(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】近接検知装置
(51)【国際特許分類】
G06F 3/042 20060101AFI20240227BHJP
G06F 3/041 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
G06F3/042 481
G06F3/041 400
G06F3/041 580
(21)【出願番号】P 2020116858
(22)【出願日】2020-07-07
【審査請求日】2023-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【氏名又は名称】片寄 恭三
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【氏名又は名称】佐藤 克志
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【氏名又は名称】橘 和之
(72)【発明者】
【氏名】伊知川 禎一
【審査官】田川 泰宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-108255(JP,A)
【文献】特開2019-074465(JP,A)
【文献】国際公開第2016/047223(WO,A1)
【文献】特開2011-048663(JP,A)
【文献】国際公開第2010/113397(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/01-3/04895
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発光素子と当該複数の発光素子からの照射光が物体で反射された反射光を受光する受光素子とを用いて物体の近接を検知する近接検知装置であって、
水平方向に直線状に配置された複数の発光素子を順次駆動する駆動手段と、
前記複数の発光素子が順次発光したときの前記受光素子の検知レベルをそれぞれ測定する測定手段と、
前記測定手段の複数の測定結果に基づき物体の水平方向の位置を推定する推定手段と、
前記推定手段により推定された推定位置を補正する補正手段とを含み、
前記補正手段は、水平方向の一方の側に近いほど補正が大きく、前記一方の側と対向する他方の側に近いほど補正が小さくなるように前記推定位置を補正する、近接検知装置。
【請求項2】
前記補正手段は、前記測定手段の測定結果に基づき検知レベルのピーク位置を算出し、算出したピーク位置に基づき前記推定位置を補正する、請求項1に記載の近接検知装置。
【請求項3】
前記補正手段は、前記ピーク位置に基づく補正量が前記一方の側に近いほど大きく、前記他方の側に近いほど小さくなるような重み付け係数を決定する、請求項2に記載の近接検知装置。
【請求項4】
前記推定手段は、前記複数の発光素子の各々の検知レベルで検知される水平座標と前記測定手段の複数の測定結果との重心計算により前記推定位置を算出する、請求項1ないし3いずれか1つに記載の近接検知装置。
【請求項5】
前記補正手段は、(1-w)×G+w×Pにより前記推定位置を補正する(ここで、wは、重み付け係数、Gは、推定位置、Pは、ピーク位置)、請求項4に記載の近接検知装置。
【請求項6】
前記複数の発光素子および前記受光素子は、タッチパネル式のディスプレイの下部に配置され、
前記受光素子は、第1および第2の発光素子の間に配置される第1の受光素子と、第3および第4の発光素子の間に配置される第2の受光素子とを含み、
前記測定手段は、第1および第2の発光素子が発光されたときの第1の受光素子の検知レベルをそれぞれ測定し、第3および第4の発光素子が発光されたときの第2の受光素子の検知レベルをそれぞれ測定する、請求項1に記載の近接検知装置。
【請求項7】
前記ディスプレイは、運転席と助手席との間に配置され、前記一方の側は助手席側であり、前記他方の側は運転席側である、請求項6に記載の近接検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体の近接の有無を検知する近接検知装置に関し、特に、タッチパネル式ディスプレイ等の電子機器に取り付けられた近接検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タッチパネル式ディスプレイを用いた入力やジェスチャ入力等の実用化に伴い車載ディスプレイへの近接検知装置の搭載が増加している。近接検知装置は、例えば、赤外光を発光する赤外LEDとフォトダイオード等の受光素子とを用い、赤外光で物体を照射し、その反射光を受光することで物体の近接を検知する(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、車載ディスプレイへの近接検知装置の搭載が増加している。この近接検知装置の例を
図1に示す。運転席と助手席との間の中央部のセンターコンソール2内に、タッチパネル式のディスプレイ1が配置され、ディスプレイ1には、ドライバまたは同乗者のジェスチャ操作等を検知するための近接検知装置が搭載される。近接検知装置は、
図1(B)に示すように、ディスプレイ1の下部3に設けられた4つの発光素子LED1、LED2、LED3、LED4と、2つの受光素子PD1、PD2とを含む(これらを総称するとき、発光素子LED、受光素子PDという)。発光素子LEDおよび受光素子PDは、ディスプレイ1の下部3に概ね直線状に配置され、発光素子LED1とLED2との間に受光素子PD1が配置され、LED3とLED4との間に受光素子PD2が配置される。発光素子LEDは、赤外線を発光する発光ダイオードであり、受光素子PDは、赤外線の反射光を受光するフォトダイオードまたはフォトトランジスタである。
【0005】
発光素子LEDは、ディスプレイ1の前面に赤外光を照射し、ディスプレイ1の前面にユーザーの操作対象(手や指など)4が接近すると、発光素子LEDからの照射光5が操作対象4で反射され、その反射光が受光素子PDで受光され、操作対象4の近接が検知される。
【0006】
図2に、発光素子LEDおよび受光素子PDの動作タイミングを示す。発光素子LED1、LED2、LED3、LED4は、それぞれの発光が重複しないように、時刻t1、t2、t3、t4のタイミングで順次駆動される。受光素子PD1は、発光素子LED1および発光素子LED2の発光期間と同期するタイミングで受光するように制御され、受光素子PD2は、発光素子LED3および発光素子LED4の発光期間と同期するタイミングで受光するように制御される。つまり、発光素子LED1を発光させたときの反射光が受光素子PD1によって測定され(LED1→PD1)、発光素子LED2を発光させたときの反射光が受光素子PD1によって測定され(LED2→PD1)、発光素子LED3を発光させたときの反射光が受光素子PD2によって測定され(LED3→PD2)、発光素子LED4を発光させたときの反射光が受光素子PD2によって測定され(LED4→PD2)、こうした4回の測定を1回のサイクルとして動作する。
【0007】
発光素子と受光素子との間隔をほぼ等しくなるように配置した場合、画面の前方で操作対象4を水平に移動させたときの1サイクル中の受光素子PD1、PD2の検知レベルは、
図3に示すように概ね同等なものとなる。このような近接検知機能を有するディスプレイでは、各々の発光素子LEDを発光した際に検知される反射光の分布を基に、操作対象4の水平位置を推定することができる。
【0008】
図4(A)は、P1、P2に位置する操作対象4を例示し、
図4(B)は、操作対象4が画面左側の位置P1に接近するときの受光素子PDの検知レベルを示し、
図4(C)は、操作対象4が画面右側の位置P2に接近するときの受光素子PDの検知レベルを示し、
図4(D)は、操作対象4の水平方向の推定位置Gを示している。
【0009】
位置P1は、発光素子L1の近傍であり、それ故、発光素子LED1を発光したときの受光素子PD1の検知レベルが最も大きく、発光素子LED2、LED3、LED4を発光したときの検知レベルが徐々に小さくなる。また、位置P2は、発光素子L4の近傍であり、それ故、発光素子LED4を発光したときの検知レベルが最も大きく、発光素子LED3、LED2、LED1を発光したときの検知レベルが徐々に小さくなる。
【0010】
このような検知レベルの分布から検知物の水平位置を定量化する手段としては、一般に重心計算法が有効である。この計算方法について説明する。例えば、発光素子LED1、LED2、LED3、LDE4で検知される水平位置の座標をx1、x2、x3、x4と設定し、各発光素子LEDの発光量を同じとすると、式(1)から検知物の水平位置を推定することができる。A1、A2、A3、A4は、発光素子LED1、LED2、LED3、LED4を発光したときの検知レベルレベルである。
【0011】
【0012】
ここで、x1~x4をほぼ等間隔として、x1=1、x2=2、x3=3、x4=4とすれば、式(1)は式(2)で表される。
【0013】
【0014】
式(2)から、推定位置Gは、1≦G≦4の範囲で求めることが可能である。仮に、操作対象4が位置P1に接近するとき、検知レベルがA1=2000、A2=700、A3=100、A4=10であれば、式(2)から推定位置G=1.3と算出される。また、位置P2に接近するとき、検知レベルがA1=10、A2=100、A3=700、A4=2000であれば、推定位置G=3.7と算出される。
【0015】
このように操作対象の水平位置を推定することで、例えば、水平位置が規定時間(例えば1秒)内に所定値以上変化した場合には、スワイプ操作がなされたと判定することができ、これは、ジェスチャ操作への適用が可能である。
【0016】
上記した従来の水平位置の推定動作を
図5のフローチャートに示す。まず、発光素子LED1、LED2、LED3、LED4を順次照射した際の受光素子PD1、PD2の各測定値A1、A2、A3、A4を取得し(S100)、これらの測定値から位置判定を行うに十分な検知物が存在するか否かを評価する指標値Vを算出する(S110)。指標値Vの算出は、例えば、検知レベルの測定値A1、A2、A3、A4の最大値であってもよい。指標値Vが所定の閾値を超えた場合には(S120)、有意な検知物が存在すると判断し、検知物の水平位置を推定する(S130)。位置推定は、例えば、上記した重心計算の式(1)、(2)を用い、検知物の水平方向の推定位置Gを算出する。指標値Vが閾値に満たない場合には、位置推定を行わず、次の測定に戻ることとする。
【0017】
近年、車載ディスプレイは大型化の傾向があり、10インチを超えて15インチ以上のディスプレイがセンターコンソール内に搭載される例も珍しくない。このような大画面のディスプレイでは、操作位置によって、上記した近接検知による水平位置の推定が正常に働かなくなることがある。
【0018】
図6に、大画面のディスプレイをドライバが操作している例を示す。同図(A)のように、ディスプレイ1の画面上の比較的ドライバに近い位置を操作している場合には、受光素子PDによって検知される反射光は、上記したように、発光素子LED4、LED3が発光した際の検知レベルが大きく、発光素子LED2、LED1が発光した際の反射光の検知レベルはずっと小さくなる。
【0019】
他方、
図6(B)のように、ディスプレイ1の画面上の比較的ドライバから遠い助手席側の位置を操作する場合、画面が大きいために、ドライバの腕の部分4Aが画面に近づいてしまい、これが原因で発光素子LED2、LED3、LED4が発光したときの反射光が増え、そのときの検知レベルが
図4(B)のときよりも大きくなってしまう。この様子を
図6(C)に示す。
【0020】
水平位置を推定する計算式において、検知レベルA2、A3、A4の値が大きくなることは、推定位置Gに影響を及ぼす。
図4(B)で説明したように、検知レベルがA1=2000、A2=700、A3=100,A4=10から推定位置G=1.33を算出したが、腕の部分4Aによる反射の影響を受けて、例えば、検知レベルがA2=500、A3=400に変化すると、推定位置G=1.81となってしまい、推定位置Gに大きな誤差が生じてしまう。
【0021】
推定位置Gからスワイプ操作を判定するにあたって、仮に1秒間に一定以上の位置移動(例えば、2.1以上)があれば、スワイプ操作があったと判定する場合、
図6(A)の位置から
図6(B)の位置に操作対象4を移動させたときの計算結果が本来であれば「3.8」→「1.33」の移動量でスワイプ操作と判定されるべきところ、推定位置Gの誤差によって「3.8」→「1.81」になると、移動量が不足し、スワイプ操作を判定することができなくなる。結果としてジェスチャ操作を認識することができなくなってしまう。
【0022】
このような問題は、スワイプを検知する移動量を小さく設定したり、検知した位置を、例えば
図7(A)に示すように写像変換することで、一見、容易に対策できるようにも考えられる。しかしながら、この補正方法は、
図7(B)に示すように、操作対象がディスプレイ1の画面の高い位置を操作する場合には、腕の部分4Aが照射光を反射するので有効であるが、
図7(C)に示すように、ディスプレイ1の画面の比較的低い位置を操作している場合には、助手席側の位置を操作する場合でも、腕4Aの影響を受けることはないため、このような補正は不要である。むしろ、このような補正を行うことで、例えば、通常ディスプレイの下部に設置されるエアコン調整などの操作によってもスワイプ操作が誤検知される不具合を生じさせることとなる。これを防ぐために、腕の高さ方向の位置によって処理を変えることは可能だが、その場合には、高さ方向の位置を検知するための別の発光素子/受光素子のセンサが必要となり、ハードウェアの増大を招くことになる。
【0023】
本発明は、このような従来の課題を解決し、水平方向の位置をより正確に推定することができる近接検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明に係る近接検知装置は、複数の発光素子と当該複数の発光素子からの照射光が物体で反射された反射光を受光する受光素子とを用いて物体の近接を検知するものであって、水平方向に直線状に配置された複数の発光素子を順次駆動する駆動手段と、前記複数の発光素子が順次発光したときの前記受光素子の検知レベルをそれぞれ測定する測定手段と、前記測定手段の複数の測定結果に基づき物体の水平方向の位置を推定する推定手段と、前記推定手段により推定された推定位置を補正する補正手段とを含み、前記補正手段は、水平方向の一方の側に近いほど補正が大きく、前記一方の側と対向する他方の側に近いほど補正が小さくなるように前記推定位置を補正する。
【0025】
ある実施態様では、前記補正手段は、前記測定手段の測定結果に基づき検知レベルのピーク位置を算出し、算出したピーク位置に基づき前記推定位置を補正する。ある実施態様では、前記補正手段は、前記ピーク位置に基づく補正量が前記一方の側に近いほど大きく、前記他方の側に近いほど小さくなるような重み付け係数を決定する。ある実施態様では、前記推定手段は、前記複数の発光素子の各々の検知レベルで検知される水平座標と前記測定手段の複数の測定結果との重心計算により前記推定位置を算出する。ある実施態様では、前記補正手段は、(1-w)×G+w×Pにより前記推定位置を補正する(ここで、wは、重み付け係数、Gは、推定位置、Pは、ピーク位置)。ある実施態様では、前記複数の発光素子および前記受光素子は、タッチパネル式のディスプレイの下部に配置され、前記受光素子は、第1および第2の発光素子の間に配置される第1の受光素子と、第3および第4の発光素子の間に配置される第2の受光素子とを含み、前記測定手段は、第1および第2の発光素子が発光されたときの第1の受光素子の検知レベルをそれぞれ測定し、第3および第4の発光素子が発光されたときの第2の受光素子の検知レベルをそれぞれ測定する。ある実施態様では、前記ディスプレイは、運転席と助手席との間に配置され、前記一方の側は助手席側であり、前記他方の側は運転席側である。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、測定手段の各測定結果から推定された推定位置を水平方向の一方の側に近いほど補正が大きく、一方の側と対向する他方の側に近いほど補正が小さくなるように補正するようにしたので、一方の側から他方の側に向けた物体の近接の誤検知を抑制し、水平位置を正確に推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】従来の近接検知装置の一例を示し、
図1(A)は、近接検知装置を搭載したディスプレイの配置例を示し、
図1(B)は、近接検知装置による操作対象の検知例を示す図である。
【
図2】従来の近接検知装置の発光素子および受光素子の駆動タイミングを示す図である。
【
図3】操作対象を水平に移動させたときの受光素子の検知レベルを示す図である。
【
図4】操作対象が位置P1、P2に接近するときの1サイクル中の受光素子の検知レベルと、検知レベルの分布から算出された推定位置を示す図である。
【
図5】従来の近接検知装置における水平位置の推定動作を示すフローである。
【
図6】
図6(A)は、ドライバに近い位置を操作する例を示し、
図6(B)は、ドライバから遠い側を操作する例を示し、
図6(C)は、ドライバから遠い位置を操作したときの1サイクル中の検知レベルを示す図である。
【
図7】
図7(A)は、写像変換により推定位置を補正する方法を示し、
図7(B)は、画面の上部を操作する例を示し、
図7(C)は、画面の下部を操作する例を示す図である。
【
図8】
図8(A)は、本発明の実施例に係る近接検知装置の電気的な構成を示すブロック図、
図8(B)は、制御部に含まれるジェスチャ判定機能の構成を示す図である。
【
図9】本発明の実施例に係る推定位置の補正方法を説明するフローチャートである。
【
図10】本発明の実施例による補正方法の効果を説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に、本発明の実施例の形態について説明する。1つの態様では、本発明の近接検知装置は、発光素子と、当該発光素子からの光によって照射された物体からの反射光を受光する受光素子とを含み、物体の近接の有無を光学的に検知する。発光素子は、例えば、指向性のある発光ダイオードやレーザーダイオードなどであり、受光素子は、フォトダイオードやフォトトランジスタなどである。1つまたは複数の発光素子と1つまたは複数の受光素子が電子機器等の周辺に一体に取り付けられ、電子機器へのユーザーの操作対象の近接が検知される。近接検知装置が取り付けられる電子機器は特に限定されないが、電子機器は、例えば、タッチパネル式ディスプレイである。電子機器は、ユーザーの操作対象の近接が検知されたとき、例えば、スワイプ等のジェスチャ操作を検知する。
【実施例】
【0029】
次に、本発明の実施例に係る近接検知装置ついて説明する。
図8は、本発明の実施例に係る近接検知装置の電気的な構成を示すブロック図である。本実施例の近接検知装置100は、複数の発光素子110と、複数の受光素子120と、発光素子110を駆動する駆動回路130と、受光素子120による反射光の受光を測定する測定回路140と、近接検知装置100の全体を制御する制御部150とを含む。
【0030】
近接検知装置100は、例えば、
図1(B)に示すように、車載ディスプレイ1に搭載され、ディスプレイ1へのユーザーの操作対象の近接の有無を検知する。発光素子110は、ディスプレイ1の下部3に配置された発光素子LED1~LED4を含み、受光素子120は、発光素子LED1とLED2の間に配置された受光素子PD1、発光素子LED3とLED4との間に配置された受光素子PD2を含む。駆動回路130は、
図2に示すように、サイクル期間中、発光素子LED1~LED4の発光が重複しないように発光素子LED1~LED4を順次駆動し、測定回路140は、サイクル期間中、発光素子LED1を発光させたときの反射光が受光素子PD1によって受光されたときの検知レベルを測定し(LED1→PD1)、発光素子LED2を発光させたときの反射光が受光素子PD1によって受光されたときの検知レベルを測定しLED2→PD1)、発光素子LED3を発光させたときの反射光が受光素子PD2によって受光されたときの検知レベルを測定し(LED3→PD2)、発光素子LED4を発光させたときの反射光が受光素子PD2によって受光されたときの検知レベルを測定する(LED4→PD2)。
【0031】
制御部150は、測定回路140による測定結果に基づきディスプレイ1への操作対象の近接の有無を判定したり、サイクル中に測定された受光素子PD1、PD2の検知レベルの分布に基づき操作対象の水平位置を推定し、その推定結果からスワイプ等のジェスチャ操作を判定する。制御部150は、ディスプレイ1の表示を制御する表示コントローラの一部であってもよいし、あるいは表示コントローラとは個別に設けられ、表示コントローラと連携して動作するものであってもよい。例えば、表示コントローラは、制御部150によってスワイプ操作が検知されると、この検知に応じた表示制御(例えば、メニュー画面の表示や次のページ画面の表示など)を行うことができる。制御部150は、ハードウェアおよびソフトウエアを用いて実施される。制御部140は、例えば、ROM/RAMを含むマイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、メモリ等を含み、ROMまたはメモリに記憶されたプログラムを実行する。
【0032】
本実施例の近接検知装置100は、
図7(C)に例示したように、ディスプレイ1の画面下部を操作したときの誤検知を増やすことなく、
図7(B)に例示するような、ディスプレイ1の画面上部の助手席側をドライバが操作したとき、腕部4Aからの反射光により生じる推定位置の誤差を軽減する手段を提供する。
【0033】
図8(B)は、制御部150に包含される水平位置推定機能200の構成を示す図である。水平位置推定機能200は、ディスプレイ1の前面に検知対象となり得る検知物が存在するか否かを測定された検知レベルから判定する検知レベル判定部210と、検知レベル判定部210により検知対象となり得る検知物があると判定された場合に、検知物の水平位置を推定する水平位置推定部220と、水平位置推定部220により推定された推定位置を補正する推定位置補正部230とを含む。推定位置補正部230は、
図7(B)、(C)に示すようなドライバが助手席側の離れた位置の画面を操作するときの推定位置の誤差を軽減するものである。
【0034】
本実施例の推定位置推定機能200のアルゴリズムを
図9に示すフローチャートを参照して説明する。
図9のフローチャートのステップS200~S230は、
図5のフローチャートのステップS100~S130と同じであり、本実施例は、ステップS240~S260をさらに包含するものである。
【0035】
発光素子LED1、LED2、LED3、LED4が駆動回路130によって順次駆動され、そのときに受光素子PD1、PD2によって受光された検知レベルが測定値A1、A2、A3、A4として測定回路140により測定される(S200)。検知レベル判定部210は、これらの測定値A1~A4に基づき位置判定を行うに十分な検知物が存在するか否かを評価する指標値Vを算出する(S210)。指標値Vの算出は、例えば、測定値A1、A2、A3、A4の最大値であってもよい。
【0036】
水平位置推定部220は、指標値Vが閾値を超えた場合には(S220)、有意な検知物が存在すると判断し、前述の式(1)、(2)により検知物の推定位置Gを算出する(S230)。指標値Vが閾値に満たない場合には、位置推定を行わず、次の測定に戻る。
【0037】
指標値Vが閾値を超えた場合にはさらに、推定位置補正部230は、測定値A1~A4からピーク位置Pを推定する(S240)。ピーク位置Pは、推定位置Gの補正量を決定し、後述するように、この補正量は、助手席側で大きくなり運転席側で小さくなるように重み付け係数によって可変される。ピーク位置Pの推定方法は、単純に測定値A1~A4のうち、最大の測定値の位置(最大の検出レベルの位置)にしてもよい。例えば、測定値A1が最大であればピーク位置P=1、測定値A2が最大であればピーク位置P=2、測定値A3が最大であればピーク位置P=3、測定値A4が最大であればピーク位置P=4としてもよい。あるいは、最大の測定値に隣接する2番目に大きい測定値を求め、これとの加重平均を求めてもよい。例えば、測定値A1=2000が最大であり、測定値A2=700が2番目である場合、測定値A1の水平位置の座標x1=1と、測定値A2の水平位置の座標x2=2とを重み付けして得られる式、
P=(A1×[x1]+A2×[x2])/(A1+A2)により、
(2000×1+700×2)/(2000+700)=1.26
を求めることができる。
【0038】
次に、推定位置補正部230は、上記のようにして求めされたピーク位置Pによって、推定位置Gを補正するための重み付け係数wを決定する(S250)。重み付けは、運転席に最も近い発光素子をLED4とすれば、推定位置Gが座標x1に近いほど補正が大きくなるように補正量を重みづけする。例えば、ピーク位置P=1のときの重み付け係数wを0.8(w=0.8)とし、ピーク位置P=4のときの重み付け係数wを0.2(w=0.2)とし、その途中の重み付け係数は線形補間により求めるとすれば、上記の例(ピーク位置P=1.26)では、重み付け係数wは0.75となる(w=0.75)。
【0039】
推定位置補正部230は、重み付けしたピーク位置Pにより推定位置Gを補正し、補正位置G’を算出する(S260)。補正位置G’は、次式により算出される。
G’=(1-w)×G+w×P
上記式の第1項[(1-w)×G]では、運転席側に近いほど推定位置Gを小さくするための補正量が大きくなり、第2項[w×P]では、運転席側に近いほどピーク位置Pを大きくするための補正量が大きくなる。
重心計算により推定位置G=1.81として求められていた推定位置は、上記計算式によりG’=(1-w)×G+w×P=0.25×1.81+0.75×1.26=1.40と補正され、補正された推定位置G’=1.40は、本来の推定位置1.33に近い値となる。
【0040】
図10は、本実施例の水平位置推定機能200により推定位置を補正した例を示すグラフであり、同図(A)は、ディスプレイ1の画面上部を助手席側から運転席側にスワイプした際に得られた推定位置を示し、同図(B)は、ディスプレイ1の画面下部を助手席側から運転席側にスワイプした際に得られた推定位置である。●で示す線は、従来の重心計算による推定位置Gを示し、□で示す線は、本実施例により補正された推定位置G’を示す。
【0041】
図10(A)の重心計算による推定位置Gは、画面上部を操作した際に助手席側への操作では、腕の部分からの反射の影響で推定位置が高くなっている(運転席側に誤差が生じている)。これに対し、本実施例の補正された推定位置G’では、推定位置が低く抑えられ、かつスムーズに補正されていることが判る。
【0042】
また、
図10(B)に示す画面下部の操作では、もともと腕部での反射による影響は小さいため、従来の計算方法でも正しい位置を推定することができるが、本実施例の補正が行われても、補正された推定位置G’が過度に乱されることなく推定位置Gと近似し、スムーズな推定位置が保持されているのが判る。
【0043】
このように、本実施例による推定位置の補正方法によれば、運転席から遠い位置の画面を操作する際に、画面上部の操作時にはドライバの腕部の反射により生じる誤差を抑制しかつ極端に補正された推定位置が歪めることなくスムーズに連続性を保ち、他方、腕部の影響の少ない画面下部の操作時には補正しすぎることがないため、ディスプレイ下部に配置されるエアコン操作などによる誤検知を引き起こすこともなく、ユーザーの意図通りのスワイプ操作等を検知することができる。
【0044】
さらに本実施例の補正方法によれば、画面の上部または下部の操作を判定するためのハードウェアの追加を必要としないため、実質的に近接検知装置のコスト増を抑えることができる。
【0045】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の要旨の範囲において、種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0046】
1:ディスプレイ
2:センターコンソール
3:下部
4:操作対象
5:照射光
100:近接検知装置
110:発光素子
120:受光素子
130:駆動回路
140:測定回路
150:制御部