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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】断熱材
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/80 20060101AFI20240227BHJP
   E04B 1/76 20060101ALI20240227BHJP
   E04B 2/86 20060101ALI20240227BHJP
   B32B 7/027 20190101ALI20240227BHJP
   B32B 5/24 20060101ALI20240227BHJP
   B32B 5/26 20060101ALI20240227BHJP
   F16L 59/02 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
E04B1/80 100Q
E04B1/76 500Z
E04B2/86 601J
B32B7/027
B32B5/24 101
B32B5/26
F16L59/02
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019177259
(22)【出願日】2019-09-27
(65)【公開番号】P2020076300
(43)【公開日】2020-05-21
【審査請求日】2022-08-24
(31)【優先権主張番号】P 2018207537
(32)【優先日】2018-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000077
【氏名又は名称】アキレス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正人
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-292687(JP,A)
【文献】特開2007-146400(JP,A)
【文献】登録実用新案第3057934(JP,U)
【文献】実開昭55-019791(JP,U)
【文献】特開2018-053642(JP,A)
【文献】特開平06-294167(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/76,1/80
E04B 2/86
B32B 1/00-43/00
F16L 59/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の基礎躯体の外側を覆うための断熱材であって、
該断熱材は、一方の面が前記基礎躯体に密着して設置され、他方の面には、仕上げ塗材としてモルタルが塗布されるものであり、
該断熱材は、合成樹脂発泡体からなる板状の断熱層と、該断熱層の両表面に貼着された面材とを備えてなり、
該面材は、前記断熱層から外側に向けて、接着層/ガラス繊維不織布からなる補強層/接着層/耐アルカリ性ガラス繊維を含む不織布からなる外面層の順に積層構成された面材であり、そして前記外面層の目付け量が30ないし50g/mであり、
前記断熱材の一方の面にモルタル層を形成した状態で以下に示す引張試験をしたとき、該モルタル層と該断熱材との吸水条件下での剥離強度が7.4N/cm以上16.2N/cm 以下である、断熱材。
(引張試験:前記モルタル層及び前記断熱材全体が水に浸るように、水中に沈めた状態で30日放置したものを吸水条件下の試験対象とし、前記モルタル層の表面に縦50mm×横50mmの大きさの格子状の溝(深さ5mm)を形成し、この格子状の溝で囲まれた部分に鋼製のアタッチメントを接着剤により接着し、そして、該鋼製アタッチメントを建研式引張り試験機により、前記モルタル層と該鋼製アタッチメントとの接着面に直交する方向へ引張り、前記モルタル層と前記外面層との界面が剥離したときの力を剥離強度:N/cm として測定する。)
【請求項2】
建築物の基礎躯体の外側を覆うための断熱材であって、
該断熱材は、一方の面が前記基礎躯体に密着して設置され、他方の面には、仕上げ塗材としてモルタルが塗布されるものであり、
該断熱材は、合成樹脂発泡体からなる板状の断熱層と、該断熱層の両表面に貼着された面材とを備えてなり、
該面材は、前記断熱層から外側に向けて、接着層/アルミニウム箔からなる遮熱層/接着層/ガラス繊維不織布からなる補強層/接着層/耐アルカリ性ガラス繊維を含む不織布からなる外面層の順に積層構成された面材であり、そして前記外面層の目付け量が30ないし50g/m であり、
前記断熱材の一方の面にモルタル層を形成した状態で以下に示す引張試験をしたとき、該モルタル層と該断熱材との吸水条件下での剥離強度が7.4N/cm 以上16.2N/cm 以下である、断熱材。
(引張試験:前記モルタル層及び前記断熱材全体が水に浸るように、水中に沈めた状態で30日放置したものを吸水条件下の試験対象とし、前記モルタル層の表面に縦50mm×横50mmの大きさの格子状の溝(深さ5mm)を形成し、この格子状の溝で囲まれた部分に鋼製のアタッチメントを接着剤により接着し、そして、該鋼製アタッチメントを建研式引張り試験機により、前記モルタル層と該鋼製アタッチメントとの接着面に直交する方向へ引張り、前記モルタル層と前記外面層との界面が剥離したときの力を剥離強度:N/cm として測定する。)
【請求項3】
前記外面層は、耐アルカリ性ガラス繊維及びビニロン繊維を含む不織布からなる、請求項1又は2に記載の断熱材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の基礎躯体の外側を覆うための断熱材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、鉄筋コンクリート造等の建築物の施工において、コンクリートの打込み時に、型枠を兼ねた断熱材をコンクリートの周囲に設置し、コンクリートを養生しながら断熱材をコンクリートに接着することで、型枠を取り外す工程等を省き、工期を短縮することが行われている。特に寒冷地等では、コンクリートの基礎躯体にも断熱材を使用することがあり、その際にも型枠を兼ねた断熱材が使用される(例えば、特許文献1参照)。そして、そのような基礎躯体の外側に設置された断熱材には、装飾性や耐久性等の向上を目的として、外側面(コンクリートへの接着面と反対側の面)にモルタル等の仕上げ塗材が塗布される。図3には、建築物の基礎躯体102の概略的な断面図を示しており、図中右側となる基礎躯体102の外側に断熱材100が接着され、更に断熱材100の外側面にモルタル104が塗布されている。なお、図3の符号GLは地面を示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-292687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、図4には、図3に示した従来の断熱材100の断面図を示している。図示のように、従来の断熱材100は、断熱層であるポリウレタンフォーム106の両面に、ライナー紙(クラフト紙)108と炭酸カルシウム紙110との各々が、ポリエチレン樹脂等の接着層を介して積層された構造を有している。そして、このような構造の断熱材100は、図3で確認できるように、地面GLより下の地中にまで達しているため、特にライナー紙(クラフト紙)108や炭酸カルシウム紙110が、地中の水分を経年にわたって吸収してしまう。これに起因して、モルタル104が直接的に塗布されている、断熱材100の炭酸カルシウム紙110部分の強度が保てずに、炭酸カルシウム紙110から、又はライナー紙108の層間でモルタル104が剥落する事象が発生してしまった。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、断熱材のモルタルとの接着力を向上すると共に、その接着力を長期にわたって維持することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0007】
(1)建築物の基礎躯体の外側を覆うための断熱材であって、合成樹脂発泡体からなる板状の断熱層と、該断熱層の両表面に貼着された面材とを備えてなり、該面材は、前記断熱層寄りにガラス繊維不織布からなる補強層と、耐アルカリ性ガラス繊維を含む不織布からなる外面層と、接着層とを含む積層体からなり、そして前記外面層の目付け量が30ないし50g/mである、断熱材(請求項1)。
【0008】
本項に記載の断熱材は、合成樹脂発泡体からなる板状の断熱層の両表面に、互いに共通の積層構造の面材が貼着されてなるものであり、これらの面材の各々は、ガラス繊維不織布からなる補強層と、耐アルカリ性ガラス繊維を含む不織布からなる外面層と、接着層と、を含む積層体からなっている。そして、面材に含まれるこれらの層の中で、ガラス繊維不織布からなる補強層は、断熱層寄りの層であり、耐アルカリ性ガラス繊維を含む不織布からなる外面層は、面材の外面側の層であり、接着層は、必要に応じて層同士を接着するための層である。更に、外面層の耐アルカリ性ガラス繊維を含む不織布には、目付け量が30ないし50g/mの耐アルカリ性ガラス繊維を含む不織布が用いられている。
【0009】
ここで、本項に記載の断熱材は、建築物の基礎躯体に外張りされ、基礎躯体の外側を覆うものであり、型枠としての役割を果たすために、一方の面が基礎躯体のコンクリートに密着して設置され、更に、他方の面には、仕上げ塗材としてモルタルが塗布される。すなわち、面材に含まれる補強層と外面層と接着層との3種の層の中では、最も外面側に配置される外面層に対して、直接的或いは上記の3種の層と異なる層を介して間接的に、コンクリート及びモルタルが接触することになる。そこで、本項に記載の断熱材は、面材の外面層に耐アルカリ性ガラス繊維を含む不織布が用いられていることにより、コンクリートやモルタルの強アルカリの状況下であっても耐え、ガラスが腐食する虞がないものである。しかも、本発明者によってコンクリートやモルタルの接着が良好と確認された、目付け量が30ないし50g/mの耐アルカリ性ガラス繊維を含む不織布が用いられていることで、コンクリート及びモルタルの接着力が向上されるものである。
【0010】
更に、本項に記載の断熱材は、従来の断熱材と異なり、断熱層の両表面に貼着される面材に、クラフト紙等の紙材料が用いられておらず、外面層としての耐アルカリ性ガラス繊維を含む不織布の他には、ガラス繊維不織布からなる補強層と接着層とが用いられている。このため、断熱材が地中にまで達する状態で設置されても、地中の水分が面材により吸水されることが抑制されるものである。従って、面材による吸水に起因する、面材の外面層からモルタルが剥落する事象の発生が防止され、長期にわたって、面材へのモルタルの接着力が維持されるものである。
【0011】
(2)上記(1)項において、前記面材は、アルミニウム箔からなる遮熱層を更に含む積層体からなる、断熱材(請求項2)。
本項に記載の断熱材は、断熱層の両表面に貼着される面材を構成する積層体が、アルミニウム箔からなる遮熱層を更に含むものである。これにより、断熱層を構成する合成樹脂発泡体を、水蒸気や紫外線等から保護し、特に赤外線の反射によって夏場の遮熱に効果を発揮するものである。加えて、合成樹脂発泡体のセル内の発泡剤が経時で大気中の空気と置換される事象の発生が、ガスバリア性に優れたアルミニウム箔によって抑制されることとなり、長期にわたって合成樹脂発泡体のガスバリア性が維持されるものである。
【0012】
(3)上記(1)項において、前記面材は、断熱層から外側に向けて、接着層/ガラス繊維不織布からなる補強層/接着層/耐アルカリ性ガラス繊維を含む不織布からなる外面層の順に積層構成された面材である、断熱材(請求項3)。
本項に記載の断熱材は、面材を構成する積層体が、以下のような順序の積層構造を有するものである。すなわち、合成樹脂発泡体からなる断熱層に、接着層を介して、ガラス繊維不織布からなる補強層が積層され、更にその上に、接着層を介して、耐アルカリ性ガラス繊維を含む不織布からなる外面層が積層されたものである。このような構成により、補強層及び外面層が強固に接着されると共に、外面層が最も外側に位置することになる。このため、目付け量が30ないし50g/mの耐アルカリ性ガラス繊維を含む不織布からなる外面層に対して、コンクリート及びモルタルが直接的に接触することになり、ガラスの腐食を抑制しながら、コンクリート及びモルタルの接着力が向上されるものである。
【0013】
(4)上記(2)項において、前記面材は、断熱層から外側に向けて、接着層/アルミニウム箔からなる遮熱層/接着層/ガラス繊維不織布からなる補強層/接着層/耐アルカリ性ガラス繊維を含む不織布からなる外面層の順に積層構成された面材である、断熱材(請求項4)。
本項に記載の断熱材は、面材を構成する積層体が、以下のような順序の積層構造を有するものである。すなわち、合成樹脂発泡体からなる断熱層に、接着層を介して、アルミニウム箔からなる遮熱層が積層され、その上に、接着層を介して、ガラス繊維不織布からなる補強層が積層され、更にその上に、接着層を介して、耐アルカリ性ガラス繊維を含む不織布からなる外面層が積層されたものである。このような構成により、遮熱層、補強層及び外面層が強固に接着されると共に、外面層が最も外側に位置することになる。このため、上記(2)項に記載したようなアルミニウム箔からなる遮熱層の利点を得ながら、上記(3)項の断熱材と同様に、ガラスの腐食を抑制しつつ、コンクリート及びモルタルの接着力が向上されるものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明は上記のような構成であるため、断熱材のモルタルとの接着力を向上することができ、その接着力を長期にわたって維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態に係る断熱材の積層構造を示す断面図である。
図2】本発明の実施例の断熱材と比較例の断熱材とについて行った引張試験の方法を示す概略図である。
図3】建築物の基礎躯体の外側を覆う断熱材の施工状況を示す断面図である。
図4】従来の断熱材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面に基づき説明する。なお、図面の全体にわたって、同一部分又は対応する部分は、同一符号で示している。
図1は、本発明の実施の形態に係る断熱材の積層構造を示しており、図1(a)が本発明の第1の実施の形態に係る断熱材10を、図1(b)が本発明の第2の実施の形態に係る断熱材10´を、夫々示している。なお、図1では、積層構造をより明確に示すために、一部の層の厚みを誇張して図示しており、図1に示されている各層の厚みの関係が、実際の厚みの関係を示すものではない。
【0017】
図1(a)に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る断熱材10は、合成樹脂発泡体からなる板状の断熱層14の両表面に、互いに共通の積層構造(図中、上下対称の積層構造)を有する面材12が貼着されたものである。一方の面材12を例にして説明すると、図中、上側に図示された面材12は、下方向から、接着層30、ガラス繊維不織布からなる補強層16、接着層30、及び、耐アルカリ性ガラス繊維を含む不織布からなる外面層18が、この記載順序で積層された構造を有している。
【0018】
耐アルカリ性ガラス繊維を含む不織布からなる外面層18には、目付け量が30ないし50g/mの耐アルカリ性ガラス繊維を含む不織布が用いられる。耐アルカリ性ガラス繊維を含む不織布の目付け量が多過ぎると、耐アルカリ性ガラス繊維を含む不織布内で剥がれ易くなり、目付け量が少な過ぎると、コンクリートやモルタルとの接着力が確保できなくなる虞がある。通常、耐アルカリ性は、酸化ジルコニウム(ZrO)をガラス中に添加することにより得られる。当該不織布には、耐アルカリ性ガラス繊維以外の繊維を含んでも良い。耐アルカリ性ガラス繊維のみからなる不織布よりもそれ以外の繊維を含む不織布の方が、空隙層が多くなり、コンクリートやモルタルが含浸し易くなることから接着
力がより向上する。その他の繊維としては、例えばポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ウレタン繊維、ポリオレフィン繊維、ビニロン繊維などの合成繊維が挙げられる。特に、耐アルカリ性や耐紫外線に優れ、セメントとの親和性が良いビニロン繊維が好ましい。
ガラス繊維不織布からなる補強層16には、吸水を抑制するものであれば、任意のガラス繊維不織布を利用できる。断熱層14の合成樹脂発泡体には、例えば、硬質ポリウレタンフォーム、スチレンフォーム、ポリイソシアヌレートフォーム等が用いられる。又、接着層30には、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等が利用される。
【0019】
続けて、図1(b)に示すように、本発明の第2の実施の形態に係る断熱材10´は、本発明の第1の実施の形態に係る断熱材10と同様に、合成樹脂発泡体からなる板状の断熱層14の両表面に、互いに共通の積層構造(図中、上下対称の積層構造)を有する面材12´が積層されたものである。しかしながら、図1(b)の面材12´は、図1(a)の面材12との比較において、合成樹脂発泡体からなる断熱層14と、ガラス繊維不織布からなる補強層16との間に、アルミニウム箔からなる遮熱層20が、接着層30を介して積層されている点が異なっている。
【実施例
【0020】
次に、本発明の実施の形態に係る断熱材について、実施例を挙げて説明するが、本発明の実施の形態に係る断熱材は、実施例の内容に限定されるものではない。
実施例1、2及び比較例1、2の各々を試料として、吸水なしと吸水ありとの2つの条件の下で、簡易的な引張試験を行った。実施例1~3及び比較例1、2は、何れも、断熱層としての硬質ポリウレタンフォームの両表面に面材が貼着されたものであり、面材の構成が以下に示すようになっている。なお、以下に示す面材の構成は、硬質ポリウレタンフォームからなる断熱層側から外側へ向かって順に記載されている。すなわち、実施例1、2及び比較例1、2は、図1(a)の接着層30に相当する層/図1(a)の補強層16に相当する層/図1(a)の接着層30に相当する層/図1(a)の外面層18に相当する層、の順である。また、実施例3は、図1(b)の接着層30に相当する層/図1(b)の遮熱層20に相当する層/図1(b)の接着層30に相当する層/図1(b)の補強層16に相当する層/図1(b)の接着層30に相当する層/図1(b)の外面層18に相当する層、の順である。
【0021】
実施例1:ポリエチレン樹脂(厚み35μm)/ガラス繊維不織布(目付け量110g/m)/ポリエチレン樹脂(厚み35μm)/耐アルカリ性ガラス繊維不織布(目付け量30g/m
実施例2:ポリエチレン樹脂(厚み35μm)/ガラス繊維不織布(目付け量110g/m)/ポリエチレン樹脂(厚み35μm)/耐アルカリ性ガラス繊維不織布(目付け量50g/m
実施例3:ポリエチレン樹脂(20μm)/アルミ箔(7μm)/ポリエチレン樹脂(厚み35μm)/ガラス繊維不織布(目付け量110g/m)/ポリエチレン樹脂(厚み35μm)/耐アルカリ性ガラス繊維とビニロン繊維とを交絡させた不織布(目付け量30g/m、耐アルカリ性ガラス繊維:ビニロン繊維:バインダー=60:25:15(質量部))
比較例1(図4に示した従来の断熱材100と同じ構造):ポリエチレン樹脂(厚み30μm)/ライナー紙(クラフト紙)(目付け量220g/m)/ポリエチレン樹脂(厚み30μm)/炭酸カルシウム紙(目付け量100g/m
比較例2:ポリエチレン樹脂(厚み35μm)/ガラス繊維不織布(目付け量110g/m)/ポリエチレン樹脂(厚み35μm)/耐アルカリ性ガラス繊維不織布(目付け量100g/m
【0022】
引張試験に先立ち、各試料の一方の面に、モルタル(日本化成社製、商品名「NSタウンモルタル」)を塗布・乾燥させて、厚み5mmのモルタル層を形成した。更に、吸水なしの条件のものとして、実施例1~3及び比較例1、2の夫々について、常温で30日保管したものを用意した。加えて、吸水ありの条件のものとして、実施例1~3及び比較例1、2の夫々について、モルタル層と試料全体が水に浸るように、水中に沈めた状態で30日放置したものを用意した。引張試験では、図2に示すように、上述した10種(実施例1~3及び比較例1、2の夫々の吸水あり/なし)を試料40として、モルタル層42の表面に縦50mm×横50mmの大きさの格子状の溝44(深さ5mm)を形成し、この格子状の溝44で囲まれた部分に鋼製のアタッチメント46を接着剤48により接着した。そして、鋼製アタッチメント46を簡易型引張試験器(建研式引張り試験機)により、モルタル層42と鋼製アタッチメント46との接着面に直交する方向(図2における上方向)へ引張り、剥離したときの力(剥離強度又は接着力:N/cm2)を測定すると共に、剥離した部位50を確認した。
【0023】
上述した引張試験の結果を、下記の表1に示している。
【表1】
【0024】
表1を確認すると、実施例1~3は、吸水なし及び吸水ありの双方の条件において、剥離強度が良好であることが分かり、吸水後でも接着力が維持されていることが確認できる。更に、実施例1~3は、吸水なしの条件及び吸水ありの条件共に、モルタル層と耐アルカリ性ガラス繊維を含む不織布(外面層)との界面で剥離していることが確認できる。一方、比較例1は、吸水なし及び吸水ありの双方の条件において、実施例1~3の何れよりも剥離強度が小さいことが分かる。又、吸水なしの条件では、モルタル層と炭酸カルシウム紙との界面で剥離しているが、吸水ありの条件では、吸水のし易さがネックであるライナー紙の層中において剥離していることが確認できる。他方、比較例2は、吸水なし及び吸水ありの双方の条件において、実施例1~3の何れよりも剥離強度が小さく、又、耐アルカリ性ガラス繊維を含む不織布(外面層)の層中において剥離していることが確認できる。すなわち、耐アルカリ性ガラス繊維を含む不織布の目付け量が多過ぎるため、剥離強度が落ちていることが分かる。
【0025】
さて、上記構成をなす本発明の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能である。すなわち、本発明の第1の実施の形態に係る断熱材10は、図1(a)に示されているように、合成樹脂発泡体からなる板状の断熱層14の両表面に、互いに共通の積層構造の面材12が貼着されてなるものであり、これらの面材12の各々は、ガラス繊維不織布からなる補強層16と、耐アルカリ性ガラス繊維を含む不織布からなる外面層18と、接着層30と、を含む積層体からなっている。そして、面材12に含まれるこれらの層の中で、ガラス繊維不織布からなる補強層16は、断熱層14寄りの層であり、耐アルカリ性ガラス繊維を含む不織布からなる外面層18は、面材12の外面側の層であり、接着層30は、必要に応じて層同士を接着するための層である。更に、外面層18の耐アルカリ性ガラス繊維を含む不織布には、目付け量が30ないし50g/mの耐アルカリ性ガラス繊維を含む不織布が用いられている。
【0026】
ここで、本発明の第1の実施の形態に係る断熱材10は、図3に示した断熱材100と同様に、建築物の基礎躯体102に外張りされ、基礎躯体102の外側を覆うものであり、型枠としての役割を果たすために、一方の面が基礎躯体102のコンクリートに密着して設置され、更に、他方の面には、仕上げ塗材としてモルタル104が塗布される。すなわち、面材12に含まれる補強層16と外面層18と接着層30との3種の層の中では、最も外面側に配置される外面層18に対して、直接的或いは上記の3種の層と異なる層を介して間接的に(図1(a)の例では直接的に)、コンクリート及びモルタルが接触することになる。そこで、本発明の第1の実施の形態に係る断熱材10は、面材12の外面層18に耐アルカリ性ガラス繊維を含む不織布が用いられていることにより、コンクリートやモルタルの強アルカリの状況下であっても耐えることができ、ガラスの腐食を防止することができる。しかも、本発明者によってコンクリートやモルタルの接着が良好と確認された、目付け量が30ないし50g/mの耐アルカリ性ガラス繊維を含む不織布が用いられていることで、コンクリート及びモルタルの接着力を向上することができる。
【0027】
更に、本発明の第1の実施の形態に係る断熱材10は、図4に示したような従来の断熱材100と異なり、断熱層14の両面に積層される面材12に、クラフト紙等の紙材料が用いられておらず、外面層18としての耐アルカリ性ガラス繊維を含む不織布の他には、ガラス繊維不織布からなる補強層16と接着層30とが用いられている。このため、断熱材10が地中にまで達する状態で設置されても、地中の水分が面材12により吸水されることを抑制することができる。従って、面材12による吸水に起因する、面材12の外面層18からモルタルが剥落する事象の発生を防止することができ、長期にわたって、面材12へのモルタルの接着力を維持することが可能となる。本発明の実施の形態に係る断熱材が、モルタルとの良好な接着力を有し、その接着力が吸水状態においても維持されていることは、表1に示した実施例の試験結果からも明らかである。
【0028】
又、本発明の第1の実施の形態に係る断熱材10は、面材12を構成する積層体が、以下のような順序の積層構造を有するものである。すなわち、合成樹脂発泡体からなる断熱層14に、接着層30を介して、ガラス繊維不織布からなる補強層16が積層され、更にその上に、接着層30を介して、耐アルカリ性ガラス繊維を含む不織布からなる外面層18が積層されたものである。このような構成により、補強層16及び外面層18を強固に接着することができると共に、外面層18を最も外側に配置することができる。このため、目付け量が30ないし50g/mの耐アルカリ性ガラス繊維を含む不織布からなる外面層18に対して、コンクリート及びモルタルが直接的に接触することになり、ガラスの腐食を抑制しながら、コンクリート及びモルタルの接着力を向上することが可能となる。
【0029】
一方、本発明の第2の実施の形態に係る断熱材10´は、図1(b)に示すように、断熱層14の両表面に貼着される面材12´を構成する積層体が、アルミニウム箔からなる遮熱層20を更に含むものである。これにより、断熱層14を構成する合成樹脂発泡体を
、水蒸気や紫外線等から保護することができ、特に赤外線の反射によって夏場の遮熱に効果を発揮することができる。加えて、合成樹脂発泡体のセル内の発泡剤が、経時で大気中の空気と置換される事象の発生を、ガスバリア性に優れたアルミニウム箔によって抑制することができ、長期にわたって合成樹脂発泡体のガスバリア性を維持することが可能となる。
【0030】
更に、本発明の第2の実施の形態に係る断熱材10´は、面材12´を構成する積層体が、以下のような順序の積層構造を有するものである。すなわち、合成樹脂発泡体からなる断熱層14に、接着層30を介して、アルミニウム箔からなる遮熱層20が積層され、その上に、接着層30を介して、ガラス繊維不織布からなる補強層16が積層され、更にその上に、接着層30を介して、耐アルカリ性ガラス繊維を含む不織布からなる外面層18が積層されたものである。このような構成により、遮熱層20、補強層16及び外面層18を強固に接着することができると共に、外面層18を最も外側に配置することができる。このため、上述したようなアルミニウム箔からなる遮熱層20の利点を得ながら、本発明の第1の実施の形態に係る断熱材10と同様に、ガラスの腐食を抑制しつつ、コンクリート及びモルタルの接着力を向上することができる。
【0031】
なお、本発明の第1及び第2の実施の形態に係る断熱材10、10´は、図1に示した構成に限定されるものではない。例えば、面材12、12´を構成する積層体は、図1に示された層以外の層を含んでいてもよく、そのような層が外面層18よりも外側に配置されていてもよい。又、断熱材10´の面材12´は、アルミニウム箔からなる遮熱層20の積層位置が、補強層16よりも外側であってもよい。
【符号の説明】
【0032】
10、10´:断熱材、12、12´:面材、14:断熱層(合成樹脂発泡体)、16:補強層(ガラス繊維不織布)、18:外面層(耐アルカリ性ガラス繊維を含む不織布)、20:遮熱層(アルミニウム箔)、30:接着層、102:基礎躯体
図1
図2
図3
図4