(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】検査プローブ、検査プローブの製造方法および検査装置
(51)【国際特許分類】
G01R 1/06 20060101AFI20240227BHJP
G01R 31/26 20200101ALI20240227BHJP
G01R 31/28 20060101ALI20240227BHJP
H01L 21/66 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
G01R1/06 F
G01R31/26 J
G01R31/28 K
H01L21/66 B
(21)【出願番号】P 2019190213
(22)【出願日】2019-10-17
【審査請求日】2022-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000153018
【氏名又は名称】株式会社日本マイクロニクス
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100070024
【氏名又は名称】松永 宣行
(72)【発明者】
【氏名】福士 輝夫
【審査官】青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-175288(JP,A)
【文献】特開2003-035723(JP,A)
【文献】特開2000-162458(JP,A)
【文献】特開2018-185491(JP,A)
【文献】特開2002-286956(JP,A)
【文献】特開2012-242656(JP,A)
【文献】特開2013-083894(JP,A)
【文献】特開2000-227529(JP,A)
【文献】国際公開第2014/199831(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 1/06-1/073
G01R 31/26
G01R 31/28
H01L 21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物の検査に使用される検査プローブであって、
固定端および前記固定端と電気的に接続する自由端を有するカンチレバー構造のニードル部と、
前記検査対象物の光信号端子と対向する一方の端面を前記ニードル部の前記自由端の前記検査対象物の電気信号端子と接続する先端の向きと同一方向に向けて、前記ニードル部
の内部に
埋め込んで形成された光導波路と
を備え、
コーナー部により連結された複数の直線部分を有する前記光導波路において、前記直線部分を相互に離間させて前記コーナー部に空気層を設けていることを特徴とする検査プローブ。
【請求項2】
前記光導波路が、光硬化性樹脂を材料とすることを特徴とする請求項1に記載の検査プローブ。
【請求項3】
検査対象物の検査に使用される検査プローブの製造方法であって、
固定端および前記固定端と電気的に接続する自由端を有するカンチレバー構造のニードル部を用意し、
第1のフォトリソグラフィ工程によって、前記ニードル部の表面に第1クラッド層を形成し、
第2のフォトリソグラフィ工程によって、前記第1クラッド層の上面の一部に前記第1クラッド層よりも屈折率の高いコア部を形成し、
第3のフォトリソグラフィ工程によって、前記コア部を覆うように前記第1クラッド層の上面に前記第1クラッド層と同じ屈折率の第2クラッド層を形成し、
前記第1クラッド層および前記第2クラッド層により構成されるクラッド部によって前記コア部が覆われた光導波路を、前記光導波路の前記検査対象物の光信号端子と対向する一方の端面を前記ニードル部の前記自由端の前記検査対象物の電気信号端子と接続する先端の向きと同一方向に向けて前記ニードル部
の内部に
埋め込んで形成し、
コーナー部により連結された複数の直線部分を有する前記光導波路において、前記直線部分を相互に離間させて前記コーナー部に空気層を設ける
ことを特徴とする検査プローブの製造方法。
【請求項4】
前記第1クラッド層、前記コア部および前記第2クラッド層が、光硬化性樹脂であることを特徴とする請求項
3に記載の検査プローブの製造方法。
【請求項5】
電気信号が伝搬する電気信号端子と光信号が伝搬する光信号端子を有する検査対象物の検査に使用される検査装置であって、
基板と、
前記基板に固定された固定端および前記固定端と電気的に接続する自由端を有するカンチレバー構造のニードル部、および、前記検査対象物の前記光信号端子と対向する一方の端面の向きを前記ニードル部の前記自由端の前記検査対象物の前記電気信号端子と接続する先端の向きと同一にして前記ニードル部
の内部に
埋め込んで形成された光導波路を有する検査プローブと、
前記光導波路の他方の端面に光学的に接続する光信号伝送路と
を備え、
コーナー部により連結された複数の直線部分を有する前記光導波路において、前記直線部分を相互に離間させて前記コーナー部に空気層を設け、
前記自由端の先端と前記一方の端面の相対的な位置関係が、前記電気信号端子と前記光信号端子の相対的な位置関係に対応することを特徴とする検査装置。
【請求項6】
前記光導波路が、光硬化性樹脂を材料とすることを特徴とする請求項
5に記載の検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象物の特性の検査に使用される検査プローブ、検査プローブの製造方法および検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンフォトニクス技術を用いて、電気信号と光信号が伝搬する半導体素子(以下において「オプトデバイス」という。)がシリコン基板などに形成される。オプトデバイスの特性をウェハ状態で検査するために、電気信号が伝搬する電気プローブと光信号が伝搬する光プローブを用いて、オプトデバイスとテスタなどの計測装置が接続される。例えば、導電性材料からなるプローブが電気プローブとして使用され、光ファイバが光プローブとして使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、オプトデバイスとの位置合わせを電気プローブと光プローブについて別々に行うことにより、検査に要する時間が増大する。上記問題点に鑑み、本発明は、オプトデバイスの検査に要する時間を抑制できる検査プローブ、検査プローブの製造方法および検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、固定端および固定端と電気的に接続する自由端を有するカンチレバー構造のニードル部と、検査対象物の光信号端子と対向する一方の端面をニードル部の自由端の検査対象物の電気信号端子と接続する先端の向きと同一方向に向けてニードル部の内部に埋め込んで形成された光導波路とを備え、コーナー部により連結された複数の直線部分を有する光導波路において、直線部分を相互に離間させてコーナー部に空気層を設けている検査プローブが提供される。
【0006】
本発明の他の態様によれば、第1のフォトリソグラフィ工程によってカンチレバー構造のニードル部の表面に第1クラッド層を形成し、第2のフォトリソグラフィ工程によって第1クラッド層の上面の一部に第1クラッド層よりも屈折率の高いコア部を形成し、第3のフォトリソグラフィ工程によってコア部を覆うように第1クラッド層の上面に第1クラッド層と同じ屈折率の第2クラッド層を形成する検査プローブの製造方法が提供される。第1クラッド層および第2クラッド層により構成されるクラッド部によってコア部が覆われた光導波路が、検査対象物の光信号端子と対向する光導波路の一方の端面をニードル部の自由端の検査対象物の電気信号端子と接続する先端の向きと同一方向に向けてニードル部の内部に埋め込んで形成される。コーナー部により連結された複数の直線部分を有する光導波路において、直線部分を相互に離間させてコーナー部に空気層を設ける。
【0007】
本発明の更に他の態様によれば、基板に固定された固定端および固定端と電気的に接続する自由端を有するカンチレバー構造のニードル部、および、検査対象物の光信号端子と対向する一方の端面の向きをニードル部の自由端の検査対象物の電気信号端子と接続する先端の向きと同一にしてニードル部の内部に埋め込んで形成された光導波路を有する検査プローブと、光導波路の他方の端面に光学的に接続する光信号伝送路とを備える検査装置が提供される。コーナー部により連結された複数の直線部分を有する光導波路において、直線部分を相互に離間させてコーナー部に空気層を設けている。ニードル部の自由端の先端と光導波路の一方の端面の相対的な位置関係が、被検査体の電気信号端子と光信号端子の相対的な位置関係に対応する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、オプトデバイスの検査に要する時間を抑制できる検査プローブ、検査プローブの製造方法および検査装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る検査装置の構成を示す模式図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係る検査プローブの構成を示す模式図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係る検査プローブの受光面の形状を示す模式図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態に係る検査プローブの受光面の他の形状を示す模式図である。
【
図6】本発明の第1の実施形態に係る検査プローブの光導波路のコーナー部の形状を示す模式図である。
【
図7】本発明の第1の実施形態に係る検査プローブの光導波路のコーナー部の他の形状を示す模式図である。
【
図8】本発明の第1の実施形態に係る検査プローブの光導波路のコーナー部の更に他の形状を示す模式図である。
【
図9】本発明の第1の実施形態に係る検査プローブの製造方法を説明するための工程図である(その1)。
【
図10】本発明の第1の実施形態に係る検査プローブの製造方法を説明するための工程図である(その2)。
【
図11】本発明の第1の実施形態に係る検査プローブの製造方法を説明するための工程図である(その3)。
【
図12】本発明の第1の実施形態に係る検査プローブの製造方法を説明するための工程図である(その4)。
【
図13】本発明の第1の実施形態に係る検査プローブの製造方法を説明するための工程図である(その5)。
【
図14】本発明の第1の実施形態に係る検査プローブの製造方法を説明するための工程図である(その6)。
【
図15】本発明の第1の実施形態に係る検査プローブの製造方法を説明するための工程図である(その7)。
【
図16】本発明の第1の実施形態に係る検査プローブの製造方法を説明するための工程図である(その8)。
【
図17】本発明の第1の実施形態に係る検査プローブの製造方法を説明するための工程図である(その9)。
【
図18】本発明の第1の実施形態に係る検査プローブの他の製造方法を説明するための模式図である。
【
図19】本発明の第2の実施形態に係る検査プローブの構成を示す断面図である。
【
図20】本発明の第2の実施形態に係る検査プローブの構成を示す側面図である。
【
図21】本発明の第2の実施形態に係る検査プローブの製造方法を説明するための工程図である(その1)。
【
図22】本発明の第2の実施形態に係る検査プローブの製造方法を説明するための工程図である(その2)。
【
図23】本発明の第2の実施形態に係る検査プローブの製造方法を説明するための工程図である(その3)。
【
図24】本発明の第2の実施形態に係る検査プローブの製造方法を説明するための工程図である(その4)。
【
図25】本発明の第2の実施形態に係る検査プローブの製造方法を説明するための工程図である(その5)。
【
図26】本発明の第2の実施形態に係る検査プローブの製造方法を説明するための工程図である(その6)。
【
図27】本発明の第2の実施形態に係る検査プローブの製造方法を説明するための工程図である(その7)。
【
図28】本発明の第2の実施形態に係る検査プローブの製造方法を説明するための工程図である(その8)。
【
図29】本発明の第2の実施形態に係る検査プローブの製造方法を説明するための工程図である(その9)。
【
図30】本発明の第2の実施形態の変形例に係る検査プローブの製造方法を説明するための工程図である(その1)。
【
図31】本発明の第2の実施形態の変形例に係る検査プローブの製造方法を説明するための工程図である(その2)。
【
図32】本発明の第2の実施形態の変形例に係る検査プローブの製造方法を説明するための工程図である(その3)。
【
図33】本発明の第2の実施形態の変形例に係る検査プローブの製造方法を説明するための工程図である(その4)。
【
図34】本発明の第2の実施形態の変形例に係る検査プローブの製造方法を説明するための工程図である(その5)。
【
図35】本発明の第2の実施形態の変形例に係る検査プローブの製造方法を説明するための工程図である(その6)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各部の厚みの比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。以下に示す実施形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の実施形態は、構成部品の材質、形状、構造、配置などを下記のものに特定するものでない。
【0011】
(第1の実施形態)
図1に示す第1の実施形態に係る検査装置1は、検査対象物3の特性の検査に使用される。検査装置1は、基板10、基板10に固定された検査プローブ20、および検査プローブ20に接続された光信号伝送路30を備える。基板10は、支持基板11とプリント基板12を積層した構成である。
【0012】
検査対象物3は、電気信号が伝搬する電気信号端子と光信号が伝搬する光信号端子を有するオプトデバイスである。検査対象物3は、特に限定されるものではないが、例えばシリコンフォトニクスデバイス、垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)などの半導体素子である。例えば、
図2に例示した検査対象物3は、電気信号端子301が信号入力端子、光信号端子302が発光部のVCSELの例である。検査対象物3は、電気信号端子301と光信号端子302の形成された面を検査プローブ20に対向して、ステージ2に配置される。
【0013】
検査プローブ20は、固定端212および固定端212と電気的に接続する自由端211を有するカンチレバー構造のニードル部21と、ニードル部21の表面上に形成された光導波路22を備える。ここで、ニードル部21の検査対象物3に向く面を下面、下面に対向する面を上面、下面から上面に向かう面を側面とする。例えば
図3に示すように、ニードル部21の側面に光導波路22が配置される。ただし、ニードル部21の下面や上面に光導波路22を配置してもよい。
【0014】
図1および
図3に示すように、検査プローブ20のニードル部21の自由端211は、検査対象物3と対向する。そして、光導波路22の一方の端面(以下において「受光面221」という。)は、自由端211と同一方向を向いており、受光面221は検査対象物3に対向する。また、光導波路22の他方の端面(以下において「接続面222」という。)は、光信号伝送路30と光学的に接続する。なお、「光学的に接続」とは、直接に接触している接続や離間した領域を光が伝搬する接続を含む概念である。
【0015】
検査対象物3の検査時には、
図3に示すように、ニードル部21の自由端211が検査対象物3の電気信号端子301と接続し、光導波路22の受光面221が検査対象物3の光信号端子302と光学的に接続する。このため、検査対象物3から出力された光信号Lは、受光面221に入射して光導波路22を伝搬し、接続面222から光信号伝送路30の一方の端部に入射する。検査対象物3の検査プローブ20と対向する面の上方からみて(以下、「平面視」という。)、自由端211と受光面221の相対的な位置関係は、検査対象物3の電気信号端子301と光信号端子302の相対的な位置関係に対応する。
【0016】
例えば、
図2に示す検査対象物3に対して、平面視において電気信号端子301に自由端211が重なり、光信号端子302に受光面221が重なる。このように、自由端211が電気信号端子301に接触した状態において、受光面221が光信号端子302に対向するように、光導波路22がニードル部21に配置されている。このとき、検査に有効な強度で光信号Lが受光面221に入射するように、光信号端子302と受光面221が対向する。
【0017】
検査プローブ20のニードル部21の固定端212は、支持基板11の表面に配置された接続端子110と電気的に接続されて、支持基板11に固定されている。接続端子110は、支持基板11の内部に配置された内部配線111に接続する。支持基板11には、例えば、MLO(Multi-Layer Organic)やMLC(Multi-Layer Ceramic)などの多層配線基板を使用できる。
【0018】
支持基板11の内部配線111は、プリント基板12に形成された基板配線121と電気的に接続する。基板配線121は、プリント基板12に配置されたテスターランド120に接続する。つまり、ニードル部21がテスターランド120と電気的に接続する。テスターランド120は、図示を省略するテスタに接続する。
【0019】
プリント基板12は、プリント基板12よりも剛性の高いスティフナ40に固定されている。スティフナ40は、プリント基板12の機械的強度を確保すると共に、検査プローブ20を固定する支持体としても使用されている。
【0020】
上記のように、検査プローブ20のニードル部21がテスタと電気的に接続して、テスタと検査対象物3との間でニードル部21を介して電気信号が伝搬する。ニードル部21には導電性材料が使用され、例えばニッケル(Ni)合金などの金属がニードル部21に使用される。
【0021】
光導波路22の接続面222と一方の端部が光学的に接続する光信号伝送路30は、他方の端部でO/E変換コネクト50に接続する。O/E変換コネクト50は、光信号伝送路30を伝搬した光信号Lを電気信号に変換し、電気信号をテスタに送信する。光信号伝送路30は、例えば光ファイバなどが好適に使用される。上記のように、テスタと検査対象物3との間で、光導波路22を介して光信号Lが伝搬する。
【0022】
光信号伝送路30は、光導波路22と接続する端部が支持基板11の下面に露出して、支持基板11を貫通している。光信号伝送路30は、プリント基板12およびスティフナ40に設けられた開口部を通過して、プリント基板12に配置されたO/E変換コネクト50に接続する。なお、光導波路22の接続面222を凸球面にレンズ加工して、接続面222から出力された光信号Lの集光性を高めてもよい。
【0023】
また、光導波路22の受光面221の形状を、検査対象物3から出力される光信号Lを受光しやすいように加工してもよい。例えば、
図4に示すように、受光面221をレンズ加工により凸球面にしてもよい。或いは、
図5に示すように、先端角を90度程度にして受光面221を尖らせてもよい。
【0024】
なお、光導波路22のコーナー部は、光信号Lの伝送損失を抑制するために任意の形状にすることができる。後述するように光導波路22をフォトリソグラフィ技術で形成するため、光導波路22を所望の形状に形成することは容易である。
【0025】
例えば、
図6に示すように、光導波路22のコーナー部をR面取りしてもよい。これにより、コーナー部で光信号Lが散乱し、反射しにくくなる。或いは、
図7に示すように、光導波路22の直線部分を相互に離間させて、コーナー部に空気層を設けてもよい。また、
図8に示すように、コーナー部をC面取りしてもよい。コーナー部を
図7や
図8に示す形状に高い精度で加工することにより、光信号Lの反射による伝送損失を抑制できる。
【0026】
以下に、検査装置1を用いた検査方法について説明する。検査対象物3の検査では、検査対象物3と検査プローブ20の位置合わせを行う。この位置合わせは、例えば、検査対象物3が搭載面に搭載されたステージ2を、搭載面と平行な方向に移動させたり、搭載面の面法線方向を中心軸として回転させたりして行われる。
【0027】
その後、ニードル部21の自由端211と検査対象物3の電気信号端子301の位置が平面視で一致している状態で、検査対象物3と検査プローブ20の距離を変化させる。例えば、ステージ2を検査装置1の方向に移動させて、ニードル部21の自由端211を検査対象物3の電気信号端子301と電気的に接続する。このとき、ニードル部21の自由端211と光導波路22の受光面221の相対的な位置関係が、検査対象物3の電気信号端子301と光信号端子302の相対的な位置関係に対応しているため、受光面221が光信号端子302と対向する。
【0028】
そして、検査プローブ20を介して、検査対象物3とテスタとの間で電気信号や光信号が伝搬して、検査対象物3の特性を検査する。例えば、検査プローブ20のニードル部21を介して、テスタから送信された電気信号が検査対象物3の電気信号端子301に入力される。そして、検査対象物3から出力された光信号Lが、光導波路22の受光面221により受光される。光信号Lは、光導波路22および光信号伝送路30を伝搬して、O/E変換コネクト50により電気信号に変換される。光信号Lを光電変換した電気信号がテスタに送信され、検査対象物3の特性が検査される。なお、テスタの仕様に合わせて、上記のように光信号Lを電気信号に変換してからテスタに入力してもよいし、光信号Lをそのままテスタに入力してもよい。
【0029】
上記のように、検査プローブ20のニードル部21が電気プローブとして機能し、光導波路22が光プローブとして機能する。なお、ニードル部21には、一方の側面から他方の側面に貫通する空洞210が設けられている。ニードル部21に空洞210を設けることにより、ニードル部21に伸縮性を持たせることができる。このため、ニードル部21を検査対象物3に接触させる際にオーバードライブをかけて、所定の針圧でニードル部21と検査対象物3を接触させることができる。これにより、ニードル部21と検査対象物3の電気的な接続を確実にすることができる。
【0030】
なお、
図3に例示したように、自由端211が検査対象物3の表面に接触した状態において、受光面221が検査対象物3から離間している。これにより、光導波路22との接触によって検査対象物3が損傷することを抑制できる。ただし、受光面221が検査対象物3に接触した状態で検査対象物3を検査してもよい。
【0031】
検査装置1を用いて検査対象物3を正確に検査するために、検査プローブ20の自由端211が検査対象物3の電気信号端子301と接続したときに、受光面221が検査対象物3の光信号端子302と高い位置精度で対向する必要がある。このため、自由端211と受光面221の相対的な位置関係の精度が高い必要がある。
【0032】
後述するように、検査プローブ20の光導波路22は、フォトリソグラフィ技術を用いてニードル部21に形成される。このため、自由端211と受光面221の相対的な位置関係の精度を高くして、光導波路22をニードル部21に配置することができる。したがって、ニードル部21を検査対象物3の電気信号端子301に対して位置合わせすることにより、光導波路22についても同時に検査対象物3の光信号端子302に対して位置合わせされる。このため、検査プローブ20と検査対象物3とを短時間で位置合わせできる。
【0033】
上記のように、検査プローブ20を備える検査装置1によれば、検査対象物3の検査に要する時間を抑制できる。更に、ニードル部21と検査対象物3の電気信号端子301、および、光導波路22と検査対象物3の光信号端子302が、同時に所定の位置精度で接続される。このため、検査対象物3に対する電気的検査と光学的検査を並行して行うこともできる。
【0034】
図1では、1の検査対象物3に対して1の検査プローブ20を使用する場合を例示的に示した。一方、検査対象物3の信号端子の構成に応じて、1の検査対象物3の検査に複数の検査プローブ20を使用してもよい。また、検査装置1に配置する検査プローブ20の個数を増やすことにより、同時に複数個の検査対象物3を検査することもできる。
【0035】
以下に、図面を参照して検査プローブ20の製造方法を説明する。まず、固定端212と自由端211を有するカンチレバー構造のニードル部21を用意する。例えば、固定端212から自由端211までが一体成形されたニードル部21を用意する。そして、
図9に示すように、一方の側面を基材200の表面に固定したニードル部21の他方の側面に、第1クラッド層201を形成する。第1クラッド層201には、例えばエポキシ系の感光性材料を使用する。ここでは、第1クラッド層201の材料に光硬化性樹脂を使用する。
【0036】
次いで、
図10に示すように、マスク材61を用いて第1クラッド層201の所定の領域に紫外線を照射(以下、「UV露光」という。)する。そして、
図11に示すように、現像処理によって、第1クラッド層201のUV露光した領域のみをニードル部21の表面に残す。以上の第1のフォトリソグラフィ工程により、光導波路22の一部を形成する。
【0037】
その後、
図12に示すように、第1クラッド層201の上面にコア層202を形成する。コア層202には、第1クラッド層201と同様に、例えばエポキシ系の感光性材料を使用する。ただし、コア層202の材料には、第1クラッド層201の材料よりも屈折率の高い材料を使用する。ここでは、コア層202の材料に光硬化性樹脂を使用する。
【0038】
次いで、
図13に示すように、マスク材62を用いてコア層202の所定の領域をUV露光する。具体的には、第1クラッド層201の上面の一部にコア層202が残るように、コア層202のUV露光する領域の外縁を第1クラッド層201の外縁よりも内側にする。そして、
図14に示すように、現像処理によって、コア層202のUV露光した領域のみを第1クラッド層201の上面に残す。以上の第2のフォトリソグラフィ工程により、光導波路22のコア部を形成する。
【0039】
次に、
図15に示すように、コア層202および第1クラッド層201を覆って、第1クラッド層201と同じ屈折率の第2クラッド層203を形成する。例えば、第2クラッド層203に、第1クラッド層201と同じ材料を使用する。その後、
図16に示すように、マスク材63を用いて第2クラッド層203の所定の領域をUV露光する。そして、
図17に示すように、現像処理によって、コア層202の周囲を残して第2クラッド層203を除去する。以上の第3のフォトリソグラフィ工程により、第1クラッド層201の上面に、コア層202を覆って第2クラッド層203を形成する。
【0040】
以上により、フォトリソグラフィ技術を用いて、第1クラッド層201および第2クラッド層203により構成されるクラッド部によってコア部が覆われた光導波路22が完成する。その後、ニードル部21から基材200を剥離する。
【0041】
なお、上記ではニードル部21の側面に光導波路22を形成する場合を説明したが、同様のフォトリソグラフィ技術により、ニードル部21の下面や上面に光導波路22を形成してもよい。ニードル部21の下面や上面に光導波路22を形成する場合には、
図18に示すように、側面を基材200の表面に固定したニードル部21に隣接させて、基材200の表面に光導波路22を形成する。その後、ニードル部21および光導波路22から基材200を剥離する。
【0042】
第1クラッド層201、コア層202および第2クラッド層203の膜厚や材料は、光導波路22に要求される仕様などに応じて任意に選択が可能である。例えば、光信号Lの伝送損失を抑制するように、光導波路22の構造や材料が選択される。
【0043】
また、光導波路22の材料には、シート状の材料を張り付けるシートタイプや液状の材料を塗布するレジストタイプなどを使用できる。シートタイプは、ラミネートや真空プレスで熱圧着できるため、取り扱いが容易である。また、シートタイプでは膜厚を均一に高精度で管理できる。
【0044】
なお、ニードル部21の材料は、光導波路22の製造プロセスによる影響を受けにくい材料を選択する。例えば、Ni合金がニードル部21の材料に好適に使用される。Ni合金は、シートタイプの材料を光導波路22に使用した場合に、シートタイプの材料をラミネートする時の熱に影響されない。
【0045】
以上に説明した検査プローブ20の製造方法によれば、フォトリソグラフィ技術を用いて光導波路22がニードル部21に形成される。このため、ニードル部21の自由端211と光導波路22の受光面221の相対的な位置を、高い精度で調整できる。フォトリソグラフィ技術を用いて製造された検査プローブ20によれば、ニードル部21を検査対象物3の電気信号端子301に対して位置合わせすることにより、光導波路22についても検査対象物3の光信号端子302に対して位置合わせされる。したがって、検査プローブ20と検査対象物3との位置合わせが容易である。このため、検査対象物3の検査に要する時間を抑制できる。
【0046】
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係る検査プローブ20では、
図19および
図20に示すように、ニードル部21の表面に光導波路22が埋め込まれている。
図19は、
図20のXIX-XIX方向に沿った断面図であり、ニードル部21の側面に光導波路22が埋め込まれている。第2の実施形態に係る検査装置は、検査プローブ20の光導波路22がニードル部21に埋め込まれている点が、ニードル部21の表面上に光導波路22が形成された第1の実施形態と異なる。その他の構成については、
図1に示す第1の実施形態と同様である。
【0047】
以下に、図面を参照して第2の実施形態に係る検査プローブ20の製造方法を説明する。まず、基材200の表面に第1クラッド層201を形成した後、
図10~
図11を参照して説明した方法と同様の第1のフォトリソグラフィ工程により、
図21に示すように第1クラッド層201を形成する。
【0048】
次いで、第1クラッド層201を覆うようにコア層202を形成した後、
図13~
図14を参照して説明した方法と同様の第2のフォトリソグラフィ工程により、
図22に示すように第1クラッド層201の上面の一部にコア層202を残す。
【0049】
その後、コア層202を覆うように第2クラッド層203を形成した後、
図16~
図17を参照して説明した方法と同様の第3のフォトリソグラフィ工程により、
図23に示すようにコア層202の周囲を残して第2クラッド層203を除去する。これにより、基材200の表面に光導波路22が形成される。
【0050】
次に、
図24に示すように、基材200および光導波路22の表面を覆って、後述する電気メッキ工程で使用するメッキ電極膜70を形成する。メッキ電極膜70は、例えば膜厚1μm程度の銅(Cu)膜である。そして、
図25に示すように、メッキ電極膜70の上面に光硬化性のレジスト膜80を形成する。その後、
図26に示すようにマスク材64を用いて、メッキ電極膜70を露出させる領域を除いてレジスト膜80の一部をUV露光する。
【0051】
次いで、
図27に示すように、レジスト膜80のUV露光されなかった領域を現像処理によって除去する。そして、メッキ電極膜70を電極とする電気メッキ工程により、
図28に示すようにニードル部21を形成する。ニードル部21の材料は、例えばNi合金などである。その後、
図29に示すように、ニードル部21の外側に残存しているレジスト膜80やメッキ電極膜70をエッチング除去する。以上により、ニードル部21の表面に光導波路22が埋め込まれた検査プローブ20が完成する。
【0052】
基材200が有機素材などである場合に、上記のようにメッキ電極膜70を形成する工程が必要である。メッキ電極膜70には、エッチング除去が容易なCu膜などが好適に使用される。Cu膜以外に、ニッケル膜、パラジウム(Pd)膜、クロム(Cr)膜などが、用途や価格に応じてメッキ電極膜70に使用される。なお、無電解メッキ法などによりニードル部21を形成してもよい。
【0053】
ニードル部21の材料には、検査プローブ20の製造プロセスによる影響を受けにくい材料を選択する。例えば、Ni合金は、メッキ電極膜70として使用する銅膜をエッチング除去する薬剤などに影響されない。
【0054】
なお、上記ではニードル部21の側面に光導波路22を埋め込む場合を説明したが、ニードル部21の上面や下面に光導波路22を埋め込んでもよい。他は、第1の実施形態と実質的に同様であり、重複した記載を省略する。
【0055】
<変形例>
上記では、ニードル部21に埋め込まれた光導波路22がニードル部21の表面に露出する構成を説明したが、光導波路22の全体をニードル部21の内部に埋め込む構成にしてもよい。以下に、光導波路22の全体がニードル部21に埋め込まれた検査プローブ20の製造方法の例を説明する。
【0056】
まず、
図30に示すように、基材200に固定した第1ニードル材21Aの上面に、第1クラッド層201を形成する。その後、
図10~
図17を参照して説明した方法と同様にして、コア層202および第2クラッド層203を形成し、
図31に示すように第1ニードル材21Aの上面に光導波路22を形成する。
【0057】
次いで、
図32に示すように、基材200、第1ニードル材21Aおよび光導波路22の表面を覆って、メッキ電極膜70を形成する。そして、メッキ電極膜70の上面に光硬化性のレジスト膜80を形成した後、
図33に示すようにマスク材65を用いて、メッキ電極膜70を露出させる領域を除いてレジスト膜80の一部をUV露光する。そして、レジスト膜80のUV露光されなかった領域を現像処理によって除去する。
【0058】
その後、メッキ電極膜70を電極とする電気メッキ工程により、
図34に示すように第2ニードル材21Bを形成する。そして、第1ニードル材21Aと第2ニードル材21Bの外側に残存しているレジスト膜80やメッキ電極膜70をエッチング除去する。以上により、
図35に示すように、第1ニードル材21Aと第2ニードル材21Bにより構成されるニードル部21の内部に光導波路22が埋め込まれた検査プローブ20が完成する。
【0059】
(その他の実施形態)
上記のように本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0060】
例えば、上記ではUV露光と現像処理により光導波路22を形成する場合を説明したが、フォトリソグラフィ技術によりパターニングしたエッチングマスクを用いたエッチング処理によって光導波路22を形成してもよい。
【0061】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態などを含むことはもちろんである。
【符号の説明】
【0062】
1…検査装置
2…ステージ
3…検査対象物
10…基板
11…支持基板
12…プリント基板
20…検査プローブ
21…ニードル部
22…光導波路
30…光信号伝送路
40…スティフナ
50…O/E変換コネクト
211…自由端
212…固定端
221…受光面
222…接続面
301…電気信号端子
302…光信号端子