにおいて1フレーム分の画像を右表示装置4に表示する際、本変形例に係る表示制御部11は、以下の処理を実行する。すなわち、本変形例に係る表示制御部11は、拡張領域WK3に属する画像を切り取る。次いで、図2を参照し、本変形例に係る表示制御部11は、拡大領域AR1と、この拡大領域AR1に隣接し、標準領域WK1の図中の右端部で左右方向に一定の広がりをもったサイド領域AR2とを足した領域に属する画像に対して、サイド領域AR2の範囲内に収まるように左右方向に圧縮する画像処理を施す。この結果、サイド領域AR2に、当該足した領域に属していた画像が左右方向に圧縮されて延在した状態となる。
【0044】
そして、本変形例に係る表示制御部11は、画像処理を施した画像に対して、標準モードのときと同様の必要な画像処理(必要に応じて画像を拡大する処理を含む)を施し、1フレーム分の画像を右表示装置4に表示する。この結果、右表示装置4に表示された1フレーム分の画像は、サイド領域AR2を除く部分については、右サイドミラー6に映る風景を見たときの距離感と右表示装置4に映像として映る風景を見たときの距離感とが大体同じである。更にサイド領域AR2に対応する領域には、圧縮処理が施される前にサイド領域AR2と拡大領域AR1との双方に属していた画像が圧縮された状態で表示されるため、映像として表示される風景の水平方向の範囲は、標準モードに係る範囲よりも大きい。しかしながら、サイド領域AR2において、画像が圧縮されたことに起因して風景が歪んだ状態となる。
【0045】
本変形例によれば、上記実施形態と同様の効果を奏する。すなわち、自車両が直線的に後進していない期間は、標準モードで映像が表示されるため、運転手は、右表示装置4に表示された映像について、映像の風景の歪みに起因する違和感を覚えることなくハンドルを動かすことができ、この期間、運転手が運転に困難性を感じることを防止できる。そして、自車両が直線的に後進している期間は、圧縮モードにより、標準モードと比較して水平方向に広い範囲で風景が映像として表示されるため、運転手が運転に困難性を感じない範囲で、水平方向に広い範囲の風景が右表示装置4に表示されるようにすることができる。
【0046】
<第2変形例>
次に、第2変形例について説明する。本変形例では、主に検出部10の処理が上述した上記実施形態と異なっている。以下、検出部10の動作を中心として本変形例に係る表示制御装置1の動作について詳述する。
【0047】
ここで、自車両は、駐車領域12(図5)に向かって後進し、駐車領域12に駐車する場合がある。以下、駐車領域12に駐車するために行われる後進を特に「駐車後進」という。図5は、駐車領域12が明示された領域に、駐車後進する車両13の軌跡14が描画された図である。図5を用いた説明において、駐車領域12の長手方向を駐車領域長手方向といい、車両13の車体の長手方向を車体長手方向という。
【0048】
駐車後進は典型的には以下の態様で行われる。すなわち、まず、図5で示すように、駐車領域長手方向に対して車体長手方向にある程度の角度がつけられた状態で車両13が停止される。そしてその後、駐車後進が開始される。図5では、駐車領域長手方向に対して車体長手方向が90°程度傾いた状態で車両13が停車した様子を示している。
【0049】
駐車後進が開始されると、駐車領域長手方向と車体長手方向とが平行となり、かつ、駐車領域12の前方に車両13が位置した状態(以下「平行状態」という)となるように車両13の姿勢が調整されつつ、車両13が後進する。図5の軌跡14において位置P1は、平行状態となったときの車両13の位置を示している。車両13が位置P1に至るまでは、運転手は、実際にハンドルを動かしながらハンドル操作を行うことになる。以下、駐車後進が行われる期間において、車両が停止した状態から平行状態となるまでの期間を「第1期間」という。
【0050】
車両13が平行状態となった後、車両13は、車体にとっての後方に向かって、直線的に後進し、駐車領域12内の所定の位置で停止し、駐車後進が終了する。図5の軌跡14において位置P2は、駐車領域12内で車両13が停止した位置を示している。以下、駐車後進が行われる期間において、平行状態となった後、駐車領域12内の所定の位置で停止するまでの期間を「第2期間」という。第2期間においては、ステアリング角度はゼロ付近内で推移する。運転手は、車体の姿勢を微調整するためにハンドルを少しだけ動かすことはあるが、基本的にはハンドルを動かさず、ハンドルの状態を維持する。以上、駐車後進の典型的な例を示したが、どのような態様で駐車後進が行われる場合であっても、通常、平行状態とされまでの第1期間、および、平行状態となった後、駐車領域12に向かって直線的に後進する第2期間がある。
【0051】
そして、本変形例に係る検出部10は、駐車後進が開始された場合、そのことを検出する。本実施形態では、検出部10は、ギアがリバースになった場合に、駐車後進が開始されたことを検出する。車両の後進は多くの場合、駐車領域12への駐車のために行われるため、このような方法で駐車後進が開始されたことを検出することが可能である。ただし、駐車後進が開始されたことを検出する方法は本実施形態で例示する方法に限られず、例えば、運転手が入力装置に所定の操作を行う等、運転手(他の搭乗者であってもよい)から明示的な指示があった場合に、駐車後進が開始されたことを検出するようにしてもよい。
【0052】
駐車後進が開始されたことを検出すると、本変形例に係る検出部10は、右サイドカメラ2および左サイドカメラ3、更に、図示しないリアカメラの撮影画像を入力する。リアカメラは、自車両の車体の後端部に設けられ、自車両の後方を撮影するカメラである。各カメラからの撮影画像の入力は、所定周期で継続して行われる。
【0053】
本変形例に係る検出部10は、入力した各カメラの撮影画像を継続的に分析し、駐車する対象の駐車領域12の駐車領域長手方向と車体長手方向との関係、および、駐車領域12と自車両との位置関係とを監視する。例えば、本変形例に係る検出部10は、既存の白線認識に基づいて駐車領域12を囲む白線を認識することによって駐車領域12を認識し、既存の画像分析処理によって、駐車領域12に対する自車両の相対的な位置(つまり駐車領域12と自車両との位置関係)および駐車領域長手方向と車体長手方向との関係(つまり駐車領域12の外枠の長辺に対する自車両の傾き)を検出する。そして、検出部10は、駐車領域長手方向と車体長手方向とが平行となり、かつ、駐車領域12の前方(駐車領域12に対して駐車領域長手方向において車両13が進入してくる側の向き)に車両13が位置した状態となったか否かを継続的に監視し、このような状態となった場合、平行状態となったことを検出する。そして検出部10は、平行状態となった時点以降の期間を、「車両が駐車領域12の前方側で駐車領域12に向かって直線的に後進している期間」(以下、「駐車直線後進期間」という)として検出する。
【0054】
本変形例に係る表示制御部11は、本変形例に係る検出部10により駐車直線後進期間が検出されていない間は、標準モードで映像を表示する。一方、本変形例に係る表示制御部11は、本変形例に係る検出部10により駐車直線後進期間が検出されている間は、ワイドモードで映像を表示する。
【0055】
以上の動作が行われる結果、図5を参照し、自車両が軌跡14を通って後進した場合、位置P1に至るまでは標準モードで映像が表示され、位置P1から位置P2に至るまではワイドモードで映像が表示される。
【0056】
本変形例によれば上記実施形態と同様の効果を奏する。すなわち、駐車後進がなされている期間において、第1期間、つまり、ユーザが実際にハンドルを動かして自車両の姿勢を調整している期間は、標準モードで映像が表示される。このため、運転手は、右表示装置4および左表示装置5に表示された映像について、現実の風景と映像の風景との距離感の相違に起因する違和感を覚えることなくハンドルを動かすことができ、この期間、運転手が運転に困難性を感じることを防止できる。更に本変形例では、第2期間、つまり、運転手が基本的にはハンドルを動かさず、ハンドルの状態を維持している期間は、ワイドモードで映像が表示される。このため、運転手が運転に困難性を感じない範囲で、水平方向に広い範囲の風景が右表示装置4および左表示装置5に表示されるようにすることができる。
【0057】
更に本変形によれば、第1期間においては、仮に、自車両が直線的に後進する期間が出現したとしても、動作モードが切り替わらず、第1期間の間、継続して標準モードで映像が表示される。このため、運転手は、第1期間の間、継続して、実際の風景と距離感の相違がない映像を通して後方および側方を確認しつつ、平行状態となるべくハンドルを操作して、自車両の姿勢を制御することができる。
【0058】
なお、本変形例について、第1変形例を応用し、表示制御部11が、ワイドモードに代えて圧縮モードで映像を表示するようにしてもよい。
【0059】
以上、本発明の一実施形態(変形例を含む)を説明したが、上記実施形態は、本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【0060】
例えば、上記実施形態および変形例で示した標準領域WK1、ワイド領域WK2および拡張領域WK3の態様はあくまで一例であり、例示した態様に限定されない。例えば、上記実施形態に係る標準領域WK1およびワイド領域WK2について、車体で隠れた部分を含まないようにしてもよい。
【0061】
また、検出部10の処理は、上記実施形態および変形例で例示した処理に限られない。例えば、上記実施形態において、検出部10が、GPSユニットの出力、および、加速度センサを含む相対方位検出用のセンサの出力に基づいて、自車両が直線的に後進していることを検出する構成でもよい。また例えば、上記第2実施形態において、表示制御部11が、地図上で駐車領域12の位置および駐車領域長手方向を把握すると共に、地図上で自車両の位置および車体長手方向を把握し、地図上の駐車領域12と自車両との関係に基づいて、平行状態となったことを検出する構成でもよい。
【0062】
また、上記実施形態において、表示制御装置1の機能ブロックが実行すると説明した処理の一部または全部を、表示制御装置1と外部装置とが協働して実行する構成としてもよい。この場合、表示制御装置1と外部装置とが協働して特許請求の範囲の「表示制御装置」として機能する。一例として、表示制御部11の処理の一部または全部を、表示制御装置1とネットワークを介して通信可能なクラウドサーバが実行する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 表示制御装置
2 右サイドカメラ(カメラ)
3 左サイドカメラ(カメラ)
4 右表示装置(表示装置)
5 左表示装置(表示装置)
10 検出部
11 表示制御部
G1 撮影画像
図1
図2
図3
図4
図5