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特許7443040駆動制御装置、駆動制御システム、レンズ装置、駆動制御方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】駆動制御装置、駆動制御システム、レンズ装置、駆動制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/08 20210101AFI20240227BHJP
   G02B 7/04 20210101ALI20240227BHJP
   H04N 23/50 20230101ALI20240227BHJP
   H04N 23/667 20230101ALI20240227BHJP
   H02N 2/14 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
G02B7/08
G02B7/04 E
H04N23/50
H04N23/667
H02N2/14
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2019224307
(22)【出願日】2019-12-12
(65)【公開番号】P2021092717
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【弁理士】
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【弁理士】
【氏名又は名称】水本 敦也
(74)【代理人】
【識別番号】100121614
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】池田 享浩
【審査官】▲うし▼田 真悟
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-128367(JP,A)
【文献】特開2014-153497(JP,A)
【文献】特開2017-034758(JP,A)
【文献】特開2017-143602(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02-7/16
G03B 5/00
H02N 2/00-2/18
H04N 5/222-5/257
H04N 23/00
H04N 23/40-23/76
H04N 23/90-23/959
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに位相差を有する第1の信号および第2の信号を印加されることで振動が励起される振動体と前記振動体に接触する接触体とを相対移動させるアクチュエータを制御する駆動制御装置であって、
前記位相差を決定する第1の決定手段と、
前記位相差の絶対値が小さくなるにしたがって、電圧振幅が小さくなるように前記アクチュエータに供給する電力の電圧振幅を決定する第2の決定手段とを有することを特徴とする駆動制御装置。
【請求項2】
前記第2の決定手段は、複数の位相差と電圧振幅との関係から選択された1つの関係を用いて前記電圧振幅を決定することを特徴とする請求項1に記載の駆動制御装置。
【請求項3】
前記第2の決定手段は、撮像装置の撮影モードに応じて前記電圧振幅を決定することを特徴とする請求項1又は2に記載の駆動制御装置。
【請求項4】
前記第2の決定手段は、前記撮影モードが静止画撮影モードである場合、前記位相差の絶対値が小さくなるにしたがって小さくなるように前記電圧振幅を決定し、前記撮影モードが動画撮影モードである場合、前記位相差の絶対値が小さくなるにしたがって小さくなるように、かつ最小値が前記静止画撮影モードである場合の最小値よりも小さくなるように前記電圧振幅を決定することを特徴とする請求項3に記載の駆動制御装置。
【請求項5】
前記第2の決定手段は、前記撮影モードが静止画撮影モードである場合、前記位相差の絶対値が小さくなるにしたがって小さくなるように前記電圧振幅を決定し、前記撮影モードが動画撮影モードである場合、前記位相差に関係なく前記電圧振幅を決定することを特徴とする請求項3に記載の駆動制御装置。
【請求項6】
前記第2の決定手段は、前記アクチュエータに対する動作命令に応じて前記電圧振幅を決定することを特徴とする請求項1又は2に記載の駆動制御装置。
【請求項7】
前記第2の決定手段は、前記アクチュエータの移動量に関する命令値が所定値より大きい場合、前記位相差の絶対値が小さくなるにしたがって小さくなるように前記電圧振幅を決定し、前記命令値が前記所定値より小さい場合、前記位相差に関係なく前記電圧振幅を決定することを特徴とする請求項6に記載の駆動制御装置。
【請求項8】
前記第2の決定手段は、前記アクチュエータの速度に関する命令値が所定値より小さい場合、前記位相差の絶対値が小さくなるにしたがって小さくなるように前記電圧振幅を決定し、前記命令値が前記所定値より大きい場合、前記位相差に関係なく前記電圧振幅を決定することを特徴とする請求項6に記載の駆動制御装置。
【請求項9】
前記第2の決定手段は、使用時の姿勢に応じて前記電圧振幅を決定する請求項1又は2に記載の駆動制御装置。
【請求項10】
前記第2の決定手段は、前記姿勢を示す値が所定値より小さい場合、前記位相差の絶対値が小さくなるにしたがって小さくなるように前記電圧振幅を決定し、前記姿勢を示す値が前記所定値より大きい場合、前記位相差の絶対値が小さくなるにしたがって小さくなるように、かつ最小値が前記所定値より小さい場合の最小値よりも大きくなるように前記電圧振幅を決定することを特徴とする請求項に記載の駆動制御装置。
【請求項11】
前記第2の決定手段は、使用時の温度環境に応じて前記電圧振幅を決定する請求項1又は2に記載の駆動制御装置。
【請求項12】
前記第2の決定手段は、前記温度環境を示す値が所定値より大きい場合、前記位相差の絶対値が小さくなるにしたがって小さくなるように前記電圧振幅を決定し、前記温度環境を示す値が前記所定値より小さい場合、前記位相差の絶対値が小さくなるにしたがって小さくなるように、かつ最小値が前記所定値より小さい場合の最小値よりも大きくなるように前記電圧振幅を決定することを特徴とする請求項1に記載の駆動制御装置。
【請求項13】
前記第2の決定手段は、使用時の湿度環境に応じて前記電圧振幅を決定する請求項1又は2に記載の駆動制御装置。
【請求項14】
前記第2の決定手段は、前記湿度環境を示す値が所定値より小さい場合、前記位相差の絶対値が小さくなるにしたがって小さくなるように前記電圧振幅を決定し、前記湿度環境を示す値が前記所定値より大きい場合、前記位相差の絶対値が小さくなるにしたがって小さくなるように、かつ最小値が前記所定値より小さい場合の最小値よりも大きくなるように前記電圧振幅を決定することを特徴とする請求項1に記載の駆動制御装置。
【請求項15】
互いに位相差を有する第1の信号および第2の信号を印加されることで振動が励起される振動体と前記振動体に接触する接触体とを相対移動させるアクチュエータと、
前記位相差を決定する第1の決定手段と、
前記位相差の絶対値が小さくなるにしたがって、電圧振幅が小さくなるように前記アクチュエータに供給する電力の電圧振幅を決定する第2の決定手段とを有することを特徴とする駆動制御システム。
【請求項16】
請求項1に記載の駆動制御システムと、
前記駆動制御システムにより駆動する光学ユニットとを有することを特徴とするレンズ装置。
【請求項17】
互いに位相差を有する第1の信号および第2の信号を印加されることで振動が励起される振動体と前記振動体に接触する接触体とを相対移動させるアクチュエータを制御する駆動制御方法であって、
前記位相差を決定するステップと、
前記位相差の絶対値が小さくなるにしたがって、電圧振幅が小さくなるように前記アクチュエータに供給する電力の電圧振幅を決定するステップとを有することを特徴とする駆動制御方法。
【請求項18】
コンピュータを、請求項1乃至1の何れか一項に記載の駆動制御装置の各手段として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動制御装置、駆動制御システム、レンズ装置、駆動制御方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
振動型アクチュエータは、位相差を有する2相の周波数信号が印加されることにより楕円運動等の振動が励起される振動体を有し、該振動体をこれに接触する接触体に対して相対移動させる。振動型アクチュエータの駆動を制御する方法として、2相の周波数信号の周波数を変化させる周波数制御と2相の周波数信号の位相差を変化させる位相差制御がある。周波数制御および位相差制御はそれぞれ、振動型アクチュエータを高速駆動および低速駆動させる際に使用されることが多い。
【0003】
特許文献1には、位相差変更時の異音を抑制するために、駆動開始時、駆動方向の反転時、および駆動停止時の位相差を変更する場合は振動波モータを通常時に駆動させる場合よりも駆動電圧を下げるレンズ鏡筒が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-153497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のレンズ鏡筒では、楕円運動の進行方向の振幅と進行方向に垂直な方向の振幅との比が位相差に応じて変化する。そのため、位相差が小さくなるにつれて、進行方向に垂直な方向の振幅が相対的に増加し、不要な振動が発生する場合がある。周波数制御により進行方向に垂直な方向の振動を抑制可能であるが、電力の消費が増大してしまう可能性がある。
【0006】
本発明は、振動型アクチュエータを低速駆動させる場合に、異音や不要な振動を抑制可能であると共に、電力の消費を低減可能な駆動制御装置、駆動制御システム、レンズ装置、駆動制御方法、およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面としての駆動制御装置は、互いに位相差を有する第1の信号および第2の信号を印加されることで振動が励起される振動体と振動体に接触する接触体とを相対移動させるアクチュエータを制御する駆動制御装置であって、位相差を決定する第1の決定手段と、位相差の絶対値が小さくなるにしたがって、電圧振幅が小さくなるようにアクチュエータに供給する電力の電圧振幅を決定する第2の決定手段とを有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の他の側面としての駆動制御システムは、互いに位相差を有する第1の信号および第2の信号を印加されることで振動が励起される振動体と振動体に接触する接触体とを相対移動させるアクチュエータと、位相差を決定する第1の決定手段と、位相差の絶対値が小さくなるにしたがって、電圧振幅が小さくなるようにアクチュエータに供給する電力の電圧振幅を決定する第2の決定手段とを有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の他の側面としての駆動制御方法は、互いに位相差を有する第1の信号および第2の信号を印加されることで振動が励起される振動体と振動体に接触する接触体とを相対移動させるアクチュエータを制御する駆動制御方法であって、位相差を決定するステップと、位相差の絶対値が小さくなるにしたがって、電圧振幅が小さくなるようにアクチュエータに供給する電力の電圧振幅を決定するステップとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、振動型アクチュエータを低速駆動させる場合に、異音や不要な振動を抑制可能であると共に、電力の消費を低減可能な駆動制御装置、駆動制御システム、レンズ装置、駆動制御方法、およびプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1の駆動制御システムのブロック図である。
図2】実施例1の振動型アクチュエータの構成図である。
図3】実施例1の振動型アクチュエータに対する駆動信号と速度の関係を示す図である。
図4】実施例1の位相差とデューティ比の関係の一例を示す図である。
図5】実施例1の位相差制御で振動型アクチュエータを駆動する方法を示すフローチャートである。
図6】実施例2の駆動制御システムのブロック図である。
図7】実施例2の撮像装置の一例であるレンズ交換式のデジタル一眼レフカメラのブロック図である。
図8】実施例2の位相差とデューティ比の関係の一例を示す図である。
図9】実施例2の位相差制御で振動型アクチュエータを駆動する方法を示すフローチャートである。
図10】実施例3の駆動制御システムのブロック図である。
図11】実施例3の速度、加速度、およびデューティ比の関係の一例を示す図である。
図12】実施例3の位相差制御で振動型アクチュエータを駆動する方法を示すフローチャートである。
図13】実施例4の駆動制御システムのブロック図である。
図14】実施例4の位相差とデューティ比の関係の一例を示す図である。
図15】実施例4の位相差制御で振動型アクチュエータを駆動する方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【実施例1】
【0013】
図1は、本実施例の駆動制御システム101のブロック図である。駆動制御システム101は、駆動制御装置102、検出部111、および振動型アクチュエータ112を有する。
【0014】
図2は、本実施例の振動型アクチュエータ112の構成図である。振動型アクチュエータ112は、接触体201、および振動体205を有する。接触体201と振動体205は、加圧接触している。振動体205は、突起物202を備える金属弾性体等203、および金属弾性体等203に接合されている電気-機械エネルギー変換素子(圧電素子)204を有する。圧電素子204に互いに位相差を有し、それぞれが周期的に変化する2相の駆動信号を印加すると、楕円運動の振動が励起される。駆動信号は矩形波の信号であり、1周期あたりに占める矩形波のパルス幅の割合をデューティ比と呼ぶ。デューティ比が大きくなると、振動型アクチュエータ112に供給する電力の電圧振幅が大きくなり、デューティ比が小さくなると、振動型アクチュエータ112に供給する電力の電圧振幅が小さくなる。
【0015】
振動型アクチュエータ112は、位相差制御により低速駆動し、周波数制御により高速駆動する。図3は、振動型アクチュエータ112に対する駆動信号と速度の関係を示す図である。横軸は周波数、縦軸は速度である。図3では、3つの位相差(90°,60°,30°)を示している。位相差制御では、周波数(起動周波数)を固定し、位相差を変えることで振動型アクチュエータ112を駆動する。位相差は符号付きの値であり、符号は振動型アクチュエータ112の進行方向を示す。周波数制御では、位相差を固定し、起動周波数から周波数を変えることで振動型アクチュエータ112を駆動する。
【0016】
本実施例では、速度v301以下の低速領域において位相差が-90°~90°で位相差制御が行われ、速度v301以上の高速領域において位相差が90°または-90°に固定された周波数制御が行われる。なお、周波数制御において、位相差は他の値に設定されてもよい。振動型アクチュエータ112に供給する電力の電圧振幅は、パルス幅の割合(デューティ比)で調整される。なお、電圧振幅はパルス幅変調方式以外の方法で調整されてもよい。電圧振幅を調整する方法として、パルス幅変調方式の他には、リニア方式がある。以下の説明ではデューティ比を調整することで電圧振幅を調整する例について述べているが、デューティ比は単に電圧振幅と読み替えてもよい。
【0017】
振動型アクチュエータ112は、図2のx方向へ移動する。
【0018】
駆動制御装置102は、制御部103、信号生成部108、および駆動回路109を有する。検出部111は、振動型アクチュエータ112の位置を検出する位置センサを有する。位置センサは、明暗パターンを有する光学スケール、および発光部から発せられて光学スケールで反射した光を受光する光学センサから構成される光学エンコーダである。
【0019】
制御部103は、CPU等から構成され、周期的に各種処理を実行し、振動型アクチュエータ112に印加される2相の駆動信号(第1の信号および第2の信号)の周波数、位相差、およびデューティ比等を制御する。また、制御部103は、目標値入力部104、制御量演算部105、位相差周波数決定部(第1の決定手段)106、デューティ比決定部(第2の決定手段)107、および位置演算部110を有する。
【0020】
目標値入力部104は、振動型アクチュエータ112の移動すべき目標位置を設定する。目標位置は、時間ごとに変化する指令値であり、振動型アクチュエータ112が最終的な停止位置に移動するまで周期的に算出される。
【0021】
位置演算部110は、検出部111から出力されたアナログ信号からAD変換器により変換されたデジタル信号により振動型アクチュエータ112の位置を示す位置情報を算出する。
【0022】
制御量演算部105は、目標値入力部104より周期的に与えられる振動型アクチュエータ112の目標位置と位置演算部110から入力される現在の振動型アクチュエータ112の位置との差分に基づいてPID制御を用いて制御量を算出する。Pは比例制御、Iは積分制御、Dは微分制御を表している。
【0023】
位相差周波数決定部106は、制御量演算部105により算出された制御量から振動型アクチュエータ112の駆動を制御するための2相の駆動信号の周波数と位相差を決定する。
【0024】
デューティ比決定部107は、位相差周波数決定部106により決定された位相差に応じたデューティ比を決定する。デューティ比を決定することで、振動型アクチュエータ112に供給する電力の電圧振幅が決定される。
【0025】
信号生成部108は、制御部103により設定された周波数、位相差、およびデューティ比に基づいて2相の駆動信号を生成すると共に、駆動回路109に出力する。
【0026】
駆動回路109は、信号生成部108から取得した2相の駆動信号が振動型アクチュエータ112を駆動するためには不十分であるため、電圧増幅および電力増幅を行い、振動型アクチュエータ112に印加する。
【0027】
以下、図4を参照して、位相差に応じてデューティ比を決定する方法について説明する。図4は、位相差とデューティ比の関係の一例を示す図である。図4(a)において、横軸は制御量演算部105により算出される制御量、縦軸は位相差である。図4(b)において、横軸は制御量演算部105により算出される制御量、縦軸はデューティ比である。
【0028】
制御量が点線401で示される値(=ゼロ)である場合、位相差はゼロである。このとき、デューティ比はd41である。制御量がゼロから増加するにしたがって、位相差は増加する。位相差の増加に伴い、デューティ比を線形の関係で増加させる。デューティ比は、制御量が点線403で示される値でd42になる。制御量が点線403で示される値より大きくなると、駆動制御装置102は振動型アクチュエータ112の駆動制御方法を位相差制御から周波数制御に移行する。周波数制御では、位相差は90度で一定となり、それに伴い、デューティ比もd42で一定となる。
【0029】
また、制御量がゼロから減少するにしたがって、位相差は減少し、負の値となる。位相差の符号は進行方向を示しており、位相差が負の値であることは進行方向が逆方向になることを示している。位相差が負の値である場合、位相差の絶対値に応じてデューティ比が決定される。すなわち、位相差の減少に伴い、デューティ比を増加させる。デューティ比は、制御量が点線402で示される値でd42になる。制御量が点線402で示される値より小さくなると、駆動制御装置102は振動型アクチュエータ112の駆動制御方法を位相差制御から周波数制御に移行する。周波数制御では、位相差は-90度で一定となり、それに伴い、デューティ比もd42で一定となる。
【0030】
以上説明したように、本実施例では、位相差の絶対値が小さくなるにつれて、デューティ比が小さくなる。すなわち、位相差の絶対値が小さくなるにつれて、振動型アクチュエータ112に供給する電力の電圧振幅が小さくなる。
【0031】
位相差の絶対値が小さくなるにつれて、振動型アクチュエータ112の楕円運動の進行方向(図2のx方向)に垂直な方向(図2のy方向)の振動成分が増加する。本実施例では、位相差の絶対値が小さくなるにしたがってデューティ比を小さく、すなわち電圧振幅を小さくすることで、楕円運動の進行方向に垂直な方向の振動成分を抑制することができる。進行方向に垂直な方向の振動成分を抑制することで、異音や不要な振動を抑制可能であると共に、電力の消費を低減することができる。
【0032】
以下、図5を参照して、位相差制御で振動型アクチュエータ112を最終的な停止位置(最終目標位置)まで移動させる場合に、位相差およびデューティ比を決定し、駆動信号を出力するまでの流れについて説明する。図5は、本実施例の位相差制御で振動型アクチュエータ112を駆動する方法を示すフローチャートである。なお、位相差制御では、前述したように周波数(起動周波数)は固定されている。
【0033】
ステップS501では、目標値入力部104は、振動型アクチュエータ112の移動すべき目標位置を設定する。
【0034】
ステップS502では、制御部103は、振動型アクチュエータ112の移動すべき目標位置と検出部111で検出された位置情報から取得される振動型アクチュエータ112の位置との差分(偏差)を算出する。
【0035】
ステップS503では、制御量演算部105は、ステップS502で算出された差分に基づいてPID制御を用いて制御量を算出する。
【0036】
ステップS504では、位相差周波数決定部106は、ステップS503で算出された制御量から位相差を決定する。
【0037】
ステップS505では、デューティ比決定部107は、図4に示される関係を用いてステップS504で決定された位相差に応じてデューティ比を決定する。なお、本実施例では図4に示される関係を使用しているが、図4に示される関係とは異なる関係を使用してもよい。
【0038】
ステップS506では、信号生成部108は、位相差、周波数、およびデューティ比に基づいて互いに位相差を有する2相の駆動信号を生成すると共に、駆動回路109に出力する。なお、制御部103は、位相差、周波数、およびデューティ比を設定値として記憶しておく。
【0039】
以上説明したように、本実施例の構成によれば、位相差に応じてデューティ比を制御することで、振動型アクチュエータ112を低速駆動させる場合に、異音や不要な振動を抑制可能であると共に、電力の消費を低減可能である。
【実施例2】
【0040】
図6は、本実施例の駆動制御システム101のブロック図である。本実施例の制御部103は、位相差デューティ比連動制御実行判断部601を有する。位相差デューティ比連動制御実行判断部601は、振動型アクチュエータ112を動作させている状況、又は振動型アクチュエータ112を動作させたい動作モード等によって、位相差に応じてデューティ比を決定するかどうかを判断する。本実施例の駆動制御システム101の他の構成は実施例1の駆動制御システム101の構成と同一であるため、詳細な説明は省略する。
【0041】
図7は、駆動制御システム101を有する撮像装置の一例であるレンズ交換式のデジタル一眼レフカメラのブロック図である。本実施例では、駆動制御システム101は、被後述するフォーカスレンズユニット(光学ユニット)753を駆動するために使用されている。デジタル一眼レフカメラは、デジタル一眼レフカメラ本体701、およびレンズ装置750を有する。デジタル一眼レフカメラ本体701は、機械的および電気的にレンズ装置750と接続されており、電源端子を介してレンズ装置750に電源の供給を行っている。
【0042】
まず、デジタル一眼レフカメラ本体701の構成について説明する。
【0043】
撮像部704は、シャッター703によって光量が調整された光学像を電気信号に変換するCCDやCMOS等で構成される撮像素子である。A/D変換器705は、撮像部704から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換する。画像処理部708は、A/D変換器705からのデータ、又はメモリ制御部709からのデータに対して画素補間、リサイズ処理、又は色変換処理を行う。また、画像処理部708は、撮像した静止画データを用いて所定の演算処理を行う。カメラシステム制御部702は、画像処理部708から取得した演算結果を用いて露光制御や焦点検出制御を行う。これにより、TTL(スルー・ザ・レンズ)方式のAF(オートフォーカス)処理、AE(自動露出)処理、およびEF(フラッシュプリ発光)処理が行われる。また、画像処理部708は、撮像した静止画データを用いて所定の演算処理を行い、得られた演算結果に基づいてTTL方式のAWB(オートホワイトバランス)処理を行う。
【0044】
A/D変換器705からの出力データは、画像処理部708およびメモリ制御部709、又はメモリ制御部709を介してメモリ710に書き込まれる。メモリ710は、A/D変換器705からの静止画データや、表示部707に表示するための表示用の静止画データを格納している。また、メモリ710は、静止画表示用のメモリ(ビデオメモリ)を兼ねている。D/A変換器706は、メモリ710に格納されている表示用の静止画データをアナログ信号に変換して表示部707に供給する。これにより、メモリ710に格納されている表示用の静止画データは、D/A変換器706を介して表示部707に表示される。
【0045】
表示部707は、LCD等の表示器であり、D/A変換器706からのアナログ信号に応じた表示を行う。A/D変換器705によってA/D変換され、メモリ710に蓄積されたデジタル信号をD/A変換器706においてアナログ変換し、表示部707に逐次転送して表示することで、スルー静止画表示(ライブビュー表示)を行うことができる。
【0046】
不揮発性メモリ712は、電気的に消去・記録可能な記録媒体としてのメモリであり、例えばEEPROM等である。不揮発性メモリ712は、カメラシステム制御部702の動作用の定数やプログラム等を記憶している。
【0047】
カメラシステム制御部702は、少なくとも1つのCPUまたは回路を有し、デジタル一眼レフカメラ全体を制御する。また、カメラシステム制御部702は、不揮発性メモリ712に記録されたプログラムを実行する。システムメモリ711は、例えばRAMである。システムメモリ711には、カメラシステム制御部702の動作用の定数、変数、および不揮発性メモリ712から読み出したプログラム等が展開される。また、カメラシステム制御部702は、画像処理部708、メモリ制御部709、およびメモリ710を制御することにより表示制御を行う。
【0048】
操作部713、シャッターボタン715、およびモード切替スイッチ716は、カメラシステム制御部702に各種の動作指示を入力するための操作手段である。モード切替スイッチ716を操作することで、カメラシステム制御部702の動作モードを静止画撮影モード、動画撮影モード、および再生モード等のいずれかに切り替えることができる。静止画記録モードに含まれるモードとして、オート撮影モード、オートシーン判別モード、マニュアルモード、撮影シーン別の撮影設定となる各種シーンモード、プログラムAEモード、およびカスタムモード等がある。
【0049】
第1シャッタースイッチ720は、シャッターボタン715の操作途中、いわゆる半押し(撮影準備指示)でONとなり第1シャッタースイッチ信号SW1を発生する。第1シャッタースイッチ信号SW1が発生すると、AF処理、AE処理、AWB処理、およびEF処理等の動作が開始される。
【0050】
第2シャッタースイッチ721は、シャッターボタン715の操作完了、いわゆる全押し(撮影指示)でONとなり、第2シャッタースイッチ信号SW2を発生する。第2シャッタースイッチ信号SW2が発生すると、カメラシステム制御部702は撮像部704からの信号読み出しから記録媒体724に静止画データを書き込むまでの一連の撮影処理の動作を開始する。
【0051】
操作部713の各操作部材は、表示部707に表示される種々の機能アイコンを選択操作することにより、場面ごとに適宜機能が割り当てられ、各種機能ボタンとして作用する。
【0052】
電源スイッチ717は、デジタル一眼レフカメラ本体701の電源のON/OFFを切り替えるための操作手段である。電源制御部718は、電池検出回路、DC-DCコンバータ、および通電するブロックを切り替えるスイッチ回路等により構成され、電池の装着の有無、電池の種類、および電池残量の検出を行う。また、電源制御部718は、検出結果、およびカメラシステム制御部702の指示に基づいてDC-DCコンバータを制御し、必要な電圧を必要な期間だけ記録媒体724を含む各部に供給する。電源部719は、アルカリ電池やリチウム電池等の一次電池、NiCd電池、NiMH電池、Li電池等の二次電池、およびACアダプター等からなる。
【0053】
記録媒体I/F723は、メモリカードやハードディスク等の記録媒体724とのインターフェースである。記録媒体724は、撮影された静止画を記録するためのメモリカード等の記録媒体であり、半導体メモリ、光ディスク、又は磁気ディスク等から構成される。
【0054】
カメラ通信部714は、レンズ通信部759を介して、レンズ装置750にフォーカスレンズや絞りの駆動等の所望の動作命令を行ったり、必要な情報の送受信を行ったりする。
【0055】
次に、レンズ装置750の構成について説明する。
【0056】
レンズ装置750は、絞り752、フォーカスレンズユニット753、ズームレンズユニット754、および前玉レンズユニット755により構成される撮影光学系を有する。
【0057】
レンズシステム制御部751は、CPU等から構成されているコンピュータであり、絞り駆動部756、フォーカス駆動部757、焦点距離検出部758、レンズ通信部759、およびメモリ部760等のレンズ装置750全体の制御を行う。また、レンズシステム制御部751は、レンズ通信部759を介して、デジタル一眼レフカメラ本体701と情報の送受信を行う。
【0058】
絞り駆動部756は、レンズシステム制御部751からの指示によって絞り752の開口径を制御し、光量調節動作を行う。
【0059】
フォーカス駆動部757は、駆動制御システム101を有し、レンズシステム制御部751からの指示によってフォーカスレンズユニット753を光軸方向(x方向)へ駆動し、焦点調整を行う。
【0060】
操作スイッチ763は、ズーミング、フォーカシング、および絞りのマニュアル操作スイッチやオートマニュアル切り替えの設定スイッチを有する。
【0061】
焦点距離検出部758は、可変抵抗等のズーム位置センサを用いてズームレンズユニット754の位置を検出することで撮影光学系の焦点距離を検出する。
【0062】
メモリ部760は、ROMやRAM等で構成され、レンズ装置750の製品型番、シリアルナンバー、焦点距離情報、およびフォーカス敏感度情報等を記憶している。
【0063】
温度検出部761は、レンズ装置750が使用されている環境を検出することができる。
【0064】
姿勢検出部762は、重力方向(y方向)に対するレンズ装置750の姿勢を検出する。姿勢検出部762として、加速度センサ等を用いることができる。姿勢検出部762で検出された姿勢に基づいて、レンズ装置750が水平状態であるか、垂直状態であるかを判断可能である。
【0065】
例えば、シャッターボタン715が半押しされ、焦点検出動作が行われた場合、カメラシステム制御部702はフォーカスレンズユニット753に対する駆動命令をレンズシステム制御部751にカメラ通信部714およびレンズ通信部759を介して送信する。フォーカスレンズユニット753に対する駆動命令とは、被写体像の信号の位相差に対応するデフォーカス量から算出されるフォーカスレンズユニット753の合焦位置までの移動量と移動時の速度である。レンズシステム制御部751は、フォーカスレンズユニット753に対する駆動命令を受信すると、フォーカス駆動部757を介してフォーカスレンズユニット753を合焦位置まで移動させる。また、レンズシステム制御部751は、フォーカス駆動部757に、撮影モードの情報を送信する。
【0066】
以下の説明では、モード切替スイッチ716を用いて静止画撮影モード、又は動画撮影モードを選択した場合のフォーカスレンズユニット753の駆動制御について説明する。モード切替スイッチ716により選択された撮影モードは、カメラ通信部714およびレンズ通信部759を介してレンズ装置750に送信される。静止画撮影モードでは、低速から高速までの広い速度領域が要求される。動画撮影モードでは、比較的低速であってもよいが、静穏性がより要求される。
【0067】
以下、撮影モードに応じた位相差に対するデューティ比の制御について説明する。図8は、本実施例の位相差とデューティ比の関係の一例を示す図である。静止画撮影モードでの位相差とデューティ比の関係は実施例1で説明した図4に示される関係と同様であるため、詳細な説明は省略する。動画撮影モードでは位相差に応じてデューティ比を制御しないため、デューティ比は位相差に関係なく、d81で一定である。
【0068】
図9は、本実施例の位相差制御で振動型アクチュエータ112を駆動する方法を示すフローチャートである。本実施例では、図5のシーケンスと異なる部分について説明する。
【0069】
レンズシステム制御部751は、フォーカス駆動部757を介してフォーカスレンズユニット753を合焦位置まで移動させると共に、フォーカス駆動部757に撮影モードに関する情報を送信する。
【0070】
ステップS901では、位相差デューティ比連動制御実行判断部601は、撮影モードに応じて、位相差に応じてデューティ比を決定するかどうかを判断する。静止画撮影モードに設定されている場合、位相差に応じてデューティ比を決定すると判断し、ステップS505に進む。動画撮影モードに設定されている場合、位相差に応じてデューティ比を決定しないと判断し、ステップS902に進む。
【0071】
ステップS902では、デューティ比決定部107は、位相差に関係なくデューティ比を決定する。
【0072】
以上説明したように、本実施例の構成によれば、実施例1の効果に加え、動作モードに応じて位相差とデューティ比の関係を選択することで振動型アクチュエータ112を適切に駆動可能である。
【0073】
なお、本実施例では、動画撮影モードに設定されている場合、位相差に関係なくデューティ比を決定しているが、位相差に応じてデューティ比を決定してもよい。ただし、この場合、デューティ比の最小値が静止画撮影モードに設定されている場合のデューティ比の最小値よりも小さくなるように設定する。
【0074】
また、本実施例では撮影モードにより位相差に応じてデューティ比を決定するかどうかを判断したが、本発明はこれに限定されない。振動型アクチュエータ112に対する動作命令を用いて判断してもよい。例えば、振動型アクチュエータ112に与える最終目標位置までの移動量に関する命令値を用いて判断してもよい。具体的には、移動量に関する命令値が所定値より小さい場合、位相差に応じてデューティ比を決定せず、移動量に関する命令値が所定値より大きい場合、位相差に応じてデューティ比を決定すればよい。また、振動型アクチュエータ112の速度に関する命令値を用いて判断してもよい。振動型アクチュエータ112の速度に関する命令値が所定値より大きい場合、位相差に応じてデューティ比を決定せず、振動型アクチュエータ112の速度に関する命令値が所定値より小さい場合、位相差に応じてデューティ比を決定すればよい。
【実施例3】
【0075】
図10は、本実施例の駆動制御システム101のブロック図である。フォーカスレンズユニット753を低速駆動させる場合に不要な振動を抑制しつつ、停止精度が求められる。しかしながら、摩擦力等により停止精度が低下してしまう場合がある。本実施例では、制御部103は、振動型アクチュエータ112を高精度に停止位置に停止させるために、振動型アクチュエータ112の動作状態を判断する減速状態判断部1001を有する。制御部103は、減速状態判断部1001の判断結果を用いて振動型アクチュエータ112を現状の速度から減速させる必要があるかどうかを判断する。本実施例の駆動制御システム101の他の構成は実施例1の駆動制御システム101の構成と同一であるため、詳細な説明は省略する。また、本実施例の駆動制御システム101が搭載されているデジタル一眼レフカメラの構成は実施例2のデジタル一眼レフカメラの構成と同一であるため、詳細な説明は省略する。
【0076】
図11は、本実施例の速度、加速度、およびデューティ比の関係の一例を示す図である。図11において、横軸は時間である。振動型アクチュエータ112は、時間t1で駆動を開始し、時間t2で速度v111に到達し、時間t3で原則を開始し、時間t4で最終目標位置に停止する。時間t1からt2までの間、速度が速度v111まで増加するように振動型アクチュエータ112の加速度はa111に設定される。また、時間t1からt2までの間、デューティ比はd41からd42に増加される。時間t2からt3までの間、振動型アクチュエータ112の加速度はゼロに設定される。これにより、振動型アクチュエータ112は等速で駆動している状態となり、位相差も一定値となる。時間t3からt4までの間、減速するように振動型アクチュエータ112の加速度は-a111に設定される。また、時間t3からt4までの間、デューティ比は更新されることなく、d42に維持される。
【0077】
図12は、本実施例の位相差制御で振動型アクチュエータ112を駆動する方法を示すフローチャートである。本実施例では、図5のシーケンスと異なる部分について説明する。
【0078】
ステップS1201では、減速状態判断部1001は、振動型アクチュエータ112の動作状態を判断する。本実施例では、振動型アクチュエータ112の加速度が負である場合、振動型アクチュエータ112の動作状態は減速している状態(減速状態)であると判断される。また、振動型アクチュエータ112の加速度が負でない場合、振動型アクチュエータ112の動作状態は減速状態でないと判断される。
【0079】
ステップS1202では、制御部103は、ステップS1201で判断された振動型アクチュエータ112の動作状態を用いて振動型アクチュエータ112を減速させる必要があるかどうかを判断する。振動型アクチュエータ112が減速状態であり、振動型アクチュエータ112を減速させる必要がある場合、ステップS505に進む。振動型アクチュエータ112が減速状態でなく、振動型アクチュエータ112を減速させる必要がない場合、ステップS1203に進む。
【0080】
ステップ1203では、デューティ比決定部107は、位相差に関係なく現在保持している値をデューティ比として決定(維持)する。
【0081】
以上説明したように、本実施例の構成によれば、実施例1の効果に加え、振動型アクチュエータ112を高精度に停止させることが可能である。
【実施例4】
【0082】
図13は、本実施例の駆動制御システム101のブロック図である。本実施例の制御部103は、位相差デューティ比連動制御関係判断部1301を有する。位相差デューティ比連動制御関係判断部1301は、デジタル一眼レフカメラの使用されている状態によって、複数の位相差とデューティ比の関係からその状態に適切な関係を選択する。本実施例では、位相差デューティ比連動制御関係判断部1301は、レンズ装置750の姿勢検出部762からの情報を用いて位相差とデューティ比との関係を選択する。本実施例の駆動制御システム101の他の構成は実施例1の駆動制御システム101の構成と同一であるため、詳細な説明は省略する。また、本実施例の駆動制御システム101が搭載されているデジタル一眼レフカメラの構成は実施例2のデジタル一眼レフカメラの構成と同一であるため、詳細な説明は省略する。
【0083】
振動型アクチュエータ112の駆動方向(図2のx方向)は、フォーカスレンズユニット753の駆動方向である光軸方向(図7のx方向)と平行であり、重力方向(図7のy方向)に対して垂直である。振動型アクチュエータ112の駆動方向が重力方向に対して垂直であると、振動型アクチュエータ112は重力の影響を受けやすく、フォーカスレンズユニット753の駆動を停止させるのが困難な場合がある。そのため、本実施例では、レンズ装置750の使用時の姿勢に応じて、具体的には図7のx方向に対する角度θと閾値θtとを比較することで、位相差とデューティ比の関係を変更する。
【0084】
図14は、本実施例の位相差とデューティ比の関係の一例を示す図である。角度θが閾値θtより小さい場合、デューティ比は第1の関係に基づいて変化する。第1の関係は実施例1で説明した図4に示される関係と同様であるため、詳細な説明は省略する。角度θが閾値θtより大きい場合、デューティ比は第2の関係に基づいて変化する。第2の関係では、制御量が点線401で示される値(=ゼロ)においてデューティ比はd141であり、第1の関係におけるデューティ比の最小値であるd41より大きい。制御量がゼロから増加するにしたがって、デューティ比を線形の関係で増加させる。デューティ比は、制御量が点線403で示される値でd42になる。制御量が点線403で示される値より大きくなると、駆動制御装置102は振動型アクチュエータ112の駆動制御方法を位相差制御から周波数制御に移行する。周波数制御では、位相差は90度で一定となり、それに伴い、デューティ比もd42で一定となる。制御量がゼロから減少するにしたがって、位相差は減少し、負の値となる。位相差の符号は進行方向を示しており、位相差が負の値であることは進行方向が逆方向になることを示している。位相差が負の値である場合、位相差の絶対値に応じてデューティ比が決定される。すなわち、位相差の減少に伴い、デューティ比を増加させる。デューティ比は、制御量が点線402で示される値でd42になる。制御量が点線402で示される値より小さくなると、駆動制御装置102は振動型アクチュエータ112の駆動制御方法を位相差制御から周波数制御に移行する。周波数制御では、位相差は-90度で一定となり、それに伴い、デューティ比もd42で一定となる。
【0085】
図15は、本実施例の位相差制御で振動型アクチュエータ112を駆動する方法を示すフローチャートである。本実施例では、図5のシーケンスと異なる部分について説明する。
【0086】
レンズシステム制御部751は、フォーカス駆動部757を介してフォーカスレンズユニット753を合焦位置まで移動させると共に、フォーカス駆動部757にレンズ装置750の姿勢情報(角度θ)を送信する。
【0087】
ステップS1501では、位相差デューティ比連動制御関係判断部1301)は、レンズシステム制御部751から取得したレンズ装置750の姿勢情報(角度θ)を用いて位相差に応じてデューティ比を制御するかどうかを判断する。角度θが閾値θtより小さい場合、ステップS1502に進み、角度θが閾値θtより大きい場合、ステップS1503に進む。なお、角度θが閾値θtと等しい場合にどちらのステップに進むかは任意に設定可能である。
【0088】
ステップS1502では、デューティ比決定部107は、図14の第1の関係を用いてステップS504で決定された位相差に応じてデューティ比を決定する。
【0089】
ステップS1503では、デューティ比決定部107は、図14の第2の関係を用いてステップS504で決定された位相差に応じてデューティ比を決定する。
【0090】
以上説明したように、本実施例の構成によれば、実施例1の効果に加え、振動型アクチュエータ112を高精度に停止させることが可能である。
【0091】
なお、本実施例では、姿勢情報(角度θ)が閾値θtよりも大きい場合も位相差に応じてデューティ比を制御しているが、デューティ比を制御しない、すなわち位相差に関係なくデューティ比を決定してもよい。
【0092】
また、本実施例では位相差デューティ比連動制御関係判断部1301は、デジタル一眼レフカメラの使用されている状態としてレンズ装置750の姿勢に応じて位相差とデューティ比の関係を選択したが、本発明はこれに限定されない。例えば、低温環境下では、被駆動部材にグリス等が使用されている場合に、粘性変化により振動型アクチュエータ112に作用する負荷が変化する可能性がある。そこで、デジタル一眼レフカメラの使用されている温度環境に応じて位相差とデューティ比の関係を選択してもよい。この場合、温度検出部761からの情報を用いて位相差とデューティ比との関係を選択すればよい。すなわち、温度検出部761からの温度環境を示す値が所定値よりも大きい場合には第1の関係を用い、温度検出部761からの温度環境を示す値が所定値よりも小さい場合には第2の関係を用いればよい。
【0093】
また、温度の他にも、湿度を用いて位相差とデューティ比との関係を決定してもよい。例えば、高湿環境下では摩擦が変化し、停止精度が低下する可能性がある。このため、湿度検出部(不図示)からの湿度環境を示す値が所定値よりも小さい場合には第1の関係を用い、湿度検出部からの温度環境を示す値が所定値よりも大きい場合には第2の関係を用いればよい。
【0094】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0095】
102 駆動制御装置
106 位相差周波数決定部(第1の決定手段)
107 デューティ比決定部(第2の決定手段)
112 振動型アクチュエータ(アクチュエータ)
201 接触体
205 振動体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15