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特許7443052カテーテルの拡張可能な遠位端の伸長の検出
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】カテーテルの拡張可能な遠位端の伸長の検出
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/12 20060101AFI20240227BHJP
【FI】
A61B18/12
【請求項の数】 12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019235855
(22)【出願日】2019-12-26
(65)【公開番号】P2020108769
(43)【公開日】2020-07-16
【審査請求日】2022-10-25
(31)【優先権主張番号】16/234,604
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・ゴバリ
(72)【発明者】
【氏名】アビグドール・ローゼンバーグ
【審査官】北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-210590(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01319365(EP,A2)
【文献】特表2018-519046(JP,A)
【文献】特表2018-521759(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0035341(US,A1)
【文献】特開2009-090114(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00 - 18/28
5/05
A61N 1/00 - 1/44
A61M 25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の臓器腔内に挿入するためのシャフトの遠位端に連結された拡張可能な遠位端アセンブリと、
前記遠位端アセンブリの近位端に位置する近位位置センサと、
前記遠位端アセンブリの遠位端に位置する遠位位置センサと、
プロセッサであって、
前記近位位置センサから受信した信号に基づいて、前記プロセッサが使用する座標系における前記近位位置センサの位置及び長手方向を推定し、
前記遠位位置センサから受信した信号に基づいて、前記座標系内における前記遠位位置センサの位置を推定し、
推定された前記長手方向によって画成される軸線上に前記遠位位置センサの推定された前記位置を投影して、前記遠位位置センサの投影位置を求め
前記近位位置センサの推定された前記位置と前記遠位位置センサの前記投影位置との間の距離を計算することによって、前記遠位端アセンブリの伸長を計算する、ように構成されているプロセッサと、
を備えるシステム。
【請求項2】
前記近位位置センサ及び前記遠位位置センサは、磁気センサである、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
計算された前記伸長を使用して、前記プロセッサは、前記遠位端アセンブリの楕円率を推定するように更に構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記遠位端アセンブリは、バスケットを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記遠位端アセンブリは、バルーンを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記プロセッサが、前記伸長の計算に基づいて、前記遠位端アセンブリの伸長度を、前記シャフトを操作する医師に対して提示するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
方法であって、
プロセッサにおいて、患者の臓器腔内に挿入するためのシャフトの遠位端に連結された拡張可能な遠位端アセンブリの近位端に位置する近位位置センサから、及び、前記遠位端アセンブリの遠位端に位置する遠位位置センサから、信号を受信することと、
前記近位位置センサから受信した前記信号に基づいて、前記プロセッサが使用する座標系における前記近位位置センサの位置及び長手方向を推定することと、
前記遠位位置センサから受信した前記信号に基づいて、前記座標系内における前記遠位位置センサの位置を推定することと、
推定された前記長手方向によって画成される軸線上に前記遠位位置センサの推定された前記位置を投影して、前記遠位位置センサの投影位置を求めることと、
前記近位位置センサの推定された前記位置と前記遠位位置センサの前記投影位置との間の距離を計算することによって、前記遠位端アセンブリの伸長を計算することと、
を含む方法。
【請求項8】
前記信号を受信することは、磁気センサから信号を受信することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
計算された前記伸長を使用して、前記遠位端アセンブリの楕円率を推定することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記遠位端アセンブリは、バスケットを備える、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記遠位端アセンブリは、バルーンを備える、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記伸長を計算することが、前記遠位端アセンブリの伸長度を、前記シャフトを操作する医師に対して提示することを含む、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して侵襲性医療用プローブに関し、詳細には心臓カテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
カテーテルなどの体内物体の形状の追跡は、特許文献において知られている。例えば、米国特許第6,748,255号には、心臓のマッピングに特に有用な、改善されたバスケットカテーテルが記載されている。カテーテルは、遠位端、近位端、及び、遠位端及び近位端を通過する少なくとも1つの内腔を備えた、伸長されたカテーテル本体を含む。バスケット形状の電極アセンブリが、カテーテル本体の遠位端部に取り付けられている。バスケットアセンブリは、近位端と遠位端とを有し、その近位端と遠位端とに接続された、複数のスパインを備える。それぞれのスパインは、少なくとも1つの電極を備える。バスケットアセンブリは、スパインが径方向外側に弓形に曲がっている拡張した配置と、スパインがカテーテル本体の軸線に概ね沿って配列されている畳み込まれた配置とを有する。カテーテルは、バスケット形状の電極アセンブリの遠位端又はその近くに取り付けられた遠位位置センサと、バスケット形状の電極アセンブリの近位端又はその近くに取り付けられた近位位置センサとを更に有している。カテーテルが使用される際、それぞれのスパインの少なくとも1つの電極の位置を見出すために、近位センサの座標に対する遠位側位置センサの相対的座標が決定されて、バスケット形状のマッピングアセンブリのスパインの曲率に関する既知の情報とともに用いられ得る。
【0003】
別の例として、米国特許出願公開第2013/0123694号には、生体内バルーン拡張プロファイルを測定するための方法が記載されている。本方法は、診断デバイスとして、少なくとも1つの検知要素を備えたバルーンを提供することを含み、少なくとも1つの感知要素が、バルーン寸法を表す、少なくとも1つの属性によって特徴付けられることと、少なくとも1つの属性を測定し、観察された属性値を取得すること、及び、観察された属性値に基づいて、バルーン寸法及びバルーン拡張プロファイルを推定すること、を含む、方法。生体内バルーン拡張プロファイルを測定するための診断キットもまた提供される。診断キットは、診断デバイスを含み、属性に対して観察された属性値を測定するための測定モジュール、及び、観察された属性値を処理して、1つ以上の出力として、バルーン拡張プロファイルを推定するためのプロセッサモジュールと、を備える。
【0004】
米国特許出願公開第2011/0313414号は、カテーテルの湾曲形態を模擬する方法において、カテーテルに少なくとも2つのセンサ素子が設置され、センサ素子は、磁力線を切断し、誘導電流を生成する。センサ素子の空間情報は、誘導電流情報から抽出し、また、カテーテルの湾曲形態は、空間情報に基づいて、カテーテルの特性情報と組み合わせて、カテーテルの湾曲形態を算出する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態は、拡張可能な遠位端アセンブリと、近位位置センサと、遠位位置センサと、プロセッサとを含むシステムを提供する。拡張可能な遠位端アセンブリは、患者の臓器腔内に挿入するためのシャフトの遠位端に連結される。近位位置センサは、遠位端アセンブリの近位端に位置する。遠位位置センサは、遠位端アセンブリの遠位端に位置する。プロセッサは、近位位置センサから受信した信号に基づいて、プロセッサが使用する座標系における近位センサの位置及び長手方向を推定し、遠位位置センサから受信した信号に基づいて、座標系内における遠位位置センサの位置を推定するように構成される。プロセッサは、推定された長手方向によって画定される軸線上に遠位位置センサの推定位置を投影し、近位位置センサの推定位置と遠位位置センサの投影位置との間の距離を計算することによって、遠位端アセンブリの伸長を計算するように、更に構成される。
【0006】
いくつかの実施形態では、近位位置センサ及び遠位位置センサは、磁気センサである。
【0007】
いくつかの実施形態では、計算された伸長を使用して、プロセッサは、拡張可能な遠位端アセンブリの楕円率を推定するように、更に構成される。
【0008】
一実施形態では、拡張可能な遠位端アセンブリは、バスケットを含む。別の実施形態では、拡張可能な遠位端アセンブリは、バルーンを含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、伸長の計算に基づいて、拡張可能な遠位端アセンブリの伸長度を示すように構成される。
【0010】
更に、本発明の一実施形態によれば、プロセッサにおいて、患者の臓器腔内に挿入するためのシャフトの遠位端に連結された拡張可能な遠位端アセンブリの近位端に位置する近位位置センサから、及び、遠位端アセンブリの遠位端に位置する遠位位置センサから、信号を受信することを含む方法を提供する。近位位置センサから受信した信号に基づいて、プロセッサが使用する座標系における近位位置センサの位置及び長手方向が推定される。遠位位置センサから受信した信号に基づいて、座標系内における遠位位置センサの位置が推定される。推定位置は、推定された長手方向によって画成される軸線上に投影される。遠位端アセンブリの伸長は、近位センサの推定位置と遠位位置センサの投影位置との間の距離を計算することによって計算される。
【0011】
更に、本発明の一実施形態によれば、拡張可能な遠位端、近位位置装置、遠位位置装置、及びプロセッサを含むシステムを提供する。拡張可能な遠位端アセンブリは、患者の臓器腔内に挿入するためのシャフトの遠位端に連結される。近位位置装置は、遠位端アセンブリの近位端に位置する。遠位位置装置は、遠位端アセンブリの遠位端に位置し、位置装置のうちの一方が送信機として構成され、他方が受信機として構成される。プロセッサは、受信機から受信した信号に基づいて、送信機からの受信機の距離を推定し、拡張可能な遠位端アセンブリの伸長を較正された距離として示すように、構成される。
【0012】
更に、本発明の一実施形態によれば、患者の臓器腔内に挿入するためのシャフトの遠位端に連結された拡張可能な遠位端アセンブリの近位端に位置する近位位置装置と、遠位端アセンブリの遠位端に位置する遠位位置装置との間で、信号を通信することであって、位置装置のうちの1つは送信機として構成されること、他方は受信機として構成されること、を含む、方法を提供する。受信機から受信した通信信号に基づいて、送信機からの受信機の距離を推定する。遠位端アセンブリカテーテルの伸長は、較正された距離として示す。
【0013】
本発明は、以下の「発明を実施するための形態」を図面と併せて考慮することで、より完全に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態による、バスケットカテーテルを含む電気解剖学的マッピング用システムの概略図である。
図2】本発明の実施形態による、図1のバスケットカテーテルの概略的側面図である。
図3】本発明の実施形態による、バスケットカテーテルの伸びを推定するための方法とアルゴリズムを概略的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
概論
バスケット又はバルーンカテーテルなど、患者の臓器腔内に挿入するためのカテーテルの拡張可能な遠位端アセンブリは、例えば心臓腔壁のような、腔壁の電気解剖学的マッピング及びアブレーションなど、様々な臨床用途に使用され得る。挿入するためのシャフトの遠位端に連結された拡張可能な遠位端アセンブリの展開は、通常手動で行う。したがって、拡張可能な遠位端アセンブリが腔内で完全に拡張しているかどうかを示す(例えば、間接的な)指標(例えば、拡張可能な遠位端アセンブリの伸長度)がほとんどないため、腔内における、バスケット又はバルーン楕円率などの、拡張可能な遠位端アセンブリの形状の正確な寸法を知ることは困難である。
【0016】
例えば、バスケット楕円率が周知ではない場合、既知の楕円率に依存する測定結果は、歪んだ結果となる場合がある。例えば、バスケットの複数の拡張可能なスパインに装着された超音波トランスデューサからの信号は、バスケット楕円率が誤って仮定されているために誤って較正される場合がある。例えば、超音波トランスデューサの仮定した相対位置及び配向に誤差を生じさせ、プロセッサが、体腔の歪んだ解剖学的マップを生成する可能性がある。
【0017】
別の実施例において、バルーンカテーテルを使用する際に、重要なのは、アブレーションの実行、バルーンの膨張、又はシース内へのバルーンの引込みなどの処置をする前に、バルーンが完全に拡張しているか、完全にしぼんでいるか、又は何らかの中間状態であるか、を知ることである。
【0018】
以下に記載される本発明の実施形態は、拡張可能な遠位端アセンブリから、拡張可能な遠位端アセンブリの伸長を推定するための追跡システム及び方法を提供する。したがって、例えば、拡張可能な遠位端アセンブリの拡張可能なスパインに装着された装置の、相対位置及び配向を、プロセッサによって、より正確に推定することができる。開示した一実施形態は、以下に記載されるように、投影を使用した推定誤差補正技術を組み込む。
【0019】
いくつかの実施形態では、追跡システムは、カテーテルの拡張可能な遠位端アセンブリを追跡するものであり、拡張可能な遠位端アセンブリは、拡張可能な遠位端アセンブリの近位端に位置する近位位置及び方向センサと、拡張可能な遠位端アセンブリの遠位端に位置する遠位位置センサとを備える。プロセッサは、近位位置センサから受信した信号に基づいて、追跡システムによって使用される座標系内における近位センサの位置及び長手方向を推定するように構成される(例えば、プログラムされる)。
【0020】
遠位位置センサから受信した信号に基づいて、プロセッサは、座標系内における遠位センサの位置を推定し、また、その位置における推定誤差を減らすために、推定された長手方向によって画成される軸線上に、その推定位置を投影することによって、遠位センサの推定位置を補正する。
【0021】
次に、プロセッサは、近位センサの推定位置と遠位センサの投影位置との間の距離を計算することによって、拡張可能な遠位端アセンブリ(例えば、バスケット又はバルーンカテーテル)の伸長を計算する。計算された伸長に基づいて、プロセッサは、例えば、バスケット楕円率、及び/又は、バスケット若しくはバルーンの伸長状態を推定する。
【0022】
一実施形態では、近位センサ及び遠位センサは磁気センサである。センサは、CARTO3(登録商標)(Biosense-Webster(Irvine,California)製)などの、カテーテル型のトラッキングシステムによって動作する。別の実施形態では、2つの位置装置を備え、1つの位置装置を、拡張可能な遠位端アセンブリの近位端に置き、他方の位置装置を、遠位端アセンブリの遠位端に置く。位置装置のうちの1つが送信機として構成され、他方が受信機として構成される。受信機から受信した信号に基づいて、また、受信信号の関数としての装置間距離の利用可能な較正に基づいて、プロセッサは、送信機センサからの受信機センサの距離を推定する。次に、プロセッサは、推定された較正距離として、拡張可能な遠位端アセンブリの伸長を提供する。
【0023】
通常、プロセッサは、プロセッサが、上で概略を述べたプロセッサ関連工程及び機能の各々を実行することを可能にする、特定のアルゴリズムを含むソフトウェアにプログラム化されている。
【0024】
臓器腔内で投影を利用して、カテーテルの拡張可能な遠位端アセンブリの伸長を検出するための開示されたシステム及び方法は、拡張可能な遠位端アセンブリカテーテルを使用して行われる、カテーテル法処置の診断、及び/又は、治療結果を改善することができる。
【0025】
システムの説明
図1は、本発明の実施形態による、電気解剖学的マッピングシステム20の概略的な描写図である。医師30は、挿入図45に詳細に見られるバスケットカテーテル40(Biosense-Webster製)を、カテーテルの近位端近くのマニピュレータ32を使用して、及び/又はシース23からの偏向を使用して、シャフト22を操作することによって、患者28の心臓26内の標的位置に誘導する。挿入図25に見られる実施形態では、医師30が、カテーテル40を使用して、心臓腔の電気解剖学的マッピングを実行する。
【0026】
本明細書に記載された実施形態は、単に例として、主にバスケット遠位端アセンブリを指す。代替的な実施形態では、開示された技術は、バルーン型の遠位端アセンブリ、又は任意の他の好適なタイプの拡張可能な遠位端アセンブリの伸長(したがって、拡張の程度)を推定するために使用することができる。
【0027】
カテーテル40は、折り畳まれた構成でシース23を通って挿入され、カテーテルがシース23を出た後にのみ、カテーテル40はその意図された機能形状を取り戻す。カテーテル40を折り畳まれた構成で収容することにより、シース23はまた、標的位置へ向かう途中での血管外傷を最小限に抑える働きをする。
【0028】
バスケットカテーテル40は、シャフト22の遠位端(すなわち、バスケットカテーテル40の近位端)に、挿入図45に見られる、磁気センサ50Aを組み込む。典型的には、必ずしもそうではないが、センサ50Aは、三軸センサ(Triple-Axis Sensor:TAS)である。第2の磁気センサ50Bは、バスケットカテーテルの遠位端に含まれる。センサ50Bは、例えば、単一軸センサ(Single-Axis Sensor:SAS)、又は、三軸センサ(TAS)であってもよい。
【0029】
カテーテル40は、更に、機械的に柔軟であり得る複数の拡張可能なスパイン55を有し、そのそれぞれに1つ又は2つ以上の装置48が連結される。装置48は、感知電極、アブレーション電極、超音波トランスデューサ、接触力センサ、灌注ポート、温度センサ、及び、その他のものなど多数の種類のものであってもよい。磁気センサ50A及び50B、並びに装置48は、シャフト22内を通るワイヤによって、コンソール24内の様々な駆動回路に接続される。あるいは、上述したように、カテーテル40は膨張可能なバルーンであってもよい。
【0030】
いくつかの実施形態では、システム20は、センサ50Aと50Bとの間の距離からバスケットカテーテル40の伸長を推定することによって、心臓26の心臓腔内において、バスケットカテーテル40の楕円率、更にその伸長/収縮状態を推定する、磁気検知サブシステム、を備える。患者28は、ユニット43によって駆動される磁場発生器コイル42を含むパッドによって生成された磁場内に置かれる。コイル42によって生成された磁場は、センサ50A及び50B内で、位置及び/又は方向を示す信号を生成する。生成された信号は、コンソール24に送信され、プロセッサ41に対応する電気的入力となる。プロセッサは、信号を使用して、バスケットカテーテル40の伸長を計算し、センサ50Aと50Bの間の計算された距離から、バスケット楕円率、及び、伸長/収縮状態を推定する。
【0031】
外部磁場並びに50A及び50Bのような磁気センサを使用して、位置及び/又は方向の検知方法は、様々な医療用途において、例えば、Biosense-Webster製のCARTO(商標)システムに実装されており、米国特許第5,391,199号、同第6,690,963号、同第6,484,118号、同第6,239,724号、同第6,618,612号、及び、同第6,332,089号、国際公開第96/05768号、並びに米国特許出願公開第2002/0065455号(A1)、同第2003/0120150(A1)号及び同第2004/0068178(A1)号に詳述されており、これらの開示は、全て参照により本明細書に組み込まれる。
【0032】
プロセッサ41、典型的には汎用コンピュータは、好適なフロントエンド及びインターフェース回路44を介して更に接続されて、表面電極49から信号を受信する。プロセッサ41は、ケーブル39を通って患者28の胸部まで延びるワイヤによって表面電極49に接続される。
【0033】
一実施形態では、プロセッサ41は、更に、電気インターフェース44を介して、様々な空間的及び電気生理学的信号を受信し、これらの信号に含まれる情報を使用して、体腔の電気解剖学的マップ31を作図する。処置中、及び/又は処置後に、プロセッサ41は、ディスプレイ27上に、電気解剖学的マップ31を表示してもよい。
【0034】
プロセッサ41は、通常、本明細書に記載の機能を実行するために、当業者によってソフトウェアでプログラムされる。ソフトウェアは、例えば、ネットワーク上で、コンピュータに電子形態でダウンロードすることができるか、又は代替として、又は更には、磁気メモリ、光学メモリ若しくは電子メモリなどの、非一時的実体的媒体上で提供及び/若しくは記憶されてもよい。詳細には、プロセッサ41は、後述されるように、開示される工程をプロセッサ41が実行することを可能にする専用アルゴリズムを実行する。
【0035】
図1に示される例示的な図は、純粋に概念を分かりやすくするために選択されたものである。図1は、簡潔性かつ明瞭性のため、開示される技術に関連する要素のみを示す。システム20は、典型的に、開示される技術には直接関連せず、したがって図1及び対応する説明から意図的に省略されている、追加のモジュール及び要素を備える。システム20の要素、及び本明細書に記載の方法は、例えば、心臓26の組織のアブレーションを制御するために、更に適用されてもよい。
【0036】
投影を使用したバスケットカテーテル伸長の検出
図2は、本発明の実施形態による、図1のバスケットカテーテル40の概略的側面図である。バスケットカテーテル40の拡張可能なフレームは、近位位置及び方向センサ50Aの位置に近接し、シャフト22の遠位端に連結された複数の拡張可能なスパイン55を備える。バスケットカテーテル40の拡張可能なフレームは、長手方向軸62に沿って延びて、バスケットの遠位端、遠位位置センサ50Bの位置で収束する。
【0037】
スパイン55は、例えば、長手方向軸62周りの回転面によって画成されるもののような、バスケットの楕円形状を形成する。しかしながら、一般に、スパイン上に取り付けられたバスケット及び装置は、完全な回転対称性を有する必要はない。
【0038】
センサ50Aからの信号に基づいて、プロセッサ41は、長手方向軸62(すなわち、シャフト22の遠位端によって画成される長手方向軸に平行な方向)を推定する。同時に、プロセッサ41は、潜在的に不正確に、遠位センサ50Bの位置を位置50Cであると、推定する。明らかに、このような誤差は、バスケットの推定された形状を歪ませる原因となる。この誤差は、より正確な投影位置50Dを得るために、プロセッサ41が軸62上の不正確な位置50Cの座標を投影することによって、大幅に補正される。位置50Aと50Dとの間の軸62に沿った距離に基づいて、プロセッサは、伸長及び楕円率の実際の値を導き出す。
【0039】
別の実施形態では、近位センサ50Aは、送信機として構成された位置装置で置き換えられ、遠位センサ50Bは、受信機として構成された位置装置と置き換えられる。受信機から受信した信号に基づいて、また、受信信号の関数としての装置間距離の利用可能な較正に基づいて、プロセッサは、送信機からの受信機センサの距離を推定する。次に、プロセッサは、推定された較正距離として、バスケットの伸長を提供する。
【0040】
一般に、方法を提供するものであり、その方法は、患者の臓器腔内に挿入するためのシャフトの遠位端に連結された拡張可能なバスケットの近位端に位置する近位位置装置と、バスケットの遠位端に位置する遠位位置装置との間で、信号を通信することを含み、位置装置のうちの1つが送信機として構成され、他方が受信機として構成されている。
【0041】
図2の例示は、概念的なものであり、例として挙げている。実際のバスケット構造は、異なっていてもよい。例えば、拡張可能なスパイン55は、プリント回路基板(PCB)、又は形状記憶合金で作製されてもよい。より一般的には、図2に示す例示は、必要な変更がなされており、例えば、バルーンカテーテルなどの患者の臓器腔内に挿入するためのカテーテルの任意の拡張可能な遠位端アセンブリに適用可能である。
【0042】
図3は、本発明の一実施形態による、心臓腔の電気解剖学的マッピングの方法及びアルゴリズムを概略的に例示したフローチャートである。このアルゴリズムは、本実施形態により、医師30が、心臓腔内に磁気センサ50A及び50Bを備えたバスケットカテーテル40を移動させて開始する、プロセスを実行する。
【0043】
一実施形態では、カテーテル40が心臓腔内で移動すると、プロセッサ41は、信号受信工程70において、センサ50A及び50Bから信号を受信する。次に、近位センサ50Aから受信した信号に基づいて、プロセッサ41は、バスケット近位測定工程72において、近位センサ50Aの位置及び長手方向を推定する。並行して、遠位センサ50Bから受信した信号に基づいて、プロセッサ41は、バスケット遠位測定工程74において、遠位センサ50Bのそれぞれの位置を推定する。次に、プロセッサ41は、遠位位置投影工程76において、近位センサ50Aの推定された長手方向によって画成された軸62上に、工程74で見つかった遠位センサ50Bの誤った推定位置50Cを投影する。上述の投影位置は、50Dと記号を付す。最後に、プロセッサ41は、バスケット伸長計算工程78において、位置50Aと位置50Dとの間の距離として、バスケットカテーテル40の伸長を計算する。
【0044】
上述したように、計算された伸長に基づいて、診断的及び/又は治療的な処置は、例えば、バスケットカテーテル40上に装着された超音波トランスデューサの仮定した位置及び配向を補正することによって、改善され得る。別の実施例では、例えば、システムが、カテーテルが収縮状態にあることを認識した場合に、バルーンを膨張させる前に、カテーテルの伸長を実行するなど、計算された伸長に基づいて、ユーザーに処置を実行するように指示を出す。
【0045】
いくつかの実施形態では、プロセッサ41は、例えば、ディスプレイ27上で好適なグラフィック又はテキスト表示を使用して、推定された伸長を医師30に提示する。追加的に又は代替的に、バルーンカテーテルが、開示された技術によって、収縮状態であると判定される場合、プロセッサ41は、推定された伸長に基づいて、バルーンの膨張を防止するなど、自動的に処置を適応させるか、又は、任意の他の好適な動作を実行してもよい。
【0046】
図3に示す例示的なフローチャートは、単に概念を明確化する目的のために選ばれたものである。図3に示される例示は、必要な変更がなされており、例えば、バルーンカテーテルなどの、患者の臓器腔内に挿入するためのカテーテルの任意の拡張可能な遠位端アセンブリに、適用可能である。本実施形態はまた、より単純化されたフローチャートを提供するために、本明細書では意図的に本開示から省略されている、バスケットスパインに装着された装置を操作するなどの、アルゴリズムの更なるステップを含む。
【0047】
本明細書に記載された実施形態は、主に心臓用途に向くが、本明細書に記載された方法及びシステムはまた、カテーテルが患者の臓器腔内に挿入される他の医療用途、例えば、誘導可能な耳、鼻孔、及び咽喉(Ear, Nose, Throat:ENT)プローブなどにも使用することができる。
【0048】
したがって、上記に述べた実施形態は、例として引用したものであり、また本発明は、上文に具体的に示し説明したものに限定されないことが理解されよう。むしろ本発明の範囲は、上述の様々な特徴の組み合わせ及びその一部の組み合わせの両方、並びに上述の説明を読むことで当業者により想到されるであろう、また従来技術において開示されていないそれらの変形及び修正を含むものである。参照により本特許出願に援用される文献は、これらの援用文献においていずれかの用語が本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾して定義されている場合には、本明細書における定義のみを考慮するものとする点を除き、本出願の一部とみなすものとする。
【0049】
〔実施の態様〕
(1) 患者の臓器腔内に挿入するためのシャフトの遠位端に連結された拡張可能な遠位端アセンブリと、
前記遠位端アセンブリの近位端に位置する近位位置センサと、
前記遠位端アセンブリの遠位端に位置する遠位位置センサと、
プロセッサであって、
前記近位位置センサから受信した信号に基づいて、前記プロセッサが使用する座標系における前記近位センサの位置及び長手方向を推定し、
前記遠位位置センサから受信した信号に基づいて、前記座標系内における前記遠位位置センサの位置を推定し、
前記推定された長手方向によって画成される軸線上に前記遠位位置センサの前記推定位置を投影し、
前記近位位置センサの前記推定位置と前記遠位位置センサの前記投影位置との間の距離を計算することによって、前記遠位端アセンブリの伸長を計算する、ように構成されているプロセッサと、
を備えるシステム。
(2) 前記近位位置センサ及び前記遠位位置センサは、磁気センサである、実施態様1に記載のシステム。
(3) 前記計算された伸長を使用して、前記プロセッサは、前記拡張可能な遠位端アセンブリの楕円率を推定するように更に構成されている、実施態様1に記載のシステム。
(4) 前記拡張可能な遠位端アセンブリは、バスケットを備える、実施態様1に記載のシステム。
(5) 前記拡張可能な遠位端アセンブリは、バルーンを備える、実施態様1に記載のシステム。
【0050】
(6) 前記プロセッサが、前記伸長の計算に基づいて、前記拡張可能な遠位端アセンブリの伸長度を示すように構成されている、実施態様1に記載のシステム。
(7) 方法であって、
プロセッサにおいて、患者の臓器腔内に挿入するためのシャフトの遠位端に連結された拡張可能な遠位端アセンブリの近位端に位置する近位位置センサから、及び、前記遠位端アセンブリの遠位端に位置する遠位位置センサから、信号を受信することと、
前記近位位置センサから受信した前記信号に基づいて、前記プロセッサが使用する座標系における前記近位位置センサの位置及び長手方向を推定することと、
前記遠位位置センサから受信した前記信号に基づいて、前記座標系内における前記遠位位置センサの位置を推定することと、
前記推定された長手方向によって画成される軸線上に前記推定位置を投影することと、
前記近位センサの前記推定位置と前記遠位位置センサの前記投影位置との間の距離を計算することによって、前記遠位端アセンブリの伸長を計算することと、
を含む方法。
(8) 前記信号を受信することは、磁気センサから信号を受信することを含む、実施態様7に記載の方法。
(9) 前記計算された伸長を使用して、前記遠位端アセンブリの楕円率を推定することを含む、実施態様7に記載の方法。
(10) 前記拡張可能な遠位端アセンブリは、バスケットを備える、実施態様7に記載の方法。
【0051】
(11) 前記拡張可能な遠位端アセンブリは、バルーンを備える、実施態様7に記載の方法。
(12) 前記伸長を計算することが、前記拡張可能な遠位端アセンブリの伸長度を示すことを含む、実施態様7に記載の方法。
(13) システムであって、
患者の臓器腔内に挿入するためのシャフトの遠位端に連結された拡張可能な遠位端アセンブリと、
前記遠位端アセンブリの近位端に位置する近位位置装置と、
前記遠位端アセンブリの遠位端に位置する遠位位置装置であって、
前記位置装置のうちの一方が送信機として構成され、他方が受信機として構成されている、遠位位置装置と、
プロセッサであって、
前記受信機から受信した信号に基づいて、前記送信機からの前記受信機の距離を推定し、
前記拡張可能な遠位端アセンブリの伸長を較正された距離として示す、ように構成されているプロセッサと、
を備えるシステム。
(14) 方法であって、
患者の臓器腔内に挿入するためのシャフトの遠位端に連結された拡張可能な遠位端アセンブリの近位端に位置する近位位置装置と、前記遠位端アセンブリの遠位端に位置する遠位位置装置との間で、信号を通信することであって、前記位置装置のうちの一方が送信機として構成され、他方が受信機として構成されている、こと、
前記受信機から受信した前記通信信号に基づいて、前記送信機からの前記受信機の距離を推定すること、及び、
前記遠位端アセンブリカテーテルの伸長を較正された距離として示すこと、を含む、方法。
図1
図2
図3