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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】転写フィルム用基材フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/36 20060101AFI20240227BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20240227BHJP
   B32B 3/30 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
B32B27/36
B32B27/40
B32B3/30
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020011364
(22)【出願日】2020-01-28
(65)【公開番号】P2021115790
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000222462
【氏名又は名称】東レフィルム加工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100186484
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 満
(72)【発明者】
【氏名】辻内 直樹
(72)【発明者】
【氏名】杉山 竜一
(72)【発明者】
【氏名】押切 孝仁
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-063155(JP,A)
【文献】特開2019-59121(JP,A)
【文献】特開平1-295893(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00 - 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムの一方の面に転写層を積層するための転写フィルム用基材フィルムであって、ポリエステルフィルムと、該ポリエステルフィルムの転写層を積層する面とは反対面にウレタン結合を有する樹脂を含有する背面層を有し、
前記ポリエステルフィルムの転写層を積層する面の算術平均粗さRaが0.30μm以上である、転写フィルム用基材フィルム。
【請求項2】
基材フィルムの一方の面に転写層を積層するための転写フィルム用基材フィルムであって、ポリエステルフィルムと、該ポリエステルフィルムの転写層を積層する面とは反対面にウレタン結合を有する樹脂を含有する背面層を有し、
前記ポリエステルフィルムがA層/B層/A層からなる3層積層構成である、転写フィルム用基材フィルム。
【請求項3】
前記背面層が、メラミン化合物が架橋した構造を含有する、請求項1または2に記載の転写フィルム用基材フィルム。
【請求項4】
前記ポリエステルフィルムの転写層を積層する面の算術平均粗さRaが0.30μm以上である、請求項またはに記載の転写フィルム用基材フィルム。
【請求項5】
前記ポリエステルフィルムがA層/B層/A層からなる3層積層構成である、請求項3または4に記載の転写フィルム用基材フィルム。
【請求項6】
請求項1~のいずれかに記載の転写フィルム用基材フィルムの背面層を有する面とは反対面に、転写層が積層されてなる転写フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写フィルム用基材フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
家電製品や自動車内装部品などの樹脂成形体の表面保護あるいは加飾のために、ハードコート層や加飾層などを含む転写層を転写させることが行われている(特許文献1、2)。
【0003】
また、電子回路を電磁波から保護するために、絶縁層や導電層などを含む電磁波シールド層(電磁波シールドフィルム)を回路基板に加熱プレスによって転写させることが行われている(特許文献3~5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-148103号公報
【文献】特開2015-214032号公報
【文献】特許第5796690号公報
【文献】特許第6014680号公報
【文献】特許第6426865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の転写フィルムの転写層は、被着体の種類や要求性能に応じて特定のサイズや形状に予めハーフカットされることがある。このハーフカット工程に先立ち、転写フィルムの転写層が積層された面とは反対面に保護フィルムを貼り合わせることがあるが、ハーフカット工程時に保護フィルムが剥がれることがある。
【0006】
従って、本発明の目的は、転写フィルムに使用される基材フィルムと保護フィルムとの密着性を改良した転写フィルム用基材フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、以下の構成によって達成された。
[1]基材フィルムの一方の面に転写層を積層するための転写フィルム用基材フィルムであって、ポリエステルフィルムと、該ポリエステルフィルムの転写層を積層する面とは反対面にウレタン結合を有する樹脂を含有する背面層を有する、転写フィルム用基材フィルム。
[2]前記背面層が、メラミン化合物が架橋した構造を含有する、[1]に記載の転写フィルム用基材フィルム。
[3]前記ポリエステルフィルムの転写層を積層する面の算術平均粗さRaが0.30μm以上である、[1]または[2]に記載の転写フィルム用基材フィルム。
[4]前記ポリエステルフィルムがA層/B層/A層からなる3層積層構成である、[1]~[3]のいずれかに記載の転写フィルム用基材フィルム。
[5][1]~[4]のいずれかに記載の転写フィルム用基材フィルムの背面層を有する面とは反対面に、転写層が積層されてなる転写フィルム。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、保護フィルムとの密着性が良好な転写フィルム用基材フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の転写フィルム用基材フィルムは、基材フィルムの一方の面に転写層を積層するための転写フィルム用基材フィルムであって、ポリエステルフィルムと、該ポリエステルフィルムの転写層を積層する面とは反対面にウレタン結合を有する樹脂を含有する背面層を有する。
【0010】
本発明の転写フィルム用基材フィルムは、転写フィルムを得るために用いられる基材フィルムであって、この基材フィルムの一方の面に転写層が積層されて転写フィルムが得られる。転写フィルムの転写層は、基材フィルムから剥離されて被着体に転写される。以下、転写フィルム用基材フィルムを「基材フィルム」ということがある。
【0011】
本発明の基材フィルムは、転写層が積層される面とは反対面に、ウレタン結合を有する樹脂を含有する背面層を有する。この背面層を設けることによって、基材フィルムと保護フィルムとの密着性が良好になる。そのため、本発明の基材フィルムを用いた転写フィルムは、ハーフカット時においても、転写フィルムの転写層とは反対面に予め貼り合わされた保護フィルムの剥がれが抑制される。また、ウレタン結合を有する樹脂を含有する背面層は、ポリエステルフィルムとの密着性に優れるので、基材フィルムの製造工程や加工工程でポリエステルフィルムから背面層が剥離しにくくなる。
【0012】
[背面層]
背面層は、ウレタン結合を有する樹脂を含有する。ウレタン結合を有する樹脂は、例えば、水酸基を含有する化合物とイソシアネート基を含有する化合物との反応によって得ることができる。
【0013】
背面層に、ウレタン結合を有する樹脂を含有せしめる方法の態様としては、以下の態様が挙げられる。
(i)水酸基を有する化合物とイソシアネート基を有する化合物を含有する組成物(熱硬化性組成物)をポリエステルフィルム上に塗布し、乾燥、加熱することによって形成する態様、
(ii)水酸基とウレタン結合を有する化合物とイソシアネート基を有する化合物を含有する組成物(熱硬化性組成物)をポリエステルフィルム上に塗布し、乾燥、加熱することによって形成する態様、
(iii)ウレタン結合を有する樹脂を含有する組成物をポリエステルフィルム上に塗布、乾燥して形成する態様、
(iv)上記(i)~(iii)の2以上を組み合わせた態様。
【0014】
上記態様の中でも、基材フィルムと保護フィルムとの密着性を高めるという観点から、上記(i)または(ii)の態様が好ましい。
【0015】
上記(i)または(ii)の態様において、水酸基を有する化合物または水酸基とウレタン結合を有する化合物と、イソシアネート基を有する化合物を含有する組成物(熱硬化性組成物)は、熱などのエネルギーを与えることによって水酸基を有する化合物または水酸基とウレタン結合を有する化合物の水酸基とイソシアネート基を有する化合物のイソシアネート基がウレタン結合を生起して、分子内にウレタン結合を有する樹脂を生成する。
【0016】
上記(i)の態様(熱硬化性組成物)について、詳細に説明する。
【0017】
水酸基を有する化合物としては、例えば、アクリルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、ポリカーボネートポリオールなどが挙げられる。これらの水酸基を有する化合物は、1種類のみを用いても、2種類以上を用いてもよい。
【0018】
アクリルポリオールは、例えば、(メタ)アクリル系モノマーと水酸基含有(メタ)アクリル系モノマーとを共重合させて得ることができる。ここで、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」と「メタクリル」との総称である。また、以下の説明において、「・・・(メタ)アクリレート」とは、「・・・アクリレート」と「・・・メタクリレート」との総称である。
【0019】
(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーが挙げられる。かかる化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0020】
水酸基含有(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリレート、ポリカプロラクトン変性(メタ)アクリレート、ポリカーボネートポリオール変性(メタ)アクリレート、ポリエステルポリオール変性(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0021】
アクリルポリオールとしては、例えば、DIC株式会社;(商品名“アクリディック(登録商標)”シリーズなど)、大成ファインケミカル株式会社;(商品名“アクリット(登録商標)”シリーズなど)、株式会社日本触媒;(商品名“アクリセット(登録商標)”シリーズなど)、三井化学株式会社;(商品名“タケラック(登録商標)”UAシリーズ)などを挙げることができ、これらの製品を利用することができる。
【0022】
ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレングリコールあるいはトリオール、ポリプロピレングリコールあるいはトリオール、ポリブチレングリコールあるいはトリオール、ポリテトラメチレングリコールあるいはトリオール、さらには、これら炭素数の異なるオキシアルキレン化合物の付加重合体やブロック共重合体等が挙げられる。この様な水酸基を有するポリエーテルポリオールとしては、旭硝子株式会社;(商品名“エクセノール(登録商標)”シリーズなど)、三井化学株式会社;(商品名“アクトコール(登録商標)”シリーズなど)を挙げることができ、これらの製品を利用することができる。
【0023】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、デカンジオール、シクロヘキサンジメタノール、カプロラクトンジオール等の脂肪族グリコールと、例えばコハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸、スベリン酸、アゼライン酸、1,10-デカメチレンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂肪族二塩基酸とを必須原料成分として反応させた脂肪族ポリエステルポリオールや、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール等の脂肪族グリコールと、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族二塩基酸とを必須原料成分として反応させた芳香族ポリエステルポリオールなどが挙げられる。
【0024】
ポリエステルポリオールとしては、DIC株式会社;(商品名“ポリライト(登録商標)”シリーズなど)、株式会社クラレ;(商品名“クラレポリオール(登録商標)”シリーズなど)、武田薬品工業株式会社;(商品名“タケラック(登録商標)”Uシリーズ)を挙げることができ、これらの製品を利用することができる。
【0025】
ポリオレフィン系ポリオールとしては、ブタジエンやイソプレンなどの炭素数4から12個のジオレフィン類の重合体および共重合体、炭素数4から12のジオレフィンと炭素数2から22のα-オレフィン類の共重合体のうち、水酸基を含有している化合物である。水酸基を含有させる方法としては、特に制限されないが、例えば、共重合後のジエンモノマー由来の構造が有する二重結合を過酸化水素と反応させる方法がある。さらに、残存する二重結合に水素添加することで、飽和脂肪族化してもよい。このような水酸基を含有するポリオレフィン系ポリオールとしては、日本曹達株式会社;(商品名“NISSO-PB(登録商標)”Gシリーズなど)、出光興産株式会社;(商品名“Poly bd(登録商標)”シリーズ、“エポール(登録商標)”シリーズなど)を挙げることができ、これらの製品を利用することができる。
【0026】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、炭酸ジアルキルと1,6-ヘキサンジオールのみを用いて得たポリカーボネートポリオールを用いることもできるが、より結晶性が低い点で、ジオールとして、1,6-ヘキサンジオールと、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオールまたは1,4-シクロヘキサンジメタノールとを共重合させて得られるポリカーボネートポリオールを用いることが好ましい。
【0027】
ポリカーボネートポリオールとしては、共重合ポリカーボネートポリオールである旭化成ケミカルズ株式会社;(商品名“T5650J”、“T5652”、“T4671”、“T4672”など)、宇部興産株式会社;(商品名“ETERNACLL(登録商標)”UMシリーズなど)を挙げることができ、これらの製品を利用することができる。
【0028】
イソシアネート基を有する化合物としては、分子内に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物が好ましく用いられる。
【0029】
ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、シクロヘキサンジイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、ウンデカントリイソシアネート、ヘキサメチレントリイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、及びこれらイソシアネート化合物の重合体、誘導体、変性体、水素添加体などが挙げられる。これらの中では、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂肪族又は脂環族ジイソシアネート、これらの重合体、誘導体、変性体が、背面層の黄変が起こりにくいことから好ましく用いられる。
【0030】
上記のポリイソシアネート化合物としては、三井化学株式会社;(商品名“タケネート(登録商標)”シリーズなど)、日本ポリウレタン工業株式会社;(商品名“コロネート(登録商標)”シリーズなど)、旭化成ケミカルズ株式会社;(商品名“デュラネート(登録商標)”シリーズなど)、DIC株式会社;(商品名“バーノック(登録商標)”シリーズなど)を挙げることができ、これらの製品を利用することができる。
【0031】
上記(ii)の態様(熱硬化性組成物)について、詳細に説明する。
【0032】
水酸基とウレタン結合を有する化合物としては、ウレタンポリオール、ウレタン変性(メタ)アクリルポリオール、ウレタン変性ポリエステルポリオール、ウレタン変性ポリエーテルポリオール、ウレタン変性ポリオレフィン系ポリオール、ウレタン変性ポリカーボネートポリオールなどが挙げられる。ここで、「ウレタン変性(メタ)アクリルポリオール」とは、「ウレタン変性アクリルポリオール」と「ウレタン変性メタクリルポリオール」との総称である。
【0033】
ウレタンポリオールは、例えば、ポリイソシアネート化合物と1分子中に少なくとも2個の水酸基を有する化合物とを、水酸基がイソシアネート基に対して過剰となるような比率で反応させて得られる。その際に使用されるポリイソシアネート化合物としては、前述したポリイソシアネート化合物が挙げられる。また、1分子中に少なくとも2個の水酸基を有する化合物としては、多価アルコール類、ポリエステルジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリカーボネートジオール等が挙げられる。
【0034】
ウレタン変性(メタ)アクリルポリオールとしては、前述のアクリルポリオールを前述のポリイソシアネートで変性したものが挙げられる。
【0035】
ウレタン変性ポリエーテルポリオールとしては、前述のポリエーテルポリオールを前述のポリイソシアネート化合物で変性したものが挙げられる。
【0036】
ウレタン変性ポリオレフィン系ポリオールとしては、前述のポリオレフィン系ポリオールを前述ポリイソシアネート化合物で変性したものが挙げられる。
【0037】
ウレタン変性ポリカーボネートポリオールとしては、前述のポリカーボネートポリオールを前述のポリイソシアネート化合物で変性したものが挙げられる。
【0038】
上述の中でも、ウレタン変性(メタ)アクリルポリオールが好ましい。ウレタン変性(メタ)アクリルポリオールとしては、大成ファインケミカル(株)製の“アクリット(登録商標)” 8UA-146、同8UA-239、同8UA-347A、同8UA-540Hを使用することができる。
【0039】
上記のウレタン変性(メタ)アクリルポリオールの中でも、アクリルポリマーを主鎖とし、側鎖に、末端がポリカーボネート基のウレタンポリマーおよび/または末端がポリカーボネート基のウレタンオリゴマーを有するものがさらに好ましい。かかる化合物の市販品としては、上記の“アクリット(登録商標)”8UA-347A、同8UA-540Hが挙げられる。
【0040】
イソシアネート基を有する化合物としては、前述の(i)の態様と同様の化合物を用いることができる。
【0041】
上記(iii)の態様に用いられるウレタン結合を有する樹脂としては、ウレタン樹脂、ウレタン変性(メタ)アクリル樹脂が挙げられる。ウレタン樹脂としては、例えば、荒川化学工業(株)製の商品名KL-593、ウレタン変性(メタ)アクリル樹脂としては、日立化成(株)製の商品名AD-170、大成ファインケミカル(株)製の“アクリット(登録商標)”8UA-443などが挙げられる。
【0042】
本発明の転写フィルム用基材フィルムにおいて、ウレタン結合を有する樹脂は、背面層と貼り合わせる保護フィルムの微粘着層にアクリル系およびゴム系が一般的に多く用いられており、かかる微粘着層との粘着性を向上させやすい点から、ウレタン変性アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオールが好ましい。
【0043】
背面層におけるウレタン結合を有する樹脂の含有量は、背面層の固形分総量100質量%中に、15~90質量%が好ましく、20~70質量%がより好ましく、30~60質量%が特に好ましい。
【0044】
背面層は、例えば、上記した組成物(塗工液)をポリエステルフィルム上にウェットコーティング法により塗布し、乾燥し、必要に応じて加熱硬化することによって得ることができる。かかるウェットコーティング法としては、例えば、リバースコート法、スプレーコート法、バーコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、ダイコート法、スピンコート法、エクストルージョンコート法、カーテンコート法等が挙げられる。
【0045】
上記組成物は、熱硬化性組成物であることが好ましい。つまり、背面層は、熱硬化性組成物をポリエステルフィルム上に塗布し、乾燥し、加熱硬化することによって形成されることが好ましい。
【0046】
熱硬化性組成物を硬化させる際の条件(加熱温度、時間)は特に限定されないが、加熱温度は70℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましく、150℃以上が特に好ましい。上限は300℃程度である。加熱時間は3~400秒が好ましく、5~300秒がより好ましく、10~200秒が特に好ましい。
【0047】
背面層は、膜強度高めるという観点から、架橋剤が架橋した構造を含有することが好ましい。架橋剤としては、メラミン化合物、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物等が挙げられる。中でも、メラミン化合物が好ましい。すなわち、本発明の転写フィルム用基材フィルムにおいて、背面層が、メラミン化合物が架橋した構造を含有することが好ましい。
【0048】
架橋剤として用いられるメラミン化合物とは、トリアジン環の3つの炭素原子にアミノ基がそれぞれ結合した、いわゆるメラミン[1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリアミン]のアミノ基に種々の変性を施した化合物の総称であり、トリアジン環が複数縮合したものも含む。
【0049】
変性の種類としては、3つのアミノ基の水素原子の少なくとも1つがメチロール化されたメチロール化メラミン化合物が好ましく、さらに、メチロール化メラミン化合物のメチロール基を炭素数が1~4の低級アルコールで部分的にもしくは完全にエーテル化したアルキルエーテル化メラミン化合物が好ましい。特に、部分的にエーテル化したアルキルエーテル化メラミン化合物が好ましい。
【0050】
エーテル化に用いられるアルコールとしては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコールが挙げられる。
【0051】
架橋剤として用いられるメラミン化合物は市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、DIC(株)の“スーパーベッカミン(登録商標)”J-820-60、同J-821-60、同J-1090-65、同J-110-60、同J-117-60、同J-127-60、同J-166-60B、同J-105-60、同G840、同G821、三井化学(株)の“ユーバン(登録商標)”20SB、同20SE60、同21R、同22R、同122、同125、同128、同220、同225、同228、同28-60、同2020、同60R、同62、同62E、同360、同165、同166-60、同169、同2061、住友化学(株)の“スミマール(登録商標)”M-100、同M-40S、同M-55、同M-66B、日本サイテックインダストリーズの“サイメル(登録商標)”303、同325、同327、同350、同370、同235、同202、同238、同254、同272、同1130、(株)三和ケミカルの“ニカラック(登録商標)”MS17、同MX15、同MX430、同MX600、ハリマ化成(株)のバンセミンSM-975、同SM-960、日立化成(株)の“メラン(登録商標)”265、同2650Lなどが挙げられる。
【0052】
エポキシ化合物としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ポリブタジエンジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0053】
オキサゾリン化合物としては、例えば、2,2′-ビス(2-オキサゾリン)、2,2′-エチレン-ビス(4,4′-ジメチル-2-オキサゾリン)、2,2′-p-フェニレン-ビス(2-オキサゾリン)、ビス(2-オキサゾリニルシクロヘキサン)スルフィドなどのオキサゾリン基を有する化合物や、オキサゾリン基含有ポリマーが挙げられる。
【0054】
カルボジイミド化合物としては、例えば、p-フェニレン-ビス(2,6-キシリルカルボジイミド)、テトラメチレン-ビス(t-ブチルカルボジイミド)、シクロヘキサン-1,4-ビス(メチレン-t-ブチルカルボジイミド)などのカルボジイミド基を有する化合物や、カルボジイミド基を有する重合体であるポリカルボジイミドが挙げられる。
【0055】
背面層における架橋剤の含有量は、背面層の固形分総量100質量%中に、10~70質量%が好ましく、20~60質量%がより好ましく、30~50質量%が特に好ましい。
【0056】
背面層は、膜強度高めるという観点から、上記架橋剤と組み合わせて酸触媒を含有することが好ましい。酸触媒としては、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、p-トルエンスルホン酸等が挙げられる。
【0057】
酸触媒を含有する場合の酸触媒の含有量は、上記架橋剤100質量部に対して、1~20質量部の範囲が好ましく、2~15質量部の範囲がより好ましく、3~10質量部の範囲が特に好ましい。
【0058】
背面層の厚みは、基材フィルムと保護フィルムとの密着性を高めるという観点から、0.3μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましく、1.0μm以上が特に好ましい。また、背面層の厚みが大きくなりすぎると、基材フィルムがカールしやすくなるので、上記厚みは5.0μm以下が好ましく、4.0μm以下がより好ましく、3.0μm以下が特に好ましい。
【0059】
[ポリエステルフィルム]
ポリエステルフィルムを構成するポリエステルとは、主鎖における主要な結合をエステル結合とする高分子化合物の総称である。そして、ポリエステル樹脂は、通常、ジカルボン酸あるいはその誘導体と、グリコールあるいはその誘導体とを重縮合反応させることによって得ることができる。
【0060】
ジカルボン酸あるいはその誘導体としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5-ナトリウムスルホンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸などの脂肪族ジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、パラオキシ安息香酸などのオキシカルボン酸、並びに、それらの誘導体を挙げることができる。ジカルボン酸の誘導体として、より具体的には、テレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジエチル、テレフタル酸2-ヒドロキシエチルメチルエステル、2,6-ナフタレンジカルボン酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、ダイマー酸ジメチルなどのエステル化物を挙げることができる。
【0061】
上記の中でも、耐熱性、取り扱い性の観点から、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、および、それらのエステル化物が好ましく用いられる。特に、少なくともテレフタル酸を用いることが好ましい。
【0062】
グリコールあるいはその誘導体としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族ジヒドロキシ化合物、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリオキシアルキレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、スピログリコールなどの脂環族ジヒドロキシ化合物、ビスフェノールA、ビスフェノールSなどの芳香族ジヒドロキシ化合物、並びに、それらの誘導体が挙げられる。
【0063】
上記の中でも、耐熱性および取り扱い性の点で、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールが好ましく用いられる。特に、少なくともエチレングリコールを用いることが好ましい。
【0064】
ポリエステルフィルムの転写層が積層される面は、転写層に艶消し外観を付与するという観点から、微細凹凸が形成されていることが好ましい。微細凹凸が形成されていることにより、その面に積層される転写層の表面に当該微細凹凸が転写され、その結果、転写層に艶消し外観を付与することができる。ポリエステルフィルムの微細凹凸の程度は、算術平均粗さRaで表すことができる。つまり、ポリエステルフィルムの転写層が積層される面の算術平均粗さRaは、0.30μm以上が好ましく、さらに0.35μm以上が好ましく、0.40μm以上がより好ましく、0.45μm以上が特に好ましい。また、転写層の塗布性や剥離性が良好になりやすいという観点から、算術平均粗さRaは1.00μm以下が好ましく、0.90μm以下がより好ましく、0.80μm以下が特に好ましい。
【0065】
ポリエステルフィルムの表面に微細凹凸を形成するには、ポリエステルフィルムを2層あるいは3層の積層構成として最表層に粒子を含有させることが好ましい。
【0066】
2層積層構成のポリエステルフィルムとしては、例えば、A層/B層の構成が挙げられる。この構成において、A層表面の微細凹凸を形成するためにA層に粒子を含有させることが好ましい。この場合、A層表面に転写層が積層される。
【0067】
3層積層構成のポリエステルフィルムとしては、例えば、A層/B層/A層あるいはA層/B層/C層が挙げられる。これらの積層構成において、A層表面に微細凹凸を形成するためにA層に粒子を含有させることが好ましい。そして、A層表面に転写層が積層される。A層/B層/A層の場合は、どちらか一方のA層表面に転写層が積層される。
【0068】
上記した2層積層構成および3層積層構成において、A層、B層およびC層はいずれも組成が異なることを意味する。
【0069】
A層/B層/A層の積層構成における両側のA層は、少なくとも組成が同一であることを意味する。さらに、両側のA層は、厚みが実質的に同一であることが好ましい。ここで、両側のA層の厚みが実質的に同一であるとは、2つのA層の平均厚みに対する2つのA層の厚み差の比率が10%以下であることを意味する。
【0070】
A層/B層/C層の積層構成において、C層は粒子を含有してもよいし、含有しなくてもよい。
【0071】
B層は、粒子は含有しないことが好ましい。ここで、粒子とは、平均粒子径が1μm以上の粒子を指す。つまり、B層は平均粒子径が1μm以上の粒子は含有しないことが好ましい。一方、B層は、ポリエステルフィルムの色調を調整するための平均粒子径が1μm未満の顔料、例えば、二酸化チタン、硫酸バリウムなどを含有することができる。
【0072】
基材フィルムおよび転写フィルムのカールを抑制するという観点から、ポリエステルフィルムは3層積層構成であることが好ましい。また、生産性の観点から、本発明の転写フィルム用基材フィルムにおいて、ポリエステルフィルムがA層/B層/A層からなる3層積層構成であることがより好ましく、特に、両側のA層の厚みが実質的に同一であることが特に好ましい。
【0073】
ここで、A層に含有させることができる粒子としては、無機粒子や有機粒子が挙げられる。無機粒子としては、例えば、湿式あるいは乾式シリカ、コロイダルシリカ、ケイ酸アルミ、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、酸化アルミなどが挙げられる。有機粒子としては、例えば、スチレン、シリコーン、アクリル酸類、メタクリル酸類、ポリエステル類、ジビニル化合物などを構成成分とする粒子が挙げられる。これらの粒子は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0074】
上記粒子の中でも、湿式あるいは乾式シリカ、コロイダルシリカ、ケイ酸アルミなどの無機粒子、およびスチレン、シリコーン、アクリル酸、メタクリル酸、ポリエステル、ジビニルベンゼンなどを構成成分とする有機粒子が好ましい。特に、A層表面に微細凹凸を効率よく形成できるという観点から、湿式あるいは乾式シリカ、コロイダルシリカ、ケイ酸アルミが特に好ましく用いられる。
【0075】
A層に含有させる粒子の平均粒子径は、1~10μmが好ましく、2~8μmがより好ましく、3~7μmが特に好ましい。
【0076】
A層における粒子の含有量は、A層の固形分総量100質量%中に1~10質量%が好ましく、2~8質量%がより好ましく、3~7質量%が特に好ましい。
【0077】
ポリエステルフィルムの厚みは、20μm以上が好ましく、30μm以上がより好ましく、40μmが特に好ましい。また、ポリエステルフィルムの厚みは、加工性の観点から、150μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましく、80μm以下が特に好ましい。
【0078】
A層の厚みは、A層表面の算術平均粗さRaが0.30μm以上の微細凹凸構造を比較的容易に形成できるという観点から、1~10μmが好ましく、2~8μmがより好ましく、3~7μmが特に好ましい。
【0079】
C層の厚みは、1~10μmが好ましく、2~8μmがより好ましく、3~7μmが特に好ましい。B層の厚みは、ポリエステルフィルムの合計厚みに応じて適宜設定される。
【0080】
上記した2層積層構成および3層積層構成において、A層と転写層との剥離性を良好にするという観点から、A層は、ポリブチレンテレフタレート樹脂を含有することが好ましい。上記ポリブチレンテレフタレート樹脂の中でも、ポリブチレンテレフタレートとポリエーテルとの共重合体がより好ましい。さらに、上記ポリエーテルとしてポリテトラメチレングリコールを用いた共重合体が好ましい。
【0081】
上記ポリブチレンテレフタレートとポリテトラメチレングリコールとの共重合体としては、東レ・デュポン(株)社製の“ハイトレル(登録商標)”の製品番号2751、同3046、同4047、同4767、同7247などが市販されており、使用することができる。
【0082】
上記ポリブチレンテレフタレート樹脂のA層における含有量は、A層の固形分総量100質量%中に5~35質量%が好ましく、8~30質量%がより好ましく、10~25質量%が特に好ましい。
【0083】
ポリエステルフィルムは、例えば、ポリエステル樹脂を単軸押出機に供給し溶融押出することによって製造することができる。ポリエステル樹脂の温度を265℃~295℃に制御し、ついで、フィルターやギヤポンプを通じて、異物の除去、押出量の均整化を行い、Tダイより冷却ドラム上にシート状に吐出し、冷却固化し、未延伸フィルムを得ることができる。このとき、高電圧を掛けた電極を使用して静電気で冷却ドラムとポリエステル樹脂シートを密着させる静電印加法を採用することが好ましい。
【0084】
ポリエステルフィルムは、耐熱性、寸法安定性の観点から二軸延伸することが好ましい。二軸延伸フィルムは、未延伸フィルムを長手方向および幅方向に逐次延伸する方法、または、未延伸フィルムを長手方向および幅方向にほぼ同時に延伸する方法によって得ることができる。
【0085】
上記延伸方法において、長手方向の延伸倍率は2.8~3.4倍が好ましく、2.9~3.3倍がより好ましい。長手方向の延伸温度は、70~100℃とすることが好ましい。幅方向の延伸倍率は2.8~3.8倍が好ましく、3.0~3.6倍がより好ましい。幅方向の延伸温度は、80~150℃とすることが好ましい。
【0086】
さらに、二軸延伸後に熱処理を行うことが好ましい。この熱処理はオーブン中で定長もしくは順次収縮させながら1~30秒間行うことが好ましい。この熱処理工程では工程前半からの昇温条件を段階的に設定することが好ましく、熱処理前半温度を熱処理後半温度より-30~-15℃とし、熱処理後半温度は140~245℃とすることが好ましい。
【0087】
ポリエステルフィルムの転写層が積層される面には、転写層との剥離性を良好にするために、公知の剥離剤、例えば、シリコーン系離型剤、フッ素系離型剤、長鎖アルキル系離型剤、オレフィン系離型剤を含有する離型層を設けることができる。しかしながら、離型層を設けると、生産性が低下したり、転写層に離型成分が移行するなどの不都合が起こることがあるので、離型層は設けないことが好ましい。すなわち、本発明の転写フィルム用基材フィルムにおいて、転写層はポリエステルフィルム上に直接積層されることが好ましい。
【0088】
上述したように、ポリエステルフィルムの最表層(例えばA層)にポリブチレンテレフタレート樹脂を含有させることによって、転写層との剥離性が良好になるので、離型層を設けることは必ずしも必要ない。
【0089】
[基材フィルム]
本発明の基材フィルムは、ポリエステルフィルムの転写層が積層される面とは反対面に背面層を有する。前述したように、ポリエステルフィルムがA層/B層の2層積層構成の場合は、B層の面に背面層が配置される。ポリエステルフィルムが、A層/B層/A層の3層積層構成の場合は、どちらか一方のA層の面に背面層が配置される。ポリエステルフィルムが、A層/B層/C層の3層積層構成の場合は、C層の面に背面層が配置される。特に、A層/B層/A層の3層積層構成の場合に、本発明の効果(保護フィルムとの密着性)が顕著になる。
【0090】
つまり、ポリエステルフィルムがA層/B層/A層の3層積層構成であって、A層表面の算術平均粗さRaが0.30μm以上である場合、あるいはA層がポリブチレンテレフタレート樹脂を含有する場合は、ポリエステルフィルムと保護フィルムとの密着性が悪化しやすくなるが、かかるポリエステルフィルムに背面層を設けて本発明の基材フィルムとすることにより、基材フィルムと保護フィルムとの密着性が良好となる。
【0091】
基材フィルムの背面層の面に貼り合わされる保護フィルムとしては、ポリエステルフィルムやポリオレフィンフィルムの片面に微粘着層を備えたものが一般的に用いられる。このような保護フィルムは、例えば、パナック(株)製の“パナプロテクト(登録商標)”、東レフィルム加工(株)製の“トレテック(登録商標)”などがある。
【0092】
基材フィルムと保護フィルムとの密着力は、例えば、0.15N/50mm以上が好ましく、0.20N/50mm以上がより好ましく、0.25N/50mm以上が特に好ましい。上限は1.0N/50mm程度である。
【0093】
[適用例]
本発明の基材フィルムは、その一方の面に転写層を積層することにより転写フィルムの製造に用いられる。すなわち、本発明の転写フィルムは、本発明の転写フィルム用基材フィルムの背面層を有する面とは反対面に、転写層が積層されてなる。転写層としては、例えば、ハードコート層、艶消し層、加飾層、保護層、絶縁層、金属層、導電層、隠蔽層、接着層、導電性接着剤層などが挙げられる。これらの転写層は単層であってもよいし、2層以上の積層構成であってもよい。
【0094】
本発明の基材フィルムが適用される転写フィルムは、フレキシブルプリント配線板などの回路基板の電磁波シールドフィルムの作製に好適である。電磁波シールドフィルムは、通常、絶縁層、金属層、導電性接着剤層などで構成される。絶縁層はハードコート層および艶消し層を兼ねることが好ましい。
【実施例
【0095】
以下、実施例により本発明を詳述するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0096】
[測定方法および評価方法]
(1)ポリエステルフィルムの算術平均粗さRaの測定
JIS B0601(2001)に準拠して表面粗さ測定機((株)ミツトヨ製の「サーフテストSJ-400」)を用いて測定した。
<測定条件>
・触針先端半径;2μm
・測定力;0.75mN
・カットオフ値;λc=0.8mm
・測定速度;0.5mm/秒
・測定長さ;4mm
(2)基材フィルムと保護フィルムとの密着性の評価
基材フィルムを幅50mm×長さ70mmに切り出し、この基材フィルムの転写層積層面(背面層とは反対面)に保護フィルム(東レフィルム加工(株)製の“トレテック(登録商標)”7332)の粘着面が向き合うように重ねて自重5kgのゴムローラーで押さえながら一往復させて貼り合わせて、室温(23±2℃)で24時間放置し、測定用サンプルを作製した。この測定用サンプルについて、引張り試験機(島津製作所社製「EZ-SX」品番)にて、300mm/minの速度で、保護フィルム側を180°に引き剥したときの剥離力を測定した。
【0097】
<密着性の評価>
A;剥離力が0.25N/50mm以上
B;剥離力が0.15N/50mm以上、0.25N/50mm未満
C;剥離力が0.15N/50mm未満。
【0098】
(3)ポリエステルフィルムと背面層との密着性の評価
基材フィルムの背面層の面に、ゴム系粘着テープ(ニチバン(株)“セロテープ(登録商標)”No.405(産業用))を指圧で強く貼り合わせ後、粘着テープ側を175°に急速に剥がして、背面層の脱離状態を目視確認した。背面層と粘着テープとの接着面積は、幅25mm×長さ200mmであった。
A;全く剥がれていない
B;一部が剥がれている
C;全面が剥がれている。
【0099】
(4)ポリエステルフィルムに含有する粒子の平均粒子径の測定
ポリエステルフィルムの断面を電子顕微鏡で観察し、その断面写真から、無作為に選択した30個の粒子のそれぞれの最大長さを計測し、それらを平均した値を粒子の平均粒子径とした。
【0100】
[実施例1]
<ポリエステルフィルムの製造に用いるポリエステル樹脂の調製>
<ポリエステル樹脂a>
テレフタル酸およびエチレングリコールから、三酸化アンチモンを触媒として、常法により重合を行い、固有粘度0.65のポリエステル樹脂を得た。
【0101】
<ポリエステル樹脂b>
上記ポリエステル樹脂aに平均粒子径3.5μmの凝集シリカ粒子を粒子濃度20質量%で含有した固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレート粒子マスターを調製した。
【0102】
<ポリエステル樹脂c>
ポリブチレンテレフタレートとポリテトラメチレングリコールとの共重合体として、東レ・デュポン(株)社製の“ハイトレル(登録商標)”7247を用いた。
【0103】
<ポリエステル樹脂d>
上記ポリエステル樹脂aにアナターゼ型二酸化チタンを50質量%含有した固有粘度0.6のポリエチレンテレフタレート粒子マスターを調製した。
【0104】
<ポリエステルフィルム1の製造>
下記のA層樹脂組成およびB層樹脂組成を用いて、A層/B層/A層からなる3層積層構成のポリエステルフィルムを以下の要領で製造した。
【0105】
A層樹脂組成;ポリエステル樹脂aを58質量%、ポリエステル樹脂bを25質量%、ポリエステル樹脂cを17質量%含む。
【0106】
B層樹脂組成;ポリエステル樹脂aを80質量%、ポリエステル樹脂cを17質量%、ポリエステル樹脂dを3質量%含む。
【0107】
A層およびB層の原料をそれぞれ酸素濃度0.2体積%とした別々の単軸押出機に供給し、A層押出機シリンダー温度を270℃、B層押出機シリンダー温度を270℃で溶融し、A層とB層合流後の短管温度を275℃、口金温度を280℃に設定し、樹脂温度280℃で、Tダイより25℃に温度制御した冷却ドラム上にシート状に吐出した。その際、直径0.1mmのワイヤー状電極を使用して静電印加し、冷却ドラムに密着させ未延伸シートを得た。次いで、長手方向への延伸前に加熱ロールにてフィルム温度を上昇させ、延伸温度85℃で長手方向に3.1倍延伸し、すぐに40℃に温度制御した金属ロールで冷却化した。その後、テンター式横延伸機にて延伸前半温度110℃、延伸中盤温度125℃、延伸後半温度140℃で幅方向に3.5倍延伸し、そのままテンター内にて、熱処理前半220℃、熱処理後半240℃で熱処理を行った後、徐冷温度170℃で幅方向に5%のリラックスを掛けながら熱処理を行い、総厚みが50μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。A層/B層/A層の厚みは、5μm/40μm/5μmであった。A層表面の算術平均粗さRaは、両面とも、0.55μmであった。
【0108】
<背面層の積層>
上記で製造したポリエステルフィルム1の一方の面に、下記の背面層用塗工液p1(熱硬化性組成物)をグラビアコーターで塗布し、170℃、30秒間の乾燥・加熱し、背面層を形成して、基材フィルムを得た。背面層の厚みは1.8μmであった。
【0109】
<塗工液p1>
・ウレタン変性アクリルポリオール;大成ファインケミカル(株)製の“アクリット(登録商標)”8UA-540Hを固形分換算で10質量部
・ポリイソシアネート化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート(三井化学(株)製の“タケネート(登録商標)”D-160N)を4.7質量部
・架橋剤;メラミン化合物(三井化学(株)の「ユーバン」28-60)を固形分換算で10質量部
・酸触媒;p-トルエンスルホン酸(テイカ(株)の「TAYCACURE」AC-707)を固形分換算で0.7質量部
・溶媒;混合溶媒(トルエン:メチルエチルケトン:イソプロピルアルコール:シクロヘキサノン=40:40:10:10(質量比)で固形分濃度が20質量%になるように調製した。
【0110】
[実施例2]
下記の塗工液p2(熱硬化性組成物)に変更する以外は、実施例1と同様にして基材フィルムを作製した。
【0111】
<塗工液p2>
・ポリエステルポリオール;三菱ケミカル(株)製の“ポリエスター(登録商標)”TP-235S20TMを固形分換算で10質量部
・ポリイソシアネート化合物;ジフェニルメタンジイソシアネート(三井化学(株)製の“タケネート(登録商標)”D-103H)を4.7質量部
・架橋剤;メラミン化合物(三井化学(株)の「ユーバン」28-60)を固形分換算で10質量部
・酸触媒;p-トルエンスルホン酸(テイカ(株)の「TAYCACURE」AC-707)を固形分換算で0.7質量部
・溶媒;混合溶媒(トルエン:メチルエチルケトン:イソプロピルアルコール:シクロヘキサノン=40:40:10:10(質量比)で固形分濃度が20質量%になるように調製した。
【0112】
[実施例3]
下記の塗工液p3(熱硬化性組成物)に変更する以外は、実施例1と同様にして基材フィルムを作製した。
【0113】
<塗工液p3>
・アクリルポリオール;三井化学(株)製の“タケラック(登録商標)”UA-702を固形分換算で10質量部
・ポリイソシアネート化合物;トリレンジジイソシアネート(日本ポリウレタン工業(株)製コロネートL)を4.7質量部
・架橋剤;メラミン化合物(三井化学(株)の「ユーバン」28-60)を固形分換算で10質量部
・酸触媒;p-トルエンスルホン酸(テイカ(株)の「TAYCACURE」AC-707)を固形分換算で0.7質量部
・溶媒;混合溶媒(トルエン:メチルエチルケトン:イソプロピルアルコール:シクロヘキサノン=40:40:10:10(質量比)で固形分濃度が20質量%になるように調製した。
【0114】
[比較例1]
ポリエステルフィルム1に背面層を設けないで、ポリエステルフィルム1を基材フィルムとした。
【0115】
[比較例2]
下記の塗工液p4(熱硬化性組成物)に変更する以外は、実施例1と同様にして基材フィルムを作製した。
【0116】
<塗工液p4>
・ポリエステルポリオール;三菱ケミカル(株)製の“ポリエスター(登録商標)”TP-235S20TMを固形分換算で10質量部
・架橋剤;メラミン化合物(三井化学(株)の「ユーバン」28-60)を固形分換算で10質量部
・酸触媒;p-トルエンスルホン酸(テイカ(株)の「TAYCACURE」AC-707)を固形分換算で0.7質量部
・溶媒;混合溶媒(トルエン:メチルエチルケトン:イソプロピルアルコール:シクロヘキサノン=40:40:10:10(質量比)で固形分濃度が20質量%になるように調製した。
【0117】
[比較例3]
下記の塗工液p5(熱硬化性組成物)に変更する以外は、実施例1と同様にして基材フィルムを作製した。
【0118】
<塗工液p5>
・アクリルポリオール;三井化学(株)製の“タケラック(登録商標)”UA-702を固形分換算で10質量部
・架橋剤;メラミン化合物(三井化学(株)の「ユーバン」28-60)を固形分換算で10質量部
・酸触媒;p-トルエンスルホン酸(テイカ(株)の「TAYCACURE」AC-707)を固形分換算で0.7質量部
・溶媒;混合溶媒(トルエン:メチルエチルケトン:イソプロピルアルコール:シクロヘキサノン=40:40:10:10(質量比)で固形分濃度が20質量%になるように調製した。
【0119】
[評価]
上記で作製した実施例および比較例の基材フィルムについて、上述の測定方法および評価方法に従って評価した。その結果を表1に示す。
【0120】
【表1】