(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】センターブラケット
(51)【国際特許分類】
B60N 2/68 20060101AFI20240227BHJP
【FI】
B60N2/68
(21)【出願番号】P 2018225728
(22)【出願日】2018-11-30
【審査請求日】2021-05-26
【審判番号】
【審判請求日】2022-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】深津 俊明
(72)【発明者】
【氏名】森本 恵司
【合議体】
【審判長】一ノ瀬 覚
【審判官】藤井 昇
【審判官】北中 忠
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-61344(JP,A)
【文献】特開2013-189038(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00 - 2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1シートバック及び当該第1シートバックに対してシート幅方向にずれた位置に配置された第2シートバックを有するシートバックを備える乗物用シートに適用されるセンターブラケットにおいて、
前記シートバックを支持するためのタワーブラケットであって、前記第1シートバックと前記第2シートバックとの間に配置されて乗物に対して固定されるタワーブラケットと、
前記タワーブラケットの上端側と前記第1シートバックとを連結する第1連結ブラケットと、
前記タワーブラケットの上端側と前記第2シートバックとを連結する第2連結ブラケットであって、前記第1連結ブラケットと異なる剛性を有する第2連結ブラケットと
を備え、
前記第1連結ブラケットに関する寸法であって、当該第1連結ブラケットに沿って前記タワーブラケットとの連結部から前記第1シートバックとの連結部に至る寸法を第1周長寸法とし、
前記第2連結ブラケットに関する寸法であって、当該第2連結ブラケットに沿って前記タワーブラケットとの連結部から前記第2シートバックとの連結部に至る寸法を第2周長寸法としたとき、
前記第1周長寸法と前記第2周長寸法が異なることにより、前記第1連結ブラケットの剛性と前記第2連結ブラケットの剛性とが異なり、
前記第1連結ブラケット及び前記第2連結ブラケットのうち、少なくとも剛性が小さい連結ブラケットには、シート後方側に向けて凸となるように湾曲した湾曲部が設けられて
おり、
前記タワーブラケットのうちシート幅方向に対して略直交する板状の部位には、補強用凸部を成すビード部が設けられており、
さらに、前記第1連結ブラケット及び前記第2連結ブラケットのうち前記ビード部側に位置する連結ブラケットは、当該ビード部と反対側に位置する連結ブラケットより剛性が小さいセンターブラケット。
【請求項2】
第1シートバック及び当該第1シートバックに対してシート幅方向にずれた位置に配置された第2シートバックを有するシートバックを備える乗物用シートに適用されるセンターブラケットにおいて、
前記シートバックを支持するためのタワーブラケットであって、前記第1シートバックと前記第2シートバックとの間に配置されて乗物に対して固定されるタワーブラケットと、
前記タワーブラケットの上端側と前記第1シートバックとを連結する第1連結ブラケットと、
前記タワーブラケットの上端側と前記第2シートバックとを連結する第2連結ブラケットであって、前記第1連結ブラケットと異なる剛性を有する第2連結ブラケットと
を備え、
前記第1連結ブラケットの断面二次モーメントと前記第2連結ブラケットの断面二次モーメントとが異なることにより、前記第1連結ブラケットの剛性と前記第2連結ブラケットの剛性とが異な
り、
前記タワーブラケットのうちシート幅方向に対して略直交する板状の部位には、補強用凸部を成すビード部が設けられており、
さらに、前記第1連結ブラケット及び前記第2連結ブラケットのうち前記ビード部側に位置する連結ブラケットは、当該ビード部と反対側に位置する連結ブラケットより剛性が小さいセンターブラケット。
【請求項3】
乗物に搭載される乗物用シートにおいて、
第1シートバック及び当該第1シートバックに対してシート幅方向にずれた位置に配置された第2シートバックを有するシートバックと、
前記シートバックを支持するためのタワーブラケットであって、前記第1シートバックと前記第2シートバックとの間に配置されて乗物に対して固定されるタワーブラケットと、
前記タワーブラケットの上端側と前記第1シートバックとを連結する第1連結ブラケットと、
前記タワーブラケットの上端側と前記第2シートバックとを連結する第2連結ブラケットであって、前記第1連結ブラケットと異なる剛性を有する第2連結ブラケットと
を備え、
前記第1連結ブラケットに関する寸法であって、当該第1連結ブラケットに沿って前記タワーブラケットとの連結部から前記第1シートバックとの連結部に至る寸法を第1周長寸法とし、
前記第2連結ブラケットに関する寸法であって、当該第2連結ブラケットに沿って前記タワーブラケットとの連結部から前記第2シートバックとの連結部に至る寸法を第2周長寸法としたとき、
前記第1周長寸法と前記第2周長寸法が異なることにより、前記第1連結ブラケットの剛性と前記第2連結ブラケットの剛性とが異なり、
前記第1連結ブラケット及び前記第2連結ブラケットのうち、少なくとも剛性が小さい連結ブラケットには、シート後方側に向けて凸となるように湾曲した湾曲部が設けられて
おり、
前記タワーブラケットのうちシート幅方向に対して略直交する板状の部位には、補強用凸部を成すビード部が設けられており、
さらに、前記第1連結ブラケット及び前記第2連結ブラケットのうち前記ビード部側に位置する連結ブラケットは、当該ビード部と反対側に位置する連結ブラケットより剛性が小さい乗物用シート。
【請求項4】
乗物に搭載される乗物用シートにおいて、
第1シートバック及び当該第1シートバックに対してシート幅方向にずれた位置に配置された第2シートバックを有するシートバックと、
前記シートバックを支持するためのタワーブラケットであって、前記第1シートバックと前記第2シートバックとの間に配置されて乗物に対して固定されるタワーブラケットと、
前記タワーブラケットの上端側と前記第1シートバックとを連結する第1連結ブラケットと、
前記タワーブラケットの上端側と前記第2シートバックとを連結する第2連結ブラケットであって、前記第1連結ブラケットと異なる剛性を有する第2連結ブラケットと
を備え、
前記第1連結ブラケットの断面二次モーメントと前記第2連結ブラケットの断面二次モーメントとが異なることにより、前記第1連結ブラケットの剛性と前記第2連結ブラケットの剛性とが異な
り、
前記タワーブラケットのうちシート幅方向に対して略直交する板状の部位には、補強用凸部を成すビード部が設けられており、
さらに、前記第1連結ブラケット及び前記第2連結ブラケットのうち前記ビード部側に位置する連結ブラケットは、当該ビード部と反対側に位置する連結ブラケットより剛性が小さい乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、乗物に搭載される乗物用シート用のセンターブラケットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載のセンターブラケットでは、第1シートバックと第2シートバックとの間にタワーブラケットに配置されている。タワーブラケットは、下端側が乗物に固定され、上端側が第1連結ブラケット及び第2連結ブラケットを介してシートバックに連結されている。
【0003】
第1連結ブラケットは、第1シートバックとタワーブラケットとを連結する。第2連結ブラケットは、第2シートバックとタワーブラケットとを連結する。そして、第1連結ブラケットと第2連結ブラケットとは、左右対称構造又は同一構造(共用部品)のブラケットである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の発明では、シートバックに作用するシート前後方向の荷重によるエネルギーを吸収できない可能性がある。
本開示は、上記点に鑑み、シートバックに作用するシート前後方向の荷重によるエネルギーを吸収可能な乗物用シート用のセンターブラケットの一例を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1シートバック(3A)及び当該第1シートバック(3A)に対してシート幅方向にすれた位置に配置された第2シートバック(3B)を有するシートバック(3)を備える乗物用シートに適用されるセンターブラケットは、例えば、以下の構成要件のうち少なくとも1つを備えることが望ましい。
【0007】
すなわち、当該構成要件は、シートバック(3)を支持するためのタワーブラケット(10)であって、第1シートバック(3A)と第2シートバック(3B)との間に配置されて乗物に対して固定されるタワーブラケット(10)と、タワーブラケット(10)の上端側と第1シートバック(3A)とを連結する第1連結ブラケット(11)と、タワーブラケット(10)の上端側と第2シートバック(3B)とを連結する第2連結ブラケット(12)であって、第1連結ブラケット(11)と異なる剛性を有する第2連結ブラケット(12)とである。
【0008】
これにより、当該乗物用シートでは、シートバックに作用するシート前後方向の荷重は、第1連結ブラケット(11)及び第2連結ブラケット(12)を介してタワーブラケット(10)に入力される。
【0009】
このとき、第1連結ブラケット(11)の剛性と第2連結ブラケット(12)の剛性とが異なるため、第1連結ブラケット(11)からタワーブラケット(10)に力が入力されるタイミングと第2連結ブラケット(12)からタワーブラケット(10)に力が入力されるタイミングとがずれてしまう。
【0010】
このため、タワーブラケット(10)には、剛性の大きい連結ブラケット側から剛性の小さい連結ブラケット側に当該タワーブラケット(10)を捻り変形させる捻りモーメントが誘発される。
【0011】
したがって、当該タワーブラケット(10)は、シート前後方向の荷重がシートバックに作用したときに、捻り変形しながら塑性変形していく。延いては、当該乗物用シートでは、当該荷重によるエネルギーが効果的に吸収され得る。
【0012】
因みに、特許文献1に記載の乗物用シートでは、第1連結ブラケットと第2連結ブラケットとが左右対称構造又は同一構造(共用部品)であるので、原理的に、上記捻りモーメントが発生しない。このため、特許文献1に記載の乗物用シートに係るタワーブラケットは、当該タワーブラケット(10)に比べて塑性変形し難いので、上記荷重によるエネルギーを効果的に吸収することが難しい。
【0013】
なお、当該乗物用シートは、以下の構成であってもよい。
すなわち、第1連結ブラケット(11)に関する寸法であって、当該第1連結ブラケット(11)に沿ってタワーブラケット(10)との連結部から第1シートバック(3A)との連結部に至る寸法を第1周長寸法(L1)とし、第2連結ブラケット(12)に関する寸法であって、当該第2連結ブラケット(12)に沿ってタワーブラケット(10)との連結部から第2シートバック(3B)との連結部に至る寸法を第2周長寸法(L2)としたとき、第1周長寸法(L1)と第2周長寸法(L2)が異なることにより、第1連結ブラケット(11)の剛性と第2連結ブラケット(12)の剛性とが異なることが望ましい。これにより、乗物用シートを提供する者は、上記の作用効果を得ることが可能なセンターブラケットを容易に設計・計算することが可能となり得る。
【0014】
第1連結ブラケット(11)及び第2連結ブラケット(12)のうち、少なくとも剛性が小さい連結ブラケット(12)には、シート後方側に向けて凸となるように湾曲した湾曲部(14)が設けられていることが望ましい。これにより、乗物用シートを提供する者は、第1連結ブラケット(11)の剛性と第2連結ブラケット(12)の剛性とを容易に相違させることが可能となり得る。
【0015】
第1連結ブラケット(11)の断面二次モーメントと第2連結ブラケット(12)の断面二次モーメントとが異なることにより、第1連結ブラケット(11)の剛性と第2連結ブラケット(12)の剛性とが異なる構成でもよい。これにより、乗物用シートを提供する者は、第1連結ブラケット(11)の剛性と第2連結ブラケット(12)の剛性とを容易に相違させることが可能となり得る。
【0016】
タワーブラケット(10)のうちシート幅方向に対して略直交する板状の部位には、補強用凸部を成すビード部(10C)が設けられており、さらに、第1連結ブラケット(11)及び第2連結ブラケット(12)のうちビード部(10C)側に位置する連結ブラケット(12)は、当該ビード部(10C)と反対側に位置する連結ブラケット(11)より剛性が小さいことが望ましい。これにより、タワーブラケット(10)が確実に捻り変形しながら塑性変形していくので、当該荷重によるエネルギーを効果的に吸収することが可能となり得る。
【0017】
因みに、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1実施形態に係る乗物用シートを示す図である。
【
図2】第1実施形態に係るセンターブラケットを示す図である。
【
図3】第1実施形態に係るタワーブラケットを示す図である。
【
図4】第1実施形態に係るセンターブラケットを示す図である。
【
図5】その他の実施形態に係るセンターブラケットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下の「発明の実施形態」は、本開示の技術的範囲に属する実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的構成や構造等に限定されるものではない。
【0020】
少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位は、「1つの」等の断りがされた場合を除き、少なくとも1つ設けられている。つまり、「1つの」等の断りがない場合には、当該部材は2以上設けられていてもよい。本開示に示された発明は、少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位等の構成要素を備える。
【0021】
本実施形態は、車両等の乗物に搭載されるシート(以下、乗物用シートという。)に本開示に係る乗物用シート及びセンターブラケットが適用された例である。各図に付された方向を示す矢印等は、各図相互の関係を理解し易くするために記載されたものである。
【0022】
したがって、本開示に示された発明は、各図に付された方向に限定されるものではない。各図に示された方向は、本実施形態に係る乗物用シートが車両に組み付けられた状態における方向である。
【0023】
(第1実施形態)
1.乗物用シートの概要
図1に示される乗物用シート1は、車両の後部座席に用いられる乗物用シートのシートバック3である。シートバック3は着席者の背部を支持するための部位である。当該シートバック3は、第1シートバック3A及び第2シートバック3B等を有する。
【0024】
第1シートバック3Aと第2シートバック3Bとは、シート幅方向に並んで配置さている。具体的には、第2シートバック3Bは、第1シートバック3Aの左側に配置されている。
【0025】
シートバック3の骨格を構成するバックフレーム5は、第1バックフレーム5A及び第2バックフレーム5B等を有して構成されている。第1バックフレーム5Aは第1シートバック3Aの骨格を構成する。第2バックフレーム5Bは第2シートバック3Bの骨格を構成する。
【0026】
シートバック3、つまりバックフレーム5の下端側は、第1ヒンジブラケット7、第2ヒンジブラケット8及びタワーブラケット10等を介して乗物のフロアパネル(図示せず。)等に固定されている。
【0027】
本実施に係るバックフレーム5の下端側は、シート前後方向に乗物に対して回転可能である。具体的には、第1ヒンジブラケット7及び第2ヒンジブラケット8それぞれは、ヒンジボルト7A、8Aを介して乗物に固定されている。
【0028】
タワーブラケット10の下端は、乗物に不動状態で固定される。タワーブラケット10の上端側は、
図2に示されるように、第1連結ブラケット11及び第2連結ブラケット12等を介してバックフレーム5に連結されている。
【0029】
そして、第1連結ブラケット11及び第2連結ブラケット12は、タワーブラケット10に対して回転可能に連結されている。具体的には、第1連結ブラケット11及び第2連結ブラケット12は、ヒンジピン13を介してタワーブラケット10に連結されている。
【0030】
第1連結ブラケット11は、第1バックフレーム5Aに溶接された第1取付ブラケット5Cを介して当該第1バックフレーム5Aに連結されている。第2連結ブラケット12は、第2バックフレーム5Bに溶接された第2取付ブラケット5Dを介して当該第2バックフレーム5Bに連結されている。
【0031】
なお、第1連結ブラケット11と第1取付ブラケット5Cとは、少なくとも1つの取付ボルト(図示せず。)にて連結される。第2連結ブラケット12と第2取付ブラケット5Dとは、少なくとも1つの取付ボルト(図示せず。)にて連結される。
【0032】
2.センターブラケットの構造詳細
センターブラケットは、タワーブラケット10、第1連結ブラケット11及び第2連結ブラケット12等を少なくとも備えて構成されている。
【0033】
<タワーブラケット>
図3に示されるように、タワーブラケット10は、起立部10A及び固定フランジ部10B等を有する。起立部10Aは、シート幅方向に対して略直交する板状部位である。固定フランジ部10Bは、起立部10Aの下端からシート幅方向に延出した部位である。
【0034】
起立部10Aにはビード部10Cが設けられている。当該ビード部10Cは、補強用凸部を成す部位であって、起立部10Aの板面に対してシート幅方向に膨出した膨出部である。
【0035】
なお、本実施形態に係るビード部10Cは、固定フランジ部10B側に膨出している。起立部10A、固定フランジ部10B及びビード部10Cは、1枚の金属板にプレス加工等の塑性加工が施されて一体成形された一体成形品である。
【0036】
なお、第1連結穴10Dはヒンジピン13が貫通する貫通穴である。固定穴10E、10Fはタワーブラケット10を車両に固定するためのボルト(図示せず。)が挿入される貫通穴である。
【0037】
<第1連結ブラケット及び第2連結ブラケット>
図4に示されるように、第2連結ブラケット12は、第1連結ブラケット11と異なる剛性となるように構成されている。本実施形態における「剛性」とは、主に、第1連結ブラケット11及び第2連結ブラケット12それぞれの曲げ剛性をいう。
【0038】
具体的には、第1連結ブラケット11の剛性とは、荷重F1によって発生するモーメントM1に対する第1連結ブラケット11の曲げ変形のし難さである。第2連結ブラケット12の剛性とは、荷重F2によって発生するモーメントM2に対する第2連結ブラケット12の曲げ変形のし難さである。
【0039】
本実施形態では、第1周長寸法L1と第2周長寸法L2が異なることにより、第1連結ブラケット11の剛性と第2連結ブラケット12の剛性とが異なる構成である。
第1周長寸法L1とは、第1連結ブラケット11に関する寸法であって、当該第1連結ブラケット11に沿ってタワーブラケット10との連結部から第1シートバック3Aとの連結部に至る寸法をいう。
【0040】
第2周長寸法L2とは、第2連結ブラケット12に関する寸法であって、当該第2連結ブラケット12に沿ってタワーブラケット10との連結部から第2シートバック3Bとの連結部に至る寸法をいう。
【0041】
なお、第1連結ブラケット11とタワーブラケット10との連結部、及び第2連結ブラケット12とタワーブラケット10との連結部は、ヒンジピン13の中心軸線に相当する。第1シートバック3Aと第1連結ブラケット11との連結部、及び第2シートバック3Bと第2連結ブラケット12との連結部は、上記取付ボルトの中心軸線に相当する。
【0042】
そして、第1連結ブラケット11及び第2連結ブラケット12のうち、少なくとも剛性が小さい連結ブラケット(本実施形態では、第2連結ブラケット12)には、湾曲部14が設けられている。
【0043】
湾曲部14は、第2連結ブラケット12の一部が、シート後方側に向けて凸となるように湾曲した部位である。このため、本実施形態では、第2周長寸法L2が第1周長寸法L1より長くなるため、第2連結ブラケット12の剛性が第1連結ブラケット11の剛性より小さくなる。
【0044】
さらに、第1連結ブラケット11及び第2連結ブラケット12のうちビード部10C側に位置する連結ブラケット、つまり第2連結ブラケット12は、当該ビード部10Cと反対側に位置する第1連結ブラケット11より剛性が小さい。
【0045】
つまり、起立部10Aに対してビード部10Cと同一側に剛性の小さい第2連結ブラケット12が配置され、起立部10Aに対してビード部10Cと反対側に剛性の大きい第1連結ブラケット11が配置されている。なお、ビード部10Cと同一側とは、当該ビード部10Cの膨出側をいう。
【0046】
3.本実施形態に係る乗物用シート(特、センターブラケット)の特徴
第1連結ブラケット11の剛性と第2連結ブラケット12の剛性が異なるように構成されている。これにより、当該乗物用シート1では、シートバック3に作用するシート前後方向の荷重F1、F2は、第1連結ブラケット11及び第2連結ブラケット12を介してタワーブラケット10に入力される(
図4参照)。
【0047】
このとき、第1連結ブラケット11の剛性と第2連結ブラケット12の剛性とが異なるため、第1連結ブラケット11からタワーブラケット10に力が入力されるタイミングと第2連結ブラケット12からタワーブラケット10に力が入力されるタイミングとがずれてしまう。
【0048】
このため、タワーブラケット10には、剛性の大きい連結ブラケット側(第1連結ブラケット11)から剛性の小さい連結ブラケット(第2連結ブラケット12)側に当該タワーブラケット10を捻り変形させる捻りモーメントM3が誘発される(
図4参照)。
【0049】
したがって、当該タワーブラケット10は、シート前後方向の荷重がシートバック3に作用したときに、捻り変形しながら塑性変形していく。延いては、当該乗物用シート1では、当該荷重によるエネルギーが効果的に吸収され得る。
【0050】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、第2連結ブラケット12の剛性が第1連結ブラケット11の剛性より小さい構成であった。しかし、本明細書に開示はこれに限定されるものではない。すなわち、当該開示は、例えば、第2連結ブラケット12の剛性が第2連結ブラケット12の剛性より小さい構成であってもよい。
【0051】
上述の実施形態では、第1周長寸法L1と第2周長寸法L2が異なることにより、第1連結ブラケット11の剛性と第2連結ブラケット12の剛性とが異なる構成であった。しかし、本明細書に開示はこれに限定されるものではない。
【0052】
すなわち、当該開示は、例えば、第1連結ブラケット11の断面二次モーメントと第2連結ブラケット12の断面二次モーメントとが異なることにより、第1連結ブラケット11の剛性と第2連結ブラケット12の剛性とが異なる構成であってもよい。
【0053】
なお、断面二次モーメントを異ならせる手法として、例えば、(a)ビードの有無、(b)フランジの有無、(c)板厚の相違、又は(d)貫通穴の有無等がある。つまり、例えば、ビード又はフンンジが設けられた連結ブラケットは、それらが設けられていない連結ブラケットに比べて、剛性が小さくなる。
【0054】
図5は、上記(a)を示す一例である。第1連結ブラケット11には、剛性を高めるためのビード11Aが設けられている。第2連結ブラケット12には、当該ビード11Aに相当する構成が設けられていない。
【0055】
なお、ビード11Aは剛性を高めるための部位の一例である。具体的には、当該部位は、突条に構成された部位である。第1連結ブラケット11と第2連結ブラケット12とは、ビード11Aの有無を除き、略左右対称な構成である。
【0056】
さらに、(a)第1連結ブラケット11の材質と第2連結ブラケット12の材質とが異なる構成、又は(b)第1連結ブラケット11に施す熱処理と第2連結ブラケット12に施す熱処理とが異なる構成ことにより、第1連結ブラケット11の剛性と第2連結ブラケット12の剛性とが異なる構成であってもよい。
【0057】
上述の実施形態では、シート後方側に向けて凸となるよう湾曲部14が剛性の小さい連結ブラケットに設けられていた。しかし、本明細書に開示はこれに限定されるものではない。
【0058】
すなわち、当該開示は、例えば、シート前方側に向けて凸となるよう湾曲部14、又は第1連結ブラケット11及び第2連結ブラケット12のいずれにも湾曲部14が設けられ、かつ、剛性の小さい連結ブラケットの曲率が剛性の大きい連結ブラケットの曲率より大きい構成であってもよい。
【0059】
上述の実施形態では、ビード部10Cと同一側に位置する連結ブラケットの剛性が、ビード部10Cと反対側に位置する連結ブラケットの剛性より小さい構成であった。しかし、本明細書に開示はこれに限定されるものではない。
【0060】
すなわち、当該開示は、例えば、ビード部10Cと同一側に位置する連結ブラケットの剛性が、ビード部10Cと反対側に位置する連結ブラケットの剛性より大きい構成であってもよい。
【0061】
上述の実施形態に係るタワーブラケット10にはビード部10Cが設けられていた。しかし、本明細書に開示はこれに限定されるものではない。すなわち、当該開示は、例えば、ビード部10Cが廃止されたタワーブラケット10であってもよい。
【0062】
上述の実施形態に係るシートバック3は、下端側を中心にシート前後方向に回転可能であった。しかし、本明細書に開示はこれに限定されるものではない。すなわち、当該開示は、例えば、タワーブラケット10に対して、第1連結ブラケット11及び第2連結ブラケット12が不動状態で連結固定された構成であってもよい。
【0063】
上述の実施形態における「剛性」とは、主に、第1連結ブラケット11及び第2連結ブラケット12それぞれの曲げ剛性を意図するものであった。しかし、本明細書に開示はこれに限定されるものではない。すなわち、当該開示における「剛性」とは、例えば、主に、第1連結ブラケット11及び第2連結ブラケット12それぞれの捻り剛性を意図するものであってもよい。
【0064】
上述の実施形態では、車両に本開示に係る乗物用シートを適用した。しかし、本明細書に開示された発明の適用はこれに限定されるものではなく、鉄道車両、船舶及び航空機等の乗物に用いられるシート、並びに劇場や家庭用等に用いられる据え置き型シートにも適用できる。
【0065】
さらに、本開示は、上述の実施形態に記載された発明の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されるものではない。したがって、上述した複数の実施形態のうち少なくとも2つの実施形態が組み合わせられた構成、又は上述の実施形態において、図示された構成要件もしくは符号を付して説明された構成要件のうちいずれかが廃止された構成でもよい。
【符号の説明】
【0066】
1… 乗物用シート 3… シートバック 3A… 第1シートバック
3B… 第2シートバック 5… バックフレーム
5A… 第1バックフレーム 5B… 第2バックフレーム
5C… 第1取付ブラケット 5D… 第2取付ブラケット
7… 第1ヒンジブラケット 8… 第2ヒンジブラケット
10… タワーブラケット 10A… 起立部 10B… 固定フランジ部
10C… ビード部 10D… 第1連結穴 10E、10F… 固定穴
11… 第1連結ブラケット 12… 第2連結ブラケット
13… ヒンジピン 14… 湾曲部