(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】車載器
(51)【国際特許分類】
G07B 15/00 20110101AFI20240227BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
G07B15/00 L
G07B15/00 501
G08G1/09 F
(21)【出願番号】P 2018199289
(22)【出願日】2018-10-23
【審査請求日】2021-04-13
【審判番号】
【審判請求日】2022-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】小谷 和也
【合議体】
【審判長】一ノ瀬 覚
【審判官】中村 則夫
【審判官】北中 忠
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-190160(JP,A)
【文献】特開2008-9912(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07B15/00,G08G1/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
料金収受システム用の車載器であって、
前記車載器に着脱可能に装着され、料金決済に関する情報が記憶されているICカードから情報を読み取り、読み取った情報をゲートに設置された路側機に送信するとともに、前記路側機から送信された情報を受信する通信制御部(101)と、
前記通信制御部が前記路側機との通信により取得した前記ゲートに関する情報であるゲート情報を前記ICカードに書き込む書き込み処理部(102)と、
前記ゲート情報を一時的に記憶するメモリ(18)とを備え、
前記書き込み処理部は、前記ゲート情報の前記ICカードへの書き込みに失敗した場合に前記ゲート情報を前記メモリに書き込み、かつ、前記車載器の電源がオフになる場合および前記ICカードが抜き取られた場合、前記メモリに記憶している前記ゲート情報を消去し、
前記通信制御部は、前記路側機との通信時に、前記メモリに前記ゲート情報が記憶されている場合、前記メモリに記憶されている前記ゲート情報を使って前記路側機との通信を行い、
前記メモリから前記ゲート情報を消去する時点以降の予め設定された通知タイミングにおいて、前記ICカードへの書き込みに失敗したことを意味する通知を、所定の通知部から出力
し、前記ICカードへの書き込みに失敗したときに通信した前記路側機が、出口ゲートに設置された前記路側機であると判断できる場合、前記通知タイミングであっても、前記通知を出力しない通知処理部(103)を備える車載器。
【請求項2】
前記通知タイミングは、前記車載器の電源がオフになる時、電源オフ後の次の電源オン時、前記ICカードが抜き取られた時、前記ICカードが再装着された時の少なくとも1つ以上の時である請求項1に記載の車載器。
【請求項3】
前記通知は、前記ICカードへの書き込みに失敗したことを意味する通知に加えて、一般レーンを走行する必要があることを意味する通知を含んでいる請求項1または2に記載の車載器。
【請求項4】
料金収受システム用の車載器であって、
前記車載器に着脱可能に装着され、料金支払いに関する情報が記憶されているICカードから情報を読み取り、読み取った情報をゲートに設置された路側機に送信するとともに、前記路側機から送信された情報を受信する通信制御部(101)と、
前記通信制御部が前記路側機との通信により取得した前記ゲートに関する情報であるゲート情報を前記ICカードに書き込む書き込み処理部(102)と、
前記ゲート情報を一時的に記憶するメモリ(18)とを備え、
前記書き込み処理部は、前記ゲート情報の前記ICカードへの書き込みに失敗した場合に前記ゲート情報を前記メモリに書き込み、かつ、前記車載器の電源がオフになる場合および前記ICカードが抜き取られた場合、前記メモリに記憶している前記ゲート情報を消去し、
前記通信制御部は、前記路側機との通信時に、前記メモリに前記ゲート情報が記憶されている場合、前記メモリに記憶されている前記ゲート情報を使って前記路側機との通信を行い、
前記メモリに前記ゲート情報が記憶された時点以降の予め設定された通知タイミングにおいて、前記ICカードを抜き取らないように依頼する通知を、所定の通知部から出力
し、前記ICカードへの書き込みに失敗したときに通信した前記路側機が、出口ゲートに設置された前記路側機であると判断できる場合、前記通知タイミングであっても、前記通知を出力しない通知処理部(103)を備える車載器。
【請求項5】
前記通知処理部は、前記路側機から課金情報を受信していた場合に、前記ICカードへの書き込みに失敗したときに通信した前記路側機は、前記出口ゲートに設置された前記路側機であると判断する、請求項
1~4のいずれか1項に記載の車載器。
【請求項6】
前記車載器は、料金所以外の場所に設置され、道路種別を含む情報を送信する情報提供路側機とも通信が可能であり、
前記通知処理部は、前記情報提供路側機から前記道路種別が一般道路であることを意味する情報を受信した場合に、前記ICカードへの書き込みに失敗したときの前記路側機は、前記出口ゲートに設置された前記路側機であると判断する請求項
1~5のいずれか1項に記載の車載器。
【請求項7】
料金収受システム用の車載器であって、
前記車載器に着脱可能に装着され、料金決済に関する情報が記憶されているICカードから情報を読み取り、読み取った情報をゲートに設置された路側機に送信するとともに、前記路側機から送信された情報を受信する通信制御部(101)と、
前記通信制御部が前記路側機との通信により取得した前記ゲートに関する情報であるゲート情報を前記ICカードに書き込む書き込み処理部(102)と、
前記ゲート情報を一時的に記憶するメモリ(18)とを備え、
前記書き込み処理部は、
前記ゲート情報の前記ICカードへの書き込みに失敗した場合に前記ゲート情報を前記メモリに書き込み、
前記車載器の電源がオフになるよりも前、かつ、前記ICカードが抜き取られる前であり、前記ゲートに設置された前記路側機との間で通信を行っていないと判断できるタイミングで、前記メモリに記憶されている前記ゲート情報を前記ICカードに書き込む書き戻し処理を実行し、
前記車載器の電源がオフになる場合および前記ICカードが抜き取られた場合、前記メモリに記憶している前記ゲート情報を消去する、車載器。
【請求項8】
前記書き込み処理部は、前記車載器の電源がオフになるとき、前記車載器が搭載された車両が停車中であると判断できるとき、走行中の道路の種別が有料道路でないと判断できるとき、料金所ではない位置に設置された路側機との通信時以降の一定期間、前記車載器に設置されているボタンが操作されているとき、の少なくとも一つを、前記ゲートに設置された前記路側機との間で通信を行っていないときであると判断する請求項
7に記載の車載器。
【請求項9】
前記書き込み処理部は、前記車載器の電源がオフになる場合および前記ICカードが抜き取られた場合、前記メモリに記憶している前記ゲート情報を消去し、
前記メモリに記憶していた前記ゲート情報を消去する時点以降の予め設定された通知タイミングにおいて、前記ICカードへの書き込みに失敗したことを意味する通知を、所定の通知部から出力する通知処理部(103)を備える請求項
7または
8に記載の車載器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
電子料金収受システム用の車載器に関し、特に、ICカードへの書き込み失敗時の処理に関する。
【背景技術】
【0002】
電子料金収受(Electronic Toll Collection、以下、ETC(登録商標))システム用の車載器(以下、ETC車載器)は入口ゲートに設置された路側機と通信して受信した情報をICカードへ書き込む。この書き込みに失敗した場合には、そのときに、ICカードの再認証および再書き込みを行う技術も知られているが、再書き込みをしても、書き込みに失敗することもある。
【0003】
ICカードに書き込みができなかった場合、ETC車載器は、エラー状態であることを運転者に通知する。この通知を受けた運転者は、出口ゲートで、一般レーンに入るなどの処置をとることになる。
【0004】
しかし、ICカードに書き込みができなかったことを、入口ゲートを過ぎてすぐに運転者に通知しても、出口ゲートに近づいたときには、運転者は、ICカードに書き込みができなかったことを忘れてしまっている可能性がある。
【0005】
これに対して、特許文献1では、運転者に異常を通知するタイミングを料金所に接近したときとしている。しかし、特許文献1の技術を実施する場合、ETC車載器は、料金所の位置を把握するための情報を取得する必要があり、そのための部品を追加すればコストアップにつながってしまう。また、運転者に異常を通知するタイミングが料金所の直前になってしまうと、運転者が慌てて運転操作をしてしまう恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、ICカードへの書込に失敗した場合に、路側機から受信した情報をETC車載器のメモリに記憶しておき、エラー状態であることは通知しないようにすることが考えられる。そして、次の出口ゲートに設置された路側機との通信時には、ICカードに書き込まれるべき情報に代えて、メモリに記憶された情報を用いるのである。
【0008】
しかし、路側機から受信した情報はセキィリティ性が高い情報であるため、ICカードの抜き取り時、および、ETC車載器の電源をオフする時にはETC車載器内部から削除する必要がある。
【0009】
そのため、ユーザがサービスエリアやパーキングエリア等で休憩した際に、ICカードをETC車載器から抜き取った場合、あるいは、ETC車載器の電源がオフになる場合には、次の料金所にてETCレーンを通過できなくなってしまうという問題がある。
【0010】
加えて、ICカードの抜き取り、あるいは、ETC車載器の電源オフにより、エラー状態であることも消去されるので、その後にICカードが差し込まれ、かつ、ETC車載器の電源がオンになったときには、エラー状態であることは通知されない。したがって、運転者は、ETC車載器が正常に戻ったように認識してしまう。その結果、次の料金所において、路側機との通信ができないにもかかわらず、ETCレーンを通過しようとしてしまう恐れがある。
【0011】
本開示は、この事情に基づいて成されたものであり、第1の目的は、ICカードへの書き込みに失敗したときのためにメモリを備えた車載器であって、車両がETCレーンを通過できないのに、運転者がETCレーンを通過しようとしてしまうことを抑制できる車載器を提供することにある。
【0012】
また、第2の目的は、ICカードへの書き込みに失敗したときのためにメモリを備えた車載器であって、車両がETCレーンを通過できなくなることを抑制できる車載器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的は独立請求項に記載の特徴の組み合わせにより達成され、また、下位請求項は更なる有利な具体例を規定する。特許請求の範囲に記載した括弧内の符号は、一つの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、開示した技術的範囲を限定するものではない。
【0014】
上記目的を達成するための1つの開示は、料金収受システム用の車載器であって、
車載器に着脱可能に装着され、料金決済に関する情報が記憶されているICカードから情報を読み取り、読み取った情報をゲートに設置された路側機に送信するとともに、路側機から送信された情報を受信する通信制御部(101)と、
通信制御部が路側機との通信により取得したゲートに関する情報であるゲート情報をICカードに書き込む書き込み処理部(102)と、
ゲート情報を一時的に記憶するメモリ(18)とを備え、
書き込み処理部は、ゲート情報のICカードへの書き込みに失敗した場合にゲート情報をメモリに書き込み、かつ、車載器の電源がオフになる場合およびICカードが抜き取られた場合、メモリに記憶しているゲート情報を消去し、
通信制御部は、路側機との通信時に、メモリにゲート情報が記憶されている場合、メモリに記憶されているゲート情報を使って路側機との通信を行い、
メモリからゲート情報を消去する時点以降の予め設定された通知タイミングにおいて、ICカードへの書き込みに失敗したことを意味する通知を、所定の通知部から出力し、ICカードへの書き込みに失敗したときに通信した路側機が、出口ゲートに設置された路側機であると判断できる場合、通知タイミングであっても、通知を出力しない通知処理部(103)を備える。
【0015】
この車載器では、メモリに記憶していたゲート情報を消去する時点以降の予め設定された通知タイミングにおいてICカードへの書き込みに失敗したことを通知するので、車載器が搭載された車両の運転者は、車両がETCレーンを通過できないのに、ETCレーンを通過しようとしてしまうことを抑制できる。
【0016】
上記目的を達成するための他の1つの開示は、料金収受システム用の車載器であって、
車載器に着脱可能に装着され、料金支払いに関する情報が記憶されているICカードから情報を読み取り、読み取った情報をゲートに設置された路側機に送信するとともに、路側機から送信された情報を受信する通信制御部(101)と、
通信制御部が路側機との通信により取得したゲートに関する情報であるゲート情報をICカードに書き込む書き込み処理部(102)と、
ゲート情報を一時的に記憶するメモリ(18)とを備え、
書き込み処理部は、ゲート情報のICカードへの書き込みに失敗した場合にゲート情報をメモリに書き込み、かつ、車載器の電源がオフになる場合およびICカードが抜き取られた場合、メモリに記憶しているゲート情報を消去し、
通信制御部は、路側機との通信時に、メモリにゲート情報が記憶されている場合、メモリに記憶されているゲート情報を使って路側機との通信を行い、
メモリにゲート情報が記憶された時点以降の予め設定された通知タイミングにおいて、ICカードを抜き取らないように依頼する通知を、所定の通知部から出力し、ICカードへの書き込みに失敗したときに通信した路側機が、出口ゲートに設置された路側機であると判断できる場合、通知タイミングであっても、通知を出力しない通知処理部(103)を備える。
【0017】
この車載器では、ICカードへの書き込みに失敗し、ゲート情報をメモリに記憶した場合、メモリにゲート情報が記憶された時点以降の予め設定された通知タイミングで、ICカードを抜き取らないように依頼する通知を、所定の通知部から出力する。これにより、車両の乗員がICカードを車載器から抜き取ってしまうことを抑制でき、その結果、車両がETCレーンを通過できなくなることを抑制できる。
【0018】
上記目的を達成するためのまた別の開示は、料金収受システム用の車載器であって、
車載器に着脱可能に装着され、料金決済に関する情報が記憶されているICカードから情報を読み取り、読み取った情報をゲートに設置された路側機に送信するとともに、路側機から送信された情報を受信する通信制御部(101)と、
通信制御部が路側機との通信により取得したゲートに関する情報であるゲート情報をICカードに書き込む書き込み処理部(102)と、
ゲート情報を一時的に記憶するメモリ(18)とを備え、
書き込み処理部は、
ゲート情報のICカードへの書き込みに失敗した場合にゲート情報をメモリに書き込み、
車載器の電源がオフになるよりも前、かつ、ICカードが抜き取られる前であり、ゲートに設置された路側機との間で通信を行っていないと判断できるタイミングで、メモリに記憶されているゲート情報をICカードに書き込む書き戻し処理を実行し、
車載器の電源がオフになる場合およびICカードが抜き取られた場合、メモリに記憶しているゲート情報を消去する。
【0019】
この車載器では、ICカードへの書き込みに失敗した場合、ゲート情報をメモリに書き込む。加えて、ゲートに設置された路側機との間で通信を行っていないと判断できるタイミングで、メモリに記憶されているゲート情報をICカードに書き込む処理を実行する。この書き込みに成功すれば、その後に、車載器の電源がオフになったり、ICカードが抜き取られたりしても、次の料金所においてETCレーンを通過することができる。つまり、車両がETCレーンを通過できなくなることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1実施形態のETC車載器1の構成を示すブロック図である。
【
図2】車載器コントローラ10が実行する起動時処理を示すフローチャートである。
【
図3】車載器コントローラ10が実行する起動中処理を示すフローチャートである。
【
図4】車載器コントローラ10が実行する終了処理を示すフローチャートである。
【
図5】第2実施形態において車載器コントローラ10が実行する終了処理を示すフローチャートである。
【
図6】第3実施形態において車載器コントローラ10が実行する起動中処理の一部を示すフローチャートである。
【
図7】第3実施形態において車載器コントローラ10が実行する終了処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1実施形態)
<ETC車載器1の概略構成>
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すETC車載器1は、車両に搭載され、ICカード2から料金決済に必要な情報を読み取る。そして、読み取った情報も含め、料金収受に必要な情報を、有料道路の料金所のゲートに設置された路側機との間で送受信する。ETCシステムは、ゲートに設置された路側機とETC車載器1とを含んだ構成である。なお、ゲートは、有料区間の開始地点および終了地点に設置される。有料区間を車両が走行する場合、有料区間の開始位置または終了位置のいずれかで料金が確定し、開始位置および終了位置の他方では料金の支払いはない。しかし、一般に、料金の支払いがない側のゲートも、料金所のゲートと呼ばれる。
【0022】
ETCシステムが備える路側機には、ゲートに設置された路側機の他に、料金所の手前で、ICカード2の挿し忘れ等を知らせるための路側機がある。他にも、運転支援のための情報提供をする路側機も知られている。本明細書では、単に路側機と記載する場合には、料金所のゲートに設置された路側機を意味する。ゲート以外に設置された路側機は、情報提供路側機とする。
【0023】
ICカード2は、内蔵しているICに、料金決済に必要な情報(以下、決済用カード情報)を記録している。決済用カード情報の一部は、ICカード2の正当性と有効性とを認証する認証処理に利用される。以下では、この認証処理に利用される情報を認証情報と呼ぶ。また、ICカード2は、決済用カード情報の一部として、個々のICカード2を識別するための識別情報を含む。識別情報は、例えばカード番号等であって、認証情報の一部であってもよい。
【0024】
また、ICカード2は、ゲートに設置された路側機から受信した情報(以下、ゲート情報)も記憶されている。ゲート情報には、ゲートを特定できる情報が含まれている。このゲート情報も決済用カード情報の一部である。なお、決済用カード情報には、通行履歴情報を含ませることもできる。通行履歴情報は、ICカード2が挿入された状態でETC車載器1が過去に通信した路側機を特定する情報であり、過去一定回数分の路側機との通信履歴を意味する。
【0025】
また、ICカード2には、外部と電気的に接続して情報の授受を行うための接点部を有する。ICカード2は、ETC車載器1に挿入され、この接点部を介してETC車載器1と電気的に接続される場合に、ETC車載器1の後述する車載器コントローラ10からの要求に応じて、記録している決済用カード情報を出力する。車載器コントローラ10からの要求は、コマンドの送信によって行われるものとする。
【0026】
図1に示すように、ETC車載器1は、車載器コントローラ10、スロット部11、通信部14、通知部15、操作部16、電源回路17、およびメモリ18を備える。
【0027】
スロット部11は、ICカード2の装着部であって、ICカード2が挿入される。スロット部11には、カードコンタクト12及びカード検出スイッチ(以下、カード検出SW)13が設けられる。
【0028】
カードコンタクト12は、スロット部11に挿入されたICカード2の接点部と物理的に接触して電気的に接続され、ICカード2との間で情報の授受を行う。カードコンタクト12は、例えばICカード2から情報を読み取ったり、書き込む情報をICカード2に送ったりする。
【0029】
カード検出SW13は、スロット部11にICカード2が挿入されているか否かに応じた信号を出力する。例えば、スロット部11にICカード2が挿入されている場合にオンとなり、スロット部11にICカード2が挿入されていない場合にオフとなる。カード検出SW13は、スロット部11にICカード2が挿入されてオンとなる場合に、オンとなったことを示す信号を車載器コントローラ10に出力する。
【0030】
通信部14は、無線通信用のアンテナを有しており、通信範囲内の路側機と無線通信を行う。一例として、通信部14は、ARIB STD-T75に準拠した狭域無線通信によって、カードコンタクト12から読み出した決済用カード情報を含む、決済処理に必要な情報を路側機に送信し、また、路側機から送信される情報を受信する。なお、通信部14は、情報提供路側機とも、同じアンテナを用いて通信する。
【0031】
通知部15は、車載器コントローラ10の指示に従って通知を行う。一例として、通知部15はスピーカを備える。スピーカからは、種々の音声メッセージが出力される。また、通知部15は、表示部を備えることもできる。表示部の一例は、一つ又は数個程度のLEDを備える構成である。さらに、ETC車載器1が備える通知部15とは別に、車両に搭載されたスピーカおよび表示器の一方または両方を、通知部15に代えて、あるいは、通知部15とともに用いることもできる。
【0032】
操作部16は、ETC車載器1の装置本体に設けられる、例えばメカニカルなスイッチ(以下、SW)であり、スイッチ操作により車載器コントローラ10へ各種機能の操作指示を行うためのものである。具体的には、通知部15のスピーカの音量を調節するための音量SW、スロット部11に挿入されたICカード2を排出するためのカードイジェクトSW、ICカード2の利用履歴情報を通知部15のスピーカから出力させるための履歴確認SW等がある。利用履歴情報の一例としては、課金された料金の履歴等が挙げられる。
【0033】
電源回路17には、常時電源線とACC電源線とが接続されている。常時電源線には、電源ポジションがオフポジションであるときにも車載バッテリから電力が供給される。なお、電源ポジションは、運転者によって切り替えらえる車両の電源供給状態を意味しており、キーシリンダに差し込んだキーの回転、あるいは、プッシュボタンの操作により切り替えられる。ACC電源線には、電源ポジションがACCポジションおよびオンポジションであるときに車載バッテリから電力が供給される。
【0034】
電源回路17は、車載バッテリから供給される電力からETC車載器1が動作可能な電圧の電源を生成して車載器コントローラ10に供給する。電源回路17に供給されるACC電源は、電源ポジションの判断に用いられる。
【0035】
車載器コントローラ10は、ACC電源が供給されていないことをもって、電源ポジションがオフポジションであると判断する。電源ポジションがオフポジションになった場合、電源ポジションを判断する機能を除き、ETC車載器1の機能をオフにする。このような構成であるため、車載器コントローラ10は、電源ポジションがオフポジションになっても処理を継続することができる。車載器コントローラ10が電源ポジションがオフポジションになった後に実行する処理としては、たとえば、メモリ18への情報の書き込み、ICカード2が残っていることを通知する処理などがある。
【0036】
メモリ18は、情報の書き込みおよび消去が可能な構成であり、前述したゲート情報を一時的に記憶することができる。メモリ18には、RAMあるいはフラッシュメモリなどを用いることができる。
【0037】
<車載器コントローラ10の概略構成>
続いて、車載器コントローラ10の概略構成についての説明を行う。車載器コントローラ10は、少なくとも1つのプロセッサを備えた構成により実現できる。たとえば、車載器コントローラ10は、CPU、ROM、RAM、I/O、およびこれらの構成を接続するバスラインなどを備えたコンピュータにより実現できる。ROMには、汎用的なコンピュータを車載器コントローラ10として機能させるためのプログラムが格納されている。CPUが、RAMの一時記憶機能を利用しつつ、ROMに記憶されたプログラムを実行することで、車載器コントローラ10は、
図1に示すように、通信制御部101、書き込み処理部102、通知処理部103としての機能を備える。
【0038】
なお、CPUが実行するプログラムを記憶する記憶媒体はROMに限られない。たとえば、フラッシュメモリに上記プログラムが記憶されていてもよい。また、車載器コントローラ10が備える機能の一部または全部を、一つあるいは複数のIC等を用いて(換言すればハードウェアとして)実現してもよい。上記ICの一例は、ASIC、FPGAであり、また、これらは、プロセッサの一例でもある。また、車載器コントローラ10が備える機能の一部又は全部を、CPUによるソフトウェアの実行とハードウェア部材の組み合わせによって実現してもよい。
【0039】
通信制御部101は、カードコンタクト12を介してICカード2から決済用カード情報を読み取る。ただし、決済用カード情報に含まれるゲート情報は、ICカード2への書き込みに失敗した場合、メモリ18に記憶されていることもある。ICカード2への書き込みに失敗している場合には、ICカード2からゲート情報を読み取る代わりに、メモリ18からゲート情報を読み取る。
【0040】
そして、通信制御部101は、その決済用カード情報およびETC車載器1に記憶されている車載器固有情報をもとに送信情報を生成し、その送信情報を通信部14から路側機へ送信する。また、通信制御部101は、路側機から送信されて通信部14が受信したゲート情報を通信部14から取得する。
【0041】
なお、通信制御部101は、ICカード2から決済用カード情報を読み取る際、まず、ICカード2に対して認証処理を行う。認証処理は、スロット部11に挿入されているICカード2の正当性と有効性とを認証する処理である。
【0042】
認証処理では、カード検出SW13からの信号によりICカード2が挿入されたと判定する場合に、カードコンタクト12を介してクロックを供給することでICカード2のICを起動させ、ICカード2を活性化させる。続いて、ICカード2からの認証情報の読み出しといった一連のコマンドの送信が行われ、このコマンドに応答してICカード2から認証情報が出力される。そして、この認証情報からICカード2の正当性と有効性とが肯定される場合に認証が成功し、ICカード2の正当性若しくは有効性が否定される場合に認証の失敗が確定する。
【0043】
書き込み処理部102は、通信制御部101が取得したゲート情報を、カードコンタクト12を介してICカード2に書き込む。ただし、ICカード2への書き込みに失敗することもある。書き込みに失敗した場合には、ゲート情報をメモリ18に一時的に記憶する。そして、ETC車載器1の電源がオフになるとき、および、ICカード2がスロット部11から取り出されたときには、メモリ18に記憶してある情報を消去する。消去する理由は、メモリ18に記憶してある情報は、セキュリティ性が高い情報であるためであり、すべてのETC車載器に要請されている処理である。
【0044】
通知処理部103は、書き込み処理部102が、ICカード2へのゲート情報の書き込みに失敗した場合、所定の通知タイミングで、書き込み失敗通知を通知部15から出力させる。書き込み失敗通知を通知する通知タイミングは、メモリ18からゲート情報を消去する時点以降である。この時点よりも前であれば、ICカード2にゲート情報が記憶されていなくても、代わりに、メモリ18に記憶されているゲート情報を用いることで、車両は次のゲートで路側機と正常に通信することができるからである。
【0045】
書き込み失敗通知は、ICカード2への書き込みに失敗したことと、運転者がとる必要がある具体的行動とを示す通知である。具体的行動を示す通知は、一般レーンを走行する必要があることを意味する通知であり、たとえば、書き込み失敗通知は、「ETC利用時にカードに書き込みできませんでした。高速道路をご利用中の方は、一般レーンを走行してください。」という音声通知を含む。
【0046】
さらに、通知処理部103は、書き込み処理部102がメモリ18にゲート情報を記憶した場合、挿入継続依頼通知を、メモリ18にゲート情報が記憶された時点以降の所定のタイミングにおいて通知部15から出力させる。挿入継続依頼通知は、ICカード2が挿入された状態を継続するように依頼する通知、換言すれば、ICカード2を抜き取らないように依頼する通知である。この通知は、音声通知とすることができ、音声メッセージの内容は、たとえば、「カードを抜き取るとETCレーンを通行できなくなります。カードを抜き取らないでください」とすることができる。
【0047】
以上は、車載器コントローラ10が実行する処理の概要である。以下、
図2~
図4を用い、車載器コントローラ10が実行する処理をさらに詳しく説明する。
【0048】
<起動時処理>
図2は、ETC車載器1が起動するときに車載器コントローラ10が実行する処理を示している。ETC車載器1はACC電源が供給されることにより起動する。
図2に示す処理は、通知処理部103が実行する。
【0049】
ステップ(以下、ステップを省略)S10では、ICカード2がスロット部11に装着されているか否かを判断する。この判断は、カード検出SW13から供給される信号に基づいて行う。S10の判断結果がNOである場合にはS20に進む。
【0050】
S20では、カード非装着通知を通知部15から出力する。カード非装着通知は、たとえば、「カードが挿入されていません」といった音声メッセージである。
【0051】
続くS30では、再びICカード2がスロット部11に装着されているか否かを判断する。S30の判断結果がNOである場合には、S30の判断を繰り返す。一方、S30の判断結果がYESになった場合にはS40に進む。また、S10の判断結果がYESであった場合にもS40に進む。
【0052】
S40では、ICカード2から決済用カード情報を読み取り、メモリ18に一時的に記憶する。ここで記憶した決済用カード情報はETC車載器1の電源がオフになるか、ICカード2が取り出されるまで保持される。なお、前述したように、ICカード2から決済用カード情報を読み取る際には、まず、ICカード2に対して認証処理を行う。さらに、S40では、
図3のS120で路側機に送信する送信情報を予め生成する。送信情報は、決済処理のためにETC車載器1が路側機に送信する必要がある情報である。送信情報には、決済用カード情報と、ナンバープレート情報などの車載器固有情報とが含まれる。車載器固有情報は、ETC車載器1が備える不揮発性メモリから取得する。
【0053】
S50では、ゲート情報の書き込みに失敗している書き込み失敗状態であるか否かを判断する。書き込み失敗状態は、
図3に示す起動中処理において状態が変更される。S50の判断がNOであれば
図2に示す起動時処理を終了する。一方、S50の判断がYESであればS50に進む。
【0054】
S60では、書き込み失敗通知を通知部15から出力する。車両の電源がオフになる時と次の起動時では、車両の位置に変化はない。電源ポジションがオフになるときに、ICカード2への書き込み失敗により、次のゲートを通過できない状況であれば、次の起動時にも、まだそのゲートを通過していない位置に車両は位置する。したがって、このように起動時に書き込み失敗通知を通知部15から出力することで、電源がオフになる時に書き込み失敗を通知する場合よりもゲートに到達するまでの時間が短いときに、書き込み失敗を通知できる。S50の処理を実行後は
図3に示す起動中処理へ移る。
【0055】
<起動中処理>
次に、
図3に示す起動中処理を説明する。
図3に示す処理のうち、S110、S120、S160、S180は通信制御部101が実行する処理であり、S130~150、S200は書き込み処理部102が実行する処理であり、S190は通知処理部103が実行する処理である。
【0056】
S110では、路側機と通信を開始したか否かを判断する。路側機は、周期的に通信範囲にFCM(Frame Control Message)を送信している。このFCMを通信部14が受信すると、通信制御部101は、IDなどを含む車載器信号を送信するなど、プロトコルに従った信号の送受信が行われる。これにより、路側機とETC車載器1の通信が開始される。
【0057】
S110の判断結果がNOであれば、起動中処理を一旦終了する。S110の判断結果がYESであればS120へ進む。S120では、決済処理のための情報の送受信を行う。ETC車載器1から路側機に送信する情報は、S40または後述するS160あるいはS180において事前に生成された送信情報である。路側機からはゲート情報が送信される。
【0058】
続くS130では、書き込み失敗状態である場合に、その書き込み失敗状態を終了する。今回の路側機との通信で新たにゲート情報が得られ、そのゲート情報を次のS140で書き込むからである。
【0059】
S140では、S120の処理により路側機から受信したゲート情報をICカード2に書き込む書き込み処理を実行する。S150では、S140の処理において書き込みに成功したか否かを判断する。書き込みに成功したか、失敗したかは、たとえば、ICカード2に対して書き込んだデータをICカード2から読み出し、読み出したデータと書き込んだデータとを照合することで判断することができる。他にも、ICカード2へコマンドを送信したが、そのコマンドに対する応答がなかった場合に書き込みに失敗したと判断してもよい。
【0060】
S150の判断結果が「成功」であればS160に進む。S160では送信情報を生成する。ここで生成する送信情報は、前述した種々の情報に加えて、今回、路側機との通信で取得したゲート情報が含まれる。S160を実行後は
図3に示す処理を終了する。
【0061】
一方、S150の判断結果が「失敗」であればS170に進む。S170では、路側機から受信したゲート情報をメモリ18に記憶する。S180では、送信情報を生成する。S180では、送信情報のうちゲート情報は、メモリ18から読み出して取得する。
【0062】
そして、S190において、挿入継続依頼通知を通知部15から出力させ、S200において、書き込み失敗状態であることを、フラッシュメモリなどの書き換え可能なROMに記憶する。
図3の処理を終了した場合、
図4に示す終了処理を実行する。
【0063】
<終了処理>
次に、
図4に示す起動中処理を説明する。
図4に示す処理のうち、S310~S340、S360、S370、S390は通知処理部103が実行する処理であり、S350、S380は書き込み処理部102が実行する処理である。
【0064】
S310では、ICカード2が抜き取られたか否かを判断する。S310の判断結果がNOであればS320に進む。S320では、電源ポジションがオフポジションになったか否かを判断する。ACC電源が供給されなくなった場合に、電源ポジションがオフポジションになったと判断する。S320の判断結果がNOであればS110へ戻る。すなわち、起動中処理へ戻る。
【0065】
S310の判断結果がYESであればS330へ進む。S330では、書き込み失敗状態になっているか否かを判断する。S330の判断結果がNO、すなわち、書き込み失敗状態になっていない場合にはS350に進む。一方、S330の判断結果がYESであればS340に進む。S340では、書き込み失敗通知を通知部15から出力させる。S350では、メモリ18に記憶した情報を消去する。その後、S10へ戻る。
【0066】
S320の判断結果がYESであればS360に進む。S360では、書き込み失敗状態になっているか否かを判断する。S360の判断結果がNO、すなわち、書き込み失敗状態になっていない場合、S380に進む。S360の判断結果がYESであればS370に進む。S370では、書き込み失敗通知を通知部15から出力させる。続くS380では、メモリ18に記憶した情報を消去する。そして、S390でETC車載器1の電源をオフにする。
【0067】
<第1実施形態のまとめ>
以上、説明した第1実施形態では、路側機との通信で受信したゲート情報をICカード2に書き込むことに失敗した場合、そのゲート情報をメモリ18に記憶する(S170)。そして、次の路側機との通信時には、メモリ18に記憶したゲート情報を用いて送信情報を生成する(S180)。これにより、ゲート情報をICカード2へ書き込むことに失敗しても、次のゲートで路側機と正常に通信してETCレーンを通過することができる。
【0068】
ただし、メモリ18に記憶した情報は、ETC車載器1の電源がオフになる時、および、ICカード2の抜き取り時には、消去しなければならない規定になっている。したがって、メモリ18にゲート情報を記憶していても、ICカード2が抜き取られてしまうと、次のゲートで路側機と正常に通信することはできない。そこで、本実施形態のETC車載器1は、ICカード2への書き込みに失敗し、ゲート情報をメモリ18に記憶した場合、「カードを抜き取らないでください」といった挿入継続依頼通知を通知部15から出力する。これにより、車両の乗員がICカード2をスロット部11から抜き取ってしまうことを抑制でき、その結果、次のゲートで路側機と正常に通信できなくなることを抑制できる。
【0069】
さらに、本実施形態では、メモリ18にゲート情報が記憶されている状態を書き込み失敗状態とし、ICカード2が抜き取られた場合であって書き込み失敗状態である場合には、書き込み失敗通知を通知部15から出力する(S340)。また、電源ポジションがオフポジションになった場合にも、書き込み失敗状態であれば、電源をオフにする前に書き込み失敗通知を通知部15から出力する(S370)。しかも、書き込み失敗通知には、一般レーンへの走行を促すメッセージが含まれている。よって、これらの処理により、運転者は、車両がETCレーンを通過できないのに、ETCレーンを通過しようとしてしまうことを抑制できる。
【0070】
また、本実施形態では、書き込み失敗状態であれば、ICカード2が装着された状態での次の電源オン時、電源オン時以降にICカード2が装着されたときにも、書き込み失敗通知を通知部15から出力する(S60)。これにより、電源がオフになる時よりもゲートに到達するまでの時間が短いときに、書き込み失敗を通知することになる。よって、車両がETCレーンを通過できないのに、運転者がETCレーンを通過しようとしてしまうことを、より抑制できる。
【0071】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態を説明する。この第2実施形態以下の説明において、それまでに使用した符号と同一番号の符号を有する要素は、特に言及する場合を除き、それ以前の実施形態における同一符号の要素と同一である。また、構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分については先に説明した実施形態を適用できる。
【0072】
第2実施形態では、終了処理が第1実施形態と相違する。
図5に第2実施形態において車載器コントローラ10が実行する終了処理を示している。
図5に示す終了処理は、S361、S362、S363、S364が追加されている点が
図4に示す終了処理と相違する。S361、S364は書き込み処理部102が実行し、S362、S363は通知処理部103が実行する。
【0073】
図5に示す終了処理では、S320において電源ポジションがオフポジションになったと判断し、かつ、S360において書き込み失敗状態であると判断した場合、S361に進む。S361では、書き戻し処理を実行する。書き戻し処理は、メモリ18に記憶しているゲート情報を、ICカード2に書き込む処理を再度実行することを意味する。路側機との通信後に書き込み処理を実行し、書き込みに失敗したのであるが、書き込みに失敗した原因が、車両走行に伴う振動等による一時的な接点不良であって、すでに、接点不良が解消していることもある。そこで、第2実施形態では、メモリ18に記憶した情報を消去する前に、メモリ18に記憶したゲート情報を、ICカード2に書き込む処理を再度実行するのである。
【0074】
ただし、ICカード2への再書き込みの際にはICカード2の再認証が必要であり、ICカード2の認証処理を実行中は、路側機との通信ができない。したがって、ICカード2への再書き込みは、路側機との通信が行われないタイミングで行う必要がある。そこで、第2実施形態では、電源をオフするタイミングで書き戻し処理を実行する。電源をオフするとき、車両は走行していないと推定できる。一方、路側機との通信は、走行しながら行われる。したがって、電源をオフするタイミングであれば、路側機との通信は行われていないと推定できる。そこで、電源をオフするタイミングで書き戻し処理を実行するのである。
【0075】
S362では、書き戻しに成功したか否かを判断する。書き戻し成否の判断方法は、S150で実行する書き込み成否の判断方法と同じである。S362の判断結果がYESであればS363に進む。
【0076】
S363では、書き込み成功通知を通知部15から出力する。書き込み成功通知は、ICカード2への再書き込み処理に成功したため、ETCレーンを通行できるようになったことを意味するメッセージを通知するものである。書き込み成功通知を出力する理由は、S190において、すでに挿入継続依頼通知を通知しているため、挿入継続依頼通知の内容に留意する必要がなくなったことを乗員に知らせるためである。なお、S190を省略することもできる。そして、S190を省略して挿入継続通知を通知していない場合には、このS363は実行しないでS364に進む。S364では、書き込み失敗状態を終了する。その後、S380に進む。
【0077】
一方、S362の判断結果がNOであれば、すでに説明したS370を実行して、書き込み失敗通知を通知部15から出力させる。
【0078】
<第2実施形態のまとめ>
この第2実施形態では、書き戻し処理(S361)を実行するので、一度、書き込み処理に失敗していても、書き戻しが成功すれば、メモリ18からゲート情報を消去しても、次のゲートにおいてETCレーンを通過することができる。
【0079】
また、書き戻し処理は、電源をオフにするときに実行しており、電源をオフにするときは、路側機と通信していないタイミングであると推定できるので、書き戻し処理を実行することで、路側機との通信ができなくなってしまうことも抑制できる。
【0080】
また、第2実施形態では、電源をオフにするときに、まず書き戻し処理を行う。そして、書き戻しに成功した場合には、書き込み失敗通知を出力しない。これにより、書き込み失敗通知を出力する場合が減少するので、乗員が、ICカード2への書き込みに失敗したことに注意しなければならない場合が減少する。
【0081】
(第3実施形態)
第3実施形態では、起動中処理および終了処理の一部が第1実施形態と相違する。
図6に第3実施形態において車載器コントローラ10が実行する起動中処理の一部を示している。省略している部分は第1実施形態と同じである。
図6に示す終了処理は、S141~S144、S182が追加されている点が
図3に示す終了処理と相違する。S141~S144は書き込み処理部102が実行し、S182は通知処理部103が実行する。
【0082】
第3実施形態では、S140において、路側機との通信により取得したゲート情報の書き込み処理を実行した後、S141を実行する。S141では、メモリ18に過去のゲート情報が記憶されているか否かを判断する。メモリ18に過去のゲート情報が記憶されている場合の一例として、入口ゲートで書き込みに失敗し、入口ゲートに関するゲート情報をメモリ18に記憶したまま、出口ゲートで出口ゲートに関するゲート情報を受信した場合がある。この場合、メモリ18に記憶されている入口ゲートに関するゲート情報が、過去のゲート情報になる。
【0083】
S141の判断結果がYESであればS142に進む。S142では、メモリ18に記憶されている過去のゲート情報を書き戻す処理を実行する。S143では、書き戻しに成功したか否かを判断する。S143の処理はS362と同じである。S143の判断結果がYESであればS144に進む。S144では、書き戻した情報をメモリ18から消去する。S143の判断結果がNOであった場合またはS144を実行した場合にS150に進む。
【0084】
なお、S142の処理において、上述した例、すなわち、出口ゲートにおいて、入口ゲートでICカード2に書き込めなかったゲート情報を書き込んでも、料金決済には利用できない。出口ゲートでは、すでに、メモリ18に記憶したゲート情報で料金決済は終了しているからである。しかし、ETC車載器1には、履歴確認機能があり、履歴確認を考慮すると、メモリ18に記憶しておいた入口ゲートについてのゲート情報を出口ゲートで書き込む意義がある。
【0085】
また、S142を実行するタイミングは、路側機との今回の通信により取得したゲート情報を書き込むタイミングの直後である。このタイミングであれば、路側機との通信をしていないタイミングであると推定できるので、ICカード2への書き込み処理を実行することで、路側機との通信ができなくなってしまうことを抑制できる。
【0086】
S150では、第1実施形態で説明したように、書き込みに成功したか否かを判断し、書き込みに失敗したと判断した場合には、S170において、ゲート情報をメモリ18に記憶し、S180において送信情報を生成する。
【0087】
その後、第3実施形態ではS181を実行する。S181は、第1実施形態におけるS200と同じであり、書き込み失敗状態であることを記憶する。続くS182では、今回、通信した路側機は、出口ゲートに設置された路側機であったか否かを判断する。そして、出口ゲートであったと判断した場合には、前述したS190を実行せずに、起動中処理を終了する。
【0088】
出口ゲートのゲート情報は、履歴確認の際には使用するが、次のゲートでの決済処理では、そのゲート情報を使用しない。ゲート情報を決済処理で使用しない場合、乗員に注意喚起する必要性は相対的に低い。そこで、出口ゲートに設置された路側機であったと判断した場合には、S190を実行して挿入継続依頼通知を出力することなく、起動中処理を終了する。
【0089】
ところで、ゲート情報には、路側機が設置されているゲートが出口ゲートであるか入口ゲートであるかを直接的に示す情報は含まれていない。ただし、ゲート情報には課金情報が含まれている。課金情報は、通行料金がいくらであったかを示す情報であり、通行料金が確定した時点で路側機から送信される。多くの有料道路において、通行料金は出口ゲートで確定する。そこで、本実施形態では、ゲート情報に課金情報が含まれている場合に、今回、通信した路側機は、出口ゲートに設置された路側機であったと判断する。
【0090】
なお、入口で課金処理が行われる場合には出口ゲートにバーが設置されていない場合が多い。したがって、この判断により、実際には入口ゲートであったが、出口ゲートであると判断しても、出口ゲートにおいてバーが開かずに運転者が困惑することは少ない。
【0091】
図7に第3実施形態で実行する終了処理を示している。
図7に示す終了処理は、S331、S361が追加されている点において
図4に示す終了処理と相違する。第3実施形態の終了処理では、S330で書き込み失敗状態であると判断した場合に、S331を実行して書き込みに失敗した路側機は、出口ゲートに設置されていたか否かを判断する。S331における具体的判断はS192と同じである。
【0092】
S331で出口ゲートであったと判断した場合には、S340を実行しないでS350へ進む。したがって、出口ゲートであったと判断した場合には、ICカード2が抜き取られても、書き込み失敗通知を出力しないことになる。
【0093】
また、
図7に示す終了処理では、S360で書き込み失敗状態であると判断した場合にも、S361を実行して、書き込みに失敗した路側機は、出口ゲートに設置されていたか否かを判断する。S361における具体的判断はS182と同じである。S361で出口ゲートであったと判断した場合には、S370を実行しないでS380へ進む。したがって、出口ゲートであったと判断した場合には、電源がオフになる時にも、書き込み失敗通知を出力しないことになる。
【0094】
<第3実施形態のまとめ>
この第3実施形態によれば、ICカード2へのゲート情報の書き込みに失敗しても、そのゲート情報が出口ゲートに設置された路側機から取得した情報であると判断した場合には、挿入継続依頼通知を出力するS190を実行しない。また、ICカード2が抜き取られたときおよび電源がオフになる時にも、書き込み失敗通知を出力しない。このようにすることで、入口ゲートでの書き込みに失敗した場合には、適切な処置をとるように車両の乗員に通知しつつ、不要な通知をしてしまうことも抑制できる。
【0095】
以上、実施形態を説明したが、開示した技術は上述の実施形態に限定されるものではなく、次の変形例も開示した範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。
【0096】
(変形例1)
実施形態では、書き込み失敗通知を、ICカード2が抜き取られた時(S340)、ETC車載器1の電源がオフになる時(S370)、電源オフ後の次の電源オン時(S60)、ICカード2が再装着されたタイミング(S60)で出力していた。しかし、書き込み失敗通知を出力するタイミングは実施形態に示したタイミングに限られない。書き込み失敗通知を出力するタイミングは、メモリ18からゲート情報を消去する時点以降であればよい。メモリ18からゲート情報を消去するより前を除外している理由は、ICカード2への書き込みに失敗しても、メモリ18にゲート情報が記憶されていれば、メモリ18に記憶されているゲート情報を用いて路側機と通信することができるからである。
【0097】
メモリ18からゲート情報を消去する時点以降のタイミングであって、実施形態で示したタイミング以外のタイミングとしては、たとえば、情報提供路側機との通信している時、または、その後の一定時間がある。
【0098】
情報提供路側機の具体例の1つとして、お知らせアンテナと呼ばれるものがある。お知らせアンテナは、料金所のゲートが近いことを運転者に知らせるアンテナである。お知らせアンテナと通信したときに書き込み失敗状態になっている場合に、その通信時、または、その後の一定時間に書き込み失敗通知を出力すれば、書き込み失敗通知を出力した後、ほどなくしてゲートを通過する可能性が高い。したがって、運転者がETCレーンを避けて一般レーンを通行するようになる可能性が高くなる。
【0099】
情報提供路側機の具体例の他の1つとして、光ビーコンがある。光ビーコンは渋滞情報等の種々の情報を伝えるものである。また、情報提供路側機の他の例として、ETC2.0のサービスを提供するために設置された路側機(以下、ETC2.0路側機)がある。このETC2.0路側機は電波ビーコンと呼ばれることもある。
【0100】
(変形例2)
実施形態では、ICカード2への書き込みに失敗した時点で挿入継続依頼通知を出力していた。しかし、挿入継続依頼通知を出力するタイミングはICカード2への書き込みに失敗した時点に限られない。挿入継続依頼通知を出力するタイミングは、メモリ18に記憶されたゲート情報を用いた通信を行う前であればよい。たとえば、表示により挿入継続依頼通知を行う場合には、ICカード2への書き込みに失敗した時点以降、継続してその通知をしてもよい。
【0101】
(変形例3)
実施形態では、課金情報の有無により、ゲート情報の書き込みに失敗したときに通信した路側機は出口ゲートに設置された路側機であったと判断した。しかし、路側機が出口料金所に設置された路側機であったか否かを判断する方法はこれに限られない。ETC2.0路側機は、道路種別を含む情報をETC車載器1に送信することがある。そこで、ETC2.0路側機から道路種別が一般道路であることを意味する情報を受信した場合、ゲート情報の書き込みに失敗したときに通信した路側機は出口ゲートに設置された路側機であったと推定する。現在、一般道路を走行していれば、直前に通過したゲートは出口ゲートであったと推定できるからである。
【0102】
(変形例4)
実施形態では、ETC車載器1の電源がオフになるときに書き戻し処理を行っていた(S361)。しかし、書き戻し処理を行うタイミングは、ETC車載器1の電源がオフになるときに限られない。書き戻し処理を行うタイミングは、ゲートに設置された路側機と通信を行っていないときであればよい。
【0103】
書き戻し処理を行うタイミングの他の例として、ETC車載器1が搭載された車両が停車中であると判断できるときがある。ゲートに設置された路側機は、走行しながら通信を行うからである。車両が停車中であることの判断は、たとえば、車両にGNSS受信機等の位置検出装置が搭載されている場合、その位置検出装置が検出した現在位置に変化がない場合に、車両が停車中であると判断することができる。なお、GNSS受信機をETC車載器1が備えることもできる。
【0104】
また、書き戻し処理を行うタイミングの他の例として、車両が走行中の道路の道路種別が有料道路でないと判断できるときがある。有料道路でなければ、ゲートに設置された路側機と通信することはないからである。道路種別の判断方法としては、前述したETC2.0との通信で得られる情報から判断する方法がある。また、ナビゲーション装置と接続されている場合には、ナビゲーション装置から道路種別を取得してもよい。
【0105】
また、書き戻し処理を行うタイミングの他の例として、前述したお知らせアンテナと通信を行った時点およびその後の一定期間がある。お知らせアンテナは、ゲートには設置されていないからである。
【0106】
また、書き戻し処理を行うタイミングの他の例として、ETC車載器1に設置されているボタンが操作されているときがある。ボタンは、たとえば、音量SW、履歴確認SWである。車両の乗員は、通常、車両がゲートを通過中にこれらのスイッチを操作することはないからである。
【0107】
これら説明した種々のタイミングのいずれか1つ以上のタイミングにおいて、書き戻し処理を実行することができる。
【符号の説明】
【0108】
1:ETC車載器 2:ICカード 10:車載器コントローラ 11:スロット部 12:カードコンタクト 13:カード検出SW 14:通信部 15:通知部 16:操作部 17:電源回路 18:メモリ 101:通信制御部 102:書き込み処理部 103:通知処理部