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特許7443008蒸気タービンプラント及び制御装置並びに蒸気タービンプラントの水質管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】蒸気タービンプラント及び制御装置並びに蒸気タービンプラントの水質管理方法
(51)【国際特許分類】
   F01D 25/00 20060101AFI20240227BHJP
   F01K 9/00 20060101ALI20240227BHJP
   F22D 11/00 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
F01D25/00 Q
F01K9/00 G
F22D11/00 G
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019174104
(22)【出願日】2019-09-25
(65)【公開番号】P2021050660
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-06-01
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】濱崎 彰弘
(72)【発明者】
【氏名】木戸 遥
(72)【発明者】
【氏名】中本 充
(72)【発明者】
【氏名】椿▲崎▼ 仙市
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-061474(JP,A)
【文献】特開2007-131913(JP,A)
【文献】特開2002-180804(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103884007(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01K 9/00
C02F 1/66
F01D 25/00
F22B 37/56
F22D 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気タービンプラントであって、
蒸気発生器への給水にpH調整剤を供給するように構成された薬剤供給部と、
前記薬剤供給部による前記給水への前記pH調整剤の供給量を調節するための調節部と、
炭素鋼で形成されて前記給水が通過する配管又は機器を含み、前記蒸気タービンプラントの負荷運転条件において内部温度が少なくとも部分的に120℃以上180℃以下の範囲内となるように構成された少なくとも1つの炭素鋼コンポーネントと、を備え、
前記調節部は、前記負荷運転条件において、前記少なくとも1つの前記炭素鋼コンポーネントの各々の内部の前記給水のpHが9.8以上となるように、前記pH調整剤の供給量を調節するように構成され、
前記pH調整剤は、アンモニアを含み、
前記蒸気発生器としてのボイラで発生させた蒸気を一時的に収容する1以上の蒸気ドラムを備え、
前記1以上の蒸気ドラムは、
復水器からの給水が供給され、前記1以上の蒸気ドラムのうち内部圧力が最も低い第1ドラムと、
前記復水器からの給水が前記第1ドラムを経由せずに供給され、前記第1ドラムよりも内部圧力が高い第2ドラムと、を含み、
前記少なくとも1つの炭素鋼コンポーネントは、前記第1ドラムを含み、
前記調節部は、前記負荷運転条件において、前記第1ドラムに供給される前記給水のpHが10.1以上となるように、前記pH調整剤の供給量を調節するように構成され
前記復水器と前記第1ドラムの間に設けられ、前記復水器から前記第1ドラムに供給される前記給水を加熱するように構成された節炭器を備え、
前記復水器からの給水が前記節炭器を経由せずに前記第2ドラムに供給されるように構成された
蒸気タービンプラント。
【請求項2】
前記pH調整剤は、揮発性物質を含む
請求項1に記載の蒸気タービンプラント。
【請求項3】
前記調節部は、前記蒸気発生器に供給される前記給水中の前記pH調整剤の濃度又は該濃度を示す指標に基づいて、前記給水への前記pH調整剤の供給量を決定するように構成された
請求項1又は2に記載の蒸気タービンプラント。
【請求項4】
蒸気タービンプラントを制御するための制御装置であって、
前記蒸気タービンプラントは、
蒸気発生器への給水にpH調整剤を供給するように構成された薬剤供給部と、
炭素鋼で形成されて前記給水が通過する配管又は機器を含み、前記蒸気タービンプラントの負荷運転条件において、内部温度が少なくとも部分的に120℃以上180℃以下の範囲内となるように構成された少なくとも1つの炭素鋼コンポーネントと、を含み、
前記負荷運転条件において、前記少なくとも1つの前記炭素鋼コンポーネントの各々の内部の前記給水のpHが9.8以上となるように、前記薬剤供給部による前記給水への前記pH調整剤の供給量を調節するように構成され、
前記pH調整剤は、アンモニアを含み、
前記蒸気タービンプラントは、前記蒸気発生器としてのボイラで発生させた蒸気を一時的に収容する1以上の蒸気ドラムを備え、
前記1以上の蒸気ドラムは、
復水器からの給水が供給され、前記1以上の蒸気ドラムのうち内部圧力が最も低い第1ドラムと、
前記復水器からの給水が前記第1ドラムを経由せずに供給され、前記第1ドラムよりも内部圧力が高い第2ドラムと、を含み、
前記少なくとも1つの炭素鋼コンポーネントは、前記第1ドラムを含み、
前記蒸気タービンプラントは、前記復水器と前記第1ドラムの間に設けられ、前記復水器から前記第1ドラムに供給される前記給水を加熱するように構成された節炭器を備えるとともに、前記復水器からの給水が前記節炭器を経由せずに前記第2ドラムに供給されるように構成され、
前記負荷運転条件において、前記第1ドラムに供給される前記給水のpHが10.1以上となるように、前記pH調整剤の供給量を調節するように構成された
制御装置。
【請求項5】
蒸気タービンプラントの水質管理方法であって、
前記蒸気タービンプラントは、
炭素鋼で形成されて給水が通過する配管又は機器を含み、前記蒸気タービンプラントの負荷運転条件において、内部温度が少なくとも部分的に120℃以上180℃以下の範囲内となるように構成された少なくとも1つの炭素鋼コンポーネント
を含み、
蒸気発生器への前記給水にpH調整剤を供給するステップと、
前記負荷運転条件において、前記少なくとも1つの前記炭素鋼コンポーネントの各々の内部の前記給水のpHが9.8以上となるように、前記pH調整剤の供給量を調節するステップを備え、
前記pH調整剤は、アンモニアを含み、
前記蒸気タービンプラントは、前記蒸気発生器としてのボイラで発生させた蒸気を一時的に収容する1以上の蒸気ドラムを備え、
前記1以上の蒸気ドラムは、
復水器からの給水が供給され、前記1以上の蒸気ドラムのうち内部圧力が最も低い第1ドラムと、
前記復水器からの給水が前記第1ドラムを経由せずに供給され、前記第1ドラムよりも内部圧力が高い第2ドラムと、を含み、
前記蒸気タービンプラントは、前記復水器と前記第1ドラムの間に設けられ、前記復水器から前記第1ドラムに供給される前記給水を加熱するように構成された節炭器を備えるとともに、前記復水器からの給水が前記節炭器を経由せずに前記第2ドラムに供給されるように構成され、
前記少なくとも1つの炭素鋼コンポーネントは、前記第1ドラムを含み、
前記調節するステップでは、前記負荷運転条件において、前記第1ドラムに供給される前記給水のpHが10.1以上となるように、前記pH調整剤の供給量を調節する
蒸気タービンプラントの水質管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蒸気タービンプラント及び制御装置並びに蒸気タービンプラントの水質管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気タービンプラントでは、給水と接触する機器にて腐食が生じることがあり、このような腐食を抑制するための対策が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、蒸気タービンプラントの蒸気ドラム内の給水のpHを、腐食が生じにくい適正範囲内に維持するため、給水に対しpH調整剤を添加することが記載されている。特許文献1では、pH調整剤としてアンモニアを用い、蒸気ドラム内でのアンモニアの気相と液相での分配率(気液分配係数)に基づき、蒸気ドラム内の給水中のアンモニア濃度が所定範囲内となり、蒸気ドラム内の給水のpHが適正範囲内となるように、蒸気ドラムに供給する給水のアンモニア濃度を調節するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4233746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、蒸気タービンプラントにおいて、120℃以上180℃以下の温度範囲で給水と接触する配管又は機器では、流れ加速腐食(Flow Accelerated Corrosion;FAC)が発生することがあり、特に、比較的安価な炭素鋼で形成された配管又は機器の場合、流れ加速腐食による減肉速度が大きい。そこで、流れ加速腐食が起こりやすい環境に曝される配管や機器での減肉を低減するため、これらの機器の材料として、流れ加速腐食による減肉速度が小さい材料(例えばクロムモリブデン鋼等)を採用するといった対策が取られることがある。しかし、耐食性の高い材料は比較的高価であるため、このような材料を多用した場合、プラント製造コストが高くなってしまう。
【0006】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、プラント製造コストの増大を抑制しながら、流れ加速腐食による減肉を低減可能な蒸気タービンプラント及び制御装置並びに蒸気タービンプラントの水質管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の少なくとも一実施形態に係る蒸気タービンプラントは、
蒸気発生器への給水にpH調整剤を供給するように構成された薬剤供給部と、
前記薬剤供給部による前記給水への前記pH調整剤の供給量を調節するための調節部と、
炭素鋼で形成されて前記給水が通過する配管又は機器を含み、前記蒸気タービンプラントの負荷運転条件において、内部温度が少なくとも部分的に120℃以上180℃以下の範囲内となるように構成された少なくとも1つの炭素鋼コンポーネントと、を備え、
前記調節部は、前記負荷運転条件において、前記少なくとも1つの前記炭素鋼コンポーネントの各々の内部の前記給水のpHが9.8以上となるように、前記pH調整剤の供給量を調節するように構成される。
【0008】
また、本発明の少なくとも一実施形態に係る制御装置は、
蒸気発生器への給水にpH調整剤を供給するように構成された薬剤供給部と、
炭素鋼で形成されて前記給水が通過する配管又は機器を含み、前記蒸気タービンプラントの負荷運転条件において、内部温度が少なくとも部分的に120℃以上180℃以下の範囲内となるように構成された少なくとも1つの炭素鋼コンポーネントと、を含む蒸気タービンプラントの制御装置であって、
前記負荷運転条件において、前記少なくとも1つの前記炭素鋼コンポーネントの各々の内部の前記給水のpHが9.8以上となるように、前記薬剤供給部による前記給水への前記pH調整剤の供給量を調節するように構成される。
【0009】
また、本発明の少なくとも一実施形態に係る蒸気タービンプラントの水質管理方法は、
炭素鋼で形成されて給水が通過する配管又は機器を含み、前記蒸気タービンプラントの負荷運転条件において、内部温度が少なくとも部分的に120℃以上180℃以下の範囲内となるように構成された少なくとも1つの炭素鋼コンポーネント
を含む蒸気タービンプラントの水質管理方法であって、
蒸気発生器への前記給水にpH調整剤を供給するステップと、
前記負荷運転条件において、前記少なくとも1つの前記炭素鋼コンポーネントの各々の内部の前記給水のpHが9.8以上となるように、前記pH調整剤の供給量を調節するステップを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、プラント製造コストの増大を抑制しながら、流れ加速腐食による減肉を低減可能な蒸気タービンプラント及び制御装置並びに蒸気タービンプラントの水質管理方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態に係る蒸気タービンプラントの概略構成図である。
図2】一実施形態に係る蒸気タービンプラントの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0013】
(蒸気タービンプラントの構成)
図1図2は、それぞれ、一実施形態に係る蒸気タービンプラントの概略構成図である。図1図2に示すように、蒸気タービンプラント1は、ガスタービン(不図示)からの排ガスが供給されるように構成された排熱回収ボイラ(Heat Recovery Steam Generator)2(蒸気発生器、ボイラ)と、排熱回収ボイラ2からの蒸気によって駆動されるように構成された蒸気タービン8と、を備えている。蒸気タービン8は、発電機を駆動するように構成されていてもよい。
【0014】
排熱回収ボイラ2は、高圧ドラム24、中圧ドラム34及び低圧ドラム44を含む蒸気ドラム(24,34,44)と、各蒸気ドラム(24,34,44)に対応して設けられる節炭器(高圧節炭器22、中圧節炭器32及び低圧節炭器42)、蒸発器(高圧蒸発器26、中圧蒸発器36及び低圧蒸発器46)、及び、過熱器(高圧過熱器28、中圧過熱器38及び低圧過熱器48)と、再熱器10と、を含む。なお、蒸気タービンプラント1の運転時における蒸気ドラム(24,34,44)の内部圧力は、高圧ドラム24が最も高く、中圧ドラム34が次に高く、低圧ドラム44が最も低い。
【0015】
節炭器(22,32,42)は、給水ライン3からの給水を排ガスとの熱交換により加熱するように構成されている。節炭器(22,32,42)で加熱された給水は、各節炭器に対応する蒸気ドラム(24,34,44)にそれぞれ導かれるようになっている。
【0016】
蒸気ドラム(24,34,44)には、各蒸気ドラムに対応する蒸発器(26,36,46)が、降水管(25,35,45)及び蒸発管(27,37,47)を介してそれぞれ接続されている。蒸気ドラム(24,34,44)内の給水は、降水管(25,35,45)を介して蒸発器(26,36,46)に導かれる。
【0017】
蒸発器(26,36,46)は、排ガスとの熱交換により給水を蒸発させて蒸気を発生させるように構成されている。蒸発器(26,36,46)で生じた蒸気は、給水とともに(すなわち二相流の形態で)蒸発管(27,37,47)を介して蒸気ドラム(24,34,44)に流入する。蒸気ドラム(24,34,44)では、気液分離器(不図示)により蒸気と給水とが分離され、このように分離された蒸気が、飽和蒸気として、蒸気ドラム(24,34,44)に一時的に収容されるようになっている。蒸気ドラム(24,34,44)内の飽和蒸気は、各蒸気ドラム(24,34,44)に対応する過熱器(28,38,48)にそれぞれ導かれるようになっている。
【0018】
過熱器(28,38,48)及び再熱器10は、排ガスとの熱交換により、蒸気ドラム(24,34,44)からの蒸気を加熱するように構成される。過熱器(28,38,48)及び再熱器10で加熱された蒸気は蒸気タービン8に導かれ、蒸気タービン8を回転駆動するようになっている。
【0019】
蒸気ドラム(24,34,44)からの蒸気は、各蒸気ドラムに対応する過熱器(28,38,48)で加熱された後、蒸気タービン8の高圧タービン部、中圧タービン部、及び、低圧タービン部にそれぞれ導入される。高圧タービン部を通過した蒸気は、中圧過熱器38からの蒸気と合流して再熱器10に導かれ、再熱器10で再熱された後、蒸気タービン8の中圧タービン部に導入される。中圧タービン部を通過した蒸気は、低圧過熱器48からの蒸気に合流して、蒸気タービン8の低圧タービン部に導入される。
【0020】
蒸気タービン8の低圧タービン部を通過した蒸気は、低圧タービン部に接続された復水器12に導かれ、復水器12にて凝縮され、この凝縮水が給水として給水ライン3及び給水ポンプ4を介して各蒸気ドラム(24,34,44)に供給される。
【0021】
図1に示す例示的な実施形態では、蒸気タービンプラント1は、給水ライン3及び給水ポンプ4からの給水(すなわち、復水器12からの給水)が、高圧ドラム24、中圧ドラム34及び低圧ドラム44に対して並列に供給される並列給水式の蒸気タービンプラントである。
【0022】
即ち、給水ライン3は、低圧ドラム44に接続される低圧分岐ライン3a、中圧ドラム34に接続される中圧分岐ライン3b、及び、高圧ドラム24に接続される高圧分岐ライン3cを含み、各分岐ライン(3a,3b,3c)を介して、低圧ドラム44、中圧ドラム34、及び高圧ドラム24にそれぞれ給水が供給される。給水ライン3において、中圧ドラム34及び高圧ドラム24の上流側には高中圧給水ポンプ6が設けられており、高中圧給水ポンプ6で昇圧された給水が中圧ドラム34及び高圧ドラム24に供給されるようになっている。
【0023】
図2に示す例示的な実施形態では、蒸気タービンプラント1は、給水ライン3及び給水ポンプ4からの給水(すなわち、復水器12からの給水)が低圧ドラム44に供給されるとともに、低圧ドラム44内に滞留する給水の一部が低圧ドラム44から排出されて、中圧ドラム34及び高圧ドラム24に供給される、低圧給水式の蒸気タービンプラントである。
【0024】
すなわち、低圧ドラム44には、低圧ドラム44の液相部から給水の一部を抜き出すための高中圧給水ライン33aが接続されており、高中圧給水ライン33aは、中圧ドラム34に接続される中圧分岐ライン33b、及び、高圧ドラム24に接続される高圧分岐ライン33cを含む。高中圧給水ライン33aを介して低圧ドラム44から抜き出された給水は、高中圧給水ライン33aに設けられた高中圧給水ポンプ6により昇圧され、各分岐ライン(33b、33c)を介して、中圧ドラム34及び高圧ドラム24にそれぞれ供給されるようになっている。
【0025】
図1図2に示す蒸気タービンプラント1は、給水ライン3の給水(すなわち復水器12からの給水)に薬剤を供給するための薬剤供給部50を備えている。薬剤供給部50は、薬剤タンク52と、薬剤タンク52と給水ライン3との間に設けられる薬剤ライン53と、薬剤ライン53に設けられる薬剤ポンプ54と、を含む。
【0026】
薬剤ライン53は、復水器12よりも下流側、かつ、低圧節炭器42よりも上流側(すなわち、図1に示す実施形態の場合、低圧分岐ライン3aの分岐点よりも上流側)の位置にて、給水ライン3に接続されている。したがって、薬剤タンク52及び薬剤ライン53からの薬剤が混合された給水が、給水ライン3を介して、低圧ドラム44、中圧ドラム34及び高圧ドラム24に供給されるようになっている。
【0027】
薬剤供給部50から給水に供給される薬剤は、給水のpHを調節するためのpH調整剤であってもよい。pH調整剤は、給水のpHが所定範囲内であるときに、給水と接触する機器(例えば、節炭器(22,32,42)や蒸気ドラム(24,34,44)等)に生じ得る腐食を抑制するための腐食抑制剤であってもよい。
蒸気タービンプラントでは、給水のpHが所定値未満の場合に給水と接触する機器の腐食が生じることがある。そこで、給水のpHを上昇させることが可能な塩基性物質をpH調整剤として用いてもよい。
上述のpH調整剤として、アンモニアを用いてもよい。
【0028】
図1図2に示す蒸気タービンプラント1は、薬剤供給部50による給水ライン3の給水への薬剤の供給量を調節するための制御装置(調節部)60を含む。制御装置60は、蒸気ドラム(24,34,44)のうち何れか(典型的には低圧ドラム44)に供給される給水中の薬剤(溶質)の濃度が、既定の薬剤濃度の計画値となるように、薬剤の供給量を調節するように構成されていてもよい。
【0029】
制御装置60は、濃度センサ56による給水中の薬剤濃度の計測値に基づいて、薬剤ポンプ54の出力を制御することにより、薬剤の供給量を調節するように構成されていてもよい。なお、濃度センサ56は、復水器12よりも下流側、かつ、上述の薬剤ライン53の接続位置よりも上流側の位置にて給水ライン3に設けられる。
【0030】
濃度センサ56は、給水中の薬剤濃度を計測し、計測された薬剤濃度を制御装置に送るようになっていてもよい。あるいは、濃度センサ56は、薬剤濃度の指標を計測し、計測された薬剤濃度を制御装置に送るようになっていてもよい。例えば、濃度センサ56は、薬剤濃度の指標としての給水の電気伝導率(導電率)を計測し、該電気伝導率に基づいて換算される給水中の薬剤濃度を制御装置に送るようになっていてもよい。あるいは、濃度センサ56によって計測される給水の電気伝導率を、制御装置60にて溶質濃度に換算するようになっていてもよい。
【0031】
なお、本発明の実施形態に係る蒸気タービンプラントは、上述した排熱回収ボイラ2を備える蒸気タービンプラント1に限定されず、例えば、石炭、石油、液化天然ガス、重質油等の燃料を燃焼させるボイラで生成した蒸気によって蒸気タービンを駆動するように構成された蒸気タービンプラントであってもよい。また、幾つかの実施形態に係る蒸気タービンプラントは、原子炉から取り出した熱で蒸気を発生させる蒸気発生器を含む原子力プラントであってもよい。
【0032】
蒸気タービンプラント1を構成するコンポーネントのうち、内部を給水が通過する配管や機器では、内部温度が120℃以上180℃以下程度になると、該コンポーネントの内部の給水がpH9.8未満である場合に、流れ加速腐食(FAC)が生じやすい。以下、本明細書において、120℃以上180℃以下の温度範囲をFAC温度範囲という。
【0033】
幾つかの実施形態では、蒸気タービンプラント1は、蒸気タービンプラント1の負荷運転条件において内部温度が少なくとも部分的に120℃以上180℃以下の温度範囲(FAC温度範囲)内となるように構成された炭素鋼コンポーネント72を含む。炭素鋼コンポーネント72は、炭素鋼で形成された配管又は機器を含み、給水ライン3から排熱回収ボイラ2(蒸気発生器、ボイラ)に供給される給水が内部を通過するように構成される。そして、蒸気タービンプラント1の負荷運転条件において、炭素鋼コンポーネント72の各々の内部の給水のpHが9.8以上となるように、制御装置60(調節部)によって、薬剤供給部50によるpH調整剤の供給量が調節されるようになっている。
【0034】
なお、プラント起動時等の無負荷運転時のみに内部温度がFAC温度範囲内となり、負荷運転条件(定格負荷運転条件又は部分負荷運転条件等)においては内部温度がFAC温度範囲内とはならない配管や機器は、炭素鋼コンポーネント72には含まれない。
【0035】
幾つかの実施形態では、炭素鋼コンポーネント72は、低圧ドラム44を含む。幾つかの実施形態では、負荷運転条件(定格負荷運転条件又は部分負荷運転条件等)における低圧ドラム44の内部温度は140℃~160℃程度である。
また、幾つかの実施形態では、炭素鋼コンポーネント72は、低圧節炭器42、低圧蒸発器46、降水管45、蒸発管47、又は、低圧分岐ライン3a(配管)のうち低圧節炭器42と低圧ドラム44の間の部分、の少なくとも1つを含んでいてもよい。これらの配管又は機器は、負荷運転条件における内部温度が、少なくとも部分的に低圧ドラム44の内部温度と同程度である。
【0036】
幾つかの実施形態では、炭素鋼コンポーネント72は、中圧分岐ライン33b及び高圧分岐ライン33cを含む高中圧給水ライン33aを含んでいてもよい(図2参照)。これらの配管は、負荷運転条件における内部温度が低圧ドラム44の内部温度と同程度である。
【0037】
幾つかの実施形態では、炭素鋼コンポーネント72の材料である炭素鋼は、クロム(Cr)の含有量が0.2質量%以下の炭素鋼である。上記炭素鋼は、例えば、ボイラ及び圧力容器用炭素鋼(SB410、SB450等のSB材)、機械構造用炭素鋼(S15C、S25C、S35C、S45C、S55C、S15CK等)、又は、高温配管用炭素鋼(STPT38,STPT49等のSTPT材)を含んでいてもよい。
【0038】
上述の実施形態では、蒸気タービンプラント1において運転中に内部温度が120℃以上180℃以下(FAC温度範囲内)となる部位のコンポーネント(配管又は機器等)として炭素鋼コンポーネント72が採用されるとともに、炭素鋼コンポーネント72の各々の内部の給水のpHが9.8以上となるようにpH調整剤が供給される。したがって、流れ加速腐食が生じやすい部位のコンポーネントとして、比較的安価な炭素鋼製のコンポーネントを採用しながら、当該部位における流れ加速腐食をより確実に抑制することができる。よって、プラント製造コストの増大を抑制しながら、流れ加速腐食による減肉を低減することができる。
【0039】
以下、図1図2に示す例示的な実施形態について、より具体的に説明する。図1図2において、破線で囲まれる領域は、蒸気タービンプラント1の負荷運転状態にて機器又は配管内の内部温度が120℃以上180℃以下の範囲(FAC温度範囲)内となり、炭素鋼コンポーネント72が配置されるFAC領域70である。
【0040】
図1に示す蒸気タービンプラント1は、復水器12からの給水が供給され、複数の蒸気ドラム(24,34,44)のうち内部圧力が最も低い低圧ドラム44(第1ドラム)と、復水器12からの給水が供給され、低圧ドラム44(第1ドラム)よりも内部圧力が高い中圧ドラム34(第2ドラム)を含む並列給水式の蒸気タービンプラント1である。図1に示す例示的な実施形態では、炭素鋼コンポーネント72は、低圧ドラム44(第1ドラム)を含む。そして、制御装置60は、負荷運転条件において、低圧ドラム44に供給される給水(すなわち、低圧ドラム44よりも上流側における給水)のpHが10.1以上となるように、pH調整剤の供給量を調節するように構成される。
【0041】
また、図1に示す例示的な実施形態では、炭素鋼コンポーネント72は、低圧節炭器42、低圧蒸発器46、降水管45、蒸発管47、及び、低圧分岐ライン3a(配管)のうち低圧節炭器42と低圧ドラム44の間の部分を含む。
【0042】
pH調整剤を含む給水を低圧ドラム44に供給する場合、低圧ドラム44や低圧蒸発器46にてpH調整剤(溶質)の一部が液相から気相に移動(蒸発)するため、低圧ドラム44内の給水中の溶質濃度は、低圧ドラム44よりも上流側における給水中の溶質濃度に比べて低くなる。したがって、pH調整剤として給水pHを上昇させる薬剤(例えばアンモニアなどの塩基性物質)を使用する場合、低圧ドラム44内の給水のpHは、低圧ドラム44よりも上流側における給水のpHに比べて小さくなる。
【0043】
この点、本発明者らの知見によれば、並列給水方式の蒸気タービンプラントの場合、蒸発しやすい揮発性のpH調整剤であるアンモニアを用いた場合、低圧ドラム44(第1ドラム;内部圧力0.35~0.6MPa程度)に供給される給水pHが10.1以上であれば、低圧ドラム44内に滞留する給水のpHを9.8以上にすることができる。よって、上述の実施形態によれば、通常、流れ加速腐食が生じやすい低圧ドラム44において、比較的安価な炭素鋼製のコンポーネントを採用しながら、流れ加速腐食を効果的に抑制することができる。
【0044】
また、上述の実施形態では、低圧蒸発器46、降水管45及び蒸発管47は低圧ドラム44と同程度の圧力温度条件であり、これらの機器を通過する給水は、低圧ドラム44内の給水と同程度のpH(すなわちpH9.8以上)を有する。また、上述の実施形態では、低圧節炭器42及び低圧分岐ライン3a(配管)のうち低圧節炭器42と低圧ドラム44の間の部分は、低圧ドラム44よりも上流側に位置するから、低圧ドラム44に供給される給水と同程度のpH(即ちpH10.1以上)を有する。よって、上述の実施形態によれば、流れ加速腐食が生じ得る機器において、比較的安価な炭素鋼製のコンポーネントを採用しながら、流れ加速腐食を効果的に抑制することができる。
【0045】
なお、並列給水方式の蒸気タービンプラント1の場合、低圧ドラム44(第1ドラム)よりも内部圧力が高い中圧ドラム34及び高圧ドラム24の方が内部に滞留する給水のpHは大きくなる。したがって、中圧ドラム34や高圧ドラム24が炭素鋼コンポーネントである場合であっても(すなわち、中圧ドラム34又は高圧ドラム24の内部温度が120℃以上180℃以下となる場合であっても)、中圧ドラム34又は高圧ドラム24における流れ加速腐食を適切に抑制することができる。
【0046】
図2に示す蒸気タービンプラント1は、復水器12からの給水が供給され、複数の蒸気ドラム(24,34,44)のうち内部圧力が最も低い低圧ドラム44(第1ドラム)と、低圧ドラム44(第1ドラム)から排出される給水が供給され、低圧ドラム44よりも内部圧力が高い中圧ドラム34(第2ドラム)を含む低圧給水式の蒸気タービンプラント1である。
【0047】
図2に示す例示的な実施形態では、炭素鋼コンポーネント72は、低圧ドラム44(第1ドラム)を含む。そして、制御装置60は、負荷運転条件において、低圧ドラム44に供給される給水(すなわち、低圧ドラム44よりも上流側における給水)のpHが9.8以上となるように、pH調整剤の供給量を調節するように構成される。
【0048】
また、図2に示す例示的な実施形態では、炭素鋼コンポーネント72は、低圧節炭器42、低圧蒸発器46、降水管45、蒸発管47、及び、給水ライン3(配管)のうち低圧節炭器42と低圧ドラム44の間の部分を含む。
また、図2に示す例示的な実施形態では、炭素鋼コンポーネント72は、中圧分岐ライン33b及び高圧分岐ライン33cを含む高中圧給水ライン33aを含む。
【0049】
本発明者らの知見によれば、低圧給水方式の蒸気タービンプラントの場合、蒸発しやすい揮発性のpH調整剤であるアンモニアを用いた場合、低圧ドラム44(第1ドラム;内部圧力0.35~0.6MPa程度)に供給される給水pHが9.8以上であれば、低圧ドラム44内に滞留する給水のpHを9.8以上にすることができる。よって、上述の実施形態によれば、通常、流れ加速腐食が生じやすい低圧ドラム44において、比較的安価な炭素鋼製のコンポーネントを採用しながら、流れ加速腐食を効果的に抑制することができる。
【0050】
また、上述の実施形態では、低圧蒸発器46、降水管45、蒸発管47、及び、中圧分岐ライン33b及び高圧分岐ライン33cを含む高中圧給水ライン33aは低圧ドラム44と同程度の圧力温度条件であり、これらの機器を通過する給水は、低圧ドラム44内の給水と同程度のpH(すなわちpH9.8以上)を有する。また、上述の実施形態では、低圧節炭器42及び給水ライン3(配管)のうち低圧節炭器42と低圧ドラム44の間の部分は、低圧ドラム44よりも上流側に位置するから、低圧ドラム44に供給される給水と同程度のpH(即ちpH9.8以上)を有する。よって、上述の実施形態によれば、流れ加速腐食が生じ得る機器において、比較的安価な炭素鋼製のコンポーネントを採用しながら、流れ加速腐食を効果的に抑制することができる。
【0051】
幾つかの実施形態では、上述のpH調整剤は、揮発性物質を含む。
幾つかの実施形態では、揮発性物質は、水よりも蒸気圧が高い物質であってもよい。
【0052】
水よりも蒸気圧が高く揮発性が比較的高いpH調整剤は蒸発しやすいため、このような揮発性のpH調整剤を用いる場合、特に低圧条件下(低圧ドラム44等)において、所望のpH調整効果が得られにくい場合がある。この点、上述の実施形態によれば、pH調整剤として、水よりも蒸気圧が高く揮発性が比較的高い物質を用いる場合において、流れ加速腐食が生じやすい部位のコンポーネントとして、比較的安価な炭素鋼製のコンポーネントを採用しながら、当該部位における流れ加速腐食をより確実に抑制することができる。よって、プラント製造コストの増大を抑制しながら、流れ加速腐食による減肉を低減することができる。
【0053】
幾つかの実施形態では、上述のpH調整剤は、アンモニアを含む。
【0054】
アンモニアは水よりも蒸気圧が高く揮発性が比較的高いため、アンモニアをpH調整剤として用いる場合、特に低圧条件下(低圧ドラム44等)において、所望のpH調整効果が得られにくい場合がある。この点、上述の実施形態によれば、pH調整剤としてアンモニアを用いる場合において、流れ加速腐食が生じやすい部位のコンポーネントとして、比較的安価な炭素鋼製のコンポーネントを採用しながら、当該部位における流れ加速腐食をより確実に抑制することができる。よって、プラント製造コストの増大を抑制しながら、流れ加速腐食による減肉を低減することができる。
【0055】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0056】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る蒸気タービンプラント(1)は、
蒸気発生器(例えば排熱回収ボイラ2)への給水にpH調整剤(例えばアンモニア)を供給するように構成された薬剤供給部(50)と、
前記薬剤供給部による前記給水への前記pH調整剤の供給量を調節するための調節部(例えば制御装置60)と、
炭素鋼で形成されて前記給水が通過する配管又は機器を含み、前記蒸気タービンプラントの負荷運転条件において、内部温度が少なくとも部分的に120℃以上180℃以下の範囲内となるように構成された少なくとも1つの炭素鋼コンポーネント(72)と、を備え、
前記調節部は、前記負荷運転条件において、前記少なくとも1つの前記炭素鋼コンポーネントの各々の内部の前記給水のpHが9.8以上となるように、前記pH調整剤の供給量を調節するように構成される。
【0057】
上記(1)の構成によれば、蒸気タービンプラントにおいて運転中に内部温度が120℃以上180℃以下となる部位のコンポーネント(配管又は機器等)として炭素鋼製のコンポーネントが採用されるとともに、当該炭素鋼コンポーネントの各々の内部の給水のpHが9.8以上となるようにpH調整剤が供給される。したがって、流れ加速腐食が生じやすい部位のコンポーネントとして、比較的安価な炭素鋼製のコンポーネントを採用しながら、当該部位における流れ加速腐食をより確実に抑制することができる。よって、プラント製造コストの増大を抑制しながら、流れ加速腐食による減肉を低減することができる。
【0058】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記pH調整剤は、揮発性物質を含む。
【0059】
揮発性のpH調整剤は蒸発しやすいため、このような揮発性のpH調整剤を用いる場合、特に低圧条件下において、所望のpH調整効果が得られにくい場合がある。この点、上記(2)の構成によれば、pH調整剤として、揮発性物質を用いる場合において、上記(1)で述べたように、流れ加速腐食が生じやすい部位のコンポーネントとして、比較的安価な炭素鋼製のコンポーネントを採用しながら、当該部位における流れ加速腐食をより確実に抑制することができる。よって、プラント製造コストの増大を抑制しながら、流れ加速腐食による減肉を低減することができる。
【0060】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)の構成において、
前記pH調整剤は、アンモニアを含む。
【0061】
アンモニアは水よりも蒸気圧が高く揮発性が比較的高いため、アンモニアをpH調整剤として用いる場合、特に低圧条件下において、所望のpH調整効果が得られにくい場合がある。この点、上記(3)の構成によれば、pH調整剤としてアンモニアを用いる場合において、上記(1)で述べたように、流れ加速腐食が生じやすい部位のコンポーネントとして、比較的安価な炭素鋼製のコンポーネントを採用しながら、当該部位における流れ加速腐食をより確実に抑制することができる。よって、プラント製造コストの増大を抑制しながら、流れ加速腐食による減肉を低減することができる。
【0062】
(4)幾つかの実施形態では、上記(3)の構成において、
前記蒸気発生器としてのボイラ(例えば排熱回収ボイラ2)で発生させた蒸気を一時的に収容する1以上の蒸気ドラム(例えば高圧ドラム24、中圧ドラム34及び低圧ドラム44)を備え、
前記1以上の蒸気ドラムは、
復水器(12)からの給水が供給され、前記1以上の蒸気ドラムのうち内部圧力が最も低い第1ドラム(例えば低圧ドラム44)と、
前記復水器からの給水が供給され、前記第1ドラムよりも内部圧力が高い第2ドラム(例えば中圧ドラム34)と、を含み、
前記少なくとも1つの炭素鋼コンポーネントは、前記第1ドラムを含み、
前記調節部は、前記負荷運転条件において、前記第1ドラムに供給される前記給水のpHが10.1以上となるように、前記pH調整剤の供給量を調節するように構成される。
【0063】
本明細書において、内部圧力が異なる第1ドラム及び第2ドラムに復水器からの給水がそれぞれ供給される蒸気タービンプラントを、並列給水方式の蒸気タービンプラントという。
【0064】
本発明者らの知見によれば、並列給水方式の蒸気タービンプラント場合、蒸発しやすい揮発性のpH調整剤を用いたとしても、内部圧力が最も低い第1ドラム(低圧ドラム)に供給される給水pHが10.1以上であれば、第1ドラム内に滞留する給水のpHを9.8以上にすることができる。よって、上記(4)の構成によれば、通常、流れ加速腐食が生じやすい第1ドラムにおいて、比較的安価な炭素鋼製のコンポーネントを採用しながら、流れ加速腐食を効果的に抑制することができる。また、並列給水方式の蒸気タービンプラントの場合、第1ドラムよりも内部圧力が高い第2ドラムの方が内部に滞留する給水のpHは大きくなる。したがって、第2ドラムが炭素鋼コンポーネントである場合であっても(すなわち、第2ドラムの内部温度が120℃以上180℃以下となる場合であっても)、第2ドラムにおける流れ加速腐食を適切に抑制することができる。よって、上記(4)の構成によれば、プラント製造コストの増大を抑制しながら、流れ加速腐食による減肉を効果的に低減することができる。
【0065】
(5)幾つかの実施形態では、上記(3)の構成において、
前記蒸気発生器(例えば排熱回収ボイラ2)としてのボイラで発生させた蒸気を一時的に収容する1以上の蒸気ドラム(例えば高圧ドラム24、中圧ドラム34及び低圧ドラム44)を備え、
前記1以上の蒸気ドラムは、
復水器からの前記給水が供給され、前記1以上の蒸気ドラムのうち内部圧力が最も低い第1ドラム(例えば低圧ドラム44)と、
前記第1ドラムから排出された給水が供給され、前記第1ドラムよりも内部圧力が高い第2ドラム(例えば中圧ドラム34)と、を含み、
前記少なくとも1つの炭素鋼コンポーネントは、前記第1ドラムを含み、
前記調節部は、前記負荷運転条件において、前記第1ドラムに供給される前記給水のpHが9.8以上となるように、前記pH調整剤の供給量を調節するように構成される。
【0066】
本明細書において、1以上の蒸気ドラムのうち内部圧力が最も低い第1ドラム(低圧ドラム)には復水器からの給水が供給され、内部圧力が第1ドラムよりも高い第2ドラムには第1ドラムから排出された給水が供給される蒸気タービンプラントを、低圧給水方式の蒸気タービンプラントという。
【0067】
本発明者らの知見によれば、低圧給水方式の蒸気タービンプラントの場合、蒸発しやすい揮発性のpH調整剤を用いたとしても、内部圧力が最も低い第1ドラム(低圧ドラム)に供給される給水pHが9.8以上であれば、第1ドラム内に滞留する給水のpHを9.8以上にすることができる。よって、上記(5)の構成によれば、通常、流れ加速腐食が生じやすい第1ドラムにおいて、比較的安価な炭素鋼製のコンポーネントを採用しながら、流れ加速腐食を効果的に抑制することができる。よって、プラント製造コストの増大を抑制しながら、流れ加速腐食による減肉を効果的に低減することができる。
【0068】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(5)の何れかの構成において、
前記調節部は、前記蒸気発生器に供給される前記給水中の前記pH調整剤の濃度又は該濃度を示す指標に基づいて、前記給水への前記pH調整剤の供給量を決定するように構成される。
【0069】
上記(6)の構成によれば、蒸気発生器に供給される給水中のpH調整剤の濃度又は該濃度を示す指標に基づいて、給水へのpH調整剤の供給量を決定するようにしたので、該給水中のpH調整剤濃度を適切に調整することができる。これにより、炭素鋼コンポーネントの各々の内部における給水のpHを適正範囲(pH9.8以上)とすることができ、炭素鋼コンポーネントの流れ加速腐食を適切に抑制することができる。
【0070】
(7)本発明の少なくとも一実施形態に係る制御装置(60)は、
蒸気発生器への給水にpH調整剤を供給するように構成された薬剤供給部(50)と、
炭素鋼で形成されて前記給水が通過する配管又は機器を含み、蒸気タービンプラント(1)の負荷運転条件において、内部温度が少なくとも部分的に120℃以上180℃以下の範囲内となるように構成された少なくとも1つの炭素鋼コンポーネント(72)と、を含む蒸気タービンプラントの制御装置であって、
前記負荷運転条件において、前記少なくとも1つの前記炭素鋼コンポーネントの各々の内部の前記給水のpHが9.8以上となるように、前記薬剤供給部による前記給水への前記pH調整剤の供給量を調節するように構成される。
【0071】
上記(7)の構成によれば、蒸気タービンプラントにおいて運転中に内部温度が120℃以上180℃以下となり得る部位のコンポーネント(配管又は機器等)として炭素鋼製のコンポーネントが採用されるとともに、当該炭素鋼コンポーネントの内部温度が120℃以上180℃以下となる運転条件において、炭素鋼コンポーネントの各々の内部の給水のpHが9.8以上となるようにpH調整剤が供給される。したがって、流れ加速腐食が生じやすい部位のコンポーネントとして、比較的安価な炭素鋼製のコンポーネントを採用しながら、当該部位における流れ加速腐食をより確実に抑制することができる。よって、プラント製造コストの増大を抑制しながら、流れ加速腐食による減肉を低減することができる。
【0072】
(8)本発明の少なくとも一実施形態に係る蒸気タービンプラント(1)の水質管理方法は、
炭素鋼で形成されて給水が通過する配管又は機器を含み、前記蒸気タービンプラントの負荷運転条件において、内部温度が少なくとも部分的に120℃以上180℃以下の範囲内となるように構成された少なくとも1つの炭素鋼コンポーネント(72)
を含む蒸気タービンプラントの水質管理方法であって、
蒸気発生器への前記給水にpH調整剤を供給するステップと、
前記負荷運転条件において、前記少なくとも1つの前記炭素鋼コンポーネントの各々の内部の前記給水のpHが9.8以上となるように、前記pH調整剤の供給量を調節するステップを備える。
【0073】
上記(8)の方法によれば、蒸気タービンプラントにおいて運転中に内部温度が120℃以上180℃以下となり得る部位のコンポーネント(配管又は機器等)として炭素鋼製のコンポーネントが採用されるとともに、当該炭素鋼コンポーネントの内部温度が120℃以上180℃以下となる運転条件において、炭素鋼コンポーネントの各々の内部の給水のpHが9.8以上となるようにpH調整剤が供給される。したがって、流れ加速腐食が生じやすい部位のコンポーネントとして、比較的安価な炭素鋼製のコンポーネントを採用しながら、当該部位における流れ加速腐食をより確実に抑制することができる。よって、プラント製造コストの増大を抑制しながら、流れ加速腐食による減肉を低減することができる。
【0074】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0075】
本明細書において、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
また、本明細書において、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
また、本明細書において、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【符号の説明】
【0076】
1 蒸気タービンプラント
2 排熱回収ボイラ
3 給水ライン
3a 低圧分岐ライン
3b 中圧分岐ライン
3c 高圧分岐ライン
4 給水ポンプ
6 高中圧給水ポンプ
8 蒸気タービン
10 再熱器
12 復水器
22 高圧節炭器
24 高圧ドラム
26 高圧蒸発器
28 高圧過熱器
32 中圧節炭器
33a 高中圧給水ライン
33b 中圧分岐ライン
33c 高圧分岐ライン
34 中圧ドラム
35 降水管
36 中圧蒸発器
37 蒸発管
38 中圧過熱器
42 低圧節炭器
44 低圧ドラム
45 降水管
46 低圧蒸発器
47 蒸発管
48 低圧過熱器
50 薬剤供給部
52 薬剤タンク
53 薬剤ライン
54 薬剤ポンプ
56 濃度センサ
60 制御装置
70 FAC領域
72 炭素鋼コンポーネント
図1
図2