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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】レチノール油組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/67 20060101AFI20240227BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20240227BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20240227BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20240227BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20240227BHJP
   A61K 31/07 20060101ALI20240227BHJP
   A61Q 17/00 20060101ALI20240227BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240227BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
A61K8/67
A61K8/31
A61K8/34
A61K8/37
A61K8/86
A61K31/07
A61Q17/00
A61Q19/00
A61Q19/08
【請求項の数】 5
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019163578
(22)【出願日】2019-09-09
(65)【公開番号】P2020040946
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2022-08-02
(31)【優先権主張番号】62/728,941
(32)【優先日】2018-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522236350
【氏名又は名称】ジョンソン アンド ジョンソン コンシューマー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ラミン・パルサ
(72)【発明者】
【氏名】アン-ソフィー・ブリリュー
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・チャン
(72)【発明者】
【氏名】スター・マリー・ウォルシュ
【審査官】伊藤 真明
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-165567(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0251273(US,A1)
【文献】特開2015-178437(JP,A)
【文献】特開2015-187101(JP,A)
【文献】特開平10-298023(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K 31/07
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)/KOSMET(STN)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)0.05~0.5重量%のレチノールと、(ii)プロピレングリコールステアリルエーテル、ジカプリリルカーボネート、プロピレングリコールイソステアレート、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、1~50重量%の極性皮膚軟化剤と、(iii)19~70重量%のイソヘキサデカンと、を含む組成物であって、前記極性皮膚軟化剤のイソヘキサデカンに対する重量比が1:2~1:1であり、前記組成物が無水である、組成物。
【請求項2】
前記極性皮膚軟化剤のイソヘキサデカンに対する前記重量比が1:2である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記極性皮膚軟化剤が、プロピレングリコールステアリルエーテルとジカプリリルカーボネートとの組み合わせである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
皮膚老化の徴候を低減するための、請求項1に記載の組成物の使用。
【請求項5】
ストレッチマーク又はセルライトの外観を低減するための、請求項1に記載の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、(i)約0.05~約0.5重量%のレチノールと、(ii)プロピレングリコールステアリルエーテル、ジカプリリルカーボネート、プロピレングリコールイソステアレート、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される極性皮膚軟化剤と、(iii)イソヘキサデカンと、を含む組成物であって、極性皮膚軟化剤のイソヘキサデカンに対する重量比が1:1以下であり、当該組成物が無水である、組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
レチノールは、化粧品における周知の活性成分である。レチノールは、過去20年間にわたって皮膚を治療するための非常に有効かつコスト効率の高い成分であることが証明されているが、新しい製品形態と共に、その活性及び送達の改善が常に望まれている。
【0003】
米国特許第9,387,160号は、制御された速度でのレチノールの皮膚への放出を示し、それによって、レチノール活性の増大及び刺激の減少の両方を提供する、レチノールを含有する水中油型組成物に関する。当該組成物は、非極性皮膚軟化剤及び極性皮膚軟化剤を含む。一実施形態では、当該組成物は、約0.05~約0.5重量%のレチノール、プロピレングリコールステアリルエーテル(PPGステアリルエーテル)、及びイソヘキサデカンを含み、プロピレングリコールステアリルエーテルのイソヘキサデカンに対する重量比は約75:25~約50:50である。
【0004】
同様に、JOHNSON&Johnson Consumer Inc.から市販されているNEUTROGENA(登録商標)Rapid Wrinkle Repair(登録商標)は、レチノール、プロピレングリコールステアリルエーテル、及びイソヘキサデカンを含有する水中油型組成物である。それは、肌のしわを目立たなくし、小じわを滑らかにし、肌のきめを改善し、肌の色調を明るくするために使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本出願人らは、今回、極性皮膚軟化剤及びイソヘキサデカンを用いてもレチノールを含有する無水又は油組成物を処方できることを見出した。しかしながら、驚くべきことに、無水組成物では、刺激は少ないが良好なレチノール活性を得るのに必要な極性皮膚軟化剤のイソヘキサデカンに対する重量比が、‘160特許に記載されているものなどの水中油型エマルションで必要なものとは逆である。具体的には、無水組成物では、高いレチノール活性-低い刺激レベルを得るのに必要な極性皮膚軟化剤のイソヘキサデカンに対する重量比は、1:1以下、例えば約1:2~約1:1未満である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、(i)約0.05~約0.5重量%のレチノールと、(ii)プロピレングリコールステアリルエーテル、ジカプリリルカーボネート、プロピレングリコールイソステアレート、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される極性皮膚軟化剤と、(iii)イソヘキサデカンと、を含む組成物であって、極性皮膚軟化剤のイソヘキサデカンに対する重量比が1:1以下であり、当該組成物が無水である、組成物を提供する。
【0007】
本発明は、更に、皮膚老化の徴候を低減するための当該組成物の使用を提供する。
【0008】
本発明はまた、ストレッチマーク又はセルライトの外観を低減するための当該組成物の使用も提供する。
【0009】
本発明はまた、座瘡又は酒さを治療するための当該組成物の使用も提供する。
【0010】
本発明は、更に、不均一な皮膚を治療するための当該組成物の使用を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
特段の記載がない限り、本明細書で用いられる全ての科学技術用語は、本発明が属する技術分野における当業者が一般に解釈するのと同じ意味を有する。本明細書において言及する刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は全て、参照により組み込まれる。
【0012】
本明細書で使用する場合、「局所適用」又は「局所的に適用」とは、例えば、手、又は拭き取り用品、ローラ、若しくはスプレーなどのアプリケータを使用することによって、外皮、頭皮、又は毛髪に直接塗るか又は広げることを意味する。
【0013】
本発明で使用する場合、「化粧用」とは、具体的には組織又は皮膚の外観に関する場合、身体的に美しい外観を保つ、回復させる、与える、装う、若しくは高める、又は美しさ又は若々しさが増すように見える美化物質、又は製剤を指す。
【0014】
本発明で使用する場合、「化粧用としての有効量」とは、皮膚老化の1つ以上の兆候を処置するのに十分であるが、重度の副作用を回避するために十分に低い、生理学的に活性な化合物又は組成物の量を意味する。化合物又は組成物の化粧用としての有効量は、処置する特定の状態、最終使用者の年齢及び健康状態、処置/防止する状態の重症度、処置の期間、他の処置の性質、使用する特定の化合物又は製品/組成物、利用する特定の化粧用として許容可能なキャリア、及び同様の要因によって変化する。
【0015】
本明細書で使用する場合、「化粧用として許容可能な」とは、この用語が説明する成分が、過度の毒性、不適応性、不安定性、刺激、アレルギー性反応などなく、組織(例えば、皮膚又は毛髪)と接触して使用するのに好適であることを意味する。
【0016】
本発明で使用する場合、「化粧用として許容可能な活性剤」とは、皮膚又は毛髪への、美容的又は治療的な効果を有する化合物(合成又は天然)である。
【0017】
本明細書で使用する場合、「治療する」は、ある状態又は障害の存在又は兆候を軽減し、減らし、防ぎ、改善し、又はなくすことを指す。
【0018】
本発明は、皮膚老化の徴候を治療するのに適している。本発明で使用する場合、「皮膚老化の徴候」とは、小じわ及びしわの存在、弾性の喪失、不均一な皮膚、シミを含む。特に好ましい実施形態では、老化の兆候は、小じわ及びしわの存在、並びに/又は弾性の喪失である。
【0019】
本発明で使用する場合、「しわ」は、細かい小じわ、細かいしわ、又は粗いしわを含む。しわの例としては、目の周囲の細かいしわ(例えば、「カラスの足跡」)、額及び頬のしわ、眉間のしわ、口の周囲の豊齢線が挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
本発明で使用する場合、「弾性の喪失」とは、たるみ、弛緩、及び緩んだ組織を含むが、これらに限定されない皮膚又は組織の弾性、又は構造的完全性の喪失を含む。弾性、又は組織の構造的完全性の喪失は、疾患、老化、ホルモン変化、機械的外傷、環境損傷、又は化粧料若しくは医薬品などの製品の組織への適用の結果を含むが、これらに限定されない、多数の要因の結果であり得る。
【0021】
本発明で使用する場合、「不均一な皮膚」とは、炎症後色素沈着過度などの色素沈着過度に分類され得る、びまん性又は斑点模様の色素沈着に関連する皮膚の状態を意味する。
【0022】
本発明で使用する場合、「シミ」とは、赤み又は紅斑に関連する皮膚の状態を意味する。本明細書で使用する場合、「ストレッチマーク」とは、腹部、乳房、上腕、臀部、及び大腿に出現することの多い、ピンク色の、赤みがかった、又は紫がかった線条を意味する。
【0023】
本明細書で使用する場合、「セルライト」とは、捕捉され、皮膚に陥凹を生じさせる脂肪のポケットを意味する。当該陥凹は不規則かつ斑状であり、オレンジの皮及びチーズの表面のようであると識別されている。
【0024】
本発明は、座瘡の治療にも適している。本明細書で使用する場合、「座瘡」とは、皮脂腺及び毛包でのホルモン及び他の物質の作用から生じ、典型的には、詰まった毛穴及び皮膚上の炎症性又は非炎症性病変の形成をもたらす不調を指す。特に、これは、染み、病変、又は吹き出物、発芽前吹き出物(pre-emergent pimples)、ブラックヘッド、及び/又はホワイトヘッドに関する。本明細書で使用する場合、「発芽前吹き出物」とは、皮膚の表面上の裸眼で視覚的に明白ではない(例えば、病変として)炎症性小胞である。
【0025】
本発明はまた、酒さの治療にも適している。本明細書で使用する場合、「酒さ」とは、丘疹、膿疱、又は小結節を伴う、又はこれらを伴わない持続性紅斑を有する皮膚を意味する。
【0026】
特に指示がない限り、百分率又は濃度は、重量百分率又は重量濃度(即ち、%(W/W))を指す。特に明記しない限り、全ての範囲は、両端点を包含し、例えば、「4~9」は、両端点の4と9を含む。
【0027】
適用可能な場合、化学物質は、International Nomenclature of Cosmetic Ingredient(INCI)の名称によって明記される。供給業者及び商標名を含め、更なる情報は、International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook、第16版(Personal Care Products Council,Washington DC)の中の適切なINCIモノグラフ中に、又はPersonal Care Products CouncilのOn-Line INFOBASE、http://online.personalcarecouncil.org/jsp/Home.jspを介して見出すことができる。
【0028】
レチノール
当該組成物は、レチノールを含む。レチノールは、式:
【0029】
【化1】
(式中、RはCHOHである)
を有する。
【0030】
他の実施形態では、レチノールに代えて又はレチノールに加えて、レチナール、レチノイン酸、酢酸レチニル、パルミチン酸レチニル、アミン誘導体などを含む他のレチノイドを使用してもよい。
【0031】
当該組成物は、化粧用に有効な量のレチノールを含有し得る。当該組成物は、好ましくは、約0.001%~約2%のレチノール、より好ましくは、約0.01%~約1%のレチノールを含有する。
【0032】
一実施形態では、当該組成物は、約0.05~約0.5重量%のレチノールを含む。
【0033】
レチノールは、例えばBASFから入手することができる。
【0034】
極性皮膚軟化剤
当該組成物はまた、プロピレングリコールステアリルエーテル、ジカプリリルカーボネート、プロピレングリコールイソステアレート、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される極性皮膚軟化剤を含有する。
【0035】
一実施形態では、当該極性皮膚軟化剤は、プロピレングリコールステアリルエーテルとジカプリリルカーボネートとの組み合わせである。
【0036】
プロピレングリコールステアリルは、ether Croda及びEvonikから商業的に入手することができる。
【0037】
ジカプリリルカーボネートはether BASFから商業的に入手することができる。
【0038】
一実施形態では、当該組成物は、約1~約50重量パーセントの極性皮膚軟化剤、好ましくは、約15~約25重量パーセントの極性皮膚軟化剤を含有する。
【0039】
イソヘキサデカン
当該組成物は、イソヘキサデカンも含有する。
【0040】
一実施形態では、当該組成物は、約19~約70重量パーセントのイソヘキサデカン、好ましくは、約30~約60重量パーセントのイソヘキサデカンを含有する。
【0041】
イソヘキサデカンは、例えば、Croda又はPresperseから商業的に入手することができる。
【0042】
極性皮膚軟化剤のイソヘキサデカンに対する重量比
当該組成物中のレチノールの量にかかわらず、極性皮膚軟化剤のイソヘキサデカンに対する重量比は、1:1以下、例えば約1:2~約1:1未満である。
【0043】
一実施形態では、当該極性皮膚軟化剤のイソヘキサデカンに対する重量比は、約1:2~約1:1である。
【0044】
一実施形態では、当該極性皮膚軟化剤のイソヘキサデカンに対する重量比は、約1:2である。
【0045】
特定の実施形態では、当該極性皮膚軟化剤は、プロピレングリコールステアリルエーテルとジカプリリルカーボネートとの組み合わせであり、当該極性皮膚軟化剤のイソヘキサデカンに対する重量比は約1:2である。
【0046】
油組成物
当該組成物は油組成物である。すなわち、当該組成物は無水である。
【0047】
本明細書で使用する場合、「油」又は「無水」組成物は、当該組成物が約0.25重量%未満の水を含むことを意味する。好ましい実施形態では、当該組成物は、約0.1%未満の水を含む。更に好ましい実施形態では、当該組成物は、完全に水を含まない。特定の実施形態では、これら水の最高濃度は、「遊離」水、すなわち、(例えば、水和水として結晶中で)別の化合物に化学的に結合してはいない水のみを指す場合もある。
【0048】
したがって、当該組成物は、無水化粧料組成物において典型的に使用される任意の疎水性成分を含有していてよい。多種多様な疎水性成分を、その技術分野で確立された濃度で使用することができる。当該疎水性成分は、動物、植物、又は石油由来であってよく、天然又は合成であってよい。
【0049】
好適な疎水性成分の非限定的な例としては、以下が挙げられる。
【0050】
(1)液体ワセリンとしても知られている鉱油は、石油から得られる液体炭化水素の混合物である。
【0051】
(2)石油ゼリーとしても知られているワセリンは、非直鎖固体炭化水素及び高沸点液体炭化水素のコロイド系であり、当該液体炭化水素の大部分はミセル内に保持されている。
【0052】
(3)約7~約40個の炭素原子を有する直鎖及び分枝鎖炭化水素。非限定的な例としては、ドデカン、イソドデカン、スクアラン、コレステロール、水素化ポリイソブチレン、ドコサン(すなわち、C22炭化水素)、及びヘキサデカンが挙げられる。C7~C40分枝状炭化水素であるC7~C40イソパラフィンも有用である。
【0053】
(4)C1~C30カルボン酸と、直鎖及び分枝鎖材料並びに芳香族誘導体を含むC2~C30ジカルボン酸(モノ-及びポリ-カルボン酸は、直鎖、分枝鎖、及びアリールカルボン酸を含む)とのC1~C30アルコールエステル。非限定的な例としては、セバシン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸メチル、プロピオン酸ミリスチル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、ネオペンタン酸イソデシル、マレイン酸ジ-2-エチルヘキシル、パルミチン酸セチル、ミリスチン酸ミリスチル、ステアリン酸ステアリル、ステアリン酸イソプロピル、ステアリン酸メチル、ステアリン酸セチル、ベヘン酸ベヘニル、マレイン酸ジオクチル、セバシン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソプロピル、オクタン酸セチル、ジリノール酸ジイソプロピルが挙げられる。
【0054】
(5)C1~C30カルボン酸のモノ-、ジ-、及びトリ-グリセリド、例えば、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、PEG-6カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、PEG-8カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド。
【0055】
(6)C1~C30カルボン酸のアルキレングリコールエステル、例えば、エチレングリコールモノ-及びジ-エステル、並びにC1~C30カルボン酸のプロピレングリコールモノ-及びジ-エステル、例えば、エチレングリコールジステアレート。
【0056】
(7)前述の材料のプロポキシル化及びエトキシル化誘導体。
【0057】
(8)糖及び関連材料のC1~C30モノ-及びポリ-エステル。これらエステルは、糖又はポリオール部分及び1つ以上のカルボン酸部分から誘導される。構成成分の酸及び糖に応じて、これらエステルは、室温で液体又は固体の形態のいずれかで存在し得る。液体エステルの例としては、グルコーステトラオレイン酸エステル、大豆油脂肪酸のグルコーステトラエステル(不飽和)、混合大豆油脂肪酸のマンノーステトラエステル、オレイン酸のガラクトーステトラエステル、リノール酸のアラビノーステトラエステル、キシローステトラリノール酸エステル、ガラクトースペンタオレイン酸エステル、ソルビトールテトラオレイン酸エステル、不飽和大豆油脂肪酸のソルビトールヘキサエステル、キシリトールペンタオレイン酸エステル、スクローステトラオレイン酸エステル、スクロースペンタオレイン酸エステル、スクロースヘキサオレイン酸エステル、スクロースヘプタオレイン酸エステル、スクロースオクタオレイン酸エステル、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0058】
(9)オルガノポリシロキサン油。当該オルガノポリシロキサン油は、揮発性、不揮発性、又は揮発性及び不揮発性シリコーンの混合物であってよい。好適なオルガノポリシロキサン油の非限定的な例としては、ポリアルキルシロキサン、環状ポリアルキルシロキサン、及びポリアルキルアリールシロキサンが挙げられる。
【0059】
ポリアルキルシロキサンとしては、25℃で約0.5~約1,000,000センチストークスの粘度を有するポリアルキルシロキサンが挙げられる。市販されているポリアルキルシロキサンとしては、ジメチコーンとしても知られているポリジメチルシロキサンが挙げられ、その例としては、General Electric Companyによって販売されているVICASILシリーズ及びDow Corning Corporationによって販売されているDOW CORNING 200シリーズが挙げられる。好適なポリジメチルシロキサンの具体例としては、DOW CORNING 200 fluid、DOW CORNING 225、セチルジメチコーン、ラウリルジメチコーン、並びにDOW CORNING 244、DOW CORNING 344、DOW CORNING 245、DOW CORNING 345 DOW CORNING 593 fluid、DOW CORNING 1401、1402、及び1403 fluidなどの環状ポリアルキルシロキサンが挙げられる。
【0060】
(10)植物油及び硬化植物油。植物油及び硬化植物油の例としては、ベニバナ油、ヒマシ油、ココナッツ油、綿実油、メンハーデン油、パーム核油、パーム油、ピーナッツ油、大豆油、菜種油、亜麻仁油、米糠油、マツ油、ゴマ油、ヒマワリ種子油、硬化ベニバナ油、硬化ヒマシ油、硬化ココナッツ油、硬化綿実油、硬化メンハーデン油、硬化パーム核油、硬化パーム油、硬化ピーナッツ油、硬化大豆油、硬化菜種油、硬化亜麻仁油、硬化米糠油、硬化ゴマ油、硬化ヒマワリ種子油、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0061】
(11)動物性油脂、例えば、ラノリン及びその誘導体、タラ肝油。
【0062】
(12)また、ポリプロピレングリコールのC4~C20アルキルエーテル、ポリプロピレングリコールのC1~C20カルボン酸エステル、及びジ-C8~C30アルキルエーテルも有用である。これら材料の好適な例としては、PPG-14ブチルエーテル、ジオクチルエーテル、ドデシルオクチルエーテル、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0063】
当該組成物は、乳化剤、真珠光沢剤又は乳白剤、増粘剤、皮膚軟化剤、コンディショナー、保湿剤、キレート剤、剥離剤、及び当該組成物の外観、感触、又は芳香を増強する添加剤、例えば、着色剤、芳香剤を含む、当技術分野において公知の様々な他の材料を含んでいてもよい。
【0064】
当該組成物は、無水組成物に好適である限り、例えば、座瘡防止剤、てかり制御剤(shine control agents)、抗菌剤、抗炎症剤、抗真菌剤、抗寄生虫剤、外用鎮痛剤、日焼け止め剤、光防護剤、酸化防止剤、角質溶解剤、界面活性剤、保湿剤、栄養素、ビタミン、エネルギー増強剤、制汗剤、皮膚収斂剤、体臭防止剤、安定剤、たこ防止剤(anti-callous agents)、及びヘア及び/又はスキンコンディショニングのための剤などの他の化粧用として許容可能な活性剤を更に含んでいてもよい。
【0065】
他の化粧用活性剤の量は、当該組成物の約0.001重量%~約20重量%、例えば、当該組成物の約0.01重量%~約5重量%などの当該組成物の約0.005重量%~約10重量%の範囲であってよい。
【0066】
当該組成物は、有機及び/又はシリコーン溶媒、油、脂質、及びワックスを含有する軟膏の形態であってもよい。軟膏は、動物又は植物油の単一塩基又は半固体の炭化水素を含有してもよい。軟膏は、約2%~約10%の皮膚軟化剤(複数可)と、約0.1%~約2%の増粘剤(複数可)とを含有し得る。増粘剤の例としては、ICI Handbookのpp.2979-84に記載されるものが挙げられるが、これに限定されない。
【0067】
以下の実施例は、特許請求される発明を更に説明する。
【実施例1】
【0068】
異なる量のレチノール、PPG15ステアリルエーテル、ジカプリリルカーボネート、及びイソヘキサデカンを含有する一連の油製剤を作製し、レチノール活性及び刺激について試験した。
【0069】
当該製剤は無水であり、0.1重量%、0.3重量%、又は0.5重量%のレチノールを含有しており、これをポリソルベート20との50/50重量%混合物の形態で使用した。PPG15ステアリルエーテル、ジカプリリルカーボネート、及びイソヘキサデカン、並びに表2に示す他の成分を含有する油製剤にレチノールを溶解させた。各製剤中のPPG15ステアリルエーテルの量は18%重量であったが、ジカプリリルカーボネートの量は変動した。
【0070】
【表1】
【0071】
表3は、各製剤中のレチノール、極性皮膚軟化剤、イソヘキサデカンの量、及び極性皮膚軟化剤のイソヘキサデカンに対する重量比を示す。
【0072】
【表2】
【0073】
各製剤のレチノール活性及びレチノールの刺激効果を、それぞれ、細胞レチノイン酸結合タンパク質2(CRABP2)遺伝子発現及びインターロイキン8(IL8)遺伝子発現のレベルを評価することによってインビトロで測定した。以下のようにヒト皮膚外植片で遺伝子発現試験を実施した。
【0074】
製剤A~Iを外植片に局所的に適用し、48時間インキュベートした。未処理組織をベースライン対照として使用した。各製剤について、CRABP2及びIL8遺伝子発現における変化を定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)アッセイによって測定した。48時間のインキュベーション後、製造元の指示に従って、線維性組織のためのQiagen RNeasy Miniキット(Valencia,CA,USA)を使用して、各皮膚外植片組織から全RNAを単離した。NANODROP 2000分光光度計(Thermo Fisher Scientific(Hudson,NH,USA))を使用してRNA濃度を評価した。
【0075】
高容量cDNAキット(Life Technologies Corporation(Grand Island,NY,USA))を使用して逆転写を行った。
【0076】
qPCRを使用して、CRABP2、IL8、及びヒトTATA結合タンパク質(TATA-binding protein、TBP)ハウスキーピング遺伝子の発現についてスクリーニングした。CRABP2、IL8、及びTBPのためのTaqMan(登録商標)遺伝子発現アッセイ、並びにTaqMan(登録商標)遺伝子発現マスターミックスは、Life Technologies Corporation(Grand Island,NY,USA)から購入した。
【0077】
qPCRは、ABI 7500 Fast Real-Time PCRシステム(Life Technologies Corporation(Grand Island,NY,USA))を使用して実施した。個々の組織外植片由来のリボ核酸(RNA)によって各反応を実施し、TBPに対して正規化した。未処理対照と比較して、倍数変化を計算した。
【0078】
まず、対応する未処理対照の結果によって結果を正規化した。次いで、対照について正規化された結果を、陽性対照としてNEUTROGENA(登録商標)Rapid Wrinkle Repair(登録商標)で外植片を処理することによって得られた結果によって更に正規化した。NEUTROGENA(登録商標)Rapid Wrinkle Repair(登録商標)の成分を表4に示す。
【0079】
【表3】
【0080】
遺伝子発現結果を表5に示し、これは、正規化されたCRABP2値の正規化されたIL8値に対する比を含む。
【0081】
【表4】
【0082】
表5の結果は、レチノールの用量にかかわらず、1:2(すなわち、製剤B、E、及びH)の皮膚軟化剤比を有する油処方が、最も高い正規化されたCRABP2/IL8比を示し、これは、最良の活性対刺激比を示す。
【0083】
加えて、0.3重量%のレチノール用量では、1:1の皮膚軟化剤比(製剤F)が2番目に高い活性対刺激比を示したが、一方、2:1の皮膚軟化剤比(製剤G)と合わせて0.3重量%のレチノール用量は、より低い活性を示した。
【実施例2】
【0084】
表6に示す成分を有する本発明に係る組成物を調製した。
【0085】
【表5】
【0086】
以下のように組成物を調製した。ジカプリリルカーボネートを混合容器に添加し、混合を開始した。PPG-15ステアリルエーテル、イソヘキサデカン、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、BHT、酢酸トコフェリル、クエン酸トリエチル、ビサボロール、及びレチノールを混合容器に1つずつ添加して、適切な混合を可能にし、均質になるまで混合した。
【0087】
〔実施の態様〕
(1) (i)約0.05~約0.5重量%のレチノールと、(ii)プロピレングリコールステアリルエーテル、ジカプリリルカーボネート、プロピレングリコールイソステアレート、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される極性皮膚軟化剤と、(iii)イソヘキサデカンと、を含む組成物であって、極性皮膚軟化剤のイソヘキサデカンに対する重量比が1:1以下であり、前記組成物が無水である、組成物。
(2) 前記極性皮膚軟化剤のイソヘキサデカンに対する重量比が約1:2である、実施態様1に記載の組成物。
(3) 前記極性皮膚軟化剤が、プロピレングリコールステアリルエーテルとジカプリリルカーボネートとの組み合わせである、実施態様1に記載の組成物。
(4) 皮膚老化の徴候を低減するための、実施態様1に記載の組成物の使用。
(5) ストレッチマーク又はセルライトの外観を低減するための、実施態様1に記載の組成物の使用。
【0088】
(6) 座瘡又は酒さを治療するための、実施態様1に記載の組成物の使用。
(7) 不均一な皮膚を処置するための、実施態様1に記載の組成物の使用。