(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】トナー及び二成分系現像剤
(51)【国際特許分類】
G03G 9/097 20060101AFI20240227BHJP
G03G 9/087 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
G03G9/097 374
G03G9/097 371
G03G9/087 325
G03G9/087 331
(21)【出願番号】P 2019225469
(22)【出願日】2019-12-13
【審査請求日】2022-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅野 伊知朗
(72)【発明者】
【氏名】橋本 武
(72)【発明者】
【氏名】釜江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】井田 隼人
【審査官】中山 千尋
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-211763(JP,A)
【文献】特開2019-148726(JP,A)
【文献】特開2019-200415(JP,A)
【文献】特開2019-053248(JP,A)
【文献】特開2018-020919(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/00-9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の樹脂及び第二の樹脂を有する結着樹脂を含有するトナー粒子並びに該トナー粒子表面の無機微粒子を有するトナーであって、
該第一の樹脂は結晶性樹脂であり、
該第二の樹脂は非晶性樹脂であり、
該第一の樹脂は、下記式(1)で表される第一のモノマーユニットを有し、
該第一の樹脂中の該第一のモノマーユニットの含有割合が、30.0質量%~99.9質量%であり、
該第一の樹脂の酸価が、0.1mgKOH/g~30mgKOH/gであり、
該第二の樹脂の酸価が、0.5mgKOH/g~40mgKOH/gであり、
該トナーの断面観察において、該第一の樹脂を含むマトリクス及び該第二の樹脂を含むドメインで構成されるドメインマトリクス構造が見られ、
該無機微粒子の表面には、アルキル基を有する化合物が存在し、
該アルキル基を有する化合物が、脂肪酸又は脂肪酸金属塩であり、
該無機微粒子の体積抵抗率が、1.0×10
5Ω・cm~1.0×10
13Ω・cmであることを特徴とするトナー。
[下記式(1)中、R
Z1は、水素原子又はメチル基を表し、Rは、炭素数18~36のアルキル基を表す。]
【請求項2】
前記結着樹脂中の、前記第一の樹脂の含有量Xの前記第二の樹脂の含有量Yに対する質量比X/Yが、0.2~2.5である請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
前記トナーの断面観察における前記ドメインの個数平均径が、0.1μm~2.0μmである請求項1又は2に記載のトナー。
【請求項4】
前記トナー粒子の前記無機微粒子による被覆率が、10面積%~80面積%である請求項1~3のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項5】
前記無機微粒子の2kHzにおける誘電率が、20pF/m~60pF/mである請求項1~4のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項6】
前記アルキル基を有する化合物が、炭素数4~24のアルキル基を有する化合物からなる群から選択される少なくとも一つの化合物である請求項1~5のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項7】
前記アルキル基を有する化合物が、脂肪
酸である請求項1~6のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項8】
前記脂肪酸が、ステアリン酸である請求項7に記載のトナー。
【請求項9】
前記アルキル基を有する化合物が、(R-COO)
pM(OH)
qで表される構造を有する請求項1~
6のいずれか一項に記載のトナー。
(式中、Rはそれぞれ独立して、炭素数4~24の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素数4~24の直鎖状若しくは分岐状のヒドロキシアルキル基であり、Mは、Al、Zn、Mg、Ca、Sr、K、又はNaであり、pは1~3の整数、qは0~2の整数を表す。)
【請求項10】
前記無機微粒子が、酸化チタン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、及び酸化亜鉛からなる群から選択される少なくとも一である請求項1~
9のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項11】
30℃80%RH環境で測定された前記トナーの電荷減衰速度係数が、3~100である請求項1~
10のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項12】
前記無機微粒子の2kHzにおける誘電率をXεとし、前記第二の樹脂の2kHzにおける誘電率をYεとしたとき、Xε/Yεが5.0~170.0である請求項1~1
1のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項13】
前記第二の樹脂の2kHzにおける誘電率が、2.0pF/m~3.0pF/mである請求項1~1
2のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項14】
前記結着樹脂が、さらに第三の樹脂を含み、
該第三の樹脂が、前記第一の樹脂及び第二の樹脂が結合した樹脂を含有する請求項1~13のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項15】
前記第二の樹脂が、ビニル系樹脂とポリエステル樹脂とが結合したハイブリッド樹脂、ポリエステル樹脂及びビニル系樹脂からなる群から選択される少なくとも一を含む請求項1~14のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項16】
前記第二の樹脂が、ポリエステル樹脂であり、
該ポリエステル樹脂が、ドデセニルコハク酸又はその無水物が縮重合した構造を有する請求項1~15のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項17】
前記ポリエステル樹脂が、前記ドデセニルコハク酸又はその無水物が縮重合した構造以
外に、カルボン酸成分が縮重合した構造を有する請求項16に記載のトナー。
【請求項18】
前記トナーのテトラヒドロフラン可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定において、重量平均分子量をMw(A)とし、数平均分子量をMn(A)としたとき、
Mw(A)が25000~60000であり、
Mw(A)/Mn(A)が5~10である請求項1~17のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項19】
前記結着樹脂中の前記第一の樹脂の含有量が、30.0質量%以上である請求項1~18のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項20】
前記第一の樹脂は、前記第一のモノマーユニットとは異なる、下記式(2)で表されるモノマーユニット及び下記式(3)で表されるモノマーユニットからなる群から選択される少なくとも一である第二のモノマーユニットを有し、
該第二のモノマーユニットのSP値(J/cm
3)
0.5をSP
21としたとき、該SP
21が、21.00以上である請求項1~19のいずれか一項に記載のトナー。
(式(2)中、Xは単結合又は炭素数1~6のアルキレン基を示す。
R
1は、ニトリル基(-C≡N)、
アミド基(-C(=O)NHR
10(R
10は水素原子、若しくは炭素数1~4のアルキル基を表す。))、
ヒドロキシ基、
-COOR
11(R
11は炭素数1~6のアルキル基若しくは炭素数1~6のヒドロキシアルキル基を表す。)、
ウレア基(-NH-C(=O)-N(R
13)
2(2つのR
13はそれぞれ独立して、水素原子若しくは炭素数1~6のアルキル基を表す。))、
-COO(CH
2)
2NHCOOR
14(R
14は炭素数1~4のアルキル基を表す。)、又は
-COO(CH
2)
2-NH-C(=O)-N(R
15)
2(2つのR
15はそれぞれ独立して、水素原子若しくは炭素数1~6のアルキル基を表す。)を表す。
R
2は、水素原子又はメチル基を表す。
式(3)中、R
3は、炭素数1~4のアルキル基を表し、R
4は、水素原子又はメチル基を表す。)
【請求項21】
前記トナー粒子の表面の少なくとも一部に前記マトリクスが露出しており、
前記無機微粒子の少なくとも一部が前記マトリクスの露出部分に接して存在している請求項1~20のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項22】
前記式(1)において、Rが、炭素数18~22のアルキル基である請求項1~21のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項23】
トナー及び磁性キャリアを含有する二成分系現像剤であって、
該トナーが請求項1~2
2のいずれか一項に記載のトナーである二成分系現像剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子写真方式、静電記録方式、静電印刷方式、及びトナージェット方式に用いられるトナー並びに該トナーを用いた二成分系現像剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式のフルカラー複写機が広く普及するに従い、高速印刷化や省エネルギー対応への要求がさらに高まっている。高速印刷に対応するため、定着工程においてはトナーをより素早く溶融させる技術が検討されている。また、生産性を向上させるために1つのジョブ中や、ジョブ間における各種制御の時間を短縮する技術が検討されている。また、省エネルギー対応策として、定着工程での消費電力を低下させるために、トナーをより低い温度で定着させる技術が検討されている。
高速印刷に対応し、かつトナーの低温定着性を向上させるために、トナーの結着樹脂のガラス転移温度や軟化点を下げ、かつシャープメルト性を有する結着樹脂を用いる方法がある。近年、さらにシャープメルト性を有する樹脂として、結晶性ポリエステルを含有させたトナーが多く提案されている。しかしながら、結晶性ポリエステルは高温高湿環境における帯電安定性、特に高温高湿環境に放置後の帯電性の維持という面で課題のある材料であった。
シャープメルト性を有する他の結晶性樹脂として、結晶性のビニル系樹脂を使用したトナーが各種提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、結晶性を有するアクリレート系樹脂を用いることで低温定着性と帯電安定性を両立させるトナーが提案されている。
また、特許文献2では、非晶性のビニル系樹脂及び結晶性のビニル系樹脂を化学的に結合させた結着樹脂を用いることで低温定着性と帯電均一性を両立させるトナーが提案されている。
また、特許文献3では、結晶性のビニル系樹脂及び炭素―炭素結合により架橋されたポリエステル樹脂を併用した結着樹脂を用いたトナーが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-097321号公報
【文献】特開2017-58604号公報
【文献】国際公開第2019/073731号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献のトナーは、低温定着性に優れ、結晶性ポリエステル樹脂を使用したトナーの弱点であった帯電安定性もある程度改善することができている。しかしながら、これら結晶性のビニル系樹脂を結着樹脂として使用したトナーは帯電の立ち上がりが遅いということがわかってきた。
これにより、印字比率の大きい画像を印刷した直後に印字比率の小さい画像を印刷した場合、現像機に存在しているトナーと新しく現像機内に供給されるトナーの帯電量とが異なることに起因して、画像濃度が徐々に変動してしまうことがわかった。この傾向はとくに低湿環境において顕著である。
本開示は、低温定着性及び耐ホットオフセット性を両立し、高温高湿環境でも帯電安定性を有し、かつ画像印字比率によらず濃度変動を起こしにくい帯電立ち上がりの速いトナー及び該トナーを用いた二成分系現像剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第一の樹脂及び第二の樹脂を有する結着樹脂を含有するトナー粒子並びに該トナー粒子表面の無機微粒子を有するトナーであって、
該第一の樹脂は結晶性樹脂であり、
該第二の樹脂は非晶性樹脂であり、
該第一の樹脂は、下記式(1)で表される第一のモノマーユニットを有し、
該第一の樹脂中の該第一のモノマーユニットの含有割合が、30.0質量%~99.9質量%であり、
該第一の樹脂の酸価が、0.1mgKOH/g~30mgKOH/gであり、
該第二の樹脂の酸価が、0.5mgKOH/g~40mgKOH/gであり、
該トナーの断面観察において、該第一の樹脂を含むマトリクス及び該第二の樹脂を含むドメインで構成されるドメインマトリクス構造が見られ、
該無機微粒子の表面には、アルキル基を有する化合物が存在し、
該アルキル基を有する化合物が、脂肪酸または脂肪酸金属塩であり、
該無機微粒子の体積抵抗率が、1.0×105Ω・cm~1.0×1013Ω・cmであることを特徴とするトナー。
[下記式(1)中、RZ1は、水素原子又はメチル基を表し、Rは、炭素数18~36のアルキル基を表す。]
【0007】
【発明の効果】
【0008】
本開示により、低温定着性及び耐ホットオフセット性を両立し、高温高湿環境でも帯電安定性を有し、かつ画像印字比率によらず濃度変動を起こしにくい帯電立ち上がりの速いトナーを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示において、数値範囲を表す「XX以上YY以下」や「XX~YY」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限及び上限を含む数値範囲を意味する。
(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルを意味する。
数値範囲が段階的に記載されている場合、各数値範囲の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。
「モノマーユニット」とは、ポリマー中のモノマー物質の反応した形態をいう。例えば、ポリマー中のビニル系モノマーが重合した主鎖中の、炭素‐炭素結合1区間を1ユニットとする。ビニル系モノマーとは下記式(Z)で表すことができる。
【化2】
[式(Z)中、R
Z1は、水素原子、又はアルキル基(好ましくは炭素数1~3のアルキル基であり、より好ましくはメチル基)を表し、R
Z2は、任意の置換基を表す。]
結晶性樹脂とは、示差走査熱量計(DSC)測定において明確な吸熱ピークを示す樹脂を指す。
【0010】
上記効果が発現するメカニズムについて、本発明者らは以下のように考えている。
トナーの帯電の立ち上がりの速度は、トナー粒子表面の無機微粒子からトナー粒子表面へ電荷が移動し、その電荷がトナー粒子全体で飽和する速度によって決まると考えられる。従来、酸化チタンを例とする抵抗率の低い無機微粒子を用いることで無機微粒子内部の電荷の移動速度を速め、トナー帯電立ち上がり速度を増加させられることは知られている。
しかし、本発明者らの検討において、結着樹脂として、結晶性のビニル系樹脂を用いた場合、それだけでは帯電立ち上がり速度が十分増加しないことがわかった。これは、無機微粒子からトナー粒子表面への電荷移動が律速になっていると考えた。
【0011】
結着樹脂の組成を変える検討を行った結果、酸価を持つモノマーを有する結晶性樹脂により、帯電の立ち上がりが若干改善されることがわかってきた。酸価を持つモノマーと、電荷の局在化による電気双極子が存在するために電荷の移動が早くなったためと本発明者らは考えた。しかしながら、組成によっては低温定着性や耐ホットオフセット性が低下することもあった。
そして、本発明者らが鋭意検討した結果、トナー中の結晶性樹脂及び非晶性樹脂の状態、結晶性樹脂の酸価、非晶性樹脂の酸価、並びにトナー表面の無機微粒子の抵抗率及び表面処理を特定の範囲に制御することにより、上記課題を解決できることを見出した。
【0012】
本開示では、トナーの断面観察において、結晶性樹脂である第一の樹脂を含むマトリクス(海部)、及び非晶性樹脂である第二の樹脂を含むドメイン(島部)で構成されるドメインマトリクス構造が見られる。このようなドメインマトリクス構造が形成されると、トナーの定着温度領域を大幅に広げることが可能となる。
トナー断面のドメインマトリクス構造において、マトリクス(海部)が結晶性樹脂で構成され、ドメイン(島部)が非晶性樹脂で構成されることで優れた低温定着性を発現する。
一方、ドメインマトリクス構造をもたず結晶性樹脂と非晶性樹脂とが相溶した均一構造の場合は、結晶性樹脂のシャープメルト性が失われるために低温定着性が低下する。また、マトリクスが非晶性樹脂、ドメインが結晶性樹脂で構成される構造を持つトナーの場合、溶融特性が非晶性樹脂により支配されるため、結晶性樹脂のシャープメルト性が十分に発揮されずに低温定着性が低下する。
また、トナー粒子の表面の少なくとも一部にマトリクスが露出しており、無機微粒子の少なくとも一部がマトリクスの露出部分に接して存在していることが好ましい。
【0013】
結晶性樹脂である第一の樹脂は、式(1)で表される第一のモノマーユニットを有する。
そして、第一の樹脂中の第一のモノマーユニットの含有割合が、30.0質量%~99.9質量%である。また、第一の樹脂の酸価が、0.1mgKOH/g~30mgKOH/gである。第一の樹脂がこのような第一のモノマーユニットを有することで、結着樹脂が結晶性を有し、トナーの低温定着性が良化する。
【0014】
第一の樹脂中の第一のモノマーユニットの含有割合が、30.0質量%~99.9質量%であることで、低温定着性及び低湿環境での帯電立ち上がりが良好となる。
第一のモノマーユニットの含有割合が30.0質量%未満であると、低温定着性が低下する。より好ましい範囲は40.0質量%~90.0質量%であり、さらに好ましくは45.0質量%~75.0質量%である。第一のモノマーユニットの含有割合が99.9質量%を超えると、第一の樹脂中におけるSP値の低い非極性部の占める部分が大きくなる
場合があるため、低湿環境での帯電の立ち上がり性が低下する可能性がある。
【0015】
また、結晶性樹脂である第一の樹脂の酸価は、0.1mgKOH/g~30mgKOH/gである。酸価が上記範囲であると、トナー粒子表面が無機微粒子から電荷を受け取りやすくなり、トナーの帯電立ち上がり性が向上する。
第一の樹脂の酸価が、0.1mgKOH/g未満であると、無機微粒子からトナー粒子表面への電荷移動がスムーズに行われないため、トナーの帯電立ち上がり性向上の効果が発現しない。第一の樹脂の酸価が、30mgKOH/gを超える場合、トナー粒子表面の疎水性が低下するため、特に高湿環境下での帯電維持性が低下する可能性がある。より好ましい範囲は5mgKOH/g~15mgKOH/gである。
【0016】
【0017】
[式(1)中、RZ1は、水素原子又はメチル基を表し、Rは、炭素数18~36のアルキル基(好ましくは炭素数18~30の直鎖のアルキル基)を表す。]
式(1)で表される第一のモノマーユニットは、炭素数18~36のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選択される少なくとも一に由来するモノマーユニットであることが好ましい。
炭素数18~36のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、炭素数18~36の直鎖のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル[(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル、(メタ)アクリル酸ヘンエイコサニル、(メタ)アクリル酸ベヘニル、(メタ)アクリル酸リグノセリル、(メタ)アクリル酸セリル、(メタ)アクリル酸オクタコシル、(メタ)アクリル酸ミリシル、(メタ)アクリル酸ドトリアコンチル等]及び炭素数18~36の分岐のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル[(メタ)アクリル酸2-デシルテトラデシル等]が挙げられる。
【0018】
これらの内、トナーの低温定着性、帯電立ち上がり性及び帯電安定性の観点から、炭素数18~36の直鎖のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選択される少なくとも一が好ましく、炭素数18~30の直鎖のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選択される少なくとも一がより好ましく、直鎖の(メタ)アクリル酸ステアリル及び(メタ)アクリル酸ベヘニルからなる群から選択される少なくとも一がさらに好ましい。
第一のモノマーユニットを形成するモノマーは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
第一の樹脂は、ビニル重合体であることが好ましい。ビニル重合体は、例えば、エチレン性不飽和結合を含むモノマーの重合体が挙げられる。エチレン性不飽和結合とは、ラジカル重合することが可能な炭素-炭素二重結合を指し、例えば、ビニル基、プロペニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基などが挙げられる。
【0019】
第一の樹脂は、第一のモノマーユニットとは異なる、下記式(2)で表されるモノマーユニット及び下記式(3)で表されるモノマーユニットからなる群から選択される少なくとも一である第二のモノマーユニットを有することが好ましい。
第一の樹脂中の第二のモノマーユニットの含有割合は、好ましくは1.0質量%~70
.0質量%であり、より好ましくは10.0質量%~60.0質量%であり、さらに好ましくは15.0質量%~30.0質量%である。
【0020】
【0021】
(式(2)中、Xは単結合又は炭素数1~6のアルキレン基を示す。
R1は、ニトリル基(-C≡N)、
アミド基(-C(=O)NHR10(R10は水素原子、若しくは炭素数1~4のアルキル基を表す。))、
ヒドロキシ基、
-COOR11(R11は炭素数1~6(好ましくは1~4)のアルキル基若しくは炭素数1~6(好ましくは1~4)のヒドロキシアルキル基を表す。)、
ウレア基(-NH-C(=O)-N(R13)2(2つのR13はそれぞれ独立して、水素原子若しくは炭素数1~6(好ましくは1~4)のアルキル基を表す。))、
-COO(CH2)2NHCOOR14(R14は炭素数1~4のアルキル基を表す。)、又は
-COO(CH2)2-NH-C(=O)-N(R15)2(2つのR15はそれぞれ独立して、水素原子若しくは炭素数1~6(好ましくは1~4)のアルキル基を表す。)
である。R2は、水素原子又はメチル基を表す。)
(式(3)中、R3は、炭素数1~4のアルキル基を表し、R4は、水素原子又はメチル基を表す。)
【0022】
また、該第二のモノマーユニットのSP値(J/cm3)0.5をSP21としたとき、SP21は21.00以上であることが帯電性の観点で好ましい。より好ましくは25.00以上である。上限は特に制限されないが、好ましくは40.00以下であり、より好ましくは30.00以下である。
第二のモノマーユニットのSP値が上記範囲であることで、無機微粒子からの電荷移動が速やかに行われ、トナーの帯電の立ち上がり速度が増加する。
【0023】
結着樹脂中の、結晶性樹脂である第一の樹脂の含有量は、30.0質量%以上であることが好ましい。
上記範囲であると、第一の樹脂を含むマトリクス及び第二の樹脂を含むドメインによるドメインマトリクス構造が形成されやすいため、低温定着性及び耐ホットオフセット性が両立できる。該含有量は、より好ましくは50.0質量%以上であり、さらに好ましくは55.0質量%以上である。
一方、上限は特に制限されないが、好ましくは97.0質量%以下であり、より好ましくは75.0質量%以下である。
【0024】
結着樹脂中の、非晶性樹脂である第二の樹脂の含有量は、3.0質量%以上であることが好ましく、25.0質量%以上であることがより好ましい。一方、上限は、70.0質
量%以下であることが好ましく、50.0質量%以下であることがより好ましく、40.0質量%以下であることがさらに好ましい。
【0025】
第二の樹脂である非晶性樹脂の酸価は、0.5mgKOH/g~40mgKOH/gであることを特徴とする。上記範囲であることで、トナー粒子表面が無機微粒子から電荷を受け取りやすくなり、トナーの帯電立ち上がり性が向上する。
第二の樹脂の酸価が、0.5mgKOH/g未満であると、無機微粒子からトナー粒子表面への電荷移動がスムーズに行われないため、トナーの帯電立ち上がり性向上の効果が発現しない。第二の樹脂の酸価が、40mgKOH/gを超える場合、トナー粒子表面の疎水性が低下するため、特に高湿環境下での帯電維持性が低下する可能性がある。より好ましくは1mgKOH/g~30mgKOH/gであり、さらに好ましくは6mgKOH/g~25mgKOH/gであり、さらにより好ましくは3mgKOH/g以上20mgKOH/g以下である。
【0026】
第二の樹脂としては、例えば以下の樹脂が挙げられる。
ポリスチレン、ポリ-p-クロルスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン-p-クロルスチレン共重合体、スチレン-ビニルトルエン共重合体、スチレン-ビニルナフタリン共重合体、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-メタクリル酸エステル共重合体、スチレン-α-クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン-ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン-ビニルメチルケトン共重合体、スチレン-アクリロニトリル-インデン共重合体などのスチレン系共重合体;ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂、天然樹脂変性フェノール樹脂、天然樹脂変性マレイン酸樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール、テルペン樹脂、クマロン-インデン樹脂、石油系樹脂等が挙げられる。
【0027】
これらの中でも、第二の樹脂が、スチレン系共重合体などのビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、及びビニル系樹脂とポリエステル樹脂が結合したハイブリッド樹脂からなる群から選択される少なくとも一を含むことが帯電立ち上がり性の観点で好ましい。結合とは、例えば、共有結合が挙げられる。第二の樹脂は、より好ましくはポリエステル樹脂を含み、さらに好ましくはポリエステル樹脂である。
【0028】
以下、第二の樹脂について、ポリエステル樹脂を例に説明する。
ポリエステル樹脂は、アルコール成分及びカルボン酸成分の縮重合体であることが好ましい。
第二の樹脂の酸価は、例えば、非晶性樹脂中のアルコールユニットと、カルボン酸ユニットの含有量と種類を変えることでコントロール可能である。
アルコールユニットとは、第二の樹脂において、モノマーであるアルコール成分が縮重合した構造(アルコール成分に由来するモノマーユニット)である。また、カルボン酸ユニットとは、第二の樹脂において、モノマーであるカルボン酸成分が縮重合した構造(カルボン酸成分に由来するモノマーユニット)である。
アルコールユニットは、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物が縮重合した構造を75mol%以上含有することが帯電立ち上がり性の観点から好ましい。より好ましくは80mol%以上であり、さらに好ましくは90mol%以上である。ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物としては下記式(A)で示される化合物が挙げられる。
【0029】
【0030】
(式(A)中、Rは、それぞれ独立してエチレン又はプロピレン基であり、x及びyはそれぞれ0以上の整数であり、かつ、x+yの平均値は0以上10以下である。)
帯電立ち上がり性の観点から、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物はビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物及び/又はエチレンオキサイド付加物であることが好ましい。より好ましくはプロピレンオキサイド付加物である。また、x+yの平均値は1以上5以下であることが好ましく、1.6以上2.8以下であることがより好ましい。
【0031】
アルコールユニットを形成するビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物以外の成分としては、以下の多価アルコール成分を使用することができる。
エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブテンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ソルビット、1,2,3,6-ヘキサンテトロール、1,4-ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,5-ペンタントリオール、グリセリン、2-メチルプロパントリオール、2-メチル-1,2,4-ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5-トリヒドロキシメチルベンゼン。
【0032】
低温定着性と耐ホットオフセットの観点から第二の樹脂のピーク分子量Mpは、3000~30000が好ましく、5000~20000がより好ましく、10000~15000がさらに好ましい。
【0033】
カルボン酸ユニットは、芳香族ジカルボン酸が縮重合した構造、飽和脂肪族ジカルボン酸が縮重合した構造及び不飽和ジカルボン酸が縮重合した構造からなる群から選択される少なくとも一を含有することが好ましい。
芳香族ジカルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸類又はその無水物が挙げられる。
【0034】
飽和脂肪族ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸のようなアルキルジカルボン酸又はその無水物が帯電立ち上がり性の観点から好ましい。
不飽和ジカルボン酸としては、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、炭素数6~18のアルケニル基で置換されたコハク酸のような不飽和ジカルボン酸又はその無水物を用いることが好ましい。特にドデセニルコハク酸を含有することが好ましい。さらに、上記飽和脂肪族ジカルボン酸及び不飽和ジカルボン酸を2種類以上併用することがさらに好ましい。
すなわち、第二の樹脂がポリエステル樹脂であり、ポリエステル樹脂がドデセニルコハク酸又はその無水物が縮重合した構造を有することが好ましい。そして、ポリエステル樹脂が、ドデセニルコハク酸又はその無水物が縮重合した構造以外に、カルボン酸成分が縮重合した構造を有することが好ましい。ポリエステル樹脂がドデセニルコハク酸又はその無水物が縮重合した構造を有することで、無機微粒子との相互作用が起こりやすく、トナ
ーの帯電立ち上がり性が良好となる。
カルボン酸ユニット中の、ドデセニルコハク酸又はその無水物が縮重合した構造の含有量は、好ましくは10mol%~30mol%であり、より好ましくは15mol%~20mol%である。
【0035】
また、カルボン酸ユニットは、芳香族トリカルボン酸、又は芳香族テトラカルボン酸が縮重合した構造を含有することが帯電立ち上がり性及び耐ホットオフセット性の点で好ましい。
芳香族トリカルボン酸の例としては、トリメリット酸及びその無水物が挙げられる。芳香族テトラカルボン酸の例としてはピロメリット酸及びその無水物が挙げられる。
【0036】
カルボン酸ユニットは、芳香族カルボン酸が縮重合した構造を50mol%~80mol%含有することが好ましい。より好ましくは60mol%~75mol%である。
脂肪族ジカルボン酸に対して、芳香族カルボン酸の含有率が増えることで、帯電維持性が向上するために好ましい。
芳香族カルボン酸としては、前述した芳香族ジカルボン酸、芳香族トリカルボン酸、芳香族テトラカルボン酸が挙げられる。
カルボン酸ユニットを形成する他のカルボン酸としては、炭素数6~18のアルキル基で置換されたコハク酸又はその無水物;1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸やその無水物等の多価カルボン酸が挙げられる。
【0037】
非晶性ポリエステル樹脂は、通常用いられる触媒、例えばスズ、チタン、アンチモン、マンガン、ニッケル、亜鉛、鉛、鉄、マグネシウム、カルシウム、ゲルマニウム等の金属;及びこれらの金属含有化合物など、いずれの触媒を用いても製造することができる。
中でもスズ化合物を用いると、帯電性の向上の点で好ましい。スズ化合物としては、ジブチルスズジクロライド、ジブチルスズオキサイド、ジフェニルスズオキサイドなどの有機スズ化合物が挙げられる。ここで、有機スズ化合物とは、Sn-C結合を有する化合物を指す。
【0038】
さらにSn-C結合を有しない無機スズ化合物も好ましく用いられる。ここで、無機スズ化合物とは、Sn-C結合を有しない化合物のことを指す。
無機スズ化合物の例としては、ジ酢酸スズ、ジヘキサン酸スズ、ジオクタン酸スズ、ジステアリン酸スズなどの非分岐型アルキルカルボン酸スズ、ジネオペンチル酸スズ、ジ(2-エチルヘキサン酸)スズ、などの分岐型アルキルカルボン酸スズ、シュウ酸スズなどのカルボン酸スズ、ジオクチロキシスズ、ジステアロキシスズなどのジアルコキシスズなどが挙げられる。
これらのスズ化合物の中でも、アルキルカルボン酸スズやジアルコキシスズが好ましく、ジオクタン酸スズ、ジ(2-エチルヘキサン酸)スズ、ジステアリン酸スズといった、分子内にカルボキシル残基を有するアルキルカルボン酸スズが特に好ましい。
【0039】
また、非晶性樹脂である第二の樹脂の2kHzにおける誘電率が、2.0pF/m~3.0pF/mであることが好ましい。上記範囲内であると、無機微粒子との電荷の授受性が向上するため、帯電の立ち上がり性が向上する。より好ましくは、2.2pF/m~2.8pF/mである。第二の樹脂の誘電率は、モノマー構成や酸価を変えることにより制御できる。
【0040】
結着樹脂は、好ましくは第三の樹脂を含む。第三の樹脂が、結晶性樹脂である第一の樹脂及び非晶性樹脂である第二の樹脂が結合した樹脂を含有することが好ましく、第一の樹脂及び第二の樹脂が結合した樹脂であることがより好ましい。このような第三の樹脂を含有することで、帯電立ち上がり性、低温定着性及び耐ホットオフセット性が良好になる。
第三の樹脂は、例えば、第一の樹脂及び第二の樹脂の少なくとも一部が結合した構造を有することが好ましい。
【0041】
第一の樹脂と第二の樹脂とを結合させる方法としては、第一の樹脂と第二の樹脂を溶解又は溶融させた混合物に対しラジカル開始剤を用いて架橋させる方法、第一の樹脂と第二の樹脂の双方と反応する官能基を有する架橋剤を用いて架橋させる方法等が挙げられる。
ラジカル開始剤を用いて架橋させる方法に用いるラジカル開始剤としては、特に制限されず、無機過酸化物、有機過酸化物、及びアゾ化合物等が挙げられる。また、これらのラジカル反応開始剤を併用してもよい。
【0042】
第一の樹脂と第二の樹脂の双方に炭素―炭素不飽和結合がある場合、それらが開裂して第一の樹脂と第二の樹脂とが架橋する。また、第一の樹脂と第二の樹脂の一方又は双方に炭素―炭素不飽和結合がない場合であっても、第一の樹脂及び/又は第二の樹脂に含まれる炭素原子に結合した水素原子を引き抜いて双方が架橋される。この場合、ラジカル開始剤としては水素引き抜き能の高い有機過酸化物を用いることがより好ましい。
第一の樹脂と第二の樹脂の双方と反応する官能基を有する架橋剤としては、特に限定はされず公知のものを用いることができ、例えば、エポキシ基を有する架橋剤、イソシアネート基を有する架橋剤、オキサゾリン基を有する架橋剤、カルボジイミド基を有する架橋剤、ヒドラジド基を有する架橋剤、アジリジン基を有する架橋剤、等が挙げられる。
【0043】
第一の樹脂と第二の樹脂の双方と反応する官能基を有する架橋剤を用いて架橋させる方法では、第一の樹脂と第二の樹脂の双方が架橋剤と反応する官能基を持つ必要がある。
上記の方法によって架橋した第一の樹脂及び第二の樹脂の少なくとも一部が結合した樹脂(すなわち第一の樹脂及び第二の樹脂が架橋した第三の樹脂、第一の樹脂並びに第二の樹脂を含有する樹脂組成物)をトナーの製造に用いることができる。
また、溶融混練法でトナーを製造する際に、上記ラジカル開始剤又は架橋剤の存在下で第一の樹脂と第二の樹脂を含有する原材料混合物を溶融混練することにより第一の樹脂と第二の樹脂とが結合した樹脂を含有するトナー粒子を製造することもできる。
結着樹脂中の第三の樹脂の含有量は、好ましくは1.0質量%~20.0質量%であり、より好ましくは5.0質量%~15.0質量%である。
【0044】
例えば、第三の樹脂は、第二の樹脂である炭素―炭素二重結合を有する非晶性ポリエステル樹脂及び第一の樹脂である結晶性樹脂を溶融混錬しながらラジカル反応開始剤を添加して架橋反応を行うことにより得られる樹脂が好ましい。
第一の樹脂及び第二の樹脂を用いて第三の樹脂を製造することで、第一の樹脂及び第二の樹脂の少なくとも一部が結合し、第三の樹脂が形成される。そうすることで、第一の樹脂、第二の樹脂及び第三の樹脂を含有する結着樹脂が得られる。
第一の樹脂及び第二の樹脂の少なくとも一部を結合させることで、第一の樹脂、第二の樹脂及び第三の樹脂を含有する結着樹脂を得てもよい。別途第三の樹脂を製造して、第一の樹脂及び第二の樹脂と混合し、結着樹脂を得てもよい。
【0045】
上記架橋反応のために用いるラジカル反応開始剤としては、特に制限されず、無機過酸化物、有機過酸化物、及びアゾ化合物等が挙げられる。また、これらのラジカル反応開始剤を併用してもよい。
無機過酸化物としては、特に限定されないが、例えば過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム及び過硫酸ナトリウム等が挙げられる。
【0046】
有機過酸化物としては、特に制限されないが、例えば、ベンゾイルパーオキシド、ジ-t-ブチルパーオキシド、t-ブチルクミルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、α、α-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5-ジメチル-2,5
-ビス(t-ブチルパーオキシ)へキサン、ジ-t-へキシルパーオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ-t-ブチルパーオキシへキシン-3、アセチルパーオキシド、イソブチリルパーオキシド、オクタニノルパーオキシド、デカノリルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、3,3,5-トリメチルヘキサノイルパーオキシド、m-トルイルパーオキシド、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、クミルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート及びt-ブチルパーオキシアセテート等が挙げられる。
アゾ化合物及びジアゾ化合物としては、特に制限されないが、例えば、2,2’-アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル及びアゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。
【0047】
これらの中でも開始剤効率が高く、シアン化合物などの有毒な副生成物を生成しないことから、有機過酸化物が好ましい。
さらに、架橋反応が効率よく進行し、使用量が少なくて済むことから、水素引抜き能の高い反応開始剤がより好ましく、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、ベンゾイルパーオキシド、ジ-t-ブチルパーオキシド、t-ブチルクミルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、α、α-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)へキサン及びジ-t-へキシルパーオキシド等の水素引抜き能の高いラジカル反応開始剤がさらに好ましい。
ラジカル反応開始剤の使用量は、特に制限されないが、架橋させる結着樹脂100質量部に対し、0.1質量部~50質量部が好ましく、0.2質量部~5質量部がより好ましい。
【0048】
また、低温定着性、ホットオフセット性及び帯電立ち上がり性の観点から、結着樹脂中の第一の樹脂の含有量Xの第二の樹脂の含有量Yに対する質量比X/Yが、0.2~2.5であることが好ましく、2.0~2.4であることがより好ましい。
【0049】
低温定着性及び耐ホットオフセット性の観点から、トナーの断面観察におけるドメインの個数平均径は、好ましくは0.1μm~2.0μmであり、より好ましくは0.5μm~1.5μmである。
ドメインの個数平均径が2.0μm以下であると、トナー粒子の定着時にマトリクスの結晶性樹脂及びドメインの非晶性樹脂が溶融しやすくなるため、定着性が向上する。また、高温領域においては、溶融したマトリクスの粘度が適度に保たれるためホットオフセットを抑制しやすくなる。
ドメインの個数平均径が0.1μm以上であると、結晶性樹脂のシャープメルト性を良好に発揮させることができるため、低温定着性が向上する。
ドメインの個数平均径は、結晶性樹脂と非晶性樹脂のモノマー組成、製造条件等によりにより制御できる。
【0050】
トナーは、体積抵抗率が1.0×105Ω・cm~1.0×1013Ω・cmの無機微粒子を含有することを特徴とする。
無機微粒子の体積抵抗率が上記の範囲であると、無機微粒子内の電荷の移動が速くなり、帯電の立ち上がりが良好となる。体積抵抗率が1.0×105Ω・cm未満であると、抵抗率が低すぎるために高温高湿環境での帯電性が低下する。一方、1.0×1013Ω・cmを超えると、抵抗が高いために帯電の立ち上がりが遅くなる。
無機微粒子の体積抵抗率は、好ましくは1.0×108Ω・cm~7.0×1012Ω
・cmである。体積抵抗率は、無機微粒子の種類や表面処理の種類、表面処理剤の濃度などにより制御することができる。
【0051】
体積抵抗率が1.0×105Ω・cm~1.0×1013Ω・cmの無機微粒子としては例えば以下のものが挙げられる。
チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウムなどのチタン酸金属塩;酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化セリウムなどの金属酸化物。
これらの中でも、酸化チタン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、及び酸化亜鉛からなる群から選択される少なくとも一が好ましい。より好ましくは酸化チタン、及びチタン酸ストロンチウムからなる群から選択される少なくとも一である。さらに好ましくは、無機微粒子が酸化チタンを含み、さらにより好ましくは無機微粒子が酸化チタンである。
これらは、製造条件により粒径や抵抗率、誘電率等の特性を制御することが比較的容易である。チタン酸ストロンチウムは、ペロブスカイト型結晶構造を有することが好ましい。チタン酸ストロンチウムが、ペロブスカイト型結晶構造を有すると、第二のモノマーユニットとの電子移動の速度を速められる。
【0052】
チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、及びチタン酸マグネシウム微粒子は、例えば、常圧加熱反応法により得ることができる。このとき、酸化チタン源としてチタン化合物の加水分解物の鉱酸解膠品を用い、また酸化金属源としては水溶性酸性金属化合物を用いる。それらの混合液に60℃以上でアルカリ水溶液を添加しながら反応させ、次いで酸処理する方法で製造することができる。
【0053】
酸化チタン微粒子の製造方法は特に制限されるものではなく、従来公知の硫酸法及び塩素法で製造されたチタニア微粒子、四塩化チタンを原料として気相中で酸素と反応させる気相酸化法で得られたチタニア微粒子が挙げられる。得られるチタニア微粒子の一次粒子の個数平均径を制御しやすいことから、硫酸法で得られたチタニア微粒子であることがより好ましい。
チタニア微粒子は、ルチル型、アナターゼ型の2種類の結晶型のどちらも好ましく用いられる。アナターゼ型酸化チタン微粒子を得たい場合は、メタチタン酸を焼成する際に、ルチル転移抑制剤として、リン酸、リン酸塩、カリウム塩等を添加することが好ましい。
また、ルチル型酸化チタン微粒子を得たい場合は、メタチタン酸を焼成する際に、ルチル転移促進剤として、リチウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩及びアルミニウム塩等の塩類や、ルチル微結晶を含んだスラリー等のシードを添加することが好ましい。
【0054】
酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化セリウムといった金属酸化物微粒子を製造する方法としては、金属蒸気を空気で酸化して酸化亜鉛を生成する乾式法、水溶液中で金属塩をアルカリと反応させて中和し、水洗、乾燥後、焼成して酸化亜鉛を生成する湿式法が挙げられる。この中でも、トナー表面へ添加できる比較的粒径の小さい微粒子が得られやすいという点で、湿式法で合成されたものが好ましい。
【0055】
さらに、無機微粒子の2kHzにおける誘電率が、20pF/m~60pF/mであることが好ましい。誘電率が上記範囲内である無機微粒子は第二のモノマーユニットとの電荷移動が速やかに起こるため好ましい。これは誘電率が原子内又は原子間の分極に由来するため、電荷の移動と密接な関係があるためと思われる。
誘電率を制御する方法としては、無機微粒子の選択のほか、無機微粒子を製造する際の粒子結晶性を変化させる条件/操作が挙げられ、例えば、乾式法であれば反応温度や水分圧、湿式法であればpHや温度を変える、結晶生成中に超音波処理やバブリング処理をさせる等の方法が挙げられる。
該誘電率は、より好ましくは20pF/m~40pF/mであり、さらに好ましくは、
25pF/m~30pF/mである。
【0056】
また、無機微粒子の表面には、アルキル基を有する化合物が存在する。このような無機微粒子は、例えば、無機微粒子を、アルキル基を有する化合物で表面処理して得ることができる。
無機微粒子がアルキル基を有する化合物を表面に有することで、第一のモノマーユニットに含まれるアルキル基と相互作用することができ、密着性が向上し、無機微粒子からトナー粒子の第二のモノマーユニットへの電荷移動が速やかに起こりやすい配置をとることができる。
【0057】
アルキル基を有する化合物の例としては脂肪酸、脂肪酸金属塩、シリコーンオイル、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、脂肪族アルコールなどが挙げられる。
中でも、脂肪酸、脂肪酸金属塩、シリコーンオイル、及びシランカップリング剤からなる群から選択される少なくとも一つの化合物が本開示の効果をより得られやすいため好ましい。
脂肪酸及び脂肪酸金属塩の例としては、ラウリン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ラウリン酸リチウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ラウリン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム等が挙げられる。
無機微粒子を脂肪酸又はその金属塩で表面処理を行う方法としては以下の方法がある。例えば、Arガス又はN2ガス雰囲気下、無機微粒子を含むスラリーを脂肪酸ナトリウム水溶液中に入れ、ペロブスカイト型結晶表面に脂肪酸を析出させることができる。また、例えば、Arガス又はN2ガス雰囲気下、無機微粒子を含むスラリーを脂肪酸ナトリウム水溶液中に入れ、撹拌しながら、所望の金属塩水溶液を滴下することで、ペロブスカイト型結晶表面に脂肪酸金属塩を析出,吸着させることができる。例えばステアリン酸ナトリウム水溶液と硫酸アルミニウムを用いればステアリン酸アルミニウムを吸着させることができる。
【0058】
シリコーンオイルの例としてはジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、α-メチルスチレン変性シリコーンオイル、オクチル変性シリコーンオイルのようなアルキル変性シリコーンオイルなどが挙げられる。
シリコーンオイル処理の方法としては、公知技術が使用できる。例えば、該無機微粒子とシリコーンオイルとを混合機を用い、混合する;該無機微粒子中にシリコーンオイルを、噴霧器を用い噴霧する;又は溶剤中にシリコーンオイルを溶解させた後、該無機微粒子を混合する方法が挙げられる。処理方法としてはこれに限定されるものではない。
【0059】
シランカップリング剤の例としては、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、セチルトリメトキシシラン、ステアリルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0060】
脂肪族アルコールの例としては、エタノール、n-プロパノール、2-プロパノール、n-ブタノール、t-ブタノール、n-オクタノール、ステアリルアルコール、1-テトラコサノールなどが挙げられる。脂肪族アルコールの処理の方法としては例えば、沸点以上の温度に加熱し気化させた状態で無機微粒子と処理することが挙げられる。
これらの化合物の中でも、炭素数4~24(好ましくは4~18)のアルキル基を有する化合物からなる群から選択される少なくとも一つの化合物であると、第一のモノマーユニットのアルキル基との相互作用がより向上するため、帯電の立ち上がりがさらに向上するため好ましい。
【0061】
アルキル基を有する化合物が、(R-COO)pM(OH)qで表される構造を有する
ことが好ましい。
(式中、Rはそれぞれ独立して、炭素数4~24(好ましくは4~18)の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素数4~24(好ましくは4~18)の直鎖状若しくは分岐状のヒドロキシアルキル基であり、Mは、Al、Zn、Mg、Ca、Sr、K、又はNa(好ましくはCa又はNa)であり、pは1~3の整数(好ましくは1又は2)、qは0~2の整数(好ましくは0)を表す。)
【0062】
第一のモノマーユニットのRで示されるアルキル基の炭素数をCxとし、アルキル基を有する化合物のアルキル基の炭素数をCyとしたとき、Cx/Cyが0.8~24.0であると、アルキル基同士の相互作用がより強くなり、電荷移動がスムーズになるため好ましい。より好ましくは1.0~7.0である。第一のモノマーユニット又はアルキル基を有する化合物を複数使用する際は、そのモル比率に応じた平均炭素数とする。
【0063】
また、非晶性樹脂である第二の樹脂に含有される多価カルボン酸が重合(好ましくは縮重合)した構造における多価カルボン酸の炭素数をCzとしたとき、(Cx+Cz)/Cyが0.8~10.0であることが好ましい。上記範囲であると、アルキル鎖同士の相互作用がより強くなり、電荷移動がスムーズになるため好ましい。より好ましくは1.0~5.0であり、さらに好ましくは1.0~3.0である。
第一のモノマーユニット又はアルキル基を有する化合物を複数使用する際は、そのモル比率に応じた平均炭素数とする。
【0064】
無機微粒子の一次粒子の個数平均径は、20nm~300nmであることが好ましい。一次粒子の個数平均径が上記範囲内であると、無機微粒子がブロック共重合体類似構造を持つ重合体Aの第一のモノマーユニットと第二のモノマーユニット双方と相互作用しやすくなるため好ましい。より好ましくは20nm~200nmである。
また、無機微粒子の含有量はトナー粒子100質量部に対して、0.1質量部以上15.0質量部以下であることが好ましい。
【0065】
トナー粒子の無機微粒子による被覆率が、10面積%~80面積%であることが本開示の効果を得られやすい点で好ましい。より好ましくは、15面積%~75面積%であり、さらに好ましくは20%面積~70面積%である。被覆率は無機微粒子の添加量、外添条件等により制御することができる。
【0066】
また、30℃80%RH環境で測定されたトナーの電荷減衰速度係数が、3~100であることが好ましく、3~50であることがより好ましい。
電荷減衰速度係数が上記範囲内であると、高温高湿環境における帯電の低下が抑えられるため好ましい。電荷減衰速度係数は、結着樹脂の種類や酸価、無機微粒子の種類や無機微粒子の表面処理剤、トナー粒子の無機微粒子による被覆率などにより制御できる。
【0067】
また、無機微粒子の2kHzにおける誘電率をXεとし、第二の樹脂の2kHzにおける誘電率をYεとしたとき、Xε/Yεが5.0~170.0であることが好ましい。
上記範囲内であると、低温低湿環境における帯電のチャージアップを抑制させることができる。より好ましくは、Xε/Yεが8.0~13.0である。
【0068】
結晶性樹脂である第一の樹脂は、上述した式(1)で表される第一のモノマーユニット、及び式(2)又は(3)で表される第二のモノマーユニットとは異なる第三のモノマーユニットを含んでいてもよい。
第三のモノマーユニットを形成しうる重合性単量体は以下のものが挙げられる。例えば、スチレン、o-メチルスチレンなどのスチレン及びその誘導体、(メタ)アクリル酸-
2-エチルヘキシルのような(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリル酸。
第一の樹脂中の第三のモノマーユニットの含有割合は、好ましくは1.0質量%~30.0質量%であり、より好ましくは5.0質量%~20.0質量%である。
【0069】
チタン酸ストロンチウム粒子は、前述したように、常圧加熱反応法により得ることができる。
(常圧加熱反応法)
酸化チタン源としてはチタン化合物の加水分解物の鉱酸解膠品を用いる。例えば、硫酸法で得られたSO3含有量が、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下のメタチタン酸を、塩酸でpHを0.8~1.5に調整して解膠したものを用いることができる。
酸化ストロンチウム源としては、硝酸塩、塩酸塩などを使用することができ、例えば、硝酸ストロンチウム、塩化ストロンチウムを使用することができる。
アルカリ水溶液としては、苛性アルカリを使用することができるが、中でも水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。
【0070】
得られるチタン酸ストロンチウム粒子の粒子径に影響を及ぼす因子としては、反応時における酸化チタン源と酸化ストロンチウム源の混合割合、反応初期の酸化チタン源濃度、アルカリ水溶液を添加するときの温度及び添加速度などが挙げられ、目的の粒子径及び粒度分布のものを得るため適宜調整することができる。なお、反応過程に於ける炭酸塩の生成を防ぐために窒素ガス雰囲気下で反応させる等、炭酸ガスの混入を防ぐことが好ましい。
得られるチタン酸ストロンチウム粒子の誘電率に影響を及ぼす因子としては、粒子結晶性を崩す条件/操作が挙げられる。低誘電率のチタン酸ストロンチウムを得るためには、反応液の濃度を大きくした状態で結晶成長を乱すエネルギーを与える操作を行うのが好ましく、具体的な方法としては例えば結晶成長工程に窒素によるマイクロバブリングを加える事が挙げられる。
【0071】
反応時における酸化チタン源と酸化ストロンチウム源の混合割合は、SrO/TiO2のモル比で、0.9~1.4が好ましく、1.05~1.20がより好ましい。SrO/TiO2モル比が0.9以上であると、未反応の酸化チタンが残存しにくくなる。反応初期の酸化チタン源の濃度としては、TiO2として好ましくは0.05~1.3mol/L、より好ましくは0.08~1.0mol/Lが適切である。
アルカリ水溶液を添加するときの温度は、好ましくは60℃~100℃程度である。また、アルカリ水溶液の添加速度は、添加速度が遅いほど大きな粒子径のチタン酸金属粒子が得られ、添加速度が速いほど小さな粒子径のチタン酸金属粒子が得られる。アルカリ水溶液の添加速度は、仕込み原料に対し、好ましくは0.001~1.2当量/h、より好ましくは0.002~1.1当量/hであり、得ようとする粒子径に応じて適宜調整することができる。
【0072】
(酸処理)
常圧加熱反応によってえたチタン酸金属粒子をさらに酸処理することが好ましい。常圧加熱反応を行って、チタン酸金属粒子を合成する際に、酸化チタン源と酸化ストロンチウム源の混合割合がSrO/TiO2のモル比で、1.0を超える場合、反応終了後に残存した未反応のチタン以外の金属源が空気中の炭酸ガスと反応して、金属炭酸塩などの不純物を生成してしまう場合がある。したがって、アルカリ水溶液を添加した後、未反応の金属源を取り除くため酸処理を行うことが好ましい。
酸処理では、塩酸を用いてpH2.5~7.0、より好ましくはpH4.5~6.0に調整することが好ましい。酸としては、塩酸の他に硝酸、酢酸等を酸処理に用いることができる。
【0073】
<着色剤>
トナーには着色剤を用いてもよい。着色剤としては、以下のものが挙げられる。
黒色着色剤としては、カーボンブラック;イエロー着色剤とマゼンタ着色剤及びシアン着色剤とを用いて黒色に調色したものが挙げられる。着色剤には、顔料を単独で使用してもかまわないが、染料と顔料とを併用してその鮮明度を向上させた方がフルカラー画像の画質の点からより好ましい。
マゼンタトナー用顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、39、40、41、48:2、48:3,48:4、49、50、51、52、53、54、55、57:1、58、60、63、64、68、81:1、83、87、88、89、90、112、114、122、123、146、147、150、163、184、202、206、207、209、238、269、282;C.I.ピグメントバイオレット19;C.I.バットレッド1、2、10、13、15、23、29、35。
マゼンタトナー用染料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ソルベントレッド1、3、8、23、24、25、27、30、49、81、82、83、84、100、109、121;C.I.ディスパースレッド9;C.I.ソルベントバイオレット8、13、14、21、27;C.I.ディスパースバイオレット1のような油溶染料、C.I.ベーシックレッド1、2、9、12、13、14、15、17、18、22、23、24、27、29、32、34、35、36、37、38、39、40;C.I.ベーシックバイオレット1、3、7、10、14、15、21、25、26、27、28のような塩基性染料。
【0074】
シアントナー用顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントブルー2、3、15:2、15:3、15:4、16、17;C.I.バットブルー6;C.I.アシッドブルー45、フタロシアニン骨格にフタルイミドメチル基を1~5個置換した銅フタロシアニン顔料。
シアントナー用染料としては、C.I.ソルベントブルー70がある。
イエロートナー用顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、15、16、17、23、62、65、73、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、185;C.I.バットイエロー1、3、20。
イエロートナー用染料としては、C.I.ソルベントイエロー162がある。
着色剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して0.1質量部以上30質量部以下であることが好ましい。
【0075】
(ワックス)
トナーにはワックスを用いてもよい。ワックスとしては、例えば以下のものが挙げられる。
マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスのような炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックスのような炭化水素系ワックスの酸化物又はそれらのブロック共重合物;カルナバワックスのような脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;脱酸カルナバワックスのような脂肪酸エステル類を一部又は全部を脱酸化したもの。
さらに、以下のものが挙げられる。パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸のような飽和直鎖脂肪酸類;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸のような不飽和脂肪酸類;ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールのような飽和アルコール類;ソ
ルビトールのような多価アルコール類;パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸のような脂肪酸類と、ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールのようなアルコール類とのエステル類;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドのような脂肪酸アミド類;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドのような飽和脂肪酸ビスアミド類;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’ジオレイルセバシン酸アミドのような不飽和脂肪酸アミド類;m-キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’ジステアリルイソフタル酸アミドのような芳香族系ビスアミド類;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムのような脂肪族金属塩(一般に金属石けんといわれているもの);脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸のようなビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス類;ベヘニン酸モノグリセリドのような脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂の水素添加によって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物。
ワックスの含有量は、結着樹脂100質量部に対して2.0質量部~30.0質量部であることが好ましい。
【0076】
(荷電制御剤)
トナーには、必要に応じて荷電制御剤を含有させることもできる。トナーに含有される荷電制御剤としては、公知のものが利用できるが、特に、無色でトナーの帯電スピードが速く且つ一定の帯電量を安定して保持できる芳香族カルボン酸の金属化合物が好ましい。
ネガ系荷電制御剤としては、サリチル酸金属化合物、ナフトエ酸金属化合物、ジカルボン酸金属化合物、スルホン酸又はカルボン酸を側鎖に持つ高分子型化合物、スルホン酸塩又はスルホン酸エステル化物を側鎖に持つ高分子型化合物、カルボン酸塩又はカルボン酸エステル化物を側鎖に持つ高分子型化合物、ホウ素化合物、尿素化合物、ケイ素化合物、カリックスアレーンが挙げられる。荷電制御剤はトナー粒子に対して内添してもよいし外添してもよい。
荷電制御剤の添加量は、結着樹脂100質量部に対し0.2質量部~10質量部が好ましい。
【0077】
(無機微粉末)
トナーには、前述した無機微粒子のほかに、必要に応じて他の無機微粉末を含有させることもできる。無機微粉末は、トナー粒子に内添してもよいし、外添剤としてトナー粒子と混合してもよい。外添剤としては、シリカのような無機微粉末が好ましい。無機微粉末は、シラン化合物、シリコーンオイル又はそれらの混合物のような疎水化剤で疎水化されていることが好ましい。
例えば、沈降法、ゾルゲル法に代表される、ケイ酸ナトリウムを中和することでシリカを得る湿式法、火炎溶融法やアーク法に代表される気相中でシリカを得る乾式法など任意の方法で製造されたシリカ微粉末が好ましく用いられる。その中でも一次粒子の個数平均径を所望の範囲に制御しやすいことから、ゾルゲル法又は火炎溶融法で製造されたシリカ微粉末がより好ましい。
【0078】
流動性向上のための外添剤としては、比表面積が50m2/g以上400m2/g以下の無機微粉末が好ましく、耐久性安定化のためには、比表面積が10m2/g以上50m2/g以下の無機微粉末であることが好ましい。流動性向上や耐久性安定化を両立させるためには、比表面積が上記範囲の無機微粒子を併用してもよい。
【0079】
<現像剤>
トナーは、一成分系現像剤としても使用できるが、ドット再現性をより向上させるため
に、磁性キャリアと混合して、二成分系現像剤として用いることが、長期にわたり安定した画像が得られるという点で好ましい。すなわち、トナー及び磁性キャリアを含有する二成分系現像剤であって、該トナーが本発明のトナーであることが好ましい。
磁性キャリアとしては、例えば、表面を酸化した鉄粉、あるいは、未酸化の鉄粉や、鉄、リチウム、カルシウム、マグネシウム、ニッケル、銅、亜鉛、コバルト、マンガン、クロム、希土類のような金属粒子、それらの合金粒子、酸化物粒子、フェライト等の磁性体や、磁性体と、この磁性体を分散した状態で保持するバインダー樹脂とを含有する磁性体分散樹脂キャリア(いわゆる樹脂キャリア)等、一般に公知のものを使用できる。
トナーを磁性キャリアと混合して二成分系現像剤として使用する場合、その際のキャリア混合比率は、二成分系現像剤中のトナー濃度として、好ましくは2質量%以上15質量%以下、より好ましくは4質量%以上13質量%以下にすると通常良好な結果が得られる。
【0080】
<トナー粒子の製造方法>
トナー粒子を製造する方法としては、特に制限されず、懸濁重合法、乳化凝集法、溶融混練法、溶解懸濁法など従来公知の製造方法を採用できる。
得られたトナー粒子はそのままトナーとして用いてもよい。得られたトナー粒子に対し、無機微粒子、及び必要に応じて他の外添剤を混合して、トナーを得てもよい。トナー粒子と無機微粒子、及びその他の外添剤との混合は、ダブルコン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウタミキサ、メカノハイブリッド(日本コークス工業株式会社製)、ノビルタ(ホソカワミクロン株式会社製)等の混合装置を用いることができる。
外添剤は、トナー粒子100質量部に対して0.1質量部以上10.0質量部以下使用されることが好ましい。
【0081】
トナーのテトラヒドロフラン可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定において、重量平均分子量をMw(A)とし、数平均分子量をMn(A)とする。
Mw(A)は、25000~60000であることが好ましく、32000~48000であることがより好ましい。
Mw(A)/Mn(A)は、5~10であることが好ましく、7~8であることがより好ましい。
Mn(A)は、3000~8500であることが好ましく、4000~6000であることがより好ましい。
Mw(A)は、結着樹脂のモノマー組成や分子量、及び製造条件により制御できる。
Mw(A)/Mn(A)は、結着樹脂のモノマー組成や分子量、及び製造条件により制御できる。
上記範囲を満たすと、低温定着性及び耐ホットオフセット性が向上する。トナー粒子のTHF可溶分のGPC測定によって得られた分子量分布曲線のピーク分子量は、7000以上11000以下が好ましく、8200以上10500以下がより好ましい。
ピーク分子量が上記範囲を満たすと、低温定着性及び耐ホットオフセット性が向上する。
なお、トナー粒子のTHF可溶分のGPC測定によって得られた分子量分布曲線のピーク分子量とは、分子量分布曲線において複数のピークを有する場合、最も大きいピークの分子量を示す。
【0082】
トナー及び原材料の各種物性の測定法について以下に説明する。
(無機微粒子の体積抵抗率の測定方法)
無機微粒子の体積抵抗率は、以下のようにして測定する。装置としてはケースレーインスツルメンツ社製6517型エレクトロメーター/高抵抗システムを用いる。直径25mmの電極を接続し、電極間に無機微粒子を厚みが約0.5mmとなるように乗せて、約2
.0Nの荷重をかけた状態で、電極間の距離を測定する。
無機微粒子に1,000Vの電圧を1分間印加した時の抵抗値を測定し、以下の式を用いて体積抵抗率を算出する。
体積抵抗率(Ω・cm)=R×L
R:抵抗値(Ω)
L:電極間距離(cm)
【0083】
(トナーからの無機微粒子の分離)
トナーから、以下の方法により、無機微粒子を分離して測定することもできる。
イオン交換水100mLにスクロース(キシダ化学製)200gを加え、湯せんをしながら溶解させショ糖濃厚液を調製する。遠心分離用チューブに該ショ糖濃厚液31gと、6mLのコンタミノンN(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)を入れ、分散液を作製する。この分散液にトナー1gを添加し、スパチュラなどでトナーのかたまりをほぐす。
遠心分離用チューブをシェイカー(いわき産業(株)製「KM Shaker」(model:V.SX))にて1分当たり350往復の条件で20分間振盪する。振盪後、溶液をスイングローター用ガラスチューブ(50mL)に入れ替えて、遠心分離機にて、3500rpm、30分の条件で遠心分離を行う。遠心分離後のガラスチューブ内においては、最上層にはトナーが存在し、下層の水溶液側には無機微粒子が存在する。下層の水溶液を採取して、遠心分離を行い、ショ糖と無機微粒子とを分離し、無機微粒子を採集する。必要に応じて、遠心分離を繰り返し行い、分離を十分に行った後、分散液を乾燥し、無機微粒子を採集する。
複数の無機微粒子が添加されている場合には、遠心分離法などを利用して、選別することができる。
【0084】
(無機微粒子及び第二の樹脂の誘電率の測定方法)
284AプレシジョンLCRメーター(ヒューレット・パッカード社製)を用いて、1kHz及び1MHzの周波数で校正後、周波数2kHzにおける複素誘電率を測定する。測定する試料に39200kPa(400kg/cm2)の荷重を5分間かけて、直径25mm,厚さ1mm以下(好ましくは0.5~0.9mm)の円盤状の測定試料に成型する。この測定試料を直径25mmの誘電率測定治具(電極)を装着したARES(レオメトリック・サイエンティフィック・エフ・イー社製)に装着し、温度25℃の雰囲気下で0.49N(50g)の荷重をかけた状態で2kHzの周波数で測定することにより得られる。
【0085】
(トナーの電荷減衰速度係数の測定方法)
トナーの電荷減衰速度係数は、静電気拡散率測定装置NS-D100(ナノシーズ社製)を用いて測定する。
まず、サンプルパンにトナーを100mg程度充填し、表面を平滑にするために擦切る。サンプルパンをX線除電機でX線を30秒間照射し、トナーの帯電を除電する。除電したサンプルパンを測定用プレートに載せる。表面電位計の0補正のため、金属板をReferenceとして同時に載せる。サンプルを載せた測定用プレートは測定前に30℃80%RHの環境に1時間以上放置する。
測定条件は以下のように設定する。
チャージ時間:0.1秒
測定時間:1800秒
測定間隔:1秒
放電極性:-
電極:あり
初期の電位を-600Vに設定し、帯電直後からの表面電位の変化を測定した。得られた結果を以下の式にフィッティングすることで、電荷減衰速度係数αを求める。
Vt = V0exp(-αt1/2)
Vt:時間tにおける表面電位(V)
V0:初期の表面電位(V)
t:帯電印加後からの時間(秒)
α:電荷減衰速度係数
【0086】
(無機微粉子の一次粒子の個数平均径の測定方法)
無機微粒子の一次粒子の個数平均径の測定は、日立超高分解能電界放出形走査型電子顕微鏡(FE-SEM)S-4800((株)日立ハイテクノロジーズ)を用いて行う。
測定は、無機微粒子を混合した後のトナーについて行う。
撮影倍率は5万倍とし、撮影された写真をさらに2倍に引き伸ばした後、得られたFE-SEM写真像から、無機微粒子の最大径(長軸径)aと最小径(短軸径)bを測定して、(a+b)/2を当該粒子の粒径とする。ランダムに選択した100個の無機微粒子について粒径を計測し算術平均を求め、無機微粉末の一次粒子の個数平均径とする。
【0087】
(第一の樹脂中の各モノマーユニットの含有割合の測定方法)
第一の樹脂中の各モノマーユニットの含有割合の測定は、1H-NMRにより以下の条件にて行う。
測定装置 :FT NMR装置 JNM-EX400(日本電子社製)
測定周波数:400MHz
パルス条件:5.0μs
周波数範囲:10500Hz
積算回数 :64回
測定温度 :30℃
試料 :測定試料50mgを内径5mmのサンプルチューブに入れ、溶媒として重クロロホルム(CDCl3)を添加し、これを40℃の恒温槽内で溶解させて調製する。
得られた1H-NMRチャートより、第一のモノマーユニットの構成要素に帰属されるピークの中から、他に由来するモノマーユニットの構成要素に帰属されるピークとは独立したピークを選択し、このピークの積分値S1を算出する。
同様に、第二のモノマーユニットの構成要素に帰属されるピークの中から、他に由来するモノマーユニットの構成要素に帰属されるピークとは独立したピークを選択し、このピークの積分値S2を算出する。
さらに、第一の樹脂が第三のモノマーユニットを有する場合は、第三のモノマーユニットの構成要素に帰属されるピークから、他に由来するモノマーユニットの構成要素に帰属されるピークとは独立したピークを選択し、このピークの積分値S3を算出する。
第一のモノマーユニットの含有割合は、上記積分値S1、S2及びS3を用いて、以下のようにして求める。なお、n1、n2、n3はそれぞれの部位について着眼したピークが帰属される構成要素における水素の数である。
第一のモノマーユニットの含有割合(モル%)=
{(S1/n1)/((S1/n1)+(S2/n2)+(S3/n3))}×100
同様に、第二のモノマーユニット、及び第三のモノマーユニットの含有割合は以下のように求める。
第二のモノマーユニットの含有割合(モル%)=
{(S2/n2)/((S1/n1)+(S2/n2)+(S3/n3))}×100
第三のモノマーユニットの含有割合(モル%)=
{(S3/n3)/((S1/n1)+(S2/n2)+(S3/n3))}×100
なお、第一の樹脂において、ビニル基以外の構成要素に水素原子が含まれない重合性単量体が使用されている場合は、13C-NMRを用いて測定原子核を13Cとし、シング
ルパルスモードにて測定を行い、1H-NMRにて同様にして算出する。
また、トナーが懸濁重合法によって製造される場合、離型剤やその他の樹脂のピークが重なり、独立したピークが観測されないことがある。それにより、第一の樹脂中の各種重合性単量体に由来するモノマーユニットの含有割合が算出できない場合が生じる。その場合、離型剤やその他の樹脂を使用しないで同様の懸濁重合を行うことで、第一の樹脂’を製造し、第一の樹脂’を第一の樹脂とみなして分析することができる。
【0088】
(SP値の算出方法)
SP21などのSP値は、Fedorsによって提案された算出方法に従い、以下のようにして求める。
それぞれの重合性単量体について、分子構造中の原子又は原子団に対して、「Polym.Eng.Sci.,14(2),147-154(1974)」に記載の表から蒸発エネルギー(Δei)(cal/mol)及びモル体積(Δvi)(cm3/mol)を求め、(4.184×ΣΔei/ΣΔvi)0.5をSP値(J/cm3)0.5とする。
なお、SP21は、該重合性単量体の二重結合が重合によって開裂した状態の分子構造の原子又は原子団に対して、上記と同様の算出方法によって算出する。
【0089】
(融点の測定方法)
樹脂などの融点は、DSC Q1000(TA Instruments社製)を使用して以下の条件にて測定を行う。
昇温速度:10℃/min
測定開始温度:20℃
測定終了温度:180℃
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
具体的には、試料約5mgを精秤し、アルミニウム製のパンの中に入れ、示差走査熱量測定を行う。リファレンスとしては銀製の空パンを用いる。
1回目の昇温過程における最大吸熱ピークのピーク温度を、融点とする。
なお、最大吸熱ピークとは、ピークが複数あった場合に、吸熱量が最大となるピークのことである。
【0090】
(GPCによる樹脂のTHF可溶分のピーク分子量、重量平均分子量測定方法)
第一の樹脂及び第二の樹脂など樹脂のTHF可溶分のピーク分子量、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、以下のようにして測定する。
まず、室温で24時間かけて、試料をテトラヒドロフラン(THF)に溶解する。そして、得られた溶液を、ポア径が0.2μmの耐溶剤性メンブランフィルター「マイショリディスク」(東ソー社製)で濾過してサンプル溶液を得る。なお、サンプル溶液は、THFに可溶な成分の濃度が約0.8質量%となるように調整する。このサンプル溶液を用いて、以下の条件で測定する。
装置:HLC8120 GPC(検出器:RI)(東ソー社製)
カラム:Shodex KF-801、802、803、804、805、806、807の7連(昭和電工社製)
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0ml/min
オーブン温度:40.0℃
試料注入量:0.10mL
試料の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(例えば、商品名「TSKスタンダード ポリスチレン F-850、F-450、F-288、F-128、F-8
0、F-40、F-20、F-10、F-4、F-2、F-1、A-5000、A-2500、A-1000、A-500」、東ソー社製)を用いて作成した分子量校正曲線を使用する。
【0091】
(トナーのTHF可溶分の分子量測定方法)
測定対象となるトナー0.5mgをTHF(テトラヒドロフラン)1gに溶解させ、超音波分散をかけた後に、濃度が0.5%となるように調整し、この溶解成分をGPCにより測定する。
GPC装置として「HLC-8120GPC、SC-8020(東ソー製)」を用い、カラムは「TSKgel、SuperHM-H(東ソー製6.0mmID×15cm)」を2本用い、溶離液としてTHFを用いる。
実験条件としては、試料濃度0.5%、流速0.6ml/min、サンプル注入量10μl、測定温度40℃、RI(Refractive Index)検出器を用いて実験
を行う。
また、検量線は東ソー製「polystylene標準試料TSK standard
」:「A-500」、「F-1」、「F-10」、「F-80」、「F-380」、「A-2500」、「F-4」、「F-40」、「F-128」、「F-700」の10サンプルから作製する。
【0092】
(樹脂の軟化点の測定方法)
樹脂の軟化点の測定は、定荷重押し出し方式の細管式レオメータ「流動特性評価装置 フローテスターCFT-500D」(島津製作所社製)を用い、装置付属のマニュアルに従って行う。本装置では、測定試料の上部からピストンによって一定荷重を加えつつ、シリンダに充填した測定試料を昇温させて溶融し、シリンダ底部のダイから溶融された測定試料を押し出し、この際のピストン降下量と温度との関係を示す流動曲線を得ることができる。
本発明においては、「流動特性評価装置 フローテスターCFT-500D」に付属のマニュアルに記載の「1/2法における溶融温度」を軟化点とする。
なお、1/2法における溶融温度とは、次のようにして算出されたものである。
【0093】
まず、流出が終了した時点におけるピストンの降下量(流出終了点、Smaxとする)と、流出が開始した時点におけるピストンの降下量(最低点、Sminとする)との差の1/2を求める(これをXとする。X=(Smax-Smin)/2)。そして、ピストンの降下量がXとSminの和となるときの流動曲線の温度が、1/2法における溶融温度である。
測定試料は、約1.0gの樹脂を、25℃の環境下で、錠剤成型圧縮機(例えば、NT-100H、エヌピーエーシステム社製)を用いて約10MPaで、約60秒間圧縮成型し、直径約8mmの円柱状としたものを用いる。
測定における具体的な操作は、装置に付属のマニュアルに従って行う。
CFT-500Dの測定条件は、以下の通りである。
試験モード:昇温法
開始温度:50℃
到達温度:200℃
測定間隔:1.0℃
昇温速度:4.0℃/min
ピストン断面積:1.000cm2
試験荷重(ピストン荷重):10.0kgf(0.9807MPa)
予熱時間:300秒
ダイの穴の直径:1.0mm
ダイの長さ:1.0mm
【0094】
(樹脂のガラス転移温度(Tg)の測定)
ガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量分析装置「Q2000」(TA Instruments社製)を用いてASTM D3418-82に準じて測定する。
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
具体的には、試料3mgを精秤し、これをアルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用いて、以下の条件で測定する。
昇温速度 :10℃/min
測定開始温度:30℃
測定終了温度:180℃
なお、測定においては、一度180℃まで昇温させて10分間保持し、続いて10℃/minの降温速度で30℃まで降温し、その後に再度昇温を行う。この2度目の昇温過程で、温度30℃~100℃の範囲において比熱変化が得られる。このときの比熱変化が出る前と出た後のベースラインの中間点の線と示差熱曲線との交点を、ガラス転移温度(Tg)とする。
【0095】
(酸価の測定方法)
酸価とは、試料1g中に含まれる酸成分を中和するために必要な水酸化カリウムのmg数である。酸価は、JIS K 0070-1992に準じ以下のように測定する。
(1)試薬の準備
フェノールフタレイン1.0gをエチルアルコール(95体積%)90mLに溶かし、イオン交換水を加えて100mLとし、フェノールフタレイン溶液を得る。
特級水酸化カリウム7gを5mLの水に溶かし、エチルアルコール(95体積%)を加えて1Lとする。炭酸ガス等に触れないように、耐アルカリ性の容器に入れて3日間放置後、ろ過して、水酸化カリウム溶液を得る。得られた水酸化カリウム溶液は、耐アルカリ性の容器に保管する。該水酸化カリウム溶液のファクターは、0.1モル/L塩酸25mLを三角フラスコに取り、該フェノールフタレイン溶液を数滴加え、該水酸化カリウム溶液で滴定し、中和に要した該水酸化カリウム溶液の量から求める。該0.1モル/L塩酸は、JIS K 8001-1998に準じて作製されたものを用いる。
(2)操作
(A)本試験
粉砕した試料2.0gを200mLの三角フラスコに精秤し、トルエン/エタノール(2:1)の混合溶液100mLを加え、5時間かけて溶解する。次いで、指示薬として該フェノールフタレイン溶液を数滴加え、該水酸化カリウム溶液を用いて滴定する。なお、滴定の終点は、指示薬の薄い紅色が約30秒間続いたときとする。
(B)空試験
試料を用いない(すなわちトルエン/エタノール(2:1)の混合溶液のみとする)以外は、上記操作と同様の滴定を行う。
(3)得られた結果を下記式に代入して、酸価を算出する。
A=[(C-B)×f×5.61]/S
ここで、A:酸価(mgKOH/g)、B:空試験の水酸化カリウム溶液の添加量(mL)、C:本試験の水酸化カリウム溶液の添加量(mL)、f:水酸化カリウム溶液のファクター、S:試料の質量(g)である。
【0096】
(無機微粒子の被覆率の測定方法)
無機微粒子の被覆率は、日立超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡(SEM;S-4800、(株)日立ハイテクノロジーズ)にて撮影されたトナー粒子の表面画像を、画像解析ソフト(Image-Pro Plus ver.5.0、(株)日本ローパー)により解析して算出する。
トナー粒子表面に存在する無機微粒子を上記SEM装置にて観察する。
観察する際はなるべくトナー粒子表面が平坦であるような箇所を選ぶことにする。
トナー粒子表面において無機微粒子のみを抽出した画像について二値化を行い、
トナー粒子表面の面積に対する無機微粒子の占める面積の割合として算出する。同様の操作を10個のトナー粒子に対して行い、それらの相加平均値を求める。
なお、トナーが複数種の外添剤を含む場合は、下記の方法により特定の無機微粒子を区別しうる。
トナーから、前述の方法により、無機微粒子を分離する。
複数の無機微粒子が添加されている場合には、遠心分離法などを利用して、選別する。
採集された無機微粒子をFT-IRやNMR測定することによって、アルキル基を有する化合物が存在する無機微粒子を選別することができる。
【0097】
(トナー粒子の重量平均粒径(D4))
トナー粒子(又はトナー)の重量平均粒径(D4)は、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いて、実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで測定し、測定データの解析を行い、算出する。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
尚、測定、解析を行う前に、以下のように前記専用ソフトの設定を行う。
前記専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更画面」において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。閾値/ノイズレベルの測定ボタンを押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、測定後のアパーチャーチューブのフラッシュにチェックを入れる。
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定画面」において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μm以上60μm以下に設定する。
【0098】
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、専用ソフトの「アパーチャーチューブのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れ、この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetora150」(日科機バイオス社製)の水槽内に所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2ml添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10m
gを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)の電解水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒径(D4)を算出する。なお、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、分析/体積統計値(算術平均)画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。
【0099】
(トナーの断面観察及びマトリクス、ドメインの分析方法)
まず、存在量の基準サンプルとなる薄片を作製する。
可視光硬化性樹脂(アロニックス LCRシリーズ D800)中に結晶性樹脂である第一の樹脂を十分に分散させた後、短波長光を照射し硬化させる。得られた硬化物を、ダイアモンドナイフを備えたウルトラミクロトームで切り出し、250nmの薄片状サンプルを作製する。同様にして非晶性樹脂である第二の樹脂についても薄片状サンプルを作製する。
また、第一の樹脂と第二の樹脂を質量基準で0/100、30/70、70/30、0/100で混合し、溶融混練した混練物を作製する。これらについても同様に可視光硬化性樹脂中に分散させ硬化させたのちに切り出すことで薄片状サンプルを作製する。
次いで、切り出したサンプルを透過型電子顕微鏡(日本電子社製電子顕微鏡JEM-2800)(TEM―EDX)を用いてこれら基準サンプルの断面を観察し、EDXを用いて元素マッピングを行う。マッピングする元素としては、炭素、酸素、窒素とする。
マッピング条件は、以下の通りとする。
加速電圧:200kV
電子線照射サイズ:1.5nm
ライブタイムリミット:600sec
デッドタイム:20~30
マッピング分解能:256×256
【0100】
各元素の(10nm四方の面積における平均)スペクトル強度をもとに(酸素元素の強度/炭素元素強度)及び(窒素元素強度/炭素元素強度)を算出し、第一の樹脂と第二の樹脂の質量比率に対して検量線を作成する。第一の樹脂のモノマーユニットに窒素原子が含まれる場合には(窒素元素強度/炭素元素強度)の検量線を用いて今後の定量を行う。
次に、トナーサンプルの分析を行う。
可視光硬化性樹脂(アロニックス LCRシリーズ D800)中にトナーを十分に分散させた後、短波長光を照射し硬化させる。得られた硬化物を、ダイアモンドナイフを備えたウルトラミクロトームで切り出し、250nmの薄片状サンプルを作製する。次いで、切り出したサンプルに対し透過型電子顕微鏡(日本電子社製電子顕微鏡JEM-2800)(TEM―EDX)を用いた観察を行う。トナー粒子の断面画像を取得し、EDXを用いて元素マッピングを行う。マッピングする元素としては、炭素、酸素、窒素とする。
なお、観察するトナー断面は以下のように選択する。まずトナー断面画像から、トナーの断面積を求め、その断面積と等しい面積を持つ円の直径(円相当径)を求める。この円相当径とトナーの重量平均粒径(D4)との差の絶対値が1.0μm以内のトナー断面画像についてのみ観察する。
観察画像により確認されるドメインについて、各元素の(10nm四方の平均)スペクトル強度をもとに(酸素元素の強度/炭素元素強度)及び/又は(窒素元素強度/炭素元素強度)を算出し、前記検量線と比較することにより第一の樹脂と第二の樹脂の比率を算出する。第二の樹脂の比率が80%以上のドメインを本開示のドメインとする。
観察画像により確認されるドメインを特定したのち、二値化処理により、トナー断面に
存在するドメインの粒径を求める。粒径はドメインの長径とする。これを1トナーあたり10点測定し、トナー10個のドメインの算術平均値をドメインの個数平均径とする。なお、二値化処理には、Image Pro PLUS(日本ローパー株式会社製)を用いる。
【0101】
(トナーからの各材料の分離方法)
トナーに含まれる各材料の溶剤への溶解度の差を利用して、トナーから各材料を分離することができる。
第一分離:23℃のメチルエチルケトン(MEK)にトナーを溶解させ、可溶分(第二の樹脂)と不溶分(第一の樹脂、離型剤、着色剤、無機微粒子など)を分離する。
第二分離:100℃のMEKに、第一分離で得られた不溶分(第一の樹脂、離型剤、着色剤、無機微粒子など)を溶解させ、可溶分(第一の樹脂、離型剤)と不溶分(着色剤、無機微粒子など)を分離する。
第三分離:23℃のクロロホルムに、第二分離で得られた可溶分(第一の樹脂、離型剤)を溶解させ、可溶分(第一の樹脂)と不溶分(離型剤)を分離する。
【0102】
(第三の樹脂を含む場合)
第一分離:23℃のメチルエチルケトン(MEK)にトナーを溶解させ、可溶分(第二の樹脂、第三の樹脂)と不溶分(第一の樹脂、離型剤、着色剤、無機微粒子など)を分離する。
第二分離:23℃のトルエンに第一分離で得られた可溶分(第二の樹脂、第三の樹脂)を溶解させ、可溶分(第三の樹脂)と不溶分(第二の樹脂)を分離する。
第三分離:100℃のMEKに、第一分離で得られた不溶分(第一の樹脂、離型剤、着色剤、無機微粒子など)を溶解させ、可溶分(第一の樹脂、離型剤)と不溶分(着色剤、無機微粒子など)を分離する。
第四分離:23℃のクロロホルムに、第三分離で得られた可溶分(第一の樹脂、離型剤)を溶解させ、可溶分(第一の樹脂)と不溶分(離型剤)を分離する。
【0103】
(トナーにおける、結着樹脂中の第一の樹脂及び第二の樹脂の含有量の測定)
上記分離で得られた各分離工程において、可溶分及び不溶分の質量を測定することで、トナーにおける、結着樹脂中の第一の樹脂及び第二の樹脂の含有量を算出する。
【実施例】
【0104】
本発明を以下に示す実施例により具体的に説明する。しかし、これらは本発明をなんら限定するものではない。以下の処方の「部」は特に断りがない場合、全て質量基準である。
【0105】
<無機微粒子1の製造例>
硫酸法で得られたメタチタン酸を脱鉄漂白処理した後、水酸化ナトリウム水溶液を加えpH9.0とし、脱硫処理を行い、その後、塩酸によりpH5.8まで中和し、ろ過水洗を行った。洗浄済みケーキに水を加えTiO2として1.5モル/Lのスラリーとした後、塩酸を加えpH1.5とし解膠処理を行った。
脱硫・解膠を行ったメタチタン酸をTiO2として採取し、3Lの反応容器に投入した。該解膠メタチタン酸スラリーに、塩化ストロンチウム水溶液を、SrO/TiO2モル比で1.15となるよう添加した後、TiO2濃度0.8モル/Lに調整した。次に、撹拌混合しながら90℃に加温した後、窒素ガスのマイクロバブリングを600ml/minで行いながら10モル/L水酸化ナトリウム水溶液444mLを45分間かけて添加し、その後、窒素ガスのマイクロバブリングを400ml/minで行いながら95℃で1時間撹拌を行った。
その後、当該反応スラリーを反応容器のジャケットに10℃の冷却水を流しながら撹拌
して15℃まで急冷し、pH2.0となるまで塩酸を加え1時間撹拌を続けた。得られた沈殿をデカンテーション洗浄した後、固形分に対して5.0質量%のステアリン酸ナトリウムを水に溶解させた水溶液として添加して2時間撹拌保持を続けた後、塩酸を加えてpH6.5に調整し、1時間撹拌保持を続け、チタン酸ストロンチウムの表面にステアリン酸を析出させた。
次いで、ろ過・洗浄を行い得られたケーキを120℃大気中で10時間したのち、凝集体がなくなるまでジェットミルによる解砕処理を行ない、無機微粒子1を得た。無機微粒子1は粉末X線回折の測定で、チタン酸ストロンチウムの回折ピークを示した。物性を表1に示す。
【0106】
<無機微粒子2の製造例>
硫酸チタニル水溶液を加水分解して得られた含水酸化チタンスラリーをアルカリ水溶液で洗浄した。次に、該含水酸化チタンのスラリーに塩酸を添加して、pHを0.65に調整してチタニアゾル分散液を得た。該チタニアゾル分散液にNaOHを添加し、分散液のpHを4.5に調整し上澄み液の電気伝導度が70μS/cmになるまで洗浄をくり返した。
該含水酸化チタンに対し、0.97倍モル量のSr(OH)2・8H2Oを加えてSUS製反応容器に入れ、窒素ガス置換した。さらにSrTiO3換算で0.1~2.0mol/リットルになるように蒸留水を加えた。
該分散液と酸素ガス及びプロパンガスを微粒子噴霧ノズルから80Lの燃焼反応槽内に噴霧して燃焼させた後、フィルターを通して捕集し、微粒子を得た。得られた微粒子に純水を加えてスラリーとし、6モル/Lの塩酸を加えてpH2.0に調整し、固形分100部に対して3.6部のステアリン酸カルシウムを加え18時間撹拌を行った。4モル/L水酸化ナトリウム水溶液で中和し、2時間撹拌した後にろ過・分離を行い、120℃の大気中で8時間乾燥して無機微粒子2を得た。
無機微粒子2は粉末X線回折の測定で、チタン酸ストロンチウムの回折ピークを示した。物性を表1に示す。
【0107】
<無機微粒子3の製造例>
無機微粒子1の製造例において、塩化ストロンチウムの代わりに塩化カルシウムに変更したこと、窒素ガスのマイクロバブリングを行わなかったこと以外は同様にして、無機微粒子3を得た。物性を表1に示す。
【0108】
<無機微粒子4の製造例>
酸化亜鉛200部を、35質量%塩酸500部と精製水700部からなる塩酸水溶液中へ添加して、酸化亜鉛を完全に溶解して、塩化亜鉛水溶液を調製した。他方、炭酸アンモニウム460部を精製水3000部に溶解して、重炭酸アンモニウム水溶液を別途調製した。上記塩化亜鉛水溶液を、重炭酸アンモニウム水溶液へ60分かけて添加し、沈殿物を生成させた。その後、沈殿物を充分洗浄した後、液相より分別し、130℃で5時間乾燥した。
次いで、乾燥粉をメノウ乳鉢で解砕した。開催した粉を、窒素ガス0.21L/分、水素ガス0.09L/分の混合気体を供給しながら200℃/時で500℃まで昇温した。そのまま2時間保持してから室温まで放冷した後、得られた酸化亜鉛微粒子に対して、5.0質量%のステアリン酸ナトリウムを水に溶解させた水溶液として添加して2時間撹拌保持を続けた後、塩酸を加えてpH6.5に調整し、1時間撹拌保持を続け、酸化亜鉛微粒子の表面にステアリン酸を析出させた。
次いで、ろ過・洗浄を行い得られたケーキを120℃大気中で10時間乾燥したのち、凝集体がなくなるまでジェットミルによる解砕処理を行い、無機微粒子4を得た。物性を表1に示す。
【0109】
<無機微粒子5の製造例>
硫酸チタニル水溶液を熱加水分解して得た含水酸化チタンスラリーをアンモニア水によりpH7に中和し、濾過、水洗して得たケーキを、ケーキの酸化チタンを塩酸で解膠し、アナターゼ型チタニアゾルを得た。このゾルの平均一次粒子径は7nmであった。
また、出発原料としてTiO2相当分を50質量%含有しているイルメナイト鉱石を使用し、この原料を150℃で2時間乾燥させた後、硫酸を添加して溶解させることによって、TiOSO4水溶液を得た。これを濃縮し、TiO2相当分100部に対し、上記アナターゼ型チタニアゾルをTiO2相当分として4.0部をシードとして添加した後、120℃で加水分解を行ない、不純物を含有しているTiO(OH)2のスラリーを得た。
このスラリーをpH5~6で繰り返し水洗浄を行い、硫酸、FeSO4、不純物を十分に除去した。そして、高純度のメタチタン酸〔TiO(OH)2〕のスラリーを得た。
該メタチタン酸を270℃で6時間加熱処理した後、十分に解砕処理を行い、BET比表面積50m2/g、個数平均粒径50nmのアナターゼ型結晶の酸化チタン微粒子を得た。
次に、上記のアナターゼ型酸化チタン微粒子に対して、5.0質量%のステアリン酸ナトリウムを水に溶解させた水溶液として添加して2時間撹拌保持を続けた後、塩酸を加えてpH6.5に調整し、1時間撹拌保持を続け、酸化チタン微粒子の表面にステアリン酸を析出させた。
次いで、ろ過・洗浄を行い得られたケーキを120℃大気中で10時間乾燥してチタン微粒子の凝集体がなくなるまでジェットミルによる解砕処理を行い、無機微粒子5を得た。物性を表1に示す。
【0110】
<無機微粒子6の製造例>
無機微粒子5の製造例において、アナターゼ型酸化チタン微粒子を得たのちに以下の操作を行った。アナターゼ型酸化チタン微粒子の分散液に対して、塩酸を加えてpH6.5に調整し、アナターゼ型酸化チタン微粒子100部に対して0.5部のオクチル変性シリコーンオイル(FZ-3196;ダウコーニング社製)を添加して1時間撹拌保持を続け
た。
次いで、ろ過・洗浄を行い得られたケーキを120℃大気中で10時間乾燥してチタン微粒子の凝集体がなくなるまでジェットミルによる解砕処理を行い、無機微粒子6を得た。物性を表1に示す。
【0111】
<無機微粒子7の製造例>
無機微粒子5の製造例において、アナターゼ型酸化チタン微粒子を得たのちに以下の操作を行った。アナターゼ型酸化チタン微粒子の分散液を50℃に調整し、塩酸を加えpH2.5に調整した後、固形分100部に対して5部のステアリルトリメトキシシランを添加して6時間撹拌保持を続けた。
次いで、水酸化ナトリウム溶液を加えpH6.5に調整し、1時間撹拌保持を続けた後、ろ過洗浄を行い得られたケーキを120℃大気中で10時間乾燥した。その後、チタン微粒子の凝集体がなくなるまでジェットミルによる解砕処理を行い、無機微粒子7を得た。物性を表1に示す。
【0112】
<無機微粒子8の製造例>
無機微粒子7の製造例において、ステアリルトリメトキシシランの代わりにイソブチルトリメトキシシランを用いたこと以外は同様にして製造を行い、無機微粒子8を得た。物性を表1に示す。
【0113】
<無機微粒子9の製造例>
無機微粒子5の製造例において、アナターゼ型酸化チタン微粒子を得たのちに以下の操作を行った。オートクレーブ中にアナターゼ型酸化チタン微粒子と、1-テトラコサノー
ル/n-ヘキサンの20/80体積%混合溶液を投入した。2.8MPaの圧力下、240℃で1時間加熱した。その後、ろ過洗浄を行い得られたケーキを120℃大気中で10時間乾燥した。その後、酸化チタン微粒子の凝集体がなくなるまでジェットミルによる解砕処理を行ない、無機微粒子9を得た。物性を表1に示す。
【0114】
<無機微粒子10の製造例>
無機微粒子9の製造例において、1-テトラコサノールの代わりにn-オクトコサノールを用いたこと以外は同様にして製造を行い、無機微粒子10を得た。物性を表1に示す。
【0115】
<無機微粒子11の製造例>
無機微粒子9の製造例において、1-テトラコサノールの代わりにn-プロパノールを用いたこと以外は同様にして製造を行い、無機微粒子11を得た。物性を表1に示す。
【0116】
<無機微粒子12の製造例>
無機微粒子4の製造例において、5.0質量%のステアリン酸ナトリウム水溶液を添加する前の酸化亜鉛微粒子を用い、以下の方法で製造を行った。
オートクレーブ中に酸化亜鉛微粒子と、n-プロパノール/n-ヘキサンの20/80体積%混合溶液を投入した。2.8MPaの圧力下、240℃で1時間加熱した。その後、ろ過洗浄を行い得られたケーキを120℃大気中で10時間乾燥した。その後、酸化亜鉛微粒子の凝集体がなくなるまでジェットミルによる解砕処理を行い、無機微粒子12を得た。
【0117】
<無機微粒子13の製造例>
無機微粒子11の製造例において、n-プロパノール/n-ヘキサンの混合溶液の比率を5/95に変更したこと以外は同様にして製造を行い、無機微粒子13を得た。物性を表1に示す。
【0118】
<無機微粒子14の製造例>
無機微粒子5の製造例において、ステアリン酸ナトリウム水溶液による処理を行わなかったこと以外は同様にして製造を行い、無機微粒子14を得た。物性を表1に示す。
【0119】
<無機微粒子15の製造例>
無機微粒子11の製造例において、アナターゼ型酸化チタン微粒子の代わりに、アンチモンドープ酸化スズ微粒子(SN-100P;石原産業製)を用いたこと以外は同様にして、無機微粒子15を得た。物性を表1に示す。
【0120】
<無機微粒子16の製造例>
無機微粒子11の製造例において、アナターゼ型酸化チタン微粒子の代わりに、以下の方法で製造したシリカ微粒子を使用したこと以外は同様にして製造を行い、無機微粒子16とした。物性を表1に示す。
燃焼炉として、内炎と外炎が形成できる二重管構造の炭化水素-酸素混合型バーナーを用いた。バーナー中心部にスラリー噴射用の二流体ノズルが接地され、原料の珪素化合物を導入した。二流体ノズルの周囲から炭化水素-酸素の可燃性ガスを噴射させ、還元雰囲気である内炎及び外炎を形成させた。
可燃性ガスと酸素の量及び流量の制御により、雰囲気と温度、火炎の長さ等を調整した。火炎中において珪素化合物からシリカ微粒子が形成され、さらに所望の粒径になるまで融着させた。その後、冷却後、バグフィルター等により捕集することによってシリカ微粒子を得た。
【0121】
【表1】
表中、例えば、「1.0E+10」の記載は、「1.0×10
10」を示す。
【0122】
<結晶性樹脂C1の製造例>
・溶媒:トルエン 100.0部・単量体組成物 100.0部(単量体組成物は以下のアクリル酸ベヘニル・メタクリロニトリル・スチレン・アクリル酸を以下に示す割合で混合したものである)
(アクリル酸ベヘニル(第一の重合性単量体) 67.0部(28.9モル%))
(メタクリロニトリル(第二の重合性単量体) 21.5部(52.7モル%))
(スチレン(第三の重合性単量体) 11.0部(17.3モル%))
(アクリル酸 0.5部(1.1モル%)
・重合開始剤t-ブチルパーオキシピバレート(日油社製:パーブチルPV) 0.5部
還流冷却管、攪拌機、温度計、窒素導入管を備えた反応容器に、窒素雰囲気下、上記材料を投入した。反応容器内を200rpmで撹拌しながら、70℃に加熱して12時間重合反応を行い、単量体組成物の重合体がトルエンに溶解した溶解液を得た。続いて、上記溶解液を25℃まで降温した後、1000.0部のメタノール中に上記溶解液を撹拌しながら投入し、メタノール不溶分を沈殿させた。得られたメタノール不溶分をろ別し、さらにメタノールで洗浄後、40℃で24時間真空乾燥して結晶性樹脂C1を得た。結晶性樹脂C1の重量平均分子量は68400、融点は62℃、酸価は10mgKOH/gであった。
上記結晶性樹脂C1をNMRで分析したところ、アクリル酸ベヘニル由来のモノマーユニットが28.9モル%、メタクリロニトリル由来のモノマーユニットが53.8モル%、スチレン由来のモノマーユニットが17.3モル%含まれていた。また、第一のモノマーユニットの含有割合は、67.0質量%であった。
第二の重合性単量体由来のモノマーユニットのSP値は、29.13(J/cm3)0.5であった。
【0123】
<結晶性樹脂C2の製造例>
オートクレーブにトルエン470部を仕込み、窒素で置換した後、撹拌下密閉状態で105℃まで昇温した。ベヘニルアクリレート(C22)500部、スチレン250部、ア
クリロニトリル250部、メタクリル酸20部、アルキルアリルスルホコハク酸ナトリウム塩5部、2-イソシアナトエチルメタクリレート19部、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート3.7部、及びトルエン240部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を105℃にコントロールしながら、2時間かけて滴下し重合を行った。
さらに同温度で4時間保ち重合を完結させたのち、ジノルマルブチルアミンを16部、ビスマス系触媒[日東化成工業(株)製、ネオスタンU-600]を5部加え、90℃で6時間反応を行った。その後100℃にて脱溶剤を行い、結晶性樹脂C2を得た。結晶性樹脂C2の重量平均分子量は100000、融点は46℃、酸価は10mgKOH/gであった。第一のモノマーユニットの含有割合は、49.0質量%であった。
アクリロニトリル由来のモノマーユニットのSP値は、22.75(J/cm3)0.5であった。
【0124】
<結晶性樹脂C3の製造例>
オートクレーブにキシレン138部を仕込み、窒素で置換した後、撹拌下密閉状態で170℃まで昇温した。ベヘニルアクリレート(C22)200部、スチレン150部、アクリロニトリル300部、酢酸ビニル600部、ジ-t-ブチルパーオキシド1.5部、及びキシレン100部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を170℃にコントロールしながら、3時間かけて滴下し重合を行った。
滴下後、滴下ラインをキシレン12部で洗浄した。さらに同温度で4時間保ち重合を完結させた。100℃で3時間0.5~2.5kPaの減圧下で脱溶剤を行い、結晶性樹脂C3を得た。
結晶性樹脂C3の重量平均分子量は45000、融点は60℃、酸価は10mgKOH/gであった。第一のモノマーユニットの含有割合は、23.5質量%であった。
酢酸ビニル由来のモノマーユニットのSP値は、18.31(J/cm3)0.5であった。
【0125】
<結晶性樹脂C4の製造例>
・ドデカンジオール:34.5部(0.29モル;多価アルコール総モル数に対して100.0mol%)
・セバシン酸:65.5部(0.28モル;多価カルボン酸総モル数に対して100.0mol%)
冷却管、攪拌機、窒素導入管、及び、熱電対のついた反応槽に、上記材料を秤量した。次にフラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、140℃の温度で撹拌しつつ、3時間反応させた。
・2-エチルヘキサン酸錫:0.5部
その後、上記材料を加え、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、温度200℃に維持したまま、4時間反応させた後、反応槽内の圧力を序々に開放して常圧へ戻し、結晶性樹脂C4を得た。結晶性樹脂C4の重量平均分子量は30000、融点は50℃、酸価は10mgKOH/gであった。第一のモノマーユニットの含有割合は、0質量%であった。
【0126】
<結晶性樹脂C5の製造例>
オートクレーブにキシレン138部を仕込み、窒素で置換した後、撹拌下密閉状態で170℃まで昇温した。ベヘニルアクリレート(C22)450部、スチレン150部、アクリロニトリル150部、ジ-t-ブチルパーオキシド1.5部、及びキシレン100部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を170℃にコントロールしながら、3時間かけて滴下し重合を行った。
滴下後、滴下ラインをキシレン12部で洗浄した。さらに同温度で4時間保ち重合を完結させた。100℃で3時間0.5~2.5kPaの減圧下で脱溶剤を行い、結晶性樹脂C5を得た。
結晶性樹脂C5の重量平均分子量は14000、融点は60℃、酸価は0mgKOH/
gであった。第一のモノマーユニットの含有割合は、60.0質量%であった。
アクリロニトリル由来のモノマーユニットのSP値は、22.75(J/cm3)0.5であった。
【0127】
<結晶性樹脂C6の製造例>
結晶性樹脂C3の製造例において、ベヘニルアクリレート(C22)を500部とした以外は、結晶性樹脂C3の製造例と同様にして結晶性樹脂C6を得た。
結晶性樹脂C6の重量平均分子量は46000、融点は55℃、酸価は8mgKOH/gであった。第一のモノマーユニットの含有割合は、32.3質量%であった。
【0128】
<結晶性樹脂C7の製造例>
結晶性樹脂C3の製造例において、ベヘニルアクリレート(C22)200部を、ステアリルアクリレート(C18)500部とした以外は、結晶性樹脂C3の製造例と同様にして結晶性樹脂C7を得た。
結晶性樹脂C7の重量平均分子量は38000、融点は50℃、酸価は3mgKOH/gであった。第一のモノマーユニットの含有割合は、32.3質量%であった。
【0129】
<結晶性樹脂C8の製造例>
結晶性樹脂C3の製造例において、ベヘニルアクリレート(C22)を700部とした以外は、結晶性樹脂C3の製造例と同様にして結晶性樹脂C8を得た。
結晶性樹脂C8の重量平均分子量は28000、融点は65℃、酸価は30mgKOH/gであった。第一のモノマーユニットの含有割合は、40.0質量%であった。
【0130】
<非晶性樹脂A1の製造例>
・ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン:73.4部(0.186モル;多価アルコール総モル数に対して100.0mol%)・テレフタル酸:11.6部(0.070モル;多価カルボン酸総モル数に対して45.0mol%)
・アジピン酸:6.8部(0.047モル;多価カルボン酸総モル数に対して30.0mol%)
・ジ(2-エチルヘキシル酸)スズ:0.5部
冷却管、攪拌機、窒素導入管、及び、熱電対のついた反応槽に、上記材料を秤量した。次にフラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、200℃の温度で撹拌しつつ、2時間反応させた。
さらに、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、1時間維持した後、180℃まで冷却し、大気圧に戻した(第1反応工程)。
・無水トリメリット酸:8.2部(0.039モル;多価カルボン酸総モル数に対して25.0mol%)
・tert-ブチルカテコール(重合禁止剤):0.1部
その後、上記材料を加え、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、温度160℃に維持したまま15時間反応させ、温度を下げることで反応を止め、(第2反応工程)、非晶性樹脂A1を得た。得られた非晶性樹脂A1は、ピーク分子量Mpは11000、ガラス転移温度Tgは58℃、酸価は20mgKOH/gであった。
【0131】
<非晶性樹脂A2及びA4~A9の製造例>
非晶性樹脂A1の製造例において、使用するアルコール成分又はカルボン酸成分とモル比率を表1のように変更したほかは同様にして反応を行い、非晶性樹脂A2及びA4~A9を得た。その際、アルコール成分、カルボン酸成分の総モル数が非晶性樹脂A1の製造例と同じになるように原材料の質量部を調整した。得られた非晶性樹脂の物性を表2に示す。
【0132】
<非晶性樹脂A3の製造例>
・ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン:75.4部(0.192モル;アルコール成分総モル数に対して100.0mol%)
・テレフタル酸:17.8部(0.111モル;カルボン酸成分総モル数に対して70.0mol%)
・コハク酸:3.4部(0.024モル;カルボン酸成分総モル数に対して15.0mol%)
・シュウ酸:3.4部(0.024モル;カルボン酸成分総モル数に対して15.0mol%)
・ジ(2-エチルヘキシル酸)スズ:モノマー成分総量100部に対し1.0部
冷却管、攪拌機、窒素導入管、及び、熱電対のついた反応槽に、上記材料を秤量した。次にフラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、200℃の温度で撹拌しつつ、5時間反応させ、非晶性樹脂A3を得た。
得られた非晶性樹脂A3のGPCによるピーク分子量は4700であった。ガラス転移温度は56℃であり、酸価は7mgKOH/gであった。
【0133】
<非晶性樹脂A10及びA11の製造例>
非晶性樹脂A3の製造例において、使用するアルコール成分又はカルボン酸成分とモル比率を表1のように変更したほかは同様にして反応を行い、非晶性樹脂A10及びA11を得た。その際、アルコール成分、カルボン酸成分の総モル数が非晶性樹脂A3の製造例と同じになるように原材料の質量部を調整した。物性を表2に示す。
【0134】
<非晶性樹脂A12の製造例>
ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物50部、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物50部、フマル酸10部、テレフタル酸65部、及びアクリル酸10部、並びに、ジオクタン酸スズ(II)15部を、温度計、撹拌棒、コンデンサー及び窒素導入管を備えた4つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、230℃で4.5時間重合した。
その後、一旦160℃まで冷却したところで、トリメリット酸25部を添加した。
次いで、スチレン450部、アクリル酸2-エチルヘキシル200部、及び重合開始剤であるジクミルパーオキサイド30部の混合物を、160℃で、2時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに200℃まで昇温し、3時間反応を行い、軟化点が115℃の非晶性樹脂A12を得た。
得られた非晶性樹脂A12のGPCによるピーク分子量は9000であった。ガラス転移温度は60℃であり、酸価は5mgKOH/gであった。
【0135】
<非晶性樹脂A13の製造例>
・低分子量ポリプロピレン(三洋化成工業(株)製ビスコール660P):
10.0部(0.02モル;構成モノマーの総モル数に対して2.4mol%)
・キシレン:25.0部
冷却管、攪拌機、窒素導入管、及び、熱電対のついた反応槽に、上記材料を秤量した。次にフラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に175℃の温度まで昇温した。
・スチレン:
68.0部(0.65モル;構成モノマーの総モル数に対して76.4mol%)
・メタクリル酸シクロヘキシル:
5.0部(0.03モル;構成モノマーの総モル数に対して3.5mol%)
・アクリル酸ブチル:
12.0部(0.09モル;構成モノマーの総モル数に対して11.0mol%)
・メタクリル酸:
5.0部(0.06モル;構成モノマーの総モル数に対して6.7mol%)
・キシレン:10.0部
・ジーt-ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート:0.5部
その後、上記材料を2.5時間かけて滴下し、さらに40分間撹拌した。次いで、溶剤を留去して、ポリオレフィンにスチレンアクリル系ポリマーがグラフトしている非晶性樹脂A13を得た。
得られた非晶性樹脂A13のGPCによるピーク分子量は11000であった。ガラス転移温度は62℃であり、酸価は0.4mgKOH/gであった。
【0136】
【表2】
表中、略称は以下の通り。
BPA-PO(2.2):ビスフェノールAプロピレンオキシド2.2モル付加物
BPA-EO(2.2):ビスフェノールAエチレンオキシド2.2モル付加物
EG:エチレングリコール
Tgの単位は℃であり、酸価の単位はmgKOH/gであり、誘電率は2kHzにおける誘電率pF/mである。
【0137】
<結着樹脂1の製造例>
非晶性樹脂A6:32部及び結晶性樹脂C1:68部を混合し、二軸混練機[(株)栗本鉄工所製、S5KRCニーダー]に52kg/時で供給し、同時にラジカル反応開始剤(c)としてt-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート1.0部を0.52kg/時で供給して160℃で7分間、90rpmで混練押出して架橋反応を行い、さらにベント口から10kPaで減圧して有機溶剤の除去を行いながら混合した。混合で得られたものを冷却することにより、結着樹脂1を得た。
【0138】
<結着樹脂2~21の製造例>
結着樹脂1の製造例から、表3のように非晶性樹脂及び結晶性樹脂の種類と混合比率を変えた以外は同様にして結着樹脂2~21を得た。
【0139】
【0140】
<結着樹脂1微粒子分散液の製造例>
・トルエン(和光純薬製) 300部
・結着樹脂1 100部
上記材料を秤量・混合し、90℃で溶解させた。
別途、イオン交換水700部にドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム5.0部、ラウリン酸ナトリウム10.0部を加え90℃で加熱溶解させた。
次いで該トルエン溶液と該水溶液を混ぜ合わせ、超高速攪拌装置T.K.ロボミックス(プライミクス製)を用いて7000rpmで攪拌した。さらに、高圧衝撃式分散機ナノマイザー(吉田機械興業製)用いて200MPaの圧力で乳化した。その後、エバポレーターを用いて、トルエンを除去し、イオン交換水で濃度調整を行い結着樹脂1微粒子の濃度が20質量%の水系分散液(結着樹脂1微粒子分散液)を得た。
結着樹脂1微粒子の体積分布基準の50%粒径(D50)を動的光散乱式粒度分布計ナノトラックUPA-EX150(日機装製)を用いて測定したところ、0.40μmであった。
【0141】
<離型剤(脂肪族炭化水素化合物)微粒子分散液の製造例>
・脂肪族炭化水素化合物HNP-51(日本精蝋製) 100部
・アニオン界面活性剤ネオゲンRK(第一工業製薬製) 5部
・イオン交換水 395部
上記材料を秤量し、攪拌装置付きの混合容器に投入した後、90℃に加熱し、クレアミックスWモーション(エム・テクニック製)へ循環させて分散処理を60分間行った。分散処理の条件は、以下のようにした。
・ローター外径:3cm
・クリアランス:0.3mm
・ローター回転数:19000r/min
・スクリーン回転数:19000r/min
分散処理後、ローター回転数1000r/min、スクリーン回転数0r/min、冷却速度10℃/minの冷却処理条件にて40℃まで冷却することで、離型剤(脂肪族炭化水素化合物)微粒子の濃度が20質量%の水系分散液(離型剤(脂肪族炭化水素化合物)微粒子分散液)を得た。
離型剤(脂肪族炭化水素化合物)微粒子の体積分布基準の50%粒径(D50)を動的光散乱式粒度分布計ナノトラックUPA-EX150(日機装製)を用いて測定したところ、0.15μmであった。
【0142】
<着色剤微粒子分散液の製造>
・着色剤 50.0部
(シアン顔料 大日精化製:Pigment Blue 15:3)
・アニオン界面活性剤ネオゲンRK(第一工業製薬製) 7.5部
・イオン交換水 442.5部
上記材料を秤量・混合し、溶解し、高圧衝撃式分散機ナノマイザー(吉田機械興業製)を用いて約1時間分散して、着色剤を分散させてなる着色剤微粒子の濃度が10質量%の水系分散液(着色剤微粒子分散液)を得た。
着色剤微粒子の体積分布基準の50%粒径(D50)を動的光散乱式粒度分布計ナノトラックUPA-EX150(日機装製)を用いて測定したところ、0.20μmであった。
【0143】
<トナー粒子1の製造例>
・結着樹脂1微粒子分散液 500部
・離型剤(脂肪族炭化水素化合物微粒子分散液) 50部
・着色剤微粒子分散液 80部
・イオン交換水 160部
前記の各材料を丸型ステンレス製フラスコに投入し、混合した。続いてホモジナイザー
ウルトラタラックスT50(IKA社製)を用いて5000r/minで10分間分散した。1.0%硝酸水溶液を添加し、pHを3.0に調整した後、加熱用ウォーターバス中で撹拌翼を用いて、混合液が撹拌されるような回転数を適宜調節しながら58℃まで加熱した。
形成された凝集粒子の体積平均粒径を、コールターマルチサイザーIIIを用い、適宜確認し、重量平均粒径(D4)が約6.00μmである凝集粒子が形成されたところで、5%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを9.0にした。その後、攪拌を継続しながら、75℃まで加熱した。そして、75℃で1時間保持することで凝集粒子を融合させた。
その後、50℃まで冷却し3時間保持することで重合体の結晶化を促進させた。
その後、25度まで冷却し、ろ過・固液分離した後、イオン交換水で洗浄を行った。洗浄終了後に真空乾燥機を用いて乾燥することで、重量平均粒径(D4)が約6.1μmのトナー粒子1を得た。
【0144】
<トナー粒子2、5~24、29~35の製造例>
トナー粒子1の製造例において結着樹脂を表4のように変更した以外は、トナー粒子1の製造例と同様にして、トナー粒子2、5~24、29~35を得た。
【0145】
<トナー粒子3の製造例>
・結着樹脂2 100.0部
・着色剤 ピグメントブルー15:3 6.5部
・ジーt-ブチルサリチル酸アルミニウム 1.0部
・パラフィンワックス 10.0部
(日本精蝋社製:HNP-51)
・トルエン 100.0部
からなる混合物を調製した。上記混合物をアトライター(日本コークス社製)に投入し、直径5mmのジルコニアビーズを用いて、200rpmで2時間分散することで原材料分散液を得た。
一方、高速撹拌装置ホモミクサー(プライミクス社製)及び温度計を備えた容器に、イ
オン交換水735.0部とリン酸三ナトリウム(12水和物)16.0部を添加し、12000rpmで撹拌しながら60℃に昇温した。そこに、イオン交換水65.0部に塩化カルシウム(2水和物)9.0部を溶解した塩化カルシウム水溶液を投入し、60℃を保持しながら12000rpmで30分間撹拌した。そこに、10%塩酸を加えてpHを6.0に調整し、分散安定剤を含む水系媒体を得た。
続いて、上記原材料分散液を撹拌装置及び温度計を備えた容器に移し、100rpmで撹拌しながら60℃に昇温した。そこに、重合開始剤としてt-ブチルパーオキシピバレート(日油社製:パーブチルPV)8.0部を添加して60℃を保持しながら100rpmで5分間撹拌した後、上記高速撹拌装置にて12000rpmで撹拌している水系媒体中に投入した。
60℃を保持しながら上記高速撹拌装置にて12000rpmで20分間撹拌を継続し、造粒液を得た。上記造粒液を還流冷却管、撹拌機、温度計、窒素導入管を備えた反応容器に移し、窒素雰囲気下において150rpmで撹拌しながら70℃に昇温した。70℃を保持しながら150rpmで10時間重合反応を行った。その後、反応容器から還流冷却管を外し、反応液を95℃に昇温した後、95℃を保持しながら150rpmで5時間撹拌することでトルエンを除去し、トナー粒子分散液を得た。
得られたトナー粒子分散液を150rpmで撹拌しながら20℃まで冷却した後、撹拌を保持したままpHが1.5になるまで希塩酸を加えて分散安定剤を溶解させた。固形分をろ別し、イオン交換水で充分に洗浄した後、40℃で24時間真空乾燥して、トナー粒子3を得た。
【0146】
<トナー粒子4の製造例>
・結着樹脂2 100部
・脂肪族炭化水素化合物HNP-51(日本精蝋製) 10部
・C.I.ピグメントブルー15:3 6.5部
・3,5-ジ-t-ブチルサリチル酸アルミニウム化合物 0.5部
上記材料をヘンシェルミキサー(FM-75型、日本コークス工業株式会社製)を用いて、回転数20s-1、回転時間5minで混合した後、温度120℃、スクリュー回転数200rpmに設定した二軸混練機(PCM-30型、株式会社池貝製)にて吐出温度135℃にて混練した。得られた混練物を15℃/minの冷却速度で冷却し、ハンマーミルにて1mm以下に粗粉砕し、粗砕物を得た。得られた粗砕物を、機械式粉砕機(T-250、フロイントターボ(株)製)にて微粉砕した。
さらにファカルティF-300(ホソカワミクロン社製)を用い、分級を行い、トナー粒子4を得た。運転条件は、分級ローター回転数を130s-1、分散ローター回転数を120s-1とした。
【0147】
<トナー粒子25の製造例>
トナー粒子4の製造例から結着樹脂の種類と量を表4のように変更し、二軸混練機の温度を120℃、スクリュー回転数を300rpmに変更して設定した以外は、トナー粒子4の製造例と同様にして、トナー粒子25を得た。
【0148】
<トナー粒子26の製造例>
トナー粒子4の製造例から結着樹脂の種類と量を表4のように変更し、二軸混練機の温度を120℃、スクリュー回転数を150rpmに変更して設定した以外は、トナー粒子4の製造例と同様にして、トナー粒子26を得た。
【0149】
<トナー粒子27の製造例>
トナー粒子4の製造例から結着樹脂の種類と量を表4のように変更し、二軸混練機の温度を100℃、スクリュー回転数を350rpmに変更して設定した以外は、トナー粒子4の製造例と同様にして、トナー粒子27を得た。
【0150】
<トナー粒子28の製造例>
トナー粒子4の製造例から結着樹脂の種類と量を表4のように変更し、二軸混練機の温度を140℃、スクリュー回転数を100rpmに変更して設定した以外は、トナー粒子4の製造例と同様にして、トナー粒子28を得た。
【0151】
【0152】
<トナー1の製造例>
・トナー粒子1 100部
・無機微粒子5 1.0部
上記の材料をヘンシェルミキサーFM-10C型(三井三池化工機製)で回転数30s-1、回転時間10minで混合して、トナー1を得た。トナー1の構成を表5に示す。
トナー1の重量平均粒径(D4)は6.1μmであった。トナー1の物性を表6に示す。
【0153】
<トナー2~36、及び45~54の製造例>
トナー1の製造例において、トナー粒子及び無機微粒子を表5に記載のものに変更したこと以外は同様にして製造を行い、トナー2~36、及び45~54を得た。
得られたトナー2~36、及び45~54の物性を表6に示す。
【0154】
<トナー37~44の製造例>
トナー36の製造例において、トナー粒子及び無機微粒子の種類と添加量を表5に記載のものに変更したこと以外は同様にして製造を行い、トナー37~44を得た。
得られたトナー37~44の物性を表6に示す。
得られたトナーの断面観察を行ったところ、トナー1~44,46~50及び52~54において、結晶性樹脂である第一の樹脂を含むマトリクス、及び非晶性樹脂である第二の樹脂を含むドメインで構成されるドメインマトリクス構造が見られた。
一方、トナー45及び51では、第二の樹脂を含むマトリクス及び第一の樹脂を含むドメインで構成されるドメインマトリクス構造が見られた。
【0155】
【0156】
【0157】
<磁性キャリア1の製造例>
・個数平均粒径0.30μm、(1000/4π(kA/m)の磁界下における磁化の強
さ65Am2/kg)のマグネタイト1
・個数平均粒径0.50μm、(1000/4π(kA/m)の磁界下における磁化の強さ65Am2/kg)のマグネタイト2
上記の材料それぞれ100部に対し、4.0部のシラン化合物(3-(2-アミノエチルアミノプロピル)トリメトキシシラン)を加え、容器内にて100℃以上で高速混合撹拌し、それぞれの微粒子を処理した。
・フェノール:10質量%
・ホルムアルデヒド溶液:6質量%
(ホルムアルデヒド40質量%、メタノール10質量%、水50質量%)
・上記シラン化合物で処理したマグネタイト1 :58質量%
・上記シラン化合物で処理したマグネタイト2 :26質量%
上記材料100部と、28質量%アンモニア水溶液5部、及び水20部をフラスコに入れ、攪拌、混合しながら30分間で85℃まで昇温し、3時間保持して重合反応させて、生成するフェノール樹脂を硬化させた。
その後、硬化したフェノール樹脂を30℃まで冷却し、さらに水を添加した後、上澄み液を除去し、沈殿物を水洗した後、風乾した。次いで、これを減圧下(5mmHg以下)、60℃の温度で乾燥して、磁性体分散型の球状の磁性キャリア1を得た。体積基準の50%粒径(D50)は、34.2μmであった。
【0158】
<二成分系現像剤1の製造例>
92.0部の磁性キャリア1と8.0部のトナー1をV型混合機(V-20、セイシン企業製)により混合し、二成分系現像剤1を得た。
【0159】
<二成分系現像剤2~54の製造例>
二成分系現像剤1の製造例において、トナーを表7のように変更する以外は同様にして製造を行い、二成分系現像剤2~54を得た。
【0160】
【0161】
<トナーの評価方法>
(帯電立ち上がり性評価)
帯電立ち上がり性の評価は、画像印字比率濃度の異なる画像を出力した際の濃度変化を測定することで行った。画像比率の低い画像を出力させて現像機内のトナーの帯電を飽和させた状態にしたのち、画像比率の高い画像を出力させる。すると、現像機内の帯電の飽和したトナーと、現像機内に新たに供給されるトナーとで帯電が異なることによる濃度変化が起こる。
帯電の立ち上がりが速いトナーは、現像機内に供給されてすぐに帯電が飽和するために、濃度変化が少なくなる。一方、帯電の立ち上がりの遅いトナーは、現像機内に供給されてから帯電が飽和するまでに時間がかかるため、トナー全体の帯電量が下がり、濃度が変化してしまう。
【0162】
画像形成装置としてキヤノン製フルカラー複写機imagePress C800を用いて、評価する二成分系現像剤を、画像形成装置のシアン用現像器に入れ、シアン用トナー容器に評価するトナーを入れて後述の評価を行った。
改造点は、現像器内部で過剰になった磁性キャリアを現像器から排出する機構を取り外したことである。評価紙は、普通紙GF-C081(A4、坪量81.4g/m2、キヤノンマーケティングジャパン株式会社より販売)を用いた。
FFh画像(ベタ画像)におけるトナーの紙上への載り量が0.45mg/cm2となるように、調整した。FFhとは、256階調を16進数で表示した値であり、00hが256階調の1階調目(白地部)であり、FFが256階調の256階調目(ベタ部)である。
【0163】
まず、画像比率1%で、1000枚の画像出力試験を行った。1000枚連続通紙中は、1枚目と同じ現像条件、転写条件(キャリブレーション無し)で通紙を行った。
その後、画像比率80%で、1000枚の画像出力試験を行った。1000枚連続通紙中は、1枚目と同じ現像条件、転写条件(キャリブレーション無し)で通紙を行った。
画像比率1%での印刷における1000枚目の画像濃度を初期濃度とし、画像比率80%での印刷における1000枚目の画像の濃度測定を行い、以下の評価基準に従って評価した。
上記の試験を高温高湿環境下(H/H;温度30℃、相対湿度80%)及び常温低湿環境下(N/L;温度23℃、相対湿度5%)において行った。
【0164】
(1)画像濃度変化の測定
X-Riteカラー反射濃度計(500シリーズ:X-Rite社製)を使用し、初期濃度と画像比率80%での印刷における1000枚目の画像の濃度測定を行い、以下の基準でランク付けした。D以上を本発明の効果が得られていると判断した。評価結果を表8に示す。
(濃度差)
AA:0.02未満
A:0.02以上0.04未満
BB:0.04以上0.06未満
B:0.06以上0.08未満
CC:0.08以上0.10未満
C:0.10以上0.12未満
D:0.12以上0.15未満
E:0.15以上
【0165】
(高温高湿環境下での帯電維持特性の評価方法)
静電潜像担持体上のトナーを金属円筒管と円筒フィルターを用いて吸引捕集することにより、トナーの摩擦帯電量を算出した。
具体的には、静電潜像担持体上のトナーの摩擦帯電量は、ファラデー・ケージ(Faraday-Cage)によって測定した。ファラデー・ケージとは、同軸の2重筒のことで内筒と外筒は絶縁されている。この内筒の中に電荷量Qの帯電体を入れたとすると、静電誘導によりあたかも電荷量Qの金属円筒が存在するのと同様になる。この誘起された電荷量をエレクトロメーター(ケスレー6517A ケスレー社製)で測定し、内筒中のトナー質量M(kg)で電荷量Q(mC)を割ったもの(Q/M)をトナーの摩擦帯電量とした。
トナーの摩擦帯電量(mC/kg)=Q/M
先ず、静電潜像担持体上に上記評価画像を形成し、中間転写体に転写される前に、静電潜像担持体の回転を止め、静電潜像担持体上のトナーを、金属円筒管と円筒フィルターにより吸引捕集し、[初期のQ/M]を測定した。
引き続き、高温高湿(H/H)環境において評価機内に現像器を入れたまま2週間放置させた後、放置前と同様の操作を行い、放置後の静電潜像担持体上の単位質量当たりの電荷量Q/M(mC/kg)を測定した。上記の初期の静電潜像担持体上の単位質量当たり
のQ/Mを100%とし、放置後の静電潜像担持体上の単位質量当たりのQ/Mの維持率([放置後のQ/M]/[初期のQ/M]×100)を算出して以下の基準で判断した。D以上を本発明の効果が得られていると判断した。評価結果を表8に示す。
(評価基準)
AA:維持率が98%以上
A:維持率が95%以上98%未満
BB:維持率が90%以上95%未満
B:維持率が85%以上90%未満
CC:維持率が80%以上85%未満
C:維持率が75%以上80%未満
D:維持率が70%以上75%未満
E:維持率が70%未満
【0166】
(低温定着性の評価方法)
紙:GFC-081(81.0g/m2)
(キヤノンマーケティングジャパン株式会社より販売)
紙上のトナーの載り量:0.50mg/cm2
(現像剤担持体の直流電圧VDC、静電潜像担持体の帯電電圧VD、及びレーザーパワーにより調整)
評価画像:上記A4用紙の中心に2cm×5cmの画像を配置
試験環境:低温低湿環境:温度15℃/湿度10%RH(以下「L/L」)
定着温度:130℃
プロセススピード:377mm/sec
上記評価画像を出力し、低温定着性を評価した。画像濃度低下率の値を低温定着性の評価指標とした。
画像濃度低下率は、X-Riteカラー反射濃度計(500シリーズ:X-Rite社製)を用い、先ず、中心部の画像濃度を測定する。次に、画像濃度を測定した部分に対し、4.9kPa(50g/cm2)の荷重をかけてシルボン紙により定着画像を摺擦(5往復)し、画像濃度を再度測定する。
そして、下記式を用いて摺擦前後での画像濃度の低下率を算出した。得られた画像濃度の低下率を下記の評価基準に従って評価した。D以上を本発明の効果が得られていると判断した。評価結果を表8に示す。
画像濃度の低下率 =
(摺擦前の画像濃度-摺擦後の画像濃度)/摺擦前の画像濃度×100
(評価基準)
AA:画像濃度の低下率3.0%未満
A:画像濃度の低下率3.0%以上5.0%未満
BB:画像濃度の低下率5.0%以上10.0%未満
B:画像濃度の低下率10.0%以上15.0%未満
CC:画像濃度の低下率15.0%以上20.0%未満
C:画像濃度の低下率20.0%以上25.0%未満
D:画像濃度の低下率25.0%以上30.0%未満
E:画像濃度の低下率30.0%以上
【0167】
(耐ホットオフセット(H.O)性の評価方法)
未定着画像形成装置として、キヤノン製フルカラー複写機image PRESS C800の改造機を用い、シアンステーションの現像器に上記二成分系現像剤を投入し、評価を行った。
評価紙は、コピー用普通紙GFC-081(A4、坪量81.4g/m2 キヤノンマーケティングジャパン株式会社より販売)を用いた。常温常湿環境下(23℃、60%R
H)にて、紙上に縦2.0cm、横15.0cmの未定着のトナー画像(トナー載り量:0.08mg/cm2)を、通紙方向に対し上端部から2.0cmの部分に形成した。
定着試験は、キヤノン製フルカラー複写機imageRUNNER ADVANCE C5255から取り外し、定着温度が調節できるように改造した、定着ユニットを用いて行った。常温低湿環境下(23℃、5%RH)にて、プロセススピードを265mm/sに設定し、温度を160℃から210℃の範囲にて5℃刻みに上昇させながら、上記未定着画像の各温度における定着画像を得た。得られた定着画像に対し、耐ホットオフセット性の評価を行った。
上記定着画像にて、ホットオフセットを目視にて評価し、以下の基準で判断した。D以上を本発明の効果が得られていると判断した。評価結果を表8に示す。
(評価基準)
AA:210℃においてもホットオフセット発生なし
A:205℃においてホットオフセット発生
BB:200℃においてホットオフセット発生
B:195℃においてホットオフセット発生
CC:190℃においてホットオフセット発生
C:180℃以上190℃未満においてホットオフセット発生
D:170℃以上180℃未満においてホットオフセット発生
E:170℃未満においてホットオフセット発生
【0168】
<実施例1~44>
トナー1~44(二成分現像剤1~44)を用いて上記評価を行った。尚、トナー8~31(二成分現像剤8~31)及びトナー36~44(二成分現像剤36~44)は、参考例として評価を行った。
<比較例1~10>
トナー45~54(二成分現像剤45~54)を用いて上記評価を行った。
【0169】