IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ紡織株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-ロータコアの製造装置 図1
  • 特許-ロータコアの製造装置 図2
  • 特許-ロータコアの製造装置 図3
  • 特許-ロータコアの製造装置 図4
  • 特許-ロータコアの製造装置 図5
  • 特許-ロータコアの製造装置 図6
  • 特許-ロータコアの製造装置 図7
  • 特許-ロータコアの製造装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】ロータコアの製造装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/03 20060101AFI20240227BHJP
   H02K 1/276 20220101ALI20240227BHJP
   H02K 1/278 20220101ALI20240227BHJP
   H02K 15/02 20060101ALI20240227BHJP
   H02K 15/12 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
H02K15/03 Z
H02K1/276
H02K1/278
H02K15/02 K
H02K15/12 E
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018023964
(22)【出願日】2018-02-14
(65)【公開番号】P2019140841
(43)【公開日】2019-08-22
【審査請求日】2020-10-16
【審判番号】
【審判請求日】2022-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】杉山 雅紀
【合議体】
【審判長】柿崎 拓
【審判官】窪田 治彦
【審判官】西 秀隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-192576(JP,A)
【文献】国際公開第2015/053368(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心孔及び複数の磁石収容孔を有するコア本体を、対向して配置された第1の型と第2の型との間に配置し、前記磁石収容孔の各々に樹脂材を充填して磁石を固定することによりロータコアを製造する装置において、
前記第1の型は、ベース部と、前記ベース部から突出するとともに前記コア本体の前記中心孔に挿入されるポスト部と、を有しており、
前記ベース部と前記コア本体との間には、前記ポスト部が挿通される貫通孔を有するスペーサが前記ベース部に対して分離可能に設けられており、
前記スペーサには、前記磁石収容孔内に突出して前記磁石の姿勢を保持する保持部が設けられており、
前記ポスト部の軸線方向に沿って前記スペーサを変位させる変位機構を備える、
ロータコアの製造装置。
【請求項2】
前記ベース部は、厚さ方向に貫通する操作孔を有しており、
前記変位機構は、前記操作孔に挿通され、前記軸線方向に沿って変位することで前記スペーサを押圧する押圧部材を有する、
請求項1に記載のロータコアの製造装置。
【請求項3】
前記操作孔は、前記ポスト部の軸線を中心とする周方向において互いに間隔をおいて複数設けられており、
前記押圧部材は、前記操作孔の各々に対応して複数設けられている、
請求項2に記載のロータコアの製造装置。
【請求項4】
前記スペーサには、前記第1の型の前記ポスト部に対する前記スペーサの周方向の位置決めをする第1の位置決め部が設けられており、
前記ポスト部には、前記ポスト部に対する前記コア本体の周方向の位置決めを行う第2の位置決め部が設けられている、
請求項1~3のいずれか一項に記載のロータコアの製造装置。
【請求項5】
前記第2の位置決め部は、前記ポスト部の外周面に設けられ、前記ポスト部の軸線方向に沿って延在して前記コア本体の内周面から突出する突条が係合される係合溝であり、
前記第1の位置決め部は、前記スペーサの前記貫通孔の内周面に設けられ、前記軸線方向に沿って延在して前記ポスト部の前記係合溝に係合する係合突部である、
請求項4に記載のロータコアの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁石埋込型モータのロータコアの製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁石埋込型モータのロータコアは、複数の鉄心片を積層して構成され、中心孔及び磁石収容孔を有する積層体からなるコア本体と、各磁石収容孔に収容され、樹脂材を介してコア本体に対して固定された磁石とを備えている。
【0003】
こうしたロータコアの製造装置としては、例えば特許文献1に記載の装置がある。特許文献1に記載の製造装置は、ベース部、及びベース部から突出するとともにコア本体の中心孔に挿入されるポスト部を有する第1の型と、コア本体を挟んで第1の型と対向して配置された第2の型とを備えている。第2の型には、コア本体の各磁石収容孔に対して樹脂材を注入する注入口が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-22886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、各磁石収容孔に樹脂材を注入して磁石を固定した後に、第1の型からコア本体を取り外す際には、以下の不都合が生じるおそれがある。すなわち、例えば第1の型のベース部を貫通する操作孔を通じて押圧部材によりコア本体の一端面を押圧して取り外す場合には、コア本体の一端面に押圧痕が生じるなどコア本体が変形するおそれがある。
【0006】
本発明の目的は、第1の型から取り外す際の変形を抑制できるロータコアの製造装置及び製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためのロータコアの製造装置は、中心孔及び複数の磁石収容孔を有するコア本体を、対向して配置された第1の型と第2の型との間に配置し、前記磁石収容孔の各々に樹脂材を充填して磁石を固定することによりロータコアを製造するものであり、前記第1の型は、ベース部と、前記ベース部から突出するとともに前記コア本体の前記中心孔に挿入されるポスト部と、を有しており、前記ベース部と前記コア本体との間には、前記ポスト部が挿通される貫通孔を有するスペーサが前記ベース部に対して分離可能に設けられている。
【0008】
コア本体の各磁石収容孔に樹脂材を充填した後、製造装置からコア本体を取り出す際には、まず、コア本体から第2の型を離間させる。
ここで、上記構成によれば、ポスト部の軸線方向に沿ってスペーサを変位させてベース部からスペーサを離間させることで、スペーサと共にコア本体が第1の型から取り外される。そして、スペーサからコア本体を取り外す。
【0009】
このとき、上記構成によれば、スペーサを押圧するなどしてスペーサを変位させることができるため、コア本体を押圧しなくて済む。このため、コア本体の変形を抑制できる。
また、上記目的を達成するためのロータコアの製造方法は、中心孔及び複数の磁石収容孔を有するコア本体を、対向して配置された第1の型と第2の型との間に配置し、前記磁石収容孔の各々に樹脂材を充填して磁石を固定することによりロータコアを製造する方法であり、前記第1の型と前記コア本体との間に前記第1の型に対して分離可能なスペーサを介在させた状態で前記第2の型を前記コア本体に当接させて型閉めを行う型閉め工程と、前記磁石収容孔の各々に前記樹脂材を充填する充填工程と、前記第2の型を前記コア本体から離間させるとともに、前記第1の型から前記スペーサを離間させる型開き工程と、を備える。
【0010】
同方法によれば、上記ロータコアの製造装置による作用効果に準じた作用効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、第1の型から取り外す際のコア本体の変形を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】ロータコアの製造装置の一実施形態について、同製造装置により製造されるロータコアを示す斜視図。
図2】同実施形態のロータコアを示す断面図。
図3】同実施形態のロータコアの製造装置をロータコアと共に示す断面図。
図4】同実施形態のロータコアの製造装置の各構成を互いに離間して示す分解断面図。
図5】同実施形態のロータコアの製造装置について、支持部材にスペーサが載置された状態を示す平面図。
図6】コア本体の突条及びスペーサの係合突部がポスト部の係合溝に係合された状態を示す拡大平面図。
図7】同実施形態のロータコアの製造装置について、第2の型を示す平面図。
図8】同実施形態のロータコアの製造装置について、押圧部材によりスペーサを押圧している状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図1図8を参照して、ロータコアの製造装置の一実施形態について説明する。
まず、図1及び図2を参照して、本実施形態のローコアの製造装置(以下、製造装置)により製造されるロータコア10について説明する。
【0014】
図1及び図2に示すように、ロータコア10は、電磁鋼板からなる複数枚の鉄心片12が積層された積層体からなるコア本体11を備えている。
コア本体11は、中心孔11aと、中心孔11aの外周側に位置するとともに周方向に互いに間隔をおいて設けられた複数の磁石収容孔13とを有している。中心孔11a及び各磁石収容孔13は、コア本体11の軸線Cに沿って貫通している。
【0015】
図1に示すように、中心孔11aの内周面には、コア本体11の径方向において互いに対向する一対の突条11bが突設されている。
図2に示すように、各磁石収容孔13には、コア本体11の軸線Cに沿って延在する板状の磁石14が挿入されている。各磁石収容孔13の内部には、磁石14を固定するための樹脂材16が充填されている。なお、樹脂材16としてはエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂が好ましい。
【0016】
図1及び図2に示すように、コア本体11における磁石収容孔13よりも内周側の部分には、磁石14を冷却するための冷却媒体が流通される複数の冷却孔15が周方向に互いに間隔をおいて設けられている。各冷却孔15は、コア本体11の周方向に沿って湾曲した円弧状をなしており、周方向において互いに隣り合う一対の磁石収容孔13の間に設けられている。各冷却孔15は、軸線Cに沿ってコア本体11を貫通している。また、各冷却孔15は、コア本体11の内部において分岐して中心孔11aと連通する連通部(図示略)を有している。
【0017】
なお、本実施形態のコア本体11は、複数枚の鉄心片12が積層された複数のブロックからなる。各ブロックを構成する鉄心片12には、所謂ダボ加工により積層方向(軸線C方向)の一方に向けて突出形成された周知の結合部(図示略)が設けられており、互いに隣り合う鉄心片12は、それらの結合部同士が凹凸の関係によりかしめられることで互いに結合されている。また各ブロックの一端には、上記結合部が打ち抜かれた孔(図示略)を有するダミーの鉄心片12が含まれている。このため、ダミーの鉄心片12は、隣り合う一対の鉄心片12のうち当該ダミーの鉄心片12と同一のブロックを構成する鉄心片12とは結合される一方、当該ダミーの鉄心片12とは別のブロックを構成する鉄心片12に対しては結合されない。したがって、コア本体11を構成する各ブロックは、各磁石収容孔13の内部に樹脂材16が設けられていない状態において互いに分離されている。
【0018】
次に、製造装置の各構成について説明する。
図3に示すように、製造装置は、第1の型20と第2の型40との間にコア本体11を配置し、コア本体11の磁石収容孔13に対して磁石14を固定する装置である。第1の型20とコア本体11の下端面11cとの間には、スペーサ30が設けられている。
【0019】
<第1の型20>
図3及び図4に示すように、第1の型20は、型本体20Aと、型本体20Aに載置される支持部材20Bとを備えている。支持部材20Bは、略長方形板状のベース部21と、ベース部21の中央部から上方に突出する円筒状のポスト部22とを備えている。
【0020】
ベース部21には、ポスト部22の軸線Cを中心とする平面視円形状の貫通孔21aが設けられている。また、ベース部21の貫通孔21aよりも外周側の部分には、ベース部21を厚さ方向に貫通する4つの操作孔21bが、軸線Cを中心とする周方向において互いに等間隔にて設けられている(図5参照)。
【0021】
ポスト部22は、ベース部21の貫通孔21aよりも内径が僅かに大きくされた中心孔22aを有している。中心孔22aの先端部は、その他の部分よりも縮径された縮径部22cとされている。
【0022】
図5及び図6に示すように、ポスト部22の外周面には、コア本体11の各突条11bが係合される一対の係合溝22bが軸線Cに沿って設けられている。ポスト部22の各係合溝22bに対してコア本体11の各突条11bが挿入されることで、ポスト部22に対するコア本体11の周方向の位置決め、より詳しくはコア本体11を構成する各ブロックの周方向の位置決めがなされる。なお、本実施形態における係合溝22bが本発明に係る第2の位置決め部に相当する。
【0023】
図3図5に示すように、ポスト部22の先端部(図3の上端部)には、先端側に向かって突出する円柱状をなす4つの嵌合ピン23が周方向に等間隔にて設けられている。
<スペーサ30>
図3図5に示すように、第1の型20のベース部21上には、ベース部21よりも小さい略長方形板状のスペーサ30が設けられている。スペーサ30には、ポスト部22が挿通される平面視略円形状の貫通孔30aが設けられている。図3に示すように、コア本体11の下端面11cがスペーサ30の上面30cに当接される。
【0024】
図5及び図6に示すように、スペーサ30の貫通孔30aの内周面には、ポスト部22の各係合溝22bに係合される一対の係合突部30bが軸線Cに沿って設けられている。ポスト部22の係合溝22bに対してスペーサ30の係合突部30bが挿入されることで、ポスト部22に対するスペーサ30の周方向の位置決めがなされる。なお、本実施形態における係合突部30bが本発明に係る第1の位置決め部に相当する。
【0025】
また、図6に示すように、スペーサ30の各係合突部30bは、コア本体11の各突条11bよりもポスト部22の係合溝22bの内側に突出しており、各突条11bを下方から支持している。
【0026】
図3に示すように、スペーサ30におけるコア本体11の各磁石収容孔13に対応する位置には、挿通孔30dが設けられている。各挿通孔30dには、下方から保持ピン31が挿通されて固定されている。各保持ピン31の上端部には、スペーサ30の上面30cよりも上方に突出する突出部31aが設けられている。スペーサ30の上面30c上にコア本体11の下端面11cが当接されている状態において、各保持ピン31の突出部31aが各磁石収容孔13内に突出する。このため、各磁石収容孔13内において、各磁石14の下面がコア本体11の下端面11cよりも上方において各保持ピン31の突出部31aに当接されることとなる。このことにより、各磁石収容孔13内における各磁石14の姿勢が保持される。
【0027】
<第2の型40>
図7に示すように、第2の型40は、型本体40Aと、型本体40Aとコア本体11との間に介在される略長方形板状のカルプレート40Bとを備えている。
【0028】
図3図4及び図7に示すように、カルプレート40Bは、軸線Cを中心とする平面視円形状の貫通孔40aを有している。貫通孔40aの内径は、ポスト部22の縮径部22cよりも大きくされている。カルプレート40Bの下面40cは、コア本体11の上端面11dに当接される。
【0029】
カルプレート40Bには、ポスト部22の嵌合ピン23に対応する複数の嵌合孔40dが設けられている。
図3及び図7に示すように、カルプレート40Bにおけるコア本体11の各磁石収容孔13に対応する位置には、各磁石収容孔13に対して樹脂材16を充填するための複数の充填ポット41が設けられている。各充填ポット41は、周方向において互いに隣り合う一対の磁石収容孔13に対して1つずつ設けられている。各充填ポット41は、カルプレート40Bの上面における上記一対の磁石収容孔13の間の部分に凹設され、型本体40Aの樹脂供給通路(図示略)に接続される平面視円形状の接続部41aと、カルプレート40Bを厚さ方向に貫通するとともに接続部41aに連通され、上記一対の磁石収容孔13に接続する一対のノズル部41bとを備えている。
【0030】
ここで、本実施形態では、図8に示すように、ベース部21の各操作孔21bにスペーサ30の下面を軸線Cに沿って押圧する押圧部材50が出没可能に設けられている。押圧部材50は、アクチュエータ(図示略)によって変位される。なお、本実施形態における押圧部材50が本発明に係る変位機構に相当する。
【0031】
次に、本実施形態の製造装置を用いてロータコア10を製造する手順について説明する。
まず、図3及び図4に示すように、スペーサ30の貫通孔30aに第1の型20のポスト部22を挿通する。このとき、ポスト部22の係合溝22bにスペーサ30の係合突部30bが挿入されることで、係合溝22bと係合突部30bとが互いに係合される。またこのとき、支持部材20Bのベース部21の上面とスペーサ30の下面とが当接される。
【0032】
続いて、コア本体11の中心孔11aに支持部材20Bのポスト部22を挿入する。このとき、ポスト部22の係合溝22bにコア本体11の突条11bが挿入されることで、係合溝22bと突条11bとが互いに係合される。またこのとき、コア本体11の下端面11cはスペーサ30の上面30cに当接される。
【0033】
続いて、コア本体11の各磁石収容孔13に磁石14を挿入する。このとき、スペーサ30に設けられた保持ピン31により、各磁石14がスペーサ30の上面30cから上方に離間した位置で保持される。
【0034】
続いて、カルプレート40Bの各嵌合孔40dにポスト部22の各嵌合ピン23を嵌合させることにより、カルプレート40Bの下面40cをコア本体11の上端面11dに当接させて型閉めを行う(型閉め工程)。このとき、支持部材20Bのポスト部22がコア本体11の上端面11dよりも下方に位置している。このため、カルプレート40Bの下面40cとポスト部22の先端部との間には隙間が存在することとなる。
【0035】
続いて、型本体40Aの樹脂供給通路(図示略)及びカルプレート40Bの各充填ポット41を介して、コア本体11の各磁石収容孔13内に樹脂材16を充填する(充填工程)。
【0036】
続いて、加熱装置(図示略)により製造装置全体を加熱することにより、熱硬化性の樹脂材16を熱硬化させることでコア本体11に対して磁石14が固定される。
続いて、第2の型40をコア本体11の上端面11dから離間させるとともに、押圧部材50を上方に向けて変位させることによりスペーサ30の下面を押圧することで支持部材20Bからコア本体11及びスペーサ30を離間させる(型開き工程)。
【0037】
その後、スペーサ30からコア本体11を取り外すことで、磁石14が固定されたコア本体11がロータコア10として製造される。
本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0038】
(1)ロータコアの製造装置は、中心孔11a及び複数の磁石収容孔13を有するコア本体11を、対向して配置された第1の型20と第2の型40との間に配置し、磁石収容孔13の各々に樹脂材16を充填して磁石14を固定する。第1の型20は、ベース部21と、ベース部21から突出するとともにコア本体11の中心孔11aに挿入されるポスト部22とを有しており、ベース部21とコア本体11との間には、ポスト部22が挿通される貫通孔30aを有するスペーサ30がベース部21に対して分離可能に設けられている。
【0039】
こうした構成によれば、ポスト部22の軸線Cに沿ってスペーサ30を変位させてベース部21からスペーサ30を離間させることで、スペーサ30と共にコア本体11が第1の型20から取り外される。このとき、スペーサ30を押圧するなどしてスペーサ30を変位させることができるため、コア本体11を押圧しなくて済む。このため、コア本体11の変形を抑制できる。
【0040】
ところで、ロータコア10の製造時において、製造装置のうちコア本体11の下端面11c及び上端面11dに当接する部分には、磁石収容孔13に充填された樹脂材16がはみ出して残留することがある。製造装置に残留した樹脂材16は、ロータコア10の製造ラインにおける次のコア本体11が搬入される前に除去する必要がある。しかしながら、このような樹脂材16の除去に時間を要することはロータコア10の生産性の低下に繋がる。
【0041】
この点、上記構成によれば、支持部材20Bのベース部21とコア本体11の下端面11cとの間にスペーサ30が設けられている。このため、コア本体11を支持部材20Bから離間させた後にスペーサ30を交換することで、製造ラインにおける次のコア本体11を製造装置に迅速に搬入することができる。したがって、ロータコア10の生産性の低下を抑制することができる。
【0042】
(2)ベース部21を厚さ方向に貫通する操作孔21bに挿通され、ポスト部22の軸線Cに沿って変位することでスペーサ30を押圧する押圧部材50が設けられている。
こうした構成によれば、ベース部21の操作孔21bに挿通された押圧部材50によってスペーサ30を押圧することでポスト部22の軸線Cに沿ってスペーサ30が変位される。したがって、本発明に係る変位機構を簡単な構成により具現化することができる。
【0043】
(3)操作孔21bは、ポスト部22の軸線Cを中心とする周方向において互いに間隔をおいて複数設けられており、押圧部材50は、操作孔21bの各々に対応して複数設けられている。
【0044】
こうした構成によれば、ポスト部22の軸線Cを中心とする周方向において互いに間隔をおいて設けられた複数の押圧部材50によってスペーサ30が押圧される。このため、ポスト部22の軸線Cに沿ってスペーサ30を安定して変位させることができる。
【0045】
(4)ポスト部22の外周面において軸線Cに沿って延在する係合溝22bと、コア本体11の内周面から突出する突条11bとが係合されることにより、ポスト部22に対するコア本体11の周方向の位置決めがなされる。スペーサ30の貫通孔30aの内周面において軸線Cに沿って延在する係合突部30bと、ポスト部22の係合溝22bとが係合されることにより、ポスト部22に対するスペーサ30の周方向の位置決めがなされる。スペーサ30には、磁石収容孔13内に突出して磁石14の姿勢を保持する保持ピン31が設けられている。
【0046】
こうした構成によれば、第1の型20のポスト部22の外周面に設けられた係合溝22bに対して、スペーサ30の貫通孔30aの内周面に設けられた係合突部30bと、コア本体11の内周面に設けられた突条11bとがそれぞれ係合することにより、ポスト部22に対するスペーサ30及びコア本体11の周方向の位置決めがなされる。したがって、簡易な構成により、ポスト部22に対するスペーサ30及びコア本体11の位置決めを行うことができる。
【0047】
ここで、スペーサ30には、コア本体11の磁石収容孔13内に突出して磁石14の姿勢を保持する保持ピン31が設けられている。上記態様にてコア本体11とスペーサ30との位置決めが行われることで、コア本体11の磁石収容孔13内の所定の位置にスペーサ30の保持ピン31を的確に配置することができる。
【0048】
また、上記構成によれば、スペーサ30の係合突部30bとコア本体11の突条11bとが軸線C方向において隣り合うこととなる。これにより、スペーサ30によりコア本体11のより広い範囲が支持されることとなる。このため、軸線Cに沿ってスペーサ30を変位させてベース部21からスペーサ30を離間させる際に、コア本体11の突条11bがポスト部22の係合溝22bに引っかかってコア本体11を構成する鉄心片12が変形することを抑制できる。したがって、コア本体11の突条11bの変形を抑制することができる。
【0049】
(5)ロータコアの製造方法は、第1の型20とコア本体11との間に第1の型20に対して分離可能なスペーサ30を介在させた状態で第2の型40をコア本体11に当接させて型閉めを行う型閉め工程と、磁石収容孔13の各々に樹脂材16を充填する充填工程を備える。さらに、第2の型40をコア本体11から離間させるとともに、第1の型20のベース部21からスペーサ30を離間させる型開き工程とを備える。
【0050】
こうした方法によれば、上記効果(1)と同様な効果を奏することができる。
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0051】
・本実施形態では、一つの磁石収容孔13に対して一つの保持ピン31が設けられているが、一つの磁石収容孔13に対して複数の保持ピンを設けるようにしてもよい。
・保持ピン31に代えて、スペーサ30の上面30cに凸部を一体形成することもできる。
【0052】
・保持ピン31は省略することもできる。
・スペーサ30とポスト部22との位置決めに代えて、スペーサ30とベース部21とを位置決めすることで、スペーサ30の第1の型20に対する位置決めを行ってもよい。この場合、例えば、ベース部21の上面から突出する嵌合ピンと、スペーサ30に設けられた嵌合凹部とを嵌合させることが好ましい。
【0053】
・操作孔21b及び押圧部材50の数、形状、及び位置は適宜変更することもできる。
・操作孔21bを省略して、スペーサにベース部21よりも外周側に延びる延在部を設け、同延在部を押圧部材50により押圧することで、スペーサを変位させるようにしてもよい。
【0054】
・本発明に係る変位機構は、押圧部材50によりスペーサ30の下面を押圧することでスペーサ30を変位させるものに限定されない。他に例えば、スペーサ30を把持して第1の型20から離間させるものであってもよい。
【符号の説明】
【0055】
10…ロータコア、11…コア本体、11a…中心孔、11b…突条、11c…下端面、11d…上端面、12…鉄心片、13…磁石収容孔、14…磁石、15…冷却孔、16…樹脂材、20…第1の型、20A…型本体、20B…支持部材、21…ベース部、21a…貫通孔、21b…操作孔、22…ポスト部、22a…中心孔、22b…係合溝、22c…縮径部、23…嵌合ピン、30…スペーサ、30a…貫通孔、30b…係合突部、30c…上面、30d…挿通孔、31…保持ピン、31a…突出部、40…第2の型、40A…型本体、40B…カルプレート、40a…貫通孔、40c…下面、40d…嵌合孔、41…充填ポット、41a…接続部、41b…ノズル部、50…押圧部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8