IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キヤノン株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】トナー
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/097 20060101AFI20240227BHJP
【FI】
G03G9/097 372
G03G9/097 374
G03G9/097 375
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019230303
(22)【出願日】2019-12-20
(65)【公開番号】P2020109506
(43)【公開日】2020-07-16
【審査請求日】2022-11-29
(31)【優先権主張番号】P 2018247140
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野村 祥太郎
(72)【発明者】
【氏名】橋本 康弘
(72)【発明者】
【氏名】堀田 洋二朗
(72)【発明者】
【氏名】西川 浩司
(72)【発明者】
【氏名】古井 貴昭
(72)【発明者】
【氏名】長島 裕二郎
【審査官】塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/003749(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/065730(WO,A1)
【文献】特開平05-181304(JP,A)
【文献】特開2009-109817(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/00 - 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂を含有するトナー粒子と、外添剤とを含有するトナーであって、
該外添剤は、外添剤A外添剤B及び外添剤Cを含有し、
該外添剤Aは、一次粒子の個数平均粒径が、35nm以上300nm以下であり、
該外添剤Aの10Hzで測定される比誘電率εraが、3.50以下であり、
該外添剤Aの形状係数SF-1が、114以下であり、
該外添剤Aは、有機ケイ素重合体を有する有機ケイ素重合体粒子であり、該有機ケイ素重合体はケイ素原子と酸素原子とが交互に結合した構造を有し、
該有機ケイ素重合体のケイ素原子の一部が、RaSiO3/2で表されるT3単位構造を有し、
該Raは炭素数1~6のアルキル基又はフェニル基を表し、
該外添剤Aの29Si-NMR測定において、該外添剤Aに含有される全ケイ素元素に由来するピークの合計面積に対する、T3単位構造を有するケイ素に由来するピークの面積の割合が、0.50以上1.00以下であり、
該外添剤Bの一次粒子の個数平均粒径が、5nm以上25nm以下であり、
該外添剤Bの10Hzで測定される比誘電率εrbが、下記式(A)を満たし、
該外添剤Bのトナー粒子表面に対する被覆率が、50%以上100%以下であり、
該外添剤Aの該トナー粒子表面における固着率Aaと該外添剤Bの該トナー粒子表面における固着率Abが、下記式(B-1)を満たし、
該外添剤Cは、酸化チタン微粒子及びチタン酸ストロンチウム微粒子からなる群から選択される少なくとも一を含有することを特徴とするトナー。
0.50 ≦ εrb-εra ・・・(A)
-50%≦Ab-Aa≦50% ・・・(B-1)(ただし、Ab-Aaの値が0以下の場合を除く。)
【請求項2】
前記外添剤Aの分散度評価指数が、0.50以上2.00以下であり、
前記外添剤Bの分散度評価指数が、0.40以下である請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
前記外添剤Cの前記トナー粒子表面における固着率Acが、40%以上である請求項1又は2に記載のトナー。
【請求項4】
前記外添剤Bが、シリカ粒子である請求項1~のいずれか一項に記載のトナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法、静電記録法、磁気記録法などに用いられるトナーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年レーザービームプリンター(LBP)は従来にも増して高画質化と長寿命化が求められている。具体的には、LBPは一つのカートリッジでより多くの紙に印刷でき、かつ画質は耐久使用を通じて高い品質を維持できるようにする必要がある。
そのために、使用するトナーは、高い流動性・帯電性を、耐久期間を通じて発揮しなければならない。
トナーの流動性・帯電性を改善する手段としては外添によるアプローチが効果的である。トナーに長期の耐久期間を通じて高い流動性・帯電性を維持させるためには、従来、(1)小粒径のシリカ粒子の多量添加、(2)小粒径シリカ粒子と大粒径シリカ粒子の併用といった手法が行われていた。
【0003】
上記(1)の具体的な適用例が、特許文献1に記載されている。これらのトナーは高い耐久性と、耐久後半でもある程度の現像性を保持することができている。
【0004】
また、上記(2)の具体的な適用例が、特許文献2に記載されている。この構成は小粒径シリカ粒子による高い帯電性・流動性と大粒径シリカ粒子による埋め込み抑制効果の両立を狙ったものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-156614号公報
【文献】特開2010-249995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のトナーでは、多量添加された小粒径シリカ粒子の静電凝集によるさまざまな弊害が発生することがわかった。
具体的にはトナー粒子表面で形成された小粒径シリカ粒子の静電凝集塊が遊離し、感光体表面に付着・汚染し静電潜像を乱して画質を低下させるといった問題がある。
また耐久使用でトナー粒子表面の小粒径シリカ粒子が静電凝集すると被覆率が低下し、トナーの流動性が低下するため、規制不良による画像弊害も発生することがわかった。
規制不良とはトナー担持体上のトナーの積載量をトナー規制部材で十分に規制できなくなる現象であり、トナー担持体上のトナーの載り量が所望の量より多くなり、画像濃度が所望のものより濃くなる現像ゴーストのような画像弊害を引き起こす要因となる。
また、特許文献2のトナーでは、大粒径シリカ粒子により耐久性能は向上するものの、耐久後半になると小粒径シリカ粒子が大粒径シリカ粒子よりも先に埋没するためトナーの帯電性・流動性が変化し、画質も変化するという問題があることがわかった。
そのためこれらの手法によらず耐久現像性を向上させる、抜本的な対策が求められる。
本発明の目的は上記課題を解決するトナーを提供することにある。
具体的には、長期の耐久使用においても画像弊害なく高い現像性を発揮し高画質を維持することが可能なトナーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、結着樹脂を含有するトナー粒子と、外添剤とを含有するトナーであって、
該外添剤は、外添剤A外添剤B及び外添剤Cを含有し、
該外添剤Aは、一次粒子の個数平均粒径が、35nm以上300nm以下であり、
該外添剤Aの10Hzで測定される比誘電率εraが、3.50以下であり、
該外添剤Aの形状係数SF-1が、114以下であり、
該外添剤Aは、有機ケイ素重合体を有する有機ケイ素重合体粒子であり、該有機ケイ素重合体はケイ素原子と酸素原子とが交互に結合した構造を有し、
該有機ケイ素重合体のケイ素原子の一部が、RaSiO3/2で表されるT3単位構造を有し、
該Raは炭素数1~6のアルキル基又はフェニル基を表し、
該外添剤Aの29Si-NMR測定において、該外添剤Aに含有される全ケイ素元素に由来するピークの合計面積に対する、T3単位構造を有するケイ素に由来するピークの面積の割合が、0.50以上1.00以下であり、
該外添剤Bの一次粒子の個数平均粒径が、5nm以上25nm以下であり、
該外添剤Bの10Hzで測定される比誘電率εrbが、下記式(A)を満たし、
該外添剤Bのトナー粒子表面に対する被覆率が、50%以上100%以下であり、
該外添剤Aの該トナー粒子表面における固着率Aaと該外添剤Bの該トナー粒子表面における固着率Abが、下記式(B-1)を満たし、
該外添剤Cは、酸化チタン微粒子及びチタン酸ストロンチウム微粒子からなる群から選択される少なくとも一を含有することを特徴とする。
0.50 ≦ εrb-εra ・・・(A)
-50%≦Ab-Aa≦50% ・・・(B-1)(ただし、Ab-Aaの値が0以下の場合を除く。)
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、長期の耐久使用においても画像弊害なく高い現像性を発揮し、高画質を維持することが可能なトナーを提供することにある。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明において、数値範囲を表す「XX以上YY以下」や「XX~YY」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限及び上限を含む数値範囲を意味する。
本発明は、結着樹脂を含有するトナー粒子と、外添剤とを含有するトナーであって、
該外添剤は、外添剤A及び外添剤Bを含有し、
該外添剤Aは、一次粒子の個数平均粒径が、35nm以上300nm以下であり、
該外添剤Aの10Hzで測定される比誘電率εraが、3.50以下であり、
該外添剤Aの形状係数SF-1が、114以下であり、
該外添剤Aは、有機ケイ素重合体を有する有機ケイ素重合体粒子であり、該有機ケイ素重合体はケイ素原子と酸素原子とが交互に結合した構造を有し、
該有機ケイ素重合体のケイ素原子の一部が、RSiO3/2で表されるT3単位構造
を有し、
該Rは炭素数1~6のアルキル基又はフェニル基を表し、
該外添剤Aの29Si-NMR測定において、該外添剤Aに含有される全ケイ素元素に由来するピークの合計面積に対する、T3単位構造を有するケイ素に由来するピークの面積の割合が、0.50以上1.00以下であり、
該外添剤Bの一次粒子の個数平均粒径が、5nm以上25nm以下であり、
該外添剤Bの10Hzで測定される比誘電率εrbが、下記式(A)を満たし、
該外添剤Bのトナー粒子表面に対する被覆率が、50%以上100%以下であることを特徴とする。
0.50 ≦ εrb-εra ・・・(A)
【0010】
本発明者らの検討によれば、上記トナー構成により、長期の耐久使用においても画像弊害なく高い現像性を発揮し、高画質を維持することが可能となる。以下にその詳細を説明する。
【0011】
上述の通り、小粒径シリカ粒子の多量添加で、長期の耐久画像出力においても高画質をある程度維持することは可能となる。しかし小粒径シリカ粒子の静電凝集による凝集塊の
生成・脱離と、それによる被覆率の低下が種々の弊害を引き起こす。
また、小粒径シリカ粒子と大粒径シリカ粒子の併用で小粒径シリカ粒子の埋没を抑制し、高帯電性・高流動性を従来よりも長期に渡り維持することが可能となっていたが、耐久後期における小粒径シリカ粒子の選択的埋没とそれによる物性変化がある。そのため、これらは抜本的な対策とはなっていなかった。
【0012】
そこで本発明者らは、小粒径外添剤を多量添加した系に、小粒径外添剤よりも誘電率が低く静電凝集を起こしにくい大粒径外添剤を添加することで、小粒径外添剤の静電凝集と、耐久使用に伴う埋没とを同時に抑制し、長期の耐久期間においても高画質を維持する手法を考案した。
まず本発明者らは、耐久使用の際にトナー粒子表面で生成する小粒径外添剤の静電凝集塊を物理的に解砕することを考えた。
具体的には、球形度・円形度が高いためトナー粒子表面で転がって移動しやすく、また大粒径のためそれ単体では凝集塊を形成しにくい高円形度かつ大粒径の外添剤を添加し、それによる小粒径外添剤の静電凝集塊の解砕を目指した。
【0013】
本発明者らは、小粒径外添剤としてシリカ粒子を用い、高円形度かつ大粒径の外添剤として粒径100nm前後のヒュームドシリカ粒子を用いて検討した。この高円形度かつ大粒径のシリカ粒子が耐久現像時の撹拌によるトナー流動に伴いトナー粒子表面を移動する際、生成した小粒径シリカ粒子の静電凝集塊を物理的に解砕することを期待した。
しかしながら、実際の系では上記構成で所望の効果を十分に発揮することは困難であった。高円形度大粒径シリカ粒子が小粒径シリカ粒子と静電凝集し、凝集塊を形成してしまった為である。
【0014】
そこで本発明者らは、小粒径シリカ粒子など小粒径外添剤の静電凝集のメカニズムに着目した。
一般に粉体粒子の静電凝集は、異なる帯電特性を持つ粒子がそれぞれ正と負に帯電し、クーロン力により引き合い凝集すると考えられる。しかし組成的に同質・一様である小粒径シリカ粒子などの小粒径外添剤中に正帯電・負帯電を起こす粒子が別個に存在するとは考えにくい。
そのため本発明者らは小粒径外添剤の静電凝集は正帯電・負帯電粒子の存在によるものではなく、より微視的なレベルでの静電相互作用によるものであると推察した。具体的には分子レベルでの永久双極子や励起双極子による静電的な凝集力、いわゆるvan der Waals力によるものであると考えた。
小粒径シリカ粒子と組成的に同一である高円形度大粒径シリカ粒子の場合、粒子表面のvan der Waals力は小粒径シリカ粒子同様に作用するため、小粒径シリカ粒子の静電凝集塊への衝突時もそれを解砕するどころか逆に絡め取られ、凝集塊を形成してしまったと考えられる。
【0015】
そこで本発明者らは高円形度大粒径外添剤の電気的特性を制御することを考えた。
具体的には永久双極子・励起双極子の分極度合が小粒径外添剤よりも小さければ静電凝集も起きにくいため、大粒径外添剤と小粒径外添剤の静電凝集塊が形成しにくくなると考えた。
高円形度大粒径外添剤の電気的特性の指標として、本発明者らは比誘電率に着目した。
外添剤レベルの微粒子表面の分子の永久双極子・励起双極子によるvan der waals力を直接測定することは困難であるが、電場中での分子の分極し易さを示す比誘電率であれば簡便に測定が可能である。
また、実際の耐久現像時にトナーが最も撹拌・摺擦されトナー粒子表面の外添剤が移動するトナー担持体周辺では、現像バイアス等の電場がかかるため、静電凝集の指標として電場中の分子の分極度合、即ち比誘電率が適当であると考えた。
高円形度大粒径外添剤の比誘電率が小粒径外添剤の比誘電率よりも小さい値であれば、所望の効果を発揮し、高画質化が達成されると考えられる。
【0016】
しかし、高円形度大粒径外添剤の比誘電率の制御だけでは、小粒径外添剤の静電凝集塊の解砕効果を、耐久使用を通じて維持することは困難であった。
高円形度大粒径外添剤は、トナー粒子が別のトナー粒子、あるいはカートリッジ容器壁面などの部材と接触した時の物理的衝撃により、トナー粒子表面を転がり移動する。しかし長期耐久印刷後など、トナーが高い物理的衝撃を受け続けた場合は大粒径の外添剤といえどもトナー粒子表面に埋没・固定化され、表面を転がりにくくなる。
この埋没は、樹脂で構成されたトナー粒子表面に比べ、無機酸化物などで構成された大粒径外添剤粒子が相対的に硬質であるために起きる。対策としてはトナー粒子表面の硬質化などが考えられるが、その場合、低温定着性能などに悪影響が出るため、本質的な解決策とはならない。
そこで本発明者らは、大粒径外添剤粒子に弾性を付与することで、物理的衝撃を外添剤粒子の弾性変形により分散させることで、外添剤粒子の埋没を抑制可能であると考え検討を実施した。その結果、特定のT3単位構造を有する有機ケイ素重合体粒子であれば、好適な比誘電率の値を持ち、かつ適度な弾性を保持するため、埋没抑制にも有効であることを見出した。
【0017】
以下に本発明を具体的に説明する。
高円形度大粒径外添剤(以下外添剤A)の一次粒子の個数平均粒径は35nm以上300nm以下であると、トナー粒子表面への付着性と、小粒径外添剤の静電凝集塊の解砕効果を発揮できる。
35nmより小さいと、物理的に小粒径外添剤とほとんど変わらないため、静電凝集塊中に埋没してしまい解砕効果を発揮できない。また、300nmより大きいと、トナー粒子表面に安定的に付着できず遊離してしまい、部材汚染などを引き起こす。
該個数平均粒径は、好ましくは40nm以上250nm以下であり、より好ましくは45nm以上200nm以下である。
【0018】
外添剤Aの10Hzで測定される比誘電率εraが、3.50以下であると、外添剤A自体が電場中で静電凝集を起こしにくい。εraが3.50より大きいと、電場中での永久双極子・励起双極子によるvan der waals力が過大となり、外添剤A同士で凝集してしまい所望の解砕効果を発揮できない。
比誘電率εraは、好ましくは3.35以下であり、より好ましくは3.20以下である。一方、下限は特に制限されないが、好ましくは1.35以上であり、より好ましくは1.50以上である。比誘電率εraは、外添剤の原子組成・分子構造等により制御できる。
【0019】
外添剤Aの形状係数SF-1が、114以下であると、耐久現像時に外添剤Aがトナー粒子表面で転がり、静電凝集塊の解砕効果を発揮できる。
形状係数SF-1は粒子の丸さの度合いを表す指標であり、値が100であると真円となり、数値が大きくなるほど円から遠ざかり不定形になることを示す。
SF-1が114より大きいと、形状が歪になるためトナー粒子表面で転がりにくくなり、静電凝集塊の解砕効果を発揮しにくくなる。
外添剤Aの形状係数SF-1は、好ましくは110以下であり、より好ましくは107以下である。一方、下限は特に制限されないが、好ましくは100以上である。SF-1は、例えば外添剤粒子作製時に複数の粒子を凝集させたり、母体粒子表面にそれよりも小径の粒子を一部埋没させたり等の手法により制御できる。
【0020】
外添剤Aは有機ケイ素重合体粒子であり、ケイ素原子と酸素原子とが交互に結合した構
造を有し、該有機ケイ素重合体の一部がRSiO3/2で表されるT3単位構造を有し
ている。該Rは炭素数1~6(好ましくは1~3、より好ましくは1又は2)のアルキル基又はフェニル基を表す。
該外添剤Aの29Si-NMR測定において、該外添剤Aに含有される全ケイ素元素に由来するピークの合計面積に対する、T3単位構造を有するケイ素に由来するピークの面積の割合が、0.50以上1.00以下であることが必要である。上記範囲であると、外添剤Aが好適な比誘電率を維持しつつ適度な弾性を獲得することができる。
一方、0.50未満であると、外添剤Aの弾性率が低下し過ぎるため塑性変形の発生や、外添剤粒子同一での合一変形などの弊害が発生する。該ピークの面積の割合は、0.60以上1.00以下であることが好ましい。
【0021】
小粒径シリカ粒子(以下外添剤B)の一次粒子の個数平均粒径が5nm以上25nm以下であると、トナーに高流動性と高帯電性を十分に付与することができ好ましい。該個数平均粒径が5nmより小さいと、外添剤のトナー粒子表面への埋没が加速し、また表面積が増大するため静電凝集が強固になる。
該個数平均粒径が25nmより大きいと、トナー粒子表面の被覆性が低下し、トナーとしての性能を発揮するのに多量添加が必要となる。そうすると、低温定着性阻害などの弊害が発生する。
該個数平均粒径は、好ましくは5.5nm以上24.5nm以下であり、より好ましくは6.0nm以上24.0nm以下である。
【0022】
外添剤Bの10Hzで測定される比誘電率εrbが次の関係式(A)を満たすことで、静電凝集塊を外添剤Aが解砕しやすくなる。
0.50 ≦ εrb-εra ・・・(A)
εrbが上記関係式を満たさない場合、外添剤Bと外添剤Aの静電凝集が発生し、解砕効果が発揮されにくくなる。下記式(A’)を満たすことが好ましい。
0.55≦ εrb-εra ≦10.00 ・・・(A’)
比誘電率εrbは、外添剤の原子組成・分子構造等により制御できる。
【0023】
外添剤Bのトナー粒子表面に対する被覆率が50%以上100%以下であると、長期の耐久画像出力においてもトナーに十分な高帯電性と高流動性を付与することができるため好ましい。被覆率が50%より小さいと、耐久後期においてトナーの帯電性・流動性が不足し、画質の低下及び画像濃度の低下をもたらす。
該被覆率は、好ましくは55%以上95%以下であり、より好ましくは60%以上90%以下である。該被覆率は、外添剤粒子の添加量・粒径・外添時の応力調整により制御できる。
【0024】
外添剤Aの分散度評価指数は、0.50以上2.00以下であることが好ましく、0.60以上1.80以下であることがより好ましい。上記範囲であると、トナー粒子表面における分散度合が好適であり、比較的帯電特性が低い外添剤Aの高被覆によるトナーの帯電低下等の弊害を引き起こしにくい。分散度評価指数は小さい方が、分散性が良いことを示す。外添剤Aの分散度評価指数は、外添時の処理時間や応力調整により制御できる。
外添剤Bの分散度評価指数が0.40以下であることが好ましく、0.01以上0.35以下であることがより好ましい。上記範囲であると、トナー粒子表面を均一に高被覆することが可能となり、長期の耐久画像出力においてもトナーに十分な高帯電性と高流動性を付与することができる。外添剤Bの分散度評価指数は、外添時の処理時間や応力調整により制御できる。
【0025】
トナー粒子表面における外添剤Aの固着率A及び外添剤Bの固着率Aが、次の関係式(B)を満たすことが好ましい。該式を満たすと、固着率が適正となり脱離による弊害
を引き起こしにくい。また、固着し過ぎてトナー粒子表面で埋没・固定されることを抑制でき、所望の効果を十分に発揮することができる。(B’)を満たすことがより好ましい。
|A-A|≦50% ・・・(B)
5%≦|A-A|≦45% ・・・(B’)
固着率Aは、外添時の処理時間・処理温度や応力調整により制御できる。また、固着率Aは、外添時の処理時間・処理温度や応力調整により制御できる。
【0026】
該トナーは、外添剤Cとしてさらに酸化チタン微粒子及びチタン酸ストロンチウム微粒子からなる群から選択される少なくとも一を含有し、該外添剤Cの固着率Aが40%以上であることが好ましい。より好ましくは、41%以上70%以下である。固着率Acは、外添時の処理時間・処理温度や応力調整により制御できる。
酸化チタン及びチタン酸ストロンチウムは低抵抗材料であり電荷の蓄積を適度にリークする効果があり、トナー粒子表面に固着されると静電凝集の抑制に効果的である。
外添剤Cの一次粒子の個数平均粒径は、好ましくは25nm以上500nm以下であり、より好ましくは30nm以上400nm以下である。
外添剤Cの含有量は、トナー粒子100質量部に対し、好ましくは0.05質量部以上2.00質量部以下であり、より好ましくは0.10質量部以上1.50質量部以下である。
【0027】
以下に本発明で用いる外添剤Aに関して具体的に説明する。
外添剤Aは、有機ケイ素重合体粒子である。有機ケイ素重合体粒子は有機ケイ素重合体を有する。有機ケイ素重合体は、ケイ素原子と酸素原子とが交互に結合した構造を有する。有機ケイ素重合体粒子は、有機ケイ素重合体粒子を基準として、好ましくは90質量%以上の有機ケイ素重合体を含有する。
【0028】
有機ケイ素重合体粒子の製法は特に限定されず、例えば水にシラン化合物を滴下し、触媒により加水分解、縮合反応させた後、得られた懸濁液を濾過、乾燥し得ることができる。触媒の種類、配合比、反応開始温度、滴下時間などにより粒径をコントロールすることができる。
触媒として酸性触媒は塩酸、フッ化水素酸、硫酸、硝酸などが挙げられ、塩基性触媒はアンモニア水、水酸ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0029】
有機ケイ素重合体のケイ素原子の一部は、RSiO3/2で表されるT3単位構造を
有している。該Rは炭素数1~6(好ましくは1~3、より好ましくは1又は2)のアルキル基又はフェニル基を表す。
外添剤A(有機ケイ素重合体粒子)の29Si-NMR測定において、該外添剤Aに含有される全ケイ素元素に由来するピークの合計面積に対する、T3単位構造を有するケイ素に由来するピークの面積の割合が、0.50以上1.00以下である。上記範囲であると、有機ケイ素重合体粒子に適切な弾性を持たせることができるため、本発明の効果が得られやすい。
有機ケイ素重合体粒子は、下記式(2)で表される構造を有する有機ケイ素化合物の縮重合物であることが好ましい。
【0030】
【化1】
【0031】
(式(2)中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1~6(好ましくは1~3、より好ましくは1又は2)のアルキル基、フェニル基、又は反応基(例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アセトキシ基、又は、(好ましくは炭素数1~6、より好ましくは炭素数1~3の)アルコキシ基)を表す。)
【0032】
本発明に用いられる有機ケイ素重合体粒子を得るには、
式(2)の一分子中に4つの反応基を有する有機ケイ素化合物(四官能性シラン)、
式(2)中のRがアルキル基、又はフェニル基であり、3つの反応基(R、R、R)を有する有機ケイ素化合物(三官能性シラン)、
式(2)中のR、Rがアルキル基、又はフェニル基であり、2つの反応基(R、R)を有する有機ケイ素化合物(二官能性シラン)、
式(2)中のR、R、Rがアルキル基、又はフェニル基であり、1つの反応基(R)を有する有機ケイ素化合物(一官能性シラン)を用いることができる。
T3単位構造に由来するピークの面積の割合を、0.50以上1.00以下とするためには、有機ケイ素化合物として三官能性シランを50モル%以上使用することが好ましい。
【0033】
これらの反応基が加水分解、付加重合及び縮合重合させて架橋構造を形成し、有機ケイ素重合体粒子を得ることができる。R、R及びRの加水分解、付加重合及び縮合重合は、反応温度、反応時間、反応溶媒及びpHによって制御することができる。
【0034】
四官能性シランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソシアネートシランなどが挙げられる。
【0035】
三官能性シランとしては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルジエトキシメトキシシラン、メチルエトキシジメトキシシラン、メチルトリクロロシラン、メチルメトキシジクロロシラン、メチルエトキシジクロロシラン、メチルジメトキシクロロシラン、メチルメトキシエトキシクロロシラン、メチルジエトキシクロロシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルジアセトキシメトキシシラン、メチルジアセトキシエトキシシラン、メチルアセトキシジメトキシシラン、メチルアセトキシメトキシエトキシシラン、メチルアセトキシジエトキシシラン、メチルトリヒドロキシシラン、メチルメトキシジヒドロキシシラン、メチルエトキシジヒドロキシシラン、メチルジメトキシヒドロキシシラン、メチルエトキシメトキシヒドロキシシラン、メチルジエトキシヒドロキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリクロロシラン、エチルトリアセトキシシラン、エチルトリヒドロキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリクロロシラン、プロピルトリアセトキシシラン、プロピルトリヒドロキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ブチルトリクロロシラン、ブチルトリアセトキシシラン、ブチルトリヒドロキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘキシルトリクロロシラン、ヘキシルトリアセトキシシラン、ヘキシルトリヒドロキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリクロロシラン、
フェニルトリアセトキシシラン、フェニルトリヒドロキシシランなどが挙げられる。
【0036】
二官能性シランとしては、ジ-tert-ブチルジクロロシラン、ジ-tert-ブチルジメトキシシラン、ジ-tert-ブチルジエトキシシラン、ジブチルジクロロシラン、ジブチルジメトキシシラン、ジブチルジエトキシシラン、ジクロロデシルメチルシラン、ジメトキシデシルメチルシラン、ジエトキシデシルメチルシラン、ジクロロジメチルシラン、ジメトキシジメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、 ジエチルジメトキシシ
ランなどが挙げられる。
【0037】
一官能性シランとしては、t-ブチルジメチルクロロシラン、t-ブチルジメチルメトキシシラン、t-ブチルジメチルエトキシシラン、t-ブチルジフェニルクロロシラン、t-ブチルジフェニルメトキシシラン、t-ブチルジフェニルエトキシシラン、クロロジメチルフェニルシラン、メトキシジメチルフェニルシラン、エトキシジメチルフェニルシラン、クロロトリメチルシラン、メトキシトリメチルシラン、エトキシトリメチルシラン、トリエチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリプロピルメトキシシラン、トリブチルメトキシシラン、トリペンチルメトキシシラン、トリフェニルクロロシラン、トリフェニルメトキシシラン、トリフェニルエトキシシランなどが挙げられる。
【0038】
次に、外添剤Bに関して具体的に説明する。外添剤Bの比誘電率と外添剤Aの比誘電率との関係が特定の範囲にあれば、外添剤Bは特に制限されず公知の材料を用いることができる。外添剤Bはシリカ粒子であることが好ましい。
シリカ粒子としては、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成された微粉末であり、いわゆる乾式法シリカ又はヒュームドシリカと称されるものである。例えば、四塩化ケイ素ガスの酸水素焔中における熱分解酸化反応を利用するもので、基礎となる反応式は次のようなものである。
SiCl+2H+O→SiO+4HCl
【0039】
この製造工程において、塩化アルミニウム又は塩化チタン等の他の金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いることによってシリカと他の金属酸化物の複合粒子を得ることも可能であり、シリカとしてはそれらも包含する。
ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成された市販のシリカ粒子としては、例えば、以下のものを例示できる。AEROSIL(日本アエロジル社)130、200、300、380、TT600、MOX170、MOX80、COK84、CAB-O-SiL(CABOT Co.社)M-5、MS-7、MS-75、HS-5、EH-5、Wacker HDK N 20(WACKER-CHEMIE GMBH社)V15、N20E、T30、T40、D-C Fine Silica(ダウコーニングCo.社)、Fransol(Fransil社)。
【0040】
さらに、シリカ粒子としては、疎水化処理シリカ粒子がより好ましい。疎水化処理シリカ粒子は、例えば前記ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成されたシリカ粒子に疎水化処理して得られる。
BET法で測定した窒素吸着によるシリカ粒子の比表面積が30m/g以上300m/g以下であることが好ましい。
外添剤Bの含有量は、トナー粒子100質量部に対し、好ましくは0.25質量部以上5.00質量部以下であり、より好ましくは0.30質量部以上4.50質量部以下である。
【0041】
外添剤B及びCは、疎水性を付与する目的で、表面処理されていてもよい。
疎水化処理剤としては、例えば、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、t-
ブチルジメチルクロロシラン、ビニルトリクロロシランなどのクロロシラン類;
テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、o-メチルフェニルトリメトキシシラン、p-メチルフェニルトリメトキシシラン、n-ブチルトリメトキシシラン、i-ブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、i-ブチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシランなどのアルコキシシラン類;
ヘキサメチルジシラザン、ヘキサエチルジシラザン、へキサプロピルジシラザン、ヘキサブチルジシラザン、ヘキサペンチルジシラザン、ヘキサヘキシルジシラザン、ヘキサシクロヘキシルジシラザン、ヘキサフェニルジシラザン、ジビニルテトラメチルジシラザン、ジメチルテトラビニルジシラザンなどのシラザン類;
ジメチルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、クロロアルキル変性シリコーンオイル、クロロフェニル変性シリコーンオイル、脂肪酸変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルコキシ変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、及び、末端反応性シリコーンオイルなどのシリコーンオイル;
ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサンなどのシロキサン類;
脂肪酸及びその金属塩として、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ドデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ペンタデシル酸、ステアリン酸、ヘプタデシル酸、アラキン酸、モンタン酸、オレイン酸、リノール酸、アラキドン酸などの長鎖脂肪酸、前記脂肪酸と亜鉛、鉄、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、ナトリウム、リチウムなどの金属との塩が挙げられる。
これらの中でも、アルコキシシラン類、シラザン類、シリコーンオイルは、疎水化処理を実施しやすいため、好ましく用いられる。これらの疎水化処理剤は、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0042】
以下、チタン酸ストロンチウム微粒子に関して具体的に説明する。
チタン酸ストロンチウム微粒子としてより好ましくは、直方体状(立方体状も含む)の粒子形状を有し、ペロブスカイト型結晶構造を有するチタン酸ストロンチウム微粒子である。
このようなチタン酸ストロンチウム微粒子は、焼結工程を経由せずに、主に水系媒体中にて製造される。このため、均一な粒径に制御しやすく好ましい。チタン酸ストロンチウム微粒子の結晶構造がペロブスカイト型(3種類の異なる元素で構成された面心立方格子)であることを確認するには、X線回折測定を行うことで確認することができる。
【0043】
現像特性を考慮し、また、摩擦帯電特性、環境による摩擦帯電量を制御できる点から、チタン酸ストロンチウム微粒子が表面処理されていることが好ましい。
表面処理剤としては、脂肪酸、脂肪酸金属塩又はオルガノシラン化合物などの処理剤が挙げられる。脂肪酸金属塩として、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシ
ウムなどが挙げられ、脂肪酸であるステアリン酸などでも同様の効果が得られる。
処理の方法は、処理する表面処理剤などを溶媒中に溶解、分散させ、その中にチタン酸ストロンチウム微粒子を添加し、撹拌しながら溶媒を除去して処理する湿式方法が挙げられる。また、カップリング剤、脂肪酸金属塩とチタン酸ストロンチウム微粒子を直接混合して撹拌しながら処理を行う乾式方法などが挙げられる。
【0044】
トナー粒子の製造方法について説明する。
トナー粒子の製造方法は公知の手段を用いることができ、混練粉砕法や湿式製造法を用いることができる。粒子径の均一化や形状制御性の観点からは湿式製造法を好ましく用いることができる。さらに湿式製造法には懸濁重合法、溶解懸濁法、乳化重合凝集法、乳化凝集法などを挙げることができ、本発明においては乳化凝集法を好ましく用いることができる。
【0045】
乳化凝集法は、まず結着樹脂の微粒子及び必要に応じて着色剤の微粒子などその他の材料の微粒子を、分散安定剤を含有する水系媒体中で分散混合する。水系媒体中には、界面活性剤が添加されていてもよい。そして、凝集剤を添加することによって所望のトナーの粒径となるまで凝集させ、その後又は凝集と同時に、樹脂微粒子間の融着を行う。さらに必要に応じて、熱による形状制御を行うことにより、トナー粒子を形成する方法である。
ここで、結着樹脂の微粒子は、組成の異なる樹脂よりなる2層以上の構成とする複数層で形成された複合粒子とすることもできる。例えば、乳化重合法、ミニエマルション重合法、転相乳化法などにより製造、またはいくつかの製法を組み合わせて製造することができる。
結着樹脂としては特に制限はなく、公知の樹脂を用いることができる。ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂などが好ましく、ビニル系樹脂がより好ましい。ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂及びその他の結着樹脂として、以下の樹脂又は重合体が例示できる。
【0046】
ポリスチレン、ポリビニルトルエンのようなスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン-プロピレン共重合体、スチレン-ビニルトルエン共重合体、スチレン-ビニルナフタリン共重合体、スチレン-アクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリル酸エチル共重合体、スチレン-アクリル酸ブチル共重合体、スチレン-アクリル酸オクチル共重合体、スチレン-アクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン-メタクリル酸メチル共重合体、スチレン-メタクリル酸エチル共重合体、スチレン-メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン-メタクリ酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン-ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン-ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン-ビニルメチルケトン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-マレイン酸エステル共重合体のようなスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルブチラール、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリル樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂。これら結着樹脂は単独で又は混合して使用できる。
【0047】
ビニル系樹脂には、例えば以下のモノマーを用いることができる。
スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-フェニルスチレン、p-クロルスチレン、3,4-ジクロルスチレン、p-エチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-n-ブチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、p-n-オクチルスチレン、p-n-ノニルスチレン、p-n-デシルスチレン、p-n-ドデシルスチレンのようなスチレン及びその誘導体などのスチレン系モノマー。
アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸-n-ブチル、アクリル酸イソブチ
ル、アクリル酸プロピル、アクリル酸-n-オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸-2-クロルエチル、アクリル酸フェニルのようなアクリル酸エステル。
メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸-n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸-n-オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸-2-エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルのようなα-メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類などのメタクリル酸エステル。
これらのなかでも、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルからなる群から選択される少なくとも一つと、スチレンとの重合体が好ましい。
【0048】
トナー粒子中に内添剤を含有させる場合は、樹脂微粒子に内添剤を含有したものとしてもよく、また、別途内添剤のみよりなる内添剤微粒子の分散液を調製し、当該内添剤微粒子を、樹脂微粒子を凝集させる際に共に凝集させてもよい。また、凝集時に組成の異なる樹脂微粒子を時間差で添加して凝集させることにより組成の異なる層構成のトナー粒子を作ることもできる。
【0049】
分散安定剤としては以下のものを使用することができる。無機分散安定剤として、リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタ珪酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナが挙げられる。
また、有機系分散安定剤としては、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、デンプンが挙げられる。
【0050】
界面活性剤として、公知のカチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤を使用することができる。
カチオン性界面活性剤の具体例としては、ドデシルアンモニウムブロマイド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ドデシルピリジニウムクロライド、ドデシルピリジニウムブロマイド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイドなどが挙げられる。
ノニオン性界面活性剤の具体例としては、ドデシルポリオキシエチレンエーテル、ヘキサデシルポリオキシエチレンエーテル、ノニルフェニルポリキオシエチレンエーテル、ラウリルポリオキシエチレンエーテル、ソルビタンモノオレアートポリオキシエチレンエーテル、スチリルフェニルポリオキシエチレンエーテル、モノデカノイルショ糖などが挙げられる。
アニオン性界面活性剤の具体例としては、ステアリン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウムなどの脂肪族石鹸や、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウムなどが挙げることができる。
【0051】
以下に本発明に係る物性の測定方法に関して記載する。
<微粒子A(外添剤A)の一次粒子の個数平均粒径の測定方法>
外添剤Aの一次粒子の個数平均粒径の測定は、走査型電子顕微鏡「S-4800」(商品名;日立製作所製)を用いて行う。外添剤Aが添加されたトナーを観察して、最大5万倍に拡大した視野において、ランダムに100個の外添剤Aの一次粒子の長径を測定して個数平均粒径を求める。観察倍率は、外添剤Aの大きさによって適宜調整する。
なお、外添剤Aを単独で入手できる場合は、外添剤Aを単独で測定することもできる。
トナー中に、有機ケイ素重合体粒子以外のケイ素含有物が含まれる場合、トナー観察において、外添剤の各粒子に対してEDS分析を行い、Si元素ピークの有無から、分析し
た粒子が有機ケイ素重合体粒子であるか否かを判断する。
トナー中に、有機ケイ素重合体粒子とシリカ微粒子の両方が含まれている場合には、Si、Oの元素含有量(atomic%)の比(Si/O比)を標品と比較することで有機ケイ素重合体粒子の同定を行う。有機ケイ素重合体粒子、シリカ微粒子それぞれの標品に対して、同条件でEDS分析を行い、Si、Oそれぞれの元素含有量(atomic%)を得る。有機ケイ素重合体粒子のSi/O比をAとし、シリカ微粒子のSi/O比をBとする。AがBに対して、有意に大きくなる測定条件を選択する。具体的には、標品に対して、同条件で10回の測定を行い、A,Bそれぞれの相加平均値を得る。得られた平均値がA/B>1.1となる測定条件を選択する。
判別対象の微粒子のSi/O比が[(A+B)/2]よりもA側にある場合に当該微粒子を有機ケイ素重合体粒子と判断する。
有機ケイ素重合体粒子の標品として、トスパール120A(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社)を、シリカ微粒子の標品として、HDK V15(旭化成)を用いる。
【0052】
<外添剤Bの一次粒子の個数平均粒径の測定方法>
外添剤Bの一次粒子の個数平均粒径の測定は、走査型電子顕微鏡「S-4800」(商品名;日立製作所製)を用いて行う。外添剤Bが添加されたトナーを観察して、最大5万倍に拡大した視野において、ランダムに100個の外添剤Bの一次粒子の長径を測定して個数平均粒径を求める。観察倍率は、外添剤Bの大きさによって適宜調整する。外添剤Bがシリカ微粒子である場合は、上記EDS分析により、有機ケイ素重合体と区別することができる。
なお、外添剤Bを単独で入手できる場合は、外添剤Bを単独で測定することもできる。
トナー1gをバイアル瓶に入れたクロロホルム31gに添加して分散させる。分散には超音波式ホモジナイザーを用いて30分間処理して分散液を作製する。処理条件は以下の通りである。
超音波処理装置:超音波式ホモジナイザーVP-050(タイテック株式会社製)
マイクロチップ:ステップ型マイクロチップ、先端径φ2mm
マイクロチップの先端位置:ガラスバイアルの中央部、且つバイアル底面から5mmの高さ
超音波条件:強度30%、30分。このとき、分散液が昇温しないようにバイアルを氷水で冷却しながら超音波を掛ける。
分散液をスイングローター用ガラスチューブ(50mL)に入れ替えて、遠心分離機(H-9R;株式会社コクサン社製)にて、58.33S-1、30分間の条件で遠心分離を行う。遠心分離後のガラスチューブ内では、トナーを構成していた材料毎に分離される。各材料を抽出して、真空条件下(40℃/24時間)で乾燥する。各材料の体積抵抗率を測定した後、本発明に必要な要件を満たしている外添剤Bを選別して、一次粒子の個数平均粒径を測定する。
【0053】
<外添剤Aの同定及びT3単位構造の確認>
トナー中に含まれる有機ケイ素重合体粒子(外添剤A)の構成化合物の組成と比率の同定は、熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析計(以下熱分解GC/MS)及びNMRを用いる。
まず、トナー中に、有機ケイ素重合体粒子以外のケイ素含有物が含まれる場合、トナーをクロロホルムなどの溶媒に分散させ、その後に遠心分離等で比重の差で有機ケイ素重合体粒子以外のケイ素含有物を除去する。その方法は以下の通りである。
まずトナー1gをバイアル瓶に入れたクロロホルム31gに添加して分散し、有機ケイ素重合体粒子以外のケイ素含有物をトナーから分離させる。分散には超音波式ホモジナイザーを用いて30分間処理して分散液を作製する。処理条件は以下の通りである。
超音波処理装置:超音波式ホモジナイザーVP-050(タイテック株式会社製)
マイクロチップ:ステップ型マイクロチップ、先端径φ2mm
マイクロチップの先端位置:ガラスバイアルの中央部、且つバイアル底面から5mmの高さ
超音波条件:強度30%、30分。このとき、分散液が昇温しないようにバイアルを氷水で冷却しながら超音波を掛ける。
分散液をスイングローター用ガラスチューブ(50mL)に入れ替えて、遠心分離機(H-9R;株式会社コクサン社製)にて、58.33S-1、30分間の条件で遠心分離を行う。遠心分離後のガラスチューブ内では、有機ケイ素重合体粒子以外のケイ素含有物と、トナーから有機ケイ素重合体粒子以外のケイ素含有物が除かれた残渣が分離している。トナーから有機ケイ素重合体粒子以外のケイ素含有物が除かれた残渣を抽出して、真空条件下(40℃/24時間)で乾燥し、トナーから有機ケイ素重合体粒子以外のケイ素含有物を除去したサンプルを得る。
上記サンプル又は有機ケイ素重合体粒子を用いて有機ケイ素重合体粒子の構成化合物の存在量比及び、有機ケイ素重合体粒子中のT3単位構造の割合を、固体29Si-NMRで測定・算出する。
有機ケイ素重合体粒子の構成化合物の種類の分析は熱分解GC/MSが用いられる。
トナーを550℃~700℃程度で熱分解させた際に生じる、有機ケイ素重合体粒子由来の分解物の成分のマススペクトルを分析する事で、有機ケイ素重合体粒子の構成化合物の種類を同定することができる。
[熱分解GC/MSの測定条件]
熱分解装置:JPS-700(日本分析工業)
分解温度:590℃
GC/MS装置:Focus GC/ISQ (Thermo Fisher)
カラム:HP-5MS 長さ60m、内径0.25mm、膜厚0.25μm
注入口温度:200℃
フロー圧:100kPa
スプリット:50mL/min
MSイオン化:EI
イオン源温度:200℃ Mass Range 45-650
続いて同定した有機ケイ素重合体粒子の構成化合物の存在量比を、固体29Si-NMRで測定・算出する。
固体29Si-NMRでは、有機ケイ素重合体粒子の構成化合物のSiに結合する官能基の構造によって、異なるシフト領域にピークが検出される。
各ピークの官能基の構造は標準サンプルを用いて特定することができる。また得られたピーク面積から各構成化合物の存在量比を算出することができる。全ピーク面積に対してT3単位構造のピーク面積の割合を計算によって求めることができる。
固体29Si-NMRの測定条件は、例えば下記の通りである。
装置:JNM-ECX5002 (JEOL RESONANCE)
温度:室温
測定法:DDMAS法 29Si 45°
試料管:ジルコニア3.2mmφ
試料:試験管に粉末状態で充填
試料回転数:10kHz
relaxation delay :180s
Scan:2000
該測定後に、有機ケイ素重合体粒子のクロロホルム不溶分の、置換基及び結合基の異なる複数のシラン成分をカーブフィティングにて下記X1構造、X2構造、X3構造、及びX4構造にピーク分離して、それぞれピーク面積を算出する。
なお、下記X3構造が本発明におけるT3単位構造である。
X1構造:(Ri)(Rj)(Rk)SiO1/2 (A1)
X2構造:(Rg)(Rh)Si(O1/2 (A2)
X3構造:RmSi(O1/2 (A3)
X4構造:Si(O1/2 (A4)
【0054】
【化2】
【0055】
該式(A1)、(A2)及び(A3)中のRi、Rj、Rk、Rg、Rh、Rmはケイ素に結合している、炭素数1~6の炭化水素基などの有機基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アセトキシ基又はアルコキシ基を示す。
また、上記Rで表される炭化水素基は、13C-NMRにより確認する。
13C-NMR(固体)の測定条件≫
装置:JEOLRESONANCE製JNM-ECX500II
試料管:3.2mmφ
試料:試験管に粉末状態で充填
測定温度:室温
パルスモード:CP/MAS
測定核周波数:123.25MHz(13C)
基準物質:アダマンタン(外部標準:29.5ppm)
試料回転数:20kHz
コンタクト時間:2ms
遅延時間:2s
積算回数:1024回
該方法にて、ケイ素原子に結合しているメチル基(Si-CH)、エチル基(Si-C)、プロピル基(Si-C)、ブチル基(Si-C)、ペンチル基(Si-C11)、ヘキシル基(Si-C13)またはフェニル基(Si-C)などに起因するシグナルの有無により、上記Rで表される炭化水素基を確認する。
なお、構造をさらに詳細に確認する必要がある場合、上記13C-NMR及び29Si-NMRの測定結果と共にH-NMRの測定結果によって同定してもよい。
【0056】
<トナー中に含まれる外添剤Aの定量>
トナー中に含まれる有機ケイ素重合体粒子(外添剤A)の含有量は以下の方法で求めることができる。
蛍光X線の測定は、JIS K 0119-1969に準ずるが、具体的には以下の通り
である。測定装置としては、波長分散型蛍光X線分析装置「Axios」(PANalytical社製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「SuperQ ver.5.0L」(PANalytical社製)を用いる。なお、X
線管球のアノードとしてはRhを用い、測定雰囲気は真空、測定径(コリメーターマスク径)は27mmとする。測定は、Omnianのメソッドを用いて元素FからUまでの範囲を測定し、軽元素を測定する場合にはプロポーショナルカウンタ(PC)、重元素を測定する場合にはシンチレーションカウンタ(SC)で検出する。
また、X線発生装置の加速電圧、電流値は、出力2.4kWとなるように設定する。測定サンプルとしては、専用のプレス用アルミリングの中にトナー4gを入れて平らにならし、錠剤成型圧縮機「BRE-32」(前川試験機製作所社製)を用いて、20MPaで、60秒間加圧し、厚さ2mm、直径39mmに成型したペレットを用いる。
前述条件で成形したペレットにX線を照射して、発生する特性X線(蛍光X線)を分光素子にて分光する。次に、サンプルに含まれる各元素固有の波長に対応する角度に分光された蛍光X線の強度を、FP法(ファンダメンタルパラメータ法)により分析し、トナーに含まれる各元素の含有比率を分析結果として得て、トナー中のケイ素原子の含有量を求める。
固体29SiNMR及び熱分解GC/MSなどを用いて構造を特定した有機ケイ素重合体粒子の構成化合物について、その分子量からケイ素の質量比を求める。
蛍光X線で求めたトナー中のケイ素の含有量と、固体29SiNMR及び熱分解GC/MSなどを用いて構造を特定した有機ケイ素重合体粒子の構成化合物中のケイ素の含有量比の関係から、計算によってトナー中の有機ケイ素重合体粒子の含有量を求めることができる。
トナー中に、有機ケイ素重合体粒子以外のケイ素含有物が含まれる場合、上記と同様の方法で、トナーから有機ケイ素重合体粒子以外のケイ素含有物を除去したサンプルを得て、トナー中に含まれる有機ケイ素重合体粒子を定量することができる。
【0057】
<外添剤の比誘電率の測定方法>
外添剤粒子の比誘電率の測定には、電源、電流計としてSI 1260 electrochemical interface(東陽テクニカ製)、電流アンプとして1296 dielectric interface(東陽テクニカ製)を用いる。
測定試料としては、錠剤成型器を用いて、試料を厚さ3.0±0.5mmの円板状に加熱成型した試料を用いる。上記試料の上下面にマスク蒸着を用いて、直径10mmの円形状に金電極を作製する。
作製した測定試料に測定電極を取り付け、100mVp-pの交流電圧を周波数10Hzで印加し、キャパシタンスを測定する。下記式から測定試料の比誘電率εを算出する。ε=dC/ε
d:測定試料の厚さ(m)
C:キャパシタンス(F)
ε:真空の誘電率(F/m)
S:電極面積(m
【0058】
<外添剤Aの形状係数SF-1>
外添剤Aの形状係数SF-1は走査型電子顕微鏡(SEM)「S-4800」(日立製作所製)を用いて、外添剤が外添されたトナーを観察し、以下のように算出する。
10万倍~20万倍に拡大した視野において、画像処理ソフト「Image-Pro Plus5.1J」(MediaCybernetics社製)を使用し、100個の外添剤Aの一次粒子の周囲長及び面積を算出する。なお観察する外添剤が外添剤Aであるかどうかは、「外添剤Aの一次粒子の個数平均粒径の測定方法」記載の方法により区別する。
SF-1は下記の式にて算出し、その平均値をSF-1とする。
SF-1=(粒子の最大長)/粒子の面積×π/4×100
【0059】
<外添剤Bの被覆率>
被覆率は、日立超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡S-4800((株)日立ハイテクノロジーズ)にて撮影されたトナー表面画像を、画像解析ソフトImage-ProPlus ver.5.0((株)日本ローパー)により解析して算出する。S-4800
の画像撮影条件は以下のとおりである。
(1)試料作製
試料台(アルミニウム試料台15mm×6mm)に導電性ペーストを薄く塗り、その上にトナーを吹きつける。さらにエアブローして、余分なトナーを試料台から除去し十分乾燥させる。試料台を試料ホルダにセットし、試料高さゲージにより試料台高さを36mmに調節する。
(2)S-4800観察条件設定
被覆率の算出は、S-4800の反射電子像観察により得られた画像を用いて行う。被覆率を測定する際には、予めエネルギー分散型X線分析装置(EDX)による元素分析を行い、トナー表面における外添剤B以外の粒子を除外した上で測定を行う。なお、外添剤Bがシリカである場合、有機ケイ素重合体粒子と外添剤Bとは、前述したSEMによる形状観察及びEDSによる元素分析を組み合わせて区別すことができる。
S-4800の筺体に取り付けられているアンチコンタミネーショントラップに液体窒素を溢れるまで注入し、30分間置く。S-4800の「PC-SEM」を起動し、フラッシング(電子源であるFEチップの清浄化)を行う。画面上のコントロールパネルの加速電圧表示部分をクリックし、[フラッシング]ボタンを押し、フラッシング実行ダイアログを開く。フラッシング強度が2であることを確認し、実行する。フラッシングによるエミッション電流が20~40μAであることを確認する。試料ホルダをS-4800筺体の試料室に挿入する。コントロールパネル上の[原点]を押し試料ホルダを観察位置に移動させる。
加速電圧表示部をクリックしてHV設定ダイアログを開き、加速電圧を[1.1kV]、エミッション電流を[20μA]に設定する。オペレーションパネルの[基本]のタブ内にて、信号選択を[SE]に設置し、SE検出器を[上(U)]および[+BSE]を選択し、[+BSE]の右の選択ボックスで[L.A.100]を選択し、反射電子像で観察するモードにする。同じくオペレーションパネルの[基本]のタブ内にて、電子光学系条件ブロックのプローブ電流を[Normal]に、焦点モードを[UHR]に、WDを[4.5mm]に設定する。コントロールパネルの加速電圧表示部の[ON]ボタンを押し、加速電圧を印加する。
(3)焦点調整
操作パネルのフォーカスつまみ[COARSE]を回転させ、ある程度焦点が合ったところでアパーチャアライメントの調整を行う。コントロールパネルの[Align]をクリックし、アライメントダイアログを表示し、[ビーム]を選択する。操作パネルのSTIGMA/ALIGNMENTつまみ(X,Y)を回転し、表示されるビームを同心円の中心に移動させる。次に[アパーチャ]を選択し、STIGMA/ALIGNMENTつまみ(X,Y)を一つずつ回し、像の動きを止める又は最小の動きになるように合わせる。アパーチャダイアログを閉じ、オートフォーカスで、ピントを合わせる。その後、倍率を50,000(50k)倍に設定し、上記と同様にフォーカスつまみ、STIGMA/ALIGNMENTつまみを使用して焦点調整を行い、再度オートフォーカスでピントを合わせる。この操作を再度繰り返し、ピントを合わせる。ここで、観察面の傾斜角度が大きいと被覆率の測定精度が低くなりやすいので、ピント調整の際に観察面全体のピントが同時に合うものを選ぶことで、表面の傾斜が極力無いものを選択して解析する。
(4)画像保存
ABCモードで明るさ合わせを行い、サイズ640×480ピクセルで写真撮影して保存する。この画像ファイルを用いて下記の解析を行う。トナー一つに対して写真を1枚撮
影し、少なくともトナー25粒子以上について画像を得る。
(5)画像解析
本発明では下記解析ソフトを用いて、上述した手法で得た画像を2値化処理することで被覆率を算出する。このとき、上記一画面を正方形で12分割してそれぞれ解析する。画像解析ソフトImage-Pro Plus ver.5.0の解析条件は以下のとおりである。
ソフトImage-ProPlus5.1J
ツールバーの「測定」から「カウント/サイズ」、「オプション」の順に選択し、二値化条件を設定する。オブジェト抽出オプションの中で8連結を選択し、平滑化を0とする。その他、予め選別、穴を埋める、包括線は選択せず、「境界線を除外」は「なし」とする。ツールバーの「測定」から「測定項目」を選択し、面積の選別レンジに2~10と入力する。
被覆率の計算は、正方形の領域を囲って行う。このとき、領域の面積(C)は24,000~26,000ピクセルになるようにする。「処理」-2値化で自動2値化し、外添剤B(例えばシリカ)の無い領域の面積の総和(D)を算出する。
正方形の領域の面積C、外添剤Bの無い領域の面積の総和Dから下記式で被覆率が求められる。
被覆率(%)=100-(D/C×100)
得られた全データの平均値を被覆率とする。
【0060】
上記比誘電率などの測定方法において、トナー粒子の表面から分離した外添剤を測定試料とする場合、外添剤のトナー粒子からの分離は以下の手順で行う。
1)非磁性トナーの場合
イオン交換水100mLにスクロース(キシダ化学製)160gを加え、湯せんをしながら溶解させショ糖濃厚液を調製する。遠心分離用チューブに該ショ糖濃厚液31gと、6mLのコンタミノンNを入れ、分散液を作製する。この分散液にトナー1gを添加し、スパチュラなどでトナーのかたまりをほぐす。
遠心分離用チューブを上記シェイカーにて1分当たり350往復の条件で20分間振盪する。振盪後、溶液をスイングローター用ガラスチューブ(50mL)に入れ替えて、遠心分離機(H-9R;株式会社コクサン社製)にて、58.33S-1、30分間の条件で遠心分離を行う。遠心分離後のガラスチューブ内においては、最上層にはトナーが存在し、下層の水溶液側には外添剤が存在する。下層の水溶液を採取して、遠心分離を行い、ショ糖と外添剤を分離し、外添剤を採集する。必要に応じて、遠心分離を繰り返し行い、分離を十分に行った後、分散液を乾燥し、外添剤を採集する。
複数種の外添剤が含まれる場合、採集された外添剤から、遠心分離法などを利用して、目的の外添剤を選別すればよい。
具体的には、トナー1gをバイアル瓶に入れたクロロホルム31gに添加して分散させる。分散には超音波式ホモジナイザーを用いて30分間処理して分散液を作製する。処理条件は以下の通りである。
超音波処理装置:超音波式ホモジナイザーVP-050(タイテック株式会社製)
マイクロチップ:ステップ型マイクロチップ、先端径φ2mm
マイクロチップの先端位置:ガラスバイアルの中央部、且つバイアル底面から5mmの高さ
超音波条件:強度30%、30分。このとき、分散液が昇温しないようにバイアルを氷水で冷却しながら超音波を掛ける。
分散液をスイングローター用ガラスチューブ(50mL)に入れ替えて、遠心分離機(H-9R;株式会社コクサン社製)にて、58.33S-1、30分間の条件で遠心分離を行う。遠心分離後のガラスチューブ内では、トナーを構成していた材料毎に分離される。各材料を抽出して、真空条件下(40℃/24時間)で乾燥する。各材料の体積抵抗率を測定した後、本発明に必要な要件を満たしている外添剤A及びBを選別する。
【0061】
2)磁性トナーの場合
まず、イオン交換水100mLに、コンタミノンN(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業(株)製)を6mL入れ分散媒を作製する。この分散媒に、トナー5gを添加し、超音波分散機(アズワン(株)VS-150)で5分間分散させる。その後、いわき産業(株)製「KM Shaker」(model: V.SX)にセットし、1分当たり350往復の条件で20分間振盪する。
その後、ネオジム磁石を用いてトナー粒子を拘束し、上澄みを採取する。この上澄みを乾燥させることにより、外添剤を採集する。十分な量の外添剤を採集することができない場合には、この作業を繰り返して行う。
非磁性トナーの場合と同様に、複数種の外添剤が含まれる場合、採集された外添剤から、遠心分離法などを利用して、目的の外添剤を選別する。
【0062】
<トナー表面における外添剤A,Bの分散度評価指数>
トナー表面における外添剤A,Bの分散度評価指数の算出は、走査型電子顕微鏡「S-4800」を用いて行う。1万倍に拡大した視野で、外添剤が外添されたトナーを、同一視野で加速電圧1.0kVで観察した。観察した画像から、画像処理ソフト「ImageJ」を使用し、以下のように算出した。
外添剤のみが抽出されるように2値化し、外添剤個数n、全外添剤に対し重心座標を算出し、各外添剤に対する最近接の外添剤との距離dn minを算出した。画像内の外添剤間の最近接距離の平均値をd aveとすると、分散度は下記式で示される。
ランダムに観察した50個のトナーについて上記の手順にて分散度をもとめ、その平均値を分散度評価指数とする。
【0063】
【0064】
トナー中の、外添剤A及びBは「外添剤Aの一次粒子の個数平均粒径の測定方法」に記載の方法と同様にして区別する。トナー観察において、外添剤の各粒子に対してEDS分析を行い、Si元素ピークの有無から、分析した粒子が外添剤A及びBであるか否かを判断する。
トナー中に、外添剤Cが含まれる場合、トナー観察において、外添剤の各粒子に対してEDS分析を行い、Ti、Oの元素含有量(atomic%)の比(Ti/O比)、またはSr、Ti、Oの元素含有量(atomic%)の比(Sr/Ti/O比)を標品と比較することで微粒子Cの同定を行う。酸化チタンの標品は、富士フイルム和光純薬株式会社(CAS.No:1317-80-2)より、チタン酸ストロンチウムの標品は、富士フイルム和光純薬株式会社(CAS.No:12060-59-2)よりそれぞれ入手する。
【0065】
<外添剤の固着率>
50mL容量のバイアルに「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液)20gを秤量し、トナー1gと混合する。
いわき産業(株)製「KM Shaker」(model: V.SX)にセットし、speedを50に設定して30秒間振とうする。これにより、外添剤の固着状態に依っては、外添剤がトナー粒子表面から、分散液側へ移行する。
その後、非磁性トナーの場合は、遠心分離機(H-9R;株式会社コクサン社製)(1
6.67s-1にて5分間)にて、トナー粒子と上澄み液に移行した外添剤を分離する。なお、磁性トナーの場合は、ネオジム磁石を用いてトナー粒子を拘束した状態で、上澄み液に移行した外添剤を分離させ、沈殿しているトナー粒子を真空乾燥(40℃/24時間)することで乾固させて、サンプルとする。
トナーを下記プレス成型によりペレット化してサンプルとする。上記処理を施す前後のトナーのサンプルに関して、下記に示す波長分散型蛍光X線分析(XRF)により、分析対象の外添剤固有の元素の定量を行う。そして、上記処理によって上澄み側へ移行せずにトナー粒子表面に残る外添剤の量を下記式から求め、固着率とする。サンプル100個の相加平均値を採用する。
(i)使用装置の例
蛍光X線分析装置3080(理学電気(株))
(ii)サンプル調製
サンプルの調製は、試料プレス成型機MAEKAWA Testing Machine(MFG Co,LTD製)を使用する。アルミリング(型番:3481E1)にトナー0.5gを入れて5.0トンの荷重に設定し1minプレスし、ペレット化させる。
(iii)測定条件
測定径:10φ
測定電位、電圧 50kV、50~70mA
2θ角度 25.12°
結晶板 LiF
測定時間 60秒
(iv)外添剤の固着率の算出方法について
[式]外添剤の固着率(%)=(処理後トナーの外添剤由来元素強度/処理前トナーの外添剤由来元素強度)×100
外添剤A、Bと外添剤Cの識別はXRF測定による外添剤固有元素の定量により行う。
外添剤AとBの識別は、外添剤固有元素の定量により行うことが困難である場合は、各外添剤の粒径により行う。具体的には、上記遠心分離により採取した上澄み液を、CPSInstruments Inc.製ディスク遠心式粒度分布測定装置DC24000で
測定する。これにより上澄み中の外添剤の存在量を粒径ごとに定量し、元のトナー粒子中に存在する外添剤量との差分から、トナー粒子表面への外添剤の固着率を導出する。
以下にその手順の詳細を示す。
シリンジフィルター(直径:13mm/孔径0.45μm)(アドバンテック東洋(株)製)を取り付けたオールプラスティックディスポシリンジ(東京硝子器械(株)製)の先に、CPS社製の測定装置専用シリンジ針を取り付けて、上澄み液を0.1mL採取する。
シリンジで採取した上澄み液をディスク遠心式粒度分布測定装置DC24000に注入し、外添剤粒子の存在量を粒径ごとに測定する。
測定方法の詳細は以下の通りである。
まず、CPSソフト上のMotor Controlで、ディスクを24000rpm
で回転させる。その後、Procedure Definitionsから、下記条件を
設定する。
(1)Sample parameter
・Maximum Diameter:0.5μm
・Minimum Diameter:0.05μm
・Particle Density:2.0-2.2g/mL(サンプルによって適宜
調整する)
・Particle Refractive Index:1.43
・Particle Absorption:0K
・Non-Sphericity Factor:1.1
(2)Calibration Standard Parameters
・Peak Diameter:0.226μm
・Half Height Peak Width:0.1μm
・Particle Density:1.389g/mL
・Fluid Density:1.059g/mL
・Fluid Refractive Index:1.369
・Fluid Viscosity:1.1cps
上記条件を設定後、CPS Instruments Inc.製オートグラジェントメーカーAG300を使用し、8質量%ショ糖水溶液と24質量%ショ糖水溶液による密度勾配溶液を作製し、測定容器内に15mL注入する。
注入後、密度勾配溶液の蒸発を防ぐため、1.0mLのドデカン(キシダ化学(株)製)を注入して油膜を形成し、装置安定の為、30分以上待機する。
待機後、校正用標準粒子(重量基準中心粒径:0.226μm)を0.1mLシリンジで測定装置内に注入し、キャリブレーションを行う。その後、上記採取した上澄み液を装置に注入し、添剤粒子の存在量を粒径ごとに測定する。
具体的には各粒径ごとに存在するピークの面積から、外添剤単体で測定し作成した検量線の面積値を比較し、割合を計算することで定量する。
【0066】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は何らこれに制約されるものではない。なお、実施例及び比較例の部数は特に断りが無い場合、すべて質量基準である。
【0067】
<外添剤A1の製造例>
(第一工程)
温度計、攪拌機を備えた反応容器に、水:360.0部を入れ、濃度5.0質量%の塩酸:15.0部を添加して均一溶液とした。これを温度25℃で撹拌しながらメチルトリメトキシシラン133.0部を添加し、5時間撹拌した後、濾過してシラノール化合物またはその部分縮合物を含む透明な反応液を得た。
(第二工程)
温度計、攪拌機、滴下装置を備えた反応容器に、水:540.0部を入れ、濃度10.0質量%のアンモニア水:17.0部を添加して均一溶液とした。これを温度35℃で撹拌しながら第一工程で得られた反応液100部を0.5時間かけて滴下し、6時間撹拌し懸濁液を得た。得られた懸濁液を遠心分離器にかけて微粒子を沈降させ取り出し、温度200℃の乾燥機で24時間乾燥させてポリアルキルシルセスキオキサンからなる外添剤A1を得た。
得られた外添剤A1は、走査電子顕微鏡観測より個数平均粒径100nmであり、固体29Si-NMR測定により、RSiO3/2で表されるT3単位構造のピークが見ら
れた。Rはメチル基であり、T3単位構造を有するケイ素に由来するピークの面積の割合は、1.00であった。外添剤A1の物性を表1に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
<外添剤A2~A9の製造例>
シラン化合物、反応開始温度、触媒添加量、滴下時間を表1に記載の様に変更した以外は、外添剤A1の製造例と同様にして、外添剤A2~A9を得た。物性を表1に示す。
【0070】
<外添剤A10の製造例>
外添剤A10としてキャボット社製TGC-191を使用した。外添剤A10の物性を表1に示す。
【0071】
<外添剤A11~A15の製造例>
シラン化合物、反応開始温度、触媒添加量、滴下時間を表1に記載の様に変更した以外は、外添剤A1の製造例と同様にして、外添剤A11~A15を得た。物性を表1に示す。
【0072】
<外添剤B1~B6>
外添剤B1~B6として表2に示す粒子を使用した。
【0073】
【表2】


表中、粒径は、一次粒子の個数平均粒径である。
なお、シリカを主成分とする外添剤粒子は、各粒径のシリカ微粒子100部に対してヘキサメチルジシラザン(HMDS)30部及びジメチルシリコーンオイル10部で疎水化処理したものである。
またポリメチルシルセスキオキサンを主成分とする外添剤粒子の製法を以下に示す。
まず反応容器に水336部及び酸触媒としてドデシルベンゼンスルホン酸3部を仕込み、攪拌しながら、シラノール形成性ケイ素化合物としてメチルトリメトキシシラン45部を10分間かけて滴下し、加水分解反応及び縮合反応を同時に行った。滴下中、反応系の温度上昇を20~25℃に制御した。
メチルトリメトキシシランの滴下終了後、反応液の温度を20~25℃に制御しながら、攪拌を続け、メチルトリメトキシシラン滴下開始から24時間後に、5%水酸化ナトリウム水溶液7.4部を投入して触媒を中和し、加水分解反応及び縮合反応を終了させて水性懸濁液を得た。得られた水性懸濁液をスプレードライヤーで乾燥処理して、ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子を得た。所望の比誘電率に合わせ、滴下するメチルトリメトキシシランに適宜テトラメトキシシランを混合し調整した。
【0074】
<外添剤C1、C2の製造例>
外添剤C1、C2として表3に示す粒子を使用した。
【0075】
【表3】


表中、粒径は、一次粒子の個数平均粒径である。
【0076】
<トナー粒子1の製造例>
スチレン89.5部、アクリル酸ブチル9.2部、アクリル酸1.3部、n-ラウリル
メルカプタン3.2部を混合し溶解させた。この溶液にネオゲンRK(第一工業製薬社製)1.5部のイオン交換水150部の水溶液を添加して、分散させた。さらに10分間ゆっくりと撹拌しながら、過硫酸カリウム0.3部のイオン交換水10部の水溶液を添加した。窒素置換をした後、70℃で6時間乳化重合を行った。重合終了後、反応液を室温まで冷却し、イオン交換水を添加することで固形分濃度が12.5質量%、体積基準のメジアン径が0.2μmの樹脂粒子分散液を得た。
【0077】
離型剤(ベヘン酸ベヘニル、融点:72.1℃)100部、ネオゲンRK15部をイオン交換水385部に混合させ、湿式ジェットミル JN100((株)常光製)を用いて約1時間分散して離型剤分散液を得た。離型剤分散液の濃度は20質量%であった。
【0078】
着色剤としてカーボンブラック「Nipex35(オリオンエンジニアドカーボンズ社製)」100部、ネオゲンRK15部をイオン交換水885部に混合させ、湿式ジェットミル JN100を用いて約1時間分散して着色剤分散液を得た。
【0079】
樹脂粒子分散液265部、離型剤分散液10部、着色剤分散液10部をホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて分散させた。撹拌しながら容器内の温度を30℃に調整して、1mol/Lの塩酸を加えてpH=5.0に調整した。3分間放置した後に昇温を開始し、50℃まで昇温し、会合粒子の生成を行った。その状態で、「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)にて会合粒子の粒径を測定した。重量平均粒径が6.5μmになった時点で、1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH=8.0に調整して粒子成長を停止させた。
その後、95℃まで昇温して会合粒子の融着と球形化を行った。平均円形度が0.980に到達した時点で降温を開始し、30℃まで降温してトナー粒子分散液1を得た。
得られたトナー粒子分散液1に塩酸を添加してpH=1.5以下に調整して1時間撹拌放置してから加圧ろ過器で固液分離し、トナーケーキを得た。これをイオン交換水でリスラリーして再び分散液とした後に、前述のろ過器で固液分離した。リスラリーと固液分離とを、ろ液の電気伝導度が5.0μS/cm以下となるまで繰り返した後に、最終的に固液分離してトナーケーキを得た。
得られたトナーケーキは気流乾燥機フラッシュジェットドライヤー(セイシン企業製)にて乾燥を行った。乾燥の条件は吹き込み温度90℃、乾燥機出口温度40℃とし、トナーケーキの供給速度はトナーケーキの含水率に応じて出口温度が40℃から外れない速度に調整した。さらにコアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて微粗粉をカットし、トナー粒子1を得た。
【0080】
<トナー1の製造例>
ジャケット内に7℃の水を通水したヘンシェルミキサ(日本コークス工業株式会社製FM10C型)中にトナー粒子1: 100部、外添剤A1: 1.0部を投入した。
ジャケット内の水温が7℃±1℃で安定してから、回転羽根の周速49m/secで5分間混合した。この際ヘンシェルミキサの槽内温度が25℃を超えないようジャケット内の通水量を適宜調整した。
次にヘンシェルミキサ中に外添剤C1: 0.2部を追加投入し、ジャケット内の水温が7℃±1℃で安定してから、回転羽根の周速38m/secで3分間混合した。この際ヘンシェルミキサの槽内温度が25℃を超えないようジャケット内の通水量を適宜調整した。
次にヘンシェルミキサ中に外添剤B1: 1.5部を追加投入し、ジャケット内の水温が7℃±1℃で安定してから、回転羽根の周速38m/secで5分間混合しトナー混合物1を得た。この際ヘンシェルミキサの槽内温度が25℃を超えないようジャケット内の通水量を適宜調整した。
得られたトナー混合物1を目開き75μmのメッシュで篩い、トナー1を得た。トナー1の物性を表4に示す。
【0081】
【表4】
【0082】
<トナー2~39の製造例>
トナー1の製造例においてトナーの外添処方及び外添条件を表5の様に変更した以外は同様してトナー2~39を得た。物性を表4に示す。なお、トナー27~39は比較例用のトナーである。
【0083】
【表5】
【0084】
<実施例1>
キヤノン製レーザービームプリンタLBP652Cの定着温度、プロセススピードが調整できるように改造し、またカートリッジの容器容量を拡大しトナー充填量を増加してトナー1を充填し以下の評価を行った。
【0085】
[耐久現像性の評価]
耐久現像性の評価はトナー1を充填したカートリッジ及び本体を高温高湿環境下(温度32.5℃、湿度80%RH)に24時間放置した後実施した。
画像濃度の測定は5mm角のベタ黒画像を出力し、反射濃度計であるマクベス濃度計(マクベス社製)でSPIフィルターを使用して測定した。耐久条件はBk印字率1.5%、1枚間欠で耐久開始時、12000枚出力時及び24000枚出力時の画像濃度を比較し、その低下率を算出して以下の基準で評価した。C以上を良好と判断した。
A:画像濃度低下率が3%未満
B:画像濃度低下率が3%以上5%未満
C:画像濃度低下率が5%以上7%未満
D:画像濃度低下率が7%以上
評価結果を表6に示す。
【0086】
[感光体融着性(ドラム融着)の評価]
上記耐久現像性評価の12000枚出力時及び24000枚出力時、感光体表面の外添剤凝集塊融着を、ルーペを用いて観察した。評価基準は以下の通りである。C以上を良好と判断した。
A:融着物が全く存在しない
B:感光体表面に、0.10mm径未満の融着物が存在する
C:感光体表面に、0.10mm径以上0.40mm径未満の融着物が存在する
D:感光体表面に、0.40mm径以上の融着物が存在する
評価結果を表6に示す。
【0087】
[現像ゴースト]規制不良による
上記耐久現像性評価の12000枚出力時及び24000枚出力時、複数個の10mm×10mmのベタ画像を転写紙の前半分に形成し、後ろ半分には2ドット3スペースのハーフトーン画像を形成した。ハーフトーン画像上に前記ベタ画像の痕跡がどの程度出るかを目視で判断した。C以上を良好と判断した。
A:ゴーストが未発生
B:ゴーストがごく軽微に発生
C:ゴーストが軽微に発生
D:ゴーストが顕著に発生
評価結果を表6に示す。
【0088】
【表6】
【0089】
<実施例2~26、比較例1~13>
実施例1においてトナーを2~39に変更した以外は同様にして評価を実施した。評価結果を表6に示す。なお、以下、実施例6及び9~26は、それぞれ参考例6及び9~26とする。