(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】テープカッター
(51)【国際特許分類】
B65H 35/07 20060101AFI20240227BHJP
B26D 1/02 20060101ALI20240227BHJP
B26B 3/00 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
B65H35/07 E
B26D1/02 F
B26B3/00 Z
(21)【出願番号】P 2019128558
(22)【出願日】2019-07-10
【審査請求日】2022-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】712004462
【氏名又は名称】ホーオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003694
【氏名又は名称】弁理士法人有我国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高山 圭一
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】実開昭51-081286(JP,U)
【文献】実開平06-039472(JP,U)
【文献】特開2018-162150(JP,A)
【文献】特開2016-047768(JP,A)
【文献】登録実用新案第3073039(JP,U)
【文献】特開2004-042258(JP,A)
【文献】実開平07-040655(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 35/00-35/10
B26D 1/02
B26B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻装状態のテープから引き出したテープ端部を切断するテープカッターであって、
前記テープの外周側に配置されるカッター本体と、
前記カッター本体に回動自在に支持されるとともに前記テープの内周側に配置され、前記テープの側面から前記カッター本体と協働して前記テープを挟む挟持部と、
前記挟持部を前記カッター本体側に回動するよう付勢する付勢部材と、
前記カッター本体の前記テープに対向する側に設けられ、前記テープに向かって突出するとともに該テープの略幅方向に延在する第1の凸部と、
前記カッター本体の前記テープに対向する側であって前記第1の凸部と前記テープの周方向に離間した位置に設けられ、前記テープに向かって突出するとともに該テープの略幅方向に延在する第2の凸部と、を備え、
前記第1の凸部は、前記テープの外周面に当接する第1の当接部と、該第1の当接部から前記テープに対し離間する方向に延びて前記テープ端部が接触可能な第1のテープ端部接触面と、を含み、
前記第2の凸部は、前記テープの外周面に当接する第2の当接部と、該第2の当接部から前記テープに対し離間する方向に延びて前記テープ端部が接触可能な第2のテープ端部接触面と、を含み、
前記第1のテープ端部接触面の先端に前記テープ端部を切断する鋸歯状の第1の刃部が設けられており、
前記第2のテープ端部接触面の先端に前記テープ端部を切断する鋸歯状の第2の刃部が設けられて
おり、
前記第1の刃部と前記第2の刃部とは刃の粗さが異なることを特徴とするテープカッター。
【請求項2】
前記第1の凸部の前記第1の当接部は、前記テープの外周面に略線接触状態で当接する第1の角部を含み、
前記第2の凸部の前記第2の当接部は、前記テープの外周面に略線接触状態で当接する第2の角部を含むことを特徴とする請求項
1に記載のテープカッター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻装状態の粘着テープ等のテープから引き出したテープ端部を切断するテープカッターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、第1の挟持部と第2の挟持部とにより、円環状に巻装された粘着テープの任意個所を挟持した状態から、任意の長さにテープ端部を切断することができるクリップ式のテープカッターが知られている(例えば、特許文献1等)。
【0003】
上記特許文献1に開示されているテープカッターは、第1の挟持部が備えるブレードストッパの円弧状の上面をテープの外周面に添接させて第1の挟持部と第2の挟持部とによりテープを挟持し、この状態からテープ端部をブレードストッパに取り付けられたカッター刃で切断できるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記特許文献1に開示されているテープカッターは、ブレードストッパに対しカッター刃の刃先がテープの外周面に近接するように設定されているため、切断後の巻装側のテープの先端がテープの外周面に付着しやすいものであった。このため、次の使用時においてテープ端部の先端を摘んでテープ端部を引き出す際、テープ端部の先端を摘まみにくく、使用勝手が良好ではないという問題があった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、切断後の巻装側のテープの先端を摘まみやすくなって容易にテープ端部を引き出すことができるようになり、使用勝手が向上するテープカッターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るテープカッターは、巻装状態のテープから引き出したテープ端部を切断するテープカッターであって、前記テープの外周側に配置されるカッター本体と、前記カッター本体に回動自在に支持されるとともに前記テープの内周側に配置され、前記テープの側面から前記カッター本体と協働して前記テープを挟む挟持部と、前記挟持部を前記カッター本体側に回動するよう付勢する付勢部材と、前記カッター本体の前記テープに対向する側に設けられ、前記テープに向かって突出するとともに該テープの略幅方向に延在する第1の凸部と、前記カッター本体の前記テープに対向する側であって前記第1の凸部と前記テープの周方向に離間した位置に設けられ、前記テープに向かって突出するとともに該テープの略幅方向に延在する第2の凸部と、を備え、前記第1の凸部は、前記テープの外周面に当接する第1の当接部と、該第1の当接部から前記テープに対し離間する方向に延びて前記テープ端部が接触可能な第1のテープ端部接触面と、を含み、前記第2の凸部は、前記テープの外周面に当接する第2の当接部と、該第2の当接部から前記テープに対し離間する方向に延びて前記テープ端部が接触可能な第2のテープ端部接触面と、を含み、前記第1のテープ端部接触面の先端に前記テープ端部を切断する鋸歯状の第1の刃部が設けられており、前記第2のテープ端部接触面の先端に前記テープ端部を切断する鋸歯状の第2の刃部が設けられており、前記第1の刃部と前記第2の刃部とは刃の粗さが異なることを特徴とする。
【0010】
この構成により、本発明に係るテープカッターは、カッター本体と挟持部とによりテープを挟持するにあたり、テープの一方側の側面から挟持して第1の刃部でテープ端部を切断する第1の使用状態と、テープの他方側の側面から挟持して第2の刃部でテープ端部を切断する第2の使用状態とのいずれかの使用状態で使用される。
【0011】
第1の使用状態では、引き出したテープ端部を第1のテープ端部接触面に接触させた状態で第1の刃部により切断すると、切断後の巻装側のテープにおいては第1のテープ端部接触面に接触していた先端がテープから離間してテープの外周面に付着しない摘まみ代となる。このため、次の使用時においてテープの先端を摘まみやすくなって容易にテープ端部を引き出すことができるようになり、使用勝手が向上する。
【0012】
また、第2の使用状態では、引き出したテープ端部を第2のテープ端部接触面に接触させた状態で第2の刃部により切断すると、切断後の巻装側のテープにおいては第2のテープ端部接触面に接触していた先端がテープから離間してテープの外周面に付着しない摘まみ代となる。このため、次の使用時においてテープの先端を摘まみやすくなって容易にテープ端部を引き出すことができるようになり、使用勝手が向上する。
【0013】
上記使用状態は、テープの種類(例えば、厚さ、硬さなどが異なる)や使用用途などに応じて選択され、例えば粗い目で切断してもよいときには刃の粗さが粗い方の刃部を使用し、細かい目で切断したいときには刃の粗さが細かい方の刃部を使用する。すなわち本発明のテープカッターによれば、テープの切断縁の粗さを二通り選択することができる。
【0014】
また、本発明に係るテープカッターは、前記第1の凸部の前記第1の当接部は、前記テープの外周面に略線接触状態で当接する第1の角部を含み、前記第2の凸部の前記第2の当接部は、前記テープの外周面に略線接触状態で当接する第2の角部を含むことを特徴とする。
【0015】
この構成により、本発明に係るテープカッターは、テープの周方向に離間する第1の角部と第2の角部とをテープの外周面に当接させることにより、テープに対する装着状態が二点支持状態となって安定し、その結果、テープを切断しやすくなる。また、第1の角部および第2の角部によりテープに筋押し加工が施された状態となり、このため、摘まみ代となる切断後のテープの先端はテープの外周面から離間した折り曲げ状態が保持されやすくなる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、切断後の巻装側のテープの先端を摘まみやすくなって容易にテープ端部を引き出すことができるようになり、使用勝手が向上するという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るテープカッターをテープにセットした状態を示す斜視図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係るテープカッターを手指で開いている状態を示す斜視図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係るテープカッターの平面図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係るテープカッターの底面図である。
【
図7】本発明の第1実施形態に係るテープカッターの第1の刃部でテープ端部を切断する際の作用を示す図であって、
図3のVII-VII矢視に対応する部分の断面図である。
【
図8】本発明の第1実施形態に係るテープカッターでテープ端部を切断した後のテープの断面図である。
【
図9】本発明の第2実施形態に係るテープカッターの平面図である。
【
図11】本発明の第2実施形態に係るテープカッターの底面図である。
【
図13】本発明の第2実施形態に係るテープカッターの第2の刃部でテープ端部を切断する際の作用を示す図であって、
図9のXIII-XIII矢視に対応する部分の断面図である。
【
図14】本発明の第2実施形態に係るテープカッターをテープにセットした状態を示す斜視図である。
【
図15】本発明の第2実施形態に係るテープカッターでテープ端部を切断した後のテープの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。
【0019】
(第1実施形態)
図1~
図7において符号T1は本発明の第1実施形態に係るクリップ式のテープカッターを示している。
図1に示すように、本実施形態に係るテープカッターT1は、巻芯13の外周に円環状に巻装された粘着テープ等のテープ10を、巻芯13とともに挟持した状態でテープ10にセットされ、テープ10から引き出したテープ端部10aを切断することができるように構成されている。本実施形態に係るテープ10は、巻装状態で内周面側に粘着層を有する粘着テープ等であって、その種類は限定されない。
【0020】
まず、テープカッターT1の構成について説明する。
【0021】
第1実施形態に係るテープカッターT1は、テープ10の外周側に配置されるカッター本体1と、カッター本体1に回動自在に支持されるとともにテープ10の内周側に配置され、テープ10の側面からカッター本体1と協働してテープ10を挟む挟持部2と、挟持部2をカッター本体1側に回動するよう付勢するコイルばね3と、カッター本体1のテープ10に対向する側に設けられ、テープ10に向かって突出するとともにテープ10の略幅方向に延在する第1の凸部11と、カッター本体1のテープ10に対向する側であって第1の凸部11とテープ10の周方向に離間した位置に設けられ、テープ10に向かって突出するとともにテープ10の略幅方向に延在する第2の凸部12とを備えている。
【0022】
カッター本体1は、長方形板状の部材である。また、挟持部2は、長方形板状の部材であって
図4に示すように厚さ方向にクランク状に曲がった形状を有する。カッター本体1および挟持部2は、例えば樹脂を成形することにより得られるが、材質は樹脂に限定されない。
【0023】
図4および
図6に示すように、カッター本体1は一端部に摘まみ部1aおよび一対のヒンジ片部1bを有し、挟持部2は一端部に摘まみ部2aおよび一対のヒンジ片部2bを有する。カッター本体1と挟持部2とは、ヒンジ片部1b、2bに挿通されたヒンジ軸4を介して回動自在に連結されている。
【0024】
コイルばね3は、例えばねじりコイルばね等であり、本発明の付勢部材を構成する。コイルばね3は、ヒンジ軸4に外装されて摘まみ部1a、2aの間に支持されている。なお、本発明の付勢部材はコイルばね3に限定されず、挟持部2をカッター本体1側に回動するように付勢するものであれば、いかなる形態のものであってよい。
【0025】
本実施形態に係るテープカッターT1は、
図2に示すように手指で摘まみ部1a、2aをコイルばね3の付勢力に抗して外側から挟むことにより、挟持部2をカッター本体1から離間するよう回動させることができるようになっている。そして、摘まみ部1a、2aを離すとコイルばね3の付勢力で挟持部2が相対的にカッター本体1側に回動して
図4に示すように閉じ、これによりカッター本体1と挟持部2とによりテープ10および巻芯13を挟持することができるようになっている。
【0026】
図3に示すように、カッター本体1は、長手方向に延びる一方側の縁部1cと、他方側の縁部1dとを有する。
【0027】
図7に示すように、カッター本体1の縁部1cは、上述した第1の凸部11を有する。また、カッター本体1の縁部1dは、上述した第2の凸部12を有する。
【0028】
図7に示すように、第1の凸部11は断面略台形状に形成されている。第1の凸部11は、その内側の縁にテープ10の外周面10bに当接する第1の当接部11Aを有する。そしてこの第1の当接部11Aは、テープ10の外周面10bに略線接触状態で当接する第1の角部11aを含んでいる。第1の角部11aは断面三角形状であり、その頂点をなす角度は、例えば60°~120°の範囲が好ましく、鋭角であるとより好ましい。
【0029】
さらに第1の凸部11は、第1の当接部11Aの第1の角部11aから、テープ10の外周面10bに対し離間しつつ、斜め外方に延びてテープ端部10aが接触可能な第1の上方傾斜底面11bを含んでいる。第1の上方傾斜底面11bは、本発明の第1のテープ端部接触面を構成する。
【0030】
第1の凸部11においては、第1の上方傾斜底面11bの先端に、テープ端部10aを切断する第1の刃部11Bが設けられている。第1の刃部11Bはカッター本体1と一体成形されており、例えばカッター本体1が樹脂製の場合、第1の刃部11Bも樹脂からなる。第1の刃部11Bはカッター本体1と一体成形ではなく、例えば薄い金属板で構成され、カッター本体1に接着等の手段で固定された形態であってもよい。
【0031】
図5に示すように、第1の刃部11Bは、具体的には、三角形状の多数の刃が鋸歯状に形成されたギザギザ刃からなる。
【0032】
図7に示すように、第2の凸部12は、その断面が先端に向かうにしたがって厚さがやや減少するような略矩形状であって、その先端に、テープ10の外周面10bに略沿った円弧面からなるテープ当接面12cを有する。
【0033】
次に、第1実施形態の使用方法例および作用について説明する。
【0034】
テープカッターT1の使用方法としては、まず、
図2に示したように摘まみ部1a、2aを挟んで挟持部2をカッター本体1から離間させて開く。そして
図1に示すように、切断するテープ端部10a側に第1の刃部11Bを向け、カッター本体1がテープ10の外周側に配置され、かつ挟持部2がテープ10の内周側に配置される状態となるように、テープ10の一方側の側面10cからテープ10および巻芯13を挟持してテープ10にセットする。
【0035】
このようにテープカッターT1をテープ10にセットする際は、第1の刃部11Bからテープ端部10aの先端縁までの長さが切断長さとなるようにする。
図7に示すように、テープ10にセットされたテープカッターT1においては、第1の凸部11側は第1の角部11aがテープ10の外周面10bに略線接触状態で当接し、第2の凸部12側はテープ当接面12cがテープ10の外周面10bに当接する。
【0036】
次いで、テープ10から剥がして引き出したテープ端部10aの根元部分(テープ10の外周面10bから立ち上がった部分)の表面を、
図7に示すようにカッター本体1の第1の上方傾斜底面11bに接触させ、この状態からテープ端部10aを上方に持ち上げ第1の刃部11Bに当てて引っ張ることにより、引きちぎるようにして第1の刃部11Bでテープ端部10aを切断する。
【0037】
第1実施形態に係るテープカッターT1によれば、引き出したテープ端部10aを第1の上方傾斜底面11bに接触させた状態で第1の刃部11Bにより切断する。これにより、
図8に示すように、切断後の巻装側のテープ10においては第1の上方傾斜底面11bに接触していた先端10eがテープ10から離間してテープ10の外周面10bに付着しない摘まみ代となる。このため、次の使用時においてテープ10の先端10eを摘まみやすくなって容易にテープ端部10aを引き出すことができるようになり、結果として使用勝手が向上する。
【0038】
また、第1実施形態に係るテープカッターT1によれば、第1の角部11aによりテープ10に筋押し加工が施された状態となり、このため、摘まみ代となる切断後のテープ10の先端10eはテープ10の外周面10bから離間した折り曲げ状態が保持されやすくなる。第1の角部11aによる筋押し加工は、
図7に示すように第1の上方傾斜底面11bの立ち上がり角度θ1が、例えば15°~60°程度、この範囲内であれば好ましくはなるべく大きな角度であると効果的に得ることができる。なお、この場合の立ち上がり角度θ1とは、テープ10の外周面10bに当接する第2の凸部12の内縁12dと第1の凸部11の第1の角部11aとを結ぶ線の延長線L1と、第1の上方傾斜底面11bとのなす角度をいう。
【0039】
(第2実施形態)
次に、
図9~
図15により本発明の第2実施形態を説明する。第2実施形態は上述した第1実施形態に対し、カッター本体1の第2の凸部12の形態が異なる点、およびその第2の凸部12に第2の刃部12Bが設けられている点で異なっており、これら以外の他の構成については第1実施形態と同一である。したがって以下の説明では主に第1実施形態との相違点を説明し、第1実施形態と同一構成については説明を省略する。
【0040】
図9~
図14の符号T2は、本発明の第2実施形態に係るテープカッターを示している。第2実施形態に係るテープカッターT2は、カッター本体1のテープ10に対向する側であって第1の凸部11とテープ10の周方向に離間した位置に設けられ、テープ10に向かって突出するとともにテープ10の略幅方向に延在する第2の凸部12を備えている。
【0041】
図13に示すように、第2実施形態での第2の凸部12は断面略台形状に形成されている。
図13では
図7とは逆に第2の凸部12を右側、第1の凸部11を左側に配した断面を示している
【0042】
第2実施形態での第2の凸部12は、その内側の縁にテープ10の外周面10bに当接する第2の当接部12Aを有する。そしてこの第2の当接部12Aは、テープ10の外周面10bに略線接触状態で当接する第2の角部12aを含んでいる。第2の角部12aは断面三角形状であり、その頂点をなす角度は上述した第1の角部11aと同様に、例えば60°~120°の範囲が好ましく、鋭角であるとより好ましい。
【0043】
さらに第2の凸部12は、第2の当接部12Aの第2の角部12aから、テープ10に対し離間しつつ、斜め外方に延びてテープ端部10aが接触可能な第2の上方傾斜底面12bを含んでいる。第2の上方傾斜底面12bは、本発明の第2のテープ端部接触面を構成する。
【0044】
第2の凸部12においては、第2の上方傾斜底面12bの先端に、テープ端部10aを切断する第2の刃部12Bが設けられている。第2の刃部12Bは第1の刃部11Bと同様にカッター本体1と一体に成形されている。なお、第2の刃部12Bも、カッター本体1と一体成形ではなく、例えば薄い金属板で構成され、カッター本体1に接着等の手段で固定された形態であってもよい。
【0045】
図11に示すように、第2の刃部12Bは、第1の刃部11Bと同様に三角形状の多数の刃が鋸歯状に形成されたギザギザ刃からなるが、第1の刃部11Bと粗さ、すなわち刃の高さと刃溝深さおよび刃のピッチが異なる。具体的には、第2の刃部12Bは第1の刃部11Bよりも細かい目のギザギザ刃であって、第1の刃部11Bよりも刃の高さおよび刃溝深さが小さく、刃のピッチが細かいものである。
【0046】
以下、第2実施形態の使用方法例および作用について説明する。
【0047】
第2実施形態に係るテープカッターT2は、カッター本体1と挟持部2とによりテープ10および巻芯13を挟持するにあたり、テープ10の一方側の側面10cから挟持して第1の刃部11Bでテープ端部10aを切断する第1の使用状態(
図1参照)と、
図14に示すようにテープ10の他方側の側面(側面10cの反対側の側面)から挟持して第2の刃部12Bでテープ端部10aを切断する第2の使用状態のいずれかの状態で使用される。
【0048】
第1の使用状態では、上述した第1実施形態と同様に、巻装状態のテープ10から引き出したテープ端部10aの根元部分の表面を第1の上方傾斜底面11bに接触させた状態で第1の刃部11Bにより切断する。これにより切断後の巻装側のテープ10においては、第1の上方傾斜底面11bに接触していたテープ10の先端10eが外周面10bから離間して外周面10bに付着しない摘まみ代となる(
図8参照)。
【0049】
また、
図14に示す第2の使用状態では、
図13に示すように巻装状態のテープ10から引き出したテープ端部10aの根元部分の表面を第2の上方傾斜底面12bに接触させた状態から、第2の刃部12Bにより切断する。これにより
図15に示すように、切断後の巻装側のテープ10においては、第2の上方傾斜底面12bに接触していたテープ10の先端10eが外周面10bから離間して外周面10bに付着しない摘まみ代となる。
【0050】
したがって第1および第2の使用状態のいずれの場合も、テープ端部10aを切断後、次の使用時においてテープ10の先端10eを摘まみやすくなって容易にテープ端部10aを引き出すことができるようになり、使用勝手が向上する。
【0051】
上述した第1および第2の使用状態は、テープの種類(例えば、厚さ、硬さなどが異なる)や使用用途などに応じて選択され、例えば粗い目で切断してもよいときには第1の刃部11Bで切断するようにし、細かい目で切断したいときには第2の刃部12Bで切断するように使用すればよい。例えば、第1の刃部11Bで切断するとテープ端部10aの切断縁は明確なギザギザカットとなり、第2の刃部12Bで切断するとテープ端部10aの切断縁は細かいギザギザが連なる略直線状となる。すなわち第2実施形態に係るテープカッターT2によれば、テープ端部10aの切断縁の粗さを二通り選択することができる。
【0052】
また、
図13に示すように、テープ10にセットされたテープカッターT2においては、第1の凸部11側は第1の角部11aがテープ10の外周面10bに略線接触状態で当接し、第2の凸部12側は第2の角部12aがテープ10の外周面10bに略線接触状態で当接する。このようにテープ10の周方向に離間する第1の角部11aと第2の角部12aとがテープ10の外周面10bに当接することにより、テープ10に対する装着状態が二点支持状態となって安定し、その結果、テープ端部10aを切断しやすくなる。
【0053】
また、第2実施形態に係るテープカッターT2によれば、第1の角部11aおよび第2の角部12aによりテープ10に筋押し加工が施された状態となり、このため、摘まみ代となる切断後のテープ10の先端10eはテープ10の外周面10bから離間した折り曲げ状態が保持されやすくなる。
【0054】
第2の角部12aによる筋押し加工は、
図13に示すように第2の上方傾斜底面12bの立ち上がり角度θ2が、上述した第1の上方傾斜底面11bと同様に、例えば15°~60°程度、この範囲内であれば好ましくはなるべく大きな角度であると効果的に得ることができる。ここでの立ち上がり角度θ2は、テープ10の外周面10bに当接する第1の凸部11の第1の角部11aと第2の凸部12の第2の角部12aとを結ぶ線の延長線L2と、第2の上方傾斜底面12bとのなす角度をいう。
【0055】
なお、本発明は多様な種類の粘着テープ等のテープに適用することが可能であるが、例えばマスキングテープ等の折れた状態が保持されやすい紙製の粘着テープ等に特に好適である。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、巻装状態の粘着テープ等のテープにおいて切断後の巻装側のテープの先端を摘まみやすくなって容易にテープ端部を引き出すことができるようになることから使用勝手が向上するテープカッターを提供することができるものであり、テープを挟持して使用するクリップ式のテープカッター全般に有用である。
【符号の説明】
【0057】
1 カッター本体
1a、2a 摘まみ部
1c、1d 縁部
2 挟持部
3 コイルばね(付勢部材)
10 テープ
10a テープ端部
10b テープの外周面
10c テープの側面
10e テープの先端
11 第1の凸部
11A 第1の当接部
11B 第1の刃部
11a 第1の角部
11b 第1の上方傾斜底面(第1のテープ端部接触面)
12 第2の凸部
12A 第2の当接部
12B 第2の刃部
12a 第2の角部
12b 第2の上方傾斜底面(第2のテープ端部接触面)
13 巻芯
T1、T2 テープカッター