(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】撮像装置、撮像アクセサリ、および、中間アクセサリ
(51)【国際特許分類】
G03B 17/14 20210101AFI20240227BHJP
G03B 11/00 20210101ALI20240227BHJP
G02B 7/02 20210101ALI20240227BHJP
G02B 7/08 20210101ALI20240227BHJP
G02B 7/34 20210101ALI20240227BHJP
G03B 13/36 20210101ALI20240227BHJP
H04N 23/66 20230101ALI20240227BHJP
H04N 23/70 20230101ALI20240227BHJP
H04N 23/55 20230101ALI20240227BHJP
G02B 7/28 20210101ALI20240227BHJP
【FI】
G03B17/14
G03B11/00
G02B7/02 H
G02B7/02 E
G02B7/02 Z
G02B7/08 C
G02B7/34
G03B13/36
H04N23/66
H04N23/70
H04N23/55
G02B7/28 N
(21)【出願番号】P 2019216648
(22)【出願日】2019-11-29
【審査請求日】2022-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【氏名又は名称】水本 敦也
(74)【代理人】
【識別番号】100121614
【氏名又は名称】平山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】高梨 豪也
【審査官】▲うし▼田 真悟
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/031867(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/038934(WO,A1)
【文献】特開平10-268382(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 17/14
G03B 11/00
G02B 7/02-7/16
H04N 23/40-23/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォーカスレンズと絞りとを有する撮像アクセサリを着脱可能な撮像装置であって、
前記撮像アクセサリと通信可能な通信手段と、
前記撮像アクセサリの撮像光学系により形成された光学像を光電変換して画像データを出力する撮像手段と、
露出を制御する露出制御手段と、
デフォーカス量に基づいて前記フォーカスレンズの駆動を制御するフォーカス制御手段と、を有し、
前記通信手段は、
前記撮像アクセサリに対して絞り制御の要求を送信し、
前記絞り制御の際の絞り位置と
前記撮像手段に入射する光の光量変化との関係を示す第1情報と、絞り位置に対応する第2情報と、前記絞り位置と前記撮像アクセサリの光の透過率とに対応する第3情報と、を受信し、
前記透過率は、前記撮像光学系の光軸からの距離に応じて変化し、
前記露出制御手段は、前記第1情報と前記第
2情報とに基づいて前記露出を制御し、
前記フォーカス制御手段は、前記第3情報に基づいて算出されたデフォーカス量に基づいて前記フォーカスレンズの駆動を制御することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記フォーカス制御手段は、前記撮像アクセサリに対する前記デフォーカス量に基づくフォーカス制御信号の送信を前記通信手段に実行させることで前記フォーカスレンズの駆動を制御することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記第1情報は、F値と
、前記透過率に応じて変化するT値との対応関係を示す情報を含み、
前記通信手段は、前記撮像アクセサリの装着に対応して前記第
1情報を取得することを特徴とする請求項1または2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記第
1情報は、
前記F値と
前記T値との対応関係を示す
前記情報を、フォーカスレンズ位置ごとに有することを特徴とする請求項3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記第
1情報は、
前記F値と
前記T値との対応関係を示す
前記情報を、ズームレンズ位置ごとに有することを特徴とする請求項3または4に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記通信手段は、前記第1情報として、撮像蓄積のタイミングまたは撮像蓄積の周期で現在の絞り位置に対応する情報を取得することを特徴とする請求項1または2に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記通信手段は、現在の絞り位置に対応する前記第
2情報および前記第3情報を、所定の周期で取得することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記通信手段は、前記撮像アクセサリのズーム位置、フォーカス位置、および絞り位置の少なくとも一つ
の変化に
関する第4情報を受信し、
前記露出制御手段は、前記第4情報に基づいて光学状態が変わったと判定した場合、前記第1情報の参照先を切り替えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記通信手段は、前記撮像アクセサリのズーム位置、フォーカス位置、および絞り位置の少なくとも一つ
の変化に
関する第4情報を受信し、
前記露出制御手段は、前記第4情報に基づいて光学状態が変わったと判定した場合、前記撮像アクセサリから前記第1情報および前記第3情報の少なくとも一方を再取得することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項10】
前記第3情報は、瞳強度分布に基づくF値に対応する情報であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項11】
前記第3情報は、被写界深度に基づくF値に対応する情報であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項12】
前記所定の周期は、撮像蓄積の周期に対応することを特徴とする請求項7に記載の撮像装置。
【請求項13】
前記所定の周期は、焦点検出の周期に対応することを特徴とする請求項7に記載の撮像装置。
【請求項14】
前記通信手段は、現在の絞り位置に対応する前記第
2情報および前記第3情報を、撮像蓄積に対応するタイミングまたは焦点検出のタイミングで取得することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項15】
前記通信手段は、前記撮像アクセサリとの間に装着可能な中間アクセサリと通信可能であることを特徴とする請求項1乃至14のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項16】
前記通信手段は、第1通信回路と、前記第1通信回路とは異なる第2通信回路と、を有し、
前記第1通信回路は、前記撮像アクセサリとの通信のための回路であり、
前記第2通信回路は、前記中間アクセサリとの通信のための回路であることを特徴とする請求項15に記載の撮像装置。
【請求項17】
前記第1情報および前記第2情報が前記撮像アクセサリまたは前記中間アクセサリのいずれに記憶されているかを判定する判定手段を更に有し、
前記通信手段は、
前記中間アクセサリの識別情報を受信し、
前記撮像アクセサリに対して、前記中間アクセサリの識別情報を送信し、
前記判定手段による判定結果に基づいて、前記第1情報および前記第2情報を前記撮像アクセサリまたは前記中間アクセサリから受信することを特徴とする請求項15または16に記載の撮像装置。
【請求項18】
前記通信手段は、
前記撮像アクセサリのズーム位置、フォーカス位置および絞り位置の少なくとも1つ
の変化に
関する第4情報を受信し、
前記露出制御手段は、前記第4情報に基づいて光学状態が変わったと判定した場合、前記第1情報の参照先を切り替えることを特徴とする請求項15乃至17のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項19】
前記通信手段は、
前記第1情報が変化したことを示す第4情報を受信し、
前記露出制御手段は、前記第4情報に基づいて光学状態が変わったと判定した場合、前記第1情報を再取得することを特徴とする請求項15乃至18のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項20】
フォーカスレンズと絞りとを有する撮像アクセサリを着脱可能な撮像装置であって、
前記撮像アクセサリと通信可能な通信手段と、
前記撮像アクセサリの撮像光学系により形成された光学像を光電変換して画像データを出力する撮像手段と、
デフォーカス量に基づいて前記フォーカスレンズの駆動を制御するフォーカス制御手段と、を有し、
前記通信手段は、絞り位置に対応する第2情報および前記絞り位置と前記撮像アクセサリの光の透過率とに対応する第3情報との関係を示す第5情報を取得し、
前記透過率は、前記撮像光学系の光軸からの距離に応じて変化し、
前記フォーカス制御手段は、前記第5情報に基づいて算出されたデフォーカス量に基づいて前記フォーカスレンズの駆動を制御することを特徴とする撮像装置。
【請求項21】
前記通信手段は、前記第5情報を、前記撮像アクセサリの装着に対応してもしくは周期的に取得することを特徴とする請求項20に記載の撮像装置。
【請求項22】
撮像装置に対して着脱可能な撮像アクセサリであって、
前記撮像装置と通信可能な通信手段と、
絞りおよび光学部材と、
前記通信手段を介して前記撮像装置から受信した絞り制御の要求に基づいて、前記絞りを制御する絞り制御手段と、
光学情報を記憶する記憶手段と、を有し、
前記記憶手段は、前記光学情報として、前記絞り制御の際の絞り位置と
前記撮像装置の撮像手段に入射する光の光量変化との関係を示す第1情報と、絞り位置に対応する第2情報と、前記絞り位置と前記撮像アクセサリの光の透過率とに対応する第3情報との少なくとも一つを記憶しており、
前記透過率は、撮像光学系の光軸からの距離に応じて変化し、
前記通信手段は、前記撮像装置に対して、前記光学情報を送信することを特徴とする撮像アクセサリ。
【請求項23】
前記第3情報は、瞳強度分布に基づくF値に対応する情報であることを特徴とする請求項22に記載の撮像アクセサリ。
【請求項24】
前記第3情報は、被写界深度に基づくF値に対応する情報であることを特徴とする請求項22に記載の撮像
アクセサリ。
【請求項25】
前記光学部材は、前記絞り制御による前記絞り位置の変化が前記光量変化、瞳強度分布の変化、または、被写界深度の変化の少なくとも一つと
線形な関係にならない部材であることを特徴とする請求項22乃至24のいずれか一項に記載の撮像アクセサリ。
【請求項26】
前記光学部材は、中心から径方向に向かって
前記透過率が変化する光学素子であることを特徴とする請求項22乃至25のいずれか一項に記載の撮像アクセサリ。
【請求項27】
前記光学部材は、前記撮像アクセサリに対して着脱可能であり、
前記通信手段は、前記撮像装置に対して、前記光学部材の取り外しまたは装着を示す信号を送信することを特徴とする請求項22乃至26のいずれか一項に記載の撮像アクセサリ。
【請求項28】
前記撮像アクセサリに対して、前記光学部材として複数の異なる特性を有する光学部材を付け替え可能であり、
前記記憶手段は、付け替え可能な複数の光学部材のそれぞれの前記光学情報を記憶しており、
前記通信手段は、前記撮像装置に対して、前記複数の光学部材のそれぞれの前記光学情報を送信することを特徴とする請求項22乃至27のいずれか一項に記載の撮像アクセサリ。
【請求項29】
前記通信手段は、前記撮像アクセサリの前記撮像装置への装着に対応して前記光学情報を送信するか、または、前記撮像装置からの要求に応答して所定のタイミングで前記光学情報を送信することを特徴とする請求項22乃至28のいずれか一項に記載の撮像アクセサリ。
【請求項30】
前記記憶手段は、前記光学情報として、前記撮像アクセサリと複数の異なる種類の中間アクセサリのそれぞれとの組み合わせに関する光学情報を記憶していることを特徴とする請求項22乃至29のいずれか一項に記載の撮像アクセサリ。
【請求項31】
前記撮像アクセサリと前記中間アクセサリとの組み合わせに関する前記光学情報が前記記憶手段に記憶されているか否かを判定する判定手段を更に有し、
前記通信手段は、
前記判定手段による判定結果を前記撮像装置へ送信し、
前記組み合わせに関する前記光学情報が前記記憶手段に記憶されている場合、前記撮像装置からの要求に応答して前記撮像装置へ前記組み合わせに関する前記光学情報を送信することを特徴とする請求項30に記載の撮像アクセサリ。
【請求項32】
撮像装置と、絞りおよび光学部材を有する撮像アクセサリとの間に装着可能な中間アクセサリであって、
前記撮像装置および前記撮像アクセサリと通信可能な通信手段と、
光学情報を記憶する記憶手段と、を有し、
前記通信手段は、
前記中間アクセサリの種類を特定する情報を前記撮像装置へ送信し、
前記撮像アクセサリの種類を特定する情報を前記撮像装置から受信し、
前記記憶手段は、前記光学情報として、前記絞り制御の際の絞り位置と
前記撮像装置の撮像手段に入射する光の光量変化との関係を示す第1情報と、絞り位置に対応する第2情報と、前記絞り位置と前記撮像アクセサリの光の透過率とに対応する第3情報との少なくとも一つを記憶しており、
前記透過率は、撮像光学系の光軸からの距離に応じて変化し、
前記通信手段は、前記撮像装置に対して、前記光学情報を送信することを特徴とする中間アクセサリ。
【請求項33】
前記第3情報は、瞳強度分布に基づくF値に対応する情報であることを特徴とする請求項32に記載の
中間アクセサリ。
【請求項34】
前記第3情報は、被写界深度に基づくF値に対応する情報であることを特徴とする請求項32に記載の
中間アクセサリ。
【請求項35】
前記撮像アクセサリと前記中間アクセサリとの組み合わせに関する前記光学情報が前記記憶手段に記憶されているか否かを判定する判定手段を更に有し、
前記通信手段は、
前記判定手段による判定結果を前記撮像装置へ送信し、
前記組み合わせに関する前記光学情報が前記記憶手段に記憶されている場合、前記撮像装置からの要求に応答して前記撮像装置へ前記組み合わせに関する前記光学情報を送信することを特徴とする請求項32乃至34のいずれか一項に記載の中間アクセサリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交換レンズ等のアクセサリを装着可能な撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カメラ本体(撮像装置)から交換レンズ(レンズ装置)への絞り制御命令を通信することで撮像光学系による光量の変化を制御し、光量の変化に応じて露出制御(AE制御)を行うレンズ交換式カメラシステムが知られている。また、撮像光学系の絞りの位置に応じて決定される口径から導かれる撮像素子に関する瞳強度分布情報に基づいて、オートフォーカス制御(AF制御)におけるピントずれ補正などの各種補正処理を行うレンズ交換式カメラシステムが知られている。
【0003】
ところで、撮像光学系を介して撮像装置へ入力される光量の変化が絞り制御と線形な関係にならないレンズ装置が存在する。このようなレンズ装置の一例として、撮影画像にボケ効果を付与することを目的としてフィルタを備えたレンズ装置がある。このようなレンズ装置は、光学中心から口径の径方向に向かって透過率が変化する構成を有し、特に開放口径付近で絞り制御量と撮像装置に入射する光量との間の線形性が保たれなくなる。このため、絞り制御により光量が線形に変化することを前提としたAE制御や瞳強度分布変化が線形に変化することを前提としたAF制御を適切に行うことができない。
【0004】
特許文献1には、通常の光学系にフィルタを差し込んでボケ効果を生み、装着されたフィルタの種類に応じて、記憶された絞り特性データを選択して絞りの制御を変更する撮像システムが開示されている。特許文献2には、アポタイゼーションフィルタの瞳強度分布の変化情報を参照してAF制御を行う方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平10-268382号公報
【文献】特許第6171106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された撮像システムは、絞り駆動パルスとF値およびT値との関係を示すデータを記憶している。しかしながら、特許文献1は、レンズ交換式カメラシステムに言及していない。仮に、特許文献1に開示された構成をレンズ交換式カメラシステムおよびレンズシステムに適用した場合、絞り制御を行う交換レンズに前述のデータを記憶させる必要がある。しかし、この方式では、カメラ本体はF値がユーザ設定として変更された場合に光量としてどれくらい変化するかを知ることができない。このため、例えばAv優先モードなどのユーザがF値の設定を変更するようなカメラモードにおいて、絞り制御による光量変化を正しく把握できないため、適正な露出制御を行うことができない。または、F値の変更量による光量の変化をカメラと交換レンズとの間で通信にてやり取りする必要が発生し、特に連写撮影中の駒速などに影響を与えてしまう。
【0007】
特許文献2には、AF制御として必要な複数のF値の情報を交換レンズから取得して選択的に使用することが開示されていない。このため、ピントずれ量の検出機能だけでなくレンズ駆動制御を含むAF制御を最適化することができない。また、特許文献1および特許文献2のいずれにも、AE制御とAF制御に最適なレンズ交換式カメラシステムにおける通信方式について開示されていない。
【0008】
そこで本発明は、適切なAE制御およびAF制御を実現することが可能な撮像装置、撮像アクセサリ、および、中間アクセサリを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面としての撮像装置は、フォーカスレンズと絞りとを有する撮像アクセサリを着脱可能な撮像装置であって、前記撮像アクセサリと通信可能な通信手段と、前記撮像アクセサリの撮像光学系により形成された光学像を光電変換して画像データを出力する撮像手段と、露出を制御する露出制御手段と、デフォーカス量に基づいて前記フォーカスレンズの駆動を制御するフォーカス制御手段とを有し、前記通信手段は、前記撮像アクセサリに対して絞り制御の要求を送信し、前記絞り制御の際の絞り位置と前記撮像手段に入射する光の光量変化との関係を示す第1情報と、絞り位置に対応する第2情報と、前記絞り位置と前記撮像アクセサリの光の透過率とに対応する第3情報とを受信し、前記透過率は、前記撮像光学系の光軸からの距離に応じて変化し、前記露出制御手段は、前記第1情報と前記第2情報とに基づいて前記露出を制御し、前記フォーカス制御手段は、前記第3情報に基づいて算出されたデフォーカス量に基づいて前記フォーカスレンズの駆動を制御する。
【0010】
本発明の他の側面としての撮像アクセサリは、撮像装置に対して着脱可能な撮像アクセサリであって、前記撮像装置と通信可能な通信手段と、絞りおよび光学部材と、前記通信手段を介して前記撮像装置から受信した絞り制御の要求に基づいて、前記絞りを制御する絞り制御手段と、光学情報を記憶する記憶手段とを有し、前記記憶手段は、前記光学情報として、前記絞り制御の際の絞り位置と前記撮像手段に入射する光の光量変化との関係を示す第1情報と、絞り位置に対応する第2情報と、前記絞り位置と前記撮像アクセサリの光の透過率とに対応する第3情報との少なくとも一つを記憶しており、前記透過率は、撮像光学系の光軸からの距離に応じて変化し、前記通信手段は、前記撮像装置に対して、前記光学情報を送信する。
【0011】
本発明の他の側面としての中間アクセサリは、撮像装置と、絞りおよび光学部材を有する撮像アクセサリとの間に装着可能な中間アクセサリであって、前記撮像装置および前記撮像アクセサリと通信可能な通信手段と、光学情報を記憶する記憶手段とを有し、前記通信手段は、前記中間アクセサリの種類を特定する情報を前記撮像装置へ送信し、前記撮像アクセサリの種類を特定する情報を前記撮像装置から受信し、前記記憶手段は、前記光学情報として、前記絞り制御の際の絞り位置と前記撮像手段に入射する光の光量変化との関係を示す第1情報と、絞り位置に対応する第2情報と、前記絞り位置と前記撮像アクセサリの光の透過率とに対応する第3情報との少なくとも一つを記憶しており、前記透過率は、撮像光学系の光軸からの距離に応じて変化し、前記通信手段は、前記撮像装置に対して、前記光学情報を送信する。
【0012】
本発明の他の目的及び特徴は、以下の実施例において説明される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、適切なAE制御およびAF制御を実現することが可能な撮像装置、撮像アクセサリ、および、中間アクセサリを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施例1における撮像装置およびアクセサリを含むカメラシステムの構成図である。
【
図2】実施例1における撮像装置とアクセサリとの間の通信回路のブロック図である。
【
図3】実施例1における通信モードM1での通信波形図である。
【
図4】実施例1における通信モードM2での通信波形図である。
【
図5】実施例1における通信モードM3での通信波形図である。
【
図6】実施例1における通信フォーマットを決定する方法を示すフローチャートである。
【
図7】実施例1における通信モードM2でのデータ通信を示すフローチャートである。
【
図8】実施例1における撮像装置とアクセサリとの間の初期通信を示すフローチャートである。
【
図9】実施例1におけるAE制御の際に使用するF値とT値とを変換するテーブルデータを通信するための通信内容の説明図である。
【
図10】実施例1における撮像装置を絞り優先モードに設定した場合の撮像装置とアクセサリとで連携する絞り制御の説明図である。
【
図11】実施例1におけるF値をT値に変換するためのテーブルデータ構成の説明図である。
【
図12】実施例1におけるズーム変化を考慮したF値をT値に変換するためのテーブルデータ構成の説明図である。
【
図13】実施例1における撮像装置をシャッター優先モードに設定した場合の撮像装置とアクセサリとで連携する絞り制御の説明図である。
【
図14】実施例1におけるT値をF値に変換するためのテーブルデータ構成の説明図である。
【
図15】実施例1におけるズーム変化を考慮したT値をF値に変換するためのテーブルデータ構成の説明図である。
【
図16】実施例1におけるAE制御およびAF制御の動作を含む定常的なライブビュー動作の説明図である。
【
図17】実施例1における撮像素子の概略図である。
【
図18】実施例1における撮像素子における受光の様子の説明図である。
【
図19】実施例1におけるAF制御部の動作を示すフローチャートである。
【
図20】実施例2における撮像装置およびアクセサリを含むカメラシステムの構成図である。
【
図21】実施例2におけるF値とT値とを変換するためのテーブルデータ構成の説明図である。
【
図22】実施例2におけるAE制御の際に使用するF値とT値とを変換するテーブルデータを通信するための通信内容の説明図である。
【
図23】実施例2におけるフィルタを切り替えた際の動作を示すフローチャートである。
【
図24】実施例3における撮像装置とアダプタとアクセサリを含むカメラシステムの構成図である。
【
図25】実施例3における撮像装置とアダプタとアクセサリの通信部の説明図である。
【
図26】実施例3における撮像装置とアダプタとアクセサリとの間で実施する初期通信を示すフローチャートである。
【
図27】実施例3における例外処理時の表示例の説明図である。
【
図28(A)】実施例3における第2通信の通信プロトコルのブロードキャスト通信の説明図である。
【
図28(B)】実施例3における第2通信の通信プロトコルのブロードキャスト通信の説明図である。
【
図29】実施例3における第2通信の通信プロトコルのP2P通信の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0016】
まず、本発明の実施例1におけるアクセサリとしての交換レンズおよび撮像装置としてのカメラ本体におけるAE制御、AF制御、および、通信制御方法について説明する。
【0017】
<構成図>
図1は、本実施例における撮像装置としてのカメラ本体200と、カメラ本体200に対して取り外し可能に装着された撮像アクセサリとしての交換レンズ(レンズ装置)100とを含む撮像システム(カメラシステム)10の構成図である。カメラ本体200と交換レンズ100は、それぞれが有する通信部(通信手段)208、103を介して制御命令や内部情報の伝送を行う。
【0018】
まず、交換レンズ100およびカメラ本体200の具体的な構成について説明する。交換レンズ100とカメラ本体200は、結合機構であるマウント400を介して機械的および電気的に接続されている。交換レンズ100は、マウント400に設けられた不図示の電源端子を介してカメラ本体200から電力の供給を受け、後述する各種アクチュエータやレンズマイクロコンピュータ(レンズマイコン)101の制御を行う。また、交換レンズ100とカメラ本体200は、マウント400に設けられた通信端子(
図2参照)を介して相互に通信を行う。
【0019】
交換レンズ100は、フォーカシングに際して移動するフォーカスレンズ105、ズーミングに際して移動するズームレンズ106、および、絞り109を有する。また交換レンズ100は、手振れなどを補正する補正レンズ108、および、光軸中心(光軸OA)から口径方向に向かって透過率が変化する光学素子107を含む撮像光学系を有する。レンズ電源回路104は、レンズマイコン101およびレンズ内の各種の駆動回路を制御するための駆動電力を管理する電源回路部であり、カメラ本体200の通信部208から電力を供給される。
【0020】
光学素子107は、レンズまたはフィルタ(NDフィルタ、アポダイゼーションフィルタともいう)により構成される。なお、フィルタは脱着可能な構成でもよい。光学素子107は、光軸中心から口径方向に向かって透過率が変化するように構成される。具体的には、中心部の透過率が周辺部の透過率よりも高い。絞り109は、絞り駆動回路116により開口径を調整することが可能である。すなわち、カメラ本体200の撮像素子(撮像手段)201に到達する光の光量を調節する光量調整手段として機能する。絞り位置センサ115は、絞り109の位置を検出する。ここで、絞り位置とは、絞り109の開口径または開口径に対応する絞りの駆動量等をいう。絞り駆動回路116は、絞り109を駆動する。
【0021】
フォーカス位置センサ110は、フォーカスレンズ105の位置(フォーカス位置)を検出する。フォーカスレンズ駆動回路111は、フォーカスレンズ105を駆動する。ズーム位置センサ113は、ズームレンズ106の位置(ズーム位置)を検出する。ズームレンズ駆動回路114はズームレンズ106を駆動する。MF操作部材(マニュアルフォーカス操作部材)123は、交換レンズ100の外装に装備された撮像光学系の光軸OAを中心に回転する筒型のマニュアルフォーカスリングを含む操作部材である。検出センサ124は、MF操作部材123に対する操作量に応じてフォーカスレンズ駆動回路111を制御し、フォーカスレンズ105を所定位置に駆動する。ズーム操作部材121は、交換レンズ100の外装に装備された光軸OAを中心に回転する筒型のマニュアルズームリングを含む操作部材である。検出センサ122は、ズーム操作部材121に対する操作量を検出する。レンズマイコン101は、検出センサ122により検出されたズーム操作部材121に対する操作量に応じてズームレンズ駆動回路114を制御し、ズームレンズ106を所定位置に駆動する。
【0022】
記憶部130は、交換レンズ100に固有の特性情報や光学情報を記憶している。これらの情報は、通信部103を介してカメラ本体200へ送信される。記憶部130は、レンズマイコン101に内蔵されてもよいし、外付けの構成であってもよい。特性情報は、交換レンズ100の名称(機種を特定するためのID情報)、通信速度、開放F値、ズームレンズであるか否か、対応可能なAFシステム、AF可能な像高を含む。また特性情報は、本実施例で特有の情報となる絞り109の絞り込み位置としてのF値と光量T値の関係を示すデータテーブル、カメラ本体200の撮像素子201に対する瞳強度分布の情報、被写界深度を示す光束情報などの情報を含む。光学情報は、フォーカス位置、ズーム位置、絞り109の状態などのマトリクスで得られるフォーカスレンズ105の敏感度情報、ピント補正量(設計値)、およびピント補正製造誤差の情報などを含む。また、交換レンズ100の通信部103は、これら特性情報や光学情報以外にも、MF操作部材123の操作情報や、各種レンズ内のユニットの動作状態や設定情報などをカメラマイコン205に送信する。動作状態や設定情報は、フォーカスプリセット駆動スイッチの操作によるフォーカスレンズ105の駆動を許可する許可信号を含む。
【0023】
交換レンズ100は、操作部材としてのレンズユーザーインタフェース120を有する。レンズユーザーインタフェース120は、合焦動作においてオートフォーカス(AF)を行うか、マニュアルフォーカス(MF)を行うかを選択するためのAF/MF選択スイッチや手振れ補正を行うか否かを選択するIS_ON/OFFスイッチを含む。レンズユーザーインタフェース120の操作情報は上述の通り通信部103を介してカメラマイコン205へ通知される。カメラマイコン205は、AF/MF選択スイッチの選択がAFであることを確認した場合、AF動作を行う。
【0024】
カメラ本体200は、CCDセンサやCMOSセンサ等の撮像素子201、A/D変換回路202、信号処理回路203、記録部204、カメラマイクロコンピュータ(カメラマイコン205)、および、表示部206を有する。またカメラ本体200は、交換レンズ100との通信制御を行う通信部208、シャッター209、AE制御部(自動露出制御部または露出制御手段)210、および、AF制御部(オートフォーカス制御部またはフォーカス制御手段)211を有する。
【0025】
撮像素子201は、交換レンズ100の撮像光学系により形成された被写体像(光学像)を光電変換して電気信号(アナログ信号)を出力する。A/D変換回路202は、撮像素子201からのアナログ信号をデジタル信号に変換する。信号処理回路203は、A/D変換回路202からのデジタル信号に対して各種画像処理を行って映像信号を生成する。また、撮像素子201は、1つの画素に対して複数の光電変換部を有する構造をもつため、被写体のピントずれ情報としての位相差信号と映像信号とを同時に出力することが可能となっている。また信号処理回路203は、映像信号から被写体像のコントラスト状態、つまり撮像光学系の焦点状態を示すフォーカス情報や露出状態を表す輝度情報も生成する。信号処理回路203は、映像信号を表示部206に出力し、表示部206は映像信号を構図やピント状態等の確認に用いられるライブビュー画像として表示する。そして、信号処理回路203からは、AE制御部210に対して輝度情報が出力され、AF制御部211に対してピントずれ情報が出力される。
【0026】
表示部206に表示されるライブビュー画像は、カメラ本体200に設定された撮影モード(静止画撮影モード、動画撮影モード、絞り優先モード、および、シャッター速度優先モードなど)や、シャッター速度や絞り設定値などの各種設定情報を表示する。例えば、静止画撮影においてカメラ内で設定されているシャッター速度に応じてシャッター209を制御する。カメラユーザーインタフェース(カメラUI)207は、レリーズスイッチやモード変更、設定値変更を可能とする操作部材であり、例えばAE制御における絞り優先モードやシャッター速度優先モードなどを切り替えることを可能とする。
【0027】
AE制御部210は、不図示の測光センサ(測光手段)を備え、撮像素子201に入射する光量を測定する。またAE制御部210は、カメラ本体200に設定された絞り優先モードやシャッター優先モードなどの撮影モード情報を取得する。例えば絞り優先モードが選択されている場合、AE制御部210は、ユーザが設定する絞り制御値としてのF値を実現するように通信部208を介してレンズマイコン101へ絞り制御を要求する。そしてAE制御部210は、F値の変化によって期待される光量の変化を元にシャッター速度やISO感度によって適正な露出制御を実現する。本実施例の光学素子107は光軸中心から口径方向に透過率が変化するように構成されているため、AE制御部210は、絞り制御としてのF値と光量の変化の対応関係を把握している必要がある。なお、この制御に関する詳細については、後述する。
【0028】
AF制御部211は、位相差AF部(撮像面位相差焦点検出部)212およびフォーカス制御AF部213を有する。位相差AF部212は、撮像素子201および信号処理回路203から得られる焦点検出用画素信号の像信号に基づいて、位相差検出方式による焦点検出処理を行う。より具体的には、信号処理回路203は、撮像光学系の一対の瞳領域を通過する光束で形成される一対の像信号データを焦点検出用データとして生成する。そして、位相差AF部212は、一対の像信号データの像ずれ量に基づいて焦点ずれ量を検出する。このように本実施例の位相差AF部212は、専用のAFセンサを用いず、撮像素子201の出力に基づく位相差AF(撮像面位相差AF)を行う。ここで説明した像ずれ量とは像信号情報としてのずれ量であり、光学系における被写体のピントずれ量(デフォーカス量)に換算するためには基線長に基づいて算出された変換係数により算出される。基線長は、撮像光学系の一対の瞳領域を通過する光束を位相差検出用の画素で受光する際の受光可能な領域の重心差により決定するのが一般的である。しかし、本実施例における光軸中心から口径方向に透過率が変化する光学系においては、透過率分布の変化によって受光領域の重心位置が変化するため、瞳強度分布の変化情報も考慮する必要がある。このため、後述するように本実施例では、レンズマイコン101から瞳強度分布の変化情報をAF制御部211内に構成する位相差AF部212に伝搬することでデフォーカス量の算出精度を向上させる。
【0029】
カメラ制御部としてのカメラマイコン205は、カメラユーザーインタフェース207の撮像指示スイッチおよび各種設定スイッチ等の入力に応じてカメラ本体200の制御を行う。そしてカメラ制御の1つとして上述のAE制御が存在し、カメラの撮影モードおよびユーザ操作によって絞り位置を変更したい場合には絞り要求コマンドについて通信部208を介してレンズマイコン101へ送信する。あるいは、カメラ制御のその他の1つとしてAF制御が存在し、上述した撮像素子201から得られるピントずれ量に基づき、フォーカスレンズ105の焦点調節動作に関する制御コマンドをレンズマイコン101へ送信する。
【0030】
またカメラマイコン205は、レリーズスイッチの半押し操作に応じて、手振れ補正を開始するための制御コマンドについて通信部208を介してレンズマイコン101へ送信する。レンズマイコン101は、手振れ補正開始要求を受信すると、IS駆動回路(手振れ補正駆動回路)117を制御して補正レンズ108を制御中心位置に保持する。続いて、レンズマイコン101は、ロック駆動回路118を制御してメカロック機構を駆動し、ロック状態を解除する。その後、レンズマイコン101は、手振れ検出回路119の検出結果に応じてIS駆動回路117を制御して補正レンズ108を駆動し、手振れを補正する。またカメラマイコン205は、レリーズスイッチの全押し操作に応じて、シャッター209を駆動し、撮像光学系からの光束を撮像素子201へ入射し、撮影を行う。カメラマイコン205は、撮像素子201からの出力に基づいて画像データを生成し、記録媒体に記録する。撮影される画像は表示部206に表示される。
【0031】
ライブビュー中には、撮像素子201をフレームレートにより決定される周期でカメラマイコン205により各種制御が行われる。各種制御としては、AF制御、AE制御、交換レンズ100との通信処理、画像処理などが含まれる。このとき、AFの応答性を向上させることを目的としてライブビュー制御周期(フレームレート)を向上させることが有効となる。一方、フレームレートを向上すると制御周期が短縮されるため、カメラ本体200の通信部208と交換レンズ100の通信部103との間の通信帯域が減少することとなる。したがって、通信の応答性を確保するには、ライブビュー中のカメラ本体200と交換レンズ100との間の通信量を減らす必要がある。また、連写駒速が上がるとライブビュー中と同様にコマ間の時間が短縮されるため、同様に連写中のカメラとレンズ間の通信量を減らす必要がある。
【0032】
本実施例では、光軸中心から口径方向に向かって透過率が変化する光学素子107を含む撮像光学系に特有のAE制御およびAF制御を実現するための通信制御を行う。具体的には、ライブビュー中および連写コマ間での通信帯域の消費を抑制するため、AE用の光学データはカメラ電源起動の際または交換レンズ100の装着の際に通信し、AF用の光学データは他のAF制御用データと同じタイミングで取得するように制御する。なお、AE用光学データの通信処理とAF制御用データの通信処理については、後述する。
【0033】
<通信処理部の説明>
次に、
図2乃至
図4を参照して、本実施例におけるカメラ本体200と交換レンズ100との間で行われる通信制御について説明する。
図2は、カメラ本体200と交換レンズ100との間の通信回路のブロック図である。
図3は、通信モードM1での通信波形図である。
図4は、通信モードM2での通信波形図である。
図3および
図4は、AE制御用およびAF制御用のデータの通信を行うための高速な通信方式への切り替え処理の説明図を示す。
【0034】
カメラマイコン205は、レンズマイコン101との間での通信フォーマットを管理する機能と、レンズマイコン101に対して送信要求等の通知を行う機能とを有する。また、レンズマイコン101は、レンズデータを生成する機能と該レンズデータを送信する機能とを有する。カメラマイコン205とレンズマイコン101は、マウント400に設けられた通信端子とそれぞれに設けられたインタフェース回路(I/F回路)208a、112aを介して通信を行う。インタフェース回路208aと送受信部(カメラデータ送受信部)208bとを合わせてカメラ本体200の通信部208が構成される。同様に、インタフェース回路112aと送受信部(レンズデータ送受信部)112bとを合わせて交換レンズ100の通信部112が構成される。
【0035】
本実施例において、カメラマイコン205とレンズマイコン101は、3つのチャネルを用いた3線式の通信方式Aおよび通信方式Bによるシリアル通信を行う。3つのチャネルのうちの1つは、通信方式Aではクロックチャネルとなり、通信方式Bでは送信要求チャネルとなる通知チャネルである。他の2つのチャネルのうち1つは、レンズマイコン101からカメラマイコン205へのレンズデータ送信に用いられる第1のデータ通信チャネルである。もう1つのチャネルは、カメラマイコン205からレンズマイコン101へのカメラデータ送信に用いられる第2のデータ通信チャネルである。
【0036】
第1のデータ通信チャネルでレンズマイコン101からカメラマイコン205に信号として送信されるレンズデータを、レンズデータ信号DLCという。また、第2のデータ通信チャネルでカメラマイコン205からレンズマイコン101に信号として送信されるカメラデータを、カメラデータ信号DCLという。
【0037】
<通信モードの説明>
まず、通信方式Aでの通信について説明する。通信方式Aでは、通信マスタとしてのカメラマイコン205から通信スレーブとしてのレンズマイコン101にクロック信号LCLKがクロックチャネルを介して出力される。カメラデータ信号DCLは、カメラマイコン205からレンズマイコン101への制御コマンドや送信要求コマンド等を含む。一方、レンズデータ信号DLCは、クロック信号LCLKに同期してレンズマイコン101からカメラマイコン205に送信される様々なデータを含む。カメラマイコン205とレンズマイコン101は、共通のクロック信号LCLKに同期して相互かつ同時に送受信を行う全二重通信方式(フルデュープレックス方式)で通信可能である。
【0038】
図3(A)、(B)は、カメラマイコン205とレンズマイコン101との間でやり取りされる通信信号の波形を示している。このやり取りの手順を取り決めたものを通信プロトコルと呼ぶ。
【0039】
図3(A)は、最小通信単位である1フレームの信号波形を示している。まず、カメラマイコン205は、8周期のクロックパルスを1組とするクロック信号LCLKを出力するとともに、クロック信号LCLKに同期してレンズマイコン101に対してカメラデータ信号DCLを送信する。これと同時に、カメラマイコン205は、クロック信号LCLKに同期してレンズマイコン101から出力されたレンズデータ信号DLCを受信する。
【0040】
このようにして、レンズマイコン101とカメラマイコン205との間で1組のクロック信号LCLKに同期して1バイト(8ビット)のデータが送受信される。この1バイトのデータ送受信の期間をデータフレームと呼ぶ。この1バイトのデータの送受信後に、レンズマイコン101がカメラマイコン205に対して通信待機要求BUSYを通知する信号(BUSY信号)を送信し、これにより通信待機期間が挿入される。この通信待機期間をBUSYフレームと呼び、BUSYフレームを受信している間、カメラマイコン205は通信待機状態となる。そして、データフレーム期間とBUSYフレーム期間とを1組とする通信単位が1フレームとなる。なお、通信状況により、BUSYフレームが付加されない場合もあるが、この場合はデータフレーム期間のみで1フレームが構成される。
【0041】
次に、BUSYフレームにてカメラマイコン205が通信待機状態となるときの通信制御について説明する。カメラマイコン205は、DataFrameとしてクロックチャネルでクロック信号LCLKを8周期だけ出力した後にカメラマイコン側(カメラ本体側)のクロックチャネルを出力設定から入力設定に切り替える。レンズマイコン101は、カメラマイコン側のクロックチャネルの切り替えが完了すると、レンズマイコン101側(交換レンズ側)のクロックチャネルを入力設定から出力設定に切り替える。そして、レンズマイコン101は、通信待機要求BUSYをカメラマイコン205に通知するために、クロックチャネルの電圧レベルをLowにする。これにより、クロックチャネルにBUSY信号を重畳する。カメラマイコン205は、通信待機要求BUSYが通知されている期間はクロックチャネルの入力設定を維持し、レンズマイコン101への通信を停止する。
【0042】
レンズマイコン101は、通信待機要求BUSYの通知期間中に送信要求コマンドCMD1に対応するレンズデータDT1を生成する。そして、レンズデータDT1を次のフレームのレンズデータ信号DLCとして送信する準備が完了すると、レンズマイコン側のクロックチャネルの信号レベルをHighに切り替え、通信待機要求BUSYを解除する。
【0043】
カメラマイコン205は、通信待機要求BUSYの解除を認識すると、1フレームのクロック信号LCLKをレンズマイコン101に送信することでレンズマイコン101からレンズデータDT1aを受信する。次のフレームでカメラマイコン205がクロック信号LCLKを再び8周期だけ出力したカメラマイコン205とレンズマイコン101が上記と同様の動作を繰り返すことで、カメラマイコン205はレンズマイコン101からレンズデータDT1bを受信する。
【0044】
図3(B)は、カメラマイコン205がレンズマイコン101に要求コマンドCMD1を送信し、これに対応する2バイトのレンズデータDT1(DT1a、DT1b)をレンズマイコン101から受信するときの信号波形を示している。
図3(B)では、「通信CMD1」に応じてデータ通信が実行される例を示している。
【0045】
カメラマイコン205とレンズマイコン101との間では、予め複数種類のコマンドCMDのそれぞれに対応するレンズデータDTの種類とバイト数が決められている。通信マスタであるカメラマイコン205は、特定のコマンドCMDとコマンドCMDで必要となるデータ個数(バイト数)のフレーム数の分だけクロック信号LCLKを出力する。そしてレンズマイコン101は、コマンドCMDに対応して必要なデータ数(バイト数)をカメラマイコン205に送信する。また、コマンドCMD1に対するレンズマイコン101の処理には、各フレームのクロック信号LCLKにBUSY信号を重畳することが含まれており、データフレーム間には上述したBUSYフレームが挿入される。例えば
図3(B)の通信CMD1では、カメラ本体200が交換レンズ100からDT1a、DT1bの2バイトを取得する場合、カメラマイコン205からレンズマイコン101へDCL信号線にて送信するCMD1に続く2バイトは無効データであることを示す。また通信CMD1では、カメラマイコン205がDCL信号線にてCMD1を送信するタイミングでDLC信号線にてレンズマイコン101がカメラマイコン205へ送信する1バイトは無効データであることを示している。
【0046】
次に、通信方式Bでの通信について説明する。通信方式Bでは、通信モードM1、M2の異なる2つの通信モードを設けている。通信モードM1は、カメラ本体200から交換レンズ100に対して通信要求を行った際にレンズマイコン101に処理が発生するケース(例えば絞りの駆動要求やフォーカスレンズの駆動要求など)において使用する通信モードである。通信モードM2は、交換レンズ100からカメラ本体200へ連続的にデータ転送するケース(例えば画像補正処理用のデータなど)において使用する通信モードである。
図4は、通信モードM1においてカメラマイコン205とレンズマイコン101との間でやり取りされる通信信号の波形を示している。
【0047】
通信方式Bにおいて、送信要求チャネルは、通信マスタであるカメラマイコン205から通信スレーブとしてのレンズマイコン101へのレンズデータの送信要求等の通知に用いられる。送信要求チャネルでの通知は該送信要求チャネルでの信号のレベル(電圧レベル)をHigh(第1のレベル)とLow(第2のレベル)との間で切り替えることで行う。以下の説明では、通信方式Bにおいて送信要求チャネルに供給される信号を送信要求信号RTSという。
【0048】
第1のデータ通信チャネルは、通信方式Aと同様に、レンズマイコン101からカメラマイコン205への各種データを含むレンズデータ信号DLCの送信に用いられる。第2のデータ通信チャネルも、通信方式Aと同様に、カメラマイコン205からレンズマイコン101への制御コマンドや送信要求コマンド等を含むカメラデータ信号DCLの送信に用いられる。
【0049】
通信方式Bでは、通信方式Aと異なり、カメラマイコン205とレンズマイコン101は、共通のクロック信号に同期してデータの送受信を行うのではなく、予め通信速度を設定し、この設定に基づいた通信ビットレートで送受信を行う。通信ビットレートとは、1秒間に転送することができるデータ量を示し、単位はbps(bit per second)で表される。
【0050】
なお本実施例では、この通信方式Bにおいても、通信方式Aと同様に、カメラマイコン205とレンズマイコン101は相互に送受信を行う全二重通信方式(フルデュープレックス方式)で通信を行う。
【0051】
図4は、最小通信単位である1フレームの信号波形を示している。1フレームのデータフォーマットの内訳は、カメラデータ信号DCLとレンズデータ信号DLCでは一部異なる部分がある。
【0052】
まず、レンズデータ信号DLCのデータフォーマットについて説明する。1フレームのレンズデータ信号DLCは、前半のデータフレームとこれに続くBUSYフレームとにより構成されている。レンズデータ信号DLCは、データ送信を行っていない状態では信号レベルはHighに維持されている。
【0053】
レンズマイコン101は、レンズデータ信号DLCの1フレームの送信開始をカメラマイコン205に通知するため、レンズデータ信号DLCの電圧レベルを1ビット期間の間LOWとする。この1ビット期間をスタートビットSTと呼び、スタートビットSTからデータフレームが開始される。続いて、レンズマイコン101は、スタートビットSTに続く2ビット目から9ビット目までの8ビット期間で1バイトのレンズデータを送信する。
【0054】
データのビット配列はMSB(Most Significant Bit)ファーストフォーマットとして、最上位のデータD7から始まり、順にデータD6、データD5と続き、最下位のデータD0で終了する。そして、レンズマイコン101は、10ビット目に1ビットのパリティー情報(PA)を付加し、1フレームの最後を示すストップビットSPの期間、レンズデータ信号DLCの電圧レベルをHIGHとする。これにより、スタートビットSTから開始されたデータフレーム期間が終了する。なお、パリティー情報は1ビットである必要はなく、複数のビットのパリティー情報が付加されても良い。また、パリティー情報は必須ではなく、パリティー情報が付加されないフォーマットとしても良い。
【0055】
続いて、図中の「DLC(BUSY有)」に示すように、レンズマイコン101は、ストップビットSPの後にBUSYフレームを付加する。BUSYフレームは、通信方式Aと同様に、レンズマイコン101からカメラマイコン205に通知する通信待機要求BUSYの期間を表す。レンズマイコン101は、通信待機要求BUSYを解除するまでレンズデータ信号DLCの信号レベルをLowに保持する。
【0056】
一方、レンズマイコン101からカメラマイコン205への通信待機要求BUSYの通知が不要な場合がある。この場合のために、図中の「DLC(BUSY無)」に示すように、BUSYフレーム(以下、BUSY通知ともいう)を付加せずに1フレームを構成するデータフォーマットも設けられている。つまり、レンズデータ信号DLCのデータフォーマットとしては、レンズマイコン側の処理状況に応じてBUSY通知を付加したものと付加しないものとを選択することができる。
【0057】
カメラマイコン205が行うBUSY通知の有無の識別方法について説明する。
図4の「DLC(BUSY無)」に示す信号波形および
図4の「DLC(BUSY有)」に示す信号波形には、B1とB2というビット位置が含まれている。カメラマイコン205は、これらB1とB2のいずれかのビット位置をBUSY通知の有無を識別するBUSY識別位置Pとして選択する。このように本実施例では、BUSY識別位置PをB1とB2のビット位置から選択するデータフォーマットを採用する。これにより、レンズマイコン101の処理性能によってレンズデータ信号DLCのデータフレーム送信後にBUSY通知(DLCのLow)が確定するまでの処理時間が異なる課題に対処することができる。
【0058】
BUSY識別位置PをB1のビット位置とするかB2のビット位置とするかは、通信方式Bでの通信を行う前にカメラマイコン205とレンズマイコン101との間で通信により決定する。なお、BUSY識別位置PをB1とB2のビット位置のいずれかに固定する必要はなく、カメラマイコン205、レンズマイコン101の処理能力に応じて変更してもよい。なお、BUSY識別位置Pは、B1やB2に限らず、ストップビットSPよりも後の所定位置に設定することができる。
【0059】
ここで、通信方式Aにおいてクロック信号LCLKに付加されたBUSYフレームが、通信方式Bではレンズデータ信号DLCに付加されるデータフォーマットとした理由について説明する。
【0060】
通信方式Aでは、通信マスタであるカメラマイコン205が出力するクロック信号LCLKと通信スレーブであるレンズマイコン101が出力するBUSY信号とを同一のクロックチャネルでやり取りする必要がある。このため、カメラマイコン205とレンズマイコン101の出力同士の衝突を時分割方式で防止している。つまり、クロックチャネルにおけるカメラマイコン205とレンズマイコン101の出力可能期間を適宜割り当てることで出力同士の衝突を防ぐことができる。
【0061】
ただし、この時分割方式では、カメラマイコン205とレンズマイコン101の出力同士の衝突を確実に防ぐ必要がある。このため、カメラマイコン205が8パルスのクロック信号LCLKの出力を完了した時点からレンズマイコン101がBUSY信号の出力を許容される時点までの間に、両マイコン205、101の出力が禁止される一定の出力禁止期間が挿入される。この出力禁止期間はカメラマイコン205とレンズマイコン101が通信できない通信無効期間となるため、実効的な通信速度を低下させる原因となる。
【0062】
このような課題を解決するために、通信方式Bでは、レンズマイコン101の専用出力チャネルである第1のデータ通信チャネルでのレンズデータ信号DLCにレンズマイコン101からのBUSYフレームを付加するデータフォーマットを採用している。
【0063】
次に、カメラデータ信号DCLのデータフォーマットについて説明する。1フレームのデータフレームの仕様はレンズデータ信号DLCと共通である。ただし、カメラデータ信号DCLは、レンズデータ信号DLCとは異なり、BUSYフレームの付加が禁止されている。
【0064】
次に、カメラマイコン205とレンズマイコン101との間での通信方式Bでの通信の手順について説明する。まず、カメラマイコン205は、レンズマイコン101との通信を開始するイベントが発生すると、送信要求信号RTSの電圧レベルをLowにする(以下、送信要求信号RTSをアサートするという)ことで、レンズマイコン101に対して通信要求を通知する。
【0065】
レンズマイコン101は、送信要求信号RTSの電圧レベルがLowに変化したことにより通信要求を検出すると、カメラマイコン205に送信するレンズデータ信号DLCの生成処理を行う。そして、該レンズデータ信号DLCの送信準備が整うと、第1のデータ通信チャネルを介して1フレームのレンズデータ信号DLCの送信を開始する。ここで、レンズマイコン101は、通信要求信号RTSの電圧レベルがLowとなった時点から、カメラマイコン205とレンズマイコン101との間で相互に設定した設定時間内にレンズデータ信号DLCの送信を開始する。すなわち、通信方式Bでは、通信要求信号RTSの電圧レベルがLowとなった時点からレンズデータ信号DLCの送信が開始されるまでの間に、送信するレンズデータを確定させればよい。通信方式Aのように、最初のクロックパルスが入力される時点までに送信するレンズデータを確定させておく必要があるといった厳しい制約がないため、レンズデータ信号DLCの送信を開始するタイミングに自由度を持たせることができる。
【0066】
次に、カメラマイコン205は、レンズマイコン101から受信したレンズデータ信号DLCのデータフレームの先頭に付加されたスタートビットSTの検出に応じて、送信要求信号RTSの電圧レベルをHighに戻す。以下、送信要求信号RTSをネゲートするという。これにより、送信要求を解除するとともに第2の通信チャネルでのカメラデータ信号DCLの送信を開始する。なお、送信要求信号RTSのネゲートとカメラデータ信号DCLの送信開始はどちらが先であってもよく、レンズデータ信号DLCのデータフレームの受信が完了するまでにこれらを行えばよい。
【0067】
レンズデータ信号DLCのデータフレームを送信したレンズマイコン101は、カメラマイコン205に通信待機要求BUSYを通知する必要がある場合には、レンズデータ信号DLCにBUSYフレームを付加する。カメラマイコン205は、通信待機要求BUSYの通知の有無を監視しており、通信待機要求BUSYが通知されている間は次の送信要求のために送信要求信号RTSをアサートすることが禁止される。
【0068】
レンズマイコン101は、通信待機要求BUSYによりカメラマイコン205からの通信を待機させている期間に必要な処理を実行し、次の通信準備が整った後に通信待機要求BUSYを解除する。カメラマイコン205は、通信待機要求BUSYが解除され、かつカメラデータ信号DCLのデータフレームの送信が完了したことを条件に、次の送信要求のために送信要求信号RTSをアサートすることが許可される。
【0069】
このように本実施例では、カメラマイコン205での通信開始イベントがトリガーとなって送信要求信号RTSがアサートされたことに応じて、レンズマイコン101がカメラマイコン205にレンズデータ信号DLCのデータフレームの送信を開始する。そして、カメラマイコン205は、レンズデータ信号DLCのスタートビットSTを検出することに応じて、カメラデータ信号DCLのデータフレームのレンズマイコン101への送信を開始する。
【0070】
ここでレンズマイコン101は、必要に応じて通信待機要求BUSYのためにレンズデータ信号DLCのデータフレームの後にBUSYフレームを付加し、その後、通信待機要求BUSYを解除することで1フレームの通信処理が完了する。この通信処理により、カメラマイコン205とレンズマイコン101との間で相互に1バイトの通信データが送受信される。
【0071】
次に、通信方式Bの通信モードM2について説明する。
図5(A)は、通信モードM2においてカメラマイコン205とレンズマイコン101との間でやり取りされる通信信号の波形を示している。
図5(A)では、連続的に3フレームのデータを送信するときにおける通信信号の波形を示している。通信モードM2は、先に述べたように高速にデータ通信を実施することを目的としており、レンズデータ信号DLCに通信待機要求BUSYを付加することは禁止される。
【0072】
次に、本実施例が特徴とするカメラマイコン205とレンズマイコン101との間の通信制御処理について説明する。
図5(B)は、カメラマイコン205とレンズマイコン101がそれぞれ、nフレームのカメラデータ信号DCLおよびレンズデータ信号DLCを連続的に送受信するときにおける通信信号の波形を示している。カメラマイコン205は、レンズマイコン101との通信を開始するイベントが発生すると、送信要求信号RTSをアサートする。通信モードM2では通信モードM1と異なり、カメラマイコン205は送信要求信号RTSを1フレームごとにネゲートする必要はない。そのため、連続的にデータ送受信が可能な状態である間は、送信要求信号RTSのアサート状態を維持する。
【0073】
レンズマイコン101は、送信要求信号RTSのアサートにより通信要求を検出すると、カメラマイコン205に送信するレンズデータ信号DLCの生成処理を行う。そして、該レンズデータ信号DLCの送信準備が整うと、第1のデータ通信チャネルでの1フレーム目のレンズデータ信号DLC(DL1)の送信を開始する。
【0074】
1フレーム目のレンズデータ信号DLCのデータフレームを送信したレンズマイコン101は、再び送信要求信号RTSを確認する。このとき、送信要求信号RTSがアサート状態であった場合には、レンズマイコン101は送信が完了した1フレーム目に続けて次の2フレーム目のレンズデータ信号DLC(DL2)をカメラマイコン205に送信する。このようにして送信要求信号RTSのアサート状態が維持されている間はレンズマイコン101からのレンズデータ信号DLC(DL1~DLn)がカメラマイコン205に連続的に送信される。そして、予め決められたフレーム数nの送信が完了すると、レンズデータ信号DLCの送信が停止される。
【0075】
カメラマイコン205からは、レンズマイコン101からのレンズデータ信号DLCのフレームごとのスタートビットSTを検出することに応じて、nフレームのカメラデータ信号DCL(DC1~DCn)の第2の通信チャネルでの送信が開始される。
【0076】
図5(C)は、
図5(B)に示される連続データ送受信の通信中にカメラマイコン205から又はレンズマイコン101から一時的な通信待機が指示された場合の通信信号の波形を示している。ここでも、カメラマイコン205から通信要求信号RTSがアサートされることでレンズマイコン101がレンズデータ信号DLCの送信を開始し、そのスタートビットSTの検出に応じてカメラマイコン205がカメラデータ信号DCLの送信を開始する。
【0077】
T2w1は、カメラマイコン205から通信待機が指示された期間である通信待機期間を示し、この指示は送信要求信号RTSを一時的にネゲートすることでレンズマイコン101に通知される。レンズマイコン101は、送信要求信号RTSがネゲートされたことを検出すると、その検出時点で送信途中のレンズデータ信号DLCのフレーム(図ではDL6:休止フレーム)の送信を完了した後、送信を休止する。
【0078】
レンズデータ信号DLCの送信休止を受けて、カメラマイコン205も、カメラデータ信号DCLのうち上記休止フレームに対応するフレーム(DC6)を送信した後にカメラデータ信号DCLの送信を休止する。このような通信制御により、連続データ送受信の通信中に通信待機指示が発生した場合でもレンズデータ信号DLCとカメラデータ信号DCLの送信済みフレーム数を同数にするように管理することができる。
【0079】
カメラマイコン205は、通信待機の要求イベントがなくなると、送信要求信号RTSを再びアサートすることでレンズマイコン101に対して通信再開を指示することができる。通信再開指示に応じて、レンズマイコン101は休止フレームの次のフレーム(DL7:以下、再開フレームという)からレンズデータ信号DLCの送信を再開する。そして、再開フレームのスタートビットSTの検出に応じて、カメラマイコン205はカメラデータ信号DCLの上記再開フレームに対応するフレーム(DC7)からの送信を再開する。
【0080】
一方、T2w2は、レンズマイコン101から通信待機が指示された期間である通信待機期間を示す。図では、通信待機期間T2w1の終了後はカメラマイコン205およびレンズマイコン101とも通信待機を指示しておらず、上述した再開フレームDL7、DC7およびそれに続くフレームDL8、DC8~DL9、DC9の順で連続データ送受信を行っている。そして、レンズマイコン101内でフレームDL9の送信(カメラマイコン205でのフレームDC9の受信)が完了したときに通信待機要求イベントが発生することで、レンズマイコン101はカメラマイコン205に対して通信待機指示を通知する。送信要求信号RTSがアサート状態であるとき、レンズマイコン101がレンズデータ信号DLCを送信しないことで、レンズマイコン101からカメラマイコン205へ通信を休止することが通知される。
【0081】
カメラマイコン205は、レンズデータ信号DLCのフレームごとのスタートビットSTを常時監視しており、スタートビットSTを検出しない場合には、次のカメラデータ信号DCLのフレームの送信を停止するよう取り決めている。カメラマイコン205は、送信要求信号RTSをアサートしていてもレンズマイコン101からのレンズデータ信号DLC(図ではDL10)を受信しない場合は、カメラデータ信号DCL(DC10)を送信することなく通信を休止する。なお、カメラマイコン205は、レンズマイコン101からの指示による通信待機期間T2w2中は送信要求信号RTSをアサート状態に維持する。
【0082】
その後、レンズマイコン101内で通信待機要求イベントがなくなってレンズマイコン101がレンズデータ信号DLCの再開フレームDL10の送信を再開する。カメラマイコン205は、該再開フレームDL10のスタートビットSTを検出することに応じてカメラデータ信号DCLにおける対応フレームDC10の送信を再開する。
【0083】
次に、
図6を参照して、カメラマイコン205とレンズマイコン101との間で行われる通信フォーマットの決定手順について説明する。
図6は、通信フォーマットを決定する方法を示すフローチャートである。カメラマイコン205およびレンズマイコン101は、コンピュータプログラムである通信制御プログラムに従って、
図6のフローチャートに示される通信制御を行う。
【0084】
まず、カメラ本体200に交換レンズ100が装着されると、ステップS100、S200において、カメラマイコン205およびレンズマイコン101は、通信フォーマットを、通信の成立が保障された初期通信フォーマットに設定する。ここで、初期通信フォーマットは、本実施例で開示した通信方式とデータフォーマットの組み合わせでもよいし、それ以外の通信フォーマットでもよい。なお、初期通信フォーマットとして調歩同期式の通信フォーマットが選択されるときには、どのようなカメラと交換レンズが組み合わされても通信が実行できるようにBUSY識別位置Pを設定することが好ましい。
【0085】
続いてステップS101において、カメラマイコン205は、カメラ本体200において対応可能な通信フォーマットを表すカメラ識別情報をレンズマイコン101に送信する。またステップS202において、レンズマイコン101は、交換レンズ100において対応可能な通信フォーマットを表すレンズ識別情報をカメラマイコン205に送信する。ここで「識別情報」には、クロック同期式と調歩同期式のいずれの通信方式に対応しているのかを示す情報や、対応可能な通信ビットレートの範囲を示す情報が含まれる。BUSY識別位置Pを示す情報も識別情報に含まれる。
【0086】
ステップS102において、カメラマイコン205は、レンズ識別情報を受信する。またステップS201において、レンズマイコン101は、カメラ識別情報を受信する。ここで、
図6のフローチャートでは、カメラ識別情報が送信された後にレンズ識別情報が送信されているが、カメラ識別情報の送信とレンズ識別情報の送信は同時であってもよい。また、レンズ識別情報が送信された後にカメラ識別情報が送信されるようにしてもよい。
【0087】
続いてステップS103、S203において、以降の通信における通信フォーマットの設定が行われる。具体的には、カメラマイコン205とレンズマイコン101は、互いに対応可能な通信ビットレートのうち最速レートを通信ビットレートとして決定する。また、互いに対応可能なBUSY識別位置のうちストップビットSPから最も近い位置をBUSY識別位置に設定する。以上の通信制御を経て、カメラマイコン205とレンズマイコン101の通信モードは、通信モードM1の状態に移行する。
【0088】
次に、
図7を参照して、調歩同期式の通信方式におけるデータ通信フローについて説明する。
図7は、通信モードM2でのデータ通信を示すフローチャートであり、BUSY信号の付加が許可されたデータフォーマットにおける通信フローを示す。
【0089】
カメラマイコン205は、レンズマイコン101との通信を開始する通信イベントが発生したか否かを監視しており、ステップS110において通信イベントが発生したときにステップS111に進む。ステップS111において、カメラマイコン205は、前述のように通信要求信号RTSをアサートすることで、レンズマイコン101に対して通信要求を行う。
【0090】
レンズマイコン101は、通信要求信号RTSがアサートされたか否かを監視しており、ステップS210において通信要求信号RTSがアサートされたことを認識すると、ステップS211に進む。ステップS211において、レンズマイコン101は、第1のデータ通信チャネルを介してレンズデータ信号DLCをカメラマイコン205に送信する。
【0091】
カメラマイコン205は、レンズマイコン101からレンズデータ信号DLCを受信すると(ステップS112のYES)、ステップS113に進み、通信要求信号RTSをネゲートする。そして、ステップS114に進み、第2のデータ通信チャネルを介してカメラデータ信号DCLをレンズマイコン101に送信する。
【0092】
レンズマイコン101は、ステップS212でカメラデータ信号DCLの受信開始を検出すると、ステップS213に進み、カメラデータ信号DCLの受信処理を行う。ステップS213の処理と並行してステップS214において、カメラマイコン205に通信待機要求BUSYを通知する必要があるか否かを判定する。通信待機要求BUSYを通知する必要がない場合は、ステップS218に進み、カメラデータ信号DCLの受信が完了するまで待機する。
【0093】
一方、レンズマイコン101からカメラマイコン205に対して通信待機要求BUSYを通知する必要があるときは、ステップS215に進み、レンズデータ信号DLCにBUSYフレームを付加する。レンズマイコン101は、通信待機要求BUSYを通知している間に必要な処理を実行し、次の通信準備が整った後(ステップS216のYes)、通信待機要求BUSYを解除する(ステップS217)。通信待機要求BUSYを解除した後、ステップS218に進み、カメラデータ信号DCLの受信が完了するまで待機する。カメラデータ信号DCLの受信が完了すると(ステップS218のYes)、ステップS210に戻り、通信要求信号RTSがアサートされたか否かの監視を継続する。
【0094】
カメラマイコン205は、ステップS115において通信待機要求BUSYの通知を受けると、通信待機要求BUSYが解除されるまで待機する。通信待機要求BUSYが解除される(ステップS116のYES)と、ステップS117に進み、カメラデータ信号DCLの送信が完了したか否かの判定を行う。また、ステップS115において通信待機要求BUSYの通知を受けていないときにもステップS117に進み、カメラデータ信号DCLの送信が完了したか否かの判定を行う。ステップS117において、カメラデータ信号DCLの送信が完了したと判定されると、ステップS110に戻り、通信イベントが発生したか否かの監視を継続する。
【0095】
以上説明したように、本実施例は、3つのチャネルから構成される調歩同期式(通信方式B)の通信における通信制御に関する。レンズマイコン101の専用出力チャネルである第1のデータ通信チャネルを介して、レンズマイコン101からカメラマイコン205に通信待機要求BUSYが送信される。一方、カメラマイコン205からの送信要求信号RTSは、カメラマイコン205の専用出力チャネルとしての通知チャネルを介して、カメラマイコン205からレンズマイコン101へ送信される。
【0096】
このように、レンズマイコン101からの通信待機要求BUSYは、レンズマイコン101の専用出力チャネルを介して送受信し、カメラマイコン205からの送信要求信号RTSは、カメラマイコン205の専用出力チャネルを介して送受信される。これにより、カメラマイコン205とレンズマイコン101の間の通信としてクロック同期式通信(通信方式A)に対して無効期間を短縮することができ、結果として実行的な通信速度を高速化させることができる。
【0097】
また、通信の開始タイミングに関しては、レンズマイコン101からカメラマイコン205へのデータ送信が先に開始される。カメラマイコン205は、レンズマイコン101から送信されるデータフレームのスタートビットSTを検出することに応じてデータ送信を開始する。通信の開始タイミングをこのように設定することで、送信要求信号RTSを受けたレンズマイコン101がカメラマイコン205に対してのデータ送信を開始するタイミングに自由度を持たせることができる。例えば、レンズマイコン101の情報処理能力に応じてデータ送信の開始タイミングを変化させることができる。これにより、通信の破綻を招くことなく、カメラ本体200と交換レンズ100の間の通信速度を向上させることができる。
【0098】
<起動時の通信処理の説明>
本実施例では、光軸中心から口径方向に透過率が異なるレンズにおけるAE制御およびAF制御を最適に行うことを実現する。AE制御においては、後述するように、F値をT値に変換する処理とT値をF値に変換する処理が必要となる。この変換が必要となる都度、カメラ本体200と交換レンズ100との間での通信処理を介在させてしまうと通信帯域が消費されてしまうし、通信処理による制御時間がAE制御の応答性に影響してしまう。そのため本実施例では、F値とT値の変換テーブルデータは、カメラマイコン205の起動時にレンズマイコン101から高速に通信により読み出す。これによりAE制御の応答性を維持しつつ、F値をT値に変換する処理を行うことができる。
【0099】
図8を参照して、本実施例における起動時の通信処理について説明する。
図8は、カメラ本体200と交換レンズ100との間の初期通信を示すフローチャートである。ステップS801~S825はカメラマイコン205の処理であり、ステップS830~S835はレンズマイコン101の処理である。カメラマイコン処理とレンズマイコン処理は並列に実施することが可能である。
【0100】
まずステップS801、S830において、
図6を参照して説明した処理により、カメラマイコン205の通信部208およびレンズマイコン101の通信部103の通信モードを前述した通信モードM1に切り替える。続いてステップS802、S831において、カメラマイコン205とレンズマイコン101との間でカメラ本体200が備える機能と交換レンズ100が備える機能との情報交換を行う。本実施例では、光軸中心から口径方向に向かって透過率が異なるレンズ光学系におけるAE制御、AF制御のための通信機能に対応しているか否かの情報の交換が行われる。
【0101】
続いてステップ811において、交換レンズ100に透過率の変化が一様ではない光学素子107が存在することによりAF制御に影響を与える瞳強度分布の変化情報および被写界深度の変化を示す情報をカメラ本体200に通信する機能を有するか否かを判定する。対応レンズである場合にはステップ812にて、瞳強度分布変化情報通信および被写界深度の変化情報通信に対応することを管理するフラグ(Flag_AF_Control)を有効にする。本フラグは、後述する定常動作における通信処理にて参照する。本実施例では、瞳強度分布変化情報通信および被写界深度の変化情報通信へ対応しているか否かを判定するようにしているが、当該2つのデータ通信に対応するか否かを各々別のフラグとして管理してもよい。
【0102】
続いてステップ820において、交換レンズ100に透過率の変化が一様ではない光学素子107が存在することによりAE制御として光量変化を把握するための情報としてのF値とT値の変換情報をカメラ本体200に通信する機能を有するか否かを判定する。対応レンズである場合、ステップS821に遷移する。
【0103】
ステップS821、S832において、カメラマイコン205およびレンズマイコン101は、F値とT値の変換テーブルに関するトータルのデータサイズを取得するための通信処理を行う。ここで、
図9を参照して、本通信のデータフォーマットを
図9(A)の「F値T値変換テーブルデータサイズ通信」901として示す。本通信処理は、
図4を参照して説明した通信モードM1を用いた通信処理であり、DCL信号によりカメラマイコン205からレンズマイコン101へデータ送信し、DLC信号によりカメラマイコン205はレンズマイコン101からデータ受信する。
【0104】
902の「CMD_FT」は、後述する「F値T値変換テーブルデータ通信」のトータルサイズを取得するための通信コマンドである。「CMD_FT」は、予めカメラマイコン205とレンズマイコン101が認識可能な所定の数値として定義される。903の「0x00」は902のデータ通信と同期してレンズマイコン101からカメラマイコン205へ送信されるデータを表す。本実施例では当該通信タイミングで通信すべきデータは特にないため値としては不問としている。本実施例では一例として、「0x00」に対応して、レンズデータ信号DLCの最上位のデータD7から最下位のデータD0の信号レベルをLOWに維持する。
同様に904にてカメラマイコン205からレンズマイコン101へ送信している4バイトデータも「0x00」で表される。値は不問とするが、本実施例では一例として、「0x00」に対応して、カメラデータ信号DCLの最上位のデータD7から最下位のデータD0の信号レベルをLOWに維持する。この4バイトデータ通信に同期して、レンズマイコン101からカメラマイコン205へ送信するデータを取得する。すなわちデータとして、F値からT値へ変換するためのデータ構造のトータルサイズ(TotalSizeFT)およびT値からF値へ変換するためのデータ構造のトータルサイズ(TotalSizeTF)を取得する。各々のサイズは以下の式にて求められる。
【0105】
【0106】
続いて、
図8のステップS822、S833において、カメラマイコン205およびレンズマイコン101は、
図5を参照して説明した通信モードM2への切り替え処理を行う。これはステップS823、S834において通信される「F値T値変換テーブルデータ通信」の通信データサイズが大容量であるため、より高速な通信モードに切り替えることで起動時の処理時間を短縮することを目的としている。
【0107】
続いてステップS823、S834において、カメラマイコン205およびレンズマイコン101は、F値とT値の変換テーブルに関するデータ通信を行う。本通信のデータフォーマットを
図9(B)の「F値T値変換テーブルデータ通信」910として示す。911に示す複数バイトからなる通信データが、F値からT値へデータ変換するためのデータ構造である。このデータのサイズは可変長であり、905にて受信したTotalSizeFTのサイズと一致する。912に示す複数バイトからなる通信データが、T値からF値へデータ変換するためのデータ構造である。このデータのサイズは可変長であり、906にて受信したTotalSizeTFのサイズと一致する。
【0108】
911に含まれる、913の「F値分割数」は
図11に後述するF値T値変換テーブルの行方向の要素数であり、より具体的には離散的なF値が何個で構成されるかを示す分割数である。914の「F値分割分解能」は、F値T値変換テーブルの行方向の要素である離散的なF値の各間隔が何段であるかを示し、例えば、1/8段や1/16段といった値となる。915の「Focus分割数」は、F値T値変換テーブルの列方向の要素であるフォーカスの分割数である。916の「F→T変換テーブル」はF値からT値へ変換するデータテーブルの中身のデータ値である。
【0109】
912に含まれる、917の「T値分割数」は、
図14に後述するT値F値変換テーブルの行方向の要素数であり、より具体的には離散的なT値が何個で構成されるかを示す分割数である。918の「T値分割分解能」は、T値F値変換テーブルの行方向の要素である離散的なT値の各間隔が何段であるかを示し、例えば、1/8段や1/16段といった値となる。919の「Focus分割数」は、T値F値変換テーブルの列方向の要素であるフォーカスの分割数である。920の「T→F変換テーブル」はT値からF値へ変換するデータテーブルの中身のデータ値である。なお、F値からT値へ変換するデータ構造の913~916の個数と、T値からF値へ変換するデータ構造の917~920の個数とは必ずしも一致する個数でなくてもよい。
【0110】
これらデータが、レンズマイコン101からカメラマイコン205へレンズデータ信号DLCとして送信される。ここで、レンズマイコン101からカメラマイコン205へのデータの各送信に同期して、カメラマイコン205からレンズマイコン101へ「0x00」で表される各データが送信される。「0x00」の値は不問とするが、本実施例では一例として、「0x00」に対応して、レンズデータ信号DLCの最上位のデータD7から最下位のデータD0の信号レベルをLOWに維持する。
【0111】
図8のステップS824、S835において、カメラマイコン205およびレンズマイコン101は、ステップS823にて大容量なF値とT値の変換テーブルデータを取得完了したため、通信モードをM1に戻す。続いてテップS825において、カメラマイコン205は、ステップS823にて取得したAE制御のために必要なF値とT値の変換テーブルデータをAE制御部210に伝搬する。これにより、以降のカメラ本体200の定常的な動作において、AE制御部210はF値とT値の変換処理を行うことが可能となる。なお、ステップS823にて取得したAE制御のために必要なF値とT値の変換テーブルデータはカメラ電源オフ時に不揮発性メモリに記憶し、2回目以降のカメラ起動時や同一レンズを装着したときに当該通信をスキップするようにしてもよい。または、カメラ電源をオンするか、もしくは、当該データ通信に対応するレンズが装着されるたびに通信しなおしてもよい。
【0112】
<定常的なAE制御(絞り優先モード)の説明>
次に、
図10および
図11を参照して、カメラ本体200のカメラ設定が絞り優先モードに設定されている場合の絞り制御について説明する。絞り優先モードとは、ユーザが好みのF値を指定するモードである。この場合、カメラ本体200のユーザーインタフェース207または交換レンズ100のユーザーインタフェース120の操作によりユーザがF値を設定する。これにより、ユーザが指定したF値の情報がカメラマイコン205からAE制御部210に入力される。AE制御部210は、指定されたF値に対応する光量を決定し、当該光量に対応するシャッター速度およびISO感度に基づいて露出制御を行う。
【0113】
図10は、絞り優先モードが設定されている場合のカメラ本体200と交換レンズ100との間の情報のやり取りを示す図である。
図11は、交換レンズ100から送信されたF値をT値に変換するためのテーブルデータ(第1テーブルデータ)の一例を示している。
【0114】
図11のテーブルデータは、フォーカス位置とF値の2つの要素からT値を導出可能なテーブルデータである。
図11の1101に示す各値(F1.0、F1.0+1/16段、F1.0+2/16段、・・・、F2.0、・・・F4.0、・・・F64)がテーブルデータの要素としてのF値を示し、
図9にて説明した913「F値分割数」の個数分の項目から構成される。また、各項目の間隔は914「F値分割分解能」で定義されており、本実施例では分割分解能は1/16段となっている。1102はフォーカス位置を示し、
図9の915「Focus分割数」の個数分の項目から構成される。このフォーカス位置に関しては、フォーカス無限端からフォーカス至近端までの領域を必要個数分に分割している。この分割は等分割でもよいし、光学性能を考慮した分割としてもよい。本実施例では、一例として、フォーカス分割数を32分割としている。
【0115】
図10を参照して、各処理ステップについて説明する。本処理の開始時には
図8のステップS806、S808にてF値をT値に変換するためのテーブルデータはカメラ本体200のAE制御部210に入力されている。
【0116】
まずステップS1001において、カメラユーザーインタフェース207やレンズユーザーインタフェース120の操作により、F値を設定する。本ステップではF値をF4.0に設定している。続いてステップS1002において、後述するステップでのAE制御にて、
図11に示されるテーブルデータの列方向1102を検索するため、フォーカス分割位置情報をレンズマイコン101から通信にて取得する。これは、例えばユーザがレリーズスイッチなどを操作することでAF制御が作動する場合や、ユーザがスイッチ操作をしない状態でAF制御が作動するAFモード(コンティニュアスAFなど)に設定している場合などにフォーカス位置の変化を考慮するためである。本実施例では、フォーカス位置情報として
図11のテーブルデータにおける1103に示すFocus2を受信する。
【0117】
続いてステップS1003において、カメラマイコン205は、レンズマイコン101と通信を行い、絞り109の状態(絞り状態)を受信する。絞り状態には、絞り109に現在設定されているF値や、測光の基準となる絞り開放状態におけるF値データ等が含まれる。本実施例では、カメラマイコン205は、絞り109に現在設定されているF値としてF2.0を受信する。
【0118】
続いてステップS1004において、AE制御部210は、
図11のテーブルデータを用いて現在カメラ本体200に設定されているF値から、ユーザ操作により設定されたF値に変更した際のT値の変化量を算出する。本実施例では、ステップS1002にて現在のフォーカス位置がFocus2、ステップS1003にて現在のカメラ本体200に設定されているF値がF2.0である。このため、
図11のテーブルデータの1104に示すように現在のT値がT2.9であると導出される。
【0119】
次に、
図11の1105に示されるように、フォーカス位置がFocus2で、F値がF4.0である場合のT値がT4.6であることが導出される。この結果、ユーザ操作によりF値がF2.0からF4.0に変更した場合に、T値はT2.9からT4.6に変化することが導出される。
【0120】
続いてステップS1005において、AE制御部210がS1004にて導出されたT値の変化量を用いて露出が最適となるシャッター速度やISO感度を決定する。続いてステップS1006において、カメラマイコン205が、ユーザにより設定されたF値(本実施例ではF4.0)となるように絞り109を駆動させるべくレンズマイコン101へ通信を行う。続いてステップS1007において、レンズマイコン101はカメラマイコン205から受信した絞り駆動要求に基づいて絞り109を駆動する。ステップS1002にてユーザがレリーズスイッチを操作している場合、ステップS1007の絞り駆動制御は静止画露光処理のための絞り駆動となり、ステップS1008にてカメラマイコン205はシャッター209を開き、静止画撮影用の露光処理を実施する。
【0121】
以上説明したように、本実施例では、F値からT値に変換するためのテーブルデータについて、AE制御より前のタイミングである交換レンズ100をカメラ本体200に装着したタイミングでカメラ本体200へ送信しておく。これにより、カメラ本体200の撮影モードとして絞り優先モードに設定されている場合の絞り制御においてAE制御のタイミングで発生する光量変化量をテーブルデータの検索にて取得することができる。この効果として、F値設定を変更するたびに光量の変化を交換レンズ100から通信処理を介して取得する必要がなくなるため、F値とT値の変換のための通信処理が発生することを回避できる。その結果として、通信帯域の消費を抑えることが可能となり、例えば高フレームレートの撮像周期であっても通信帯域の枯渇により機能を犠牲にして通信量を軽減するような処理が不要となる。また、静止画撮影の高速連写モードにおいて通信制御遅れによる駒速低下を回避することも可能となる。
【0122】
また、特許文献1の撮像システムでは、光軸中心から口径方向に向かって透過率が減衰してボケ効果を発揮するように光学設計されており、カメラからの絞り駆動量の指示に基づきカメラの期待する光量変化を満たすようにレンズ側で絞り制御量を変換させる。しかし、透過率の減衰傾向と絞り制御の分解能が一致せず絞り制御の分解能の方が粗いため、必ずしもカメラの期待する光量変化を満たすように絞り量を変換させることはできない。その結果、ユーザが期待するボケ効果を引き出すことができない。一方、本実施例の構成によれば、F値からT値を導出して光量の変化量をカメラ側で把握したうえで、その他の露出制御パラメータであるシャッター速度やISO感度を決定する。これによりユーザが設定したF値の被写界深度での撮影を可能とするとともに、適切なボケ効果を引き出すことが可能となる。
【0123】
また本実施例では、絞り優先モードで撮影する場合、
図11のテーブルデータを用いて絞り制御を行うが、
図12のテーブルデータを用いてもよい。
図11ではテーブルデータをF値とフォーカス位置の2つの要素により構成するが、
図12ではさらにズーム位置情報を構成要素として追加している。
図12のテーブルデータを用いる場合、
図9の911に示す複数バイトからなる通信データおよび912に示す複数バイトからなる通信データにズーム分割数の情報も追加することとなる。
【0124】
<定常的なAE制御(シャッター速度優先モード)の説明>
次に、
図13および
図14を参照して、シャッター速度優先モードで撮影する場合の絞り制御について説明する。シャッター速度優先モードとは、ユーザが好みのシャッター速度を指定するモードである。この場合、カメラ本体200に備えられたユーザーインタフェース207または交換レンズ100に備えられたユーザーインタフェース120の操作により、ユーザがシャッター速度を設定する。これにより、ユーザが指定したシャッター速度の情報がカメラマイコン205からAE制御部210に入力される。AE制御部210は指定されたシャッター速度を実現するための光量を決定し、当該光量に対応するF値を絞り目標値としてレンズマイコン101へ送信する。
【0125】
図13は、シャッター速度優先モードが設定されている場合のカメラ本体200と交換レンズ100との間の情報のやり取りを示す図である。
図14は、交換レンズ100から送信されたT値をF値に変換するためのテーブルデータ(第2テーブルデータ)の一例を示している。
【0126】
図14のテーブルデータは、フォーカス位置とT値の2つの要素からF値を導出可能なテーブルデータである。
図14の1401に示す各値(T1.0、T1.0+1/16段、T1.0+2/16段、・・・、T2.8、・・・T4.0、・・・T64)がテーブルデータの要素としてのT値を示し、
図9の917「T値分割数」の個数分の項目から構成される。また、各項目の間隔は918「T値分割分解能」で定義されており、本実施例では分割分解能は1/16段となっている。
【0127】
1402はフォーカス位置を示し、
図9の919「Focus分割数」の個数分の項目から構成される。このフォーカス位置に関してはフォーカス無限端からフォーカス至近端までの領域を必要個数分に分割している。この分割は等分割でもよいし、光学性能を考慮した分割としてもよい。本実施例では一例としてフォーカス分割数を32分割としている。
【0128】
図13を参照して、各処理ステップについて説明する。本処理の開始時には
図8のステップS806、S808にてT値をF値に変換するためのテーブルデータはカメラ本体200のAE制御部210に入力されている。
【0129】
まずステップS1301において、カメラユーザーインタフェース207やレンズユーザーインタフェース120の操作により、シャッター速度を設定する。本ステップでは、シャッター速度を1/1000に設定している。
【0130】
続いてステップ1302において、後述するステップでのAE制御にて
図14に示したテーブルデータの列方向1402を検索するために、フォーカス分割位置情報をレンズマイコン101から通信にて取得する。これは、例えばユーザがレリーズスイッチなどを操作することでAF制御が作動する場合や、ユーザがスイッチ操作をしない状態でAF制御が作動するAFモード(コンティニュアスAFなど)に設定している場合などにフォーカス位置の変化を考慮するためである。本実施例ではフォーカス位置情報として
図14のテーブルデータにおける1403に示すFocus2を受信する。続いてステップS1303において、カメラマイコン205は、レンズマイコン101と通信を行い、絞り109の状態(絞り状態)を受信する。
【0131】
続いてステップS1304において、AE制御部210に構成される不図示の測光センサに入射する光量の測定(測光)を行う。本実施例では、測光処理の結果として現在のT値がT2.8であると測定される。続いてステップS1305において、AE制御部210は、ステップS1304にて取得された光量値と測光時の設定からシャッター速度が1/1000である場合に最適な露出変化量を算出する。本実施例ではAE制御部210はT値がT2.8からT4.0に変化させることが制御狙い値として決定される。
【0132】
続いてステップS1306において、AE制御部210は、現在のF値から最適な露出となるF値を
図14のテーブルデータを用いて決定する。本実施例では、ステップS1302にて現在のフォーカス位置がFocus2、ステップS1303にて現在のカメラ本体200の測光処理の結果から光量値がT2.8となっている。そして、ユーザが指定するシャッター速度1/1000を実現するときの絞りによる光量変化としてT4.0まで変化させるケースを想定している。
図14のテーブルデータの検索により、T2.8に対応するF値は1404の通りF2.1であり、T4.0に対応するF値は1405の通りF3.5である。このため、絞り制御量としてはF3.5-F2.1の絞り駆動を行うようにレンズマイコン101へ通信にて要求する。
【0133】
続いてステップS1308において、レンズマイコン101はカメラマイコン205から受信した絞り駆動要求に基づいて絞り109を駆動する。ステップS1302にてユーザがレリーズスイッチを操作している場合、ステップS1308は静止画撮影用の絞り駆動となり、カメラマイコン205はシャッター209を開き、静止画撮影用の露光処理を実施する。
【0134】
以上説明したように、本実施例では、T値からF値に変換するためのテーブルデータについて、AE制御より前のタイミングである交換レンズ100をカメラ本体200に装着したタイミングでカメラ本体200へ送信しておく。これにより、カメラ本体200の撮影モードとしてシャッター速度優先モードが設定されている場合の絞り制御においてAE制御のタイミングで発生する光量変化量から絞り制御値への変換をテーブルデータの検索にて取得することができる。その結果、変換処理のための通信処理が発生することを回避することができる。その結果として、通信帯域の消費を抑えることが可能となり、例えば高フレームレートの撮像周期であっても通信帯域の枯渇により機能を犠牲にして通信量を軽減する処理が不要となる。また、静止画撮影の高速連写モードにおいて通信制御遅れによる駒速低下を回避することも可能となる。
【0135】
また本実施例では、絞り優先モードで撮影する場合、
図14のテーブルデータを用いて絞り制御を行うが、
図15のテーブルデータを用いてもよい。
図14ではテーブルデータをF値とフォーカス位置の2つの要素により構成するが、
図15ではさらにズーム位置情報を構成要素として追加している。
図15のテーブルデータを用いる場合、
図9の911に示す複数バイトからなる通信データおよび912に示す複数バイトからなる通信データにズーム分割数の情報も追加することとなる。
【0136】
<ライブビュー中のカメラ内部の動作の説明>
次に、
図16を参照して、
図10にて説明した絞り優先モードや
図13にて説明したシャッター速度優先モードで動作する際のAE制御およびAF制御の動作を含む定常的なライブビュー動作について説明する。
図16は、横軸を時間経過方向とし、縦軸にカメラマイコン205とレンズマイコン101との通信処理および各制御ブロックの動作項目を記したタイミングチャートである。ここでは、ライブビュー中の制御を例として示している。
【0137】
1601は撮像同期信号であり、1602の撮像素子201の蓄積制御の開始タイミングを示す。撮像同期信号はフレームレートに応じた周期で生成され、例えば60fps制御であれば16.6msの周期で1610の垂直同期信号としてカメラマイコン205に入力される。1611は表示部206に設定されているAF枠が存在する位置についての撮像素子201の蓄積制御タイミングを示している。1603はカメラ本体200と交換レンズ100との間で撮像素子の蓄積タイミングを共有するための同期信号通信を示しており、1610の垂直同期信号をトリガーとして通信を実施する。
【0138】
1604はAF制御を行うために必要となる各種通信を行うAF制御用通信を示す。AF制御用通信1604では、例えば、フォーカスレンズ105の位置情報や、AF制御部211が検出するピントずれ量をフォーカスレンズ105の駆動量に変換するための変換係数としてのフォーカス敏感度情報が取得される。またAF制御用通信1604では、光学的な収差により発生するピントずれ補正データ、絞り位置センサ115が検出する絞り109の開口径の情報が取得される。またAF制御用通信1604では、AF検出処理用に用いる瞳強度分布の変化情報と、サーチ速度や合焦判定に用いる被写界深度情報が取得される。
【0139】
1605はAF制御を実施するための撮像素子201の蓄積処理(AF蓄積処理)期間を示す。この蓄積処理タイミングは、表示部206に設定されたAF枠の位置によって変化する。AF枠が表示部206の画面上の上下方向の中央付近に設定されている場合、1611のタイミングがAF信号の蓄積タイミングとなる。一方、AF枠が表示部206の画面上の下方向に設定されている場合、1650のようにAF信号の蓄積タイミングとしては1611よりも遅れる。
【0140】
1606はAF制御部211によるAF制御処理を示す。AF制御処理1606は、AF信号を処理して被写体のピントずれ量を算出し合焦させるためのフォーカスレンズ駆動量や被写体の動き量を予測したフォーカスレンズの駆動量などを算出する処理である。1607はカメラマイコン205からレンズマイコン101へフォーカスレンズ105を駆動させる要求を通信する処理(フォーカス駆動通信)である。
【0141】
1608はAE制御部210によるAE制御処理を示す。AE制御処理1608は、測光センサで光量を測定し、カメラに設定されているモードとユーザ操作に応じて適切な露出制御を行う処理である。1609はカメラマイコン205からレンズマイコン101へ絞り109を駆動させる要求を通信する処理(絞り駆動通信)である。
【0142】
1620から1631までは、前述した1601から1609の各処理部が処理されるタイミングを示している。1601で撮像同期信号が生成されると1620にてカメラマイコン205はレンズマイコン101へ同期信号通信を実施する。続いて1621では、AF制御に必要となるデータ通信を行い、1621の処理と並行してAF蓄積処理1623を実施する。1621によりレンズマイコン101からAF制御に必要なデータを取得し、1605によりAF蓄積処理が完了したら1606のAF制御処理を開始する。矢印1622と矢印1624はここで説明した処理の前後関係を示している。AF制御処理1625が完了すると、1627でレンズマイコン101へフォーカスレンズ105の駆動を要求する。
【0143】
1621から1627のAF制御とは並行して1629にてAE制御処理を行い、その後1631でレンズマイコン101へ絞り109の駆動を要求する。なお、絞り駆動要求1631の開始条件として矢印1628でフォーカス駆動要求1627の完了を条件とするのは、カメラ本体200の通信部208と交換レンズ100の通信部103の通信路は1つのみであり通信要求は排他的に実施する必要があるためである。カメラ本体200と交換レンズ100との間で複数の通信路がある場合にはこの制約は発生しない。
【0144】
1605の説明中に前述したとおり、AF枠の位置を変更した場合の各処理部が処理されるタイミングを1640から1648に記載している。1621から1631で前述したケースと異なるのはAF信号処理が遅延したため相対的にAE制御が先行して完了したため、絞り109の駆動要求の通信1647を実施してからフォーカスレンズ105の駆動要求1644を実施している点である。
【0145】
<AF制御部の説明>
次に、
図17を参照して、本実施例のAF制御を説明する。
図17は本実施例における撮像素子201の概略図であり、
図17(A)は撮像素子201の全体概略図、
図17(B)は撮像素子201の一画素の概略図をそれぞれ示す。
図17(A)において、撮像素子201は、二次元配列状に配列された複数の画素を有する画素部1701、画素部1701の行を選択する垂直選択回路1702および、画素部1701の列を選択する水平選択回路1704を備えている。さらに撮像素子201は、画素部1701の画素のうち垂直選択回路1702により選択される画素の信号を読み出す読み出し回路1703および、各回路の動作モードなどの情報を取得するシリアルインタフェース1705(SI/F)を有する。読み出し回路1703は、信号を蓄積するメモリ、ゲインアンプ、AD変換器などを列ごとに有する。なお撮像素子201は、
図17(A)に示される構成要素以外にも、例えば、垂直選択回路1702、水平選択回路1704、信号読み出し回路1703などにタイミングを供給するタイミングジェネレータまたは制御回路を備えている。垂直選択回路1702は、画素部1701の複数の行の画素信号を順に選択して読み出し回路1703に読み出す。水平選択回路1704は、読み出し回路1703に読み出された複数の画素信号を列ごとに順に選択する。
【0146】
図17(B)において、1706は画素部1701における一つの画素である。この画素1706は、一つのマイクロレンズ1707を有する。また、この画素1706は、撮像面における位相差方式の焦点検出処理を行うため、二つのフォトダイオード(PD1708、1709)を有する。なお画素1706は、
図17(B)に示される構成要素以外に、例えばフォトダイオード(PD)の信号を読み出し回路1703に読み出すための画素増幅アンプ、行を選択する選択スイッチ、フォトダイオードの信号をリセットするリセットスイッチなどを備える。
【0147】
次に、
図18を参照して、撮像素子201における受光の様子について説明する。
図18は、本実施例の交換レンズ100内に構成される撮影レンズとしての光学素子107の射出瞳から出た光束が撮像素子201に入射する様子を示す概念図であり、位相差方式による焦点検出方法を模式的に説明している。
【0148】
1801は撮像素子(撮像素子201の断面)である。1802はマイクロレンズ(
図17(B)のマイクロレンズ1707)、1803はカラーフィルタである。1804、1805はフォトダイオード(PD)であり、それぞれ
図17(B)のPD1708、1709に相当する。1806は撮影レンズとしての光学素子107の射出瞳である。
【0149】
本実施例では、マイクロレンズ1802を有する画素に対して、射出瞳1806から出た光束の中心を光軸1809とする。射出瞳1806から出た光束は光軸1809を中心として撮像素子1801に入射する。18
10、18
12は、撮影レンズとしての光学素子107の射出瞳1806の一部領域1807を通過する光束の最外周の光線である。
図18に示されるように射出瞳1806から出る光束のうち、光軸1809を境にして、上側の光束はPD1805に入射し、下側の光束はPD1804に入射する。すなわちPD1804およびPD1805はそれぞれ、撮影レンズとしての光学素子107の射出瞳1806の別の領域の光束を受光する。
【0150】
撮像素子201は、撮影レンズとしての光学素子107における互いに異なる射出瞳からの光束を受光する画素としてAライン画素およびBライン画素を二次元状に配列して構成されている。このAライン画素およびBライン画素の出力に関し、二像の間隔(AB像間隔)は、合焦状態、前ピン状態、および後ピン状態のいずれであるかに応じて変化する。この二像の間隔が合焦状態の間隔となるようにフォーカスレンズ105を移動させることによってAF制御が実現される。ただし、本実施例の光学素子107は光軸中心から口径方向に向かって透過率が変化する光学系となっている。このため、絞り込み量だけでA像とB像の関係が決まるのではなく、透過率の変化により受光する像信号の重心位置が変化するため、A像とB像の関係が変わってしまう。そのため、このような透過率の変化が一様でない光学系においては焦点検出用画素に入射される光束の透過率分布の変化も考慮することで焦点検出の精度向上を実現することが可能となる。
【0151】
本実施例では、上述した焦点検出処理をAF制御部211の位相差AF部212が実施する。これにより、焦点検出用画素の信号処理にて像面上でのピントずれ量としてのデフォーカス量が算出されてフォーカス制御AF部213に入力されてフォーカスレンズ105を駆動するという一連の動作によりAF制御が行われる。
【0152】
次に、
図19を参照して、AF処理に用いられる瞳強度分布の変化情報とサーチ速度や合焦判定に用いる被写界深度情報、および、信号処理回路203から焦点検出用画素信号が入力された際のAF制御部211の動作について説明する。なお、瞳強度分布の変化情報と被写界深度情報のそれぞれのパラメータは、レンズマイコン101から通信部103、208を経由して伝搬される。
図19は、AF制御部211の動作を示すフローチャートである。ステップS1900~S1923はAF制御部211の動作を説明しており、ステップS1931~S1937はカメラ本体200の通信部208の動作を説明している。
【0153】
まずステップS1900において、AF制御が待機している状態を示す。例えばカメラ本体200が定常的に撮像素子201に画像をキャプチャしているライブビューモードで動作している状態である。続いて ステップS1901において、
図8のステップS812で判定したフラグ(Flag_AF_Control)が有効であるか否かを判定する。当該フラグがオフの場合は交換レンズ100がAF制御用のデータ通信に対応していない場合であり、ステップS1921へ遷移する。
【0154】
ステップS1902において、AF制御部211は、
図17および
図18を参照して説明した撮像素子201に埋め込まれた位相差信号による焦点検出処理を行うか否かを判定する。本判定処理は、カメラユーザーインタフェース207の操作により撮影モードなどを選択することにより、位相差信号による焦点検出処理を行わないことがあるために実施している。例えば、コントラスト成分がピークとなるフォーカス位置を探索するコントラストAF制御を実施する場合や、マニュアルフォーカスモードが設定されている場合などが位相差信号による焦点検出処理を行わないケースに該当する。位相差信号による焦点検出処理を実施する場合はステップS1903にて瞳強度分布の変化情報および被写界深度の変化情報をレンズマイコン101から取得するようにカメラ本体200の通信部208に指示する。なお、不図示であるが、これら情報とともにF値を受信する。
【0155】
この瞳強度分布の変化情報は
図18にて説明した通り、位相差信号を検出する際の受光領域の重心位置の変化を把握し、焦点検出制御の精度向上のために必要な情報である。位相差信号を用いた位相差検出式の焦点検出において用いられる前述の変換係数は、通常F値を用いて特定される。しかしながら、前述のように本実施例の光学素子107は、中心部の透過率が周辺部の透過率よりも高いよう構成されていることから、F値に対応する基線長と、光学素子107の影響を受けた基線長とが異なる。このときF値を使ってこの変換係数を算出すると、位相差検出式の焦点検出結果に誤差が生じてしまう。このことから、本実施例では、瞳強度分布の変化情報をF値の代わりに用いて変換係数を算出することで、光学素子107の透過率を考慮した精度の良い位相差検出式の焦点検出を実現することができる。
【0156】
一方、被写界深度の変化情報は、後述する被写体非補足時のサーチ駆動速度や被写体検出時の合焦判定においてF値の代わりに用いることで、不用意にサーチ速度を低下するのを回避することと、合焦判定を最適に行うために用いる。
【0157】
ステップS1902にて現在のカメラ本体200の撮影モードの選択の際に位相差信号による焦点検出処理を実施しない場合、ステップS1904にて被写界深度の変化情報をレンズマイコン101から取得するようにカメラ本体200の通信部208に指示する。なお、不図示であるが、被写界深度の変化情報とともにF値を受信する。
【0158】
ステップS1905において、信号処理回路203からAF制御部211の位相差AF部212に位相差信号の入力がなされることを待ち合わせる。ステップS1905にて位相差信号が入力された場合、ステップS1906に進む。ステップS1906において、AF制御部211は、位相差信号を用いて信号処理による像ずれ量を算出する。
【0159】
続いてステップS1910において、ステップS1902と同様に、AF制御部211は、位相差信号による焦点検出処理を行うか否かを判定する。位相差信号による焦点検出処理を行う場合、ステップS1911へ遷移する。一方、位相差信号による焦点検出を行わない場合、ステップS1913へ遷移する。
【0160】
ステップS1911において、AF制御部211は、通信部208により瞳強度分布の変化情報が入力されるのを待ち合わせる。ステップS1912において、ステップS1906にて取得した信号処理による像ずれ量とステップS1911にて取得した瞳強度分布の変化情報とに基づき、像面での被写体ピントずれ量としてのデフォーカス量を算出する。
【0161】
ステップS1913において、AF制御部211は、位相差信号による焦点検出以外のピントずれ量の検出処理を行う。本実施例では、コントラストAF制御によるピントずれ情報の検出処理を行う。続いてステップS1914において、AF制御部211は、通信部208により被写界深度の変化情報が入力されるのを待ち合わせる。ステップS1915において、AF制御部211は、ステップS1906による二像の一致度などを判定し、合焦制御すべき対象となる被写体が検出できているか否かを判定する。
【0162】
ステップS1916において、合焦制御すべき被写体が検出されているため、位相差AF部212にて算出されるデフォーカス量が所定の合焦判定幅に入っているか否かを判定するための合焦巾を以下の式により算出する。
【0163】
【0164】
Fnoは絞り込み制御を考慮した開放口径情報、被写界深度変化情報はレンズマイコン101からカメラ本体200の通信部208を経由して取得する係数情報であり、本実施例では光軸中心から口径方向に透過率が変化することにより生じる補正係数である。δは許容錯乱円情報であり、Nはフォーカスレンズ105を駆動させるフォーカスレンズ駆動回路の駆動特性などから決定されるレンズ固有係数である。
【0165】
ステップS1917において、AF制御部211は、位相差AF部212にて算出されるデフォーカス量(検出デフォーカス量)がステップS1912で決定した合焦巾に入っているか否かを判定する。デフォーカス量が合焦巾に入っている場合、ステップS1918で合焦状態として判定する。一方、ステップS1917にてデフォーカス量が合焦巾に入っていないと判定した場合、ステップS1920に進み、検出デフォーカス量をキャンセルさせるようにフォーカスレンズ105を駆動するために通信部208へ要求する。
【0166】
ステップS1915にて合焦制御すべき被写体が見つかっていない場合、ステップS1919で被写界深度情報に基づくサーチ速度を以下の通りに決定する。
【0167】
【0168】
Fnoは、絞り込み制御を考慮した開放口径情報であり、FrameRateは
図16の撮像同期信号1601の周期であり、より具体的には撮像素子201による焦点検出処理の制御周期を示している。この制御周期をサーチ駆動速度の決定要素とするのは、サーチ駆動速度が速くなった場合に位相差信号を正しく検出できなくなるが、焦点検出処理の制御周期が早くすることでこの現象を回避できるためである。Mは位相差AF検出部の特性情報であり、例えば高輝度な状態など位相差信号の検出がしやすい状況であればサーチ速度を早くするための係数となっている。上記のサーチ速度によるフォーカスレンズ105の駆動を通信部208へ要求する。
【0169】
ステップS1901のフラグ判定により交換レンズ100からAF制御用データとして瞳強度分布の変化情報および深度情報が取得できる場合、上述の通り、デフォーカス量の算出、フォーカス駆動速度、合焦幅判定に最適なパラメータとして使用する。一方、ステップS1901の判定により交換レンズ100からAF制御用データが取得できない場合、ステップS1921にてステップS1906と同様に位相差信号についての信号処理による像ずれ量を算出する。
【0170】
ステップS1922において、AF制御部211は、絞り109に現在設定されているF値情報を用いてデフォーカス量を算出する。したがって、ステップS1921に対して、透過率が変化するレンズ光学系であることを考慮しないデフォーカス算出処理となる。続いてステップS1923において、AF制御部211は、絞り109に現在設定されているF値情報を深度情報として使用して、ステップS1916またはステップS1919のフォーカス駆動制御を行う。したがって、透過率が変化するレンズ光学系であることを考慮しないフォーカス駆動制御となる。
【0171】
ステップS1931は、
通信部208が待機している状態を示す。例えば、カメラ本体200が定常的に撮像素子201に画像をキャプチャしているライブビューモードで動作している状態である。カメラ本体200のAF制御部211がステップS1903またはステップS1904でレンズから取得したい光学データを要求した場合、ステップS1932において、通信部208は撮像周期での通信項目を更新する。これは、
図16におけるAF制御用通信1604に相当する。
【0172】
ステップS1933において、通信部208は、撮像同期タイミング通知を待ち合わせ、ステップS1934でAF制御用通信を実施する。ステップS1935において、通信部208は、レンズマイコン101から取得したAF制御用情報に含まれる、瞳強度分布の変化情報と被写界深度の変化情報をAF制御部211へ通知する。ステップS1936において、AF制御部211がステップS1919にてサーチ駆動を要求しているか、または、ステップS1920にて合焦用フォーカス駆動を要求しているかを判定する。要求があった場合、ステップS1937にてレンズマイコン101へフォーカスレンズ105の駆動要求を通信する。
【0173】
以上説明したように、本実施例では、絞り位置によって透過率が一様に変化しない光学素子107が存在することにより影響を受ける、瞳強度分布の変化情報および被写界深度の変化情報を個別に取得するようにしている。すなわち、絞りユニットの制御量と、瞳強度分布の変化情報と、被写界深度の変化情報を個別に取得可能としており、これらのパラメータが同様に変化しない光学系であっても各々のパラメータを最適に切り替えることが可能となっている。これにより、AF制御処理のうちでピントずれ量を検出するための処理における精度保証のために、瞳強度分布の変化情報を用い、フォーカスレンズの駆動速度や合焦判定の閾値を最適化するために被写界深度情報を用いる。これにより、ピントずれ量をより高精度に求め、フォーカス駆動を最適に行うことができるため、例えば合焦速度の低下を回避することが可能となる。
【0174】
本実施例では、
図8のステップS821~S825、S832~S835に示されるようにAE用F値T値変換データ通信をレンズの装着時に実施し、
図19のステップS1935に示されるようにカメラ本体200が撮像周期でAF制御用情報を周期的に実施する。ただし本実施例は、このような制御に限定されるものではく、AF制御用情報をAE用F値T値変換データ通信と同様にレンズ装着時に実施してもよい。また、AE用F値T値変換データ通信をAF制御用情報と同様に撮像周期にて周期的に実施するようにしてもよい。あるいは、AE用F値T値変換データおよびAF制御用情報のいずれかが変化したことを示すフラグなどの情報を撮像周期にて周期的に実施してもよい。そして、カメラ本体200は当該のフラグなどの情報の変化を検出した場合にAE用F値T値変換データおよびAF制御用情報を取得するようにしてもよい。
【0175】
本実施例では、交換レンズ100からカメラ本体200にAE制御用データとAF制御用データを送信することで、カメラ本体200が当該複数のデータを取得する方法を説明したが、本実施例の適用範囲はこれに限定されるものではない。例えば、カメラ本体200がネットワーク回線を通じてパソコンなどからダウンロードすることによって当該複数のデータを取得してもよい。
【0176】
本実施例では、カメラ本体200のユーザーインタフェース207または交換レンズ100のユーザーインタフェース120を介してユーザがF値やシャッター速度などを設定する場合を説明したが、本実施例の適用範囲はこれに限定されるものではない。例えば、交換レンズ100や交換レンズ100とカメラ本体200との間に配置されたアダプタなどに設けられたボタンや操作リングなどの操作手段を介してF値やシャッター速度などを設定してもよい。ただし、操作手段が交換レンズ100やアダプタに設けられている場合、操作手段を有する交換レンズ100またはアダプタがカメラ本体200に対して設定値を通信する。
【実施例2】
【0177】
次に、本発明の実施例2について説明する。実施例1は、交換レンズ100に内蔵される光学素子107にフィルタが構成され、光軸中心から口径方向に向かって透過率が変化する光学素子が交換レンズ100内に固定して配置されている。一方、本実施例では、交換レンズが複数の種類のフィルタを脱着可能に構成されている場合について説明する。
【0178】
<構成図>
図20を参照して、本実施例におけるカメラシステムの構成について説明する。
図20は、本実施例におけるカメラ本体(撮像装置)200および交換レンズ(撮像アクセサリ)100aを含むカメラシステム(撮像システム10a)の構成図である。本実施例の交換レンズ100aは、光学素子107に対して着脱可能な複数の種類のフィルタ141、および、フィルタ141の脱着を操作する操作部材140を有する点で、実施例1の交換レンズ100と異なる。なお、実施例1と同じ番号が付与されている構成は実施例1で説明しているため、それらの説明を省略する。
【0179】
操作部材140は、交換レンズ100aの外装に装備された部材であり、光学素子107に対して、光軸中心から口径方向に向かって透過率を減衰、変化させるフィルタ141の脱着を可能としている。本実施例では、透過率変化の特性が異なるフィルタAおよびフィルタBの2種類のフィルタを切り替え可能な構成を例に説明する。この場合、フィルタAを装着した状態、フィルタBを装着した状態、フィルタを装着しない状態(すなわち透過率を変化させる光学素子が無い状態)の3つの状態が存在する。なお、3種類以上の互いに透過率変化の特性の異なるフィルタを構成した場合も同様の処理となる。
【0180】
フィルタ141の脱着状態の変化はレンズマイコン101に入力され、後述する通信処理によりカメラマイコン205に通知される。カメラ本体200では当該脱着状態に応じてAE制御部210およびAF制御部211の動作を切り替える。
【0181】
ここで、
図21を参照して、T値とF値とを変換するテーブルデータについて説明する。テーブルデータは、AE制御部210が絞り優先モードで撮影する際に絞り制御用にF値をT値に変換するために参照するテーブルデータと、シャッター速度優先モードで撮影する際に絞り制御用にT値をF値に変換するために参照するテーブルデータを含む。
図21は、F値とT値とを変換するためのテーブルデータ構成の説明図である。
【0182】
図21(A)のテーブル2101は、フィルタAを装着した場合のF値をT値へ変換するテーブルである。このテーブルは実施例1の
図11と同じくF値は分割数64個、F値分割の分解能は1/16段刻みとなっている。一方、
図21(B)のテーブル2102は、フィルタBを装着した場合のF値をT値へ変換するテーブルである。F値についての分割数は64だが、2103に示すようにF値分割の分解能は1/8段刻みとなっている。このように各フィルタの特性に応じて分解能を変更することで当該データを管理するメモリ領域の使用量を抑えることが可能となる。
【0183】
図21(C)のテーブル2104は、フィルタAを装着している場合のT値をF値へ変換するテーブルである。このテーブルは実施例1の
図14と同じくT値は分割数64個、T値分割の分解能は1/16段刻みとなっている。一方、
図21(D)のテーブル2105は、フィルタBを装着している場合のT値をF値へ変換するテーブルである。T値は分割数64であるが、2106に示すようにT値分割の分解能は1/8段刻みとなっている。このように各フィルタの特性に応じて分解能を変更することで当該データを管理するメモリ領域の使用量を抑えることが可能となる。
【0184】
本実施例では、上述したフィルタA用のテーブルデータとフィルタB用のテーブルデータとを実施例1の
図8にて説明した起動時の処理中にてステップS821~S825でレンズマイコン101から取得しカメラ本体200のAE制御部210に伝搬する。この処理については実施例1と同様であるため説明を省略する。
【0185】
<通信フォーマット>
図22は、実施例1の
図9に対応する本実施例における「F値T値変換テーブルデータサイズ通信」のフォーマットである。実施例1の
図9と同様に、
図22(A)に示される2201「F値T値変換テーブルデータサイズ通信」と、
図22(B)に示される2210「F値T値変換テーブルデータ通信」の2つの通信からなる。
【0186】
902の「CMD_FT」は、実施例1と同じく所定の数値であらかじめ定義されたコマンドである。2202「NumOfFilter」は、本通信で何個分のフィルタのF値T値変換テーブルデータを通信するかを示す。本実施例ではフィルタA、フィルタBの2つのデータを通信するため、「2」が通知される。カメラ本体200の通信部208は、「NumOfFilter」でレンズマイコン101から取得する数に応じて2201「F値T値変換テーブルデータサイズ通信」の通信データ長2203を確定することができる。
【0187】
2204はフィルタAのテーブルデータサイズを通信する箇所を示し、2205はフィルタBのテーブルデータサイズを通信する箇所を示す。2206の2バイトは、フィルタAについてのF値からT値へ変換するためのデータ構造のトータルサイズ(TotalSizeAFT)を示す。2207の2バイトは、フィルタAについてのT値からF値へ変換するためのデータ構造のトータルサイズ(TotalSizeATF)を示す。同様に、2208の2バイトは、フィルタBについてのF値からT値へ変換するためのデータ構造のトータルサイズ(TotalSizeBFT)を示す。2209の2バイトは、フィルタBについてのT値からF値へ変換するためのデータ構造のトータルサイズ(TotalSizeBTF)を示す。
【0188】
各々のサイズは、以下の式にて求められる。
【0189】
【0190】
本実施例における2210「F値T値変換テーブルデータ通信」は、実施例1における
図9の「F値T値変換テーブルデータ通信」910との違いとして、フィルタAのテーブルデータとフィルタBのテーブルデータとを連続的に通信している点である。2211の箇所がフィルタAのテーブルデータであり、2212の箇所がフィルタBのテーブルデータである。各々の通信項目は
図9と同じであるため説明を省略する。ただし、
図21を参照して説明したように、F値およびT値の分解能をフィルタAとフィルタBとで変えている。このため本実施例では、フィルタA用の2213「F値分割分解能(A)」と2214「T値分割分解能(A)」は1/16段を示し、フィルタB用の2215「F値分割分解能(B)」と2216「T値分割分解能(B)」は1/8段を示している。光学特性に応じて分割分解能を最適化することにより前述したとおりメモリ使用量を削減するとともに、通信データサイズも最適化することができる。
【0191】
なお、
図22についても「0x00」に対応して、レンズデータ信号DLC又は
カメラデータ信号DCLの最上位のデータD7から最下位のデータD0の信号レベルをLOWに維持しても良い。
【0192】
<フィルタ切り替え時の動作>
次に、
図23を参照して、本実施例のフィルタが切り替えられた場合、およびフィルタを取り外した際のカメラ本体200と交換レンズ100aとを含めた動作について説明する。
図23は、フィルタ141を切り替えた際の動作を示すフローチャートである。ステップS2301~S2303はレンズマイコン101の動作を示し、ステップS2311~ステップS2316はカメラ本体200の通信部208の動作を示す。ステップS2321~ステップS2324はAE制御部210の動作を示し、ステップS2331~ステップS2335はAF制御部211の動作を示す。
【0193】
まずステップS2302において、レンズマイコン101がフィルタ脱着状態の変化を検出すると、ステップS2303でフィルタ脱着状態の変化後の状態をカメラ本体200の通信部208へ送信する。
【0194】
カメラ本体200の通信部208は、ステップS2312にてレンズマイコン101からステップS2302の通信を受信すると、ステップS2313において、受信前後の装着後のフィルタ状態の変化を判定する。受信後のフィルタ状態が「フィルタ有からフィルタ無へ変化した」場合(フィルタを取り外した場合)、ステップS2314にてフィルタ無し状態をAE制御部210およびAF制御部211に通知する。前述以外の判定結果の場合、「フィルタ無からフィルタ有へ変化した」場合(フィルタAもしくはフィルタBを装着した場合)であり、ステップS2315にてフィルタ有をAF制御部211へ通知する。そしてステップS2316にて、現在装着されているフィルタがフィルタAであるかフィルタBであるかをAE制御部210へ通知する。このようにAE制御部210への装着フィルタの種類の通知は、後述するようにフィルタ種類によって振る舞いを変える必要があるが、AF制御部211はフィルタの有無のみで振る舞いを変えるためである。
【0195】
AE制御部210は、通信部208からフィルタの有無、現在装着されているフィルタの種類の情報をステップS2322で通知されると、ステップS2323で通知されたフィルタ種類に応じたF値T値変換テーブルデータを参照するように切り替える。例えばフィルタ141がフィルタAからフィルタBへ切り替わった場合、
図21のフィルタA用のデータテーブル2101、2104から、フィルタB用のデータテーブル2102、2105を参照するように制御を切り替える。なお、フィルタが取り外されたことが通知された場合、F値とT値の変換処理を実施し無くすればよい。
【0196】
AF制御部211は、カメラ本体200の通信部208からフィルタの有無をステップS2332で通知されると、フィルタが装着されている場合は実施例1で
図19のステップS1902~S1914で説明した瞳強度分布の変化情報、深度の変化情報を取得する。これらの情報は、必要なタイミングでレンズマイコン101から取得される。このとき通信部208を介してレンズマイコン101から取得できるのは現在装着されているフィルタの情報となるため、AF制御部211へはフィルタ種類の変化の情報を通知する必要が無い。一方、ステップS2332にてフィルタ無しが通知されると、
図19のステップS1921~S1923で説明したフィルタ無しの動作を行えばよい。
【0197】
以上説明したように、本実施例では、交換レンズ100a内に複数種類のフィルタ141を着脱可能である場合、フィルタ
脱着状態に応じて最適なAE制御およびAF制御を実施可能とする。より具体的には、起動時にフィルタの種類を考慮したAE制御用のデータ通信を行う。また、フィルタの着脱、フィルタの種類の切り替え情報をカメラ本体200へ通知する仕組みとによって、フィルタの脱着を行ったときに対応してAE制御およびAF制御を切り替える。なお本実施例では、複数種類の光学素子(フィルタ)107の光学データを初期通信で交換レンズ100aからカメラ本体200へ取得するように説明したが、これに限定されるものではない。本実施例は、例えば、光学素子(フィルタ)107が切り替えられた際(
図23のステップS2303)に切り替え後の光学素子(フィルタ)107に対応する光学データを通信しなおすようにしてもよい。
【実施例3】
【0198】
次に、本発明の実施例3について説明する。実施例1は、交換レンズ100に内蔵される光学素子107にフィルタが構成され、光軸中心から口径方向に向かって透過率が変化する光学素子が交換レンズ100内に固定して配置されている。本実施例では、カメラ本体200bと交換レンズ100bとの間に装着されるアダプタ300内に光学素子が設けられている場合について説明する。
【0199】
<構成>
図24を参照して、本実施例におけるカメラシステムの構成について説明する。
図24は、本実施例におけるカメラ本体(撮像装置)200b、交換レンズ(撮像アクセサリ)100b、および、アダプタ(中間アクセサリ)300を含むカメラシステム(撮像システム10b)の構成図である。なお、実施例1と同じ番号が付与されている構成は実施例1で説明しているため、それらの説明を省略する。
【0200】
アダプタ300は、マウント部401、402により、交換レンズ100bおよびカメラ本体200bと着脱可能である。光学素子301は、アダプタ300の内部に設けられており、カメラ本体200bと交換レンズ100bとの光軸中心に合わせて配置されるレンズまたはフィルタである。光学素子301は、光軸中心から口径方向に向かって透過率が変化するように構成されている。なお光学素子301は、実施例2と同様に着脱可能である。アダプタマイコン302は、カメラマイコン205との通信を行う通信部(アダプタ通信部)303および記憶部304を制御する。
【0201】
カメラ本体200bは、第1通信回路と、第1通信回路とは異なる第2通信回路とを有する。第1通信回路は、カメラマイコン205とレンズマイコン101とが通信(第1通信)を行う通信ラインである。第2通信回路は、アダプタマイコン302と通信(第2通信)を行うための通信ライン221、222である。同様に、交換レンズ100bは、カメラマイコン205とレンズマイコン101とが通信(第1通信)を行う通信ライン(第1通信回路)と、アダプタマイコン302と通信(第2通信)を行うための通信ライン(第2通信回路)223、224を有する。
【0202】
第1通信では、実施例1で説明した通り、レンズマイコン101とF値とT値の変換テーブルデータを通信する。第2通信では、アダプタ300の操作情報および光学情報の通信を行う。このため、カメラ本体200bの通信部208には、アダプタマイコン302へ電力を供給するための端子220と、アダプタマイコン302に構成される通信部303と通信するための通信ライン221、222を備える。通信ライン221、222は、通信ライン223、224を介して、レンズマイコン101に構成される通信部103に結線される。記憶部304には、アダプタ300の機能情報およびアダプタ300が認識可能な交換レンズ100bの各レンズ機種との組み合わせ毎の光学情報を記憶している。これら情報は、通信部303を介してカメラ本体200bへ送信される。記憶部304は、アダプタマイコン302に内蔵されてもよいし、外付けの構成であってもよい。
【0203】
<第2通信構成>
次に、
図25を参照して、カメラ本体200bと交換レンズ100bとアダプタ300との間の通信処理について説明する。
図25は、カメラ本体200bとアダプタ300と交換レンズ100bの通信部208、303、103の説明図である。
【0204】
カメラ本体200bの通信部208、交換レンズ100bの通信部103、および、アダプタ300の通信部303は、第1通信と同様に接点部を介して接続される。より具体的には、通信接点群2501、2502、2503、2504を介して接続される。本実施例において、通信接点群は各々CS信号端子2501a、2502a、2503a、2504aおよびDATA信号端子2501b、2502b、2503b、2504bを有する。通信部208、103、303は、CS信号端子を介して接続されたCS信号線、DATA信号端子を介して接続されたDATA信号線を用いて通信を行う。
【0205】
カメラ側通信回路は、接地スイッチ2511と入出力切り替えスイッチ2512とにより構成される。アダプタ側通信回路は、接地スイッチ2513と入出力切り替えスイッチ2514とにより構成される。レンズ側通信回路は、接地スイッチ2515と入出力切り替えスイッチ2516とにより構成される。
【0206】
信号線は、通信のフロー制御を行うための信号を伝搬するためのCS信号線(第一の信号線)と、送受信するデータを伝搬するためのDATA信号線(第二の信号線)の2本で構成される。
【0207】
CS信号線は、通信部208、303、103に接続されており、信号線の状態(Hi/Low)を検出可能な構成としている。またCS信号線は、カメラ本体200b内で不図示の電源にプルアップ接続されている。CS信号線は、交換レンズ100bの接地スイッチ2515、カメラ本体200bの接地スイッチ2511、アダプタ300の接地スイッチ2513を介して、GNDと接続可能な構成としている(オープンドレイン接続)。このような構成により、交換レンズ100b、カメラ本体200b、アダプタ300はそれぞれ接地スイッチをオン(接続)することによりCS信号線の状態をLowにすることが可能である。一方、交換レンズ100b、カメラ本体200b、アダプタ300の全てが各々の接続スイッチをオフ(遮断)することで、CS信号線の状態をHiとすることができる。第2通信では、後述するブロードキャスト通信とP2P通信の2種類の通信プロトコルを選択的に使用することが可能である。CS信号線は、通信プロトコルを区別するため、もしくはP2P通信における通信方向の切り替えなどに用いられる。
【0208】
DATA信号線は、データの伝搬方向を切り換えながら使用可能な単線の双方向データ送信線である。DATA信号線は、交換レンズ100bの入出力切り換えスイッチ2516を介して通信部103と接続可能である。また、DATA信号線は、カメラ本体200bの入出力切り換えスイッチ2512を介して通信部208と接続可能である。また、DATA信号線は、アダプタ300の入出力切り換えスイッチ2514を介して通信部303とそれぞれ接続可能である。それぞれのマイコンにはデータを送信するためのデータ出力部(CMOS方式)とデータを受信するためのデータ入力部(CMOS方式)が備えられている。入出力切り換えスイッチを操作することで、DATA信号線をデータ出力部に接続するかデータ入力部に接続するかを選択することができる。このような構成により、交換レンズ100b、カメラ本体200b、および、アダプタ300は、自分がデータを送信する場合にはDATA信号線をデータ出力部と接続するように各々入出力切り換えスイッチを操作することでデータ送信が可能となる。一方、交換レンズ100b、カメラ本体200b、および、アダプタ300は、自分がデータを受信する場合にはDATA信号線をデータ入力部と接続するように各々入出力切り換えスイッチを操作することでデータ受信が可能となる。
【0209】
ここで、CS信号とDATA信号により行われるブロードキャスト通信とP2P通信について述べる。CS信号線はいずれかのユニットがGNDに接続するとLOWに落ちるため、ブロードキャスト通信のきっかけとして使用される。通信の主体であるカメラ本体がCS信号線をLOWに引くことでブロードキャスト通信が開始される。CS信号線がLOWの時にDATA線により各アクセサリ(交換レンズ100bおよびアダプタ300)が受信したデータは、ブロードキャストされたデータであると判定する。また、各アクセサリがCS信号線をLOWに引くことでカメラ本体にブロードキャスト通信をリクエストすることができる。
【0210】
CS信号線のLOWを検知したユニットは、ブロードキャストの処理中は自身の接地スイッチを入れておくことで、ブロードキャスト通信に対する処理が継続していることを他のユニットに周知することが可能である。第2通信はブロードキャスト通信で始まり、ブロードキャスト通信で終わると規定することで、アクセサリのDATA信号線は基本的に受信状態を維持しておけばよい。カメラがアクセサリとP2P通信を行う場合には、まずブロードキャスト通信により通信対象のアクセサリを指定する。ブロードキャスト通信の送信を完了したカメラと指定されたアクセサリはP2P通信を行う。
【0211】
P2P通信では、まずカメラ本体200bがデータを送信し、それを受けたアクセサリ(アダプタ300)がカメラ本体200bへデータを送信する。以後、これが交互に行われる。P2P通信においては、通信中のCS信号はHIGHを維持することでブロードキャスト通信と区別される。P2P通信におけるCS信号はビジー信号として使用される。すなわち、カメラ及びアクセサリが相手に自身からのデータ送信が終了した旨を通知するためにLOWにし、データ受信の準備が整ったことを通知するためにHIGHにする。
【0212】
P2P通信が終了すると、カメラ本体200bがP2P通信の終了をブロードキャスト通信する。このようにして、カメラ本体200bは、複数のアクセサリ(アダプタ300)と2本の通信ラインを介してデータ通信を行うことができる。
【0213】
なお
図25では、本実施例における通信回路の一例について示したが、本実施例はこれに限定されるものではない。例えば、CS信号線をカメラ本体200
b内でGNDにプルダウン接続し、交換レンズ100
bの接地スイッチ2515、カメラ本体200
bの接地スイッチ2511、アダプタ300の接地スイッチ2513を介して不図示の電源と接続可能な構成としても良い。またDATA信号線は常に各々のデータ入力部に接続される構成とし、DATA信号線と各々のデータ出力部との接続/遮断をスイッチにより操作可能な構成としても良い。
【0214】
<第2通信の通信プロトコルの説明>
次に、
図28(A)および
図28(B)を参照して、第2通信で実施するブロードキャスト通信について説明する。ブロードキャスト通信は、カメラマイコン205、レンズマイコン101、および、アダプタマイコン302のうちの1つが他の2つに対して同時にデータを送信する(すなわち一斉送信)を行う一対多通信である。ブロードキャスト通信は、信号線CSおよび信号線DATAを用いて行われる。また、ブロードキャスト通信が行われる通信モードをブロードキャスト通信モードともいう。ブロードキャスト通信モードは、第2の通信モードの一例である。
【0215】
図28(A)は、カメラマイコン205、レンズマイコン101、および、アダプタマイコン302の間で行われるブロードキャスト通信での信号波形を示している。ここでは例として、カメラマイコン205からレンズマイコン101とアダプタマイコン302へのブロードキャスト通信に応答して、アダプタマイコン302がカメラマイコン205とレンズマイコン101にブロードキャスト通信を行う場合について説明する。
【0216】
まず通信マスタであるカメラマイコン205は、ブロードキャスト通信を開始することをそれぞれ通信スレーブであるレンズマイコン101およびアダプタマイコン302に通知するために、信号線CSへのLow出力を開始する(2801)。次に、カメラマイコン205は、送信するデータを信号線DATAに出力する(2802)。
【0217】
一方、レンズマイコン101とアダプタマイコン302は、信号線DATAから入力されたスタートビットSTを検出したタイミングで信号線CSへのLow出力を開始する(2803、2804)。この時点ではすでにカメラマイコン205が信号線CSへのLow出力を開始しているので、信号線CSの信号レベルは変化しない。
【0218】
その後、カメラマイコン205は、ストップビットSPの出力まで終了すると、信号線CSへのLow出力を解除する(2805)。レンズマイコン101とアダプタマイコン302は、信号線DATAから入力されたデータをそのストップビットSPまで受信した後、受信したデータの解析および該受信データに関連付けられた内部処理を行う。そして、次のデータを受信するための準備が整った後に、レンズマイコン101とアダプタマイコン302は信号線CSへのLow出力を解除する(2806、2807)。前述した通り、信号線CSの信号レベルは、カメラマイコン205、レンズマイコン101およびアダプタマイコン302の全てが信号線CSへのLow出力を解除することでHiとなる。したがって、カメラマイコン205、レンズマイコン101およびアダプタマイコン302は、各々が信号線CSへのLow出力を解除した後に信号線CSの信号レベルがHiとなることを確認することができる。カメラマイコン205、レンズマイコン101およびアダプタマイコン302はそれぞれ、信号線CSの信号レベルがHiとなったことを確認することで、今回の通信処理を終了し、次の通信を行うための準備が整ったと判定することができる。
【0219】
次に、アダプタマイコン302は、信号線CSの信号レベルがHiに戻ったことを確認すると、ブロードキャスト通信を開始することをカメラマイコン205およびレンズマイコン101に通知するために、信号線CSへのLow出力を開始する(2811)。
【0220】
続いてアダプタマイコン302は、送信するデータを信号線DATAに出力する(2812)。またカメラマイコン205およびレンズマイコン101は、信号線DATAから入力されたスタートビットSTを検出したタイミングで信号線CSへのLow出力を開始する(2813、2814)。この時点では、すでにアダプタマイコン302が信号線CSへのLow出力を開始しているため、信号線CSに伝搬される信号レベルは変化しない。その後、アダプタマイコン302は、ストップビットSPの出力まで終了すると信号線CSへのLow出力を解除する(2815)。一方、カメラマイコン205およびレンズマイコン101は、信号線DATAから入力されたストップビットSPまで受信した後、受信したデータの解析および該受信データに関連付けられた内部処理を行う。そして、カメラマイコン205およびレンズマイコン101は、次のデータを受信するための準備が整った後に信号線CSへのLow出力を解除する(2816、2817)。
【0221】
なお、カメラマイコン205のレンズマイコン101とアダプタマイコン302へのブロードキャスト通信に応答して、レンズマイコン101がカメラマイコン205とアダプタマイコン302にブロードキャスト通信を行う場合も同様である。すなわちレンズマイコン101は、信号線CSへのLow出力を開始し、信号線DATAに送信するデータを出力すると、レンズマイコン101は信号線CSへのLow出力を解除する。カメラマイコン205およびアダプタマイコン302が、レンズマイコン101によって出力されたデータを信号線DATAから入力されたストップビットSPまで受信した後に信号線CSへのLow出力を解除することで、次の通信が可能な状態へと戻る。
【0222】
図28(B)も、カメラマイコン205、レンズマイコン101およびアダプタマイコン302の間で行われるブロードキャスト通信での信号波形を示している。ここでは、アダプタマイコン302からブロードキャスト通信の開始をカメラマイコン205に通知する例を示す。この例では、カメラマイコン205からのレンズマイコン101およびアダプタマイコン302へのブロードキャスト通信に応答する形でアダプタマイコン302がカメラマイコン205およびレンズマイコン101にブロードキャスト通信を行う。
【0223】
まずアダプタマイコン302は、ブロードキャスト通信を開始することをカメラマイコン205およびレンズマイコン101に通知するために、信号線CSへのLow出力を開始する(2821)。すなわち、アダプタマイコン302は信号線CSの信号レベルを変化させることにより、カメラマイコン205に通信要求を通知する。信号線CSの信号レベルがHi(第1の信号レベルとも称する)からLow(第2の信号レベルとも称する)になったことを検出したカメラマイコン205は、信号線CSへのLow出力を開始する(2822)。この時点ではすでにアダプタマイコン302が信号線CSへのLow出力を開始しているので、信号線CSの信号レベルは変化しない。
【0224】
次に、カメラマイコン205は、信号線CSによって通知された通信要求に対応して送信するデータを信号線DATAに出力する(2823)。レンズマイコン101は、信号線DATAから入力されたスタートビットSTを検出したタイミングで信号線CSへのLow出力を開始する(2824)。この時点では、すでにカメラマイコン205が信号線CSへのLow出力を開始しているため、信号線CSの信号レベルは変化しない。
【0225】
カメラマイコン205は、ストップビットSPの出力まで終了すると、信号線CSへのLow出力を解除する(2825)。一方、レンズマイコン101およびアダプタマイコン302は、信号線DATAから入力されたストップビットSPまで受信した後、受信したデータの解析および該受信データに関連付けられた内部処理を行う。そして、レンズマイコン101およびアダプタマイコン302は、次のデータを受信するための準備が整った後に信号線CSへのLow出力を解除する(2826、2827)。前述した通り、信号線CSの信号レベルは、カメラマイコン205、レンズマイコン101およびアダプタマイコン302の全てが信号線CSへのLow出力を解除することでHiとなる。したがって、カメラマイコン205、レンズマイコン101およびアダプタマイコン302は、それぞれが信号線CSへのLow出力を解除した後、信号線CSの信号レベルがHiとなることを確認することができる。カメラマイコン205、レンズマイコン101およびアダプタマイコン302はそれぞれ、信号線CSの信号レベルがHiとなることを確認することで、今回の通信処理を終了し、次の通信を行うための準備が整ったと判定することができる。
【0226】
次に、アダプタマイコン302は、信号線CSの信号レベルがHiに戻ったことを確認すると、ブロードキャスト通信を開始することをカメラマイコン205およびレンズマイコン101に通知するために信号線CSへのLow出力を開始する(2831)。すなわち、レンズマイコン101は信号線CSの信号レベルを変化させることにより、カメラマイコン205に通信要求を通知する。
【0227】
次に、アダプタマイコン302は、送信するデータを信号線DATAに出力する(2832)。一方、カメラマイコン205およびレンズマイコン101は、信号線DATAから入力されたスタートビットSTを検出したタイミングで信号線CSへのLow出力を開始する(2833、2834)。この時点では、すでにアダプタマイコン302が信号線CSへのLow出力を開始しているため、信号線CSの信号レベルは変化しない。
【0228】
その後、アダプタマイコン302は、ストップビットSPの出力まで終了すると、信号線CSへのLow出力を解除する(2835)。一方、カメラマイコン205およびレンズマイコン101は、信号線DATAから入力されたストップビットSPまで受信した後、受信したデータの解析および該受信データに関連付けられた内部処理を行う。そして、カメラマイコン205およびレンズマイコン101は、次のデータを受信するための準備が整った後に信号線CSへのLow出力を解除する(2836、2837)。
【0229】
図28(B)の例では、通信スレーブであるレンズマイコン101およびアダプタマイコン302からブロードキャスト通信が開始する。この場合、通信マスタであるカメラマイコン205は、信号線CSへのLow出力が開始された時点(2821)では、レンズマイコン101とアダプタマイコン302のどちらが信号線CSをLowにしたのかを判別することができない。このため、カメラマイコン205は、レンズマイコン101およびアダプタマイコン302の両方に対してブロードキャスト通信を開始したか(通信リクエストしたか)を確認する通信を行う必要がある。
【0230】
また、カメラマイコン205がブロードキャスト通信を開始するために信号線CSにLowを出力したタイミングで、レンズマイコン101またはアダプタマイコン302がブロードキャスト通信を開始するために信号線CSにLowを出力する場合がある。この場合、カメラマイコン205はレンズマイコン101またはアダプタマイコン302が信号線CSにLowを出力したことを検出することができない。この場合、レンズマイコン101またはアダプタマイコン302に対して、ブロードキャスト通信を開始したか(通信リクエストしたか)を確認する通信が行われない。このため、所定時間が経過しても通信リクエストの確認通信が行われなかった場合は、信号線CSを再度Low出力して、カメラマイコン205に対して通信リクエストを行う。
【0231】
以上のように、ブロードキャスト通信において信号線CSで伝達される信号は、ブロードキャスト通信の開始(実行)および実行中を示す信号として機能する。
【0232】
図28(A)および
図28(B)ではブロードキャスト通信の例を示したが、他のブロードキャスト通信を行ってもよい。例えば、1回のブロードキャスト通信で送信するデータは、
図28(A
)および
図28(B
)に示したように1バイトのデータでもよいが、2バイトや3バイトのデータであってもよい。また、ブロードキャスト通信を通信マスタであるカメラマイコン205から通信スレーブであるレンズマイコン1
01およびアダプタマイコン302への一方向通信としてもよい。
【0233】
次に、第2通信においてカメラ本体200b、交換レンズ100b、および、アダプタ300の間で行われるP2P通信について説明する。P2P通信は、通信マスタであるカメラ本体200bが、通信スレーブである交換レンズ100bとアダプタ300から通信する相手(特定アクセサリ)を1つ指定し、その指定した通信スレーブとの間のみでデータを送受信する一対一通信(個別通信)である。P2P通信は、信号線DATAと信号線CSを用いて行われる。また、P2P通信が行われる通信モードをP2P通信モードともいう。P2P通信モードは第2の通信モードの一例である。
【0234】
図29は、例として、カメラマイコン205と通信相手として指定されたレンズマイコン101との間でやり取りされるP2P通信の信号波形を示している。カメラマイコン205からの1バイトのデータ送信に応答して、レンズマイコン101がカメラマイコン205に対して2バイトのデータ送信を行う。
【0235】
まず通信マスタであるカメラマイコン205は、送信するデータを信号線DATAに出力する(2901)。カメラマイコン205は、ストップビットSPの出力まで終了した後、信号線CSへのLow出力を開始する(2902)。その後、カメラマイコン205は、次のデータの受信準備が整った後に、信号線CSへのLow出力を解除する(2903)。一方、レンズマイコン101は、信号線CSから入力されたLow信号を検出した後、信号線DATAから入力された受信データの解析および該受信データに関連付けられた内部処理を行う。その後レンズマイコン101は、信号線CSの信号レベルがHiに戻ったことを確認した後、送信すべきデータを2バイト分連続で信号線DATAに出力する(2904)。レンズマイコン101は、2バイト目のストップビットSPの出力まで終了した後、信号線CSへのLow出力を開始する(2905)。そしてレンズマイコン101は、次のデータの受信準備が整った後に信号線CSへのLow出力を解除する(2906)。
【0236】
P2P通信の通信相手として指定されていないアダプタマイコン302は、信号線CSおよび信号線DATAに信号を出力しない。つまり、P2P通信の通信相手として指定されていないアダプタマイコン302は、カメラマイコン205に通信要求を通知しない。
【0237】
以上のように、P2P通信において信号線CSで伝達される信号は、データ送信の終了と次のデータ送信の待機要求を示す通知信号として機能する。なお、
図29ではP2P通信の例を示したが、他のP2P通信を行ってもよく、例えば信号線DATAにてデータを1バイトずつ送信してもよいし、3バイト以上のデータを送信してもよい。
【0238】
本実施例におけるカメラ本体200
bとアダプタ300との初期通信(
図26のステップS2604)では、カメラマイコン205からブロードキャスト通信によってアダプタマイコン302を指定し、P2P通信によりアダプタマイコンの認証情報を取得する。また、アダプタ300からF値とT値の変換テーブルを取得する場合(
図26に後述するステップS2639)においても同様にブロードキャスト通信によってアダプタマイコン302を指定し、P2P通信によりアダプタマイコンから当該テーブルデータを取得する。
【0239】
<起動時処理(F値T値変換データテーブルの記憶先の探索)>
本実施例では、交換レンズ100bとアダプタ300との組み合わせで決まる情報を交換レンズ100bの記憶部130またはアダプタ300の記憶部304にて保持する。この情報は、光学情報、特に本実施例で特有の情報となる、絞り109の絞り込み位置としてのF値と光量T値の関係を示すデータテーブル、カメラ本体200bの撮像素子201に対する瞳強度分布の情報、および、被写界深度を示す光束情報などである。起動の際に、交換レンズ100b、アダプタ300、および、カメラ本体200bとの初期通信にて上記データがどこに管理されているかを探索する処理が作動する。
【0240】
ここで、
図26を参照して、この動作について説明する。
図26は、カメラ本体200bとアダプタ300と交換レンズ100bとの間で実施する初期通信を示すフローチャートである。本処理は、カメラマイコン205とアダプタマイコン302とレンズマイコン101の連携動作によって実施される。
【0241】
まず、カメラマイコン205の起動処理について説明する。ステップS2601にてカメラマイコン205が起動を開始すると、まずステップS2602において、カメラマイコン205はアダプタ300と交換レンズ100
bへ電源を供給する。続いてステップS2603において、カメラマイコン205は、第1通信にて交換レンズ100
bと初期通信を行う。この初期通信では、交換レンズ100bの認証情報を取得する。本ステップで実施する第1通信の通信モードは、実施例1で説明した
図8のステップS801、S802のように通信モードM1にて実施することができる。または、予めカメラマイコン205とレンズマイコン101とが通信モードM2を使用できることが双方で認識できている場合には、通信モードM2を用いてもよい。
【0242】
ここで交換レンズ100bの認証情報には、交換レンズ100bの識別情報と動作状態情報が含まれている。交換レンズ識別情報は、交換レンズの種類(機種)の識別に用いられる機種ナンバー(ID)等の情報であってもよいし、交換レンズ固有の光学データを示す光学データ識別情報であってもよい。また、交換レンズが有する機能を示す情報や同一機種の中での個体を識別可能な製造ナンバー(シリアルナンバー)等の情報を含んでいてもよい。
【0243】
続いてステップS2604において、カメラマイコン205は、第2通信にてアダプタ300と初期通信を行い、アダプタ300の認証情報を取得する。本ステップで実施する第2通信の通信モードは、
図28(A)を参照して説明したブロードキャスト通信でアダプタマイコン302を特定し、
図29を参照して説明したP2P通信を用いて認証情報を取得する。ここで、アダプタ300の認証情報には、アダプタ300の識別情報と補正処理要否情報と動作状態情報が含まれている。
【0244】
アダプタ識別情報は、アダプタ300の種類(機種)の識別に用いられる機種ナンバー(ID)等の情報であってもよいし、アダプタ300に固有の光学データを示す光学データ識別情報であってもよい。また、アダプタ300が有する機能を示す情報や同一機種の中での個体を識別可能な製造ナンバー(シリアルナンバー)等の情報を含んでいてもよい。本実施例の光学データ識別情報の中には、アダプタ300内に透過率が変化する光学素子(光学系)301を備えるか否かの情報が含まれている。
【0245】
ステップS2605において、カメラマイコン205は、アダプタ300内に透過率が変化する光学素子301を備えるか否かを判定する。光学素子301を備えない場合、ステップS2606において、カメラマイコン205は、第1通信の通信モードM2を用いてレンズマイコン101へ起動処理を進めてよいことを通知して、カメラマイコン205の起動処理は終了する。一方、光学素子301を備える場合、ステップS2607において、カメラマイコン205は、アダプタ300の認証情報に含まれる機種を特定する機種ID情報を第1通信の通信モードM2を用いて交換レンズ100bへ送信する。
【0246】
そしてステップS2608において、カメラマイコン205は、交換レンズ100bの記憶部130に、複数のデータを保持しているか否かの判定結果を待ち合わせる。ここで複数のデータは、AE制御部210で使用する、アダプタ300と交換レンズ100bとの組み合わせ時に参照することが可能なF値とT値の変換テーブルデータを含む。また、複数のデータは、AF制御部211で使用する、アダプタ300と交換レンズ100bとの組み合わせ時に参照することが可能な瞳強度分布の変化情報、深度の変化情報などを含む。本ステップでは、第1通信の通信モードM2を用いて通信する。
【0247】
ステップS2609にて交換レンズ100bの記憶部130にデータが無いことがレンズマイコン101から第1通信により通信されると、ステップS2610にてカメラマイコン205は、第2通信のブロードキャスト通信でアダプタマイコン302を特定する。そしてカメラマイコン205は、P2P通信を用いて交換レンズ100bの認証情報から機種を特定するID情報をアダプタ300へ送信する。ただし、第2通信の通信帯域を占有したままで良い状態であれば、ステップS2604で実施したP2P通信状態を本ステップまで維持し、本ステップではブロードキャスト通信をスキップしてもよい。一方で当該データが交換レンズ100b側にあった場合は、ステップS2611へ遷移する。
【0248】
ステップS2611は、アダプタ300の記憶部304に所望の光学データが記憶されていない場合である。このとき、カメラマイコン205とアダプタマイコン302との間での起動処理を終了すべく、カメラマイコン205は第2通信を用いてアダプタ300へ起動処理を進めてよいことを通知する。ステップS2610と同様に、ステップS2604で実施したP2P通信状態を本ステップまで維持し、本ステップではブロードキャスト通信をスキップしてもよい。
【0249】
ステップS2612において、実施例1で説明した通信方法にてカメラマイコン205は、第1通信を用いてレンズマイコン101との間でF値とT値を変換するためのデータテーブルの通信を実施し、カメラマイコン205の起動処理を終了する。
【0250】
ステップS2610でカメラマイコン205がアダプタ300へ第2通信を用いて交換レンズ100bの機種IDを送信した場合、ステップS2614において、本実施例で使用する光学データをアダプタ300の記憶部304にあるか否かの探索結果を待ち合わせる。ステップS2615にてアダプタ300の記憶部304に当該データが無ければステップS2617に遷移し、データがあればステップS2616へ遷移する。
【0251】
ステップS2617において、現在装着しているアダプタ300と交換レンズ100
bとの組み合わせで使用することができる光学データが、交換レンズ100
bの記憶部130にもアダプタ300の記憶部304にも存在しない。このためカメラマイコン205は、正しく動作できないことを警告画面として
図27の2701のように表示する。
【0252】
ステップS2616において、カメラマイコン205は、第2通信を用いてアダプタマイコン302から光学データを通信し、カメラマイコン205の起動処理を完了する。ステップS2610と同様に、ステップS2604にて実施したP2P通信状態を本ステップまで維持し、本ステップではブロードキャスト通信をスキップしてもよい。
【0253】
次に、アダプタマイコン302の起動処理について説明する。ステップS2631にてアダプタマイコン302が起動すると、ステップS2632において、カメラマイコン205のステップS2604による第2通信を用いた初期通信を実施する。本ステップでは、ステップS2609と対応する処理となるため、第2通信のブロードキャスト通信でカメラマイコン205がアダプタマイコン302を特定し、P2P通信を用いてアダプタマイコン302が認証情報をカメラマイコン205へ送信する。ステップS2609で通信帯域を開放しなければ、以降の処理で改めてブロードキャスト通信をする必要はなく、以降の処理における通信はいずれもカメラマイコン205と行うものとなり、P2P通信にて行うことができる。
【0254】
続いてステップS2633において、アダプタマイコン302は、カメラマイコン205から、レンズ機種特定IDの通知が行われるか、起動処理を進めてよいことの通知が来るのを待ち合わせる。ステップS2634の判定にてレンズ機種特定IDの通知がなされた場合、ステップS2636へ遷移する。一方、そうでない場合、カメラマイコン205から起動処理を進めてよいことが通知されているため、アダプタマイコン302の起動処理を終了する。
【0255】
ステップS2636において、アダプタ300内の記憶部304に、カメラマイコン205からステップS2610にて通知された交換レンズ機種ID情報と紐づけられた透過率が変化する光学系の光学データがあるか否かを探索する。データが記憶部304にある場合、ステップS2637に遷移する。一方、データが記憶部304に無い場合、ステップS2638へ遷移し、アダプタマイコン302としての起動処理を終了する。ステップS2637、S2638にてデータ有無についてのいずれかの検索結果がカメラマイコン205へ通知される。
【0256】
ステップS2637にてアダプタ300の記憶部304にデータがあった場合、ステップS2639にてカメラマイコン205と第2通信を用いてF値T値の変換テーブル情報を通信してアダプタマイコン302としての起動処理を終了する。
【0257】
最後に、レンズマイコン101の起動処理について説明する。ステップS2651にてレンズマイコン101が起動すると、ステップS2652において、カメラマイコン205のステップS2603による第1通信の通信モードM1または通信モードM2を用いた初期通信を実施する。続いてステップS2653において、レンズマイコン101は、カメラマイコン205から、アダプタ機種特定IDの通知が行われるか、起動処理を進めてよいことの通知が来るのを待ち合わせる。
【0258】
ステップS2654の判定にてアダプタ機種特定IDの通知がなされた場合、ステップS2655へ遷移する。一方、そうでない場合、カメラマイコン205から起動処理を進めてよいことが通知されているため、アダプタマイコン302の起動処理を終了する。ステップS2655において、交換レンズ100bの記憶部130に、カメラマイコン205からステップS2607にて通知されたアダプタ機種ID情報と紐づけられた透過率が変化する光学系の光学データがあるか否かを探索する。データが記憶部130にある場合、ステップS2657に遷移する。一方、データが記憶部130に無い場合、ステップS2658へ遷移し、レンズマイコン101としての起動処理を終了する。ステップS2657、S2658にてデータ有無についてのいずれかの検索結果がカメラマイコン205へ通知される。
【0259】
ステップS2657にてアダプタ300の記憶部130にデータがあった場合、ステップS2659において、カメラマイコン205と第1通信を用いてF値T値の変換テーブル情報を通信してレンズマイコン101としての起動処理を終了する。本ステップの通信データサイズは大容量データ通信となるため、実施例1と同様に、通信モードM3にて行う。
【0260】
以上説明した起動処理により、現在装着しているアダプタ300と交換レンズ100bとの組み合わせで参照すべき光学データがアダプタ300と交換レンズ100bとのいずれに存在するかを確認することができる。光学データが交換レンズ100bの記憶部130に存在する場合、以降のライブビュー中の動作は実施例1と同様の動作をすればよい。一方、光学データがアダプタ300に存在する場合、当該データの通信については第2通信を用いてアダプタ300から取得する。すなわちAF制御用情報は、撮像周期にて周期的にカメラ本体200が上記検索処理にて判定したデータ管理元(交換レンズ100またはアダプタ300)から取得する。
【0261】
また、アダプタ300の内部に設けられた光学素子301が着脱可能な構成であってもよい。その場合、実施例2で説明したように、複数の種類の光学素子301(フィルタ)の光学データについて第1通信を用いて交換レンズ100bから取得するか、または第2通信を用いてアダプタ300から取得するようにすればよい。または、光学素子(フィルタ)301が切り替えられたことをアダプタ300が検出し、
図28(B)に説明した方法によりアダプタ300からカメラ本体200bに光学素子301(フィルタ)が切り替わったことを通信する。これにより、切り替え後の光学素子301(フィルタ)に対応する光学データを通信しなおすようにしてもよい。
【0262】
以上説明したように、本実施例では、交換レンズ100bとカメラ本体200bとの間にアダプタ300を装着し、アダプタ300内に光軸中心から口径方向に透過率が変化する光学素子301が含まれる構成において、AE制御およびAF制御を実施可能とした。より具体的には、AE制御用データとAF制御用データの記憶箇所を起動時に探索することと、当該データの記憶箇所に応じて通信ラインを使い分けるようにした。
【0263】
本実施例では、
図26のステップS2659、S2612に示されるようにAE用F値T値変換データ通信を交換レンズ100
bの装着時にカメラ本体200
bが交換レンズ100
bから通信にて取得する。または、ステップS2639、S2616に示されるようにAE用F値T値変換データ通信を交換レンズ100bの装着時にカメラ本体200
bがアダプタ30
0から通信にて取得する。そして、撮像周期でAF制御用情報を周期的に実施する制御を説明したが、AF制御用情報をAE用F値T値変換データ通信と同様にレンズ装着時に実施してもよい。また、AE用F値T値変換データ通信をAF制御用情報と同様に撮像周期にて周期的に交換レンズ100
bまたはアダプタ300とのいずれかとの間で実施するようにしてもよい。あるいは、AE用F値T値変換データおよびAF制御用情報のいずれかが変化したことを示すフラグなどの情報を撮像周期にて周期的に実施してもよい。ここで、カメラ本体200
bは当該のフラグなどの情報の変化を検出した場合にAE用F値T値変換データおよびAF制御用情報を交換レンズ100
bもしくはアダプタ300とのいずれかから取得するようにしてもよい。
【0264】
<その他の実施形態>
なお、上述の実施例1、2では、交換レンズの本体に透過率が一様に変化しない光学素子がある場合と光学素子を着脱可能なアクセサリについて説明し,実施例3では中間アクセサリに透過率が一様に変化しない光学素子が存在する場合について説明した。しかし、中間アクセサリに存在する光学素子を脱着可能としてもよい。また、光学素子が交換レンズ本体と中間アクセサリの両方に装着可能としてもよい。
【0265】
また実施例1では、AE制御用のF値とT値の変換用テーブルデータを交換レンズ装着時に通信するようにした。これによりライブビュー中などの定常動作中におけるカメラ本体と交換レンズとの間の通信帯域の消費を回避する効果があるが,装着時に当該テーブルデータを通信するのではなく定常動作中に当該テーブルデータを通信するようにしてもよい。同様に、実施例1ではAF制御用情報を定常動作中に通信するようにしているが、これに限定されるものではない。例えば、AF制御用情報をテーブルデータとして構成し交換レンズ装着時に通信し、定常動作中ではテーブルデータからAF制御用情報としての瞳強度分布の変化情報と深度の変化情報を検索可能な検索キーを通信するようにしてもよい。
【0266】
以上のように、各実施例において、撮像装置(カメラ本体200、200b)は、フォーカスレンズと絞りとを有する撮像アクセサリ(交換レンズ100、100a、100b)を着脱可能である。撮像装置は、通信手段(通信部208)、撮像手段(撮像素子201)、露出制御手段(AE制御部210)、および、フォーカス制御手段(AF制御部211)を有する。通信手段は、撮像アクセサリと通信可能である。撮像手段は、撮像アクセサリの撮像光学系により形成された光学像を光電変換して画像データを出力する。露出制御手段は、露出を制御する。フォーカス制御手段は、デフォーカス量に基づいてフォーカスレンズの駆動を制御する。通信手段は、撮像アクセサリに対して絞り制御の要求を送信し、絞り制御の際の絞り位置と光量変化との関係を示す第1情報と、絞り位置に対応する第2情報と、絞り位置と撮像アクセサリの光の透過率とに対応する第3情報とを受信する。露出制御手段は、第1情報と第2の情報とに基づいて露出を制御する。フォーカス制御手段は、第3情報に基づいて算出されたデフォーカス量に基づいてフォーカスレンズの駆動を制御する。
【0267】
好ましくは、フォーカス制御手段は、撮像アクセサリに対するデフォーカス量に基づくフォーカス制御信号の送信を通信手段に実行させることでフォーカスレンズの駆動を制御する。また好ましくは、第1情報は、F値とT値との対応関係を示す情報を含み、通信手段は、撮像アクセサリの装着に対応して第1の情報を取得する。より好ましくは、第1の情報は、F値とT値との対応関係を示す情報を、フォーカスレンズ位置ごとに有している(例えば
図14の横軸)。また好ましくは、第1の情報は、F値とT値との対応関係を示す情報を、ズームレンズ位置ごとに有している(例えば
図15)。また好ましくは、通信手段は、第1情報として、撮像蓄積のタイミングまたは撮像蓄積の周期で現在の絞り位置に対応する情報を取得する。また好ましくは、通信手段は、現在の絞り位置に対応する第2の情報および第3情報を、所定の周期で取得する。
【0268】
好ましくは、通信手段は、撮像アクセサリのズーム位置、フォーカス位置、および絞り位置の少なくとも一つに対応する第4情報を受信する。露出制御手段は、第4情報に基づいて光学状態が変わったと判定した場合、第1情報の参照先を切り替える。また好ましくは、通信手段は、撮像アクセサリのズーム位置、フォーカス位置、および絞り位置の少なくとも一つに対応する第4情報を受信する。そして露出制御手段は、第4情報に基づいて光学状態が変わったと判定した場合、撮像アクセサリから第1情報および第3情報の少なくとも一方を再取得する。
【0269】
好ましくは、第3情報は、瞳強度分布に基づくF値に対応する情報である。また好ましくは、第3情報は、被写界深度に基づくF値に対応する情報である。また好ましくは、所定の周期は、撮像蓄積の周期に対応する。また好ましくは、所定の周期は、焦点検出の周期に対応する。また好ましくは、通信手段は、現在の絞り位置に対応する第2の情報および第3情報を、撮像蓄積に対応するタイミングまたは焦点検出のタイミングで取得する。
【0270】
好ましくは、通信手段は、撮像アクセサリとの間に装着可能な中間アクセサリ(アダプタ300)と通信可能である。より好ましくは、通信手段は、第1通信回路と、第1通信回路とは異なる第2通信回路とを有する。第1通信回路は撮像アクセサリとの通信のための回路であり、第2通信回路は中間アクセサリとの通信のための回路である。また好ましくは、撮像装置は、第1情報および第2情報が撮像アクセサリまたは中間アクセサリのいずれに記憶されているかを判定する判定手段(カメラマイコン205)を有する。通信手段は、中間アクセサリの識別情報を受信し、撮像アクセサリに対して中間アクセサリの識別情報を送信し、判定手段による判定結果に基づいて第1情報および第2情報を撮像アクセサリまたは中間アクセサリから受信する。また好ましくは、通信手段は、撮像アクセサリのズーム位置、フォーカス位置および絞り位置の少なくとも1つに対応する第4情報を受信する。露出制御手段は、第4情報に基づいて光学状態が変わったと判定した場合、第1情報の参照先を切り替える。また好ましくは、通信手段は、第1情報が変化したことを示す第4情報を受信する。露出制御手段は、第4情報に基づいて光学状態が変わったと判定した場合、第1情報を再取得する。
【0271】
各実施例において、通信手段は、絞り位置に対応する第2情報および絞り位置と撮像アクセサリの光の透過率とに対応する第3情報との関係を示す第5情報を取得する。フォーカス制御手段は、第5情報に基づいて算出されたデフォーカス量に基づいてフォーカスレンズの駆動を制御する。好ましくは、通信手段は、第5情報を、撮像アクセサリの装着に対応してもしくは周期的に取得する。
【0272】
各実施例において、撮像アクセサリ(交換レンズ100、100a、100b)は、撮像装置に対して着脱可能である。撮像アクセサリは、通信手段(通信部103)、絞り109、光学部材(光学素子107)、絞り制御手段(絞り駆動回路116)、および、記憶手段(記憶部130)を有する。通信手段は、撮像装置と通信可能である。絞り制御手段は、通信手段を介して撮像装置から受信した絞り制御の要求に基づいて、絞りを制御する。記憶手段は、光学情報(光学データ)を記憶する。記憶手段は、光学情報として、絞り制御の際の絞り位置と光量変化との関係を示す第1情報と、絞り位置に対応する第2情報と、絞り位置と前記撮像アクセサリの光の透過率とに対応する第3情報との少なくとも一つを記憶している。通信手段は、撮像装置に対して、光学情報を送信する。
【0273】
好ましくは、第3情報は、瞳強度分布に基づくF値に対応する情報である。また好ましくは、第3情報は、被写界深度に基づくF値に対応する情報である。また好ましくは、光学部材は、絞り制御による絞り位置の変化が光量変化、瞳強度分布の変化、または、被写界深度の変化の少なくとも一つと等価にならない部材である。また好ましくは、光学部材は、中心から径方向に向かって透過率が変化する光学素子である。また好ましくは、光学部材は、撮像アクセサリに対して着脱可能である。通信手段は、撮像装置に対して、光学部材の取り外しまたは装着を示す信号を送信する。また好ましくは、撮像アクセサリに対して、光学部材として複数の異なる特性を有する光学部材を付け替え可能である。記憶手段は、付け替え可能な複数の光学部材のそれぞれの光学情報を記憶している。通信手段は、撮像装置に対して、複数の光学部材のそれぞれの光学情報を送信する。
【0274】
好ましくは、通信手段は、撮像アクセサリの撮像装置への装着に対応して光学情報を送信するか、または、撮像装置からの要求に応答して所定のタイミングで光学情報を送信する。また好ましくは、記憶手段は、光学情報として、撮像アクセサリと複数の異なる種類の中間アクセサリのそれぞれとの組み合わせに関する光学情報を記憶している。より好ましくは、撮像アクセサリは、撮像アクセサリと中間アクセサリとの組み合わせに関する光学情報が記憶手段に記憶されているか否かを判定する判定手段(レンズマイコン101)を有する。通信手段は、判定手段による判定結果を撮像装置へ送信する。また通信手段は、組み合わせに関する光学情報が記憶手段に記憶されている場合、撮像装置からの要求に応答して撮像装置へ組み合わせに関する光学情報を送信する。
【0275】
各実施例において、中間アクセサリ(アダプタ300)は、撮像装置と、絞りおよび光学部材を有する撮像アクセサリとの間に装着可能である。また中間アクセサリは、撮像装置および撮像アクセサリと通信可能な通信手段(通信部303)、および、光学情報を記憶する記憶手段(記憶部304)を有する。通信手段は、中間アクセサリの種類を特定する情報を撮像装置へ送信し、撮像アクセサリの種類を特定する情報を撮像装置から受信する。記憶手段は、光学情報として、絞り制御の際の絞り位置と光量変化との関係を示す第1情報と、絞り位置に対応する第2情報と、絞り位置と撮像アクセサリの光の透過率とに対応する第3情報との少なくとも一つを記憶している。通信手段は、撮像装置に対して光学情報を送信する。
【0276】
好ましくは、第3情報は、瞳強度分布に基づくF値に対応する情報である。また好ましくは、第3情報は、被写界深度に基づくF値に対応する情報である。また好ましくは、中間アクセサリは、撮像アクセサリと中間アクセサリとの組み合わせに関する光学情報が記憶手段に記憶されているか否かを判定する判定手段(アダプタマイコン302)を有する。通信手段は、判定手段による判定結果を撮像装置へ送信する。また通信手段は、組み合わせに関する光学情報が記憶手段に記憶されている場合、撮像装置からの要求に応答して撮像装置へ組み合わせに関する光学情報を送信する。
【0277】
各実施例によれば、例えばボケ効果の付与を目的として光軸中心から径方向に向かって透過率が変化する撮像アクセサリにおいて、絞り制御による光量変化を撮像装置が管理することで適切なAE制御を実現できる。また、絞り制御時に光量変化を把握するための通信を逐一行う必要が無いため通信帯域の消費を抑えることが可能となる。またAF制御を実現するためのデフォーカス量の算出のために必要となるレンズ瞳面における瞳強度分布の変化と、合焦判定やレンズ駆動速度を決定するための被写界深度変化情報とを各々取得可能である。これにより、口径方向に透過率が異なるレンズを含む撮像アクセサリに関し、絞りによる光量の変化と、瞳強度分布の変化と、被写界深度の変化が同様に変化しない光学系であっても、適切なAE制御およびAF制御を実行可能である。
【0278】
(その他の実施例)
なお、上述の実施例において、「0x00」に対応して、レンズデータ信号DLC又はレンズデータ信号DCLの最上位のデータD7から最下位のデータD0の信号レベルをLOWに維持することを例示した。ここで、信号レベルをLOWに維持するのではなくHighに維持しても良い。
【0279】
本発明は、上述の実施例の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0280】
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0281】
200 カメラ本体(撮像装置)
201 撮像素子(撮像手段)
208 通信部(通信手段)
210 AE制御部(露出制御手段)
211 AF制御部(フォーカス制御手段)